(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】車両用光学レンズ及びライト
(51)【国際特許分類】
F21S 43/20 20180101AFI20240813BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20240813BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240813BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20240813BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/14
F21Y115:10
F21W103:00
(21)【出願番号】P 2022042354
(22)【出願日】2022-03-17
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】320009484
【氏名又は名称】嘉利日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】市原 元幸
(72)【発明者】
【氏名】厳 霊坤
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03848626(EP,A1)
【文献】特開2012-252838(JP,A)
【文献】特開2016-062844(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0030543(US,A1)
【文献】特開2015-008056(JP,A)
【文献】特開2020-144248(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02934353(FR,A1)
【文献】特開2017-010840(JP,A)
【文献】特開2021-174724(JP,A)
【文献】特開2015-167124(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159189(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/20
F21S 43/14
F21Y 115/10
F21W 103/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用光学レンズであって、
インナーレンズとアウターレンズとを有し、
前記インナーレンズが、
当該インナーレンズの本体の一方の端面で光源からの光を入力し、水平方向に出力する入力面と、
前記本体の他方の端面で光を放出し、傾斜する
平面形状の表面と、
前記入力面と前記表面との間で、前記本体の内部の一部を
断面にて台形状に切り取っ
たカット部と、前記カット部より前記入力面側の第1のレンズ部と、前記カット部より前記表面側の第2のレンズ部と、前記カット部の上側で前記第1のレンズ部と前記第2のレンズ部を接続する接続部と、
前記第1のレンズ部で前記カット部に対して形成される第1のカット面と、
前記第2のレンズ部で前記カット部に対して形成される第2のカット面と、を備え、
前記入力面が、前記光源からの光を入光して水平方向に出力する面となっており、
前記第1のカット面が、前記光源からの光を水平方向に出力する面であり、
前記第2のカット面が、傾斜し、前記表面と略平行となっており、
前記第2のレンズ部は、前記カット部を通過した光を前記第2のカット面から入光して斜め上方向に進行させて前記表面から水平方向に出力し、
前記表面をシボ面と
し、
前記アウターレンズが、前記表面の傾斜に沿って傾斜していることを特徴とする車両用光学レンズ。
【請求項2】
前記本体の側面をクリスタル面又は装飾用のレンズカット面としたことを特徴とする請求項1記載の車両用光学レンズ。
【請求項3】
前記本体の表面の横方向の幅に対して、前記表面から前記第2のカット面まで
の長さを1.5倍以上8倍以下としたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用光学レンズ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載の車両用光学レンズを複数配置し、
当該複数の車両用光学レンズの本体の入力面に対して光源が各
々設けられていることを特徴とするライト。
【請求項5】
前記複数の車両用光学レンズは、本体同士の間に隙間が設けられるよう間隔を置いて配置され、当該隙間には装飾用又は遮光用の樹脂が一体又は別に装着されていることを特徴とする請求項4記載のライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用光学レンズに係り、特に、軽量化すると共に光軸が下向きにならず、表面の光が均質になるシボ面を採用することができる車両用光学レンズ及びライトに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来の車両用の光学レンズについては、様々な発明が為されている。
