(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】チタン化触媒、チタン化触媒を調製する方法、及びエポキシ化の方法
(51)【国際特許分類】
B01J 31/38 20060101AFI20240813BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240813BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240813BHJP
C07D 301/19 20060101ALI20240813BHJP
C07D 303/04 20060101ALI20240813BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240813BHJP
【FI】
B01J31/38 Z
B01J37/02 101Z
B01J37/08
C07D301/19
C07D303/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022525574
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(86)【国際出願番号】 US2020058558
(87)【国際公開番号】W WO2021091827
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-10-24
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513074862
【氏名又は名称】ライオンデル ケミカル テクノロジー、エル.ピー.
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ナギー、サンドール
(72)【発明者】
【氏名】ブルスキ、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ロス-メドガーデン、エリザベス、アイ.
(72)【発明者】
【氏名】レイション、デイヴィッド、ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】キミッヒ、バーバラ
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-531973(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0045953(US,A1)
【文献】特表2008-529784(JP,A)
【文献】特表2009-535206(JP,A)
【文献】特表2018-537280(JP,A)
【文献】特開2000-279809(JP,A)
【文献】国際公開第2014/097942(WO,A1)
【文献】特開2012-096133(JP,A)
【文献】特開平10-323563(JP,A)
【文献】特表2002-509791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/73
B01D 53/86 - 53/90
B01D 53/94 - 53/96
C07B 31/00 - 61/00
C07B 63/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
C07D 301/00 - 305/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンエポキシ化の方法であって
、
チタン化シリカ触媒を用意すること;及び
オキシダントの存在下及びオレフィンをエポキシ化してエポキシ化オレフィンを形成するのに有効な条件下で前記オレフィンを前記チタン化シリカ触媒に接触させることを含
み、
前記チタン化シリカ触媒が、
(i)水溶性有機化合物と(ii)水溶性チタン化合物とを含む液体を用意することであって、前記水溶性チタン化合物がチタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドであること;
シリカ担体を前記液体に接触させて前記水溶性チタン化合物の少なくとも一部分を前記シリカ担体上に沈着させて、チタン処理済みシリカ担体を形成すること;
前記チタン処理済みシリカ担体をか焼すること;及び
前記チタン処理済みシリカ担体をシリル化して前記チタン化シリカ触媒を形成することを含む方法によって調製される、方法。
【請求項2】
前記オレフィンがプロピレンを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記オキシダントがヒドロペルオキシドを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記オキシダントが、1-エチルブチルヒドロペルオキシド(EBHP)、t-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、又はクメン過酸化水素(CHP)を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記オレフィン
の20mol%~100mol%が前記エポキシ化オレフィンに転化される、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記オレフィン
の85mol%~100mol%が前記エポキシ化オレフィンに転化される、請求項
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行関連出願
本出願は、特許協力条約に基づいて出願され、2019年11月4日に出願された米国仮出願第62/930,281号に対する優先権の利益を主張し、その全文は参考として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
