(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20240813BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20240813BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240813BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20240813BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240813BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20240813BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240813BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240813BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240813BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20240813BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
C08G73/10
B05D3/02 Z
B05D7/24 302X
B05D3/12 E
B05D1/26 Z
B05D7/24 302Y
B05D5/00 A
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/10
H05B33/22 Z
C08J5/18 CFG
(21)【出願番号】P 2022128316
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2019566503の分割
【原出願日】2019-01-17
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2018005753
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018026055
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】米谷 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】篠原 直志
(72)【発明者】
【氏名】小川 慶太
(72)【発明者】
【氏名】金田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敏章
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/147958(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/047451(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/148441(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/154141(WO,A1)
【文献】特開2001-270944(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046019(WO,A1)
【文献】特開2015-072365(JP,A)
【文献】特開2015-202675(JP,A)
【文献】特開2014-074772(JP,A)
【文献】特開2015-052770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00-73/26
B05D 1/00-7/26
C08J 5/12-5/22
H10K 50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
{式中、R
1は、複数ある場合それぞれ独立に2価の有機基を示し、R
2は、複数ある場合それぞれ独立に4価の有機基を示し、nは正の整数である。}で表される構造を有するポリイミド前駆体と、溶媒と、を含む樹脂組成物であって、
前記式(1)中のR
1の少なくとも1つが、下記式(2):
【化2】
で表される基であり、
前記式(1)中のR
1
のうち前記式(2)で表される基の比率が50モル%以上であり、
前記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が110,000~250,000であり、
前記樹脂組成物の固形分含有量が10~25質量%である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物の粘度を温調機付粘度計で23℃にて測定したときの、下記式で表されるせん断速度依存性(TI)が、0.9~1.1である、請求項1に記載の樹脂組成物。
TI=ηa/ηb
{式中、ηa(mPa・s)は樹脂組成物の測定回転速度a(rpm)における粘度であり、ηb(mPa・s)は樹脂組成物の測定回転速度b(rpm)における粘度であり、ただしa*10=bである。}
【請求項3】
前記樹脂組成物は、スリットコート用の樹脂組成物である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリイミド前駆体が、下記式(3):
【化3】
{式中、R
3及びR
4の各々は、複数ある場合それぞれ独立に、炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6~10の1価の芳香族基を示し、そしてmは、1~200の整数である。}で表される構造を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリイミド前駆体が、ピロメリット酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの共重合体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリイミド前駆体が、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの共重合体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリイミド前駆体が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの共重合体であり、
前記テトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、前記ピロメリット酸二無水物と前記3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とのモル比20:80~80:20で含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が160,000~220,000である、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂組成物は、フレキシブルデバイス用の樹脂組成物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記樹脂組成物は、フレキシブルディスプレイ用の樹脂組成物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物であるポリイミドフィルム。
【請求項12】
膜厚10μm換算での厚み方向レタデーション(Rth)が300以下であり、及び/又は、膜厚10μm換算での黄色度(YI)が20以下である、請求項
11に記載のポリイミドフィルム。
【請求項13】
請求項
11又は
12に記載のポリイミドフィルムを含むフレキシブルデバイス。
【請求項14】
請求項
11又は
12に記載のポリイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイ。
【請求項15】
前記ポリイミドフィルムは、前記フレキシブルディスプレイを外部から観察した際に視認される箇所に配置されている、請求項
14に記載のフレキシブルディスプレイ。
【請求項16】
支持体の表面上に、請求項1~
10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記樹脂組成物を加熱してポリイミドフィルムを形成する膜形成工程と、
前記ポリイミドフィルムを前記支持体から剥離する剥離工程と、を含む、ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項17】
前記塗布工程は、前記樹脂組成物をスリットコートすることを含む、請求項
16に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項18】
前記剥離工程に先立って、前記支持体側から前記ポリイミドフィルムにレ-ザ-を照射する照射工程を更に含む、請求項
16又は
17に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項19】
支持体の表面上に、請求項1~
10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記樹脂組成物を加熱してポリイミドフィルムを形成する膜形成工程と、
前記ポリイミドフィルム上に素子を形成する素子形成工程と、
前記素子が形成された前記ポリイミドフィルムを前記支持体から剥離する剥離工程と、を含むディスプレイの製造方法。
【請求項20】
前記塗布工程は、前記樹脂組成物をスリットコートすることを含む、請求項
19に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項21】
前記ディスプレイを外部から観察した際に視認される箇所に前記ポリイミドフィルムを配置する、請求項
19又は
20に記載のディスプレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物、及びポリイミドフィルムに関する。本発明はさらに、フレキシブルデバイス(例えばフレキシブルディスプレイ)及び積層体並びにこれらの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、不溶、不融の超耐熱性樹脂であり、耐熱特性(例えば耐熱酸化性)、耐放射線性、耐低温性、耐薬品性等に優れた特性を有している。このため、ポリイミド樹脂は、電子材料を含む広範囲な分野で用いられている。電子材料分野におけるポリイミド樹脂の適用例としては、例えば絶縁コーティング材、絶縁膜、半導体、薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT-LCD)の電極保護膜等を挙げることができる。最近は、ディスプレイ材料の分野において従来使用されていたガラス基板に代わり、その軽さ、柔軟性を利用したフレキシブル基板の採用が検討されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ビス(ジアミノジフェニル)スルホン(以下、DASともいう)から重合され、シロキサン単位を有する樹脂前駆体(重量平均分子量3万~9万)が記載され、当該前駆体を硬化して得られるポリイミドは、ガラス等の支持体との間に発生する残留応力が低く、耐薬品性に優れ、キュア工程時の酸素濃度による黄色度(YI)値及び全光線透過率への影響が小さいことが記載されている。また、特許文献2には、特定の吸光度のポリイミド前駆体と、特定の吸光度のアルコキシシラン化合物と、を含有することを特徴とする樹脂組成物が記載され、当該樹脂組成物を硬化して得られる樹脂が、支持体との十分な接着性と、レーザー剥離等による剥離性を両立することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/148441号
【文献】国際公開第2016/167296号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレキシブル基板に透明ポリイミド樹脂を適用しようとする場合、ガラス等の基板上に、ポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、次いでこれを加熱乾燥し、さらにポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド膜とし、必要に応じて該膜上にデバイスを形成した後、該膜を支持体であるガラス基板等から剥離して目的物を得る。
【0006】
近年、フレキシブル基板の用途であるディスプレイ等の大型化に伴い、ポリイミド前駆体を含む組成物をガラス等の基板に塗布する場合、スリットコーターを用いる場合がある。スリットコーターで組成物を塗布して塗膜を形成する場合、塗膜に対する影響を与えるパラメ-タとして、コーターギャップ(ガラス基板とスリットノズルの距離を規定する設定値)があるが、コーターギャップが小さいと、ガラス基板の平坦性が悪い場合にノズルが基板に接触し、スリットノズルが破損する可能性がある。特に近年のディスプレイ等の大型化等に伴い、このコーターギャップを十分大きくすることが必要となってきた。
また、ポリイミド膜をフレキシブルディスプレイ等の画面の材料として用いる場合は、可視光の波長が約380nmから約700nmであることから、良好な光学性能を得るためには、特に高い膜厚均一性が求められる。
【0007】
本発明者らが上記特許文献1及び2に記載されたものと同様の分子量及び骨格を有するポリイミド前駆体を用いて、スリットコートのコーティング評価を行ったところ、上記特性が不十分であることを見出した。従って本発明の一態様は、スリットコートのコーティング特性に優れるとともに、フレキシブル基板等の用途に求められる、機械特性及び光学特性にも優れる、ポリイミド前駆体含有樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するポリイミド前駆体を用いることが、スリットコートにおける良好なコーティング特性、並びに良好な機械特性及び光学特性の実現をもたらすことを見出した。
すなわち、本発明は下記の態様を包含する。
[1] 下記式(1):
【化1】
{式中、R
1は、複数ある場合それぞれ独立に2価の有機基を示し、R
2は、複数ある場合それぞれ独立に4価の有機基を示し、nは正の整数である。}で表される構造を有するポリイミド前駆体と、溶媒と、を含む樹脂組成物であって、
前記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が110,000~250,000であり、
前記樹脂組成物の固形分含有量が10~25質量%である、樹脂組成物。
[2] 前記樹脂組成物の粘度を温調機付粘度計で23℃にて測定したときの、下記式で表されるせん断速度依存性(TI)が、0.9~1.1である、上記態様1に記載の樹脂組成物。
TI=ηa/ηb
