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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】遠心分離機およびその操作方法
(51)【国際特許分類】
   B04B 13/00 20060101AFI20240813BHJP
   B04B 9/10 20060101ALI20240813BHJP
   B04B 9/14 20060101ALI20240813BHJP
   B04B 7/08 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B04B13/00
B04B9/10
B04B9/14
B04B7/08
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2022507837
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2020072200
(87)【国際公開番号】W WO2021028325
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】102019121598.6
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508291836
【氏名又は名称】アンドレアス ヘティック ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ホルネク
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ルンツェ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ホルデール
(72)【発明者】
【氏名】クラウス-ギュンター エベルレ
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0293555(US,A1)
【文献】特開2009-240886(JP,A)
【文献】特開2015-020123(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03415239(EP,A1)
【文献】特開2007-090325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 13/00
B04B 9/10
B04B 9/14
B04B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(12)を有する遠心分離機であって、
前記ハウジングには、遠心分離されるべき試料を受け取るためのロータ(32)が配置されており、
前記ロータ(32)は、駆動部に接続された駆動軸(22)上に取り外し可能に着座し、
前記ロータ(32)は、遠心分離機(10)の動作中に前記駆動軸によって駆動されて回転軸線(30)の回りに回転し、
前記ロータ(32)は、第1の回転側トランシーバユニット(48)を有しており、この第1の回転側トランシーバユニットは電界によって励起され、その結果第1のトランシーバユニット(48)内に電圧を誘起し、
前記第1のトランシーバユニット(48)は、電圧源に接続された第2のハウジング側トランシーバユニット(62)と連携をとり、
前記2つのトランシーバユニット(48,62)は、それぞれトランシーバアンテナ(52,64)に接続され、
前記トランシーバユニット(48,62)および前記トランシーバアンテナ(52,64)は、それぞれのケース内において、前記回転軸線(30)と同心に環状支持体(46,60)上に配置されており、特徴とするところは、
一方のトランシーバユニット(48)の支持体(46)が、他方のトランシーバユニット(62)の支持体(60)よりも小さな直径を有しており、
一方のトランシーバユニット(48)のトランシーバアンテナ(52)は、前記回転軸線(30)に対して平行な方向において、他方のトランシーバユニット(62)のトランシーバアンテナ(64)と部分的に重なっていることである、遠心分離機。
【請求項2】
一方または両方の支持体の底面が金属上に載っていないことを特徴とする、請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項3】
前記トランシーバアンテナ(52、64)が、回転軸線(30)に対して平行な方向において、50%以上重なり合うことを特徴とする、請求項1または2に記載の遠心分離機。
【請求項4】
前記ロータ(32)は、前記第1のトランシーバユニット(48)のための第1の支持体(46)と、前記ロータ(32)のための識別子としての磁石(50)との両方を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項5】
前記第2のハウジング側トランシーバユニット(62)のための第2の支持体(60)は、磁石(50)によって特定されるように前記第1の支持体(46)のロータ識別情報を決定するための少なくとも1つのホールセンサ(66)を備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項6】
前記支持体(46、60)は、帯状であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項7】
各環状支持体(46、60)は、トランシーバユニット(48、62)およびトランシーバアンテナ(52、64)が搭載される可撓性の帯状の回路基板材料を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項8】
前記可撓性の帯状の回路基板材料は、ポリイミドを含むことを特徴とする、請求項7に記載の遠心分離機。
【請求項9】