チタン化シリカ系は、t-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、1-エチルブチルヒドロペルオキシド(EBHP)、又はクメンヒドロペルオキシド(CHP)などのヒドロペルオキシドに依拠するプロピレンのエポキシ化プロセスの触媒である。これらのプロセスは、シリカ担体を塩化チタン又は1種以上のチタンアルコキシドで処理することを含む。しかしながら、チタンアルコキシド及びハロゲン化チタンは、湿気に敏感であるか、自然発火性であるか、又はその両方であり得る。塩化チタンは、購入するのに比較的安価であるが、湿気に敏感で、腐食性であり、毒性であり得るために、取り扱いが高価となり得る。
【0003】
米国特許出願公開第2015/01822959号(参考として本明細書に組み込まれる)は、エポキシ化反応用のチタン触媒系を調製するためのプロセスを開示しており、そのプロセスは、(i)シリカ担持体にチタン化合物の無機溶媒系中溶液を含浸させること、(ii)該担持体を乾燥させること、(iii)乾燥させた生成物をか焼すること(すなわち、「焼成すること」、及び(iv)か焼した(すなわち、「焼成した」)生成物をシリル化することを含む。
【0004】
効率的で、より安全で、より安く、より環境に優しく、又はそれらを組み合わせた前述の触媒、とりわけ大容量の商用触媒を調製するための改善されたプロセスに対する必要性が依然として存在する。
【0005】
多くの固定床エポキシ化触媒は、チタン化シリカ担体を含む。該担体は、0.2mm~3mmの重量平均粒径を有してもよく、不均等な形状の粒子を含んでもよい。担体の例は、WO2017/080962(参考として本明細書に組み込まれる)に開示されている。WO2017/080962の担体は、330m2/g~450m2/gの表面積を有する。しかし、これらの担体は、それらを固定床反応器内で使用することに伴う1つ以上の欠点、例えば大きい圧力損失などの問題を抱えることがある。
【0006】
これらの1つ以上の欠点を克服し、かつ/又は固定床反応器内でより良く機能する、チタン化シリカ担体を含めた触媒担体に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
本明細書で提供するのは、安全で、比較的安価であり、かつ/又は環境に優しいチタン化シリカ触媒を調製する方法である。該チタン化シリカ触媒は、エポキシ化プロセスなどにおいて改善された触媒性能を呈することができ、その改善の度合いは驚くべきものである。本明細書で提供するのはまた、固定床反応器内で改善された結果を呈するチタン化シリカ触媒、及びチタン化シリカ触媒を調製する方法である。例えば、該チタン化シリカ触媒は、他の触媒系と比較して驚くべき圧力損失の低減を呈することができる。
【0008】
一態様では、チタン化シリカ触媒を調製する方法が提供され、該方法は、(i)水溶性有機化合物と(ii)水溶性チタン化合物とを含む液体を用意すること;シリカ担体を該液体に接触させて水溶性チタン化合物の少なくとも一部分をシリカ担体上に沈着させて、チタン処理済みシリカ担体を形成すること;チタン処理済みシリカ担体をか焼すること;及びチタン処理済みシリカ担体をシリル化してチタン化シリカ触媒を形成することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、該方法は、(i)水溶性有機化合物と(ii)水溶性チタン化合物とを含む液体を用意すること;及びシリカ担体を該液体に接触させて水溶性チタン化合物の少なくとも一部分をシリカ担体上に沈着させて、チタン処理済みシリカ担体を形成することを含む。該方法はまた、チタン処理済みシリカ担体をか焼すること、及び/又はチタン処理済みシリカ担体をシリル化することを含んでもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、該方法は、約0.1mm~約5mmの平均径を有する複数の球状シリカビーズを含むシリカ担体を用意することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、該方法は、(i)水溶性有機化合物と(ii)チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドとを含む液体を用意すること;及びシリカ担体を該液体に接触させてチタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドの少なくとも一部分をシリカ担体上に沈着させて、チタン処理済みシリカ担体を形成することを含む。該方法はまた、チタン処理済みシリカ担体をか焼すること、及び/又はチタン処理済みシリカ担体をシリル化してチタン化シリカ触媒を形成することを含んでもよい。複数の球状シリカビーズはまた、約400m2/g~約600m2/gの表面積、約1cc/g~約2.5cc/gの細孔容積、又はそれらの組み合わせを有してもよい。表面特性は、77kで収集されたP/P0<0.3(BET表面積)及びP/P0>0.95(細孔容積)の領域での窒素吸着等温線によって測定される。
【0012】
別の態様では、オレフィンエポキシ化の方法が提供される。いくつかの実施形態では、該方法は、本明細書に記載される又は本明細書に記載される方法によって調製されるチタン化シリカ触媒を用意すること;及びオキシダントの存在下及びオレフィンをエポキシ化してエポキシ化オレフィンを形成するのに有効な条件下でオレフィンをチタン化シリカ触媒に接触させることを含む。
【0013】
さらに別の態様では、チタン化触媒が提供される。いくつかの実施形態では、該チタン化触媒は、本明細書に記載される方法のいずれかによって作製されるチタン化触媒系を含む。
【0014】
追加の態様は、以下の説明で部分的に記述され、説明から部分的に明白であるか、又は本明細書に記述する態様の実施によって学習され得る。本明細書に記載される利点は、添付された特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組み合わせによって実現及び達成されるであろう。前述した一般的な説明及び以下の詳細な説明は、いずれも例示的及び説明的なものであり、限定的なものではないということを理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドを含む液体の3つの実施形態で実現されたエポキシド転化率(%)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で提供するのは、チタン化シリカ触媒、及びチタン化シリカ触媒を調製する方法である。本明細書で提供するチタン化触媒は、チタン処理済みシリカ担体を含んでもよい。チタン処理済みシリカ担体は、(i)約0.1mm~約5mmの平均径、(ii)約400m2/g~約600m2/gの表面積、及び(iii)約1cc/g~約2.5cc/gの細孔容積を有する複数の球状シリカビーズを含んでもよい。
