(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】表面保護フィルム付光学部材
(51)【国際特許分類】
B32B 7/12 20060101AFI20240813BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240813BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240813BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240813BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240813BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240813BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240813BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240813BHJP
【FI】
B32B7/12
B32B7/022
B32B27/40
C09J7/38
C09J175/04
G02B5/30
B32B27/00 D
B32B27/00 M
B32B7/06
(21)【出願番号】P 2022119233
(22)【出願日】2022-07-27
(62)【分割の表示】P 2016127939の分割
【原出願日】2016-06-28
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2015164602
(32)【優先日】2015-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016031627
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】設樂 浩司
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-066283(JP,A)
【文献】特開2006-182795(JP,A)
【文献】特開2008-050471(JP,A)
【文献】特開2005-338367(JP,A)
【文献】特開2009-186995(JP,A)
【文献】特開2004-070295(JP,A)
【文献】特開2011-190420(JP,A)
【文献】特開2014-111701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09J1/00-5/10
9/00-201/10
G02B1/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材と表面保護フィルムの積層体と、該光学部材の該表面保護フィルムと反対側に備えられた粘着剤層(2)と、該粘着剤層(2)の該光学部材と反対側に備えられた剥離ライナーと、をこの順に有する表面保護フィルム付光学部材であって、
該表面保護フィルムは基材層と粘着剤層(1)とを含み、
該表面保護フィルムの該粘着剤層(1)が光学部材側であり、
該粘着剤層(1)に含まれる粘着剤がウレタン系粘着剤であり、
該ウレタン系粘着剤が、ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂を含み、該ウレタンプレポリマー(C)と該多官能イソシアネート化合物(B)における、NCO基とOH基の当量比が、NCO基/OH基として2.0以下であるウレタン系粘着剤、であり、
剥離ライナーの厚みが1μm~500μmであり、
該積層体からの該光学部材のきっかけ剥離力Pと該剥離ライナーのきっかけ剥離力Qについて、
23℃×50%RH、剥離速度300mm/min、剥離角度180°で測定したきっかけ剥離力Pときっかけ剥離力Qについて、きっかけ剥離力P/きっかけ剥離力Qが1以上であり、
23℃×50%RH、剥離速度6.0m/min、剥離角度180°で測定したきっかけ剥離力Pときっかけ剥離力Qについて、きっかけ剥離力P/きっかけ剥離力Qが1以上である、
表面保護フィルム付光学部材。
【請求項2】
前記光学部材の厚みが1μm~500μmである、請求項1に記載の表面保護フィルム付光学部材。
【請求項3】
前記表面保護フィルムの厚みが5μm~500μmである、請求項1または2に記載の表面保護フィルム付光学部材。
【請求項4】
前記基材層がプラスチックフィルムである、請求項1から
3までのいずれかに記載の表面保護フィルム付光学部材。
【請求項5】
前記ウレタン系粘着剤が脂肪酸エステルを含む、請求項1から
4までのいずれかに記載の表面保護フィルム付光学部材。
【請求項6】
前記光学部材表面に対する前記表面保護フィルムの濡れ速度が5cm
2/秒以上である、請求項1から
5までのいずれかに記載の表面保護フィルム付光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面保護フィルム付光学部材に関する。本発明の表面保護フィルム付光学部材は、光学部材の表面に表面保護フィルムが貼り合わせられた部材である。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの光学製品の製造工程においては、偏光板等の光学部材の一方の表面には、粘着剤層を介して剥離ライナーが貼着されていることが一般的である。そして、このような光学部材を他の部材(例えば、他の光学部材)に貼り合せる場合には、その前に剥離ライナーを剥離し、粘着剤層を露出させ、他の部材に貼着する(例えば、特許文献1)。
【0003】
他方、光学部材は、加工、組立、検査、輸送などの際の表面の傷付き防止のために、一般に、露出面側に表面保護フィルムが貼着される。このような表面保護フィルムは、表面保護の必要がなくなった時点で、光学部材から剥離される。
【0004】
すなわち、液晶表示装置などの光学製品の製造工程においては、光学部材には、一方の表面に粘着剤層を介して剥離ライナーが貼着されており、もう一方の表面に表面保護フィルムが貼着されていることが一般的である。
【0005】
このような表面保護フィルム付光学部材において、上記のように剥離ライナーを剥離しようとする際には、該剥離ライナーと粘着剤層との界面でのみ剥離が起こることが重要である。しかしながら、従来の表面保護フィルム付光学部材においては、上記のように剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離されてしまうという問題、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こってしまうという問題が生じている。このような問題は、特に、光学部材が薄い場合に顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、一方の表面に粘着剤層を介して剥離ライナーが貼着されており、もう一方の表面に表面保護フィルムが貼着されている光学部材であって、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難い、表面保護フィルム付光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表面保護フィルム付光学部材は、
光学部材と表面保護フィルムの積層体と、該光学部材の該表面保護フィルムと反対側に備えられた粘着剤層(2)と、該粘着剤層(2)の該光学部材と反対側に備えられた剥離ライナーと、をこの順に有する表面保護フィルム付光学部材であって、
該表面保護フィルムは基材層と粘着剤層(1)とを含み、
該表面保護フィルムの該粘着剤層(1)が光学部材側であり、
該積層体からの該光学部材のきっかけ剥離力Pが該剥離ライナーのきっかけ剥離力Qよりも大きい。
【0009】
一つの実施形態においては、上記光学部材の厚みが1μm~500μmである。
【0010】
一つの実施形態においては、上記表面保護フィルムの厚みが5μm~500μmである。
【0011】
一つの実施形態においては、上記剥離ライナーの厚みが1μm~500μmである。
【0012】
一つの実施形態においては、上記基材層がプラスチックフィルムである。
【0013】
一つの実施形態においては、上記粘着剤層(1)に含まれる粘着剤がウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選ばれる少なくとも1種である。
【0014】
一つの実施形態においては、上記ウレタン系粘着剤が、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂を含む。
【0015】
一つの実施形態においては、上記ポリオール(A)と上記多官能イソシアネート化合物(B)における、NCO基とOH基の当量比が、NCO基/OH基として2.0以下である。
【0016】
一つの実施形態においては、上記ウレタン系粘着剤が、ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂を含む。
【0017】
一つの実施形態においては、上記ウレタンプレポリマー(C)と上記多官能イソシアネート化合物(B)における、NCO基とOH基の当量比が、NCO基/OH基として2.0以下である。
【0018】
一つの実施形態においては、上記ウレタン系粘着剤が脂肪酸エステルを含む。
【0019】
一つの実施形態においては、上記アクリル系粘着剤が、(a)アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(b)OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸から選ばれる少なくとも1種、(c)多官能イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤から選ばれる少なくとも1種、を含有する組成物から形成されるアクリル系樹脂を含む。
【0020】
一つの実施形態においては、上記光学部材表面に対する上記表面保護フィルムの濡れ速度が5cm2/秒以上である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、一方の表面に粘着剤層を介して剥離ライナーが貼着されており、もう一方の表面に表面保護フィルムが貼着されている光学部材であって、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難い、表面保護フィルム付光学部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一つの実施形態による表面保護フィルム付光学部材の概略断面図である。
【
図2】光学部材と表面保護フィルムの積層体からの該光学部材のきっかけ剥離力Pを説明する概略断面図である。
【
図3】剥離ライナーのきっかけ剥離力Qを説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
≪≪表面保護フィルム付光学部材≫≫
本発明の表面保護フィルム付光学部材は、光学部材と表面保護フィルムの積層体と、該光学部材の該表面保護フィルムと反対側に備えられた粘着剤層(2)と、該粘着剤層(2)の該光学部材と反対側に備えられた剥離ライナーと、をこの順に有する表面保護フィルム付光学部材であり、該表面保護フィルムは基材層と粘着剤層(1)とを含み、該表面保護フィルムの該粘着剤層(1)が光学部材側である。
【0024】
本発明の表面保護フィルム付光学部材は、光学部材と表面保護フィルムの積層体と、該光学部材の該表面保護フィルムと反対側に備えられた粘着剤層(2)と、該粘着剤層(2)の該光学部材と反対側に備えられた剥離ライナーと、を有すれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の層を有していてもよい。
【0025】
図1は、本発明の一つの実施形態による表面保護フィルム付光学部材の概略断面図である。
図1において、本発明の表面保護フィルム付光学部材1000は、剥離ライナー10と、粘着剤層(2)20と、光学部材30と、粘着剤層(1)40と、基材層50と、をこの順に有し、粘着剤層(1)40と基材層50とが表面保護フィルム100を構成している。
【0026】
光学部材の厚みは、好ましくは1μm~500μmであり、より好ましくは3μm~450μmであり、さらに好ましくは5μm~400μmであり、特に好ましくは10μm~300μmである。本発明の表面保護フィルム付光学部材は、光学部材の厚みがこのように薄い場合であっても、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果を発現し得る。
【0027】
表面保護フィルムの厚みは、好ましくは5μm~500μmであり、より好ましくは10μm~450μmであり、さらに好ましくは15μm~400μmであり、特に好ましくは20μm~300μmである。表面保護フィルムの厚みが上記範囲内に調整されることにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0028】
剥離ライナーの厚みは、好ましくは1μm~500μmであり、より好ましくは3μm~450μmであり、さらに好ましくは5μm~400μmであり、特に好ましくは10μm~300μmである。剥離ライナーの厚みが上記範囲内に調整されることにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0029】
本発明の表面保護フィルム付光学部材は、光学部材と表面保護フィルムの積層体からの該光学部材のきっかけ剥離力Pが剥離ライナーのきっかけ剥離力Qよりも大きい。きっかけ剥離力Pがきっかけ剥離力Qよりも大きいことにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難い。
【0030】
きっかけ剥離力P/きっかけ剥離力Qは、1以上である。
【0031】
剥離ライナーの厚みが38μm、剥離速度が300mm/分の場合、きっかけ剥離力P/きっかけ剥離力Qは、好ましくは5以上であり、より好ましくは5~20であり、さらに好ましくは6~15であり、特に好ましくは6~13である。上記のきっかけ剥離力P/きっかけ剥離力Qが上記の範囲内であれば、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムからより剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離がより起こり難い。
【0032】
剥離ライナーの厚みが38μm、剥離速度が6m/分の場合、きっかけ剥離力P/きっかけ剥離力Qは、好ましくは2.1以上であり、より好ましくは2.1~20であり、さらに好ましくは2.3~15であり、特に好ましくは2.5~10である。上記のきっかけ剥離力P/きっかけ剥離力Qが上記の範囲内であれば、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムからより剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離がより起こり難い。
【0033】
剥離ライナーの厚みが50μm、剥離速度が300mm/分の場合、きっかけ剥離力P/きっかけ剥離力Qは、好ましくは1.01以上であり、より好ましくは1.01~10であり、さらに好ましくは1.03~5であり、特に好ましくは1.03~3である。上記のきっかけ剥離力P/きっかけ剥離力Qが上記の範囲内であれば、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムからより剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離がより起こり難い。
【0034】
剥離ライナーの厚みが50μm、剥離速度が6m/分の場合、きっかけ剥離力P/きっかけ剥離力Qは、好ましくは1.05以上であり、より好ましくは1.05~10であり、さらに好ましくは1.1~5であり、特に好ましくは1.2~3である。上記のきっかけ剥離力P/きっかけ剥離力Qが上記の範囲内であれば、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムからより剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離がより起こり難い。
【0035】
図2は、光学部材と表面保護フィルムの積層体からの該光学部材のきっかけ剥離力Pを説明する概略断面図である。
図2に示すように、きっかけ剥離力Pは、光学部材30と表面保護フィルム100の積層体から、光学部材30を剥離するときのきっかけ剥離力である。きっかけ剥離力Pの測定方法については後述する。
【0036】
図3は、剥離ライナーのきっかけ剥離力Qを説明する概略断面図である。
図3に示すように、きっかけ剥離力Qは、剥離ライナー10と粘着剤層(2)20と光学部材30の積層体から、剥離ライナー10を剥離するときのきっかけ剥離力である。きっかけ剥離力Qの測定方法については後述する。
【0037】
≪光学部材≫
光学部材としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な光学部材を採用し得る。光学部材は、1層のものであっても良いし、多層のものであってもよい。このような光学部材としては、好ましくは、偏光板、偏光板を含む多層光学素子、位相差板、LCD、LCDなどを用いたタッチパネル、LCDに使用されるカラーフィルターなどが挙げられる。