前記第1のトランシーバユニット(48)は、前記ロータ(32)のデータが記憶されているメモリを有しており、前記メモリは、不揮発性メモリおよび読み出し-書き込みメモリの両方を備えることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項10】
前記第2のハウジング側トランシーバユニット(62)は、評価ユニットおよび/または表示ユニットに接続されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項11】
前記トランシーバアンテナ(52,64)は、いずれの場合も、周辺領域に環状支持体(46、60)を備えることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項12】
前記第1の支持体(46)は、前記ロータ(32)上に配置されたセンサからのさらなるデータを送信するために使用されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項13】
前記第1のトランシーバユニット(48)はトランスポンダを備え、前記第2のハウジング側トランシーバユニット(62)は関連するリーダを備えることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項14】
前記トランシーバユニット(48、62)がNFC規格に基づくことを特徴とする、請求項13に記載の遠心分離機。
【請求項15】
前記第1の支持体(46)と前記第2の支持体(60)との半径の差が、0.3mm~8mmの範囲にあることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項16】
トランシーバアンテナ(52、64)を備えた第1のトランシーバユニット(48)の支持体(46)および/または第2のトランシーバユニット(62)の支持体(60)は、保護ハウジングによって囲まれていることを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項17】
前記保護ハウジング(12)は、断面がU字形(44a)の環状チャンバ(44)として形成されていることを特徴とする、請求項16に記載の遠心分離機。
【請求項18】
第1の支持体(46)のための保護ハウジング(12)のU字形開口部が、回転軸線(30)に対して平行な方向において、ロータ(32)に向かって上方に向けられ、この側でロータ(32)に接続されることを特徴とする、請求項17に記載の遠心分離機。
【請求項19】
第2の支持体(60)のための保護ハウジング(12)のU字形開口部が、回転軸線(30)に対して平行な方向において、モータハウジング(36)に向かって下方に向けられ、この側でモータハウジング(36)に接続されることを特徴とする、請求項17または18に記載の遠心分離機。
【請求項20】
支持体(46、60)が保護ハウジング(12)に結合されていることを特徴とする、請求項16~19のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項21】
一組の異なるロータ(32)が設けられていることを特徴とする、請求項1~20のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項22】
前記ロータ(32)の各第1のトランシーバアンテナ(52)は、前記回転軸線(30)に対して同じ高さに配置されることを特徴とする、請求項21に記載の遠心分離機。
【請求項23】
各ロータ(32)が、駆動モータ上に下向きに面し、駆動軸(22)の回転軸線(30)と同心に配置された円筒状突起(32a)を有し、ロータ(32)が駆動軸(22)上に着座するロータ座部と、突起(32a)の自由端との間の距離がそれぞれ同じであることを特徴とする、請求項21または22に記載の遠心分離機。
【請求項24】
請求項1~21のいずれか1項に記載の遠心分離機を操作する方法であって、
第1のトランシーバユニット(48)の第1の組のデータが、動作中に第2のトランシーバユニット(62)によって読み取られ、
第2の組のデータが、第1の支持体(46)の磁石(50)を介して第2の支持体(60)のセンサによって取得され、
第1の組のデータと第2の組のデータとが比較され、それらが一致する場合、遠心分離機(10)の運転が継続することを特徴とする、遠心分離機の操作方法。
【請求項25】
前記第1および第2の組のデータが一致しない場合、遠心分離機(10)のスイッチが切られることを特徴とする、請求項24に記載の遠心分離機の操作方法。
【請求項26】
前記第1および第2の組のデータが一致しない場合、視覚的および/または音響的アラームがトリガされることを特徴とする、請求項24または25に記載の遠心分離機の操作方法。
【請求項27】
ロータ識別情報が第1のトランシーバユニット(48)および第1の支持体(46)の磁石(50)の両方から読み取られ、読み取られたロータ識別情報に対応する最大速度が遠心分離機(10)に割り当てられ、その最大速度は運転中に超えられないことを特徴とする、請求項24~26のいずれか1項に記載の遠心分離機の操作方法。
【請求項28】
加速度センサ(68)によって提供されるデータに関して所定の閾値を超えると、遠心分離機(10)のスイッチが切られることを特徴とする、請求項24~27のいずれか1項に記載の遠心分離機の操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載されたタイプの遠心分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機のロータによってサンプル成分を分離するために生物学的または化学的サンプルを遠心分離することは、通常、ロータの高い角速度を必要とする。この目的のために、遠心分離機の基本モデルと共に使用することができる、異なるサンプル用の異なるサンプル容器およびロータも存在する。この目的のために、ロータはこの遠心分離機の駆動軸に交換可能に接続される。所与の分離プロセスに対して、ロータタイプが、この特定のロータの関連する機械的特性に基づいて選択される。種々の異なるロータタイプの利用可能性は、とりわけ、生物学的および化学的実験研究、ならびに血液バンクおよび医療研究所において使用するための遠心分離機の汎用性を増大させる。