{式中、ηa(mPa・s)は樹脂組成物の測定回転速度a(rpm)における粘度であり、ηb(mPa・s)は樹脂組成物の測定回転速度b(rpm)における粘度であり、ただしa*10=bである。}
[3] 前記樹脂組成物は、スリットコート用の樹脂組成物である、上記態様1又は2に記載の樹脂組成物。
[4] 前記式(1)中のR
1の少なくとも1つが、下記式(2):
【化2】
で表される基である、上記態様1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[5] 前記ポリイミド前駆体が、下記式(3):
【化3】
{式中、R
3及びR
4の各々は、複数ある場合それぞれ独立に、炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6~10の1価の芳香族基を示し、そしてmは、1~200の整数である。}で表される構造を有する、上記態様1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[6] 前記ポリイミド前駆体が、ピロメリット酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの共重合体である、上記態様1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 前記ポリイミド前駆体が、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの共重合体である、上記態様1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 前記ポリイミド前駆体が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの共重合体であり、 前記テトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、前記ピロメリット酸二無水物と前記3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とのモル比20:80~80:20で含む、上記態様1~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] 前記ポリイミド前駆体が、テトラカルボン酸二無水物と、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンからなる群から選択される1つ以上のジアミンとの共重合体である、上記態様1~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] 前記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が160,000~220,000である、上記態様1~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] 前記樹脂組成物は、フレキシブルデバイス用の樹脂組成物である、上記態様1~10のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12] 前記樹脂組成物は、フレキシブルディスプレイ用の樹脂組成物である、上記態様1~11のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13] 上記態様1~12のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物であるポリイミドフィルム。
[14] 膜厚10μm換算での厚み方向レタデーション(Rth)が300以下であり、及び/又は、膜厚10μm換算での黄色度(YI)が20以下である、上記態様13に記載のポリイミドフィルム。
[15] 上記態様13又は14に記載のポリイミドフィルムを含むフレキシブルデバイス。
[16] 上記態様13又は14に記載のポリイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイ。
[17] 前記ポリイミドフィルムは、前記フレキシブルディスプレイを外部から観察した際に視認される箇所に配置されている、上記態様16に記載のフレキシブルディスプレイ。
[18] 支持体の表面上に、上記態様1~12のいずれかに記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記樹脂組成物を加熱してポリイミドフィルムを形成する膜形成工程と、
前記ポリイミドフィルムを前記支持体から剥離する剥離工程と、を含む、ポリイミドフィルムの製造方法。
[19] 前記塗布工程は、前記樹脂組成物をスリットコートすることを含む、上記態様18に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
[20] 前記式(1)中のR
1の少なくとも1つが、下記式(2):
【化4】
で表される基である、上記態様19に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
[21] 前記ポリイミド前駆体が、下記式(3):
【化5】
{式中、R
3及びR
4の各々は、複数ある場合それぞれ独立に、炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6~10の1価の芳香族基を示し、そしてmは、1~200の整数である。}で表される構造を有する、上記態様19又は20に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
[22] 前記剥離工程に先立って、前記支持体側から前記ポリイミドフィルムにレ-ザ-を照射する照射工程を更に含む、上記態様18~21のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
[23] 支持体の表面上に、上記態様1~12のいずれかに記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記樹脂組成物を加熱してポリイミドフィルムを形成する膜形成工程と、
前記ポリイミドフィルム上に素子を形成する素子形成工程と、
前記素子が形成された前記ポリイミドフィルムを前記支持体から剥離する剥離工程と、を含むディスプレイの製造方法。
[24] 前記塗布工程は、前記樹脂組成物をスリットコートすることを含む、上記態様23に記載のディスプレイの製造方法。
[25] 前記ディスプレイを外部から観察した際に視認される箇所に前記ポリイミドフィルムを配置する、上記態様23又は24に記載のディスプレイの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、スリットコートにおけるコーティング特性に優れるとともに、フレキシブル基板等の用途に求められる機械特性及び光学特性にも優れるポリイミド前駆体含有樹脂組成物を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一態様で提供されるディスプレイの例としてのトップエミッション型のフレキシブル有機ELディスプレイのポリイミド基板より上部の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示の実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、本開示で記載する特性値は、特記がない限り、[実施例]の項において記載する方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される値であることを意図する。
【0012】
本実施の形態は、
下記式(1):
【化6】
{式中、R
1は、複数ある場合それぞれ独立に2価の有機基を示し、R
2は、複数ある場合それぞれ独立に4価の有機基を示し、nは正の整数である。}
で表される構造を有するポリイミド前駆体を含む樹脂組成物を提供する。一態様において、当該樹脂組成物は、当該ポリイミド前駆体と溶媒とを含む。
【0013】
好ましい態様においては、式(1)中のR
1の少なくとも1つが、下記式(2):
【化7】
で表される基である。
【0014】
式(1)中のR1の少なくとも1つが式(2)で表される構造であることは、ポリイミド前駆体の硬化物であるポリイミドの良好な光学特性(特にRth)及び耐熱性に寄与する。一態様において、式(1)中のn個のR1の全部が式(2)で表される構造を有する。また、一態様において、式(1)中のn個のR1のうち式(2)で表される構造の割合は、0%以上、又は10%以上、又は20%以上であってよく、100%以下、又は90%以下であってよい。
【0015】
本実施の形態はまた、上記式(1)で表される構造を有するポリイミド前駆体を含む樹脂組成物であって、当該樹脂組成物の硬化物であるポリイミドが、厚み方向レタデーション(Rth)300以下及び/又は黄色度(YI)20以下を有する、樹脂組成物も提供する。上記の低い厚み方向レタデーション(Rth)はポリイミドが低複屈折性であることを表しており、また上記の低い黄色度(YI)は、ポリイミドが良好な色調を有する(すなわちほぼ無色であること)であることを表している。
【0016】
本実施の形態の樹脂組成物は、優れたスリットコート性能を有するとともに、優れた機械特性及び光学特性を有するポリイミドフィルムを与えることから、好ましくはフレキシブルデバイス用(例えばフレキシブル基板用)、特に好ましくはフレキシブルディスプレイ用として有用である。
【0017】
(ポリイミド前駆体の重量平均分子量)
一態様において、ポリイミド前駆体の重量平均分子量は110,000以上250,000以下である。本発明者は、本実施の形態の樹脂組成物をスリットコートに用いる際、ポリイミド前駆体の重量平均分子量がコーティング性能に大きく影響することを見出し、鋭意検討を重ねた。その結果、ポリイミド前駆体の重量平均分子量が110,000以上である場合は、樹脂組成物の固形分含有量を調整して良好なスリットコートを実現でき、一方、重量平均分子量が250,000以下であるポリイミド前駆体は製造容易であることを見出した。すなわち、本実施の形態において、ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、コーティング性能の観点で110,000以上であり、製造容易性の点で250,000以下である。
【0018】
ポリイミド前駆体の望ましい重量平均分子量は、所望される用途、ポリイミド前駆体の種類、樹脂組成物の固形分含有量、樹脂組成物が含み得る溶媒の種類等によって異なってよい。
【0019】
例えば、重量平均分子量の下限の好ましい例は、111,000、112,000、113,000、114,000、115,000、116,000、117,000、118,000、119,000、120,000、121,000、122,000、123,000、124,000、125,000、126,000、127,000、128,000、129,000、130,000、131,000、132,000、133,000、134,000、135,000、136,000、137,000、138,000、139,000、140,000、141,000、142,000、143,000、144,000、145,000、146,000、147,000、148,000、149,000、150,000、151,000、152,000、153,000、154,000、155,000、156,000、157,000、158,000、159,000、160,000、161,000、162,000、163,000、164,000、165,000、166,000、167,000、168,000、169,000、170,000、171,000、172,000、173,000、174,000、175,000、176,000、177,000、178,000、179,000、180,000、181,000、182,000、183,000、184,000、185,000、186,000、187,000、188,000、189,000、190,000、191,000、192,000、193,000、194,000、195,000、196,000、197,000、198,000、199,000、200,000、201,000、202,000、203,000、204,000、205,000、206,000、207,000、208,000、209,000、210,000、211,000、212,000、213,000、214,000、215,000、216,000、217,000、218,000、219,000、220,000、221,000、222,000、223,000、224,000、225,000、226,000、227,000、228,000、229,000、230,000、231,000、232,000、233,000、234,000、235,000、236,000、237,000、238,000、239,000、240,000、241,000、242,000、243,000、244,000、245,000、246,000、247,000、248,000、又は249,000である。
【0020】
また、重量平均分子量の上限の好ましい例は、249,000、248,000、247,000、246,000、245,000、244,000、243,000、242,000、241,000、240,000、239,000、238,000、237,000、236,000、235,000、234,000、233,000、232,000、231,000、230,000、229,000、228,000、227,000、226,000、225,000、224,000、223,000、222,000、221,000、220,000、219,000、218,000、217,000、216,000、215,000、214,000、213,000、212,000、211,000、210,000、209,000、208,000、207,000、206,000、205,000、204,000、203,000、202,000、201,000、200,000、199,000、198,000、197,000、196,000、195,000、194,000、193,000、192,000、191,000、190,000、189,000、188,000、187,000、186,000、185,000、184,000、183,000、182,000、181,000、180,000、179,000、178,000、177,000、176,000、175,000、174,000、173,000、172,000、171,000、170,000、169,000、168,000、167,000、166,000、165,000、164,000、163,000、162,000、161,000、160,000、159,000、158,000、157,000、156,000、155,000、154,000、153,000、152,000、151,000、150,000、149,000、148,000、147,000、146,000、145,000、144,000、143,000、142,000、141,000、140,000、139,000、138,000、137,000、136,000、135,000、134,000、133,000、132,000、131,000、130,000、129,000、128,000、127,000、126,000、125,000、124,000、123,000、122,000、121,000、120,000、119,000、118,000、117,000、116,000、115,000、114,000、113,000、112,000、又は111,000である。