【0038】
≪表面保護フィルム≫
表面保護フィルムは、基材層と粘着剤層(1)とを含む。表面保護フィルムは、基材層と粘着剤層(1)とを含めば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の層を有していてもよい。
【0039】
光学部材表面に対する表面保護フィルムの濡れ速度は、好ましくは5cm2/秒以上であり、より好ましくは7cm2/秒以上であり、さらに好ましくは8cm2/秒以上であり、特に好ましくは8.5cm2/秒以上である。光学部材表面に対する表面保護フィルムの濡れ速度が上記範囲内にあれば、光学部材表面に対する表面保護フィルムの濡れ速度に優れ、例えば、光学部材表面と表面保護フィルムとの間に気泡が存在し難い。
【0040】
表面保護フィルムは、任意の適切な方法により製造することができる。このような製造方法としては、例えば、
(1)粘着剤層(1)の形成材料の溶液や熱溶融液を基材層上に塗布する方法、
(2)それに準じ、セパレーター状に塗布、形成した粘着剤層(1)を基材層上に移着する方法、
(3)粘着剤層(1)の形成材料を基材層上に押出して形成塗布する方法、
(4)基材層と粘着剤層(1)を二層または多層にて押出しする方法、
(5)基材層上に粘着剤層(1)を単層ラミネートする方法またはラミネート層とともに粘着剤層を二層ラミネートする方法、
(6)粘着剤層(1)とフィルムやラミネート層等の基材層形成材料とを二層または多層ラミネートする方法、
などの、任意の適切な製造方法に準じて行うことができる。
【0041】
塗布の方法としては、例えば、ロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法などが使用できる。
【0042】
<基材層>
基材層は、1層のみであってもよいし、2層以上であってもよい。基材層は、延伸されたものであってもよい。
【0043】
基材層の厚みは、好ましくは4μm~450μmであり、より好ましくは8μm~400μmであり、さらに好ましくは12μm~350μmであり、特に好ましくは16μm~250μmである。基材層の厚みが上記範囲内に調整されることにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0044】
基材層の粘着剤層(1)を付設しない面に対しては、巻戻しが容易な巻回体の形成などを目的として、例えば、基材層に、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミン、長鎖アルキル系添加剤等を添加して離型処理を行ったり、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系などの任意の適切な剥離剤からなるコート層を設けたりすることができる。
【0045】
基材層の材料としては、用途に応じて、任意の適切な材料を採用し得る。例えば、プラスチック、紙、金属フィルム、不織布などが挙げられる。好ましくは、プラスチックである。すなわち、基材層は、好ましくは、プラスチックフィルムである。基材層は、1種の材料から構成されていてもよいし、2種以上の材料から構成されていてもよい。例えば、2種以上のプラスチックから構成されていてもよい。
【0046】
上記プラスチックとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンモノマーの単独重合体、オレフィンモノマーの共重合体などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、例えば、ホモポリプロピレン;エチレン成分を共重合成分とするブロック系、ランダム系、グラフト系等のプロピレン系共重合体;リアクターTPO;低密度、高密度、リニア低密度、超低密度等のエチレン系重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合体;などが挙げられる。
【0047】
基材層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含有し得る。基材層に含有され得る添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、充填剤、顔料などが挙げられる。基材層に含有され得る添加剤の種類、数、量は、目的に応じて適切に設定され得る。特に、基材層の材料がプラスチックの場合は、劣化防止等を目的として、上記の添加剤のいくつかを含有することが好ましい。耐候性向上等の観点から、添加剤として特に好ましくは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤が挙げられる。
【0048】
酸化防止剤としては、任意の適切な酸化防止剤を採用し得る。このような酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、フェノール・リン系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤の含有割合は、基材層のベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)に対して、好ましくは1重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以下であり、さらに好ましくは0.01重量%~0.2重量%である。
【0049】
紫外線吸収剤としては、任意の適切な紫外線吸収剤を採用し得る。このような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)に対して、好ましくは2重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下であり、さらに好ましくは0.01重量%~0.5重量%である。
【0050】
光安定剤としては、任意の適切な光安定剤を採用し得る。このような光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤などが挙げられる。光安定剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)に対して、好ましくは2重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下であり、さらに好ましくは0.01重量%~0.5重量%である。
【0051】
充填剤としては、任意の適切な充填剤を採用し得る。このような充填剤としては、例えば、無機系充填剤などが挙げられる。無機系充填剤としては、具体的には、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。充填剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)に対して、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは0.01重量%~10重量%である。
【0052】
さらに、添加剤としては、帯電防止性付与を目的として、界面活性剤、無機塩、多価アルコール、金属化合物、カーボン等の無機系、低分子量系および高分子量系帯電防止剤も好ましく挙げられる。特に、汚染、粘着性維持の観点から、高分子量系帯電防止剤やカーボンが好ましい。
【0053】
<粘着剤層(1)>
粘着剤層(1)は、任意の適切な製造方法によって製造し得る。このような製造方法としては、例えば、粘着剤層(1)の形成材料である組成物を基材層上に塗布し、基材層上において粘着剤層(1)を形成する方法が挙げられる。このような塗布の方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法、ダイコーターなどによる押出しコートなどが挙げられる。
【0054】
粘着剤層(1)の厚みは、好ましくは1μm~150μmであり、より好ましくは2μm~140μmであり、さらに好ましくは3μm~130μmであり、特に好ましくは4μm~120μmである。粘着剤層(1)の厚みが上記範囲内に調整されることにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0055】
粘着剤層(1)中の粘着剤の含有割合は、好ましくは50重量%~100重量%であり、より好ましくは60重量%~100重量%であり、さらに好ましくは70重量%~100重量%であり、特に好ましくは80重量%~100重量%であり、最も好ましくは90重量%~100重量%である。粘着剤層(1)中の粘着剤の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0056】
粘着剤層(1)に含まれる粘着剤は、好ましくは、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選ばれる少なくとも1種であり、本発明の効果をより発現し得る点で、より好ましくは、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤から選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくは、ウレタン系粘着剤である。
【0057】
〔ウレタン系粘着剤〕
ウレタン系粘着剤はポリウレタン系樹脂を含む。
【0058】
ウレタン系粘着剤中のポリウレタン系樹脂の含有割合は、好ましくは50重量%~100重量%であり、より好ましくは70重量%~100重量%であり、さらに好ましくは90重量%~100重量%であり、特に好ましくは95重量%~100重量%であり、最も好ましくは98重量%~100重量%である。ウレタン系粘着剤中のポリウレタン系樹脂の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0059】
ウレタン系粘着剤は、ポリウレタン系樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。このような他の成分としては、例えば、ポリウレタン系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0060】
ポリウレタン系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリウレタン系樹脂を採用し得る。ポリウレタン系樹脂としては、好ましくは、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂、または、ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂である。ポリウレタン系樹脂として上記のようなものを採用することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0061】
ポリウレタン系樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。このような他の成分としては、例えば、ポリウレタン系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0062】
ポリウレタン系樹脂は、好ましくは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤といった劣化防止剤を含む。ポリウレタン系樹脂が劣化防止剤を含むことにより、被着体に貼着した後に加温状態で保存しても被着体に糊残りが生じにくいなど、糊残り防止性に優れるようになり得る。劣化防止剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。劣化防止剤として、特に好ましくは、酸化防止剤である。
【0063】
酸化防止剤としては、例えば、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤などが挙げられる。
【0064】
ラジカル連鎖禁止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0065】
過酸化物分解剤としては、例えば、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0066】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、高分子型フェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
【0067】
モノフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。
【0068】
ビスフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0069】
高分子型フェノール系酸化防止剤としては、例えば、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H、3H、5H)トリオン、トコフェノールなどが挙げられる。
【0070】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネートなどが挙げられる。
【0071】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイトなどが挙げられる。
【0072】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0073】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、ビス(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタンなどが挙げられる。
【0074】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’,-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタアクリロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0075】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレートなどが挙げられる。
【0076】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0077】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線安定剤などが挙げられる。
【0078】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートなどを挙げることができる。
【0079】
紫外線安定剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、[2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)]-n-ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-リン酸モノエチレート、ニッケル-ジブチルジチオカーバメート、ベンゾエートタイプのクエンチャー、ニッケル-ジブチルジチオカーバメートなどが挙げられる。
【0080】
ウレタン系粘着剤は脂肪酸エステルを含んでいてもよい。脂肪酸エステルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0081】
脂肪酸エステルの数平均分子量Mnは、好ましくは200~400であり、より好ましくは210~395であり、さらに好ましくは230~380であり、特に好ましくは240~360であり、最も好ましくは250~350である。脂肪酸エステルの数平均分子量Mnを上記範囲内に調整することによって、濡れ速度がより向上し得る。脂肪酸エステルの数平均分子量Mnが小さすぎると、添加部数が多くても濡れ速度が向上しないおそれがある。脂肪酸エステルの数平均分子量Mnが大きすぎると、乾燥時の粘着剤の硬化性が悪化し、濡れ特性に留まらずその他粘着特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0082】
脂肪酸エステルとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な脂肪酸エステルを採用し得る。このような脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンビスフェノールAラウリン酸エステル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、べへニン酸モノグリセライド、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸コレステリル、メタクリル酸ラウリル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、オレイン酸メチル、ステアリン酸メチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ペンタエリスリトールモノオレエート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸イソトリデシル、2-エチルヘキサン酸トリグリセライド、ラウリン酸ブチル、オレイン酸オクチルなどが挙げられる。
