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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】引張要素を伴う回転閉じ具
(51)【国際特許分類】
   A43C 11/24 20060101AFI20240813BHJP
   B65H 75/38 20060101ALI20240813BHJP
   B65H 75/42 20060101ALI20240813BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A43C11/24
B65H75/38 S
B65H75/42 E
F16D41/08 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022521105
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2020077772
(87)【国際公開番号】W WO2021069341
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】202019105576.6
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511264353
【氏名又は名称】プーマ エス イー
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
【住所又は居所原語表記】Puma Way 1,91074 Herzogenaurach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ジャンキンド ローランド
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43C 11/24
B65H 75/38
B65H 75/42
F16D 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポーツ物品、手荷物、または靴、スポーツ靴用の回転閉じ具(10)であって、
筐体部分(1)と、軸(3)に付着した回転ノブ(2)を備え、前記回転ノブ(2)は、前記筐体部分(1)に固定されると共に、引張要素が巻かれて張力をかけられる引張ローラ(6)に接続され、
前記回転ノブ(2)には、内歯を伴う第1の歯車(4)が接続され、前記引張ローラ(6)には、内歯を伴う第2の歯車(5)に接続され、
前記歯車(4、5)に連結できる駆動ピニオン(7)を備え、前記駆動ピニオン(7)は、前記第1の歯車(4)及び前記第2の歯車(5)の内側に配置されると共に、前記軸(3)に対して接近可能であり、前記駆動ピニオン(7)は、前記軸(3)から遠い場合は、前記第1の歯車(4)の前記内歯及び前記第2の歯車(5)の前記内歯に連結し、前記軸(3)に近い場合は、前記第1の歯車(4)の前記内歯及び前記第2の歯車(5)の前記内歯から解放される
ことを特徴とする回転閉じ具。
【請求項2】
前記駆動ピニオン(7)は、前記回転ノブ(2)で回転方向を変更して前記軸(3)の半径方向に移動可能である
請求項1に記載の回転閉じ具。
【請求項3】
前記駆動ピニオン(7)は、前記軸(3)に対する距離が異なる弓状溝(8)を介して移動可能である
請求項1または2に記載の回転閉じ具。
【請求項4】
前記駆動ピニオン(7)は、前記筐体部分(1)の内部で中間筐体(9)内に位置する
請求項1ないし3のいずれかに記載の回転閉じ具。
【請求項5】
前記第1の歯車(4)と前記第2の歯車(5)は、同じ径であると共に、歯数少なくとも1つ異なる
請求項1ないし4のいずれかに記載の回転閉じ具。
【請求項6】
前記駆動ピニオン(7)の歯数と前記第1の歯車(4)と前記第2の歯車(5)のいずれかの歯数との比が、1:3である
請求項1ないし5のいずれかに記載の回転閉じ具。
【請求項7】
前記第1の歯車(4)及び前記第2の歯車(5)は、密閉された筐体部分(1)の内部に備わる
請求項1ないし6のいずれかに記載の回転閉じ具。
【請求項8】