【0021】
例えば、ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物の硬化物(例えばポリイミドフィルム(本開示でキュア膜ともいう。))の伸度及び黄色度(YI)の観点では、重量平均分子量120,000以上が好ましく、130,000以上がさらに好ましく、160,000以上が特に好ましい。また、当該硬化物(例えばポリイミドフィルム)のヘイズの観点では、220,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましい。好ましい一態様において、ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、160,000以上220,000以下である。
【0022】
(ポリイミドフィルムの厚み方向レタデーション(Rth))
ポリイミド前駆体の硬化物(すなわちイミド化物)としてポリイミドフィルムを作製したとき、当該ポリイミドフィルムの膜厚10μmでの厚み方向レタデーション(Rth)は、ポリイミド前駆体のモノマー骨格によって異なるが、同一のモノマー骨格であれば、ポリイミド前駆体の重量平均分子量が大きいほどRthが小さい傾向がある。ポリマー骨格としては、DASを用いるとRthが下さくなる傾向にある。ポリイミド前駆体の重量平均分子量とポリイミドフィルムのRthとの上記関係のメカニズムは不明であるが、ポリイミドフィルムの分子の配向、及び結晶度が関係すると考えられる。
【0023】
特定の態様において、Rthは、低複屈折性のポリイミドフィルムを得る観点から、300nm以下である。特にポリイミドフィルムを表示材料として用いる場合、Rthとしては、200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、80nm以下がより好ましく、50nm以下がより好ましく、30nmが特に好ましい。Rthが300nm以下であれば、像画像を正しく捉えることが容易であり、特に、Rthが200nm以下であれば、画像の色再現性が良好である。
【0024】
一態様において、ポリイミドフィルムは、膜厚10μm換算での厚み方向レタデーション(Rth)が300nm以下であり、及び/又は、膜厚10μm換算での黄色度(YI)が20以下である。一態様において、ポリイミドフィルムは、膜厚10μm換算での厚み方向レタデーション(Rth)が300nm以下であり、及び、膜厚10μm換算での黄色度(YI)が20以下である。
【0025】
(ポリイミドフィルムの黄色度(YI))
特定の態様において、ポリイミド前駆体の硬化物(すなわちイミド化物)としてポリイミドフィルムを作製したとき、当該ポリイミドフィルムの膜厚10μmにおける黄色度(YI)は、良好な光学特性を得る観点で、20以下であり、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下、更に好ましくは13以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは7以下である。当該ポリイミドフィルムの膜厚10μmでのYIは、ポリイミド前駆体のモノマー骨格によって異なるが、同一のモノマー骨格であれば、ポリイミド前駆体の重量平均分子量が大きいほどYIが小さい傾向がある。
【0026】
(ポリイミドフィルムのその他の好ましい特性)
ポリイミド前駆体の硬化物(すなわちイミド化物)としてポリイミドフィルムをガラス基板のような無機支持基板上に作製したとき、当該ポリイミドフィルムの膜厚10μmにおけるガラス基板との間に発生する残留応力は、例えばディスプレイ用途における製造上、ポリイミド付きのガラス基板の反り量低減の観点から、好ましくは25MPa以下、より好ましくは23MPa以下、更に好ましくは20MPa以下、更に好ましくは18MPa以下、特に好ましくは16MPa以下である。
【0027】
また、当該ポリイミドフィルムの膜厚10μmにおける引張伸度が15%以上であることが好ましい。引張伸度は、フレキシブルディスプレイの力学強度の観点からより好ましくは20%以上であり、更に好ましくは25%以上であり、更に好ましくは30%以上であり、更に好ましくは35%以上であり、特に好ましくは40%以上である。当該ポリイミドフィルムの引張伸度は、ポリイミド前駆体のモノマー骨格によって異なるが、同一のモノマー骨格であれば、ポリイミド前駆体の重量平均分子量が大きいほど引張伸度が大きい傾向がある。
【0028】
ポリイミドフィルムのガラス転移温度Tgは、ポリイミド上に窒化ケイ素のような無機膜をCVD工程で作製する際のプロセス温度をより上げられる観点から、360℃以上であることが好ましく、400℃以上がより好ましく、470℃以上がさらに好ましい。
【0029】
ポリイミドフィルムは膜厚が均一であることが好ましい。特にポリイミドフィルムをフレキシブルディスプレイ等の画面の材料として用いる場合は、可視光の波長が約380nmから約700nmであるため良好なディスプレイ性能を得る観点及び、ディスプレイの製造工程の観点から、特に高い膜厚均一性が求められる。ポリイミドフィルムの膜厚均一性(膜厚の複数点の標準偏差)は10μm以下が好ましく、8μm以下が好ましく、5μm以下が好ましく、3μm以下が好ましく、2μm以下が好ましく、1μm以下が特に好ましく、500nm以下が特に好ましく、300nm以下が特に好ましい。膜厚均一性は小さいほど好ましいが、ディスプレイ製造の収率向上の観点で、例えば50nm以上、又は100nm以上であってもよい。なお上記膜厚均一性は、例えば本開示の[実施例]の項に記載の方法で測定されるような複数点の膜厚から計算される3σの値を意味する。
【0030】
(樹脂組成物のせん断速度依存性)
本実施の形態の樹脂組成物のせん断速度依存性(TI)(以下、単にTIともいう。)は、好ましくは0.9以上1.1以下である。本開示で、TIは、樹脂組成物の粘度を23℃にて温調機付粘度計(東機産業械社製TVE-35H)で測定したときに、測定回転数a(rpm)における粘度ηa(mPa・s)と、測定回転数b(rpm)における粘度ηb(mPa・s)(但し、a*10=bである)とから、下記式:
TI=ηa/ηb
に従って求められる値である。測定条件の詳細は実施例中の記載で説明する。
【0031】
せん断速度依存性(TI)は、好ましくは、0.9以上、又は0.95以上、又は1.0以上であり、好ましくは、1.1以下、又は1.05以下、又は1.0以下である。TIがこの範囲であると、樹脂組成物はニュートン流体といわれ、樹脂組成物をスリットコートした場合の膜厚均一性が良好であるため好ましい。膜厚均一性が良好な樹脂組成物を硬化して得られるポリイミドフィルムは、良好な膜厚均一性を有するため、フレキシブルディスプレイ等の画面の材料として好適に用いることができる。
【0032】
樹脂組成物のせん断速度依存性が0.9以上1.1以下の場合に膜厚均一性が良好になる詳細な理由は不明確であるが、以下の様に考えられる。
スリットコートにおいては、塗布開始直後の樹脂組成物に与えられるせん断速度が小さく、塗布を継続したときの樹脂組成物に与えられるせん断速度が大きい。せん断速度依存性が小さい(具体的にはTIが0.9以上1.1以下)場合、塗布開始直後と塗布を継続したときとの樹脂組成物の粘度の差が小さいため、塗布方向(MD(Machine direction))の膜厚ばらつきが小さい(すなわち塗布方向の膜厚均一性が良好である)。また、スリットコートノズルが、幅方向(TD(Transverse direction))のいずれかの一端のみから樹脂組成物を注入する仕様の場合、スリットコート時に、注入口付近では樹脂組成物のせん断速度が大きいが、注入口と反対側(すなわちノズルのデッドロック側)では、樹脂組成物のせん断速度が小さくなる。このような場合でも、せん断速度依存性が小さい(具体的にはTIが0.9以上1.1以下)ことで、幅方向の膜厚ばらつきを小さくできる。このように、せん断速度依存性が小さい(具体的にはTIが0.9以上1.1以下)ことは、せん断による粘度への影響を低減し、MD及びTDいずれにおいても膜厚ばらつきが小さい(すなわち膜厚均一性が良好である)という利点を与える。
【0033】
樹脂組成物のせん断速度依存性は、樹脂組成物の合成方法と相関があると考えられる。
例えば、反応容器に、酸二無水物、ジアミン、及び構造により酸二無水物又はジアミンであり得るシリコーンオイル、のすべてを加え加熱して反応している場合と、該ジアミンに、溶媒に溶解した該酸二無水物と、溶媒に溶解した該シリコーンオイルとを、室温にて時間をかけて少量ずつ滴下し、少しずつ反応させる場合とを比較すると、前者の場合、モノマー(すなわち酸二無水物、ジアミン及びシリコーンオイル)のうち、より反応性が高いもの(酸性又は塩基性が高いもの、立体障害が小さいもの等)から反応し、ポリイミド前駆体はブロックポリマーになりやすい傾向がある。一方、後者の場合、酸二無水物及びシリコーンオイルを溶媒に溶解させ、少量ずつ滴下しているため、各モノマーが反応性等に関係なく反応でき、ポリイミド前駆体はランダムポリマーになりやすい傾向がある。このように上記の前者と後者とでは、生成物のポリマー構成が異なると考えられる。そしてブロックポリマー(前者)の場合、ポリマー中で特定のモノマーが集まっているため、ポリマー鎖間で分子間相互作用が発生しやすくなったり、ポリマーの柔軟性が損なわれるためポリマー鎖同士でスタックしやすくなると考えられる。結果として、樹脂組成物のせん断速度依存性が大きくなると考えられる。一方、後者の場合は、各モノマーが順序良く結合しており、分子間相互作用等が発生しにくいため、せん断速度依存性が小さいと考えられる。
【0034】
また、前者の場合、モノマーをすべて加え加熱しているため、特に一部の酸二無水物は、ポリマー鎖と反応する前に、熱により酸二無水物基が開環すると考えられる。酸二無水物基が開環してジカルボキシル基になると、酸二無水物基に比べ反応性が下がるため、ポリイミド前駆体の分子量が小さくなると考えられる。一方、後者の場合、酸二無水物を溶媒に溶解させ、室温で少量ずつ滴下するため、酸二無水物基が開環することなくポリマー鎖と反応することが可能となり。分子量が大きくなると考えられる。
【0035】
(樹脂組成物のスリットコート特性)
ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物のスリットノズルによるコート特性(スリットコート特性)は、ポリイミド前駆体の重量平均分子量及び樹脂組成物の固形分含有量と相関がある。ポリイミド前駆体が低分子量である場合、及び/又は樹脂組成物が低固形分含有量である場合には、ノズルからの液漏れが発生しやすく、一方、ポリイミド前駆体が高分子量である場合、及び/又は樹脂組成物が高固形分含有量である場合には、ノズル先端でワニスの目詰まりが発生しやすい。したがって、ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、固形分含有量を制御することで所望のスリットコート特性が得られるような範囲に制御することが好ましい。
【0036】
(塗膜のエッジ特性)
ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物をスリットコートして乾燥塗膜を形成する際、ポリイミド前駆体が低分子量である場合、及び/又は樹脂組成物が低固形分含有量である場合には、エッジのダレが発生しやすく、一方、ポリイミド前駆体が高分子量である場合、及び/又は樹脂組成物が高固形分含有量である場合には、エッジビ-ド(すなわちエッジの盛り上がり)が発生しやすい。したがって、ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、固形分含有量を制御することで所望のエッジ特性が得られるような範囲に制御することが好ましい。
【0037】
一態様において、樹脂組成物の固形分含有量は、10質量%~25質量%である。樹脂組成物をスリットコートする際の設定可能なコートギャップ(すなわち、スリットコートノズル先端と基板とのギャップ)は、樹脂組成物の固形分含有量と相関し、樹脂組成物に含まれる固形分の種類が同一であれば、樹脂組成物の固形分含有量が小さいほどコートギャップを大きくできる傾向がある。良好なコーティングの観点でコートギャップは大きい方が好ましく、例えば、コートギャップが50μm以上であれば、基板サイズが比較的大きい場合にもスリットノズルと基板との衝突を回避できる。樹脂組成物の固形分含有量が10質量%~25質量%である場合、ポリイミド前駆体の種類及び分子量を選択して目的のコートギャップを実現できる。樹脂組成物の好ましい固形分含有量は、所望される用途、ポリイミド前駆体の種類及び分子量、樹脂組成物が含み得る溶媒の種類等によって異なってよい。
【0038】
固形分含有量の下限の好ましい例は、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%、15質量%、16質量%、17質量%、18質量%、19質量%、20質量%、21質量%、22質量%、23質量%、又は24質量%である。
【0039】
固形分含有量の上限の好ましい例は、24質量%、23質量%、22質量%、21質量%、20質量%、19質量%、18質量%、17質量%、16質量%、15質量%、14質量%、13質量%、12質量%、又は11質量%である。
【0040】
好ましい一態様において、固形分濃度は、10~20質量%であり、10~15質量%がさらに好ましい。
【0041】
好ましい態様において、ポリイミド前駆体は、式(3):
【化8】
{式中、R
3及びR
4の各々は、複数ある場合それぞれ独立に、炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6~10の1価の芳香族基を示し、そしてmは、1~200の整数である。}で表される構造を有する。
R
3及びR
4が炭素数1~5の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の1価の芳香族基であることは、支持体との間に発生する残留応力及びRthを低減できるポリイミドを得る観点から有利である。R
3及びR
4の好ましい構造としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等が挙げられる。
mは、支持体との間に発生する残留応力及びRthを低減できるポリイミドを得る観点から、1~200であり、好ましくは、1以上、又は3以上、又は5以上、好ましくは、200以下、又は180以下、又は160以下である。
【0042】