【0083】
ウレタン系粘着剤を調製する際の、脂肪酸エステルの配合割合は、例えば、ポリオール(A)に対して、好ましくは5重量%~50重量%であり、より好ましくは7重量%~45重量%であり、さらに好ましくは8重量%~40重量%であり、特に好ましくは9重量%~35重量%であり、最も好ましくは10重量%~30重量%である。
【0084】
ウレタン系粘着剤は、フルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含んでいてもよい。ウレタン系粘着剤がフルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含むことにより、帯電防止性に非常に優れたウレタン系粘着剤を提供することができる。イオン性液体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0085】
本発明において、イオン性液体とは、25℃で液状を呈する溶融塩(イオン性化合物)を意味する。
【0086】
イオン性液体としては、フルオロ有機アニオンを含むイオン性液体であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なイオン性液体を採用し得る。このようなイオン性液体としては、好ましくは、フルオロ有機アニオンとオニウムカチオンから構成されるイオン性液体である。イオン性液体として、フルオロ有機アニオンとオニウムカチオンから構成されるイオン性液体を採用することにより、帯電防止性にきわめて非常に優れたウレタン系粘着剤を提供することができる。
【0087】
イオン性液体を構成し得るオニウムカチオンとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なオニウムカチオンを採用し得る。このようなオニウムカチオンとしては、好ましくは、窒素含有オニウムカチオン、硫黄含有オニウムカチオン、リン含有オニウムカチオンから選ばれる少なくとも1種である。これらのオニウムカチオンを選択することにより、帯電防止性にきわめて非常に優れたウレタン系粘着剤を提供することができる。
【0088】
イオン性液体を構成し得るオニウムカチオンとしては、好ましくは、一般式(1)~(5)で表される構造を有するカチオンから選ばれる少なくとも1種である。
【化1】
【0089】
一般式(1)において、Raは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいても良く、RbおよびRcは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいても良い。ただし、窒素原子が2重結合を含む場合、Rcはない。
【0090】
一般式(2)において、Rdは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいても良く、Re、Rf、およびRgは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいても良い。
【0091】
一般式(3)において、Rhは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいても良く、Ri、Rj、およびRkは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいても良い。
【0092】
一般式(4)において、Zは、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子を表し、Rl、Rm、Rn、およびRoは、同一または異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいても良い。ただしZが硫黄原子の場合、Roはない。
【0093】
一般式(5)において、Xは、Li原子、Na原子、またはK原子を表す。
【0094】
一般式(1)で表されるカチオンとしては、例えば、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオンなどが挙げられる。
【0095】
一般式(1)で表されるカチオンの具体例としては、例えば、1-エチルピリジニウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-へキシルピリジニウムカチオン、1-エチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-へキシル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムカチオン、1,1-ジメチルピロリジニウムカチオン等のピリジニウムカチオン;1-エチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-へキシルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘプチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-へキシルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-へプチルピロリジニウムカチオン、1,1-ジプロピルピロリジニウムカチオン、1-プロピル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1,1-ジブチルピロリジニウムカチオン等のピロリジニウムカチオン;1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-エチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘキシルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-へプチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ヘキシルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-へプチルピペリジニウムカチオン、1-プロピル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1,1-ジメチルピペリジニウムカチオン、1,1-ジプロピルピペリジニウムカチオン、1,1-ジブチルピペリジニウムカチオン等のピペリジニウムカチオン;2-メチル-1-ピロリンカチオン;1-エチル-2-フェニルインドールカチオン;1,2-ジメチルインドールカチオン;1-エチルカルバゾールカチオン;などが挙げられる。
【0096】
これらの中でも、本発明の効果がより一層発現し得る点で、好ましくは、1-エチルピリジニウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-へキシルピリジニウムカチオン、1-エチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-へキシル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオン等のピリジニウムカチオン;1-エチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-へキシルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘプチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-へキシルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-へプチルピロリジニウムカチオン等のピロリジニウムカチオン;1-メチル-1-エチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘキシルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-へプチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ヘキシルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-へプチルピペリジニウムカチオン、1-プロピル-1-ブチルピペリジニウムカチオン等のピペリジニウムカチオン;などが挙げられ、より好ましくは、1-へキシルピリジニウムカチオン、1-エチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムカチオンである。
【0097】
一般式(2)で表されるカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0098】
一般式(2)で表されるカチオンの具体例としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムカチオン;1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン等のテトラヒドロピリミジニウムカチオン;1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオンなどのジヒドロピリミジニウムカチオン;などが挙げられる。
【0099】
これらの中でも、本発明の効果がより一層発現し得る点で、好ましくは、1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムカチオンであり、より好ましくは、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオンである。
【0100】
一般式(3)で表されるカチオンとしては、例えば、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。
【0101】
一般式(3)で表されるカチオンの具体例としては、例えば、1-メチルピラゾリウムカチオン、3-メチルピラゾリウムカチオン、1-エチル-2-メチルピラゾリニウムカチオン、1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン等のピラゾリウムカチオン;1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリニウムカチオン、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリニウムカチオン、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリニウムカチオン等のピラゾリニウムカチオン;などが挙げられる。
【0102】
一般式(4)で表されるカチオンとしては、例えば、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、上記アルキル基の一部がアルケニル基やアルコキシル基、さらにはエポキシ基に置換されたものなどが挙げられる。
【0103】
一般式(4)で表されるカチオンの具体例としては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラヘプチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、テトラオクチルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0104】
これらの中でも、本発明の効果がより一層発現し得る点で、好ましくは、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-プロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ノニルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N,N-ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-ブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-ブチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-ペンチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N,N-ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-エチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N,N-ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N-メチル-N-エチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオンなどが挙げられ、より好ましくは、トリメチルプロピルアンモニウムカチオンである。
【0105】
イオン性液体を構成し得るフルオロ有機アニオンとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なフルオロ有機アニオンを採用し得る。このようなフルオロ有機アニオンは、完全にフッ素化(パーフルオロ化)されていても良いし、部分的にフッ素化されていても良い。
【0106】
このようなフルオロ有機アニオンとしては、例えば、フッ素化されたアリールスルホネート、パーフルオロアルカンスルホネート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド、シアノパーフルオロアルカンスルホニルアミド、ビス(シアノ)パーフルオロアルカンスルホニルメチド、シアノ-ビス-(パーフルオロアルカンスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロアルカンスルホニル)メチド、トリフルオロアセテート、パーフルオロアルキレート、トリス(パーフルオロアルカンスルホニル)メチド、(パーフルオロアルカンスルホニル)トリフルオロアセトアミドなどが挙げられる。
【0107】
これらのフルオロ有機アニオンの中でも、より好ましくは、パーフルオロアルキルスルホネート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドであり、より具体的には、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである。
【0108】