【0003】
ロータの種類ごとに、ロータの種類とその特性を示す特定のロータ識別情報がある。例えば、安全な運転のための最大定格速度である。これは、一般に、遠心力によって引き起こされる最大許容応力と力に依存する。ロータを安全に運転するために指定された最大定格速度を超えて運転すると、ロータが故障する可能性がある。これにより、大きな損傷が発生する。したがって、遠心分離機の制御システムは、現在どのロータが使用されて遠心分離機が運転されているのかを識別することができるようにすることが極めて重要であり、また最大速度などの特定の重要な数字が、遠心分離機の運転中に、維持されることが極めて重要である。
【0004】
運転中に材料に作用する高い力のためにロータは老化作用を受けるので、許容される最大運転サイクル数、すなわちスタート回数を超えないようにすることも同様に重要である。運転サイクル数を超えると、ロータが破損し、遠心分離機が破壊されるおそれがある。
【0005】
従来公知のロータ識別システムは、主にロータ識別情報を検出するための磁気または光センサに依存している。磁気システムでは、磁石は特定の円形又は環状の配置で回転子に取り付けられる。これらの磁石には、ハウジングに設けられた磁気センサ、例えばホールセンサが割り当てられている。異なる数の磁石だけでなく、ロータの磁石の間隔も、ロータ識別情報の一部となる。磁気センサは、ロータ識別情報を検出するために使用される。ロータ識別情報に基づいて、制御システムはロータに最大許容速度を割り当てる。その結果、使用されるロータは常にある最大許容回転数で運転される。このタイプの遠心分離機は例えば、EP0604912B1から知られている。
【0006】
さらに、制御システムでは、ロータコード当たりの始動回数がカウントされ、したがって、ユーザは、1つのタイプのロータのみが常に同じ遠心分離機内に残っている限り、信頼性をもって運転サイクルの回数を監視することができる。
【0007】
このようなシステムの利点は、それらが試行および試験されてきて堅牢であることであり、またロータ上に設けられた磁石も、損傷なく多くのオートクレーブ処理に耐えるであろうことである。
【0008】
欠点はコードの数が磁石の数に依存し、したがって制限されることである。例えば、同じ設計のロータは、常に同じコードを備えている。単一の遠心分離機または複数の遠心分離機で複数の同一のロータを使用する場合、特定のロータにサイクル数を割り当てることもはや不可能である。
【0009】
DE102004002110A1に開示されているのは、遠心分離される試料を受け入れるためにローターが配置されているハウジングを備えた遠心分離機である。ロータは駆動軸に着脱自在に取り付けられており、駆動軸は駆動装置に接続されている。遠心分離機の運転中、ロータは駆動軸によって駆動され、回転軸線の周りを回転する。ロータは、トランスポンダの形態のトランシーバアンテナを持つ第1のロータ側トランシーバユニットを有している。トランシーバアンテナは、電場を介して励起され、したがって、第1のトランシーバユニットに電圧を誘導する。トランシーバアンテナを備えたトランスポンダは、ロータの下面に平らに載置するように配置される。第1のトランシーバユニットは、電圧源に接続される第2のハウジング側トランシーバユニットと関連付けられる。
【0010】
トランスポンダは、クエリ応答原理に従って動作するトランシーバユニットである。トランスポンダによって受信された暗号化されたクエリ信号は、検出後に、クエリユニットからの他の情報に従って、解読され、評価される。続いて、クエリユニット用に選択的に向けられた暗号化された応答信号が、所望の情報を用いて自動的に生成される。
【0011】
この信号は、クエリユニットによって自動的に解読され、評価される。全てのロータ固有のデータはトランスポンダに格納され、そのようなデータは、例えば製造年、製造シリアル番号、遠心分離機の最大操作半径、最大回転数、駆動制御パラメータ、温度補償値、許容不均衡値、すなわち許容加速度値などである。さらに、動作時間、運転回数、始動回数などの追加データをトランスポンダのメモリに連続的に記憶することが可能であるべきである。
【0012】
DE102004002110A1に開示されている遠心分離機は、操作においてかなり不満足であり、一連実験用遠心分離機としての使用に適していないという欠点を有する。信頼性のあるデータ伝送は保証されない。なぜなら、トランスポンダ、すなわちトランシーバアンテナを持つ第1のトランシーバユニットはロータの下面上に水平に取り付けられてそれに対して平らに載置するようにされており、トランシーバアンテナを持つ第2のトランシーバユニットは駆動モータの上側に水平に取り付けられてそれに対して平らに載置するようにされている。両方のトランシーバユニットは、回転軸線と同心に、環状支持体上に取り付けられているが、それらは、回転軸線の高さに関して離間されている。ロータ上および駆動モータ上へのトランシーバアンテナを備えたトランシーバユニットのこの配置では、ロータ上および駆動モータ上の第1および第2のトランシーバユニットの背後に位置する金属によって、動作が悪影響を受けることになる。更に、種々のロータタイプは異なる寸法を有し、その結果、トランシーバアンテナの間隔はロータタイプに応じて変化する。ロータのタイプの寸法が異なり、軸方向の公差の合計があるため、第1および第2のトランシーバアンテナを互いに定められた距離に配置することはできない。
【0013】
