(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】全血中のヘモグロビンパラメータを決定するための分析システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20240813BHJP
G01J 3/14 20060101ALI20240813BHJP
G01J 3/18 20060101ALI20240813BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240813BHJP
G01N 33/72 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
G01J3/14
G01J3/18
G01N33/483 C
G01N33/72 A
G01N33/72 B
(21)【出願番号】P 2023053866
(22)【出願日】2023-03-29
(62)【分割の表示】P 2021082609の分割
【原出願日】2016-02-04
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】501464761
【氏名又は名称】ノヴァ バイオメディカル コーポレイション
【住所又は居所原語表記】200 Prospect Street Waltham MA 02454(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カフェティ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】チョネク スコット ピー.
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-121986(JP,A)
【文献】特開2009-257998(JP,A)
【文献】特開2003-124887(JP,A)
【文献】特開平9-043459(JP,A)
【文献】特開2015-032658(JP,A)
【文献】国際公開第2007/043509(WO,A1)
【文献】特表2015-522086(JP,A)
【文献】特開2003-257826(JP,A)
【文献】国際公開第99/033603(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/139201(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0316471(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105277757(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00- 4/04
G01J 7/00- 9/04
G01N 21/00-21/61
G01N 33/48-33/98
G02B 7/02- 7/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血ヘモグロビンパラメータ又は全血ビリルビンパラメータを測定するためのシステムの分光計モジュール(100)において使用される光学コンポーネント群(120)であって、前記システムは光路(21)を備え、前記光学コンポーネント群(120)は、
光分散要素(130)と、
前記光分散要素(130)と前記分光計モジュール(100)の光入射ポート(109)との間に配設されたアクロマティックレンズ組立体(121)と、を備え、
前記アクロマティックレンズ組立体(121)は、前記分光計モジュール(100)の分光計ベース(104)及びベースプレート(104a)の少なくとも1つに固定接続された2つの固定マウント端(122a)を有するレンズマウント(122)を備え、
前記光分散要素(130)はプリズム(131)及び回折格子(136)の少なくとも一方を備え、
前記光学コンポーネント群(120)は、前記アクロマティックレンズ組立体(121)
及び前記光分散要素(130)の両方を一定温度に維持するための熱補償手段を備え、前記熱補償手段は、前記アクロマティックレンズ組立体(121)
及び前記光分散要素(130)の両方を前記一定温度に維持するように構成される温度コントローラ組立体(170)を備え、
光ビームは前記アクロマティックレンズ組立体(121)を通って前記光分散要素(130)に進み、その後、前記アクロマティックレンズ組立体(121)を通って戻る、光学コンポーネント群(120)。
【請求項2】
前記温度コントローラ組立体(170)は、
前記分光計モジュール(100)の外側表面及び内側表面の少なくとも一方に取付けられたリボン加熱器(172)と、
記分光計モジュール(100)及び前記リボン加熱器(172)の温度を測定し、前記アクロマティックレンズ組立体(121)を
前記一定温度に維持するように構成される温度センサ(174)と、を含む、請求項1に記載の光学コンポーネント群(120)。
【請求項3】
前記リボン加熱器(172)は、電子調整回路によって制御される、請求
項2に記載の光学コンポーネント群(120)。
【請求項4】
前記温度センサ(174)は、熱電対及びサーミスタの少なくともいずれか1つを含む、請求項
2から
3のいずれかに記載の光学コンポーネント群(120)。
【請求項5】
前記光分散要素(130)はプリズム(131)を備え、
前記温度コントローラ組立体(170)は、前記アクロマティックレンズ組立体(121)及び
前記プリズム(131)の両方を
前記一定温度に維持するよう構成される、請求項1に記載の光学コンポーネント群(120)。
【請求項6】
前記プリズム(131)はリトロープリズムである、請求項5に記載の光学コンポーネント群(120)。
【請求項7】
前記熱補償手段は、前記
分光計モジュール(100)の内側のみに配設されるか、前記
分光計モジュール(100)の外側のみに配設されるか、または、前記
分光計モジュール(100)の内側及び外側の両方に配設される
断熱体を備える、請求項1に記載の光学コンポーネント群(120)。
【請求項8】
前記熱補償手段は、前記温度コントローラ組立体(170)及び前記
分光計モジュール(100)に配設され
た断熱体の両方を備える、請求項1に記載の光学コンポーネント群(120)。
【請求項9】
前記光分散要素(130)は
回折格子
を備える、請求項1に記載の光学コンポーネント群(120)。
【請求項10】
前記アクロマティックレンズ組立体(121)は、前記レンズマウント(122)に固定的に取り付けられたアクロマティックレンズ(124)を備える、請求項1に記載の光学コンポーネント群(120)。
【請求項11】
前記アクロマティックレンズ(124)は球面アクロマティックレンズである、請求項
10に記載の光学コンポーネント群(120)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、一般に、血中のヘモグロビンパラメータを同定し特徴付けるための分光システム及び方法に関する。