イオン性液体の具体例としては、上記カチオン成分と上記アニオン成分の組み合わせから適宜選択して用いられ得る。このようなイオン性液体の具体例としては、例えば、1-ヘキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムペンタフルオロエタンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムヘプタフルオロプロパンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムノナフルオロブタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,1-ジメチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-エチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチル-1 -ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-へキシルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-へプチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-ペンチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-へキシルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-へプチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1-ジプロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-プロピル-1-ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1-ジブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ペンチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1-ジメチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-エチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチル-1-ブチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-ペンチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-へキシルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-へプチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-ブチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-ペンチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-へキシルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-へプチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1-ジプロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-プロピル-1-ブチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1-ジブチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,1-ジメチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド,1-メチル-1-エチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-ブチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-へキシルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-へプチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-プロピルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-ブチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-ペンチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-へキシルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-へプチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,1-ジプロピルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-プロピル-1-ブチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,1-ジブチルピロリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-プロピルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-ペンチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,1-ジメチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-エチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-ブチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-ペンチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-へキシルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-へプチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-プロピルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-ブチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-ペンチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-へキシルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-1-へプチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,1-ジプロピルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド,1-プロピル-1-ブチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,1-ジブチルピペリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘプタフルオロプロパンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムノナフルオロブタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムパーフルオロブタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N,N-ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-ブチル-N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-ペンチル-N-ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N,N-ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N,N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチ
ルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジプロピル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジプロピルーN,N-ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジブチル-N-メチル-N-へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-メチル-N-エチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド,1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルビス(ペンタフルオロエタンタンスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドなどが挙げられる。
【0109】
これらのイオン性液体の中でも、より好ましくは、1-ヘキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムペンタフルオロエタンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムヘプタフルオロプロパンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムノナフルオロブタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘプタフルオロプロパンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドである。
【0110】
イオン性液体は、市販のものを使用してもよいが、下記のようにして合成することも可能である。イオン性液体の合成方法としては、目的とするイオン性液体が得られれば特に限定されないが、一般的には、文献「イオン性液体-開発の最前線と未来-」((株)シーエムシー出版発行)に記載されているような、ハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法、および中和法などが用いられる。
【0111】
下記にハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法、および中和法について、窒素含有オニウム塩を例にその合成方法について示すが、その他の硫黄含有オニウム塩、リン含有オニウム塩など、その他のイオン性液体についても同様の手法により得ることができる。
【0112】
ハロゲン化物法は、反応式(1)~(3)に示すような反応によって行われる方法である。まず3級アミンとハロゲン化アルキルと反応させてハロゲン化物を得る(反応式(1)、ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が用いられる)。
【0113】
得られたハロゲン化物を目的とするイオン性液体のアニオン構造(A-)を有する酸(HA)あるいは塩(MA、Mはアンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウムなど目的とするアニオンと塩を形成するカチオン)と反応させて目的とするイオン性液体(R4NA)が得られる。
【0114】
【0115】
水酸化物法は、反応式(4)~(8)に示すような反応によって行われる方法である。まずハロゲン化物(R4NX)をイオン交換膜法電解(反応式(4))、OH型イオン交換樹脂法(反応式(5))または酸化銀(Ag2O)との反応(反応式(6))で水酸化物(R4NOH)を得る(ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が用いられる)。
【0116】
得られた水酸化物について上記ハロゲン化法と同様に反応式(7)~(8)の反応を用いることにより、目的とするイオン性液体(R4NA)が得られる。
【0117】
【0118】
酸エステル法は、反応式(9)~(11)に示すような反応によって行われる方法である。まず3級アミン(R3N)を酸エステルと反応させて酸エステル物を得る(反応式(9)、酸エステルとしては、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、炭酸などの無機酸のエステルやメタンスルホン酸、メチルホスホン酸、ギ酸などの有機酸のエステルなどが用いられる)。
【0119】
得られた酸エステル物について上記ハロゲン化法と同様に反応式(10)~(11)の反応を用いることにより、目的とするイオン性液体(R4NA)が得られる。また、酸エステルとしてメチルトリフルオロメタンスルホネート、メチルトリフルオロアセテートなどを用いることにより、直接イオン性液体を得ることもできる。
【0120】
【0121】
中和法は、反応式(12)に示すような反応によって行われる方法である。3級アミンとCF3COOH,CF3SO3H,(CF3SO2)2NH、(CF3SO2)3CH、(C2F5SO2)2NHなどの有機酸とを反応させることにより得ることができる。
【0122】
【0123】
上記の反応式(1)~(12)に記載のRは、水素または炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいても良い。
【0124】
イオン性液体の配合量としては、使用するポリマーとイオン性液体の相溶性により変わるため一概に定義することができないが、一般的には、ポリウレタン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001重量部~50重量部であり、より好ましくは0.01重量部~40重量部であり、さらに好ましくは0.01重量部~30重量部であり、特に好ましくは0.01重量部~20重量部であり、最も好ましくは0.01重量部~10重量部である。イオン性液体の配合量を上記範囲内に調整することにより、帯電防止性に非常に優れたウレタン系粘着剤を提供することができる。イオン性液体の上記配合量が0.01重量部未満であると十分な帯電防止特性が得られないおそれがある。イオン性液体の上記配合量が50重量部を超えると被着体への汚染が増加する傾向がある。
【0125】
ウレタン系粘着剤は、変性シリコーンオイルを含んでいても良い。ウレタン系粘着剤が変性シリコーンオイルを含むことにより、本発明の効果をより一層効果的に発現し得る。
【0126】
ウレタン系粘着剤が変性シリコーンオイルを含む場合、その含有割合は、ポリウレタン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001重量部~50重量部であり、より好ましくは0.01重量部~40重量部であり、さらに好ましくは0.01重量部~30重量部であり、特に好ましくは0.01重量部~20重量部であり、最も好ましくは0.01重量部~10重量部である。変性シリコーンオイルの含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の効果をより一層効果的に発現し得る。
【0127】
変性シリコーンオイルとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な変性シリコーンオイルを採用し得る。このような変性シリコーンオイルとしては、例えば、信越化学工業(株)から入手可能な変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0128】
変性シリコーンオイルとしては、好ましくは、ポリエーテル変性シリコーンオイルである。ポリエーテル変性シリコーンオイルを採用することにより、本発明の効果をより一層効果的に発現し得る。
【0129】
ポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、側鎖型のポリエーテル変性シリコーンオイル、両末端型のポリエーテル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果を十分に一層効果的に発現し得る点で、両末端型のポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましい。
【0130】
(ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂)
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂は、具体的には、好ましくは、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて得られるポリウレタン系樹脂である。
【0131】
ポリオール(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0132】
多官能イソシアネート化合物(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0133】
ポリオール(A)としては、例えば、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオールが挙げられる。ポリオール(A)としては、より好ましくは、ポリエーテルポリオールである。
【0134】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオール成分と酸成分とのエステル化反応によって得ることができる。
【0135】
ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。酸成分としては、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、ダイマー酸、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-エチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェエルジカルボン酸、これらの酸無水物などが挙げられる。
【0136】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、低分子ポリオール(プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなど)などを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0137】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε-カプロラクトン、σ-バレロラクトンなどの環状エステルモノマーの開環重合により得られるカプロラクトン系ポリエステルジオールなどが挙げられる。