また、従来の光学レンズで、軽量化のためにレンズの一部をカットしたものがあるが、光軸が下向きになる。そのため、表面をプリズムカットにするものがあったが、見栄えが複雑なものとなっていた。
【0003】
[従来の車両用光学レンズの例1:
図6]
従来の車両用光学レンズについて
図6を参照しながら説明する。
図6は、従来の車両用光学レンズの例1の縦方向の断面説明図である。
従来の車両用光学レンズの例1は、
図6に示すように、LED(Light Emitting Diode)の光源2a,2bと、インナーレンズ10と、アウターレンズ3とを備えている。
そして、インナーレンズ10の一方の端部に光源2a,2bからの光を入力する入力面11a,11bを備え、他方の端部に光をアウターレンズ3に出力する表面12aを備えている。
【0004】
ここで、入力面11a,11bから入射した光は水平方向に直進するものの、表面12aが傾斜しているため、表面12aからの光が下向きになってしまう。また、インナーレンズ10に空洞が設けられていないため重くなり、軽量化を図ることができず、更に、光源からの光の減衰が大きいものとなっていた。
【0005】
[従来の車両用光学レンズの例2:
図7]
従来の車両用光学レンズについて
図7を参照しながら説明する。
図7は、従来の車両用光学レンズの例2の縦方向の断面説明図である。
従来の車両用光学レンズの例2は、
図7に示すように、光源2a,2bと、インナーレンズ10と、アウターレンズ3とを備え、
図6との相違は、インナーレンズ10の途中の一部をカットして除去し、カット部分10eを設け、表面12bが光の向きを下向きではなく、水平にするために階段形状のプリズムカットとなっている点である。
【0006】
図7のレンズでは、カット部分10eの空洞があるが、光軸が下向きになるのを防ぐために表面12bにプリズムカットを採用しており、光の出射面にカット段差ができてしまい、見栄えが複雑である。一部のお客様からは、滑らかで光が均質になるシボ面加工の要望が強い。
【0007】
[関連技術]
尚、関連する先行技術文献として、特許第6260073号公報「レンズ体、レンズ結合体及び車両用灯具」(特許文献1)、特許第6592149号公報「車両用灯具」(特許文献2)、特許第6774470号公報「車両用前照灯」(特許文献3)がある。
【0008】
特許文献1~3には、入射光を一部遮光するシェードを備える車両用灯具において、レンズの一部をカットして空間を形成した構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6260073号公報
【文献】特許第6592149号公報
【文献】特許第6774470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の車両用光学レンズでは、重量を低減すると共に表面での出射光を水平方向とすることができず、表面にシボ面を採用した場合に、光ムラがなく表面での光を均質にすることができないという問題点があった。
【0011】
尚、特許文献1~3には、レンズの重量の軽量化を図り、表面をシボ面としてレンズ表面からの光を均質にするための構成の記載がない。
【0012】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、軽量化を図ると共にシボ面の表面を光ムラがなく発光が滑らかで均質にできる車両用光学レンズ及びライトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、車両用光学レンズであって、インナーレンズとアウターレンズとを有し、インナーレンズが、当該インナーレンズの本体の一方の端面で光源からの光を入力し、水平方向に出力する入力面と、本体の他方の端面で光を放出し、傾斜する平面形状の表面と、入力面と表面との間で、本体の内部の一部を断面にて台形状に切り取ったカット部と、カット部より入力面側の第1のレンズ部と、カット部より表面側の第2のレンズ部と、カット部の上側で第1のレンズ部と第2のレンズ部を接続する接続部と、第1のレンズ部でカット部に対して形成される第1のカット面と、第2のレンズ部でカット部に対して形成される第2のカット面と、を備え、入力面が、光源からの光を入光して水平方向に出力する面となっており、第1のカット面が、光源からの光を水平方向に出力する面であり、第2のカット面が、傾斜し、表面と略平行となっており、第2のレンズ部は、カット部を通過した光を第2のカット面から入光して斜め上方向に進行させて表面から水平方向に出力し、表面をシボ面とし、アウターレンズが、表面の傾斜に沿って傾斜していることを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記車両用光学レンズにおいて、本体の側面をクリスタル面又は装飾用のレンズカット面としたことを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記車両用光学レンズにおいて、本体の表面の横方向の幅に対して、表面から第2のカット面までの長さを1.5倍以上8倍以下としたことを特徴とする。