一般的な遠心分離機は特開2015-20123号公報から知られており、この文献は、ICチップを有するリング形状のデータ記憶装置を有する遠心分離機を開示している。記憶装置は遠心分離機のロータを識別し、管理するために使用される情報を記憶する。ICチップメモリは不揮発性メモリであり、電源オフ時に記憶されたデータを失うことはない。ICチップには、データ記憶装置42内の配線を介した接続部が設けられている。ロータの識別及び管理に用いる情報は例えば、ロータの種類、製造番号、使用回数、累積使用期間等である。このうち、使用回数及び累積使用期間は、寿命管理用の書き換え可能なデータである。
【0014】
回転軸7aが回転すると(ステップ102、図10)、例えば運転中に停電等で電流が遮断された後、復旧によりステップ101で電源が再投入され、ロータ30は慣性により回転し続けるものとする。この場合、プロセスは、ステップ102でロータ30の回転が停止されるまで待機することになる。ここで使用される「停止」という用語は例えば、毎秒約1回転以下の十分に遅い回転速度にも関係し、厳密に静止した状態に限定されない。また、本実施の形態では、演算部14aが回転軸7aの回転が検出されたときに後者が非通電状態(OFF状態)となるようにアクチュエータ70を制御するように構成されている。
【0015】
演算部14aは、アクチュエータ70を非通電状態(OFF状態)に保つことになる。回転軸7aが回転するとき、および回転軸7aが停止するとき、アクチュエータ70が動作する。アダプタ40の端子(電極)43が接触する接続位置に端子50及び先端50aを移動させるために、アクチュエータがオンにされる(ステップ103)。従って、回転軸7aの回転中に、アダプタ40の端子(電極)43が接触する位置まで端子50が退避する。端子50がアダプタ40の端子(電極)43と接触しない位置では、端子50及びレバー60がロータ30を回転させる。減損はない。そして、演算部14aは、データ記憶装置42(ICチップ44)との間でデータの送受信が可能か否かを判定する。これにより、ロータ30がカップリングユニット12に取り付けられているか否かが判断される。端子(電極)43は上述したように、連続した環状形状であるため、ユーザは、任意の位置でロータ30を結合部12に接続することができる。端子50と端子(電極)43とは、常に接触しており、電流の供給及びデータの送受信を行うことができる。また、端子50の形状や大きさを適宜選択すれば、端子(電極)43は、C字状などの短い不連続部を有することができる。
【0016】
ステップ104において、データ記憶装置42(ICチップ44)との間でデータの送受信が可能であり、かつ、ロータ30が連結部12に接続されていると判定された場合、演算部14aは、ロータ30を動作させる。すなわち、データ記憶装置42(ICチップ44)はロータ30の識別情報、例えば、ロータの種類、シリアル番号、ロータの使用回数、累積使用期間を含む使用記録を読み込む(ステップ107)。このようにして、読み取られた識別情報に基づいて、装着されたロータ30が特定される(ステップ108)。
【0017】
一般にFR2428821に開示されているのは、互いに近接して互いに対して同軸に配置され、装置の回転軸を中心とする2つのコイルを備える回転装置用のデジタル信号伝送装置である。一方のコイルは回転子に永久的に接続され、他方のコイルは固定子に永久的に接続される。一方のコイルには、送信される信号が供給される。もう一方のコイルは受信機の役目を果たす。コイル間の半径方向距離は、それらの直径の25%以内である。コイルと金属塊との間の距離は十分でなければならず、コイルの直径の25%以内であるが、コイルの直径の1%以上である。コイルは磁気損失を避けるためにプラスチック樹脂または絶縁材料に埋め込まれている。コイルはステータとロータとの間に何らの回転電気接点を伴わずに、マシンからロータに電力を供給するための変圧器として作用する。
【0018】
WO2011/054901は、RFIDチップが駆動シャフト上の中央位置を占めるように駆動シャフトの上部に配置された遠心分離機を開示している。このRFIDチップは、駆動軸に装着されたロータの動作履歴に関するデータを記憶する手段である。遠心分離機の蓋は、駆動シャフト上に設けられたRFIDチップと相互作用するトランシーバ手段を有する。トランシーバ手段は、RFIDチップ上に記憶されたデータを読み取る(受信部のための)手段と、RFIDチップ上に記憶されるべきデータを送信する手段とを構成する。さらに、トランシーバ手段はRFIDチップとのデータ交換のために、RFIDチップとの非接触協働を可能にする。プログラムは、以下のものを記録するのに使用される。
-サイクルの最大数に関するデータ
-遠心サイクルのパラメータのデータへの変換
-駆動シャフトのRFIDチップに送信され、そこに記憶されたデータ
【0019】
さらに、これは、RFIDチップ上に記憶されたデータを受信し、そのようなデータを処理し、RFIDチップ上に記憶された動作履歴データがこの最大数のサイクルに既に到達したことを示すときに遠心分離サイクルが開始されることを防止するように、あるロータについての最大数のサイクルの間、そのようなデータをデータと比較することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】EP0604912B1
【文献】DE102004002110A1
【文献】特開2015-20123号公報
【文献】FR2428821
【文献】WO2011/054901
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、ロータのタイプにかかわらず、データが第1および第2のトランシーバユニット間で安全かつ確実に伝送されるように、請求項1の序文に記載されたタイプの遠心分離機の設計を改善することである。これは、特に、1つの遠心分離機において異なるタイプのロータが使用される場合に保証されるべきである。特に、ロータのサイズおよび形状は、現行の設計に関して変更されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、請求項1の特徴をその前提部分の特徴と組み合わせて有する遠心分離機によって達成される。