【0138】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記ポリオール成分とホスゲンとを重縮合反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分と、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロビル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、エチルブチル炭酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジフェニル、炭酸ジベンジル等の炭酸ジエステル類とをエステル交換縮合させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分を2種以上併用して得られる共重合ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとカルボキシル基含有化合物とをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエーテル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとエステル化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとジカルボン酸化合物とを重縮合反応させて得られるポリエステル系ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとアルキレンオキサイドとを共重合させて得られる共重合ポリエーテル系ポリカーボネートポリオール;などが挙げられる。
【0139】
ひまし油系ポリオールとしては、例えば、ひまし油脂肪酸と上記ポリオール成分とを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ひまし油脂肪酸とポリプロピレングリコールとを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。
【0140】
ポリオール(A)の数平均分子量Mnは、好ましくは400~20000であり、より好ましくは500~17000であり、さらに好ましくは600~15000であり、特に好ましくは800~12000である。ポリオール(A)の数平均分子量Mnを上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0141】
ポリオール(A)としては、好ましくは、OH基を3個有する数平均分子量Mnが8000~20000のポリオール(A1)を含有する。ポリオール(A1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0142】
ポリオール(A)中のポリオール(A1)の含有割合は、好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは70重量%~100重量%であり、さらに好ましくは70重量%~90重量%である。ポリオール(A)中のポリオール(A1)の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0143】
ポリオール(A1)の数平均分子量Mnは、好ましくは8000~20000であり、より好ましくは8000~18000であり、さらに好ましくは8500~17000であり、さらに好ましくは9000~16000であり、特に好ましくは9500~15500であり、最も好ましくは10000~15000である。ポリオール(A1)の数平均分子量Mnを上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0144】
ポリオール(A)は、OH基を3個以上有する数平均分子量Mnが5000以下のポリオール(A2)を含有していてもよい。ポリオール(A2)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。ポリオール(A2)の数平均分子量Mnは、好ましくは500~5000であり、より好ましくは800~4500であり、さらに好ましくは1000~4000であり、特に好ましくは1000~3500であり、最も好ましくは1000~3000である。ポリオール(A2)の数平均分子量Mnが上記範囲内から外れると、特に、粘着力の経時上昇性が高くなるおそれがあり、優れたリワーク性を発現できなくなるおそれがある。ポリオール(A2)としては、好ましくは、OH基を3個有するポリオール(トリオール)、OH基を4個有するポリオール(テトラオール)、OH基を5個有するポリオール(ペンタオール)、OH基を6個有するポリオール(ヘキサオール)が挙げられる。
【0145】
ポリオール(A2)として、OH基を4個有するポリオール(テトラオール)、OH基を5個有するポリオール(ペンタオール)、OH基を6個有するポリオール(ヘキサオール)の少なくとも1種の合計量は、ポリオール(A)中の含有割合として、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは7重量%以下であり、さらに好ましくは6重量%以下であり、特に好ましくは5重量%以下である。ポリオール(A)中に、ポリオール(A2)として、OH基を4個有するポリオール(テトラオール)、OH基を5個有するポリオール(ペンタオール)、OH基を6個有するポリオール(ヘキサオール)の少なくとも1種を上記範囲に調整することにより、透明性に一層優れたウレタン系粘着剤を提供することができる。
【0146】
ポリオール(A)中のポリオール(A2)の含有割合は、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは0重量%~30重量%である。ポリオール(A)中のポリオール(A2)の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0147】
ポリオール(A2)は、その中におけるOH基を4個以上有する数平均分子量Mnが5000以下のポリオールの含有割合が、ポリオール(A)全体に対して、好ましくは10重量%未満であり、より好ましくは8重量%以下であり、さらに好ましくは7重量%以下であり、特に好ましくは6重量%以下であり、最も好ましくは5重量%以下である。ポリオール(A2)中におけるOH基を4個以上有する数平均分子量Mnが5000以下のポリオールの含有割合が、ポリオール(A)全体に対して、10重量%以上であると、ウレタン系粘着剤が白化しやすくなって透明性が低下するおそれがある。
【0148】
多官能イソシアネート化合物(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0149】
多官能イソシアネート化合物(B)としては、ウレタン化反応に用い得る任意の適切な多官能イソシアネート化合物を採用し得る。このような多官能イソシアネート化合物(B)としては、例えば、多官能脂肪族系イソシアネート化合物、多官能脂環族系イソシアネート、多官能芳香族系イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0150】
多官能脂肪族系イソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0151】
多官能脂環族系イソシアネート化合物としては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロへキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0152】
多官能芳香族系ジイソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’一ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0153】
多官能イソシアネート化合物(B)としては、上記のような各種多官能イソシアネート化合物のトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体なども挙げられる。また、これらを併用してもよい。
【0154】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)における、NCO基とOH基の当量比は、NCO基/OH基として、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは0.1~1.9であり、さらに好ましくは0.2~1.8であり、特に好ましくは0.3~1.7であり、最も好ましくは0.5~1.6である。NCO基/OH基の当量比を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0155】
多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合は、ポリオール(A)に対して、多官能イソシアネート化合物(B)が、好ましくは1.0重量%~20重量%であり、より好ましくは1.5重量%~19重量%であり、さらに好ましくは2.0重量%~18重量%であり、特に好ましくは2.3重量%~17重量%であり、最も好ましくは2.5重量%~16重量%である。多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0156】
ポリウレタン系樹脂は、具体的には、好ましくは、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて形成される。
【0157】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させてポリウレタン系樹脂を形成する方法としては、塊状重合や溶液重合などを用いたウレタン化反応方法など、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用し得る。
【0158】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させるために、好ましくは触媒を用いる。このような触媒としては、例えば、有機金属系化合物、3級アミン化合物などが挙げられる。
【0159】
有機金属系化合物としては、例えば、鉄系化合物、錫系化合物、チタン系化合物、ジルコニウム系化合物、鉛系化合物、コバルト系化合物、亜鉛系化合物などを挙げることができる。これらの中でも、反応速度と粘着剤層のポットライフの点で、鉄系化合物、錫系化合物が好ましい。
【0160】
鉄系化合物としては、例えば、鉄アセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸鉄などが挙げられる。
【0161】
錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルフィド、トリブチル錫メトキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキシド、トリブチル錫エトキシド、ジオクチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレート、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2-エチルヘキサン酸錫などが挙げられる。
【0162】
チタン系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0163】
ジルコニウム系化合物としては、例えば、ナフテン酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネートなどが挙げられる。
【0164】
鉛系化合物としては、例えば、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などが挙げられる。
【0165】
コバルト系化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸コバルト、安息香酸コバルトなどが挙げられる。
【0166】
亜鉛系化合物としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛などが挙げられる。
【0167】
3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシク口-(5,4,0)-ウンデセン-7などが挙げられる。
【0168】
触媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、触媒と架橋遅延剤などを併用してもよい。触媒の量は、ポリオール(A)に対して、好ましくは0.02重量%~0.10重量%であり、より好ましくは0.02重量%~0.08重量%であり、さらに好ましくは0.02重量%~0.06重量%であり、特に好ましくは0.02重量%~0.05重量%である。触媒の量を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0169】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含み得る。このようなその他の成分としては、例えば、ポリウレタン系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0170】
(ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂)
ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂は、いわゆる「ウレタンプレポリマー」を原料として用いて得られるポリウレタン系樹脂であれば、任意の適切なポリウレタン系樹脂を採用し得る。
【0171】
ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂は、例えば、ウレタンプレポリマー(C)としてのポリウレタンポリオールと多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂が挙げられる。ウレタンプレポリマー(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。多官能イソシアネート化合物(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0172】
ウレタンプレポリマー(C)としてのポリウレタンポリオールは、好ましくは、ポリエステルポリオール(a1)と、ポリエーテルポリオール(a2)とを、触媒存在下または無触媒下で、有機ポリイソシアネ-ト化合物(a3)と反応させてなるものである。
【0173】
ポリエステルポリオール(a1)としては、任意の適切なポリエステルポリオールを用い得る。このようなポリエステルポリオール(a1)として、例えば、酸成分とグリコール成分とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。酸成分としては、例えば、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸などが挙げられる。グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、ポリオール成分としてグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。ポリエステルポリオール(a1)としては、その他に、ポリカプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオールなども挙げられる。
【0174】
ポリエステルポリオール(a1)の分子量としては、低分子量から高分子量まで使用可能である。ポリエステルポリオール(a1)の分子量としては、数平均分子量が、好ましくは500~5000である。数平均分子量が500未満では、反応性が高くなり、ゲル化しやすくなるおそれがある。数平均分子量が5000を超えると、反応性が低くなり、さらにはポリウレタンポリオール自体の凝集力が小さくなるおそれがある。ポリエステルポリオール(a1)の使用量は、ポリウレタンポリオールを構成するポリオール中、好ましくは10~90モル%である。
【0175】
ポリエーテルポリオール(a2)としては、任意の適切なポリエーテルポリオールを用い得る。このようなポリエーテルポリオール(a2)としては、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオールを開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させることにより得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。このようなポリエーテルポリオール(a2)としては、具体的には、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の官能基数が2以上のポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0176】