チタン化シリカ触媒を調製する方法
【0017】
チタン化シリカ触媒を調製する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供する方法は、(i)水溶性有機化合物と(ii)チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドとを含む液体を用意すること;及びシリカ担体を該液体に接触させてチタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドの少なくとも一部分をシリカ担体の上に沈着させて、チタン処理済みシリカ担体を形成することを含む。材料は、シリカ担体の任意の一部分の上及び/又は中、例えば、表面、細孔、内部領域(例えば、間隙空間)などに沈着したときに、「シリカ担体上」にある。
【0018】
シリカ担体を液体に接触させることは、任意の技法を含めた任意の方式で実現することができる。いくつかの実施形態では、シリカ担体を液体に接触させることは、シリカ担体に液体を含浸させることを含む。シリカ担体は、液体の少なくとも一部分がシリカ担体の非表面部分に接触したときに、液体で「含浸される」。例えば、シリカ担体に液体を含浸させると、シリカ担体の1つ以上の内部空間に液体の少なくとも一部分が存在し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、シリカ担体に含浸させることは、シリカ担体をインシピエントウェットネス含浸法に供することを含む。いくつかのそのような実施形態では、減圧補助したインシピエントウェットネス含浸法が使用されてもよい。減圧補助したインシピエントウェットネス含浸法は、シリカ担体に液体を含浸させるために少なくとも部分的に毛管現象に依拠し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供する方法は、約0.1mm~約5mmの平均径を有する複数の球状シリカビーズを含むシリカ担体を用意すること;シリカ担体を水溶性有機化合物及びチタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドに接触させて、チタン処理済みシリカ担体を形成することを含む。該方法はまた、チタン処理済みシリカ担体をか焼して、か焼されたチタン処理済みシリカ担体を形成すること;及びか焼されたチタン処理済みシリカ担体をシリル化してチタン化シリカ触媒を形成することを含んでもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する方法は、チタン処理済みシリカ担体をか焼すること;及びチタン処理済みシリカ担体をシリル化してチタン化シリカ触媒を形成することを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、チタン処理済みシリカ担体をか焼することは、チタン処理済みシリカ担体を約100℃~約1,000℃、約300℃~約800℃、又は約600℃~約800℃の高温に供することを含む。いくつかの実施形態では、チタン処理済みシリカ担体をか焼することは、チタン処理済みシリカ担体を空気中で約500℃~約750℃の温度に約1時間~約3時間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、温度勾配が使用される。いくつかの実施形態では、チタン処理済みシリカ担体は、約100℃に約15分間、次いで約250℃に約15分間、次いで約700℃に約2時間加熱される。いくつかの実施形態では、か焼は、窒素又は希ガスなどの不活性雰囲気下で実施される。いくつかの実施形態では、か焼の少なくとも第1の部分は不活性ガス下で実施され、次いでか焼の少なくとも第2の部分は空気中で実施される。いくつかの実施形態では、か焼は、酸素を含む雰囲気中で実行される。いくつかの実施形態では、か焼は、酸素の非存在下で実行される。
【0022】
任意選択により、チタン処理済みシリカ担体をか焼した後に、か焼されたチタン処理済みシリカ担体は洗浄されてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、チタン処理済みシリカ担体は、溶媒で洗浄される。いくつかの実施形態では、溶媒はヒドロキシル基含有液である。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル基含有液には、アルコール、水、又はそれらの組み合わせが含まれる。アルコールには、少なくとも1つのヒドロキシル部分で置換されたC1~C18ヒドロカルビルが含まれてもよい。いくつかの実施形態では、チタン処理済みシリカ担体は、ヒドロキシル基含有液で、周囲温度で洗浄される。
【0024】
洗浄されたチタン処理済みシリカ担体は、乾燥させてもよい。いくつかの実施形態では、乾燥させることは、洗浄されたチタン処理済みシリカ担体を高温に供することを含む。いくつかの実施形態では、該温度は50℃より高い。いくつかの実施形態では、該温度は約50℃~約200℃である。いくつかの実施形態では、該温度は約100℃~約150℃である。いくつかの実施形態では、洗浄されたチタン処理済みシリカ担体は、不活性ガスのストリームの下で乾燥される。いくつかの実施形態では、洗浄されたチタン処理済みシリカ担体は、約0.1時間~約2時間乾燥される。いくつかの実施形態では、洗浄されたチタン処理済みシリカ担体は、約1時間~約4時間乾燥される。いくつかの実施形態では、該時間は約2時間である。
【0025】
いくつかの実施形態では、チタン処理済みシリカ担体をシリル化することは、チタン処理済みシリカ担体をシリル化剤に接触させることを含む。任意のシリル化剤が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、シリル化剤は、オルガノシラン、オルガノシリルアミン、オルガノシラザン、又はそれらの組み合わせである。シリル化剤の例は、米国特許第10,017,484号(参考として本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、シリル化剤は、次式:
R3SiNHSiR’3
(式中、各R及びR’は独立に、C1~C6ヒドロカルビルから選択される)のオルガノジシラザンである。いくつかの実施形態では、シリル化剤はヘキサメチルジシラザンを含む。
シリカ担体
【0027】
任意のシリカ担体が、本明細書で提供する方法に使用されてもよい。シリカ担体の非限定的な例として、米国特許第10,017,484号(参考として本明細書に組み込まれる)に開示されるものが挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、シリカ担体は、酸化ケイ素などの無機シリカ質固体を含む。いくつかの実施形態では、シリカ質固体は、非晶質の酸化ケイ素である。いくつかの実施形態では、シリカ担体は多孔質である。シリカ担体は、1つ以上の細孔及び/又は間隙をその構造中に含むとき、多孔質である。
【0029】
いくつかの実施形態では、シリカ担体は、複数の球状シリカビーズ、錠剤、押出物、及び微粒子を含む。ビーズは、[1]それが球状であるとき、[2]その最小径がその最大径の95%以上であるとき(例えば、少なくとも1.9mmの最小径、及び2mmの最大径)、並びに/又は[3]表面の欠陥(例えば、深い溝、窪みなど)などの欠陥がなければ、それが要素[1]及び/又は[2]を満たすとき、「球状」である。球状シリカビーズの非限定的な例として、PQ Corporation(Malvern、Pennsylvania、USA)から入手可能なAlphaCat(登録商標)4000シリカビーズが挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態では、触媒のシリカ担体は、酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、酸化ケイ素及び酸化チタンを含む。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、シリカ担体の重量に基づいて少なくとも90重量%の酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、シリカ担体の重量に基づいて少なくとも95重量%の酸化ケイ素を含む。シリカ担体中の酸化ケイ素及び1つ以上の他の酸化物の百分率は、XRF(X線蛍光分光法)を使用して測定することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の他の酸化物、例えば酸化チタンは、シリカ担体の重量に基づいて、シリカ担体の約10重量%未満を占める。いくつかの実施形態では、1つ以上の他の酸化物は、シリカ担体の重量に基づいて、シリカ担体の約0.01重量%~約9.9重量%を占める。
【0031】
いくつかの実施形態では、酸化ケイ素には、凝集して及び/又は他の方法で互いに結合して密に詰まった酸化シリカの塊を形成した酸化ケイ素が含まれる。いくつかの実施形態では、酸化ケイ素には、合成シリカ粉末が含まれる。合成シリカ粉末は、粗く詰まった、容易に崩壊する、及び/又は緩く結束された凝集体に凝集された粉末であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、シリカ担体は、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-ボリア、シリカ-アルミニウム-マグネシア、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、複数のモレキュラーシーブを含む。複数のモレキュラーシーブには、大きい細孔及び/又はメソ多孔質のモレキュラーシーブ、例えば、MCM-41、MCM-48、M41S、又はそれらの組み合わせが含まれてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約300m2/g~約700m2/gの表面積を有する。表面特性は、77kで収集されたP/P0<0.3(BET表面積)及びP/P0>0.95(細孔容積)の領域での窒素吸着等温線によって測定される。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約400m2/g~約600m2/gの表面積を有する。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約450m2/g~約550m2/gの表面積を有する。いくつかの実施形態では、シリカ担体は約400m2/g~約600m2/gの表面積を有し、かつシリカ担体は複数の球状シリカビーズを含む。いくつかの実施形態では、シリカ担体は約450m2/g~約550m2/gの表面積を有し、かつシリカ担体は複数の球状シリカビーズを含む。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約450m2/g~約460m2/gの表面積を有する。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約530m2/g~約540m2/gの表面積を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、シリカ担体は、比較的高い(例えば、800m2/gより大きい)表面積を有する。いくつかの実施形態では、シリカ担体の表面積は約800m2/g~約1200m2/gである。いくつかの実施形態では、シリカ担体の表面積は約900m2/g~約1100m2/gである。いくつかの実施形態では、シリカ担体の表面積は約910m2/g~約970m2/gである。いくつかの実施形態では、シリカ担体の表面積は約950m2/gである。いくつかの実施形態では、シリカ担体の表面積は1000m2/gより大きい。
【0035】
いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約1g/cm3~約3g/cm3の細孔容積を有する。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約1g/cm3~約2.5g/cm3の細孔容積を有する。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約1g/cm3~約1.5g/cm3の細孔容積を有する。いくつかの実施形態では、シリカ担体は約1g/cm3~約2.5g/cm3の細孔容積を有し、かつシリカ担体は複数の球状シリカビーズを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、シリカ担体は、比較的高い(例えば1.25g/cm3より大きい)細孔容積を有する。いくつかの実施形態では、シリカ担体の細孔容積は約1.25g/cm3~約3.50g/cm3である。いくつかの実施形態では、シリカ担体の細孔容積は約1.5g/cm3~約3.0g/cm3である。いくつかの実施形態では、シリカ担体の細孔容積は約2.0g/cm3~約2.5g/cm3である。いくつかの実施形態では、シリカ担体の細孔容積は約2.20g/cm3~約2.5g/cm3である。いくつかの実施形態では、シリカ担体の細孔容積は2.0g/cm3より大きい。シリカ担体の細孔容積及び/又は表面積は、窒素ポロシメトリーを使用して測定することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、シリカ担体は、70Åより大きい平均孔径を有する。いくつかの実施形態では、シリカ担体の平均孔径は約70Å~約150Åである。いくつかの実施形態では、シリカ担体の平均孔径は約90Å~約110Åである。いくつかの実施形態では、シリカ担体の平均孔径は約91Å~約108Åである。
【0038】
いくつかの実施形態では、シリカ担体は、高表面積及び高細孔容積を有し、例えば、800g/cm3より大きい表面積及び1.25g/cm3より大きい細孔容積を有する。
【0039】
シリカ担体は、任意の所望の粒径を有してもよい。いくつかの実施形態では、シリカ担体の所望の粒径は、粉砕及び/又は押出を通して得られる。いくつかの実施形態では、シリカ担体の所望の粒径は、ふるいを通してシリカ担体を分級することによって得られる。いくつかの実施形態では、シリカ担体の平均径は5.0mm未満である。いくつかの実施形態では、シリカ担体の平均径は約0.1mm~約5.0mmである。いくつかの実施形態では、シリカ担体の平均径は約0.2mm~約4mmである。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約0.5mm~約3mmの平均径を有する複数の球状シリカビーズを含む。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約0.3mm~約2mmの平均径を有する複数の球状シリカビーズを含む。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約0.4mm~約4mmの平均径を有する複数の球状シリカビーズを含む。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約0.5mm~約4mmの平均径を有する複数の球状シリカビーズを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、シリカ担体を液体に接触させる前に、シリカ担体を乾燥させる。いくつかの実施形態では、シリカ担体を乾燥させることは、シリカ担体を約100℃~約850℃の温度に加熱することを含む。いくつかの実施形態では、該温度は120℃より大きい。いくつかの実施形態では、該温度は約150℃~約300℃である。いくつかの実施形態では、シリカ担体は減圧で乾燥される。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、流動する内部ガス、例えば、窒素又は希ガスのストリームの下で乾燥される。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約1時間~約48時間乾燥される。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、約2時間~24時間乾燥される。
【0041】
水溶性有機化合物は、シリカ担体に吸着されてもよい。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、シリカ担体の重量に基づいて3重量%未満の炭素を含む。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、シリカ担体の重量に基づいて約0.05重量%~約3重量%の炭素を含む。いくつかの実施形態では、シリカ担体は、吸着された水溶性有機化合物及び/又は他の材料からの約1重量%~約2重量%の炭素を含む。いくつかの実施形態では、シリカ担体の炭素含有量は、炭素を高温で二酸化炭素に転化することによる炭素窒素分析を使用して測定される。
チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシド
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドを含む液体を用意することを含み、チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドは、以下の構造を有し得る:
【化1】
【0043】
いくつかの実施形態では、チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドは、液体の重量に基づいて約5重量%~約70重量%の量で液体中に存在する。いくつかの実施形態では、チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドは、液体の重量に基づいて約30重量%~約70重量%の量で液体中に存在する。いくつかの実施形態では、チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドは、液体の重量に基づいて約40重量%~約60重量%の量で液体中に存在する。いくつかの実施形態では、チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドは、液体の重量に基づいて約50重量%の量で液体中に存在する。
水溶性有機化合物
【0044】