前記駆動ピニオン(7)は、前記軸(3)を中心とする円弧とずれて移動可能である
請求項1ないし7のいずれかに記載の回転閉じ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポーツ物品、手荷物、または靴、詳細にはスポーツ靴用の回転閉じ具に関し、閉じ具では、筐体内部の引っ張りローラを介して引っ張り要素を引っ張ることができ、かつ必要に応じて引っ張り要素を再度解放して閉じ具を解放できる。そのような回転閉じ具は、従来のように靴ひもを結ぶのを回避して回転させるだけで靴の開口部を閉じることを成し遂げるために、たとえばスポーツ靴用に使用される。そのような回転閉じ具は通常は、この目的のために提供されるひも穴の中で、または靴の甲革材料の中で滑る、細いケーブルの形をとる可塑性物質から作られた引張要素を用いて実現される。しかしながら、そのような回転閉じ具はまた、かばん、手荷物、または服の物品など、他の分野で使用できる。そのような回転ロックは、用途が履物部門だけに限定されない。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、ケーブルに似た引張要素を伴うそのようなさまざまな回転閉じ具について記述されている。たとえば、スポーツ靴用回転閉じ具が、国際公開第2014/082652(A1)号(特許文献1)から公知であり、そこでは、中に巻かれた引張要素を用いて靴ひもを結ぶために、筐体に搭載された引張プーリが提供される。閉じ具は、回転ノブによって作動し、ロッキング歯部を伴う爪を内部に備え、外側から歯部を切り離すために、ロッキングレバーを反時計回りの回転により作動させなければならない。この回転閉じ具に必要とされる構成要素の数は比較的大きく、取扱いは、閉じ具を解放し靴を開くある時点にロッキングレバーまたはロッキングノブを余分に動作させなければならない利用者にとって比較的注意を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/082652(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して、そのような用途のために操作しやすく、構成要素ができるだけ少ない非常に小型の設計を有する、引張要素を伴う回転閉じ具を提供することが本発明の目的である。同時に、本発明による回転閉じ具は、長期的にさえ安全な開閉を可能にすることが意図される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する回転閉じ具で解決される。本発明の有利な実施形態および他の開発形態は、従属請求項の主題である。
【0006】
本発明によれば、スポーツ物品用の、詳細にはスポーツ靴用の、請求項1に記載の回転閉じ具であって、引張要素を巻くまたは解放するために閉じ具のための引張要素用の、詳細にはケーブル用の引張プーリだけではなく、回転ノブに接続された、内歯を伴う第1の大歯車、および引張ローラに接続された、内歯を伴う回転する第2の大歯車も作動させるために、回転ノブが付着した軸を伴う筐体部分を備える回転閉じ具において、回転閉じ具に結合できる駆動ピニオンは、大歯車の間に提供されること、ならびに駆動ピニオンは、選択的に大歯車の内歯に連結するために、および大歯車の内歯から連結を解くために、駆動する軸に対して半径方向に変位できる台を有することを特徴とする回転閉じ具が提供される。
【0007】
したがって、本発明によれば、駆動ピニオンが、すなわち歯車よりも著しく小さな、内歯を備える歯車に連結できる歯車が提供される。駆動ピニオンは特有の台を用いて、すなわち、歯車の内歯との結合および分離(切り離し)を可能にする台を用いて、回転閉じ具内に据え付けられる。したがって、駆動ピニオンは、固定された位置で回転閉じ具の筐体部分の中に据え付けられるのではなく、動作状況に応じて駆動歯車装置の結合および分離を達成するために選択的に変位させる、または再配置することが可能である。駆動ピニオンの台を変位可能に配列することにより、ピニオン用のそのような回転軸上でどんな形態の変位可能な軸受配列もとることが可能である。