【0023】
従属請求項は、本発明の有利なさらなる実施形態に関する。
【0024】
本発明は、回転軸の方向にアンテナが重なっている、トランシーバアンテナの同心配置がデータ伝送を最適化するための設計オプションを増加させ、改善するという洞察に基づいている。
【0025】
本発明によれば、一方のトランシーバユニットの支持体は、他方のトランシーバユニットの支持体よりも小径である。トランシーバアンテナは回転軸に平行な方向に、一部の領域で重なり合う。これにより、異なるタイプのロータの設計及び寸法に関係なく、トランシーバアンテナを互いに対して常に同じように配置することができる。その結果、データ伝送品質はもはや、駆動モータと対向する側のロータ型又はロータ設計に依存せず、例えば、駆動モータの底部が駆動モータの上部からどの程度離間しているかに依存する。さらに、この新しい配置により、許容誤差の補償も容易になる。
【0026】
好ましくは、トランシーバアンテナが、少なくとも50%、好ましくは70%、さらに好ましくは90%、さらに好ましくは95%、さらに好ましくは100%重なり合う。これにより、トランシーバユニット間のデータ伝送の品質がさらに向上し、トランシーバユニットの送受信パワーを削減することができる。さらに、特に軸方向における製造公差、データ伝送の品質にほとんど影響を及ぼさないであろう。
【0027】
本発明の一実施形態において、第1のトランシーバユニット用の第1の支持体は、ロータ用の識別手段として磁石を有する。加えて、第2のトランシーバユニット用の第2の支持体は、磁石によって提供されるように第1の支持体のロータ識別コードを検出する少なくとも1つのホールセンサを備える。したがって、これにより、データ、例えばロータ識別情報の冗長な伝送が可能になる。
【0028】
トランシーバユニットには、特にロータのオートクレーブ中に許容温度を超えた場合に、その機能に関して重大なストレスと損傷を受けたり、少なくとも損なわれる可能性のある、安全上重要な機能を有する温度に敏感な半導体が含まれる。さらに、これらの部品はまた、高い遠心加速度を受ける。従って、先行技術のトランシーバユニットで生じる不具合は、ロータを過度にストレスにさらすことになり、その結果として生じる結果をもたらす。このため、速度は、磁石に基づいて試行され試験されたいわゆるタコ符号化によって追加的に監視される。
【0029】
容易な組立を保証するために、支持体は帯状であり、支持部の溝に挿入され、ポッティングコンパウンドで固定される。
【0030】
各場合、リング形状の支持体は、トランシーバユニットおよびトランシーバアンテナが搭載される可撓性の帯状プリント回路基板材料を含んでもよい。トランシーバユニットは、好ましくは支持体内に成形される。このような可撓性プリント回路基板材料は、電子部品およびそれらを接続するラインをその上に実装するのに特に適している。
【0031】
好ましくは、可撓性プリント回路基板材料がポリイミドを含む。
【0032】
可撓性プリント回路基板の代替として、アンテナおよび導電路を有する関連電気部品は、MIO(成形相互接続デバイス)プロセスを使用して、プラスチック支持部品に直接適用することができる。
【0033】
別の有利な実施形態では、プリント回路基板がオーバーモールドによって射出成形されたプラスチック部品に直接埋め込まれ、次いで、プラスチック部品が保護ハウジングを形成する。
【0034】
第1のトランシーバユニットは、例えば、製造年、製造シリアル番号、最大遠心動作半径、最大回転周波数、駆動制御パラメータ、温度補償値、許容不均衡値、すなわち許容加速度値などのロータのデータが記憶されるメモリを有することができ、特に、メモリは、不揮発性メモリと読出し-書込みメモリとの両方を含む。不揮発性メモリは、すべての安全関連データを記憶するために使用することができる。読取り-書込みメモリは、回転サイクルの実行およびこれらのサイクル中に優勢な回転条件に関する更新を記憶するために使用することができる。
【0035】
例えば、ロータ識別情報だけでなく他の記憶されたロータデータも容易に表示することができるように、第2のトランシーバユニットは、評価ユニット及び/又は表示ユニットを備えている。
【0036】
データ伝送のために、トランシーバユニットはそれぞれトランシーバアンテナを有する。トランシーバアンテナは好ましくはトランシーバアンテナがその周辺領域の支持体を取り囲むように、支持体内に配置される。
【0037】
ロータから更なるデータを収集する目的で、ロータ上に追加のセンサが設けられ、トランシーバユニットに接続される。温度センサは例えば、ロータ上で直接温度を測定し、それを例えばトランシーバユニットを介して表示ユニットに送信するために設けられる。
【0038】
第2のトランシーバユニットが永久的に接続され、かつ制御ユニットへの電気的接続を有するモータにおいて、不均衡検出のための加速度センサのような追加のセンサが設けられてもよく、このセンサも制御ユニットに接続される。有利な実施形態では、これらのセンサがまた、第2のトランシーバユニットのプリント回路基板上に設置される。
【0039】
本発明の一実施形態では、第1のトランシーバユニットはトランスポンダを含み、第2のトランシーバユニットは関連するリーダを含む。
【0040】
これらのトランシーバユニットは、特に短距離でのデータの干渉のない伝送に有用であると証明されているNFC規格に基づくことができる。
【0041】
第1の支持体と第2の支持体の半径の差は、0.3mm~8mmの範囲である。一方で、ここでの目的は最適なデータ伝送を保証するために、支持体間の距離をできるだけ小さく保つことであり、他方で、電気部品を持つ支持体を保護された方法で取り付け、機械的損傷から保護することである。