[背景技術]
紫外線-可視光分光システムは、吸収分光法又は反射分光法を含む。名前が示唆するように、こうしたシステムは、サンプルを分析するために可視及び近紫外範囲内の光を使用する。波長範囲は、通常、約400nm~約700nmである。可視光の吸収又は反射は、関係する化学物質の知覚される色に直接影響を及ぼす。UV/Vis分光法は、遷移金属イオン、高度の共役した有機化合物、及び生体高分子等の異なる分析物の定量的決定のための分析化学において日常的に使用される。分光分析は、一般に、溶液内で実施されるが、固体及び気体を同様に調査することができる。
【0002】
近赤外分光システムは、同様に、吸収分光法又は反射分光法を含む。こうしたシステムは、サンプルを分析するために近赤外範囲内の光を使用する。波長範囲は、通常、約700nm~2,500nm未満である。典型的なアプリケーションは、製薬、医療診断(血糖及びパルスオキシメトリを含む)、食物及び農薬品質管理、及び燃焼研究、並びに、脳機能イメージングにおける研究、スポーツ医療及び科学、エリートスポーツトレーニング、人間工学、リハビリテーション、新生児研究、ブレインコンピュータインタフェース、泌尿器学(膀胱収縮)、及び神経学(神経血管結合)を含む。
【0003】
近IR(NIR)分光法用の機器は、UV-可視及び中IR範囲用の機器と同様である。分光計の基本的部品は、光源、サンプル用のホルダ、異なる波長の光を分離するためのモノクロメータ及びプリズム内の回折格子、及び検出器である。放射源は、しばしば、タングステンフィラメント(300~2500nm)、紫外線領域(190~400nm)にわたって連続である重水素アークランプ、160nmから2,000nmまで連続であるキセノンアークランプ、又はより最近としては、可視波長用の発光ダイオード(LED)である。検出器は、通常、光電子増倍管、フォトダイオード、フォトダイオードアレイ、又は電荷結合素子(CCD)である。単一フォトダイオード検出器及び光電子増倍管は、走査型モノクロメータと共に使用され、走査型モノクロメータは、1回に単一波長の光だけが検出器に達するように光をフィルタリングする。走査型モノクロメータは、回折格子を移動させて、その強度が波長の関数として測定されるように各波長を「ステップスルーする(step-through)」。固定型モノクロメータは、CCD及びフォトダイオードアレイと共に使用される。これらのデバイスは共に、1次元又は2次元アレイにグループ化された多くの検出器からなるため、異なるピクセル又はピクセルの群上で異なる波長の光を同時に収集できる。一般的な白熱又は石英ハロゲンライトバルブは、最もしばしば、分析アプリケーション用の近赤外放射の広帯域供給源として使用される。発光ダイオード(LED)が同様に使用される。使用される検出器のタイプは、測定される波長の範囲に主に依存する。
【0004】
人間身体に対するNIR分光法の主要なアプリケーションは、人間身体組織におけるNIR光の透過及び吸収がヘモグロビン濃度変化に関する情報を含むことを使用する。幾つかの波長及び時間分解(周波数又は時間領域)法及び/又は空間分解法を使用することによって、血流、体積、及び絶対組織飽和度(StO2又は組織飽和指数(TSI:Tissue Saturation Index))が定量化され得る。NIRS法によるオキシメトリのアプリケーションは、神経科学、人間工学、リハビリテーション、ブレインコンピュータインタフェース、泌尿器学、血液循環に影響を及ぼす病気(例えば、末梢血
管疾患)の検出、胸部腫瘍の検出及び評価、及び、スポーツ医療におけるトレーニングの最適化を含む。
【0005】
吸収分光法に関して、ベール・ランベルトの法則(Beer-Lambert law)は、溶液の吸が溶液内の吸収種の濃度及び経路長に正比例することを述べる。そのため、固定経路長について、UV/Vis及びNIR分光法が使用されて、溶液内の吸収体の濃度を決定し得る。方法は、ほとんどの場合定量的に使用されて、ベール・ランベルトの法則を使用して、溶液内の吸収種の濃度を決定する:
A=log10(I0/I)=εcL
ここで、Aは吸光度単位(AU:Absorbance unit)の測定された吸光度であり、
I0は、所与の波長の入射光の強度であり、
Iは透過強度であり、
Lはサンプルを通る経路長であり、
cは吸収種の濃度である。
【0006】
それぞれの種及び波長について、εは、モル吸収率又は消散係数として知られる定数である。この定数は、特定の温度及び圧力における所与の溶媒内の基本的な分子特性であり、1/M*cm又はしばしばAU/M*cmの単位を有する。吸光度及び消散度εは、時として、10を底とする対数の代わりに自然対数によって規定される。
【0007】
ベール・ランベルトの法則は、多くの化合物を特徴付けるのに有用であるが、全ての物質の濃度及び吸収についての普遍的関係として有効でない。
種々の因子がこれらの分光システムに影響を及ぼすことが当業者によって認識される。これらの因子は、スペクトル帯域幅、波長誤差、迷走光、ベール・ランベルトの法則からの逸脱、及び測定の不確実性源を含む。
【0008】
迷走光は、分光システムに影響を及ぼす重要な因子である。迷走光は、不正に低い吸光度を機器に報告させる。
ベール・ランベルトの法則からの逸脱は、濃度に基づいて生じる。十分に高い濃度において、吸収帯域は飽和し、吸収平坦化を示すことになる。吸収ピークは、100%に近い光が既に吸収されているため、平坦化しているように見える。これが起こる濃度は、測定される特定の化合物に依存する。
【0009】
測定の不確実性は、定量的化学分析で生じ、その結果は、測定される化合物及び/又は溶液の性質からの不確実性源によって更に影響される。これらは、吸収帯域オーバラップ、(分解又は反応によって引起される)吸収種の色あせ、及びサンプルと較正溶液との間の考えられる組成不整合を含む。
[発明の概要]
ヒトヘモグロビン(HGB:human hemoglobin)が赤血球内の酸素運搬蛋白質であることが知られている。全血中のその濃度の決定は、臨床生化学において有用かつ重要な診断ツールである。COOx分析器は、吸光度測定を使用して、総ヘモグロビン(tHb:total hemoglobin)、カルボキシヘモグロビン(COHb:carboxyhemoglobin)、脱酸素化ヘモグロビン(HHb:deoxyhemoglobin)、酸素化ヘモグロビン(O2Hb:oxyhemoglobin)、メトヘモグロビン(MetHb:methemoglobin)、及び胎児ヘモグロビン(FHb:fetal hemoglobin)等の血液のヘモグロビンパラメータ、並びに総ビリルビン(tBil:total bilirubin)を測定するために使用される。実際には、典型的なCOOx分析器は、全血の分光分析で遭遇する問題のために、全血の代わりに溶解血を使用する。溶解血の測定は、比較的簡単である。その理
由は、溶解プロセスが赤血球を溶解し、血液をほぼ非拡散の媒体にするからである。吸光度は、散乱による光の損失がほとんどないキュベットを通る単純なコリメート済みビームによって測定される。散乱による光の損失が小さいため、簡単な線形解析が使用されて、ヘモグロビン及び総ビリルビンパラメータを見出し得る。