ポリエーテルポリオール(a2)の分子量としては、低分子量から高分子量まで使用可能である。ポリエーテルポリオール(a2)の分子量としては、数平均分子量が、好ましくは1000~5000である。数平均分子量が1000未満では、反応性が高くなり、ゲル化しやすくなるおそれがある。数平均分子量が5000を超えると、反応性が低くなり、さらにはポリウレタンポリオール自体の凝集力が小さくなるおそれがある。ポリエーテルポリオール(a2)の使用量は、ポリウレタンポリオールを構成するポリオール中、好ましくは20モル%~80モル%である。
【0177】
ポリエーテルポリオール(a2)は、必要に応じてその一部を、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のグリコール類や、エチレンジアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミン類などに置き換えて併用することができる。
【0178】
ポリエーテルポリオール(a2)としては、2官能性のポリエーテルポリオールのみを用いてもよいし、数平均分子量が1000~5000であり、且つ、1分子中に少なくとも3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールを一部もしくは全部用いてもよい。ポリエーテルポリオール(a2)として、平均分子量が1000~5000であり、且つ、1分子中に少なくとも3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールを一部もしくは全部用いると、粘着力と再剥離性のバランスが良好となり得る。このようなポリエーテルポリオールにおいては、数平均分子量が1000未満では、反応性が高くなり、ゲル化しやすくなるおそれがある。また、このようなポリエーテルポリオールにおいては、数平均分子量が5000を超えると、反応性が低くなり、さらにはポリウレタンポリオール自体の凝集力が小さくなるおそれがある。このようなポリエーテルポリオールの数平均分子量は、より好ましくは2500~3500である。
【0179】
有機ポリイソシアネート化合物(a3)としては、任意の適切な有機ポリイソシアネート化合物を用い得る。このような有機ポリイソシアネート化合物(a3)としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0180】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。
【0181】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0182】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0183】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0184】
有機ポリイソシアネート化合物(a3)としては、トリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体なども併用することができる。
【0185】
ポリウレタンポリオールを得る際に用い得る触媒としては、任意の適切な触媒を用い得る。このような触媒としては、例えば、3級アミン系化合物、有機金属系化合物などが挙げられる。
【0186】
3級アミン系化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)などが挙げられる。
【0187】
有機金属系化合物としては、例えば、錫系化合物、非錫系化合物などが挙げられる。
【0188】
錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2-エチルヘキサン酸錫などが挙げられる。
【0189】
非錫系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系化合物;オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系化合物;2-エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系化合物;安息香酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系化合物;ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系化合物;ナフテン酸ジルコニウムなどのジルコニウム系化合物;などが挙げられる。
【0190】
ポリウレタンポリオールを得る際に触媒を使用する場合、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの2種類のポリオールが存在する系では、その反応性の相違のため、単独の触媒の系では、ゲル化したり反応溶液が濁ったりするという問題が生じやすい。そこで、ポリウレタンポリオールを得る際に2種類の触媒を用いることにより、反応速度、触媒の選択性等が制御しやすくなり、これらの問題を解決し得る。このような2種類の触媒の組み合わせとしては、例えば、3級アミン/有機金属系、錫系/非錫系、錫系/錫系が挙げられ、好ましくは錫系/錫系であり、より好ましくはジブチル錫ジラウレートと2-エチルヘキサン酸錫の組み合わせである。その配合比は、重量比で、2-エチルヘキサン酸錫/ジブチル錫ジラウレートが、好ましくは1未満であり、より好ましくは0.2~0.6である。配合比が1以上では、触媒活性のバランスによりゲル化しやすくなるおそれがある。
【0191】
ポリウレタンポリオールを得る際に触媒を使用する場合、触媒の使用量は、ポリエステルポリオール(a1)とポリエーテルポリオール(a2)と有機ポリイソシアネ-ト化合物(a3)の総量に対して、好ましくは0.01~1.0重量%である。
【0192】
ポリウレタンポリオールを得る際に触媒を使用する場合、反応温度は、好ましくは100℃未満であり、より好ましくは85℃~95℃である。100℃以上になると反応速度、架橋構造の制御が困難となるおそれがあり、所定の分子量を有するポリウレタンポリオールが得難くなるおそれがある。
【0193】
ポリウレタンポリオールを得る際には、触媒を用いなくても良い。その場合は、反応温度が、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上である。また、無触媒下でポリウレタンポリオールを得る際は、3時間以上反応させることが好ましい。
【0194】
ポリウレタンポリオールを得る方法としては、例えば、1)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、触媒、有機ポリイソシアネートを全量フラスコに仕込む方法、2)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、触媒をフラスコに仕込んで有機ポリイソシアネ-トを滴下する添加する方法が挙げられる。ポリウレタンポリオールを得る方法として、反応を制御する上では、2)の方法が好ましい。
【0195】
ポリウレタンポリオールを得る際には、任意の適切な溶剤を用い得る。このような溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトンなどが挙げられる。これらの溶剤の中でも、好ましくはトルエンである。
【0196】
多官能イソシアネート化合物(B)としては、前述したものを援用し得る。
【0197】
ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含み得る。このようなその他の成分としては、例えば、ポリウレタン系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0198】
ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂を製造する方法としては、いわゆる「ウレタンプレポリマー」を原料として用いてポリウレタン系樹脂を製造する方法であれば、任意の適切な製造方法を採用し得る。
【0199】
ウレタンプレポリマー(C)の数平均分子量Mnは、好ましくは1000~100000である。
【0200】
ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)における、NCO基とOH基の当量比は、NCO基/OH基として、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは0.1~1.9であり、さらに好ましくは0.2~1.8であり、特に好ましくは0.3~1.7であり、最も好ましくは0.5~1.6である。NCO基/OH基の当量比を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0201】
多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合は、ウレタンプレポリマー(C)に対して、多官能イソシアネート化合物(B)が、好ましくは1.0重量%~10重量%であり、より好ましくは1.5重量%~9.5重量%であり、さらに好ましくは2.0重量%~9重量%であり、特に好ましくは2.3重量%~8.5重量%であり、最も好ましくは2.5重量%~8重量%である。多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0202】
〔アクリル系粘着剤〕
アクリル系粘着剤はアクリル系樹脂を含む。
【0203】
アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂の含有割合は、好ましくは50重量%~100重量%であり、より好ましくは70重量%~100重量%であり、さらに好ましくは90重量%~100重量%であり、特に好ましくは95重量%~100重量%であり、最も好ましくは98重量%~100重量%である。アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0204】
アクリル系粘着剤は、アクリル系樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。このような他の成分としては、例えば、アクリル系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0205】
アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なアクリル系樹脂を採用し得る。アクリル系粘着剤は、好ましくは、(a)アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(b)OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸から選ばれる少なくとも1種、(c)多官能イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤から選ばれる少なくとも1種、を含有する組成物から形成されるアクリル系樹脂を含む。
【0206】
アクリル系樹脂を形成する組成物中の(a)成分の含有割合は、好ましくは85重量%~99.5重量%であり、より好ましくは90重量%~98.5重量%であり、さらに好ましくは92.5重量%~98重量%であり、特に好ましくは95重量%~97.5重量%である。アクリル系樹脂を形成する組成物中の(a)成分の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0207】
アクリル系樹脂を形成する組成物中の(b)成分の含有割合は、好ましくは0.5重量%~15重量%であり、より好ましくは1.5重量%~10重量%であり、さらに好ましくは2重量%~7.5重量%であり、特に好ましくは2.5重量%~5重量%である。アクリル系樹脂を形成する組成物中の(b)成分の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0208】
アクリル系樹脂を形成する組成物中の(c)成分の含有割合は、好ましくは1重量%~10重量%であり、より好ましくは1.5重量%~9重量%であり、さらに好ましくは2重量%~8重量%であり、特に好ましくは2.5重量%~7重量%である。アクリル系樹脂を形成する組成物中の(c)成分の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0209】
アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、iso-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、iso-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、iso-ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ一トが挙げられる。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0210】
アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは4~10であり、より好ましくは4~8である。アルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
【0211】
OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7-ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートが挙げられる。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0212】
多官能イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名「コロネートHL」日本ポリウレタン工業社製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名「コロネートHX」日本ポリウレタン工業社製)などのイソシアネート付加物などが挙げられる。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0213】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N´,N´-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(商品名「TETRAD-X」三菱瓦斯化学社製)、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン(商品名「TETRAD-C」三菱瓦斯化学社製)などが挙げられる。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0214】
アクリル系樹脂を形成する組成物は、さらに架橋触媒を含んでいてもよい。架橋触媒としては、例えば、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレートなどの金属系架橋触媒(特にスズ系架橋触媒)などが挙げられる。このような架橋触媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0215】
アクリル系樹脂を形成する組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他のモノマーが含まれていてもよい。このような他のモノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0216】
アクリル系樹脂を形成する組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含み得る。このようなその他の成分としては、例えば、アクリル系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0217】
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した値が、好ましくは10万以上であり、より好ましくは10万~300万であり、さらに好ましくは20万~200万であり、特に好ましくは30万~100万である。アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0218】
アクリル系樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法で製造し得る。このような方法としては、例えば、アクリル系樹脂を形成する組成物の重合反応が挙げられる。
【0219】
重合反応の具体的な重合方法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、光重合(活性エネルギー線重合)が挙げられる。特に、コストや生産性の観点から、溶液重合方法が好ましい。溶液重合方法としては、例えば、モノマー成分、重合開始剤などを、溶剤に溶解し、加熱して重合し、ベースポリマーを含むベースポリマー溶液を得る方法が挙げられる。
【0220】
溶剤としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0221】
