(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】電子部品収納用パッケージ、電子装置および電子モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/04 20060101AFI20240813BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01L23/04 E
H01L23/12 K
(21)【出願番号】P 2022578309
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2022002059
(87)【国際公開番号】W WO2022163502
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2021011536
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】木佐木 拓男
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/126596(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/262472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/04
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を搭載する搭載領域を有する第1面、前記第1面と反対側に位置する第2面、前記第1面と前記第2面とを接続する第1側面、前記第1面と前記第2面とを接続するとともに、前記第1側面に連なる第2側面、および、前記第1側面と前記第2側面とが交差する角部を有する絶縁基板と、
前記第2面に位置する外部接続導体と、
前記外部接続導体から前記角部に向かって位置するコーナー導体と、
を備えており、
前記コーナー導体は、前記外部接続導体から前記角部に向かうにつれて前記外部接続導体との間隔が漸次大きくなるように位置しており、前記角部を除く前記第1側面および前記第2側面に露出する露出部を有する、
電子部品収納用パッケージ。
【請求項2】
前記露出部は、前記第1側面および前記第2側面それぞれの側面視において、前記外部接続導体に繋がっている、請求項1に記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項3】
前記コーナー導体は、平面透視において、前記角部に中心が位置する部分円環状である、請求項1または請求項2に記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項4】
前記コーナー導体は、第1部分と第2部分とを有し、
前記第1部分は、平面透視において前記角部に中心が位置する部分円環状であり、外周部が前記外部接続導体に接続されているとともに、前記露出部を有しており、
前記第2部分は、平面透視において前記角部よりも前記絶縁基板の内方に中心が位置する扇形状であり、該扇形状における円弧部が前記第1部分の内周部に接続されている、
請求項1または請求項2に記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項5】
前記露出部は、前記第1側面および前記第2側面それぞれの側面視において、前記外部接続導体から離隔している、請求項1に記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項6】
前記コーナー導体は、第1部分と第2部分とを有し、
前記第1部分は、平面透視において前記角部に中心が位置する部分円環状であるとともに、前記露出部を有しており、
前記第2部分は、前記第1部分の外周部から前記絶縁基板の内方に向かって延びるとともに、前記外部接続導体に接続されている、請求項5に記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項7】
前記第1側面および前記第2側面は、前記第1面と接続する第1傾斜面と、前記第2面と接続する第2傾斜面と、前記
第1傾斜面と前記第2傾斜面との間に位置する破断面とを有しており、前記露出部は前記破断面に位置している、請求項1に記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項8】
前記第1側面および前記第2側面は、前記第1面と接続する第1傾斜面と、前記第2面と接続する第2傾斜面と、前記
第1傾斜面と前記第2傾斜面との間に位置する破断面とを有しており、前記露出部は前記第2傾斜面のみに位置している、請求項1に記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項9】
前記外部接続導体と前記コーナー導体との間に位置する絶縁体の気孔率が、前記絶縁基板の他の部分の気孔率よりも小さい、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の電子部品収納用パッケージと、
前記電子部品収納用パッケージに搭載された電子部品と、を備える電子装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電子装置と、
前記電子装置が接続されたモジュール用基板と、を備える電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電振動素子等の電子部品を収容するための電子部品収納用パッケージ等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の電子部品収納用パッケージは、電子部品を搭載する搭載領域を有する第1面、前記第1面と反対側に位置する第2面、前記第1面と前記第2面とを接続する第1側面、前記第1面と前記第2面とを接続するとともに、前記第1側面に連なる第2側面、および、前記第1側面と前記第2側面とが交差する角部を有する絶縁基板と、
前記第2面に位置する外部接続導体と、
前記外部接続導体から前記角部に向かって位置するコーナー導体と、
を備えており、
前記コーナー導体は、前記外部接続導体から前記角部に向かうにつれて前記外部接続導体との間隔が漸次大きくなるように位置しており、前記角部を除く前記第1側面および前記第2側面に露出する露出部を有する。
【0005】
本開示の電子装置は、上記の電子部品収納用パッケージと、前記電子部品収納用パッケージに搭載された電子部品と、を備える。
【0006】