【0042】
好ましくは、トランシーバユニット及びトランシーバアンテナを各々装備した第1及び/又は第2の支持体が、保護ハウジング内に入れられる。これにより、トランシーバユニット及びトランシーバアンテナを保護ハウジング内に保護された方法で配置することができる。これにより、トランシーバユニットおよびトランシーバアンテナの両方を機械的損傷から保護する。
【0043】
保護ハウジングは、断面がU字形の環状チャンバとして設計することができる。第1支持体用の保護ハウジングのU字状開口部は、回転軸線に平行な方向において、ロータに向かって上方に向けられ、この側のロータに接続されることができる。第2支持体用の保護ハウジングにおいて、保護ハウジングのU字状開口部は、回転軸線に平行な方向において、モータハウジングに向かって下方に向けられ、この側でモータハウジングに接続される。
【0044】
第1および/または第2の支持体は、保護ハウジングをロータまたはモータにしっかりと取り付けるために、保護ハウジングに結合されてもよい。次いで、完全な保護ハウジングは、例えばネジを用いて、ロータ及びモータに接続される。結合は支持体を完全に包囲し、従って、それを防水様式で埋め込む、注型樹脂のようなポッティング化合物を用いて行うことができる。オートクレーブは問題なく可能である。
【0045】
本発明の一実施形態では、一組の異なるロータがそれによって駆動され得る遠心分離機のために提供される。
【0046】
この場合、ロータの各第1のトランシーバユニットを、回転軸線に対して同じ高さに配置することもできるので、均一な伝送品質を確保することができる。
【0047】
各ロータにとって、駆動モータに向かって下方に延びる円筒状の突起を有することは有利であり、この突起は、駆動軸の回転軸線に対して同心状に配置される。ロータが駆動軸上に着座するロータ座部と、突出部の自由端との間の距離は、それぞれの場合において同じである。これは、回転軸線に対してトランシーバユニットを同じ高さに配置する方法を提供する。
【0048】
さらなる態様において、本発明は、上記のタイプの遠心分離機を操作するための方法に関する。この場合、第1のトランシーバユニットからの第1の組のデータは、運転中に第2のトランシーバユニットによって取得され、好ましくは同時に、第1の支持体の磁石に関する第2の組のデータは、第2の支持体のセンサによって取得される。次に、第1および第2の組のデータが比較される。第1および第2の組のデータが一致する場合、遠心分離機の運転は継続する。
【0049】
特に、第1および第2の組のデータが一致しない場合、遠心分離機はスイッチオフされる。それに加えて、またはその代わりに、第1および第2の組のデータが一致しない場合、視覚的および/または音響的アラームがトリガされてもよい。
【0050】
本発明の実施形態において、ロータ識別情報は、第1のトランシーバユニットと第1の支持体の磁石との両方から読み取られる。読み取られたロータ識別情報には、動作中に超過されない遠心分離機の対応する最大速度が割り当てられる。
【0051】
本発明のさらなる利点、特徴、および可能な用途は、図面に示される実施形態を参照する以下の説明から得られる。
【0052】
明細書、特許請求の範囲および図面を通して、これらの用語および関連する参照記号は、以下の参照記号のリストに記載されるように使用される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明による遠心分離機の上面斜視図であり、上方から角度をなして示している。
図2図1の遠心分離機の長手方向中心軸線に沿った断面図である。
図3図2にXで示す遠心分離機の細部の拡大図である。
図4図3にYで示す遠心分離機の細部の別の拡大図である。
図5】アンテナを備えた帯状の支持体、および第1のトランシーバユニットを示す図である。
図6】リングを形成するように閉じられた図5の支持体を示す図である。
図7a】保護ハウジングを有する第1のトランシーバユニットの上面斜視図であり、上方から度をなして示している。
図7b図7aの第1のトランシーバユニットの分解図である。
図8】アンテナを備えた帯状の支持体、ホールセンサを備えた第2のトランシーバユニット、および加速度計を示す図である。
図9】リングを形成するように閉じられた図8の支持体を示す図である。
図10】サポートの断面図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図面は、本発明による遠心分離機10の実施形態を示す。遠心分離機10は、ハウジング12と、ハウジング12の上部を閉鎖する蓋14とを含む。ハウジング12の内部では、駆動モータ16がダンピング手段18を介してハウジング12に強固に接続されている。保護容器20がハウジング12に取り付けられている。簡単にするために、締結具は図面には示されていない。保護容器20は、駆動軸22に対して同心円状に配置されている。保護容器20には、駆動モータ16の一部が通過するための同心円状の円形凹部24が形成されている。
【0055】
ハウジング12には、ハウジング12の底部26の領域に配置された4つの脚部28が設けられており、この脚部は実質的に矩形形状の遠心分離機10の底部26の角部領域に配置されている。
【0056】
駆動モータ16の駆動軸22は、回転軸線30を中心として回転するようになっており、これと同心軸になっている。
【0057】
回転軸線30に同心に配置され、従って駆動軸22にも同心に配置され、駆動軸22上に位置するロータ32が設けられている。ロータ32は、ここでは詳細には示されていないクイックリリースファスナを介して、別のロータ32に容易に交換することができる。遠心分離機10は、異なるタイプの試料および試料容器を遠心分離するための異なる用途のために異なるように設計された一組のロータ32によって操作することができる。
【0058】