ポリイミド前駆体は式(3)の構造を分子中のいずれの部位に有してもよいが、シロキサンモノマーの種類、コストの観点から、式(3)の構造はジアミン成分由来であることが好ましい。ポリイミド前駆体全体質量に占める、式(3)で表される構造部位の比率は、支持体との間に発生する残留応力及びRthを低減する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、得られる硬化物(例えばポリイミドフィルム)の透明性、及び耐熱性の観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0043】
典型的な態様において、上記式(1)で表される構造のポリイミド前駆体は、R1基を含むジアミン成分と、R2基を含む酸二無水物成分との重合物である。
【0044】
R2基を含む酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート酸無水物)、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等を例示することができる。
【0045】
中でも、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)は、ポリイミド前駆体の所定の重量平均分子量の範囲内で樹脂組成物の固形分含有量を制御した場合に、良好なスリットコート性能、並びに、硬化物(例えばポリイミドフィルム)の良好な機械特性、光学特性、及び高いガラス転移温度を容易に得られる観点から好ましい。一態様において、式(1)で表される構造を有するポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの共重合体である。一態様において、ポリイミド前駆体は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を含むテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの共重合体である。また一態様において、ポリイミド前駆体は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの共重合体である。
【0046】
特定の態様において、全酸二無水物中の、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)の合計含有量は、良好なスリットコート性能、並びに、硬化物(例えばポリイミドフィルム)の良好な厚み方向レタデーション(Rth)、黄色度(YI)、ガラス転移温度Tg、及び伸度を得る観点で、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
【0047】
特定の態様において、全酸二無水物中の、ピロメリット酸二無水物(PMDA)の含有量は、良好なスリットコート性能、並びに、硬化物(例えばポリイミドフィルム)の良好なガラス転移温度Tgを得る観点で、0モル%以上が好ましく、10モル%以上が好ましく、20モル%以上が好ましく、100モル%以下が好ましく、90モル%以下が好ましい。
【0048】
特定の態様において、全酸二無水物中の、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)の含有量は、良好なスリットコート性能、並びに、硬化物(例えばポリイミドフィルム)の良好な、厚み方向レタデーション(Rth)、黄色度(YI)、及び伸度を得る観点で、0モル%以上が好ましく、10モル%以上が好ましく、20モル%以上が好ましく、100モル%以下が好ましく、90モル%以下が好ましい。
【0049】
特定の態様において、酸二無水物中の、ピロメリット酸二無水物(PMDA):ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)の含有比率は、硬化物(例えばポリイミドフィルム)の良好な厚み方向レタデーション(Rth)、黄色度(YI)とガラス転移温度に代表される耐熱性を両立する観点で、20:80~80:20が好ましく、30:70~70:30がより好ましい。特定の態様において、ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの共重合体であり、該テトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、ピロメリット酸二無水物:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のモル比20:80~80:20、より好ましくは30:70~70:30で含む。
【0050】
式(1)におけるR1基を含むジアミンとしては、ジアミノジフェニルスルホン(例えば4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン)、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、等を挙げることができる。
【0051】
式(1)で表される構造を有するポリイミド前駆体を形成するために用いるジアミンは、ジアミノジフェニルスルホン(例えば、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン及び/又は3,3’-ジアミノジフェニルスルホン)を含むことが好ましい。
【0052】
全ジアミン中のジアミノジフェニルスルホンの含有量は、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましく、95モル%以上であってよい。ジアミノジフェニルスルホンの量が多いほど、硬化物(例えばポリイミドフィルム)の黄色度(YI)、ガラス転移温度Tg、厚み方向レタデーションRthの観点で好ましい。ジアミノジフェニルスルホンとしては、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンが、黄色度(YI)が低い観点から特に好ましい。
【0053】
好ましい態様において、ジアミノジフェニルスルホンと共重合する相手のジアミンとしては、硬化物(例えばポリイミドフィルム)の耐熱性、及び黄色度(YI)の観点から、好ましくはジアミドビフェニル類、より好ましくはジアミノビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)を含む。全ジアミン中のジアミノビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)の含有量は、硬化物(例えばポリイミドフィルム)の黄色度(YI)の観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、ジアミンがジアミノジフェニルスルホン等の他の有利な成分を含有できるようにする観点から、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下である。
【0054】
好ましい態様において、ジアミンは、ケイ素含有ジアミンを含む。より好ましい態様において、ジアミンは、前述の式(3)で表される構造を含むケイ素含有ジアミンを含む。ケイ素含有ジアミンとしては、例えば、下記式(3a):
【化9】
{式中、R
5は二価の炭化水素基を示し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、複数のR
3及びR
4の各々は、式(3)で定義したのと同様であり、そしてlは1~200の整数を表す。}で表されるジアミノ(ポリ)シロキサンを好適に用いることができる。
【0055】
上記一般式(3a)中のR5の好ましい構造としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基等が挙げられる。また、式(3a)中のR3及びR4の好ましい構造としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基等が挙げられる。
【0056】
上記式(3a)で表される化合物の、数平均分子量は、得られる硬化物(例えばポリイミドフィルム)と支持体との間に発生する残留応力の低減の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは2,000以上であり、得られる硬化物(例えばポリイミドフィルム)の透明性(特に低HAZE)の観点から、好ましくは12,000以下、より好ましくは10,000以下、更に好ましくは8,000以下である。
【0057】
上記式(3a)で表される化合物としては、具体的には、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22-1660B-3(数平均分子量4400)、X22-9409(数平均分子量1300))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(信越化学社製:X22-161A(数平均分子量1600)、X22-161B(数平均分子量3000)、KF8012(数平均分子量4400)、東レダウコーニング製:BY16-835U(数平均分子量900)チッソ社製:サイラプレーンFM3311(数平均分子量1000))等が挙がられる。これらの中で、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイルが、耐薬品性向上、Tgの向上の観点から好ましい。
【0058】
ケイ素含有ジアミンの共重合割合は、全ポリイミド前駆体の質量に対して、0.5~30質量%の範囲が好ましく、より好ましくは1.0質量%~25質量%、更に好ましくは1.5質量%~20質量%である。0.5質量%以上である場合、支持体との間に発生する応力の低下効果が良好である。また30質量%以下である場合、得られる硬化物(例えばポリイミドフィルム)の透明性(特に低HAZE)が良好であり、高い全光線透過率の実現及びTgの低下防止の点で好ましい。
【0059】
本実施の態様におけるポリイミド前駆体を形成するための酸成分としては、その性能を損なわない範囲で、酸二無水物(例えば上記で例示したテトラカルボン酸二無水物)に加えて、ジカルボン酸を使用してもよい。すなわち、本開示のポリイミド前駆体はポリアミドイミド前駆体であってもよい。このようなポリイミド前駆体から得られるフィルムは、機械伸度、ガラス転移温度Tg、黄色度(YI)等の諸性能が良好であることができる。用いるジカルボン酸としては、芳香環を有するジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸が挙げられる。特に炭素数が8~36の芳香族ジカルボン酸、及び炭素数が6~34の脂環式ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることが好ましい。ここでいう炭素数には、カルボキシル基に含まれる炭素の数も含む。これらのうち、芳香環を有するジカルボン酸が好ましい。
【0060】
具体的には、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、3,4’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-スルホニルビス安息香酸、3,4’-スルホニルビス安息香酸、3,3’-スルホニルビス安息香酸、4,4’-オキシビス安息香酸、3,4’-オキシビス安息香酸、3,3’-オキシビス安息香酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、2,2’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2,2’-ジメチル-3,3’-ビフェニルジカルボン酸、9,9-ビス(4-(4-カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-カルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,4’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,4’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(3―カルボキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、4,4’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,4’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,3’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,4’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,3’-ビス(4-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、4,4’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、4,4’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,4’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,3’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-p-ターフェニル、3,4’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、3,3’-ビス(3-カルボキシフェノキシ)-m-ターフェニル、1,1-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、1,3-フェニレン二酢酸、1,4-フェニレン二酢酸等;及び国際公開第2005/068535号パンフレットに記載の5-アミノイソフタル酸誘導体等が挙げられる。これらジカルボン酸をポリマーに実際に共重合させる場合には、塩化チオニル等から誘導される酸クロリド体、活性エステル体等の形で使用してもよい。
【0061】
好ましい態様においては、ポリイミド前駆体が、テトラカルボン酸二無水物と、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンからなる群から選択される1つ以上のジアミンとの共重合体である。
【0062】
特に好ましいポリイミド前駆体としては下記が挙げられる。
(1)酸二無水物成分がピロメリット酸二無水物(PMDA)及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ジアミン成分がジアミノジフェニルスルホン(DAS)である材料成分の重縮合物(より好ましくは、重量平均分子量110,000~130,000、固形分含有量12~25質量%)
(2)酸二無水物成分がピロメリット酸二無水物(PMDA)及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ジアミン成分がジアミノジフェニルスルホン(DAS)及びケイ素含有ジアミンである材料成分の重縮合物(より好ましくは、重量平均分子量110,000~210,000、固形分含有量10~25質量%)