本開示の電子モジュールは、上記の電子装置と、前記電子装置が接続されたモジュール用基板と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態の電子部品収納用パッケージを示す上面図である。
【
図2】
図1の切断面線II-IIで切断した断面図である。
【
図4A】本実施形態の電子部品収納用パッケージの要部を示す斜視図である。
【
図4B】本実施形態の電子部品収納用パッケージの他の例の要部を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態の電子部品収納用パッケージを示す下面図である。
【
図6A】本実施形態の電子部品収納用パッケージの要部を示す斜視図である。
【
図6B】本実施形態の電子部品収納用パッケージの他の例の要部を示す斜視図である。
【
図6C】本実施形態の電子部品収納用パッケージの他の例の要部を示す斜視図である。
【
図6D】本実施形態の電子部品収納用パッケージの他の例の要部を示す斜視図である。
【
図6E】本実施形態の電子部品収納用パッケージの他の例の要部を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態の電子部品収納用パッケージを作製するための多数個取り配線基板の一例の要部を示す平面図である。
【
図8】
図7の切断面線VIII-VIIIで切断した断面図である。
【
図9A】本実施形態の電子部品収納用パッケージを作製するための多数個取り配線基板の要部を示す斜視図である。
【
図9B】本実施形態の電子部品収納用パッケージの他の例を作製するための多数個取り配線基板の要部を示す斜視図である。
【
図9C】本実施形態の電子部品収納用パッケージの他の例を作製するための多数個取り配線基板の要部を示す斜視図である。
【
図9D】本実施形態の電子部品収納用パッケージの他の例を作製するための多数個取り配線基板の要部を示す斜視図である。
【
図9E】本実施形態の電子部品収納用パッケージの他の例を作製するための多数個取り配線基板の要部を示す斜視図である。
【
図10】本実施形態の電子部品収納用パッケージの要部を示す斜視図である。
【
図11】本実施形態の電子部品および電子モジュールを示す断面図である。
【
図12】本実施形態の電子部品収納用パッケージおよび電子装置の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
【0009】
本開示の電子部品収納用パッケージの基礎となる構成である、圧電振動素子または半導体素子等の電子部品を搭載するための電子部品収納用パッケージとして、絶縁基板に電子部品が収容される凹状の搭載部が設けられたものが用いられている。絶縁基板の上面には、搭載部を塞ぐように蓋体が接合される。このような電子部品収納用パッケージは、上面に電子部品の搭載部を有する平板状の基部、およびこの基部の上面に搭載部を取り囲んで積層された枠状の枠部と有する絶縁基板と、搭載部から基部の下面等にかけて位置する配線導体とによって構成されている。
【0010】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の電子部品収納用パッケージ(以下、配線基板ともいう)等について説明する。以下の説明で用いられる図は模式的なものである。図面上における各部の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0011】
図1は、本実施形態の電子部品収納用パッケージを示す上面図であり、
図2は、
図1の切断面線II-IIで切断した断面図であり、
図3は、
図2のA部を拡大して示す断面図である。
図4Aは、本実施形態の電子部品収納用パッケージの要部を示す斜視図である。
図4Bは、本実施形態の電子部品収納用パッケージの他の例の要部を示す斜視図である。
図5は、本実施形態の電子部品収納用パッケージを示す下面図である。
図6Aは、本実施形態の電子部品収納用パッケージの要部を示す斜視図である。
図6B~6Eは、本実施形態の電子部品収納用パッケージの他の例の要部を示す斜視図である。
図7は、本実施形態の電子部品収納用パッケージを作製するための多数個取り配線基板の一例の要部を示す平面図であり、
図8は、
図7の切断面線VIII-VIIIで切断した断面図である。
図9Aは、本実施形態の電子部品収納用パッケージを作製するための多数個取り配線基板の要部を示す斜視図である。
図9B~9Eは、本実施形態の電子部品収納用パッケージの他の例を作製するための多数個取り配線基板の要部を示す斜視図である。
図10は、本実施形態の電子部品収納用パッケージの要部を示す斜視図である。
図11は、本実施形態の電子部品および電子モジュールを示す断面図であり、
図12は、本実施形態の電子部品収納用パッケージおよび電子装置の他の例を示す断面図である。
【0012】
本開示の電子部品収納用パッケージ100は、絶縁基板101と、外部接続導体108と、コーナー導体109とを備える。
【0013】
絶縁基板101は、第1面102、第2面103、第1側面105A、および第2側面105Bを有する。
【0014】
第1面102の一部には、蓋体等によって封止される枠状メタライズ層113が位置していてもよい。枠状メタライズ層113の上面は、蓋体等によって封止される封止面である。第2面103は、モジュール基板への実装面であり、第1面102の反対側の面である。第1側面105Aは、第1面102と第2面103とを接続している。第2側面105Bは、第1面102と第2面103とを接続するとともに、第1側面105Aに連なっている。絶縁基板101は、第1側面105Aと第2側面105Bとが交差する角部105C(陵角)を有している。第1側面105Aおよび第2側面105Bを総称して、側面105と呼ぶことがある。
【0015】
絶縁基板101は、第1面102に、電子部品を搭載する搭載領域102Aを有している。搭載領域102Aには、電子部品112が搭載される。電子部品112は、例えば圧電振動子、半導体素子、容量素子、および抵抗素子等を含む。絶縁基板101は、例えば
図1,2に示すように、第1面102に開口するキャビティ104を有していてもよい。搭載領域102Aは、キャビティ104の底部に位置していてもよい。
【0016】
絶縁基板101は、絶縁体からなる。絶縁体は、例えば酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム焼結体、ムライト質焼結体、またはガラス-セラミック焼結体等のセラミック材料からなる。絶縁基板101は、例えば、平面視において、全体の外形が一辺の長さが0.6mm~10mm程度の矩形状である。また、絶縁基板101は、厚みが0.15mm~2mm程度の板状である。キャビティ104は、平面視において、一辺の長さが0.4mm~9.0mm程度の矩形状であり、深さが0.1mm~1.5mm程度である。