【0016】
本発明は、ライトにおいて、上記車両用光学レンズを複数配置し、当該複数の車両用光学レンズの本体の入力面に対して光源が各々設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記ライトにおいて、複数の車両用光学レンズが、本体同士の間に隙間が設けられるよう間隔を置いて配置され、当該隙間には装飾用又は遮光用の樹脂が一体又は別に装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インナーレンズが、当該インナーレンズの本体の一方の端面で光源からの光を入力し、水平方向に出力する入力面と、本体の他方の端面で光を放出し、傾斜する平面形状の表面と、入力面と表面との間で、本体の内部の一部を断面にて台形状に切り取ったカット部と、カット部より入力面側の第1のレンズ部と、カット部より表面側の第2のレンズ部と、カット部の上側で第1のレンズ部と第2のレンズ部を接続する接続部と、第1のレンズ部でカット部に対して形成される第1のカット面と、第2のレンズ部でカット部に対して形成される第2のカット面と、を備え、入力面が、光源からの光を入光して水平方向に出力する面となっており、第1のカット面が、光源からの光を水平方向に出力する面であり、第2のカット面が、傾斜し、表面と略平行となっており、第2のレンズ部は、カット部を通過した光を第2のカット面から入光して斜め上方向に進行させて表面から水平方向に出力し、表面をシボ面とし、アウターレンズが、表面の傾斜に沿って傾斜している車両用光学レンズとしているので、表面から水平方向の光を出射することができ、シボ面の表面を光ムラがなく発光が滑らかで均質にできると共に、切り取った部分により軽量化を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図6】従来の車両用光学レンズの例1の縦方向の断面説明図である。
【
図7】従来の車両用光学レンズの例2の縦方向の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る車両用光学レンズ(本レンズ)は、光源を下側に配置して、レンズの一部をカットして軽量化を図り、光源に近い方の第1のカット面と、光源から遠い方(表面から近い方)の第2のカット面とを有し、表面の傾斜に対して第2のカット面の傾斜が略平行となるよう構成したことにより、表面から水平方向の光を出射することが可能となり、カットした部分により軽量化を図ると共に、シボ面の表面を光ムラがなく発光が滑らかで均質にできるものである。
【0021】
また、本発明の実施の形態に係る車両用ライト(本ライト)は、上記本レンズを複数用いて形成したものであり、全ての車両用光学レンズの表面を光ムラがなく発光が滑らかで均質なシボ面にできるものである。
【0022】
[本レンズ:
図1,2]
本レンズについて
図1,2を参照しながら説明する。
図1は、本レンズの縦方向の断面説明図であり、
図2は、本レンズの一部拡大断面説明図である。
本レンズは、
図1に示すように、インナーレンズ1の内側の一部を台形状にカットしたもので、光源2a,2b(まとめて光源2と称することがある)からの光を入光して水平方向に出力する入力面11a,11b(まとめて入力面11と称することがある)と、光をアウターレンズ3に出力する表面12と、入力面11側のカット面(第1のカット面)13と、表面12側のカット面(第2のカット面)14とを有している。
【0023】
つまり、本レンズは、カット部分10cの空間を挟んで、入力面11側の第1のレンズ部分10aと、表面12側の第2のレンズ部分10bとを備えており、第1のレンズ部分10aと第2のレンズ部分10bとは、カット部分10cの上部の接続部10dで接続された構造となっている。
【0024】
[本レンズの各部]
次に、本レンズの各部を詳細に説明する。
入力面11は、光源2から出射した光を受光する受光面となっており、入光した光を水平方向の光(水平光線)で第1のレンズ部分10a内に出力するよう加工されている。
また、第1のカット面13は、入力面11からの水平光線をそのまま水平方向に直進させ、カット部分10cの空間を進行するように加工されている。このカット部分10cがあることにより、光源2からの光の減衰を小さくできるものである。
【0025】
第2のカット面14は、
図1に示すように、斜め方向に傾斜してカットされており、カット部分10cの空間から入力された光を斜め上方向に出力するよう加工されている。
そして、第2のカット面14は、表面12の傾斜と略平行になるよう形成されている。
【0026】
表面12は、第2のカット面14と略平行であるので、斜め下方向から入力された光を水平方向に出力する。