【0010】
全血サンプルを使用するヘモグロビン及び総ビリルビンパラメータの測定は、全血の強い光学散乱のために非常に大変である。これらの問題は、溶解血と比較して全血の増加した光散乱レベルに対処することに主に関する。これは、光損失及び非線形吸光度を測定に導入する。
【0011】
プリズムベース分光計内のコンポーネントは、当然、低迷走光プロファイルを有する。迷走光に対する主要な寄与因子は、コンポーネントがどのように使用されるかに関連する。
【0012】
問題は、全血の増加した光散乱レベルに対処することに主に関連するが、それは、解決される場合、これらの困難な問題を解決することが可能である単一の因子ではない。本発明者等は、全血中のヘモグロビンパラメータを測定するために対処される必要がある幾つかの因子を特定した。全血は、拡散性の高い媒体であるため、上限吸光度測定範囲についての要件を低減するために出来る限り多くの光を収集することが必要である。検出器線形性補正の範囲が低いため、測定される吸光度の上限を拡張することが同様に必要である。血液沈降効果は、溶解血スキャンの吸光度に対する全血スキャンの吸光度の不充分な相関をもたらす別の問題である。基本的に、血液細胞は、凝集又は連銭を形成する。LED白色光源輝度は、同様に増加されなければならない。最後に、線形ベースアルゴリズム以外の新しいアルゴリズムが、全血の光散乱効果を克服するために必要とされる。
【0013】
溶解血を使用するシステム用の典型的な収集光学系は、約+/-0.7度幅の円錐内でキュベットから光を収集し、1.5A.U.(吸光度単位)の測定吸光度上限を有するように設計される。全血について、システムが、約+/-12度の円錐内でキュベットから光を収集する必要があること、及び、吸光度上限が約3.5A.U.まで増加しなければならなかったことが本発明者等によって発見された。血液沈降効果、吸光度スペクトルを測定するのにかかる典型的な時間(約、1分)に関して、キュベット内の全血は沈降し、血液細胞は凝集又は連銭を形成する。その結果、散乱効果及び吸光度は時間と共に変化する。長期間にわたって平均される少数のスキャンではなく、複数のスキャンを頻繁に収集するために分光計制御を変更することが、幾つかの積分時間からのスキャンから共にスティッチングされる複合吸収度スキャンにおけるステップ関数を回避したことを本発明者等は発見した。残念ながら、吸光度上限を拡張するためにより多くのスキャンを付加することは、データ収集時間を増加させる。このジレンマを解決するために、積分時間が、データ収集時間を低減するために5msec~1.2msecまで減少された。しかし、これが、対応する因子によって光レベルが増加する場合に働くだけであることが発見された。そのため、LED白色光輝度が増加されなければならない。
【0014】
全血等の拡散サンプルの吸光度測定は特有の問題を呈する。全血サンプルの拡散透過は、光源に特有の不均一性によって引起される測定システムの初期空間光分布をかき乱す。そのため、「ブランク(blank)」スキャンの空間光分布は、全血サンプルスキャンと全く異なり得る。光学検出器が空間的に変動する応答を有するため、全体の強度が変化していなかったとしても、応答は、入射光の空間分布変化によって変動し得る。全血サンプルスキャンとブランクスキャンとの比に基づく吸光度スキャンは、サンプルだけによる吸光度に加えて、光源のこの不均一性による有意の吸光度成分を有することになる。これは、coオキシメトリについて許容できない全血サンプル吸光度の有意の測定誤差をもたらす。
【0015】
サンプルキュベットを拡散板の間に設置することによって、空間光分布がブランクスキャンとサンプルスキャンについて同じに見え、したがって、この誤差効果を取除くことが発見された。拡散板は、入射光のレイを光学システムの全受容円錐に入るように拡散させるように、しかし、それほど多くはないが、フィールドを完全に横切るレイを乱しながら、出来る限り多くの光スループットが保持されるように、特に選択される。
【0016】
更に、胎児ヘモグロビンパラメータの測定は、更なる問題を呈する。これらは、より速くなければならないスペクトル取得時間を含む。典型的な12秒の代わりに、スペクトル取得時間は5秒未満でなければならない。スペクトル取得時間は、積分時間にそれぞれに付加されたスペクトルの数を掛けた値、及び、全ての以下の要件に合う1つのスペクトル(フルライト、ダーク、又はサンプル)を生成するための処理時間を含む。絶対波長精度は、より小さく;+0.1/-0.0nmと比較して+0.03/-0.03nm未満でなければならない。波長較正メンテナンス(+0.1/-0.0nmに対して+0.06/-0.0nm未満)、波長較正ドリフト(0.04nm/℃と比較して0.024nm/℃未満)、暗電流レベル(0.1%/℃の最大ダイナミックレンジに対して0.06%/℃未満の最大ダイナミックレンジ)、応答非線形性(補正後の0.1%並びに最低及び最高の10%のダイナミックレンジについて2.0%と比較して、補正後の0.06%未満並びに最低及び最高の10%のダイナミックレンジについて1.2%未満)、散乱光レベル(フル照射された検出器アレイについて0.1%の最大ダイナミックレンジに対して、フル照射された検出器アレイについて0.02%未満の最大ダイナミックレンジ)、応答の熱ドリフト(スペクトル範囲にわたる10%の強度変化最大及び10%の傾斜最大と比較して、スペクトル範囲にわたる6%の強度変化最大及び6%の傾斜最大)、及び測定中に許容される温度逸脱(2℃と比較して、0.5℃未満)は、全て小さくなければならない。本発明は、胎児ヘモグロビンパラメータを測定するときに使用するためのこれらの更なる特徴を含む。
【0017】
本発明の別の態様において、商業的に入手可能なコンパクトかつ低コストの分光計は、通常、回折格子(反射又は透過)を使用して、光入力を分散させる。回折格子は、小体積内で高い程度の分散を与え、典型的なユーザが好む波長に対して比較的一定の帯域幅(又は分解能)を生成する。しかし、格子は、複数の回折次数による高い迷走光、また同様に、回折表面を生成するためにエッチングされるラインにおける固有の不完全さに悩まされる。そのため、より一般的に入手可能な複製格子ではなく、大量生産されるが高価なマスターホログラフィック格子が、低迷走光を要求するアプリケーションにおいて通常使用される。
【0018】
COOx分析器の場合の低迷走光についての要件は、適した格子製造業者の母集団を、マスターホログラフィック格子又は個々に精密エッチング済みの格子を生産する幾つかの製造業者に限定する。これは、低コストで高性能の格子を所定の量で得ることを難しくする働きをする。
【0019】