【0017】
外部接続導体108は、第2面103に位置している。外部接続導体108は、例えば
図5に示すように、絶縁基板101の角部105C寄りに位置している。外部接続導体108は、平面透視において、例えば正方形状、長方形状等の矩形状であり、隣接する2辺が第2面103の2辺と重なる位置にあってもよい。外部接続導体108は、平面視において、第2面103の周縁から第2面103の内方に離隔した位置にあってもよい。
【0018】
外部接続導体108は、例えばタングステン、モリブデン、マンガン、銅、金、パラジウム、白金、ニッケル、またはコバルト等の金属材料からなる。外部接続導体108は、これらの金属材料のいずれかを主成分として含有する合金材料からなっていてもよい。
【0019】
コーナー導体109は、外部接続導体108から角部105Cに向かって位置している。コーナー導体109は、外部接続導体108から角部105Cに向かうにつれて、外部接続導体108および第2面103との間隔が漸次大きくなっている。コーナー導体109は、第1面102側に凸状に湾曲していてもよい。コーナー導体109は、例えば
図4Aに示すように、角部105Cを除く第1側面105Aおよび第2側面105Bに露出している。換言すると、コーナー導体109は、角部105Cに露出しておらず、コーナー導体109の一部(以下、露出部109Aともいう)が第1側面105Aおよび第2側面105Bに露出している。露出部109Aは、側面視において(すなわち、第1側面105Aまたは第2側面105Bに直交する方向から見たときに)、外部接続導体108と繋がっていてもよく、外部接続導体108から離隔していてもよい。
【0020】
コーナー導体109は、例えばタングステン、モリブデン、マンガン、銅、金、パラジウム、白金、ニッケル、またはコバルト等の金属材料からなる。コーナー導体109は、これらの金属材料のいずれかを主成分として含有する合金材料からなっていてもよい。
【0021】
絶縁基板101の第1面102の外縁部には、枠状メタライズ層113が位置している。搭載領域102Aは、平面視において、枠状メタライズ層113の内側に位置している。搭載領域102Aには、電子部品112が接続される一対の接続パッド114が位置している。接続パッド114に電子部品112が接続され、蓋体116が枠状メタライズ層113上に接合されることにより、電子部品112が気密封止される。蓋体116は、例えば金スズ合金等のろう材118によって枠状メタライズ層113上に接合されてもよい。枠状メタライズ層113上に金属枠体を接合し、該金属枠体の上面を封止面としてもよい。
【0022】
電子部品112の形状は、例えば、長方形板状である。搭載領域102Aは、例えば、電子部品112の形状に合わせて、平面視で長方形状であってもよい。
図1では、搭載領域102Aを、二点鎖線を用いて仮想的に示している。ここで、長方形状とは、厳密な意味での長方形に限定されず、例えば、角部が丸められた長方形を含む。
図1では、長方形状の搭載領域102Aの1つの短辺の両端に位置する2つのコーナー部にそれぞれ1つずつ一対の接続パッド114が位置している。接続パッド114は、搭載領域102Aに搭載される圧電振動素子等の電子部品112の電極(図示せず)を接続するための導体層として機能する。電子部品112が圧電振動素子であれば、通常、その外形が平面視で長方形状であり、その表面のコーナー部に接続用の一対の電極(図示せず)が設けられている。そのような電極の接続パッド114への接続を容易かつ確実に行えるようにするために、接続パッド114は、搭載領域102Aのコーナー部に偏って位置している。
【0023】
上記の接続パッド114の数および配置は、電子部品112として圧電振動素子を用いた場合の数および配置である。接続パッド114の数および配置は、搭載される電子部品112の電極の数および配置、ならびに搭載される電子部品112の数に応じて設定することができる。
【0024】
絶縁基板101は、例えば
図2,3に示すように、互いに積層された上部絶縁層106および下部絶縁層107を有していてもよい。絶縁基板101は、平板状の下部絶縁層107上に、キャビティ104に対応する開口を有する枠状の上部絶縁層106が積層されている。上部絶縁層106は、平面視において、下部絶縁層107の上面の搭載領域102Aを取り囲んでいる。絶縁基板101は、上部絶縁層106の内側面と、搭載領域102Aの内側において露出する下部絶縁層107とによって、電子部品112を搭載するための搭載領域102Aを含む凹状のキャビティ104を有するものとなっている。電子部品112は、キャビティ104に収容されることで、上部絶縁層106および下部絶縁層107に囲まれて保護される。電子部品112は、キャビティ104の開口を塞ぐ蓋体116によって気密封止される。蓋体116は、平板状であってもよい。
【0025】
上部絶縁層106は、2層以上の絶縁層で構成されていてもよい。これにより、キャビティ104の内側面を段状の内側面とすることができるため、キャビティ104に複数の電子部品112を収容することが可能となる。
【0026】
絶縁基板101の第1面102(上部絶縁層106の上面)には枠状メタライズ層113が位置しており、さらに、上部絶縁層106の内部には、例えば上面から下面にかけて貫通導体117が位置している。また、下部絶縁層107における貫通導体117の直下にも貫通導体117が位置している。
図1,2に示す例では、絶縁基板101の枠状メタライズ層113における角部に貫通導体117が位置しているが、例えば、絶縁基板101の外側面またはキャビティ104の内側面に、導通経路としての帯状の配線導体が位置していてもよい。
【0027】
上部絶縁層106の貫通導体117と下部絶縁層107の貫通導体117とは、平面透視で重なっており、互いに電気的に接続している。例えば
図2,3に示すように、上部絶縁層106の貫通導体117と下部絶縁層107の貫通導体117との間に、中継導体を位置させてもよい。これにより、上部絶縁層106と下部絶縁層107との積層ずれ等が生じた場合であっても、上部絶縁層106の貫通導体117と下部絶縁層107の貫通導体117とを互いに電気的に接続することができる。
【0028】