溶液重合方法に用いられ得る重合開始剤としては、例えば、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤が挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、パーオキシカーボネート、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルなどが挙げられ、より具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカンが挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、2,2′-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2′-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1′-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2′-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、4,4′-アゾビス-4-シアノバレリアン酸、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2′-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2′-アゾビス(N,N′-ジメチレンイソブチルアミジン)ヒドロクロライド、2,2′-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレートが挙げられる。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0222】
重合開始剤の含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、好ましくは0.01重量部~5重量部であり、より好ましくは0.05重量部~3重量部である。
【0223】
溶液重合方法で、加熱して重合する際の加熱温度としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な加熱温度を設定し得る。このような加熱温度としては、好ましくは50~80℃である。溶液重合方法で、加熱して重合する際の加熱時間としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な加熱時間を設定し得る。このような加熱時間としては、好ましくは1時間~24時間である。
【0224】
〔ゴム系粘着剤〕
ゴム系粘着剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、特開2015-074771号公報などに記載の公知のゴム系粘着剤など、任意の適切なゴム系粘着剤を採用し得る。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0225】
〔シリコーン系粘着剤〕
シリコーン系粘着剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、特開2014-047280号公報などに記載の公知のシリコーン系粘着剤など、任意の適切なシリコーン系粘着剤を採用し得る。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0226】
≪剥離ライナー≫
剥離ライナーとしては、例えば、紙やプラスチックフィルム等の基材(ライナー基材)の表面がシリコーン処理された剥離ライナー、紙やプラスチックフィルム等の基材(ライナー基材)の表面がポリオレフィン系樹脂によりラミネートされた剥離ライナーなどが挙げられる。ライナー基材としてのプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。ライナー基材としてのプラスチックフィルムとしては、好ましくは、ポリエチレンフィルムである。
【0227】
≪粘着剤層(2)≫
粘着剤層(2)は、任意の適切な製造方法によって製造し得る。このような製造方法としては、例えば、粘着剤層(2)の形成材料である組成物を剥離ライナー上に塗布し、剥離ライナー上において粘着剤層(2)を形成する方法が挙げられる。このような塗布の方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法、ダイコーターなどによる押出しコートなどが挙げられる。
【0228】
粘着剤層(2)の厚みは、好ましくは1μm~500μmであり、より好ましくは2μm~400μmであり、さらに好ましくは5μm~350μmであり、特に好ましくは10μm~300μmである。粘着剤層(2)の厚みが上記範囲内に調整されることにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0229】
粘着剤層(2)中の粘着剤の含有割合は、好ましくは50重量%~100重量%であり、より好ましくは60重量%~100重量%であり、さらに好ましくは70重量%~100重量%であり、特に好ましくは80重量%~100重量%であり、最も好ましくは90重量%~100重量%である。粘着剤層(2)中の粘着剤の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0230】
粘着剤層(2)に含まれる粘着剤は、好ましくは、アクリル系粘着剤である。
【0231】
アクリル系粘着剤はアクリル系樹脂を含む。
【0232】
アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂の含有割合は、好ましくは50重量%~100重量%であり、より好ましくは70重量%~100重量%であり、さらに好ましくは90重量%~100重量%であり、特に好ましくは95重量%~100重量%であり、最も好ましくは98重量%~100重量%である。アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0233】
アクリル系粘着剤は、アクリル系樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有し得る。このような他の成分としては、例えば、アクリル系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0234】
アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なアクリル系樹脂を採用し得る。アクリル系粘着剤は、好ましくは、(a)アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(b)OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸から選ばれる少なくとも1種、(c)多官能イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤から選ばれる少なくとも1種、を含有する組成物から形成されるアクリル系樹脂を含む。
【0235】
アクリル系樹脂を形成する組成物中の(a)成分の含有割合は、好ましくは85重量%~99.9重量%であり、より好ましくは90重量%~99.8重量%であり、さらに好ましくは92.5重量%~99.7重量%であり、特に好ましくは95重量%~99.6重量%である。アクリル系樹脂を形成する組成物中の(a)成分の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0236】
アクリル系樹脂を形成する組成物中の(b)成分の含有割合は、好ましくは0.1重量%~15重量%であり、より好ましくは0.2重量%~10重量%であり、さらに好ましくは0.3重量%~7.5重量%であり、特に好ましくは0.4重量%~5重量%である。アクリル系樹脂を形成する組成物中の(b)成分の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0237】
アクリル系樹脂を形成する組成物中の(c)成分の含有割合は、好ましくは0.01重量%~1.5重量%であり、より好ましくは0.02重量%~1.0重量%であり、さらに好ましくは0.03重量%~0.8重量%であり、特に好ましくは0.05重量%~0.7重量%である。アクリル系樹脂を形成する組成物中の(c)成分の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0238】
アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、iso-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、iso-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、iso-ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ一トが挙げられる。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0239】
アルキルエステル部分のアルキル基の炭素数が4~12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは4~10であり、より好ましくは4~8である。アルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
【0240】
OH基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7-ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートが挙げられる。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0241】
多官能イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名「コロネートHL」日本ポリウレタン工業社製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名「コロネートHX」日本ポリウレタン工業社製)などのイソシアネート付加物などが挙げられる。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0242】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N´,N´-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(商品名「TETRAD-X」三菱瓦斯化学社製)、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン(商品名「TETRAD-C」三菱瓦斯化学社製)などが挙げられる。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0243】
アクリル系樹脂を形成する組成物は、さらに架橋触媒を含んでいてもよい。架橋触媒としては、例えば、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレートなどの金属系架橋触媒(特にスズ系架橋触媒)などが挙げられる。このような架橋触媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0244】
アクリル系樹脂を形成する組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他のモノマーが含まれていてもよい。このような他のモノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0245】
アクリル系樹脂を形成する組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含み得る。このようなその他の成分としては、例えば、アクリル系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0246】
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した値が、好ましくは100万以上であり、より好ましくは110万~250万であり、さらに好ましくは120万~230万であり、特に好ましくは130万~210万である。アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を上記範囲内に調整することにより、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、剥離ライナーを剥離しようとする際に、光学部材が該剥離ライナーと一緒に表面保護フィルムから剥離され難い、すなわち、光学部材と表面保護フィルムとの界面で剥離が起こり難いという効果をより発現し得る。
【0247】
アクリル系樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法で製造し得る。このような方法としては、例えば、アクリル系樹脂を形成する組成物の重合反応が挙げられる。
【0248】
重合反応の具体的な重合方法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、光重合(活性エネルギー線重合)が挙げられる。特に、コストや生産性の観点から、溶液重合方法が好ましい。溶液重合方法としては、例えば、モノマー成分、重合開始剤などを、溶剤に溶解し、加熱して重合し、ベースポリマーを含むベースポリマー溶液を得る方法が挙げられる。
【0249】
溶剤としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0250】
溶液重合方法に用いられ得る重合開始剤としては、例えば、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤が挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、パーオキシカーボネート、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルなどが挙げられ、より具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカンが挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、2,2′-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2′-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1′-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2′-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、4,4′-アゾビス-4-シアノバレリアン酸、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2′-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2′-アゾビス(N,N′-ジメチレンイソブチルアミジン)ヒドロクロライド、2,2′-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレートが挙げられる。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0251】
重合開始剤の含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、好ましくは0.01重量部~5重量部であり、より好ましくは0.05重量部~3重量部である。
【0252】
溶液重合方法で、加熱して重合する際の加熱温度としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な加熱温度を設定し得る。このような加熱温度としては、好ましくは50~80℃である。溶液重合方法で、加熱して重合する際の加熱時間としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な加熱時間を設定し得る。このような加熱時間としては、好ましくは1時間~24時間である。
【0253】
≪≪表面保護フィルム付光学部材の製造方法≫≫
本発明の表面保護フィルム付光学部材の製造方法は、光学部材と表面保護フィルムの積層体と、該光学部材の該表面保護フィルムと反対側に備えられた粘着剤層(2)と、該粘着剤層(2)の該光学部材と反対側に備えられた剥離ライナーと、をこの順に有する表面保護フィルム付光学部材であり、該表面保護フィルムは基材層と粘着剤層(1)とを含み、該表面保護フィルムの該粘着剤層(1)が光学部材側であるような構成とすることができる方法であれば、任意の適切な方法を採用し得る。
【0254】
本発明の表面保護フィルム付光学部材の製造方法は、例えば、表面保護フィルムの貼り合わせに際し、表面保護フィルムに張力を加えながら光学部材に貼り合わせることが好ましい。張力は、表面保護フィルムの構成(例えば、厚み、形成材料、弾性率、引張伸度等)に応じて、適宜、設定され得る。以上のような操作により製造し得る。