プリズムは、同様に、分光計を作るために使用される。プリズムは、複数の回折次数に関する問題を全く持たず、その表面は、格子の表面に比べて数桁小さい不完全性を有する。プリズンベース分光計内のコンポーネントは、当然、低迷走光プロファイルを有する。そのため、プリズム分光計における迷走光は、その他の点では同様の設計の格子分光計と比較して、一桁以上低くなる可能性がある。迷走光性能に対する主要な寄与因子は、コンポーネントがどのように使用されるかから生じる。3つの主要な迷走光供給源が存在する。これらは、(1)分光計開口数のオーバフィリング、(2)光アレイ検出器からの再帰反射、及び(3)焦点面画像を含む。分光計の開口数を完全に照明するために必要とされる光を超える光は、分光計内で跳ね返り、検出器上に着地し得る。本発明において、光フ
ァイバの開口数は0.22であり、プリズム分光計の開口数は0.1である。光ファイバ入力の上に設置される絞りは、過剰な光入力を防止するために光ファイバからの光入力円錐を制限する。光アレイ検出器は、そこに入射する光の全てを吸収するのではなく、一部分を後方反射する。この再帰反射は、検出器上で散乱することを防止するために、吸収表面又はビームトラップ内に着地するように制御されなければならない。光アレイ検出器にわずかな傾斜を与えることは、再帰反射を、無害な方向に戻るように強制する。検出器焦点面上のスリットの画像は、出来る限り鮮鋭でなければならない。デフォーカスによる検出器の過剰なオーバフィルはいずれも、潜在的な迷走光源になり得る。この光は、ボンドワイヤ、金属化パッド等のような検出器構造に当たる場合、検出器の感度表面上に戻るように跳ね返り得る。
【0020】
更に、プリズム分光計は、回折格子分光計と比べて、より多くのピクセルにわたってスペクトルの青っぽい色を広げ、したがって、スペクトルの青っぽい色は、ピクセルについて低い信号を与える。ピクセルについての低い信号を補償するために、より高い青色パワーを有するLED又は青みを帯びた白色LEDが使用される。青色の信号は、赤っぽい色をわずかに減衰させるLEDの後に安価なフィルターガラスを付加することによって更に増大され得る。約3mm厚のKoppフィルターガラスタイプ4309はこのために有用である。プリズムの主要な欠点は、格子と比較したプリズムが有する低い分散パワー、及び、波長による分解能の変動である。プリズムが使用される本発明において、前者の欠点は十分に小さな光アレイ検出器を使用することによって軽減され、後者は、全血の分析が関心の周波帯にわたって一様に小さな分解能を必要としないため軽減される。
【0021】
現在のところ利用可能な分光計は、通常、455~660nmの血液測定スペクトル領域について一様な1nm分解能を挙げる。本発明において、スペクトル領域は、拡張され、422~695nmのスペクトル領域をカバーする。更に、分解能は、低い分解能が必要とされない領域(600~695nm領域及び422~455nm領域等)において、上方に選択的に変更される。本発明において、これらの領域は、1nmより大きな分解能を有する。通常、分解能は約3.0nm~約3.5nmである。これらの範囲は、波長較正及び流体検出について更なる波長較正ピークを取込むために使用される。本発明のより大きなスペクトル領域は、プリズムからの分散スペクトルを検討することを必要とする。分散スペクトルは、光アレイ検出器にわたって広げられ、検出器アレイの外に延存するほどには覆わないが、十分に微細な分解能でスペクトルをサンプリングするのに十分なピクセルを覆わなければならない。より広いスペクトル範囲のせいで、本発明は、約8.0mmのアクティブエリア長を有する1024ピクセルを有する光アレイ検出器を組込む。
【0022】
光学分散分光計についての最小部分参照設計は、2つのコンポーネント:光分散要素(すなわち、プリズム又は格子)及びダブレット(アクロマティック)レンズだけを必要とする。プリズム/格子は、ベース上に反射コーティングを有する。受容可能なプリズムの例はリトロー(Littrow)プリズムである。リトロープリズムは、リトロープリズムが本発明のコンパクトかつ低コストの分光計について有用であるような構造を有する。プリズム材料(分散特性)及びレンズ焦点距離は、さらなる検討事項である。他の
プリズム及びアクロマティックレンズが使用される場合があるが、本発明の一実施形態は、Schott F5ガラスプリズム及び80mm焦点距離レンズを組込む。この特定の組合せは、約6.48mmのスペクトルの分散長を提供する。この分散長は、公差変動について利用可能な光アレイ検出器の両端の約0.75mm及びダーク補正ピクセルを残す。
【0023】
スペクトル応答の熱ドリフトが検討されなければならない。分光計のスペクトル応答がフルライトと全血スキャンとの間で或る範囲内に留まることが非常に重要である。分光計におけるいずれの変化も、吸光度誤差を引起すことになる。この変化に対する主要な予防
策は、温度による画像ドリフトが検出器ピクセル上での光の減少を引起さないように、スリットの画像がピクセルをオーバフィルすることを保証することである。200μm径光ファイバを組合せたシステムの1:1撮像は、125μmトールピクセルをオーバフィルする。画像ドリフトが、測定間隔にわたって検出器に沿う両方向への約30μm未満の移動に限定される限り、熱ドリフトは問題でない。本発明は、同様に、スペクトル応答に対する熱ドリフト効果を最小にする種々の機構を企図する。これらの機構は、分光計ハウジングの外部の温度変化を最小にするために分光計ハウジングを断熱すること、温度制御式熱源を使用して分光計ハウジング内の温度を維持すること、及び/又は、アクロマティックレンズ用の温度補償レンズマウントを組込むこと、を含む。
【0024】
分光計からの電気信号を変換する本発明のプロセスがここで論じられる。第1に、吸光度が測定され、吸光度は、血液サンプルがキュベット内にあるときに受信される電気信号と、透明流体がキュベット内にあるときに受信される電気信号との比の10を底とする対数を差し引かれる。第2に、各波長における吸光度値は、マッピング関数内に置かれ、マッピング関数は、吸光度値を全血サンプル内の分析物レベル(COOxパラメータ及びビリルビン)にマッピングする。マッピング関数及びその係数は、既知の分析物値と共に全血サンプルについて測定される吸光度値を使用し、これらの吸光度値と既知の分析物値との関係を確立することによって確立される。
【0025】
本発明は、コンパクトで低コストのCOOx分析器サブシステムを提供することによってこれらのまた他の目的を達成する。