台は、変位したときに歯車との連結および切り離しが可能になるような方法で変位または変更可能なように設計されなければならないだけである。その結果、連結状態では駆動ピニオンは、第2の回転する歯車の内歯と固定した第1の歯車の内歯を接続する役割を果たし、第2の回転する歯車の内歯は、次に引張要素の引張プーリを駆動させる。その結果、単に回転ノブを回転させることにより引張要素を大きな力で引っ張ることが可能であり、同様に、単に回転ノブをたとえば別の方向に回転させることによりピニオンと内歯の間の接続をただちに解放でき、すなわち、引張要素は解放でき、その結果、閉じ具はその後、非常に簡単な手法で再度開くことが可能である。本発明による回転閉じ具は、全体の高さ寸法が小さく、全体の幅寸法が小さいために非常に小型であり、比較的少数の必要とされる部分および構成要素を備える。これにより、動作不良発生率は大きく低下する。本発明による回転閉じ具はまた、扱いにくい形の動作が行われる可能性がそれほどない状況でも使用できる。最後に述べるが決して軽んずべきではなく、製造費用は、このタイプのこれまで知られていた回転閉じ具と比較して大きく低下する。
【0008】
本発明の有利な実施形態によれば、駆動ピニオンの台は、回転ノブで回転方向を変更することにより半径方向に動くことが可能である。したがって、閉じ具は、単に回転ノブで回転方向を変更することにより再度解放できる。たとえば時計回りの回転方向は、引張要素を巻き上げることにより閉じ具を閉じてしっかり締める役割を果たす。たとえば、時計回りの方向と反対方向にノブを回転させることによりシャッタを容易に解放できるようになる。駆動ピニオンは、回転ノブで回転方向を変更することにより自身の台の中で半径方向内側に簡単に移動する。これは、閉じ具を開くために追加の作動要素をまったく必要としないことを意味する。操作はまた、そのように回転方向を逆にするために、利用者にとって非常に直感的である。
【0009】
本発明の有利な実施形態によれば、駆動ピニオンの台は、軸に対して自身の進路にわたり距離が変化する弓状のピッチ円の溝または弓状のスロットを有する。その結果、駆動ピニオンの台はまた、たとえばピッチ円の溝またはスロット内で駆動ピニオンの軸受ピンを故意に変位させ、かつたとえば回転閉じ具の軸に向けて内側に駆動ピニオンの軸受ピンを変位させることにより、内歯に対して変位させることが可能である。間隔がそのように変化する場合、内歯からの係合および切り離しは、機械的に費用がかからない構成要素を使用して駆動ピニオンにより容易に達成できる。また、そのような弓状のピッチ円の溝またはスロットを用いて、非常に小型の設計の、特に非常に平たい形状の回転閉じ具を実現できる。代替実施形態によれば、ピッチ円の溝は、回転閉じ具の軸と同心の第1の部位、および回転閉じ具ともはや同心ではなく内側に伸展する第2の部位から構成できる。これにより歯部は、回転ノブがわずかに回転するたびにただちに「開く」ことがないので、安全機能が達成される。
【0010】
本発明の他の有利な実施形態によれば、駆動ピニオンの台は、回転閉じ具の筐体部分の内側の中間筐体内に提供される。そのような中間筐体は、たとえば非常に薄い設計のU字形金属薄板部分の形で実現できる。したがって、駆動ピニオンから歯車の歯部までの台の距離を変えることは、筐体内部で容易に実現できる。台要素は、多くの時間を必要とする製造工程および組立作業を必要とする複雑な構成要素ではない。
【0011】
本発明の別の有利な実施形態によれば、同じコア径の2つの内歯車から得られる歯車の歯数はわずかに、少なくとも1つの歯だけ異なる。歯の差はまた、2つ、3つ、または4つの歯とすることが可能である。2つの歯車、すなわち、回転ノブを伴い回転閉じ具に接続された歯車および引張プーリに接続された歯車の歯数がわずかに異なることにより駆動ピニオンと協力して、ある種の自己ロッキングを生み出せる。その結果、回転閉じ具は、準自己ロッキング手法で形成され、回転閉じ具が故意ではなく変位するのが防止される。歯数およびさらにまた歯部の数は、歯車の2つの歯部と駆動ピニオンとの結合が本質的に同じであることを確実にする限り、異なることが可能である。
【0012】