(3)酸二無水物成分がピロメリット酸二無水物(PMDA)及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ジアミン成分がジアミノジフェニルスルホン(DAS)、ジアミノビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)及びケイ素含有ジアミンである材料成分の重縮合物(より好ましくは、重量平均分子量110,000~250,000、固形分含有量10~25質量%)
【0063】
(4)酸二無水物成分がピロメリット酸二無水物(PMDA)、ジアミン成分がジアミノジフェニルスルホン(DAS)である材料成分の重縮合物(より好ましくは、重量平均分子量110,000~140,000、固形分含有量10~25質量%)
(5)酸二無水物成分がピロメリット酸二無水物(PMDA)、ジアミン成分がジアミノジフェニルスルホン(DAS)及びケイ素含有ジアミンである材料成分の重縮合物(より好ましくは、重量平均分子量110,000~230,000、固形分含有量10~25質量%)
(6)酸二無水物成分がピロメリット酸二無水物(PMDA)、ジアミン成分がジアミノジフェニルスルホン(DAS)、ジアミノビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)及びケイ素含有ジアミンである材料成分の重縮合物(より好ましくは、重量平均分子量110,000~250,000、固形分含有量10~25質量%)
【0064】
(7)酸二無水物成分がビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ジアミン成分がジアミノジフェニルスルホン(DAS)である材料成分の重縮合物(より好ましくは、重量平均分子量110,000~120,000、固形分含有量20~25質量%)
(8)酸二無水物成分がビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ジアミン成分がジアミノジフェニルスルホン(DAS)及びケイ素含有ジアミンである材料成分の重縮合物(より好ましくは、重量平均分子量110,000~160,000、固形分含有量10~25質量%)
(9)酸二無水物成分がビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ジアミン成分がジアミノジフェニルスルホン(DAS)、ジアミノビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)及びケイ素含有ジアミンである材料成分の重縮合物(より好ましくは、重量平均分子量110,000~240,000、固形分含有量10~25質量%)
【0065】
上記(1)~(9)の重縮合物の材料成分において、ケイ素含有ジアミンは、好ましくは前述の式(3a)で表されるジアミノ(ポリ)シロキサン(好ましくは数平均分子量500~12,000のもの)であり、より好ましくは両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイルである。
【0066】
[ポリイミド前駆体の製造]
本実施の形態のポリイミド前駆体は、酸二無水物成分とジアミン成分とを含む重縮合成分を重縮合反応させることにより、合成することができる。好ましい態様において、重縮合成分は、酸二無水物成分とジアミン成分とからなる。重縮合反応は、適当な溶媒中で行うことが好ましい。具体的には、例えば、溶媒に所定量のジアミン成分を溶解させた後、得られたジアミン溶液に、酸二無水物を所定量添加し、撹拌する方法が挙げられる。
【0067】
ポリイミド前駆体を合成する際の酸二無水物成分とジアミン成分とのモル比は、ポリイミド前駆体樹脂の高分子量化、樹脂組成物のスリットコーティング特性の観点から、酸二無水物:ジアミン=100:90~100:110(酸二無水物1モル部に対してジアミン0.90~1.10モル部)の範囲とすることが好ましく、100:95~100:105(酸二無水物1モル部に対してジアミン0.95~1.05モル部)の範囲とすることが更に好ましい。
【0068】
ポリイミド前駆体の分子量は、酸二無水物成分とジアミン成分の種類、酸二無水物成分とジアミン成分との比の調整、末端封止剤の添加、反応条件の調整等によってコントロールすることが可能である。酸二無水物成分とジアミン成分との比が1:1に近いほど、及び末端封止剤の使用量が少ないほど、ポリイミド前駆体を高分子量化することができる。 酸二無水物成分及びジアミン成分として、高純度品を使用することが推奨される。その純度としては、それぞれ、98質量%以上とすることが好ましく、99質量%以上とすることがより好ましく、99.5質量%以上とすることが更に好ましい。また、酸二無水物成分及びジアミン成分における水分含量を低減することによって、高純度化することもできる。複数種類の酸二無水物成分又はジアミン成分を併用する場合には、酸二無水物成分又はジアミン成分の全体として上記の純度を有していれば足りるが、使用する全種類の酸二無水物成分及びジアミン成分が、それぞれ上記の純度を有していることが好ましい。
【0069】
反応の溶媒としては、酸二無水物成分及びジアミン成分、並びに生じたポリイミド前駆体を溶解することができ、高分子量の重合体が得られる溶媒であれば特に制限はされない。このような溶媒の具体例としては、例えば、非プロトン性溶媒、フェノール系溶媒、エーテル及びグリコール系溶媒等が挙げられる。これらの具体例としては、前記非プロトン性溶媒として、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素、下記一般式(4):
【化10】
式中、R
12=メチル基で表されるエクアミドM100(商品名:出光興産社製)、及び、R
12=n-ブチル基で表されるエクアミドB100(商品名:出光興産社製)等のアミド系溶媒;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含りん系アミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ピコリン、ピリジン等の3級アミン系溶媒;酢酸(2-メトキシ-1-メチルエチル)等のエステル系溶媒等が:前記フェノ-ル系溶媒として、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等が:前記エーテル及びグリコール系溶媒として、例えば、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が、それぞれ挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種類以上混合して用いてもよい。
【0070】
ポリイミド前駆体の合成に用いられる溶媒の常圧における沸点は、60~300℃が好ましく、140~280℃がより好ましく、170~270℃が特に好ましい。溶媒の沸点が300℃より高いと、乾燥工程が長時間必要となる。一方で溶媒の沸点が60℃より低いと、乾燥工程中に、樹脂膜の表面における荒れの発生、樹脂膜中への気泡の混入等が起こり、均一なフィルムが得られない場合がある。特に、沸点が170~270℃であり、及び/又は20℃における蒸気圧が250Pa以下である溶媒を使用することが、溶解性及び塗工時エッジはじきの観点から好ましい。より具体的には、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン(GBL)、及び前記一般式(4)で表される化合物から成る群より選択される1種以上が好ましい。
【0071】
溶媒中の水分含量は、良好な重縮合反応の進行の観点から、例えば3,000質量ppm以下であることが好ましい。また、本実施の態様における樹脂組成物中、分子量1,000未満の分子の含有量は、5質量%未満であることが好ましい。樹脂組成物中に分子量1,000未満の分子が存在するのは、合成時に使用する溶媒や原料(酸二無水物、ジアミン)の水分量が関与しているためと考えられる。すなわち、一部の酸二無水物モノマーの酸無水物基が水分によって加水分解してカルボキシル基になり、高分子量化することなく低分子の状態で残存することによると考えられる。従って、上記の重縮合反応に使用する溶媒の水分量は少ないほど好ましい。溶媒の水分量は、3,000質量ppm以下とすることが好ましく、1,000質量ppm以下とすることがより好ましい。同様に、原料に含まれる水分量についても、3,000質量ppm以下とすることが好ましく、1,000質量ppm以下とすることがより好ましい。
【0072】
溶媒の水分量は、使用する溶媒のグレード(脱水グレード、汎用グレード等)、溶媒容器(ビン、18L缶、キャニスター缶等)、溶媒の保管状態(希ガス封入の有無等)、開封から使用までの時間(開封後すぐ使用するか、開封後経時した後に使用するか等)等が関与すると考えられる。また、合成前の反応器の希ガス置換、合成中の希ガス流通の有無等も関与すると考えられる。従って、ポリイミド前駆体の合成時には、原料として高純度品を用い、水分量の少ない溶媒を用いるとともに、反応前および反応中に系内に環境からの水分が混入しないような措置を講ずることが推奨される。
【0073】
溶媒中に各重縮合成分を溶解させるときには、必要に応じて加熱してもよい。重合度の高いポリイミド前駆体が得られるという観点から、ポリイミド前駆体合成時の好ましい反応温度としては、0℃~120℃、又は40℃~100℃、又は60~100℃を例示でき、好ましい重合時間としては、1~100時間、又は2~10時間を例示できる。重合時間を1時間以上とすることによって均一な重合度のポリイミド前駆体となり、100時間以下とすることによって重合度の高いポリイミド前駆体を得ることができる。
【0074】
本実施の形態の樹脂組成物は、式(1)で表される構造を有するポリイミド前駆体と、他の追加のポリイミド前駆体との組合せであってよいが、追加のポリイミド前駆体の質量割合は、硬化物(例えばポリイミドフィルム)の黄色度(YI)及び全光線透過率の酸素依存性の低減の観点から、樹脂組成物中のポリイミド前駆体の総量に対して、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0075】
本実施の形態の好ましい態様において、ポリイミド前駆体は、その一部がイミド化されていてもよい。部分イミド化されたポリイミド前駆体によれば、樹脂組成物の室温保管時の粘度安定性を向上できる。この場合のイミド化率は、樹脂組成物中でのポリイミド前駆体の溶解性と溶液の保存安定性とのバランスをとる観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上であり、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは50%以下である。この部分イミド化は、ポリイミド前駆体を加熱して脱水閉環することにより得られる。この加熱は、好ましくは120~200℃、より好ましくは150~180℃の温度において、好ましくは15分~20時間、より好ましくは30分~10時間行うことができる。 また、上述の反応によって得られたポリアミド酸に、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール又はN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールを加えて加熱し、カルボン酸の一部又は全部をエステル化したうえで、本実施の形態におけるポリイミド前駆体として用いることにより、室温保管時の粘度安定性が向上された樹脂組成物を得ることもできる。これらエステル変性ポリアミド酸は、他に、上述の酸二無水物成分を、酸無水物基に対して1当量の1価のアルコール、及び塩化チオニル、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤と順次に反応させた後、ジアミン成分と縮合反応させる方法によっても得ることができる。
【0076】
一態様において、樹脂組成物は溶媒を含む。溶媒としては、ポリイミド前駆体の溶解性が良好で、かつ樹脂組成物の溶液粘度を適切に制御できるものが好ましく、前記ポリイミド前駆体の反応溶媒を、組成物の溶媒として用いることができる。その中でも、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン(GBL)、前記一般式(4)で表される化合物等が好ましい。溶媒組成の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)単独、又はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とγ-ブチロラクトン(GBL)との混合溶媒(例えば、NMP:GBL(質量比)=10:90~90:10)等が挙げられる。
【0077】
[追加の成分]
本実施の形態の樹脂組成物は、(a)ポリイミド前駆体、及び(b)溶媒、に加えて追加の成分を含んでよい。追加の成分としては、(c)界面活性剤、(d)アルコキシシラン化合物、等が挙げられる。
【0078】
((c)界面活性剤)
本実施の形態の樹脂組成物に、界面活性剤を添加することによって、該樹脂組成物の塗布性を向上することができる。具体的には、塗工膜におけるスジの発生を防ぐことができる。
このような界面活性剤は、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、これら以外の非イオン界面活性剤等を挙げることができる。これらの例としては、シリコーン系界面活性剤として、例えば、オルガノシロキサンポリマーKF-640、642、643、KP341、X-70-092、X-70-093、(以上、商品名、信越化学工業社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428、DC-57、DC-190(以上、商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、SILWET L-77,L-7001,FZ-2105,FZ-2120,FZ-2154,FZ-2164,FZ-2166,L-7604(以上、商品名、日本ユニカー社製)、DBE-814、DBE-224、DBE-621、CMS-626、CMS-222、KF-352A、KF-354L、KF-355A、KF-6020、DBE-821、DBE-712(Gelest)、BYK-307、BYK-310、BYK-378、BYK-333(以上、商品名、ビックケミー・ジャパン製)、グラノール(商品名、共栄社化学社製)等が;フッ素系界面活性剤として、例えば、メガファックF171、F173、R-08(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)、フロラードFC4430、FC4432(住友スリーエム株式会社、商品名)等が;これら以外の非イオン界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が、それぞれ挙げられる。
【0079】
これらの界面活性剤の中でも、樹脂組成物の塗工性(スジ抑制)の観点から、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が好ましく、キュア工程時の酸素濃度による黄色度(YI)値及び全光線透過率への影響の観点から、シリコーン系界面活性剤が好ましい。 (c)界面活性剤を用いる場合、その配合量は、樹脂組成物中の(a)ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.001~5質量部が好ましく、0.01~3質量部がより好ましい。