本明細書で使用される場合、「水溶性有機化合物」という語句は、少なくとも1個の炭素原子を含み、かつ水に対して少なくとも900mg/Lの溶解度、又はいくつかの実施形態では少なくとも1,000mg/Lの溶解度を有する任意の化合物を指す。いくつかの実施形態では、「水溶性有機化合物」は、室温及び室内圧力で液体である。
【0045】
いくつかの実施形態では、水溶性有機化合物は、C1~C4ヒドロカルビルと、C1~C4ヒドロカルビルに水溶性を与えるか又はその水溶性を増大させる少なくとも1種の官能基とを含む。いくつかの実施形態では、水溶性有機化合物は、C1~C4ヒドロカルビルと、ヒドロキシル、アミン、カルボン酸、エステル、エーテル、ケトン、及びアルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の官能基とを含む。例えば、C1~C4ヒドロカルビルは、[1]ヒドロキシル官能基、[2]2種のヒドロキシル官能基、[3]ヒドロキシル官能基及びアミン官能基、[4]アミン官能基、[5]2種のアミン官能基などに結合されていてもよい。
【0046】
C1~C4ヒドロカルビルは、C1~C4ヒドロカルビルに水溶性を与えるか又はその水溶性を増大させる少なくとも1種の官能基に結合されていてもよい(例えば、ヒドロキシル官能基で置換されている)。C1~C4ヒドロカルビルに水溶性を与えるか又はその水溶性を増大させる少なくとも1種の官能基は、C1~C4ヒドロカルビルの少なくとも2個の炭素原子に結合されていてもよい(例えば、2個の炭素原子に結合されたエーテル官能基)。いくつかの実施形態では、C1~C4ヒドロカルビルは、C1~C4ヒドロカルビルに水溶性を与えるか又はその水溶性を増大させる第1の官能基、及びC1~C4ヒドロカルビルに水溶性を与えるか又はその水溶性を増大させる第2の官能基で置換されている。
【0047】
「C1~C30ヒドロカルビル」、「C1~C4ヒドロカルビル」、「C2ヒドロカルビル」などの語句は、本明細書で使用される場合、それぞれ1~30個の炭素原子、1~4個の炭素原子、又は1個の炭素原子を含有する脂肪族基を指す。脂肪族基の例として、各場合において、限定するものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルカジエニル基、環状基などが挙げられ、それらには、置換、非置換、分岐、及び直鎖のその類似体又は誘導体が含まれ、各場合において、1~30個の炭素原子、1~4個の炭素原子、1個の炭素原子などを有する。アルキル基の例として、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、及びイソブチルが挙げられる。シクロアルキル部分として、シクロプロピル及びシクロブチルが挙げられてもよい。代表的なアルケニル部分として、ビニル、アリル、1-ブテニル、2-ブテニル、及びイソブチレニルが挙げられる。代表的なアルキニル部分として、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、及び2-ブチニルが挙げられる。
【0048】
いくつかの実施形態では、水溶性有機化合物は、エチレングリコール、メタノール、エタノール、又はそれらの組み合わせを含む。
【0049】
別段の指示がない限り、「置換されている」という用語は、化学構造又は部分を表現するのに使用されるとき、その構造又は部分の誘導体を指し、ここでは、その水素原子の1つ以上が、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニル、アルキル(例えば、メチル、エチルなど)、アルキニル、アルキルカルボニルオキシ(-OC(O)アルキル)、アミド(-C(O)NH-アルキル-又は-アルキルNHC(O)アルキル)、第三級アミン(例えば、アルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ)、アゾ、カルバモイル(-NHC(O)O-アルキル-又は-OC(O)NH-アルキル)、カルバミル(例えば、CONH2、並びにCONH-アルキル、CONH-アリール、及びCONH-アリールアルキル)、カルボキシル、カルボン酸、シアノ、エステル、エーテル(例えば、メトキシ、エトキシ)、ハロ、ハロアルキル(例えば、-CCl3、-CF3、-C(CF3)3)、ヘテロアルキル、イソシアネート、イソチオシアネート、ニトリル、ニトロ、ホスホジエステル、スルフィド、スルホンアミド(例えば、SO2NH2、SO2NR’R”)、スルホン、スルホニル(アルキルスルホニル、アリールスルホニル、及びアリールアルキルスルホニルが含まれる)、スルホキシド、チオール(例えば、スルフヒドリル、チオエーテル)、又は尿素(-NHCONH-アルキル-)などの化学部分又は官能基で置換されている。
エポキシ化の方法
【0050】
本明細書に記載される触媒は、オレフィンからエポキシドを生成するのに使用することができる。したがって、本明細書で提供するのは、オレフィンエポキシ化の方法である。該方法は、オキシダントの存在下及びオレフィンをエポキシ化してエポキシ化オレフィンを形成するのに有効な条件下でオレフィンを本明細書に記載のチタン化シリカ触媒に接触させることを含み得る。
【0051】
本明細書に記載されるエポキシ化の方法は、バッチ式のエポキシ化方法を含んでも、又は連続式のエポキシ化方法を含んでもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される触媒によって、オレフィンの生成物への転化が比較的高くなる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエポキシ化の方法においてオレフィンの少なくとも約35mol%がエポキシ化オレフィンに転化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエポキシ化の方法においてオレフィンの少なくとも約45mol%がエポキシ化オレフィンに転化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエポキシ化の方法においてオレフィンの少なくとも約50mol%がエポキシ化オレフィンに転化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエポキシ化の方法においてオレフィンの少なくとも約55mol%がエポキシ化オレフィンに転化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエポキシ化の方法においてオレフィンの少なくとも約65mol%がエポキシ化オレフィンに転化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエポキシ化の方法においてオレフィンの少なくとも約75mol%がエポキシ化オレフィンに転化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるエポキシ化の方法においてオレフィンの少なくとも約85mol%がエポキシ化オレフィンに転化される。