本発明の他の有利な実施形態によれば、駆動ピニオンは、歯車に対して約1:3の範囲の比較的大きな減速比を有し、固定した歯車の周りを円形経路で回転する。そのような大きな減速比を用いる場合、非常に小さなサイズで大きな減速を実現でき、これは、引張要素に効果的に張力をかけるために必要である。そのような大きな減速比はまた、より低い減速比または歯数比と比較してより大きな力を引張要素に加えることができるようにする。たとえば、筐体上の第1の歯車が27の歯を有する場合、引張歯車上の第2の歯車は24の歯を有し、ピニオンは9の歯を有し、1:8の総減速比を実現できる。
【0013】
本発明の他の有利な実施形態によれば、歯車は、外側から回転閉じ具の筐体部分により実質的に完全に取り囲まれている。したがって、歯車は本質的に、密閉された筐体内部にあり、その結果、外部の干渉および損傷から保護される。
【0014】
本発明の他の有利な実施形態によれば、駆動ピニオンの台は、回転閉じ具の駆動する軸の軸中心に偏心に動作する。そのような偏心に伸展する軸受部分を用いる場合、駆動ピニオンはまた、弓状のスロットまたは溝の場合と異なる手法で内歯車装置の歯から切り離す、またはそこに再係合することが可能である。台は、駆動する車軸の中心を基準にして偏心に簡単に実現され、さらにまたたとえば直線の形状またはすでに記述した以外の設計を有することが可能である。
【0015】
本発明の他の特徴、様態、有利な点、および実施形態について、添付図面に示す実施形態を参照して以下でより詳細に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1a】変位可能駆動ピニオンを伴う、本発明による回転閉じ具の第1の実施形態の側面図を示す。
図1b】変位可能駆動ピニオンを伴う、本発明による回転閉じ具の第1の実施形態の横断面図を示す。
図1c】変位可能駆動ピニオンを伴う、本発明による回転閉じ具の第1の実施形態の長手方向断面図を示す。
図1d】変位可能駆動ピニオンを伴う、本発明による回転閉じ具の第1の実施形態の上からの上面図を示す。
図2】駆動ピニオンと、駆動ピニオンを変位させる溝との間の相互作用を例示する、本発明による回転閉じ具の実施形態の内部図の上面図を示す。
図3】本発明による回転閉じ具の実施形態の主要な構成要素の分解透視図を示す。
図4a】本発明による回転閉じ具の実施形態の構成要素の側面図および断面図を示す。
図4b】本発明による回転閉じ具の実施形態の構成要素の側面図および断面図を示す。
図4c】本発明による回転閉じ具の実施形態の構成要素の側面図および断面図を示す。
図4d】本発明による回転閉じ具の実施形態の構成要素の側面図および断面図を示す。
図4e】本発明による回転閉じ具の実施形態の構成要素の側面図および断面図を示す。
図4f】本発明による回転閉じ具の実施形態の構成要素の側面図および断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1a~図1dに、本発明による回転閉じ具10の実施形態をさまざまな側面図/平面図および断面図で示す。回転閉じ具は、筐体部分1、および軸3に付着した回転ノブ2を備え、回転ノブは、よりよく把持するために、ある種の波型を外部に伴って形成される。回転ノブ2は、回転閉じ具10の内側で引張プーリ6の動作を開始させるための内歯を有する第1の歯車4を作動させるために使用できるような方法で筐体部分1に固定される。軸3自体は固定されていてよい、または回転してよい。可塑性線材または可塑性ケーブルなど、図示しない引張要素は、引張プーリ6の周りに巻くことにより引張プーリ6の全面にわたって張力をかけることが可能である。引張プーリ6はまた、閉じ具10を解放するために再度ロックを解除でき、それによりこのロック解除は、特殊な駆動ピニオン7を用いて本発明に従って行われる。図示する実施形態では、引張プーリ6は、内歯を伴う第2の歯車5に固定して接続される。この実施形態では、引張プーリ6は、第2の回転する歯車5と、ある程度一体化して形成されるが、さらにまた第2の回転する歯車5と別個に形成して、第2の回転する歯車5に接続できる。閉じた位置で回転ノブ2が回転するとき、第1の歯車4および第2の歯車5とかみ合う駆動ピニオン7は、引張プーリ6を回転させ、その結果、比較的大きな伝達比で引張要素を巻き上げる。駆動ピニオンは、歯車4、5の内歯の歯数と比較してはるかに少ない数歯を有する(図1cを参照のこと)。