【0080】
(d)アルコキシシラン化合物
本実施の形態にかかる樹脂組成物から得られるポリイミドフィルムをフレキシブル基板等に用いる場合、製造プロセスにおける支持体とポリイミドフィルムとの良好な密着性を得る観点から、該樹脂組成物は、(a)ポリイミド前駆体100質量部に対して、アルコキシシラン化合物を0.01~20質量部含有することができる。ポリイミド前駆体100質量部に対するアルコキシシラン化合物の含有量が0.01質量部以上であることにより、支持体とポリイミドフィルムとの間に良好な密着性を得ることができる。またアルコキシシラン化合物の含有量が20質量部以下であることが、樹脂組成物の保存安定性の観点から好ましい。アルコキシシラン化合物の含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.02~15質量部であることがより好ましく、0.05~10質量部であることが更に好ましく、0.1~8質量部であることが特に好ましい。
また、本実施の形態にかかる樹脂組成物の添加剤としてアルコキシシラン化合物を用いることにより、上記の密着性の向上に加えて、樹脂組成物の塗工性(スジムラ抑制)の向上、及び、得られる硬化膜の黄色度(YI)値のキュア時酸素濃度依存性の低減も可能である。
【0081】
アルコキシシラン化合物としては、例えば、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ-アミノプロピルトリブトキシシラン、γ-アミノエチルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルトリプロポキシシラン、γ-アミノエチルトリブトキシシラン、γ-アミノブチルトリエトキシシラン、γ-アミノブチルトリメトキシシラン、γ-アミノブチルトリプロポキシシラン、γ-アミノブチルトリブトキシシラン、フェニルシラントリオール、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(p-トリル)シラン、ジフェニルシランジオール、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジ-p-トリルシラン、トリフェニルシラノール及び下記構造のそれぞれで表されるアルコキシシラン化合物等を挙げることができ、これらから選択される1種以上を使用することが好ましい。
【0082】
【0083】
本実施の形態における樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、以下の方法によることができる。
【0084】
(a)ポリイミド前駆体を合成した際に用いた溶媒と、(b)樹脂組成物に含有させる溶媒とが同一の場合には、合成したポリイミド前駆体溶液をそのまま樹脂組成物とすることができる。また、必要に応じて、室温(25℃)~80℃の温度範囲で、(a)ポリイミド前駆体に(b)溶媒、及び追加の成分の1種以上を添加して、攪拌混合したうえで、樹脂組成物として用いてもよい。この攪拌混合には、撹拌翼を備えたスリーワンモータ(新東化学株式会社製)、自転公転ミキサー等の適宜の装置を用いることができる。また必要に応じて40~100℃の熱を加えてもよい。
【0085】
一方、(a)ポリイミド前駆体を合成した際に用いた溶媒と、(b)樹脂組成物に含有させる溶媒とが異なる場合には、合成したポリイミド前駆体溶液中の溶媒を、例えば再沈殿、溶媒留去等の適宜の方法により除去して(a)ポリイミド前駆体を単離した後に、室温~80℃の温度範囲で、(b)溶媒、及び必要に応じて追加の成分を添加して、攪拌混合することにより、樹脂組成物を調製してもよい。
【0086】
上述のように樹脂組成物を調製した後、該組成物を例えば130~200℃において例えば5分~2時間加熱することにより、ポリマーが析出を起こさない程度にポリイミド前駆体の一部を脱水イミド化してもよい。ここで、加熱温度及び加熱時間をコントロールすることにより、イミド化率を制御することができる。前述のように、部分イミド化されたポリイミド前駆体によれば、樹脂組成物の室温保管時の粘度安定性を向上することができる。
【0087】
樹脂組成物の溶液粘度は、スリットコート性能の観点においては、500~100,000mPa・sが好ましく、1,000~50,000mPa・sがより好ましく、3,000~20,000mPa・sが特に好ましい。具体的には、スリットノズルから液漏れしにくい点で、好ましくは500mPa・s以上、より好ましくは1,000mPa・s以上、更に好ましくは3,000mPa・s以上である。また、スリットノズルが目詰まりしにくい点で、好ましくは100,000mPa・s以下、より好ましくは50,000mPa・s以下、更に好ましくは20,000mPa・s以下である。また、合成時の粘度の観点では、樹脂組成物の溶液粘度が200,000mPa・sより高いと、合成時の撹拌が困難になるという問題が生じるおそれがある。ただし、合成する際に、溶液が高粘度になったとしても、反応終了後に溶媒を添加して撹拌することにより、取扱い性のよい粘度の樹脂組成物を得ることが可能である。本開示における樹脂組成物の溶液粘度は、E型粘度計(例えばVISCONICEHD、東機産業製)を用い、23℃で測定される値である。
【0088】
本実施の形態にかかる樹脂組成物の水分量は、3,000質量ppm以下であることが好ましい。樹脂組成物の水分量は、該樹脂組成物を保存する時の粘度安定性の観点から、2,500質量ppm以下が好ましく、2,000質量ppm以下が好ましく、1,500質量ppm以下が好ましく、1,000質量ppm以下であることがより好ましく、500質量ppm以下であることが更に好ましく、300質量ppm以下が好ましく、100質量ppm以下が好ましい。
【0089】
<ポリイミドフィルムの製造方法>
本実施の形態は、
支持体の表面上に、本実施の形態の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
樹脂組成物を加熱してポリイミドフィルムを形成する膜形成工程と、
ポリイミドフィルムを支持体から剥離する剥離工程と、を含むことを特徴とする、ポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0090】
[塗布工程]
塗布工程において、支持体の表面上に樹脂組成物を塗布する。支持体は、その後の膜形成工程(加熱工程)の加熱温度における耐熱性を有し、更に、剥離工程における剥離性が良好であれば、特に限定されない。例えば、ガラス(例えば、無アルカリガラス)基板;シリコンウェハー;PET(ポリエチレンテレフタレート)、OPP(延伸ポリプロピレン)、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリエチレングリコールナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂基板;ステンレス、アルミナ、銅、ニッケル等の金属基板等が用いられる。
【0091】
薄膜状のポリイミド成形体を形成する場合には、例えば、ガラス基板、シリコンウェハー等が好ましく、厚膜状のポリイミド成形体(例えば厚膜フィルム、シート等)を形成する場合には、例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)、OPP(延伸ポリプロピレン)等からなる支持体が好ましい。
【0092】
塗布方法としては、一般には、ドクターブレードナイフコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ロータリーコーター、フローコーター、ダイコーター、バーコーター等の塗布方法、スピンコート、スプレイコート、ディップコート等の塗布方法;スクリーン印刷及びグラビア印刷等に代表される印刷技術等が挙げられるが、本実施の形態の樹脂組成物は、特に、スリットコート(すなわちスリットコーターでの塗布)に有用である。塗布厚は、所望のポリイミドフィルムの厚さと樹脂組成物中のポリイミド前駆体の含有量に応じて適宜調整されるべきものであるが、好ましくは1~1,000μm程度である。塗布工程は、室温における実施で足りるが、粘度を下げて作業性をよくする目的で、樹脂組成物を例えば40~80℃の範囲で加温して実施してもよい。
【0093】
[任意の乾燥工程]
塗布工程に続き、乾燥工程を行ってもよいし、乾燥工程を省略して直接次の膜形成工程(加熱工程)に進んでもよい。上記乾燥工程は、樹脂組成物中の有機溶剤除去の目的で行われる。乾燥工程を行う場合、例えば、ホットプレート、箱型乾燥機、コンベヤー型乾燥機等の適宜の装置を利用することができる。乾燥工程は、80~200℃で行うことが好ましく、100~150℃で行うことがより好ましい。乾燥工程の実施時間は、1分~10時間とすることが好ましく、3分~1時間とすることがより好ましい。 上記のようにして、支持体上にポリイミド前駆体を含有する塗膜が形成される。
【0094】
[膜形成工程]
続いて、膜形成工程(加熱工程)を行う。加熱工程は、上記の乾燥工程で塗膜中に残留した有機溶剤の除去を行うとともに、塗膜中のポリイミド前駆体のイミド化反応を進行させ、ポリイミドフィルムを得る工程である。この加熱工程は、例えば、イナートガスオーブン、ホットプレート、箱型乾燥機、コンベヤー型乾燥機等の装置を用いて行うことができる。この工程は前記乾燥工程と同時に行っても、両工程を逐次的に行ってもよい。
【0095】
加熱工程は、空気雰囲気下で行ってもよいが、安全性と、得られるポリイミドフィルムの良好な透明性、低い厚み方向レタデーション(Rth)及び低い黄色度(YI)を得る観点から、不活性ガス雰囲気下で行うことが推奨される。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられる。加熱温度は、ポリイミド前駆体の種類、及び樹脂組成物中の溶媒の種類に応じて適宜に設定されてよいが、250℃~550℃が好ましく、300~450℃がより好ましい。250℃以上であればイミド化が良好に進行し、550℃以下であれば得られるポリイミドフィルムの透明性の低下、耐熱性の悪化等の不都合を回避できる。加熱時間は、0.1~10時間程度とすることが好ましい。
【0096】
本実施の形態では、上記の加熱工程における周囲雰囲気の酸素濃度は、得られるポリイミドフィルムの透明性及び黄色度(YI)値の観点から、2,000質量ppm以下が好ましく、100質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下が更に好ましい。酸素濃度が2,000質量ppm以下の雰囲気中で加熱を行うことにより、得られるポリイミドフィルムの黄色度(YI)値を30以下にすることができる。
【0097】
[剥離工程]
次いで、剥離工程では、支持体上のポリイミドフィルムを、例えば室温~50℃程度まで冷却した後に剥離する。この剥離工程としては、例えば下記の(1)~(4)の態様が挙げられる。
【0098】
(1)前記方法により、ポリイミドフィルム/支持体を含む構成体を作製した後、該構造体の支持体側からレーザーを照射して、支持体とポリイミドフィルムとの界面をアブレーション加工することにより、ポリイミド樹脂を剥離する方法。レーザーの種類としては、固体(YAG)レーザー、ガス(UVエキシマー)レーザー等が挙げられる。波長308nm等のスペクトルを用いることが好ましい(特表2007-512568公報、特表2012‐511173公報等を参照)。
(2)支持体に樹脂組成物を塗工する前に、支持体に剥離層を形成し、その後ポリイミドフィルム/剥離層/支持体を含む構成体を得て、ポリイミドフィルムを剥離する方法。剥離層としては、パリレン(登録商標、日本パリレン合同会社製)、酸化タングステンを用いる方法;植物油系、シリコーン系、フッ素系、アルキッド系等の離型剤を用いる方法等が挙げられる(特開2010-67957公報、特開2013-179306公報等を参照)。
この方法(2)と前記(1)のレーザー照射とを併用してもよい。
【0099】
(3)支持体としてエッチング可能な金属基板を用いて、ポリイミドフィルム/支持体を含む構成体を得た後、エッチャントで金属をエッチングすることにより、ポリイミドフィルムを得る方法。金属としては、例えば、銅(具体例としては、三井金属鉱業株式会社製の電解銅箔「DFF」)、アルミニウム等を使用することができる。エッチャントとしては、銅に対しては塩化第二鉄等を、アルミニウムに対しては希塩酸等を使用することができる。
(4)前記方法により、ポリイミドフィルム/支持体を含む構成体を得た後、ポリイミドフィルム表面に粘着フィルムを貼り付けて、支持体から粘着フィルム/ポリイミドフィルムを分離し、その後粘着フィルムからポリイミドフィルムを分離する方法。
【0100】
これらの剥離方法の中でも、得られるポリイミドフィルムの表裏の屈折率差、黄色度(YI)値、及び伸度の観点から、方法(1)又は(2)が適切であり、得られるポリイミドフィルムの表裏の屈折率差の観点から方法(1)、すなわち、剥離工程に先立って、支持体側からレ-ザ-を照射する照射工程を行うことがより適切である。
なお、方法(3)において、支持体として銅を用いた場合は、得られるポリイミドフィルムの黄色度(YI)値が大きくなり、伸度が小さくなる傾向が見られる。これは、銅イオンの影響であると考えられる。
【0101】
上記の方法によって得られるポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されないが、1~200μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは5~100μmである。
【0102】
<ポリイミドフィルムの用途>
本実施の形態にかかるポリイミド前駆体から得られるポリイミドフィルムは、例えば、半導体絶縁膜、TFT-LCD絶縁膜、電極保護膜等として適用できる他、フレキシブルデバイスの製造において、特にTFT基板やカラーフィルター基板、タッチパネル基板として好適に利用することができる。ここで、本実施の形態にかかるポリイミドフィルムを適用可能なフレキシブルデバイスとしては、例えば、フレキシブルディスプレイ用TFTデバイス、フレキシブル太陽電池、フレキシブルタッチパネル、フレキシブル照明、フレキシブルバッテリー、フレキシブルプリント基板、フレキシブルカラーフィルター、スマートフォン向け表面カバーレンズ等を挙げることができる。
【0103】
ポリイミドフィルムを使ったフレキシブル基板上にTFTを形成する工程は、典型的には、150~650℃の広い範囲の温度で実施される。具体的にはアモルファスシリコンを使用したTFTデバイスを作製する場合には、一般的に250℃~350℃のプロセス温度が必要となり、本実施の形態のポリイミドフィルムはその温度に耐えうる必要があるため、具体的にはプロセス温度以上のガラス転移温度、熱分解開始温度を有するポリマー構造を適宜選択する必要がある。
【0104】
金属酸化物半導体(IGZO等)を使用したTFTデバイスを作製する場合には、一般的に320℃~400℃のプロセス温度が必要となり、本実施の形態のポリイミドフィルムはその温度に耐えうる必要があるため、TFT作製プロセス最高温度以上のガラス転移温度、熱分解開始温度を有するポリマー構造を適宜選択する必要がある。