【0053】
本明細書に記載される方法に、任意のオキシダント、すなわち酸化剤が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、酸化剤はヒドロペルオキシドである。いくつかの実施形態では、ヒドロペルオキシドはアルキルヒドロペルオキシドである。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~約12個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基はtert-ブチルである。他の実施形態では、ヒドロペルオキシドはアラルキルヒドロペルオキシドである。いくつかの実施形態では、アラルキル基は、1~約24個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アラルキル基は、約1~約12個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アラルキル基はエチルベンジル又はクミルである。
【0054】
いくつかの実施形態では、酸化剤は、有機ヒドロペルオキシド、例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、クメンヒドロペルオキシド(CHP)、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、又は1-エチルブチルヒドロペルオキシド(EBHP)である。
【0055】
本明細書に記載されるエポキシ化の方法では、任意のオレフィンが使用されてもよい。本明細書で使用される場合、「オレフィン」という用語は、少なくとも1つの非芳香族二重結合を含む任意のヒドロカルビル、例えばC1~C30ヒドロカルビルを指し得る。いくつかの実施形態では、オレフィンは、1~24個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、オレフィンは、1~12個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、オレフィンは、プロピレン、1-オクテン、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、オレフィンは、1種以上の他の官能基、例えば、ヒドロキシル又はハライドで置換されている。
【0056】
本明細書に記載されるエポキシ化の方法では、オレフィンのオキシダントに対する任意の比率が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、オレフィンの酸化剤に対するモル比は、約1:1~約20:1、又は約10:1~約12:1である。
【0057】
いくつかの実施形態では、エポキシ化反応の少なくとも一部分は液相で行われる。いくつかの実施形態では、液相は、1種以上の液体(例えば、1種以上の溶媒)又は不活性希釈剤を含む。いくつかの実施形態では、液体は、ヒドロペルオキシドの炭化水素前駆体(例えば、対応するアルカン又はアルコールのいずれか)である。例えば、ヒドロペルオキシドが、いくつかの実施形態においてtert-ブチルヒドロペルオキシドであるなら、任意選択によって使用されてもよい液体はtert-ブタノールであってもよい。
【0058】
本明細書に記載されるエポキシ化の方法は、圧力及び/又は温度を調整することによって改変されてもよい。いくつかの実施形態では、エポキシ化の方法は、少なくとも部分的に、約25℃~約200℃の温度で実行される。いくつかの実施形態では、該温度は約50℃~約160℃である。いくつかの実施形態では、該温度は約70℃~約140℃である。いくつかの実施形態では、エポキシ化の方法は、少なくとも部分的に、ほぼ周囲圧力から大気圧を超える圧力までで実行される。いくつかの実施形態では、該圧力は約20psi~約1500psiである。いくつかの実施形態では、プロピレンがオレフィンとして使用され、該圧力は約400psi~約1000psiである。
【0059】
いくつかの実施形態では、エポキシ化反応は、複数の相を含む。例えば、反応物の少なくとも一部分は気相にあってもよく、及び/又は反応物の少なくとも一部分は液相にあってもよく、及び/又は触媒の少なくとも一部分は固相にあってもよい。いくつかの実施形態では、反応混合物中で触媒が不均一に使用されるように、反応物はいずれも液相にあり、触媒は固相にある。
【0060】
いくつかの実施形態では、エポキシ化の方法は、任意の商業的に有用な反応器内で実施される。いくつかの実施形態では、反応器は、連続又はバッチプロセス用反応器から選択される。反応器の非限定的な例として、固定床又はスラリー反応器が挙げられる。これらの反応器のいずれかが使用されるとき、反応はまた、生成物から反応物及び触媒を分離することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、エポキシ化の方法は、分留、選択抽出、濾過、及び/又は同様の分離技法を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一部分の任意の未反応の反応物、液体、及び/又は触媒は、エポキシ化反応に再利用される。
【0061】
単数形の用語は、複数の代替、例えば少なくとも1つの代替も含み得ることが意図されている。例えば、「シリカ担体」、「オレフィン」などの開示は、指摘の無い限り、1つ、又は2つ以上のシリカ担体、オレフィンなどの混合物又は組み合わせを包むことを意味する。