電子部品収納用パッケージ100では、枠状メタライズ層113から、上部絶縁層106の貫通導体117、中継導体、および下部絶縁層107の貫通導体117にかけて導通されている。さらに、下部絶縁層107の貫通導体117は、第2面103に位置する外部接続導体108の1つに接続されている。言い換えれば、電子部品収納用パッケージ100は、枠状メタライズ層113から、上部絶縁層106の貫通導体117、中継導体、下部絶縁層107の貫通導体117、および外部接続導体108にかけて導通する構造となっている。これにより、枠状メタライズ層113にろう材118等の導電性接合材で金属等の導電性材料からなる蓋体116を接合し、1つの外部接続導体108を接地電位に接続することで、蓋体116を電磁ノイズに対するシールドとして機能させることができる。
【0029】
下部絶縁層107には、搭載される電子部品112とモジュール用基板の外部電気回路とを電気的に接続するための導通経路として、搭載領域102Aに接続パッド114が位置している。また、下部絶縁層107には、貫通導体117、および中継導体が位置している。さらに、下部絶縁層107の下面(第2面103)には、外部接続導体108が位置している。
【0030】
電子部品収納用パッケージ100のコーナー導体109、枠状メタライズ層113、接続パッド114、および外部接続導体108等(以下、総称して、配線導体WCともいう)の露出面には、ニッケルめっき層と金めっき層とが順次被着されていてもよい。これにより、配線導体WCの酸化腐食を防止することができるとともに、配線導体WCと電子部品またはモジュール用基板との接続等が容易になる。配線導体WCの露出面めっき層を被着させるためには、例えば、電気めっき法を用いることができる。
【0031】
電子部品収納用パッケージ100では、コーナー導体109が角部105Cに露出していないため、角部105Cにおける第1面102と第2面103との間の部位にめっき層が被着することを抑制できる。これにより、例えば、外部接続導体108をはんだ等の導電性接合材を用いてモジュール基板の外部電気回路に接続する際に、導電性接合材が、めっき層の被着により濡れ性が高くなった角部105Cを介して、枠状メタライズ層113、蓋体116等の導電部材と短絡することを抑制できる。その結果、電子部品収納用パッケージ100の電気的接続の信頼性を向上させることができる。また、電子部品収納用パッケージ100によれば、角部105Cに被着しためっき層による短絡の可能性が低減されているため、小型かつ低背の電子部品収納用パッケージを実現できる。なお、
図4Aでは、コーナー導体109が角部105Cまで延在している状態が二点鎖線で示している。コーナー導体109が角部105Cまで延在し、角部105Cに露出していると、露出した部位にめっき層が被着され、導電性接合材が、濡れ性が高くなった角部105Cを介して、枠状メタライズ層113、蓋体116等の導電部材と短絡し易くなる。
【0032】
電子部品収納用パッケージ100は、絶縁体110を備えていてもよい。絶縁体110は、例えば
図2,3,4Aに示すように、外部接続導体108とコーナー導体109との間に位置している。絶縁体110は、外部接続導体108とコーナー導体109とで挟まれており、絶縁基板101の第2面103側の角隅部に位置している。
【0033】
絶縁体110は、例えば酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム焼結体、ムライト質焼結体、またはガラス-セラミック焼結体等のセラミック材料からなる。絶縁体110に用いられるセラミック材料は、実質的に、絶縁基板101に用いられるセラミック材料と同じ材料を用いることができる。ここで、同じ材料とは、焼成後に上部絶縁層106および下部絶縁層107と同じセラミック成分が含まれるものである。
【0034】
電子部品収納用パッケージ100では、絶縁体110の気孔率が絶縁基板101の気孔率よりも低くされている。このため、絶縁体110は、絶縁基板101と比べて、機械的強度が高く、欠け、割れ等が発生し難く、その結果、電子部品収納用パッケージ100は、絶縁基板101の角隅部に欠け、割れ等が発生することを抑制できる。
【0035】
絶縁基板101の気孔率は、例えば、2.7~3.3%程度であってもよい。絶縁体110の気孔率は、例えば、2.0~2.5%程度であってもよい。絶縁基板101および絶縁体110がセラミック材料からなる場合、セラミック材料の原料粉末に添加する有機バインダー、溶剤等の量を調整することで、絶縁体110の気孔率を絶縁基板101の気孔率よりも低くすることができる。絶縁基板101および絶縁体110の気孔率は、例えばアルキメデス法を用いて測定することができる。
【0036】
絶縁体110は、外部接続導体108とコーナー導体109とで挟まれて保護されている。外部接続導体108およびコーナー導体109は、金属材料または合金材料からなるため、セラミック材料からなる絶縁基板101に比べて応力を吸収し易い。したがって、外部接続導体108とコーナー導体109とで挟まれた絶縁体110には、欠け、割れ等が発生し難い。また、仮に絶縁体110に欠け、割れ等が発生したとしても、絶縁体110に発生した欠け、割れ等は、外部接続導体108とコーナー導体109とで挟まれた範囲に留まり易い。それゆえ、電子部品収納用パッケージ100は、絶縁基板101の角隅部に欠け、割れ等が発生することを効果的に抑制できる。その結果、電子部品収納用パッケージ100を搬送用のトレー等に収納する際のトレーとの接触、または電子部品収納用パッケージ100を搬送する際のチャッキング等による絶縁基板101の角隅部の欠けを抑制することができる。ひいては、絶縁基板101の欠けによる異物のキャビティ104への進入を抑制することができる。
【0037】
コーナー導体109は、例えば
図4Aに示すように、第1側面105Aおよび第2側面105Bに露出した露出部109Aが、側面視において、外部接続導体108と繋がっている。これにより、外部接続導体108をはんだ等の導電性接合材を用いてモジュール基板の外部電気回路に接続する際に、露出部109Aと外部電気回路とを接続することが可能となるため、電子部品収納用パッケージ100とモジュール用基板との電気的接続信頼性を向上させることができる。また、外部接続導体108とコーナー導体109とで絶縁体110を絶縁基板101の内部から側面105まで挟むことができるため、絶縁基板101の角隅部に欠け、割れ等が発生することを効果的に抑制できる。
【0038】
コーナー導体109は、例えば
図6Aに示すように、平面透視において、角部105Cに中心が位置する部分円環状の形状を有している。換言すると、コーナー導体109は、平面透視において、絶縁基板101の内方に向かって凸状に湾曲する部分円環状の形状を有している。ここで、部分円環状とは、円環の一部をなす形状を意味する。また、円環とは、厳密な意味での円環に限定されず、円環の円弧部分が完全な円弧でないものを含む。なお、
図6Aは、
図4Aとは異なる方向から見た電子部品収納用パッケージ100を示しており、