【0105】
低温ポリシリコン(LTPS)を使用したTFTデバイスを作製する場合には、一般的に380℃~520℃のプロセス温度が必要となり、本実施の形態のポリイミドフィルムはその温度に耐えうる必要があるため、TFT作製プロセス最高温度以上のガラス転移温度、熱分解開始温度を適宜選択有する必要がある。
一方で、これら熱履歴により、ポリイミドフィルムの光学特性(特に、光線透過率、レタデーション特性及び黄色度)は高温プロセスにさらされるほどに低下する傾向にある。しかし、本実施の形態のポリイミド前駆体から得られるポリイミドは、熱履歴を経ても良好な光学特性を有する。
【0106】
以下に、本実施の形態の樹脂組成物及びポリイミドフィルムの用途例として、ディスプレイ及び積層体並びにこれらの製造方法について説明する。
【0107】
[ディスプレイ及びその製造方法]
本実施の形態は、本実施の形態の樹脂組成物の硬化物であるポリイミドフィルムを含むフレキシブルデバイスも提供する。該フレキシブルデバイスの好適例はフレキシブルディスプレイである。一態様において、ポリイミドフィルムは、光学特性(例えばRth及び/又は黄色度)に優れている。したがって、好ましい態様において、ポリイミドフィルムは、ディスプレイを外部から観察した際に視認される箇所(具体的には、フレキシブルディスプレイの画面部分)に配置されている。
【0108】
本実施の形態は、
ガラス基板等の支持体の表面上に、本実施の形態の樹脂組成物を塗布(好ましくはスリットコート)する塗布工程と、
樹脂組成物を加熱してポリイミドフィルムを形成する膜形成工程と、
ポリイミドフィルム上に素子を形成する素子形成工程と、
素子が形成されたポリイミドフィルムを支持体から剥離する剥離工程と、を含むディスプレイの製造方法も提供する。
【0109】
[フレキシブル有機ELディスプレイの製造方法]
図1は、本発明の一態様で提供されるディスプレイの例としてのトップエミッション型のフレキシブル有機ELディスプレイのポリイミド基板より上部の構造を示す図である。
図1の有機EL構造部25を説明すると、例えば、赤色光を発光する有機EL素子250a、緑色光を発光する有機EL素子250b及び青色光を発光する有機EL素子250cが1単位として、マトリクス状に配列されており、隔壁(バンク)251により、各有機EL素子の発光領域が画定されている。各有機EL素子は、下部電極(陽極)252、正孔輸送層253、発光層254、上部電極(陰極)255から構成されている。また、窒化ケイ素(SiN)や酸化ケイ素(SiO)からなるCVD複層膜(マルチバリヤーレイヤー)を示す下部層2a上には、有機EL素子を駆動するためのTFT256(低温ポリシリコン(LTPS)、金属酸化物半導体(IGZO等)から選択される)、コンタクトホール257を備えた層間絶縁膜258、及び下部電極259が複数設けられている。有機EL素子は封止基板2bで封入されており、各有機EL素子と封止基板2bとの間に中空部261が形成されている。
【0110】
フレキシブル有機ELディスプレイ製造工程には、ガラス基板支持体上にポリイミドフィルムを作製し、その上部に上記
図1に示される有機EL基板を製造する工程、封止基板製造工程、両基板を貼り合わせる組み立て工程、及び、ガラス基板支持体からポリイミドフィルム上に作製された有機ELディスプレイを剥離する剥離工程が含まれる。
有機EL基板製造工程、封止基板製造工程、及び組み立て工程は、周知の製造工程を適用することができる。以下ではその一例を挙げるが、これに限定されるものではない。また、剥離工程は、上述したポリイミドフィルムの剥離工程と同一であってよい。
【0111】
図1を参照し、例えば、まず、上述した方法によりガラス基板支持体上に本開示のポリイミドフィルムを作製し、その上部にCVD法又はスパッタ法により窒化ケイ素(SiN)と酸化ケイ素(SiO)との複層構造からなるマルチバリアレイヤー(
図1中の下部基板2a)を作製し、その上部にTFTを駆動するためのメタル配線層を、フォトレジスト等を使用して作製する。その上部にCVD法を用いてSiO等のアクティブバッファー層を作製し、その上部に金属酸化物半導体(IGZO)、低温ポリシリコン(LTPS)などのTFTデバイス(
図1中のTFT256)を作製する。フレキシブルディスプレイ用TFT基板を作製後、感光性アクリル樹脂等でコンタクトホール257を備えた層間絶縁膜258を形成する。スパッタ法等にてITO膜を成膜し、TFTと対をなすように下部電極259を形成する。
【0112】
次に、感光性ポリイミド等で隔壁(バンク)251を形成した後、隔壁で区画された各空間内に、正孔輸送層253、発光層254を形成する。また、発光層254及び隔壁(バンク)251を覆うように上部電極(陰極)255を形成する。その後、ファインメタルマスク等をマスクにして、赤色光を発光する有機EL材料(
図1中の、赤色光を発光する有機EL素子250aに対応)、緑色光を発光する有機EL材料(
図1中の、緑色光を発光する有機EL素子250bに対応)及び青色光を発光する有機EL材料(
図1中の、青色光を発光する有機EL素子250cに対応)を公知の方法にて蒸着することで、有機EL基板が作製され、封止フィルム等(
図1中の封止基板2b)で封止後、ガラス基板支持体からポリイミド基板より上部のデバイスをレーザー剥離等の公知の剥離方法で剥離することでトップエミッションタイプのフレキシブル有機ELディスプレイが作製される。本実施の形態のポリイミドを使用した場合は、シースルー型のフレキシブル有機ELディスプレイが作製される。また、公知の方法にてボトムエミッションタイプのフレキシブル有機ELディスプレイを作製してもよい。
【0113】
[フレキシブル液晶ディスプレイの製造方法]
本実施の形態のポリイミドフィルムを使用してフレキシブル液晶ディスプレイを作製することが出来る。具体的な作製方法としては、上述した方法にてガラス基板支持体上に本発明からなるポリイミドフィルムを作製し、上述した方法を用いて、例えばアモルファスシリコン、金属酸化物半導体(IGZO等)、又は低温ポリシリコンからなるTFT基板を作製する。別途、本実施の形態の、塗布工程及び膜形成工程に従って、ガラス基板支持体上にポリイミドフィルムを作製し、公知の方法に従ってカラーレジスト等を使用して、ポリイミドフィルムを備えたカラーフィルターガラス基板(CF基板)を作製する。TFT基板及びCF基板の一方に、スクリーン印刷により、熱硬化性エポキシ樹脂などで構成されたシール材料を、液晶注入口の部分を欠いた枠状パターンに塗布し、他方の基板に、液晶層の厚さに相当する直径を持ち、プラスチック又はシリカで構成された球状のスペーサーを散布する。
【0114】
次いで、TFT基板とCF基板とを貼り合わせ、シール材料を硬化させる。
最後に、TFT基板及びCF基板並びにシール材料で囲まれる空間に、減圧法により液晶材料を注入した後、液晶注入口に熱硬化樹脂を塗布し、加熱によって液晶材料を封止することで液晶層を形成する。最後に、CF側のガラス基板とTFT側のガラス基板とをレーザー剥離法などでポリイミドフィルムとガラス基板の界面で剥離することでフレキシブル液晶ディスプレイを作製することが出来る。
【0115】
[積層体の製造方法]
本実施の形態は、
支持体の表面上に、本実施の形態の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
樹脂組成物を加熱してポリイミドフィルムを形成する膜形成工程と、
ポリイミドフィルム上に素子を形成する素子形成工程と、を含む積層体の製造方法も提供する。
【0116】
積層体における素子としては、前記のフレキシブルデバイス(例えばフレキシブルディスプレイ)として例示したものが挙げられる。支持体としては例えばガラス基板を用いる。塗布工程及び膜形成工程の好ましい具体的手順は、前述のポリイミドフィルムの製造方法に関して前述したのと同様である。また素子形成工程においては、支持体上に形成された、フレキシブル基板としてのポリイミドフィルムの上に、上記の素子を形成する。その後、任意に剥離工程においてポリイミドフィルム及び素子を支持体から剥離してもよい。
【実施例】
【0117】
以下、本発明について、実施例に基づき更に詳述するが、これらは説明のために記述されるものであって、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における各種評価は次のとおりに行った。
【0118】
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記の条件により測定した。
【0119】
溶媒として、NMP(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用、測定直前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えて溶解したもの)を使用した。重量平均分子量を算出するための検量線は、スタンダ-ドポリスチレン(東ソ-社製)を用いて作製した。
カラム:Shodex KD-806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU-2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI-2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)及びUV-2075Plus(UV-VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
【0120】
<せん断速度依存性(TI)評価>
実施例及び比較例において調製した樹脂組成物の粘度を、23℃において、温調機付粘度計(東機産業械社製TVE-35H)を用いて、測定対象である樹脂組成物の粘度が測定可能な回転速度及びコーンローターを用いて測定し、せん断速度依存性評価を行った。
具体的には、測定回転数a(rpm)における粘度ηa(mPa・s)と、測定回転数b(rpm)における粘度ηb(mPa・s)とを測定し(ここでa*10=bである)、下記式で表されるTIを求めた。
TI=ηa/ηb
測定可能な回転速度の具体例は、例えば、0.5,1,2.5,5,10,20,50,100rpmである。
測定可能なコーンローターの具体例は、例えば、1°34’(コーンローターの角度)×R24(コーンローターの直径),1°34’×R12,0.8°×R24,0.8°×R12,3°×R24,3°×R12,3°×R17.65,3°×R14,3°×R12,3°×R9.7である。
【0121】
<コーティング評価>
実施例及び比較例において調製した樹脂組成物を、スリットコーター(SCREENファインテックソリューションズ(株)製)を用いて300mm*300mmのガラス基板に295mm*295mmの塗布面積で塗布し、コーティング評価を行った。
【0122】
(スリットノズル評価)
実施例及び比較例において調製した樹脂組成物(ワニス)を、スリットコーターのノズルに充填し、下記基準で評価し、表に記載した。
ノズルからワニスの吐出を開始し、吐出を停止した後、ワニスがスリットノズルから垂れ落ちる:液漏れ
ノズルからワニスが吐出されない:目詰まり
液漏れ、目詰まりなくコートできる:問題なし
【0123】
(コートギャップ)
実施例及び比較例において調製した樹脂組成物(ワニス)を、イミド化(酸素濃度10質量ppm以下において、100℃で1時間加熱後、400℃で30分間加熱)した後の膜厚が10μmになるようにガラス基板上にコート(塗布速度100mm/sec)した。その際のスリットコーターのコートギャップ設定値を表に記載した。
【0124】
(エッジ評価)
実施例及び比較例において調製した樹脂組成物をガラス基板にコートし、乾燥炉に移動し100℃で1時間加熱した後、塗膜のエッジ部を、光学顕微鏡を用いて10倍で観察し、下記基準で評価した。
また、触針式段差計(P-15:KLA Tencor製)を用いて、塗布膜のエッジビード(エッジ部の盛り上がり)を測定し、下記基準で評価した。
エッジ部分の顕微鏡観察で0.5mm以上の幅の液だれが観察される:ダレ
エッジ部分の膜厚測定でビードの厚さが塗布膜厚さの30%以上である:ビード
ダレ、エッジ異常がいずれもない:問題なし
【0125】
(スリットコート可否)
前記(スリットノズル評価)、(コートギャップ)、(エッジ評価)について、下記基準で評価し、表に記載した。
各実施例及び比較例の所定の重量平均分子量のポリイミド前駆体を用いた組成物において、7~28質量%の範囲の少なくともいずれかの固形分含有量で、下記すべての評価結果をみたす:可
各実施例及び比較例の所定の重合平均分子量のポリイミド前駆体を用いた組成物において、固形分含有量7~28質量%の範囲では、下記すべての評価結果をみたす場合がない:不可
スリットノズル評価:問題なし
コートギャップ:50μm以上
エッジ評価:問題なし
【0126】
<硬化膜 膜厚均一性(標準偏差)>
上記<コーティング評価> (コートギャップ)においてガラス基板上に作製した実施例及び比較例にかかるポリイミドフィルム(すなわち、300mm*300mmのガラス基板に295mm*295mmで形成したポリイミドフィルム)を用いた。ポリイミドフィルムが形成されたガラス基板を用いて、塗布面の中心から、MD(すなわちスリットコート方向)及びTD(MDに対して直角の方向)それぞれの端面に向かって、20mm間隔の位置の膜厚を測定した(したがって、一番端は、端面から7.5mmの位置となる。)(MD15点、TD15点で合計30点)。膜厚の測定は、接触式段差計を使用した。その結果から、ポリイミドフィルムの膜厚均一性(30点の膜厚の標準偏差)を計算し、下記基準で評価した。
良:面内膜厚均一性(3シグマ)が1.0μm以下
可:面内膜厚均一性(3シグマ)が1.0μm超 2.0μm以下
不良:面内膜厚均一性(3シグマ)が2.0μm超
【0127】
<硬化膜 伸度>
実施例及び比較例において調製した樹脂組成物を、表面にアルミニウム蒸着層を設けた6インチシリコンウェハー基板に、硬化後膜厚が10μmになるようにスピンコートし、100℃にて6分間プリベークした。その後、縦型キュア炉(光洋リンドバーグ社製、型式名VF-2000B)を用いて、庫内の酸素濃度が10質量ppm以下になるように調整して、400℃で30分間の加熱硬化処理を施し、ポリイミドフィルムが形成されたウェハーを作製した。次に、ダイシングソー(株式会社ディスコ製 DAD 3350)を用いて該ウェハーのポリイミドフィルムに3mm幅の切れ目を入れた後、希塩酸水溶液に一晩浸してフィルム片を剥離し、乾燥させた。これを、長さ50mmにカットし、サンプルとした。
【0128】
上記のサンプルにつき、TENSILON(オリエンテック社製 UTM-II-20)を用いて、試験速度40mm/min、初期荷重0.5fsにて伸度を測定した。下記基準で評価し、表に記載した。
優:40%以上
良:20%以上、40%未満
可:20%未満
【0129】
<硬化膜 ヘイズ(Haze)>
上記<コーティング評価>(コートギャップ)においてガラス基板上に作製した実施例及び比較例にかかるポリイミドフィルムを用いた。
【0130】