本発明の一実施形態において、全血サンプルヘモグロビンパラメータを測定するためのシステムが存在し、システムは、(a)発光モジュール、置換可能キュベット組立体、及び較正光モジュールを有する光学サンプルモジュール、(b)光ファイバ、(c)分光計モジュール、及び(d)プロセッサモジュールを含む。発光モジュールは、光を放出することが可能なLED光源を有し、光は光路に沿って方向付けられる。キュベット組立体は、発光モジュールに隣接し、キュベット組立体は、全血サンプルを受容するように適合され、互いに整列した第1のキュベット窓及び第2のキュベット窓を有するサンプル受容チャンバを有する。サンプル受容チャンバは、LED光源から光を受信するために光路内に配設され、サンプル受容チャンバの経路長の値を記憶することが可能な電子チップと共に、第1のキュベット窓と第2のキュベット窓との間に規定済み光路長を有する。較正光モジュールは、1つ又は複数の既知の波長の光を有する較正光源を有し、較正光モジュールは、光路内に較正光を放出することが可能である。光ファイバは、受光端及び発光端を有する。受光端は、光学サンプルモジュールに光学的に接続され、受光端は、光路からの光を受信し、光を発光端に伝える。分光計モジュールは、光ファイバの発光端から光を受信し、それぞれが異なる波長を有する複数の光ビームに光を分離し、複数の光ビームを電気信号に変換する。プロセッサモジュールは、電子チップからサンプル受容チャンバの経路長の値を取得し(1)、全血サンプルについて生成された分光計モジュールからの電気信号を処理する(2)。サンプルチャンバの経路長の値が使用されて、電気信号を、全血サンプルについてヘモグロビンパラメータ値及び/又は総ビリルビンパラメータ値を表示し報告するために使用可能な出力信号に変換する。
【0026】
本発明の別の実施形態において、発光モジュールは、LED光源とキュベット組立体との間の光路内に配設された複数の光学コンポーネントを含み、複数の光学コンポーネントは、少なくとも1つの光学拡散板、並びに、コリメーティングレンズ、円偏光子、及び収束レンズの1つ又は複数を含む。
本発明の更なる実施形態において、較正光モジュールは、キュベット組立体から下流であるが、ビームスプリッタから上流にある光路内に配設された拡散板を含む。
本発明の更に別の実施形態において、全血用の吸光度測定システムが開示される。システムは、光学サンプルモジュール、光ファイバ、分光計モジュール、及びプロセッサモジュ
ールを含む。光学サンプルモジュールは、発光モジュール、キュベットモジュール、第1の光学拡散板、及び第2の光学拡散板を含む。キュベットモジュールは、第1の光学拡散板と第2の光学拡散板との間に位置決めされる。分光計モジュールは、光ファイバの発光端から光を受信し、複数の光ビームに光を分離し、複数の光ビームを電気信号に変換する。プロセッサモジュールは、全血サンプルについて生成された分光計モジュールからの電気信号を受信して処理し、電気信号を、全血サンプルについてヘモグロビンパラメータ値及び/又は総ビリルビンパラメータ値を表示し報告するために使用可能な出力信号に変換する。
更に別の実施形態において、分光計モジュールは、光路内に位置決めされた入力スリットであって、それにより、光ファイバの発光端から放出される光を受信し、入力スリットに光を透過させる、入力スリットと、光路内に配設された光分散要素であって、入力スリットを透過した光を受信し、光を、それぞれが異なる波長を有する複数の光ビームに分離し、複数の光ビームを、入力スリットに向かうが入力スリットからオフセットして、再び方向付ける、光分散要素と、複数の光ビームを受信し、複数の光ビームを更なる処理のために電気信号に変換することが可能な光アレイ検出器と、を含む。
別の実施形態において、分光計モジュールは、光アレイ検出器上で複数の光ビームの位置を維持するための熱補償手段を有する。熱補償手段は、分光計ハウジングの周りに配設された断熱体、分光計ハウジング上に配設された温度コントローラ組立体(温度コントローラ組立体は、例えば、サーミスタ又は他の温度測定コンポーネントを有する加熱テープ、及び、分光計ハウジング内の温度に基づいてテープの加熱を制御するプログラムである)、及び熱補償レンズマウントの1つ又は複数を含む
更なる実施形態において、熱補償レンズマウントは、固定マウント端、及び、熱補償レンズマウントの熱膨張及び収縮を可能にする未固定マウント端を有する。固定マウント端は、ベースプレート又は分光計ハウジングの底部に固定的に取付けられる。レンズマウントは、レンズマウントが取付けられるベースプレート又は分光計ハウジングの膨張係数より大きい膨張係数を有する。熱補償レンズマウントは、レンズマウントの膨張係数に基づいて光入力スリットからの光の光路に対して直線的かつ横方向に移動する。レンズマウントのこの温度ベース移動は、光分散要素からの分散光の位置を光アレイ検出器上で維持する。換言すれば、熱補償レンズによるアクロマティックレンズの熱的再位置決めは、分散要素からの分散光が、入射光からの光アレイ検出器によって生成される電気信号に影響を及ぼすことなく、光アレイ検出器上に入射するようにさせる。光ビームのシフトは、温度変化に反応する光分散要素によって引起される。
別の実施形態において、全血中のヘモグロビンパラメータを測定するためのコンパクト分光計が開示される。分光計は、光入力端/光入射ポートを有する光ファイバ収容端を有する閉囲式分光計ハウジングと、閉囲式分光計ハウジング内に配設された回路基板サブストレート上に配設された光入力スリットであって、光入射ポートに整列しかつ隣接する、光入力スリットと、光入力スリットに隣接して回路基板サブストレート上に配設される光アレイ検出器と、光入力スリットから下流に配設された光分散要素及び光入力スリットと光分散要素との間に配設された球面アクロマティックレンズからなる光学コンポーネント群と、を含み、光分散要素は、アクロマティックレンズに向かって戻るように分散光を反射させるために裏面に反射表面を有する。アクロマティックレンズは、光入力スリットから光分散要素まで光を透過させ、光分散要素から反射された分散光を光アレイ検出器まで透過させる。これを達成するために、アクロマティックレンズは、光入力スリットからやって来る光に対してわずかにオフアクシスであるため、光分散要素からの分散光は、光入力スリットにではなく、光アレイ検出器に戻るように方向付けられる。
更なる実施形態において、全血によって引起される光学散乱が強くても、全血ヘモグロビンパラメータを測定する方法が開示される。方法は、約422nm~約695nmのスペクトル範囲を有するLED光源等の光源を設けること、スペクトル範囲を有する光を光源から光路に沿って誘導すること、光路内に配設された第1のキュベット窓を有するサンプル受容チャンバを有するキュベットモジュールであって、第1のキュベット窓は、サンプ
ル受容チャンバ及び第1のキュベット窓に整列した第2のキュベット窓に光を透過させ、サンプル受容チャンバは全血のサンプルを含む、キュベットモジュールを設けること、光路内に配設された拡散板の対(すなわち、第1の拡散板及び第2の拡散板)であって、キュベットのサンプル受容チャンバの第1のキュベット窓及び第2のキュベット窓は、拡散板の対の間に配設される、拡散板の対を設けること、キュベットモジュールから、それぞれが異なる波長を有する複数の光ビームに光を分離し、複数の光ビームを電気信号に変換する光分散要素を有する分光計内に光を誘導すること、及び、全血のサンプルのヘモグロビンパラメータ値及び/又は総ビリルビンパラメータ値を表示し報告するために使用可能な出力信号になるように電気信号を処理すること、を含む。
本方法の別の実施形態において、処理するステップは、スペクトル吸収率になるよう電気信号を処理すること、その後、スペクトル吸収率を、計算マッピング関数を使用してヘモグロビンパラメータ値及び/又はビリルビンパラメータ値にマッピングすること、を含む。