【0018】
詳細には図1bおよび図1cで理解できるように、駆動ピニオン7は、自身の軸受ジャーナルの特有なタイプの軸受を介して歯車4、5の内歯の内側に搭載される。すなわち、本発明による駆動ピニオン7は、回転閉じ具10内の固定した位置に搭載されるのではなく、駆動ピニオン7の軸受ジャーナルが挿入される弓状の溝8を通して移動可能であり、変位可能である。凹部の弓状の溝8またはスロットは、本実施形態による中間筐体9内に提供され、中間筐体9は、歯車4と5の間で筐体部分1の内側に据え付けられ、回転可能に固定された手法で回転ノブ2に連結される。この実施形態では、弓状の溝8は、回転軸3の中心と同心ではなく、少なくとも一部の部位で自身の進路にわたり回転軸3に接近する。溝8は、回転閉じ具10および回転軸3に対してある程度偏心に配列され、その結果、駆動ピニオン7が溝8の内部で変位したとき、駆動ピニオン7の歯は、歯車4、5の内歯の歯との係合から選択的に切り離される。たとえば、溝8の第1の部分は、回転ノブ2がわずかだけ回されたときに閉じ具10が故意ではなく開くのを防止するように軸3と同心である。図2と同様に図1cは、閉じ具10を閉じるための係合位置を示す。駆動ピニオン7を故意に動かすことにより、その結果、歯車4、5との接続を、その結果さらにまた引張要素の引張ローラ6との接続を係合させ、切り離すことが可能である。単に回転方向を逆にすることにより、その結果、引張要素は、張力をかけられると回転閉じ具10によりただちに再度解放できる。駆動ピニオン7の歯が内歯車歯部の歯との係合から外れて動くとすぐに、引張要素は、引っ張ることにより容易に解放できる。
【0019】
その結果、本発明によれば、引張要素の張力を解放可能にし、その結果、回転閉じ具10を開くことを可能にするために、余分な作動構成要素または部分を必要としない。単に回転方向を逆にすることにより、図1cで矢印により概略的に示すように、回転閉じ具10は、再度容易に開くことができる。そうする際、駆動ピニオンは、軸3に対して半径方向にただ自動的に変位するだけである。これにより、非常に小型で平たい設計が確実になる。溝8の中で駆動ピニオン7が自動的に変位できる性質はまた、回転ノブ2で回転方向を変更することにより駆動ピニオン7が、係合した位置から切り離された(内歯車との係合を切り離された)位置に動くことができる限り、この例に示すのと異なる方法で生じる可能性がある。
【0020】
駆動ピニオン7のそのような形態の変位可能な配列の代替設計は、当業者に公知である。たとえば、弓状の溝8の代わりに、直線状の溝を提供してよい。溝8の代わりに、さらにまた凹部またはレバー機構を提供できる。また、駆動ピニオン7が変位する可能性のある軸受配列は、たとえば大歯車4、5または筐体部分1の一部に直接に一体化することにより中間筐体9内以外で実現できる。
【0021】
図2は、本発明による回転閉じ具10の主要な構成要素の簡略化した内部図を上面図で示す。いくつかの矢印を用いて、回転ノブ2で回転方向を変更することにより駆動ピニオン7が矢印の方向に従って円形の溝8に沿って動き、その結果、内歯との係合(閉じた状況)から外れる(開いた位置)ようになる方法で大歯車4の回転は変更されることが示される。図2では、歯車4の内歯の歯数および歯車5の歯数がわずかに異なることもまた理解できる。たとえば、歯車4と5の間に1つの歯の差が存在し、その結果、歯車4、5が駆動ピニオン7と係合するとき、回転する構成要素の、ある種の自己ロッキングが生じる。これは、使用中に回転閉じ具10の構成要素が故意ではなく回転するのを防止する。図2ではさらにまた、中間筐体9は歯車4、5の内側に、かつ弓形の溝8を伴うU字形金属薄板部分の形をとる筐体1の内側に、完全に挿入されることを理解できる。中間筐体9は、カムを用いて回転ノブ2にしっかりと連結され、その結果、ピニオン7を伴う駆動部分を形成する。駆動ピニオン7は、歯車4、5の内歯を基準にしてたとえば1:3の範囲のかなり大きな減速比を有する。しかしながら、歯車4、5は、等しいピッチ円を有し、駆動ピニオン7は、固定した歯車4の周囲の円形経路上で回転する。その結果、ピニオンが9の歯を有する場合、第1の歯車は27の歯を有し、第2の歯車は24の歯車を有し、1:8の総減速比を実現できる。しかしながら、歯数は異なる可能性がある。