図6Aに示すコーナー導体109は、
図4Aに示すコーナー導体109と同一形状である。
【0039】
図6Aに示す電子部品収納用パッケージ100によれば、コーナー導体109が角部105Cに露出していないため、電子部品収納用パッケージ100とモジュール用基板との電気的接続信頼性を向上させることができる。また、外部接続導体108と部分円環状のコーナー導体109とで絶縁体110を挟むことができるため、絶縁基板101の角隅部に欠け、割れ等が発生することを抑制できる。
【0040】
コーナー導体109は、例えば
図6Bに示すように、第1部分109Bと第2部分109Cとを有していてもよい。第1部分109Bは、平面透視において、角部105Cに中心が位置する部分円環状の形状を有している。第1部分109Bは、
図6Aに示す例のコーナー導体109と同様の形状である。
図6Bに示すコーナー導体109は、
図6Aに示す例のコーナー導体109に第2部分109Cが加えられた形状を有しているということもできる。第1部分109Bの外周部が、外部接続導体108に接続されている。第1部分109Bは、露出部109Aを含んでいる。第2部分109Cは、平面透視において、角部105Cよりも絶縁基板101の内方に中心が位置する扇形状の形状を有している。第2部分109Cの円弧部が、第1部分109Bの内周部に接続されている。ここで、扇形状とは、厳密な意味での扇形に限定されず、扇形の円弧部分が完全な円弧でないものを含む。第2部分109Cの円弧部は第1部分109Bの内周部より短く、第2部分109Cの円弧部の両端は第1部分109Bの内周部の両端より内側に位置している。第2部分109Cは絶縁基板101の角部105Cを含む第1側面105Aおよび第2側面105Bのいずれにも露出していない。
【0041】
図6Bに示す電子部品収納用パッケージ100によれば、コーナー導体109が角部105Cに露出していないため、電子部品収納用パッケージ100とモジュール用基板との電気的接続信頼性を向上させることができる。また、外部接続導体108と、第1部分109Bおよび第2部分109Cを有するコーナー導体109とによって、より広い範囲で絶縁体110を挟むことができる。そのため、コーナー導体109が第1部分109Bだけを有する場合と比べて、絶縁基板101の角隅部に欠け、割れ等が発生することを効果的に抑制できる。
【0042】
コーナー導体109の露出部109Aは、例えば
図4Bに示すように、第1側面105Aおよび第2側面105Bにおいて外部接続導体108から離隔していてもよい。これにより、露出部109Aにめっき層が被着されていても、外部接続導体108をはんだ等の導電性接合材を用いてモジュール基板の外部電気回路に接続する際に、導電性接合材が外部接続導体108から露出部109Aへ濡れ広がり、第1面102に向かって這い上がり難い。そのため、導電性接合材が、第1面102上に位置する枠状メタライズ層113、蓋体116等の導電部材と短絡する虞を低減することができる。その結果、電子部品収納用パッケージ100の電気的接続の信頼性を向上させることができる。さらに、
図4Bに示すコーナー導体109によれば、露出部109Aが破断面121のみに露出しているため、露出部109Aにめっき層が被着されないものとすることができる。この場合、第1面102と第2面103との間に導電性接合材に濡れる部分が存在しないので、導電性接合材と枠状メタライズ層113、蓋体116等の導電部材との短絡を効果的に低減することができる。なお、
図4Bでは、コーナー導体109が角部105Cまで延在している状態が二点鎖線で示している。コーナー導体109が、角部105Cまで延在し、角部105Cに露出していると、露出した部位にめっき層が被着され、導電性接合材が、濡れ性が高くなった角部105Cを介して、枠状メタライズ層113、蓋体116等の導電部材と短絡し易くなる。
【0043】
コーナー導体109は、例えば
図6Cに示すように、第1部分109Dと第2部分109Eとを有していてもよい。第1部分109Dは、平面透視において、角部105Cに中心が位置する部分円環状の形状を有している。第1部分109Dは、露出部109Aを含んでいる。第2部分109Eは、第1部分109Dの外周部から絶縁基板101の内方に向かって延びている。第2部分109Eは、外部接続導体108に接続されている。第2部分109Eは、平面透視において、その形状が、例えば部分円環状、矩形状等であってもよく、その他の形状であってもよい。なお、
図6Cは、
図4Bとは異なる方向から見た電子部品収納用パッケージ100を示しており、
図6Cに示すコーナー導体109は、
図4Bに示すコーナー導体109と同一形状である。
【0044】
図6Cに示す電子部品収納用パッケージ100では、コーナー導体109が角部105Cに露出しておらず、また露出部109Aの面積が低減されている。これにより、角部105Cにおける第1面102と第2面103との間の部位にめっき層が被着することを抑制することができる。また、外部接続導体108をはんだ等の導電性接合材を用いてモジュール基板の外部電気回路に接続する際に、導電性接合材が外部接続導体108から第1面102に向かって這い上がり難い。そのため、導電性接合材が、第1面102上に位置する枠状メタライズ層113、蓋体116等の導電部材と短絡する虞を低減することができる。その結果、電子部品収納用パッケージ100の電気的接続の信頼性を向上させることができる。さらに、
図6Cに示すコーナー導体109は、露出部109Aにめっき層が被着されないものとすることができる。この場合、第1面102と第2面103との間に導電性接合材に濡れる部分が存在しないので、導電性接合材と枠状メタライズ層113、蓋体116等の導電部材との短絡を効果的に低減することができる。このように、
図6Cに示す電子部品収納用パッケージ100によれば、電子部品収納用パッケージ100とモジュール用基板との電気的接続信頼性を向上させることができる。また、外部接続導体108とコーナー導体109とで絶縁体110を挟むことができるため、絶縁基板101の角隅部に欠け、割れ等が発生することを効果的に抑制できる。
【0045】
電子部品収納用パッケージ100は、例えば
図6Dに示すように、外部接続導体108が第2面103の周縁から第2面103の内方に離隔して位置していてもよい。コーナー導体109は、
図6Cに示す電子部品収納用パッケージ100と同様に、第1部分109Dと第2部分109Eとを有していてもよい。
図6Dに示す電子部品収納用パッケージ100は、
図6Cに示す電子部品収納用パッケージ100と同様に、電子部品収納用パッケージ100とモジュール用基板との電気的接続信頼性を向上させることができるとともに、絶縁基板101の角隅部に欠け、割れ等が発生することを効果的に抑制できる。