本方法の更に別の実施形態において、処理するステップは、計算マッピング関数として、潜在構造マッピング関数に対するカーネルベース直交射影を使用すること、を含む。
【0027】
本方法の更に別の実施形態において、全血サンプル中のヘモグロビンパラメータを測定する方法が開示される。方法は、(1)キュベットモジュールであって、キュベットモジュールを通る既知の光路長を有する光路を有し、透明流体で充填される、キュベットモジュールに光を透過させることによって、或る測定範囲内の複数の波長にわたる透過光強度スキャンを測定し記録すること、(2)キュベットであって、キュベットを通る既知の光路長を有する光路を有し、全血サンプルで充填される、キュベットに2回目に光を透過させることによって、測定範囲の複数の波長にわたる透過光強度スキャンを測定し記録すること、を含み、透明流体及び全血サンプルをそれぞれ測定し記録するステップは、透過光を、キュベットモジュールに透過させる前に透過光を拡散させ円偏光させること、その後、スペクトル吸収率を決定する前にキュベットモジュールから放出する透過光を拡散させること、を含み、(3)プリズムベース分光計を使用した全血サンプルの透過光強度スキャンと透明流体の透過光強度スキャンとの比に基づいて、測定範囲の複数の波長の各波長においてスペクトル吸収率を決定すること、及び、(4)計算マッピング関数を使用して、測定範囲の複数の波長の各波長における吸収率を、血液サンプルのヘモグロビンパラメータ値及び/又はビリルビンパラメータ値と相関させること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態の略斜視図であり、コンパクトなCOOxサブシステムを示す。
【
図2】
図1に示す光学サンプルモジュールの一実施形態の側立面図である。
【
図3】
図2に示す光学サンプルモジュールの発光モジュールの一実施形態の正面斜視図である。
【
図3A】
図3に示す発光モジュールの一実施形態の正面斜視図であり、複数の光学コンポーネントを示す。
【
図3B】
図3Aに示す光学コンポーネントの拡大側立面図である。
【
図4】
図1に示す光学サンプルモジュールのキュベット組立体の一実施形態の正面斜視図である。
【
図5】
図4に示すキュベット組立体の背面斜視図である。
【
図6】キュベット組立体のキュベットモジュールの正面立面図であり、流体入力及び出力ポート、サンプル受容チャンバ、サンプル窓、及び電子チップ組立体を示す。
【
図7】
図6のサンプル受容チャンバの背面斜視図であり、キュベット第1窓及び第2窓を示す。
【
図8】サンプル受容チャンバに隣接して配設される電子チップ組立体を示すサンプル受容チャンバの背面平面図である。
【
図9】
図1の光学サンプルモジュールの較正光モジュールの一実施形態の斜視図である。
【
図10】
図8の較正光モジュールの側断面図であり、較正光源を示す。
【
図11】
図9の較正光モジュールの較正光源の略側平面図であり、複数の光学コンポーネントを示す。
【
図12】
図1の分光計モジュールの一実施形態の正面斜視図であり、カバーが取除かれた状態で内部コンポーネントを示す。
【
図13】
図12の分光計モジュールの背面斜視図であり、入力光スリット及び隣接する光アレイ検出器を示す。
【
図14】
図12の分光計モジュールの背面断面図であり、単一回路基板並びに入力光スリット及び光アレイ検出器の場所を示す。
【
図15】重ね合わされたレイトレースを有する光学コンポーネントを示す
図12の分光計モジュールの上面図である。
【
図16】入力光スリットからの入力光及び光アレイ検出器上で屈折した複数の光ビームを示すレイトレースである。
【
図17A】分光計モジュールに巻付けられた断熱体を示す、分光計モジュール用の熱補償手段の一実施形態の斜視図である。
【
図17B】分光計モジュール用の熱補償手段の別に実施形態の斜視図であり、温度制御組立体を示す。
【
図17C】
図12の分光計モジュールのレンズマウントの一実施形態の断面図であり、温度補償レンズマウントを示す。
【
図18】
図12の分光計モジュールのレンズマウントの一実施形態の断面図であり、固定レンズマウントを示す。
【
図19】K-OPLSマッピング関数及び方法を使用する総ヘモグロビンのための本発明のCOOx分析器サブシステムの相関結果を示すグラフィック図である。
【
図20】K-OPLSマッピング関数及び方法を使用する酸素化ヘモグロビンのための本発明のCOOx分析器サブシステムの相関結果を示すグラフィック図である。
【
図21】K-OPLSマッピング関数及び方法を使用するカルボキシヘモグロビンのための本発明のCOOx分析器サブシステムの相関結果を示すグラフィック図である。
【
図22】K-OPLSマッピング関数及び方法を使用する脱酸素化ヘモグロビンのための本発明のCOOx分析器サブシステムの相関結果を示すグラフィック図である。
【
図23】K-OPLSマッピング関数及び方法を使用するメトヘモグロビンのための本発明のCOOx分析器サブシステムの相関結果を示すグラフィック図である。
【
図24】K-OPLSマッピング関数及び方法を使用する総ビリルビンのための本発明のCOOx分析器サブシステムの相関結果を示すグラフィック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[発明の詳細な説明]
本発明の実施形態は、
図1~24に示される。
図1は、COOx分析器サブシステム10の一実施形態を示す。COOx分析器サブシステム10は、少なくとも、光学サンプルモジュール20、光ファイバ90、及び分光計モジュール100を含む。COOx分析器サブシステム10は、任意選択で、プロセッサモジュール150を含むことができる、又は、プロセッサモジュール150は、任意選択で、COOx分析器サブシステム10がその中の一部である診断システムの電子回路に含まれることができる。ライン5は、プロセッサモジュール150が、COOx分析器サブシステム10の一部である又は一部でない場合があることを意味するために含まれる。プロセッサモジュール150は、マイクロプロセッサモジュール152及びメモリモジュール154を含むが、それに限定されない。任意選択で、プロセッサモジュール150は、 同様に、コンバータモジュール156を
含むことができる、又は、コンバータモジュール156は、COOx分析器サブシステム10の外部にあることができる。COOx分析器サブシステム10は、吸光度を使用して
、総ヘモグロビン(tHb)、カルボキシヘモグロビン(COHb)、脱酸素化ヘモグロビン(HHb)、酸素化ヘモグロビン(O2Hb)、メトヘモグロビン(MetHb)、及び胎児ヘモグロビン(FHb)等の血液のヘモグロビンパラメータ、並びに総ビリルビン(tBil)を測定するために使用される。
【0030】
図2は、光学サンプルモジュール20を示す。光学サンプルモジュール20は、発光モジュール22、キュベット組立体40、及び較正光モジュール60を含む。発光モジュール22は、用語が示唆するように、可視光ビームをキュベット組立体40に向けて放出し、可視光ビームは、その後、較正光モジュール60によって受信され、可視光ビームは、その後、分光計モジュール100に送信される。光ビーム12は、光路21を規定する。