各ロータ32はサンプル容器のための複数のレセプタクルを有するが、明確にするためにここでは詳細に示されていない。
【0059】
図3図2においてXで示された細部の拡大図であり、図4は、図3においてYで示された細部の拡大図である。
【0060】
ロータ32の下部は、駆動軸22を含むペグ状の円筒状の突起32aを有している。ロータ32が駆動軸22に取り付けられ、所定の位置にしっかりと固定された後、ペグ状の突起32aは、駆動モータ16の上部の肩部34から離れた位置に配置される。駆動軸22は、駆動モータ16のモータハウジング36から、モータハウジング36の一部である肩部34を越えて、ロータ32のペグ状突起32aを通り、さらにロータ32内に延びている。肩部34は駆動モータ16のモータハウジング36の一部であり、従って、駆動モータ16の静止部分の一部であり、一方、駆動シャフト22は、回転軸線30を中心に回転する駆動モータ16の部分の一部である。
【0061】
モータハウジング36の肩部34には、肩部34から上方に延び、肩部34を横方向に画定する環状肩部38が設けられている。肩部34は、ロータ32に向かって延在するモータハウジング36の円筒状突起40の一部である。環状肩部38および肩部34の両方は、駆動モータ16に関連したベアリングシールドの一部である。
【0062】
駆動モータ16は実質的に回転対称の設計であり、回転軸線30に同心円状に配置されている。突出部40は、保護容器20を貫通して、保護容器20と蓋14とによって画定されたロータチャンバ42内に延びている。保護容器20の下方では、モータハウジング36の残りの部分が遠心分離機10のハウジング12の底部26の近くまで延びている。
【0063】
ロータ32の突起32aの下面32bに隣接して、断面U字状のプラスチック製の環状のチャンバ44があり、そのU字状の開口44aがロータ32の突起32aの下面32bの方向に対向し、回転軸線30に同心円状に配置されている。好ましくは、環状チャンバ44は、ネジ止めされており、U字状の開口44aの脚部の端面を介してロータ32の突起32aの下面32bに接続されている。このようにして、環状チャンバ44は、ロータ32にしっかりと固定され、したがって、ロータ32の動作中に共に回転する。円筒状突起32aは全ての異なるロータ32、およびロータタイプにおいて同様であり、特に、突起32aの下側と肩部34との間の直径及び距離並びに突起32aの下側と駆動シャフト22上のロータ32の座部(ここでは図示せず)との間の距離は同様である。
【0064】
環状チャンバ44の下面は、モータハウジング36の突出部40のほぼ水平に延びる肩部22aの方を向いている。肩部22aの頂部と環状チャンバ44の下面との間には、部品間の接触を防止するのに十分なクリアランスがある。
【0065】
帯状の支持体46が環状チャンバ44の脚部の内側に接着されており、この脚部は断面がU字形である。支持体46は、可撓性を有するフィルム状の回路基板材料、すなわちポリイミドから形成されている。支持体46の一側に配置されているのは、第1のトランシーバユニット48であり、それから離間して複数の磁石50が配置されている。トランシーバユニット48はその外側の周辺領域において支持体46を取り囲むトランシーバアンテナ52に接続されている。図5及び図6、並びに図7a及び図7bも参照されたい。
【0066】
レセプタクル54は、各磁石50に関連している。支持体46と、それぞれの関連するレセプタクル54内の磁石50との間には、組み立て後にポッティングコンパウンドで満たされるキャビティ56が設けられる。使用されるポッティングコンパウンドは例えば、エポキシ樹脂であることができる。
【0067】
支持体46は、ストリップ(帯)要素として形成される。図5では支持体46は平坦に延ばされており、図6では支持体46が環状の形態、すなわち、挿入されたときに想定される形状で示されている。
【0068】
第2の環状チャンバ58(ディップリング)も環状肩部38上に設けられ、このチャンバは断面がU字形である。そのU字形開口部58aは、モータハウジング36の突出部40の環状肩部38の頂部38aの方向を向いている。環状肩部38は回転軸線30と同心であり、U字形開口部58aの脚部の端面を介してモータハウジング36の突出部40の環状肩部38の頂部38aに接続されている。このようにして、環状チャンバ58は、モータハウジング36にしっかりと固定され、従って、遠心分離機10の作動中、静止したままである。
【0069】
帯状の支持体60が、断面がU字形である環状チャンバ58の脚部の内側に接合されている。支持体60は、可撓性を有するフィルム状の回路基板材料、すなわちポリイミドからなる。支持体60の一側に配置されているのは、第2のトランシーバユニット62とホールセンサ66である。第2のトランシーバユニット62は、周辺領域の支持体60を囲むトランシーバアンテナ64に接続されている。この点で、支持体60は支持体46と同様の設計である。
【0070】
支持体60は同様に、ストリップ要素として形成され、その自由端に電気接続線70を有し、この線は制御ユニットに至る。
【0071】
環状チャンバ44および58はそれぞれ、その中に収容された支持体46、60のための保護室を形成し、例えば、機械的損傷からそれらを保護する。特に、環状チャンバ44は、オートクレーブ処理中に支持体46の電気部品を保護するように作用するので、重要である。
【0072】
第2のトランシーバユニット62は、遠心分離機10用の外部ユニットおよびこれに接続された表示部を備えた制御部(ここでは詳細は図示せず)に接続されている。
【0073】
環状チャンバ58は、回転軸線30に関して環状チャンバ44に対して半径方向外側に配置される。環状チャンバ44、58間の距離は、0.3mm~8mmの範囲である。2つのトランシーバアンテナ52、64は、回転軸線30に関して同じ高さに配置され、したがって100%重なる。これにより、トランシーバアンテナ52、64間、したがってトランシーバユニット48、62間の最適なデータ伝送が保証される。