【0046】
電子部品収納用パッケージ100は、例えば
図6Eに示すように、第1部分109Fと第2部分109Gと第3部分109Hとを有していてもよい。第1部分109Fは、平面透視において、角部105Cに中心が位置する部分円環状の形状を有している。第1部分109Fは、露出部109Aを含んでいる。第2部分109Gは、第1部分109Fの外周部から絶縁基板101の内方に向かって延びている。第2部分109Gは、外部接続導体108に接続されている。第2部分109Gは、平面透視において、その形状が、例えば部分円環状、矩形状等であってもよく、その他の形状であってもよい。第3部分109Hは、平面透視において、角部105Cよりも絶縁基板101の内方に中心が位置する扇形状の形状を有している。第3部分109Hの円弧部が、第1部分109Fの内周部に接続されている。ここで、扇形状とは、厳密な意味での扇形に限定されず、扇形の円弧部分が完全な円弧でないものを含む。第3部分109Hの円弧部は第1部分109Fの内周部より短く、第2部分109Gの円弧部の両端は第1部分109Fの内周部の両端より内側に位置している。第3部分109Hは絶縁基板101の角部105Cを含む第1側面105Aおよび第2側面105Bのいずれにも露出していない。
【0047】
図6Eに示す電子部品収納用パッケージ100は、
図6Cに示す電子部品収納用パッケージ100と同様に、はんだ等の導電性接合材と枠状メタライズ層113、蓋体116等の導電部材との短絡を低減することができる。また、
図6Eに示す電子部品収納用パッケージ100は、外部接続導体108と、第1部分109F、第2部分109Gおよび第3部分109Hを有するコーナー導体109とによって、より広い範囲で絶縁体110を挟むことができる。そのため、絶縁基板101の角隅部に欠け、割れ等が発生することを効果的に抑制できる。
【0048】
電子部品収納用パッケージ100は、例えば
図7,8に示すように、それぞれが個片の電子部品収納用パッケージ100となる複数の配線基板領域100Aが配列された多数個取り配線基板(母基板200)を作製し、母基板200を個片に分割することによって製造されてもよい。母基板200は、それぞれが下部絶縁層107となる複数の領域を有する平板状の第1絶縁層と、それぞれが上部絶縁層106となる複数の領域を有する第2絶縁層とが互いに積層されてなる。第2絶縁層は、上部絶縁層106となる複数の領域の各々に、キャビティ104となる開口を有している。以下、第1絶縁層を上部絶縁層106とも呼び、第2絶縁層を下部絶縁層107とも呼ぶ。
【0049】
母基板200は、上部絶縁層106および下部絶縁層107が酸化アルミニウム質焼結体からなる場合、以下のようにして作製することができる。
【0050】
先ず、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、および酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダー、溶剤、可塑剤等を添加混合してスラリーを作製する。このスラリーを、ドクターブレード法、ロールカレンダー法等のシート成形法を用いてシート状とすることによって、複数枚のセラミックグリーンシートを作製する。
【0051】
次に、上部絶縁層106用のセラミックグリーンシートに、キャビティ104となる開口を打ち抜き加工等で形成するとともに、枠状メタライズ層113、貫通導体117等となるメタライズペーストを所定の場所に位置させておく。貫通導体117となるメタライズペーストは、打ち抜き加工等でセラミックグリーンシートの所定の位置に形成した貫通孔内に充填することができる。また、下部絶縁層107となるセラミックグリーンシートに、接続パッド114、外部接続導体108の一部(コーナー導体109より内側の部分)、コーナー導体109、および貫通導体117等となるメタライズペーストを所定の場所に位置させておく。次に、コーナー導体109となるメタライズペーストの上面を覆うように、絶縁体110となるセラミックペーストを位置させた後、該セラミックペーストの上に外部接続導体108の残りの一部(コーナー導体109と重なる部分)となるメタライズペーストを位置させる。そして、メタライズペーストおよびセラミックペーストが所定の場所に設けられたセラミックグリーンシートを加圧加工すればよい。あるいは、コーナー導体109となるメタライズペーストの上に絶縁体110となるセラミックペーストを設け、該セラミックペーストの上に外部接続導体108となるメタライズペーストを設けた後、加圧加工すればよい。このように加工された上部絶縁層106用のセラミックグリーンシートと下部絶縁層107用のセラミックグリーンシートとを積層し、得られた積層体を例えば1200℃~1600℃で焼成することで、母基板200を作製することができる。
【0052】
絶縁体110となるセラミックペーストの塗布形状は、例えば
図7に示すように、円の1/4とした扇形状(母基板200では、円状)に塗布するとともに、その厚みが絶縁基板101の角部105Cで最も大きくなるように設ければよい。これにより、加圧加工において、コーナー導体109が、外部接続導体108から絶縁基板101の角部105Cに向かって、第1面102側に凸状に湾曲し易くなる。その結果、コーナー導体109を、絶縁基板101の厚み方向において第2面103との間隔が漸次大きくなるように設けることができる。つまり、加圧前に絶縁体110を厚く設けた部分が、加圧時にコーナー導体109となるメタライズペーストをより深く絶縁基板101となるセラミックグリーンシートの内部に押し入れることになる。
【0053】
母基板200の上記作製方法は、枠状の上部絶縁層106となるセラミックグリーンシートと、平板状の下部絶縁層107となるセラミックグリーンシートとを積層する方法であるが、この方法に限られない。例えば、メタライズペースト、およびセラミックペーストが塗布された、絶縁基板101となるセラミックグリーンシートの表面に凹状のキャビティ104が位置するように、突出部(凸部)および凹み部を有する加圧治具で加圧してもよい。その際、キャビティ104の底部となる部分を加圧するように、加圧治具の位置を決める。これによって、セラミックグリーンシートが加圧治具の突出部で押された部分がキャビティ104となり、加圧治具の凹み部で押された部分が搭載領域102Aを取り囲む枠部(上部絶縁層106)となる。また、セラミックグリーンシートの第2面103側においては、外部接続導体108となるメタライズペースト、および絶縁体110となるセラミックペーストが治具で押されて、コーナー導体109となるメタライズペーストが第1面102側に湾曲した構造となる。そして、外部接続導体108となるメタライズペーストが治具で押された結果、外部接続導体108と絶縁基板101の第2面103とが同一平面となる。なお、使用されるセラミックグリーンシート、メタライズペースト、およびセラミックペーストに添加するバインダーとしては、ガラス転移する温度が金型で加圧されるときの温度以下であるものを使用することができる。このようなバインダーを用いると、加圧治具でセラミックグリーンシート等を加圧した際に、枠部および外部接続導体108の露出面と、絶縁基板101の第2面103との同一平面化等の成型を良好に行うことができる。