【0031】
図3~3Aは、
図2の発光モジュール22の実施形態の斜視図を示す。発光モジュール22は、電気回路(図示せず)及び発光光学系組立体25を含む発光モジュールサブストレート24を含む。発光光学系組立体25は、光学系組立体端26aを有する光学系組立体ハウジング26を有する。可視光ビーム28aは、発光モジュール22がプロセッサ150から受信される信号によってパワーオンされると、発光光学系組立体25の光学系組立体端26aから出る。
図3Aは、光学系組立体ハウジング26が取外された状態の発光光学系組立体25を示し、発光光学系組立体25内に含まれる複数の光学コンポーネントBを露出する。
【0032】
ここで
図3Bを参照すると、
図3Aの複数の光学コンポーネントBの拡大側面図が示される。この実施形態において、コンポーネントBは、発光ダイオード(LED)光源28、コリメーティングレンズ30、第1の拡散板32、円偏光子34、収束レンズ36、及びオプションの保護窓38を含む。円偏光子34は、特別な利点を提供する。この利点は、システムの改善された感度及び精度を提供する。ヘモグロビンは、光学回転特性を有し、光学回転特性は、ヘモグロビン吸光度を測定するために円偏光しない光が使用される場合、分光計の偏光感度が、吸光度誤差を引起すことになることを意味する。光の他の偏光状態の場合と違って、円偏光した光の偏光状態は、ヘモグロビンを通過するときに変化しない。そのため、分光計の偏光応答は、透明流体を充填されたキュベットに関して行われる参照スキャンの場合にそうであるように、円偏光した光がヘモグロビンを通過する場合と同じである。
【0033】
図4及び5は、キュベット組立体40の一実施形態の正面及び背面斜視図を示した。キュベット組立体40は、キュベット基板41及びキュベットモジュール43を含む。キュベット基板41は、分析物サブシステム10内にキュベット組立体40を留めるための支持体を提供し、キュベット光経路開口42を含み、キュベット光経路開口42は、光路21内に配設され、発光モジュール22から放出される光ビームと整列する。キュベットモジュール43は、キュベット第1部分44であって、サンプル受容凹所45、サンプル入口ポート46、サンプル出口ポート47、電子チップ組立体48、及び第1のキュベット窓49を有する、キュベット第1部分44、並びに、キュベット第2部分50であって、第1のキュベット窓49に対向しかつ整列する第2のキュベット窓52(
図6に示し、アウトライン53として輪郭を描かれる)を有する、キュベット第2部分50を含み、第1のキュベット窓及び第2のキュベット窓49、52は、光路21に整列し、光路21内で分散される。キュベット第1部分44及びキュベット第2部分50は、キュベット第1部分44とキュベット第2部分50との間にガスケットを配設した状態又は配設しない状態で互いに接合される。接合は、接着剤、超音波技法、溶媒ベース技法等を使用して達成することができる。組立てられると、また、
図6に示すように、キュベット第1部分44のサンプル受容凹所45は、サンプル入口及び出口ポート46、47と流体連通するキュベット第2部分50と共にサンプル受容チャンバ54を形成する。サンプル受容チャンバ54のキュベット第1部分44とキュベット第2部分50との距離は、キュベット光路長を
規定し、キュベット光路長は、正確に測定され、プロセッサモジュール150が後で取出すために電子チップ48内に記憶される。本発明のこの実施形態において使用される典型的な光路長は、0.0035インチ(0.090mm)である。
【0034】
ここで
図7を参照すると、キュベット第1部分及び第2部分44、50の拡大背面斜視図が示される。図示するように、キュベット第1部分44は、第1のキュベット窓49を有するサンプルチャンバ凹所45及び電子チップ組立体48を受容するための電子チップ凹所48aを有する。キュベット第2部分50は、キュベット第1部分44と共に組立てられるとサンプル受容チャンバ54を形成する第2のキュベット窓52を有する。キュベット第2部分50上でアウトライン53によって輪郭を描かれる第2のキュベット窓52は、サンプルチャンバ凹所45及びサンプル受容チャンバ54の周りで防水シールを形成する隆起表面である。任意選択で、薄いガスケットが、キュベット第1部分及び第2部分44と50との間に位置決めされて、防水シールをより容易に保証することができる。
図8は、電子チップ組立体48が電子チップ凹所48a内に配設された状態のキュベット第1部分44の背面図を示す。電子チップ組立体48は、チップ回路基板48b、及び、特定のキュベットモジュール43についてキュベット光路長値を記憶する電子チップ48cを含む。第1のキュベット窓49は、光路21内に配設され、サンプルを通過する光ビームを較正光モジュール60に送信し、較正光モジュール60は、その後、光ビームを分光計モジュール100に渡す。
【0035】
ここで
図9を参照すると、較正光モジュール60の一実施形態が示される。較正光モジュール60は、較正モジュールハウジング62、光ビーム受信部分64、較正光部分70、及び光ファイバ部分80を含み、較正モジュールハウジング62、光ビーム受信部分64は光路21に整列する。
【0036】
図10は、較正光モジュール60の断面立面図である。較正モジュールハウジング62は、光ビーム入力開口62bと光ビーム出口開口62cとの間の第1の管状導管62a、並びに、一端で第1の管状導管62aを横断しかつそれに交差し、対向端で較正光ビーム開口62eを含む。
【0037】
光ビーム受信部分64は、キュベットモジュール43から光路21に沿って受信される光ビーム28aをコリメートし、光ビーム28aを第1の管状導管62a内に方向付けるコリメーティングレンズ66を収容する。較正モジュールハウジング62内には、第1の管状導管62aにわたって横断して配設されるビームスプリッタホルダ組立体67が配設される。ビームスプリッタホルダ組立体67は、較正光ビーム開口62e及び光路21内の光ビーム出口開口62cに向く上方傾斜表面67aを有する。ビームスプリッタホルダ組立体67は、第2の拡散板68及びビームスプリッタ69(
図11に示す)を支持し、ビームスプリッタ69は、較正光ビーム72aを受信し、較正光ビーム72aを光路21及び第1の管状導管62aに沿って光ビーム出口開口62cに方向付けるために位置決めされるように、光路21に沿って第2拡散板68から下流に配設される。
【0038】
較正光部分70は、光路21に隣接するが光路21から離間して配設される較正光源72を含み、較正光源72は、較正光ビーム72aを、光路21を横断して較正光開口62eを通って較正モジュールハウジング62に入りビームスプリッタホルダ組立体67に向かうように方向付けることが可能である。較正光部分70内に、コリメーティングレンズ74が存在し、コリメーティングレンズ74は、較正光ビーム72aを、ビームスプリッタホルダ組立体67によって光ビーム出口開口62cに向かって反射される前に、コリメートする。