得られたサンプルについて、スガ試験機社製SC-3H型ヘイズメーターを用いてJIS K7105透明度試験法に準拠してヘイズ(膜厚10μm換算)の測定を行った。 測定結果は下記基準で評価し、表に記載した。
優:ヘイズが0.5以下
良:ヘイズが0.5より大きく1.5以下
可:ヘイズが1.5より大きい
【0131】
<硬化膜 黄色度(YI))>
上記<コーティング評価>(コートギャップ)においてガラス基板上に作製した実施例及び比較例にかかるポリイミドフィルムを用いた。得られたサンプルについて、日本電色工業(株)製(Spectrophotometer:SE600)にてD65光源を用いて黄色度(YI)値(膜厚10μm換算)を測定した。結果を表に記載した。
【0132】
<硬化膜 Rth(レタデーション、厚み方向レタデーション)>
上記<コーティング評価>(コートギャップ)においてガラス基板上に作製した実施例及び比較例にかかるポリイミドフィルムを用いた。得られたサンプルについて、位相差複屈折測定装置(王子計測機器社製、KOBRA-WR)を用いて、Rth(膜厚10μm換算)を測定した。測定光の波長は589nmとした。結果を表に記載した。
【0133】
<比較例1-1>
撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながらNMP(812g)を加え、ジアミンとして4,4’-DAS(4,4’-ジアミノジフェニルスルホン)(14.2g)、TFMB(12.2g)、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(10.56g)を撹拌しながら加え、続いて酸二無水物としてPMDA(15.3g)、BPDA(8.8g)を加えた(酸二無水物、ジアミンのモル比(100:98))。次に、オイルバスを用いて80℃に昇温し4時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た。得られたワニスは冷凍庫(設定-20℃、以下同じ。)で保管し、評価をする際は解凍して使用した。
【0134】
<比較例1-2~1-6>
NMP量を変更して表1の固形分含有量にしたことを除いて比較例1-1と同様に行った。
【0135】
<実施例1-1>
撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、ジアミンとして4,4’-DAS(15.3g)及びTFMB(12.4g)、並びにこれらのジアミンの全質量の2倍の質量の重合溶媒(NMP)を加えた。
次に上記セパラブルフラスコに滴下ロートをセットし、その滴下ロートに窒素ガスを導入しながら酸二無水物としてPMDA(15.3g)及びBPDA(8.8g)、並びにこれらの酸二無水物の2倍の質量の重合溶媒(NMP)を加えた。そして、室温にて小型の撹拌羽根で撹拌した。
続いて上記セパラブルフラスコに別の滴下ロートをセットし、その滴下ロートに窒素ガスを導入しながら、ジアミンとして両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイルX-22-1660B-3(10.56g)及び当該シリコーンオイルの2倍の質量の重合溶媒(NMP)を加えた。そして、室温にて小型の撹拌羽根で撹拌した。
そして、セパラブルフラスコ内のジアミン溶液を撹拌しながら、室温で、上記滴下ロートの小型の撹拌羽根を撹拌したままで、同時に酸二無水物溶液とシリコーンオイルとの滴下を開始した。滴下はいずれも低速で行い、30分以上かけて滴下した。滴下後、洗浄溶媒(NMP)で洗浄し、残存物を滴下した(酸二無水物、ジアミンのモル比(100:99))。
その後、追加溶媒(NMP)を加え、最終的に表1の固形分含有量になるようにした。続いて室温で30分撹拌し、続けてオイルバスを用いて70℃に昇温し4時間撹拌した。その後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た。得られたワニスは冷凍庫(設定-20℃、以下同じ。)で保管し、評価をする際は解凍して使用した。
【0136】
<実施例1-2~1-17、2-1~2-14、3-1~3-16、4-1~4-12>
酸二無水物及びジアミンの配合を表1~4に示すとおりとし、これに応じて重合溶媒の使用量を変え(すなわち酸二無水物又はジアミンの質量の2倍の量となるように調整し)、更に実施例1-5~1-8、2-5~2-14、3-3~3-16、4-5~4-12については「70℃に昇温し4時間撹拌」を「40℃に昇温し12時間撹拌」に変更し、実施例1-9、2-9、3-9、4-9については「追加溶媒(NMP)」を「追加溶媒(NMP及びGBL)(添加後のNMP/GBLが100/100(w/w)になるよう調整)」に変更した他は、実施例1-1と同様にした。表1~4に示す固形分量は上記追加溶媒の量を変えることで表に示す値に調整した。なお実施例1-16、2-12、2-13、3-14、3-15、4-10、4-11において「12時間撹拌」した後更に反応時間を延長したものの重量平均分子量を測定したところ、12時間撹拌後と比べて大きくなることは無かった。
【0137】
<比較例2-1~2-6、3-1~3-6、4-1~4-7>
比較例2-1、3-1、4-1は、比較例1-1のNMP量を745g(比較例2-1)、799g(比較例3-1)、850g(比較例4-1)にそれぞれ変更し、酸二無水物及びジアミンの配合を表2に示すとおりとしたことを除いて比較例1-1と同様に行った。また、NMP量を変更して表2~4の固形分含有量にしたことを除いて、比較例2-2~2-6は比較例2-1と、比較例3-2~3-6は比較例3-1と、比較例4-2~4-7は比較例4-1と、それぞれ同様に行った。
【0138】
<比較例5-1>
撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながらNMP(620g)を
加え、ジアミンとして4,4’-DAS(24.8g)を撹拌しながら加え、続いて酸二無水物としてPMDA(21.8g)を加えた(酸二無水物、ジアミンのモル比(100:100))。次に、オイルバスを用いて80℃に昇温し4時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た。得られたワニスは冷凍庫で保管し、評価をする際は解凍して使用した。
【0139】
<比較例5-2~5-6>
NMP量を変更して表5の固形分含有量にしたことを除いて比較例5-1と同様に行った。
【0140】
<実施例5-1>
撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながらジアミンとして4,4’-DAS(24.3g)と、ジアミンの全質量の2倍の質量のNMPを加えた。
次に上記セパラブルフラスコに滴下ロートをセットし、その滴下ロートに窒素ガスを導入しながら酸二無水物としてPMDA(10.9g)、BPDA(14.7g)とこれらの酸二無水物の2倍の質量のNMPを加えた。そして、室温にて小型の撹拌羽根で撹拌した。
そして、セパラブルフラスコ内のジアミン溶液を撹拌しながら、室温で、上記滴下ロートの小型の撹拌羽根を撹拌したままで、酸二無水物溶液の滴下を開始した。滴下は低速で行い、30分以上かけて滴下した。滴下後、洗浄溶媒(NMP)で洗浄し、残存物を滴下した(酸二無水物、ジアミンのモル比(100:98))。
その後、追加溶媒(NMP)を加え、最終的に表5の固形分含有量になるようにした。続いて室温で30分撹拌し、続けてオイルバスを用いて70℃に昇温し4時間撹拌した。その後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た。得られたワニスは冷凍庫(設定-20℃、以下同じ。)で保管し、評価をする際は解凍して使用した。
【0141】
<実施例5-2~5-9、6-1~6-9、7-1~7-4、8-1、8-2>
酸二無水物及びジアミンの配合を表5~9に示すとおりとし、これに応じて重合溶媒の使用量を変え(すなわち酸二無水物又はジアミンの質量の2倍の量となるように調整し)、更に実施例5-3~5-9、6-5~6-9、7-4、8-1、8-2については上記「70℃に昇温し4時間撹拌」を「40℃に昇温し12時間撹拌」に変更し、実施例5-7、6-4、7-4については「追加溶媒(NMP)」を「追加溶媒(NMP及びGBL)(添加後のNMP/GBLが100/100(w/w)になるよう調整)」に変更した他は、実施例5-1と同様にした。表5~9に示す固形分量は上記追加溶媒の量を変えることで表に示す値に調整した。なお実施例5-8,5-9、6-6~6-9において「12時間撹拌」した後更に反応時間を延長したものの重量平均分子量を測定したところ、12時間撹拌後と比べて大きくなることは無かった。
【0142】
<比較例6-1~6-6、7-1~7-8、8-1~8-2>
比較例6-1、7-1、8-1~8-2は、比較例5-1のNMP量を664g(比較例6-1)、718g(比較例7-1)、401g(比較例8-1)、344g(比較例8-2)にそれぞれ変更し、酸二無水物及びジアミンの配合を表6~8に示すとおりとしたことを除いて比較例5-1と同様に行った。比較例6-2~6-6はNMP量を変更して表6の固形分含有量にしたことを除いて比較例6-1と同様に行い、比較例7-2~7-6はNMP量を変更して表7の固形分含有量にしたことを除いて比較例7-1と同様に行った。比較例7-7、7-8は、NMP量を718gから215g(比較例7-7)、163g(比較例7-8)にそれぞれ変更し、酸二無水物及びジアミンの配合を表7に示すとおりとし、「4時間撹拌」を「3時間撹拌」に変更したことを除いて比較例7-1と同様に行った。
【0143】
<比較例9-1>
撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながらNMP(495g)を加え、ジアミンとしてTFMB(30.9g)を撹拌しながら加え、続いて酸二無水物としてBPAF(9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物)(45.8g)、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイルをX-22-1660B-3(10.56g)を加えた(酸二無水物、ジアミンのモル比(100:99))。次に、オイルバスを用いて80℃に昇温し4時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た。得られたワニスは冷凍庫で保管し、評価をする際は解凍して使用した。
【0144】
<比較例9-2~9-3>
NMP量を495gから438g(比較例9-2)、374g(比較例9-3)にそれぞれ変更し、酸二無水物及びジアミンの配合を表9に示すとおりとしたことを除いて、比較例9-1と同様に行った。
【0145】
<実施例9-1>
撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながらジアミンとしてTFMB(31.3g)と、ジアミンの全質量の2倍の質量のNMP(63g)を加えた。
次に上記セパラブルフラスコに滴下ロートをセットし、その滴下ロートに窒素ガスを導入しながら酸二無水物としてBPAF(45.8g)とこの酸二無水物の2倍の質量のNMP(92g)を加えた。そして、室温にて小型の撹拌羽根で撹拌した。
続いて上記セパラブルフラスコに別の滴下ロートをセットし、その滴下ロートに窒素ガスを導入しながら、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイルX-22-1660B-3(10.56g)と当該シリコーンオイルの2倍の質量のNMP(21g)を加えた。そして、室温にて小型の撹拌羽根で撹拌した。
そして、セパラブルフラスコ内のジアミン溶液を撹拌しながら、室温で、上記滴下ロートの小型の撹拌羽根を撹拌したままで、酸二無水物溶液の滴下を開始した。滴下は低速で行い、30分以上かけて滴下した。滴下後、洗浄溶媒(NMP)で洗浄し、残存物を滴下した(酸二無水物、ジアミンのモル比(100:100))。
その後、追加溶媒(NMP)を加え、最終的に表9の固形分含有量になるようにした。
続いて室温で30分撹拌し、続けてオイルバスを用いて40℃に昇温し12時間撹拌した。その後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液(以下、ワニスとも記す)を得た。得られたワニスは冷凍庫(設定-20℃、以下同じ。)で保管し、評価をする際は解凍して使用した。
【0146】
<実施例9-2、9-3>
酸二無水物及びジアミンの配合を表9に示すとおりとし、これに応じて重合溶媒の使用量を変え(すなわち酸二無水物又はジアミンの質量の2倍の量となるように調整し)た他は実施例9-1と同様に行った。表9に示す固形分量は上記追加溶媒の量を変えることで表に示す値に調整した。
【0147】
<実施例10-1>
撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながらNMP(246g)を加え、ジアミンとして4,4’-DAS(14.4g)、TFMB(12.4g)、両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(10.56g)を撹拌しながら加え、続いて酸二無水物としてPMDA(15.3g)、BPDA(8.8g)を加えた(酸二無水物、ジアミンのモル比(100:99))。次に、オイルバスを用いて70℃に昇温し8時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、透明なポリアミド酸のNMP溶液を得た。得られたワニスは冷凍庫(設定-20℃、以下同じ。)で保管し、評価をする際は解凍して使用した。
【0148】
<実施例10-2~10-5>
NMP量を246gから225g(実施例10-2)、242g(実施例10-3)、185g(実施例10-4)、201g(実施例10-5)にそれぞれ変更し、酸二無水物及びジアミンの配合を表10に示すとおりとしたことを除いて、実施例10-1と同様に行った。
評価の結果を表10に示す。
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【産業上の利用可能性】
【0159】
本開示の樹脂組成物は、フレキシブルデバイス(例えばフレキシブル基板)、特にフレキシブルディスプレイ等の用途に好適に適用できる。例えば、本開示の樹脂組成物は、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、電子ペーパー等の表示装置の透明基板を形成するために好適に用いることができる。より具体的には、本開示の樹脂組成物は、薄膜トランジスタ(TFT)の基板、カラーフィルタの基板、透明導電膜(ITO、IndiumThinOxide)の基板等を形成するために用いることができる。
【符号の説明】
【0160】
2a 下部基板
2b 封止基板
25 有機EL構造部
250a 赤色光を発光する有機EL素子
250b 緑色光を発光する有機EL素子
250c 青色光を発光する有機EL素子
251 隔壁(バンク)
252 下部電極(陽極)
253 正孔輸送層
254 発光層
255 上部電極(陰極)
256 TFT
257 コンタクトホール
258 層間絶縁膜
259 下部電極
261 中空部