このように、本レンズでは、第1のカット面13と第2のカット面14を備えて、表面12から水平方向への出射が可能となるため、プリズム加工は不要となり、見栄えが良くなるものである。
【0027】
また、表面12は、シボが設定されたシボ面となっており、
図2に示すように、シボ面から水平方向の直進光と、その上下には拡散光が出力される。
表面12をシボ面とすることにより、従来のようなプリズム加工に比べて見栄えが良くなり、表面12から出射される光が滑らかで均質となるものである。
【0028】
第2のレンズ部分10bの側面は、シボ面とはせず、クリスタル面又は装飾のためのレンズカット面としている。但し、隣接するレンズとの間を接続する部分には装飾用又は遮光用の樹脂が一体又は別に装着されている。つまり、隣接するレンズとの隙間は、一体又は別部品で樹脂を設定し、色は黒以外にメッキ色等の他の色を用いてもよい。
【0029】
そして、本レンズでは、光源2bを下側に設け、その光源2bの位置に合わせて入力面11bも下側に形成されている。
尚、光源2aと光源2bの間隔が開くと、入力面11aと入力面11bとの間に水平光線が少なくなるので、光源2a,2bの間が開かないように設計する。
本レンズに対して光源2bの位置を下側にすることで、表面12の下側から発光する光が薄くなるのを防止できるものである。
図1では、LEDの光源を2個用いているが、1個の光源を用いてもよいし、3個以上の光源を用いてもよい。いずれの場合も、光源を下側に設置する。
【0030】
また、第1のカット面13と第2のカット面14での細かい配光制御を行うことで、表面12の全体を均一に発光させることができるものである。
更に、入力面11でも配光制御を行うことで、全体に色ムラが出ないよう調整することができるものである。
【0031】
[横方向の断面:
図3]
本レンズの横方向の断面について
図3を参照しながら説明する。
図3は、本レンズの横方向の断面説明図である。
本レンズは、
図3に示すように、光源2側にインナーレンズ1の第1のレンズ部分10aと、表面12側に第2のレンズ部分10bとが設けられ、表面12の外側にアウターレンズ3が設けられている。
【0032】
そして、表面12はシボ面となっており、第1のレンズ部分10aと第2のレンズ部分10bとの間にカット部分10cの空間が設けられ、カット部分10cに対する第1のレンズ部分10aのカット面が第1のカット面13で、カット部分10cに対する第2のレンズ部分10bのカット面が第2のカット面14である。
尚、第2のレンズ部分10bの側面は、上述したようにクリスタル面又は装飾用のレンズカット面としている。
【0033】
[本ライト:
図4,5]
本レンズを複数用いた本発明の実施の形態に係るライト(本ライト)について
図4,5を参照しながら説明する。
図4は、本ライトの一部概略図であり、
図5は、本ライトの横方向の断面説明図である。
本ライトは、
図4,5に示すように、複数のブロックのインナーレンズ1を、間隔を置いて配置している。
そして、レンズの各ブロックを接続する接続部分(隙間部分)には装飾用又は遮光用の樹脂が一体又は別に装着されている。樹脂の装着は、表面に行ってもよく、裏面に行ってもよい。
【0034】
図5に示すように、本ライトが、湾曲面に複数のレンズのブロックを配置した構成では、第2のレンズ部分10bの側面をクリスタル面又は装飾用のレンズカット面にし、ブロック間を接続する接続部分に装飾用又は遮光用の樹脂を一体又は別に装着ることで、レンズのブロック感を演出することができる。
特に、インナーレンズ1において、本体の表面12の横方向の幅に対して、表面12から第2のカット面14までの横方向の長さを1.5倍以上で8倍以下としたことにより、更にレンズのブロック感が現れるものである。
【0035】
[実施の形態の効果]
本レンズによれば、光源2を下側に配置して、インナーレンズ1の一部をカットしてカット部分10cを形成し、光源2に近い方の第1のカット面13と、表面12から近い方の第2のカット面14とを有し、表面12の傾斜に対して第2のカット面14の傾斜が略平行となるよう構成したことにより、表面12から水平方向の光を出射することが可能となり、その表面12をシボ面にしても、光ムラがなく発光が滑らかで均質にすることができると共に、カット部分10cにより軽量化を図ることができる効果がある。
【0036】
本ライトによれば、本レンズを複数用いて形成したものであり、全ての車両用光学レンズの表面を光ムラがなく発光が滑らかで均質なシボ面にすることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、軽量化を図ると共にシボ面の表面を光ムラがなく発光が滑らかで均質にできる車両用光学レンズ及びライトに好適である。
【符号の説明】
【0038】
1,10…インナーレンズ、 2,2a,2b…光源、 3…アウターレンズ、 10a…第1のレンズ部、 10b…第2のレンズ部、 10c…カット部分、 10d…接続部、 11,11a,11b…入力面、 12,12a,12b…表面、 13…第1のカット面、 14…第2のカット面、 15…天井部分