【0062】
本明細書の説明において、「含む」、「である」、「含有する」、「有する」及び「備える」という用語は、非制限的に使用されているため、「含むが、これに限定されない」ということを意味するものと解されなければならない。方法又はシステムが種々の成分又はステップを「備える」という用語でクレーム又は説明されるとき、同方法又はシステムは、指摘の無い限り、種々の成分又はステップから「基本的になる」又は「なる」ものとすることもできる。
【0063】
種々の数値範囲が、本明細書中に開示されうる。出願人が任意のタイプの範囲について開示又は請求するとき、出願人の意図は、指摘の無い限り、範囲の終点や、その中に含まれる任意の部分範囲、及び部分範囲の組み合わせを含めて、そのような範囲が合理的に網羅できる、各々個別に可能な数字を開示又は請求することである。さらに、本明細書に開示の範囲の数値的終点は近似値である。代表的な例として、出願人は、一実施形態において、複数の球状シリカビーズが約1cc/g~約2.5cc/gの細孔容積を有すると開示している。この範囲は、約1cc/g~約2.5cc/gの範囲内の値を網羅し、さらに「約」1.1cc/g、1.2cc/g、1.3cc/g、1.4cc/g、1.5cc/g、1.6cc/g、1.7cc/g、1.8cc/g、1.9cc/g、2cc/g、2.1cc/g、2.2cc/g、2.3cc/g、及び2.4cc/gの各々を、これらの値のいずれかの間の任意の範囲及び部分範囲を含めて網羅すると解されなければならない。
【0064】
本明細書全体を通じて、「about(約)」という用語は、ある値が、その値の判定に採用される装置や方法などの誤差の変動、又は研究課題間に存在する変動を含むものであることを示すものとして使用されている。「about」という用語は、条件の自然な変動を暗示し、値のプラス又はマイナス5%の変動を表すために使用される。いくつかの実施形態では、この変動は、値のプラス又はマイナス1%である。
【0065】
本明細書に記載されるプロセスは、種々の実施態様において所望の通りの任意の順序で実行又は実施されてもよい。加えて、ある特定の実施態様では、プロセスの少なくとも一部分は並行して実行されてもよい。さらに、ある特定の実施態様では、記載されるものより少ない又は多いプロセスが実施されてもよい。
【0066】
前述の説明及び添付の図面に提示される教示の利益を得て、本明細書に記述される開示の多くの改変及び他の実施態様が明らかであろう。したがって、本開示が、開示される特定の実施態様に限定されるものではなく、改変及び他の実施態様が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。
【実施例】
【0067】
本開示について、以下の実施例によりさらに説明を行うが、これらの実施例は、いかなる方法においても、その範囲に限定を課すものとして理解されてはならない。一方、本明細書に記載の説明を読んだ後に、本開示の要旨又は添付の請求項の範囲から逸脱することなく当業者に自ずと明らかとなるそれらの種々の他の態様、実施形態、改変物、及び同等物を利用することができることを理解されたい。したがって、他の態様は、本明細書に開示した本研究課題の詳細と実施を考慮することにより、当業者にとって明らかとなるであろう。
実施例1-チタン化シリカ触媒のエポキシ化性能
【0068】
この実施例では、シリカ担体(AlphaCat(登録商標)4000、PQ Corporation、USA)に、チタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドを含む3種の異なる液体を含浸させた。含浸はインシピエントウェットネス技法で実現し、含浸されたシリカ担体を空気中で2時間700℃で焼成し、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を用いて200℃でシリル化した。
【0069】
3種の液体の各々は、各液体の重量に基づいて50重量%のチタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドを含んでいた。第1の液体は、水及びチタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドを含んでいた。第2の液体は、水、エチレングリコール、及びチタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドを含んでいた。第3の液体は、エチレングリコール及びチタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドを含んでいた。
【0070】
本実施例の3種の液体で調製したチタン化シリカ触媒の各々の性能を、オクテン/1-エチルブチルヒドロペルオキシドのエポキシ化プロセスで試験した。これらの試験の結果を以下の表に表す。
【表1】
【0071】
これらの結果から、エチレングリコール及びチタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシドを含む第3の液体が、水を含む第1及び第2の液体より驚くほど性能が優れていることが示された。
【0072】
表1の結果のグラフを図に示す。
【0073】
実施例1からの触媒3グラム(希釈剤がエチレングリコールのみを含有していた(水を含まない)もの)を、加熱用オイルジャケットを有する内径0.62”の反応器に入れた。この触媒は、2.1mmのシリカ球に上記のように含浸させて調製した。反応器への供給は、50グラム/時の純プロピレン、及びかせい洗浄して乾燥させた150グラム/時の1-エチルブチルヒドロペルオキシド(EBHP)酸化生成物(約9wt%のEBHP及び約88%のエチルベンゼンを含有し、残りはメチルベンジルアルコール及びアセトフェノンである)であった。反応器の圧力は約800psigであった。100時間のオンストリーム後、第1の反応器中のEBHPの50%を転化するのに必要な触媒温度は190Fであった。上記の第1の反応器からの流出液を、6グラムの同じ触媒を含有する第2の反応器に送り、第2の反応器の温度を調整して残りのEBHPを転化した。両方の反応器において転化されたEBHPに対する酸化プロピレンのモル選択性は95.7%であった。