【0054】
加圧治具の凹み部の幅および深さは一定であるため、加圧加工後の枠部の幅および高さも一定とすることができる。これにより、加圧加工後の枠部の寸法精度を高めることができる。外部接続導体108等が設けられた下部絶縁層107と、枠状メタライズ層113等が設けられた上部絶縁層106とが一体化された成型体を焼成することによって、電子部品収納用パッケージ100となる配線基板領域100Aが複数配列された母基板200を作製することができる。外部接続導体108等が設けられた下部絶縁層107と、枠状メタライズ層113等が設けられた上部絶縁層106とが一体化された成型体を焼成することにより、電子部品収納用パッケージ100となる配線基板領域100Aが複数配列された母基板200を作製することができる。
【0055】
電子部品収納用パッケージ100は、多数個取り配線基板(母基板200)を分割することによって製造される。母基板200は、基板面に縦横(X方向、Y方向)に配列された複数の配線基板領域100Aを有する。母基板200は、第1面102および第2面103における隣接する2つの配線基板領域100Aの境界部に分割溝(以下、単に、溝ともいう)123を有し、母基板200を分割溝に沿って破断することで、個片の電子部品収納用パッケージ100が得られる。溝123は、レーザまたはカッター刃を用いて、焼成前の母基板200または焼成後の母基板200を部分的に切断して形成することができる。溝123をレーザ加工によって形成する場合、X方向の溝123とY方向の溝123とが交差する部分、すなわち、絶縁基板101の角部105Cに対応する部分は、X方向の溝123を形成する際とY方向の溝123を形成する際とに、2回のレーザ照射を受ける。そのため、例えば
図4A,4Bに示すように、他の部分よりも溝が深い窪み部125が絶縁基板101の角部105Cに形成されうる。コーナー導体109が、角部105Cまで延在していると、角部105Cにおける分割溝123の底部である窪み部125にコーナー導体109が露出する虞がある。なお、
図4A,4Bにおいて、厚み方向における側面105の中央部が、破断面121である。溝123が形成されることによる傾斜面122は、破断面121よりも第1面102側および破断面121よりも第2面103側に位置している。破断面121と傾斜面122との境界線が溝123の底になる。傾斜面122は、第1面102と接続する第1傾斜面122aと、第2面103と接続する第2傾斜面122bとを含む。コーナー導体109の露出部109Aは、破断面121に位置している。
【0056】
母基板200を個片に分割する前に、コーナー導体109、枠状メタライズ層113、接続パッド114、および外部接続導体108等の配線導体WCの露出面にめっき層を被着させてもよい。配線導体WCにめっき層を被着させるためには、例えば、電気めっき法を用いることができる。電気めっき法を用いる場合、母基板200における配線基板領域100A以外の領域に、電気めっきを行う際に電流を供給するための供給導体を配置する。そして、供給導体と母基板200の最外周に位置する配線基板領域100Aとを接続する接続導体、および、隣接する配線基板領域100Aを跨いでそれぞれの配線同士を接続する接続導体を配置すればよい。これにより、供給導体に電流を供給することで、各配線基板領域100Aの配線導体WCの全てに電流を供給することができ、各配線基板領域100Aの露出した配線導体WCにめっき層が被着される。このとき、コーナー導体109が角部105Cに位置する窪み部125に露出していると、この露出部にもめっき層が被着されることになる。第2傾斜面122bよりも第1面102に近い位置に、はんだ等の導電性接合材が濡れやすいめっき層が形成されることになるため、外部接続導体108と第1面102上の枠状メタライズ層113との間がはんだ等の導電性接合材で短絡してしまう可能性がある。電子部品収納用パッケージの小型化および低背化を図ると、このような短絡の可能性が高まるものであった。
【0057】
電子部品収納用パッケージ100を得るための母基板200において、コーナー導体109が上記の接続導体として機能する。母基板200において、コーナー導体109は、隣接する配線基板領域100Aに設けられたもの同士が接続されている。コーナー導体109は、接続導体として機能するだけであれば、幅が小さい帯状の配線導体であってもよい。本実施形態では、コーナー導体109は、外部接続導体108と協働して絶縁体110を保護するために、例えば
図9A~9Eに示すような略ドーム状の形状とされている。
図9A~9Eに示す母基板200のコーナー導体109は、
図6A~6Eに示す電子部品収納用パッケージ100のコーナー導体109にそれぞれ対応する。
図9A~9Eでは、分割溝123を形成する前の母基板200を示している。また、
図9A~9Eでは、下部絶縁層107の一部と、外部接続導体108の1つと、コーナー導体109の1つのみを示している。
【0058】
コーナー導体109は、外部接続導体108から角部105Cに向かうにつれて外部接続導体108との間隔が漸次大きくなるように位置しており、角部105Cまで延在していない。そのため、母基板200におけるコーナー導体109の形状は、例えば
図9A~9Eに示すように、4つの絶縁基板101のそれぞれの角部105Cに重なる頂部が開放されたドーム状である。このため、角部105Cに窪み部125が形成された場合であっても、コーナー導体109が分割溝123の底部である窪み部125に露出する虞を低減できる。また、溝123をレーザ加工によって形成する場合に、レーザ加工に伴うコーナー導体109からの飛散物が窪み部125に被着する虞を低減できる。その結果、溝123の底にめっき層が被着することで外部接続導体108と枠状メタライズ層113との間がはんだ等の導電性接合材で短絡してしまう可能性が低減されるとともに、母基板200の分割が容易になる。