【実施例】
【0255】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。なお、「部」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量部」を意味し、「%」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量%」を意味する。
【0256】
〔製造例1〕:偏光板用粘着剤の製造
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、ブチルアクリレート(株式会社日本触媒製):99重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製):1重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業株式会社製):0.1重量部、酢酸エチル:100重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、重量平均分子量160万のアクリル系ポリマー溶液(50重量%)を調製した。得られたアクリル系ポリマー溶液(50重量%)を酢酸エチルで20重量%に希釈し、この溶液100重量部に、架橋剤としてコロネートL(日本ポリウレタン工業株式会社製):0.1重量部を加えて混合攪拌を行い、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0257】
〔製造例2〕:偏光板の製造
(偏光子の作製)
重合度2400、ケン化度99.9%、厚み30μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に浸漬し、膨潤させながら、ポリビニルアルコールフィルムの長さが元長の2.0倍となるように一軸延伸を行った。次いで、ヨウ素とヨウ化カリウムの混合物(重量比=0.5:8)の濃度が0.3重量%の水溶液(染色浴)に浸漬し、ポリビニルアルコールフィルム長さが元長の3.0倍となるように一軸延伸しながらフィルムを染色した。その後、ホウ酸5重量%、ヨウ化カリウム3重量%の水溶液(架橋浴1)中に浸漬しながら、ポリビニルアルコールフィルムの長さが元長の3.7倍となるように延伸した後、60℃のホウ酸4重量%、ヨウ化カリウム5重量%の水溶液(架橋浴2)中で、ポリビニルアルコールフィルムの長さが元長の6倍となるように延伸した。その後、ヨウ化カリウム3重量%の水溶液(ヨウ素含浸浴)でヨウ素イオン含浸処理を行った後、60℃のオーブンで4分間乾燥し、偏光子を得た。得られた偏光子の厚みは12μmであった。
(水系接着剤の調製)
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%、アセトアセチル化度:5モル%)を30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度4%に調整して水系接着剤を得た。
(偏光板の製造)
厚み25μmのトリアセチルセルロース(TAC)に、上記水系接着剤を乾燥後の接着剤層の厚みが80nmとなるように塗工し、接着剤層付偏光子保護フィルムを得た。次いで、23℃の温度条件下で、上記偏光子の両面に、上記接着剤層付偏光子保護フィルムをロール機で貼り合せ、その後、55℃で6分間乾燥し、偏光板を作製した。上記偏光子と上記接着剤層付偏光子保護フィルムの貼り合わせは、上記偏光子と上記接着剤層付偏光子保護フィルムの接着剤層とが接するように行った。このようにして偏光板を製造した。
【0258】
〔製造例3〕:剥離ライナーの製造
製造例1で製造した偏光板用粘着剤を、一方の面にシリコーン処理を施した厚み38μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面、及び、厚み50μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面に、それぞれ塗布し、乾燥後の厚みが20μmとなるように、乾燥温度150℃、乾燥時間2分の条件でキュアーして乾燥し、粘着剤層を形成した。このようにして、厚み38μmの剥離ライナーと粘着剤層との積層体、及び、厚み50μmの剥離ライナーと粘着剤層との積層体を製造した。
【0259】
〔製造例4〕:剥離ライナーと粘着剤層との積層体が付いた偏光板の製造
製造例2で得られた偏光板の片側に、製造例3で得られた剥離ライナーと粘着剤層との積層体の粘着剤層側を貼りあわせて、剥離ライナーと粘着剤層との積層体が付いた偏光板を作製した。剥離ライナーを除いた粘着剤層付偏光板の厚みは82μmであった。
【0260】
〔製造例5〕:表面保護フィルムに含まれる粘着剤層の形成材料である、ウレタン系粘着剤組成物(U1)の製造
ポリオール(A)として、OH基を3個有するポリオールであるプレミノールS3011(旭硝子株式会社製、Mn=10000)、OH基を3個有するポリオールであるサンニックスGP-3000(三洋化成株式会社製、Mn=3000)、OH基を3個有するポリオールであるサンニックスGP-1000(三洋化成株式会社製、Mn=1000)、多官能イソシアネート化合物(B)として多官能脂環族系イソシアネート化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン工業株式会社製)、触媒(日本化学産業株式会社製、商品名:ナーセム第2鉄)、劣化防止剤としてIrganox1010(BASF製)、脂肪酸エステルとしてミリスチン酸イソプロピル(花王株式会社製、商品名:エキセパールIPM、Mn=270)または2-エチルヘキサン酸セチル(日清オイリオグループ株式会社製、商品名:サラコス816T、Mn=368)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド(第一工業製薬株式会社製、商品名:AS110)、両末端型のポリエーテル変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、商品名:KF-6004)、希釈溶剤として酢酸エチルを加えて混合攪拌を行い、ウレタン系粘着剤組成物を製造した。配合部数は、表1中に記載した。
【0261】
〔製造例6〕:表面保護フィルムに含まれる粘着剤層の形成材料である、ウレタン系粘着剤組成物(U2)の製造
ウレタンプレポリマー(C)として、サイアバインSH-109(トーヨーケム株式会社製)、多官能イソシアネート化合物(B)として多官能脂環族系イソシアネート化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン工業株式会社製)、希釈溶剤としてトルエンを加えて混合攪拌を行い、ウレタン系粘着剤組成物(U2)を調整した。配合部数は、表1中に記載した。なおトルエンを除く各材料の配合部数は、いずれも固形分換算となり、トルエンの部数は粘着剤中に含まれるすべての溶剤量を指す。
【0262】
〔製造例7〕:表面保護フィルムに含まれる粘着剤層の形成材料である、アクリル系粘着剤組成物(Ac1)の製造
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、2-エチルヘキシルアクリレート(株式会社日本触媒製):100重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(東亜合成株式会社製):4重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業株式会社製):0.2重量部、酢酸エチル:156重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、重量平均分子量55万のアクリル系ポリマー(Ac1P)の溶液(40重量%)を調製した。得られた重量平均分子量55万のアクリル系ポリマー溶液(Ac1P)(40重量%)に対して、架橋剤としてコロネートHX(日本ポリウレタン工業株式会社製)、触媒(日本化学産業株式会社製、商品名:ナーセム第2鉄)、希釈溶剤として酢酸エチルを加えて混合攪拌を行い、アクリル系粘着剤組成物(Ac1)を製造した。配合部数は、表1中に記載した。なお、酢酸エチルを除く各材料の配合部数は、いずれも固形分換算となり、酢酸エチルの部数は粘着剤中に含まれるすべての溶剤量を指す。
【0263】
〔製造例8〕:表面保護フィルムに含まれる粘着剤層の形成材料である、アクリル系粘着剤組成物(Ac2)の製造
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、ブチルアクリレート(株式会社日本触媒製):95重量部、アクリル酸(東亜合成株式会社製):5重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業株式会社製):0.2重量部、酢酸エチル:186重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を63℃付近に保って10時間重合反応を行い、重量平均分子量50万のアクリル系ポリマー(Ac2P)の溶液(35重量%)を調製した。得られた重量平均分子量50万のアクリル系ポリマー(Ac2P)の溶液(35重量%)に対して、架橋剤としてテトラッドC(三菱瓦斯化学株式会社製)、触媒(日本化学産業株式会社製、商品名:ナーセム第2鉄)、希釈溶剤として酢酸エチルを加えて混合攪拌を行い、アクリル系粘着剤組成物(Ac2)を製造した。配合部数は、表1中に記載した。なお、酢酸エチルを除く各材料の配合部数は、いずれも固形分換算となり、酢酸エチルの部数は粘着剤中に含まれるすべての溶剤量を指す。
【0264】
〔製造例9〕:表面保護フィルムに含まれる粘着剤層の形成材料である、ゴム系粘着剤組成物(G)の製造
ハイブラー5127(株式会社クラレ製):100重量部に、希釈溶剤としてトルエンを加えて混合攪拌を行い、ゴム系粘着剤組成物(G)を製造した。配合部数は、表1中に記載した。
【0265】
〔製造例10〕:表面保護フィルムに含まれる粘着剤層の形成材料である、シリコーン系粘着剤組成物(S)の製造
付加反応型シリコーン系粘着剤(商品名:X-40-3306、信越化学工業株式会社製)、および、白金系触媒(商品名:CAT-PL-50T、信越化学工業株式会社製)を混合して、シリコーン系粘着剤組成物(S)を製造した。配合部数は、表1中に記載した。
【0266】
〔製造例11〕:セパレーター付表面保護フィルムの製造
得られた各種粘着剤組成物を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ社製)に、ファウンテンロールで乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布し、乾燥温度130℃、乾燥時間30秒の条件でキュアーして乾燥した。このようにして、基材上に粘着剤層を作製した。次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にシリコーン処理を施した厚み25μmのポリエステル樹脂からなる基材(セパレーター)のシリコーン処理面を貼合せて、セパレーター付表面保護フィルムを得た。
【0267】
<光学部材のきっかけ剥離力Pの測定>
製造例4によって製造した剥離ライナーと粘着剤層との積層体が付いた偏光板の、剥離ライナーと反対側の面に対して、表面保護フィルムを0.25MPaの圧力で貼りあわせて、表面保護フィルム付偏光板を作製した。作製した表面保護フィルム付偏光板を幅25mm、長さ80mmのサイズにカットした。なお、表面保護フィルム付偏光板のカットの方法としては、裁断機を用いたが、スーパーカッターによる切断を行ってもよい。23℃×50%RHの環境下に24時間放置した後、表面保護フィルム付偏光板の剥離ライナーを剥がし、幅25mm、長さ50mmのサイズにカットした片面粘着テープ(ニチバン社製、商品名「セロテープ(登録商標)」)を、端面が1mm出るように表面保護フィルム付偏光板の粘着剤層側に圧着して、10秒間放置した。その後、片面粘着テープを万能引張試験機(ミネベア株式会社製、製品名:TCM-1kNB)を用いて、剥離速度300mm/minおよび6.0m/min、剥離角度180°で片面粘着テープをピールした際に、剥離初めにかかる最大応力をきっかけ剥離力(N/25mm)とした。測定は23℃×50%RHの環境下で行った。
【0268】
<剥離ライナーのきっかけ剥離力Qの測定>
製造例4によって製造した剥離ライナーと粘着剤層との積層体が付いた偏光板の、剥離ライナーと反対側の面に対して、表面保護フィルムを0.25MPaの圧力で貼りあわせて、表面保護フィルム付偏光板を作製した。作製した表面保護フィルム付偏光板を幅25mm、長さ80mmのサイズにカットした。なお、表面保護フィルム付偏光板のカットの方法としては、裁断機を用いたが、スーパーカッターによる切断を行ってもよい。23℃×50%RHの環境下に24時間放置した後、幅25mm、長さ50mmのサイズにカットした片面粘着テープ(ニチバン社製、商品名「セロテープ(登録商標)」)を、端面が1mm出るように表面保護フィルム付偏光板の剥離ライナー側に圧着して、10秒間放置した。その後、片面粘着テープを万能引張試験機(ミネベア株式会社製、製品名:TCM-1kNB)を用いて、剥離速度300mm/minおよび6.0m/min、剥離角度180°で片面粘着テープをピールした際に、剥離初めにかかる最大応力をきっかけ剥離力(N/25mm)とした。測定は23℃×50%RHの環境下で行った。
剥離ライナーの厚みが38μm、剥離速度が300mm/分の場合、きっかけ剥離力Q=0.40N/25mmであった。
剥離ライナーの厚みが38μm、剥離速度が6m/分の場合、きっかけ剥離力Q=1.23N/25mmであった。
剥離ライナーの厚みが50μm、剥離速度が300mm/分の場合、きっかけ剥離力Q=1.99N/25mmであった。
剥離ライナーの厚みが50μm、剥離速度が6m/分の場合、きっかけ剥離力Q=2.60N/25mmであった。
【0269】
<表面保護フィルムの初期粘着力の測定>
製造例11で得られたセパレーター付表面保護フィルムを幅25mm、長さ80mmのサイズにカットし、セパレーターを剥離した。その後、製造例4で得られた剥離ライナーと粘着剤層との積層体が付いた偏光板を幅70mm、長さ100mmにカットし、その剥離ライナーと反対側の面に、表面保護フィルムの粘着剤層面を0.25MPaの圧力でラミネートし、評価サンプルを作製した。ラミネート後、23℃×50%RHの環境下に30分間放置し、万能引張試験機(ミネベア株式会社製、製品名:TCM-1kNB)を用いて、剥離速度300mm/min、剥離角度180度で、表面保護フィルムを剥離した際に、値が安定してくる領域での粘着力を測定した。測定は23℃×50%RHの環境下で行った。
【0270】
<表面保護フィルムの濡れ速度の測定>
製造例11で得られたセパレーター付表面保護フィルムを幅2.5cm、長さ10cmに切断し、評価サンプルとした。被着体として製造例4で得られた剥離ライナーと粘着剤層との積層体が付いた偏光板を用いた。被着体の剥離ライナーと反対側の面に、セパレーターを剥がした評価サンプルの粘着剤層側の幅側の端部の一方を固定し、固定していない幅側の端部を持ち上げ、手を放してから100mm濡れ広がるまでの時間を測定した。 (単位:秒/2.5cm×10cm)。かかった時間から濡れ速度(単位:cm2/秒)を算出した。
【0271】
<重量平均分子量の測定>
製造例7、8で得られたアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定は、GPC装置(東ソー株式会社製、HLC-8220GPC)を用いて行った。測定条件は下記の通りである。なお、重量平均分子量はポリスチレン換算値にて求めた。
サンプル濃度:0.2重量%(THF溶液)
サンプル注入量:10μl溶離液
THF流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
サンプルカラム:TSKguardcolumn SuperHZ-H(1本)+TSKgel SuperHZM-H(2本)
リファレンスカラム:TSKgel SuperH-RC(1本)
検出器:示差屈折計(RI)
【0272】
〔実施例1~15、比較例1~3〕
表1に示す配合部数に沿って製造例11で得られたセパレーター付表面保護フィルムを幅25mm、長さ80mmのサイズにカットし、セパレーターを剥離した。その後、製造例4で得られた剥離ライナーと粘着剤層との積層体が付いた偏光板を幅70mm、長さ100mmにカットし、その剥離ライナーと反対側の面に、表面保護フィルムの粘着剤層面を0.25MPaの圧力でラミネートし、剥離ライナー/粘着剤層/光学部材/表面保護フィルム(粘着剤層/基材層)の構成の表面保護フィルム付光学部材(1)~(15)、(C1)~(C3)を得た。
結果を表1に示した。
【0273】
【産業上の利用可能性】
【0274】
本発明の表面保護フィルム付光学部材は、任意の適切な用途に用い得る。好ましくは、本発明の表面保護フィルム付光学部材は、光学部材や電子部材の分野において好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0275】
10 剥離ライナー
20 粘着剤層(2)
30 光学部材
40 粘着剤層(1)
50 基材層
100 表面保護フィルム
1000 表面保護フィルム付光学部材