【0022】
図3は、本発明による変位可能駆動ピニオン7を伴う回転閉じ具10の実施形態の構成要素からなる組立体の分解透視図を示す。回転軸3は、ある種のベースプレート11に接続される。ベースプレート11の上には、可塑性ケーブルなどの引張要素(図示せず)を巻いて張力をかけるために使用する引張プーリ6を下部領域に伴う第2の歯車5がある。第2の歯車5の上には中間筐体9があり、中間筐体9の中には、駆動ピニオン7の軸受ジャーナルで駆動ピニオン7を可変に搭載するための円弧形状の溝8を見ることができる。1つの溝8だけの代わりにさらにまた、より大きな作用力を得るために、駆動部分または中間筐体9内に180°で対向する2つの溝8を提供できる。溝8の上には次に、引張プーリ6に巻かれた引張要素を通過させるためにスロットに似た開口部を外側に有する筐体部分1を図3に示す。この実施形態では、筐体部分1は、ベースプレート11と一緒に外側から構成要素を完全に閉鎖する、ある種の帽子形の形態を有する。実施形態の例では、筐体1の中で、内歯を伴う第1の歯車4が直接に一体化される。しかしながら、第1の歯車4はまた、別個に形成されて筐体部分1に接続できる。筐体部分1は次に、上記に示す回転ノブ2に連結され、回転ノブ2を介して、第1のギア4および引張プーリ6は、駆動ピニオン7が係合するときに(図1cの上方)第2の歯車5を介して作動させることができる。回転ノブ2を逆方向に回転させるとき、駆動ピニオン7の変位に起因して張力は解放され、その結果、回転閉じ具10を開く。
【0023】
図4a~図4fは、この実施形態の回転閉じ具10の個々の構成要素および部分を断面図および側面図で示す。図4aは、本発明の実施形態の例による回転閉じ具10を組み立てた状態を示す。図4bは、締結ねじ12を伴う回転ノブ2を示し、ここでは回転ノブ2は、よりよく把持するために輪郭に合わせて作られたリブ付き形状を外側に有する。図4cは、駆動ピニオン7と係合する、内歯を伴う第1の歯車4を伴う筐体部分1を示す。図4dは、両側に提供された軸受ジャーナルを伴う駆動ピニオン7を示し、軸受ジャーナルは、この目的のために中間筐体9上に提供された弓状の凹部、スロット、または溝8の中に挿入される。中間筐体9は、ここではU字形金属薄板部分として実現され、その結果、小型形態の回転閉じ具を得るために全体の高さが非常に低い。製造費用もまたこの方法で低減される。図4eは、構成要素4と5と7の間で、ある種の自己ロッキングを行う目的で、第1の歯車4と比較してわずかに異なる数歯の内歯を伴う回転する第2の歯車5を示す。歯車5の下部には歯車5と一体化して引張プーリ6が形成され、しかしながら、歯車5はまた、別個の部分として設計できる。引張要素(ケーブル)自体は図示されていない。図4fはベースプレート11、およびベースプレートを通して搭載される駆動する車軸3を示し、回転ノブ2、歯車4、5、および引張プーリ6などの構成要素は、引張要素を巻く機能のために、駆動する車軸3を中心にして回転する。
【0024】
記述した構造を伴う、本発明による回転閉じ具10には、詳細には高さが低い非常に小型の設計を有するという有利な点がある。部分および構成要素の数は減り、回転閉じ具10は、比較的軽量で製造費用がかからない。張力を解放するためにノブまたはレバーなどの作動要素をさらに必要としない。その上、本発明による回転閉じ具10を用いる場合、比較的簡単な構造で非常に大きな伝達比を実現でき、その結果、それほど弾性のない靴の部分または類似の部分に張力をかけるときに強い引張効果が可能になる。本発明による回転閉じ具は、サイクロギア(cyclo gear)などの歯付きカルダンギア(cardanic gear)の手法で機能し、特殊な可変軸受形態の駆動ピニオン7を有し、駆動ピニオン7を用いて、本発明に従って駆動ピニオン7および大歯車4、5の歯部の係合および切り離しを達成する。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f