【0074】
ロータ識別情報も、送信されるデータの一部である。
【0075】
また、第2支持体60のホールセンサ66と第1支持体46の磁石50とは、回転軸線30に関して同じ高さに配置されているので、100%重なる。公知の方法で、磁石の数およびそれらが配置される態様によって構成されるロータ識別情報が送信される。
【0076】
ロータ識別情報および関連データはセーフティ関連データであるため、本実施形態では、それらを、ロータ側支持体46からハウジング側支持体60へ向けて、すなわち一方ではホールセンサ66によって検出される磁石50によって、またまたトランシーバユニット48および62によって、遠心分離機10の制御装置に余分に送信する。
【0077】
加えて、運転サイクル、運転時間等のような運転データは、遠心分離機10の制御装置のメモリ及びトランシーバユニット48のメモリの両方にロータ識別のために記憶される。
【0078】
このために、第1のトランシーバユニットは、ロータのデータが記憶されたメモリ、例えばロータのタイプ、最大許容回転数、ロータの最大許容走行時間等が記憶されたメモリを備える。このデータは不揮発性メモリに保存される。さらに、運転時間サイクル、操作時間、駆動速度などの動作データが連続的に更新されるリードライトメモリ(読出し・書込みメモリ)が提供される。
【0079】
さらに、第2支持体60上に加速度計68が設けられている。加速度計68は潜在的な不均衡を検出するために使用され、制御装置は必要に応じて、例えば、所定の閾値を超えた場合に、それらに反応することができる。
【0080】
第1のトランシーバユニット48はトランスポンダを含んでもよく、第2のトランシーバユニット62は関連するリーダを含んでもよい。
【0081】
トランシーバユニット48、62は、NFC規格用に設計されている。
【0082】
遠心分離機10の運転中、遠心分離が開始される前に、ロータ識別情報が第1のトランシーバユニットから読み取られ、遅くとも始動中に、ロータ識別情報が磁石50を介して付加的に検出される。これらのデータセットは、プロセスにおいて互いに比較される。データまたは識別情報が一致する場合、遠心分離機10の動作は、ロータ識別情報、最大許容速度、最大耐用年数、最大負荷変化などに関連する動作データに基づいて継続する。
【0083】
ロータ識別情報にデータの一致がない場合、遠心分離機はオフに切り換えられ、視覚的および音響的警報がトリガされる。
【0084】
所定の閾値を超えるデータが加速度センサ68を介して検出されると、遠心分離機10もオフに切り換えられ、ディスプレイ上のエラーメッセージなどの視覚的警報が発せられ、音響警報が発せられる。
【0085】
本発明は、トランシーバアンテナ52、64間の最小距離が作成され得るという事実に特徴付けられており、そこでは許容誤差がほとんど何ら悪影響を及ぼさない。トランシーバアンテナ52、64の重なり合う配置は、データ伝送を軸方向、すなわち駆動モータ16に対するロータ32の位置における可能な許容誤差を鈍感にさせる。さらに、最も小さな半径とし得る突起部であるロータ32の円筒形突起部32a上で、または最も地位sな半径とし得る突起部であるモータハウジング36の突起部40上での支持体46,60の同軸対向配置の結果として、トランシーバユニット48に作用する遠心力を最小化できる。
【0086】
本発明は更に、磁界の蓄積を防止する金属が支持体の直後に存在しないことを特徴とする。
【0087】
NFC規格を使用することは、データを送信するコスト効率が良く安全な方法である。モータ識別情報の伝送の冗長性は、動作中の遠心分離機10の安全性を著しく増大させる。したがって、高すぎる最大速度は、容易かつ特に信頼性で回避することができる。
【0088】
環状支持体46を異なるロータ32と同じ高さに配置することにより、全てのロータ32について同じデータ伝送品質が得られる。
【0089】
本発明によると、回転軸線30の方向における支持体46及び60の配置は、通常金属製であるロータ32及び同様に金属製である駆動モータ16がトランシーバユニット48、62のフィールドラインと干渉しないので、最適化されたデータ伝送をもたらす。これは、図10に概略的に示されており、ここで、力線は参照記号72によって示されている。この構成では、どの金属も支持体46、60のすぐ近くに存在せず、したがって、磁場または電磁場が容易にかつ干渉なしに蓄積することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 遠心分離機、12 ハウジング、14 蓋、16 駆動モータ、18 ダンピング(減衰)手段、20 保護容器、22 駆動軸、22a モータハウジング36の突出部40の肩部,24 保護容器20の同心状の円形凹部、26 ハウジング12の底部、28 ハウジング12の脚部、30 回転軸、32 ロータ、32a ロータ32の突起、32b ロータ32の突起32aの下側部、34 駆動モータ16の肩部、36 モータハウジング、38 環状肩部、38a 環状肩部38の頂部、40 モータハウジング36の突起、42 ロータ室、44 第1環状チャンバ-ロータ側、44a 環状チャンバのU字形開口部、46 第1支持体、48 第1のトランシーバユニット、50 マグネット、52 第1のトランシーバユニット48のトランシーバアンテナ、54 第1の環状チャンバ44内の磁石50用のレセプタクル、56 第1の環状チャンバ44内のキャビティ、58 第2の環状チャンバ-ハウジング側、58a 環状チャンバ58のU字形開口部、60 第2の支持体、62 第2のトランシーバユニット、64 第2のトランシーバユニット62のトランシーバアンテナ、66 ホールセンサ、68 加速度計、70 接続ライン、72 磁場ライン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10