図9Dに示す例では、外部接続導体108が、配線基板領域100Aの周縁に重なっておらず、配線基板領域100Aの内方に離隔した位置にある。このような場合は、レーザ加工に伴う外部接続導体108からの飛散物が窪み部125に被着する虞を低減でき、その結果、母基板200の分割が一層容易になる。
【0059】
母基板200を個片に分割する前のめっき層の被着は、無電解めっきによって行なうこともできる。この場合には、コーナー導体109は接続導体として機能しなくてもよいため、コーナー導体109は側面105まで延在していなくてもよいが、上述の実施形態と同様の形状のコーナー導体109を用いてもよい。コーナー導体109が側面105まで延在していると、絶縁体110の保護の点で有利である。このとき、
図11に示すように、コーナー導体109が側面105まで延在し、露出部109Aは第2傾斜面122bのみに位置していてもよい。このような場合には、母基板200を個片に分割する前に、無電解めっきによって露出部109Aにめっき層を被着することが可能となる。そのため、コーナー導体109が、上述した金属材料のうち、モリブデンや銅等の比較的腐食しやすい材料からなる場合であっても、露出部109Aがめっき層で覆われて保護されることで、露出部109Aが腐食する可能性が低減される。また、上述した実施形態と同様に、コーナー導体109が角部105Cまで延在しないことで、外部接続導体108と枠状メタライズ層113との間がはんだ等の導電性接合材で短絡してしまう可能性が低減される。外部接続導体108とコーナー導体109とによって、絶縁体110を挟むことができるため、絶縁基板101の角隅部に欠け、割れ等が発生することを効果的に抑制できる。このとき、露出部109Aは、
図11に示すように、第2傾斜面122bにおける第2面103側に位置していてもよい。さらには、露出部109Aは、外部接続導体108に接続されていてもよい。はんだ等の導電性接合材が濡れ広がりやすい露出部109Aが第2面103に近い、さらには第2面103(外部接続導体108)に接していることから、はんだ等の導電性接合材の外部接続導体108からの這い上がりを小さく抑えることができる。そのため、外部接続導体108と枠状メタライズ層113との間がはんだ等の導電性接合材で短絡してしまう可能性が低減される。
【0060】
本開示の電子装置300は、例えば
図11に示すように、上記の電子部品収納用パッケージ100と、電子部品収納用パッケージ100に搭載された電子部品112とを備えている。これにより、取り扱う際の電子部品収納用パッケージ100の欠け、割れ等が抑制され、寸法精度に優れた電子装置300を提供できる。言い換えれば、絶縁基板101の欠け、割れ等が抑制された電子部品収納用パッケージ100を用いて、寸法精度に優れた電子装置300を作製することができる。また、電子装置300によれば、絶縁基板101の欠け、割れ等に起因して、貫通導体117等の導通経路が断線したり、外部接続導体108が絶縁基板101から剥離したりする虞を低減できる。そのため、電子部品収納用パッケージ100とモジュール用基板400との電気的接続信頼性に優れた電子装置を提供できる。
【0061】
電子部品112としては、温度補償水晶発振器(Temperature Compensated Crystal Oscillator;TCXO)等の水晶振動素子の圧電振動子の他、例えば、セラミック圧電素子および弾性表面波素子等の圧電素子、半導体素子、容量素子、ならびに抵抗素子等が挙げられる。
【0062】
電子部品112の各電極(図示せず)と接続パッド114との接続は、例えば
図11に示すように、導電性接着剤等の接合材115を介して行われてもよい。
【0063】
本開示の電子モジュール500は、電子装置300と、電子装置300が接続されたモジュール用基板とを備える。電子モジュール500は、電子部品収納用パッケージ100における絶縁基板101と外部接続導体108との接合強度が高いことから、電子装置300とモジュール用基板400との電気的接続信頼性が高い。したがって、電子モジュール500によれば、動作信頼性に優れた電子モジュールを提供できる。
【0064】
本開示は上述の実施の形態の一例に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、電子部品収納用パッケージ100は、第1面102に開口する複数のキャビティを有し、複数のキャビティの各々に搭載領域を有していてもよい。上述の実施の形態の一例では、キャビティ104内に一対の接続パッド114を位置させたが、搭載する電子部品の形状、種類等に応じて、任意の数の接続パッド114をキャビティ104内に位置させてもよい。上述の実施の形態の一例では、4つの外部接続導体108を、絶縁基板101の第2面103の4つの隅部にそれぞれ位置させたが、これに限定されず、電子部品収納用パッケージ100の大きさ、電子装置の種類、搭載する電子部品の種類等に応じて、追加の外部接続導体108が第2面103の隅部以外に位置していてもよい。
【0065】
電子部品収納用パッケージ100は、例えば
図12に示すように、平板状の絶縁基板101を有していてもよい。この場合、電子部品112を搭載する搭載領域102Aが、絶縁基板101の第1面102に設けられ、箱型(ハット型ともいう)の蓋体116が、搭載領域102Aを覆い、内部に電子部品112を収容していてもよい。電子装置300は、電子部品収納用パッケージ100の搭載領域102Aに電子部品112を搭載し、鍔部を有する箱型の蓋体116で電子部品112を覆って封止したものでもよい。このとき、蓋体116の鍔部と絶縁基板101の第1面102の外周部とをろう材118等の導電性接合材を用いて接合してもよい。
図12では、絶縁基板101が単一の絶縁層で構成される例を示したが、絶縁基板101は、複数の絶縁層が積層されて構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
100 電子部品収納用パッケージ
100A 配線基板領域
101 絶縁基板
102 第1面
102A 搭載領域
103 第2面
104 キャビティ
105 側面
105A 第1側面
105B 第2側面
105C 角部
106 上部絶縁層
107 下部絶縁層
108 外部接続導体
109 コーナー導体
109A 露出部
109B,109D,109F 第1部分
109C,109E,109G 第2部分
109H 第3部分
110 絶縁体
112 電子部品
113 枠状メタライズ層
114 接続パッド
115 接合材
116 蓋体
117 貫通導体
118 ろう材
121 破断面
122 傾斜面
122a 第1傾斜面
122b 第2傾斜面
123 分割溝
125 窪み部
200 母基板
300 電子装置
400 モジュール用基板
500 電子モジュール