【0039】
光ファイバ部分80は、光ビーム出口開口62cに又はそれに近接して光路21内に位
置する。光ファイバ部分80は、収束レンズ82、及び、光ファイバ組立体90を受容するために適合されるコネクタハウジング80を含む光ファイバコネクタ組立体84を含む。光ファイバ部分80は、光ビーム28aが収束レンズ82によって光ファイバ組立体90内に適切に収束されることを保証するように適合される。
【0040】
図11は、
図10の略図であり、光学コンポーネント66、68、69、74、82及び光ビーム28a、72a並びに光ファイバ組立体90の位置関係を示す。
図11を見てわかるように、光ビーム28aは、コリメーティングレンズ66によって受信され、第2の拡散板68及びビームスプリッタ69を通って収束レンズ82まで、そして、光ファイバ組立体90内に送信される。先に論じたように、拡散板の対32と68との間にキュベットモジュール43がある状態で拡散板の対(第1の拡散板32及び第2の拡散板68)を使用することの重要性は、空間光分布がブランクスキャンと全血サンプルスキャンについて同じに見えることになることである。この配置構成における拡散板32、68の使用は、強度全体が変化していなくても、光源の不均一性及び/又は入射光の空間分布変化の変動によって引起される誤差効果を取除く。拡散板32、68は、入射光のレイを、分光計モジュール100の光学コンポーネント群120の全受容円錐に入るように拡散させるように選択される。これは、光学測定フィールドにわたって完全にレイを効果的にかき乱す。
【0041】
アクティブ化されると、較正光ビーム72aは、コリメーティングレンズ74によって受信され、ビームスプリッタ69に送信され、収束レンズ82に方向付けられ、光ファイバ組立体90内に収束される。較正光ビーム72aは、分光計モジュール100の波長スケールを較正するために使用される光の固有の波長を有する。受容可能な較正光源72の一例は、422nm~695nmの範囲をカバーするナノメートル単位の7つのKrライン波長を提供するクリプトン(Kr)ガス放電ランプである。光分散コンポーネント130のプリズム131は、高次の多項式又は他の関数を必要とする非線形分散対波長を有する。本発明は、Krラインピークのピクセル場所に対して5次多項式を使用して、+/-0.03nmの絶対波長精度要件より十分に小さい残差を提供する。
【0042】
光ファイバ組立体90は、光ファイバ92、第1の光ファイバコネクタ94、及び第2の光ファイバコネクタ96(
図12に示す)を含む。第1の光ファイバコネクタ94は、光ファイバ92の光受信端92aに留められ、光ファイバコネクタ組立体84のコネクタハウジング86に直接かつ取外し可能に接続される。光ファイバ92の一実施形態は、0.22の開口数(NA)を有する200μmシリカコアファイバを含む。
【0043】
ここで
図12及び13を参照すると、分光計モジュール100の一実施形態が示される。分光計モジュール100は、分光計ハウジング102、分光計ベース104、分光計カバー106(
図1に示す)、光ファイバハウジング端108、及び電気信号出力カプラー103を含む。分光計モジュール100は、11cm×8cm×2cmの外側エンベロープ寸法を有し、また任意選択で、後で論じる熱補償構造を含む。分光計ハウジング102内には、分光計モジュール100の必須のコンポーネントが含まれる。これらのコンポーネントは、光受信及び変換組立体110及び光学コンポーネント群120を含む。光学コンポーネント群120は、アクロマティックレンズ組立体121及び光分散要素130を含む。光分散要素130は、プリズム131又は格子136であることができる。光ファイバ組立体90は、光エントランスポート109で光ファイバハウジング端108に取外し可能に留められ、光ファイバ組立体90は、光ビーム28a、72aを分光計モジュール100に送信する。先に述べたように、光ビーム28aは発光モジュール22からキュベットモジュール43を通って送信される光を示し、一方、光ビーム72aは、分光計モジュール100を較正するために使用される較正光モジュール60から送信される較正光を示す。
【0044】
アクロマティックレンズ組立体121は、レンズマウント122及び球面アクロマティックレンズ124を含む。アクロマティックレンズ124は、場合によっては光ビーム28a、72aを受信し、光ビームを、光分散要素130であって、この実施形態ではプリズム131である、光分散要素130に方向付ける。プリズム131は、外側後表面上に反射コーティング132を有する。プリズム131は、光ビーム28aを屈折させ、光を、アクロマティックレンズ124を通して戻るように反射する。
【0045】
光受信及び変換組立体110は、光ファイバハウジング端108の内側表面108aに隣接してしっかり搭載される。光受信及び変換組立体110は、光ファイバ92の発光端92b(図示せず)に整列する光入力スリット114がその上に搭載される回路基板サブストレート112を含む。入力スリット114に隣接して、プリズム131からの屈折光を受信する光アレイ検出器116が存在する。光アレイ検出器116は、屈折光を電気信号に変換し、電気信号は、出力コネクタ118を通してプロセッサモジュール150に出力される。回路基板112上で互いに隣接して光入力スリット114及び光アレイ検出器116を設けることは、幾つかの利点を有する。この特徴は、大幅に、構造を簡略化し、分光器モジュール100の精度を改善する。他の分光計は、これらの品目を別個の平面上に置き、その品目は、別個の搭載構造を有し、独立に調整されなければならない。回路基板112上に互いに隣接して入力スリット及び光アレイ検出器を搭載するこの特徴は、各構造(すなわち、スリット及び検出器)を別々に搭載し位置決めする必要性をなくす。
【0046】
図14は、光受信及び変換組立体110の拡大図である。光入力スリット114は、15μm幅×1000μm長さであり、約15μm幅×200μm高さの矩形である光ファイバスリット画像を、光アレイ検出器116(HamamatsuS10226-10は使用可能な光アレイ検出器の例である)上に投影する。入力スリット114は、光アレイ検出器116と同じ回路基板サブストレート112上にかつそれに非常に接近して直接適用される。光アレイ検出器116は、約100μmと約150μmとの間のピクセル高さを有し、200μm径光ファイバの検出器上での1対1撮像を可能にする。この実施形態において、入力スリット114は、光アレイ検出器116に対して精密な位置でレーザエッチングされ、位置合せを労働集約的でなくする。入力スリット114及び光アレイ検出器116が、アクロマティックレンズ124の中心軸に対してほんのわずかにオフアクシスであるため、最小の収差が存在し、光アレイ検出器116上での1対1撮像が可能であるため、光ファイバ画像(200μm径ファイバ)を収縮させて、光アレイ検出器116のピクセル高さに一致させるために円筒収束レンズが全く必要とされない。
【0047】
ここで
図15を参照すると、
図13の分光計モジュール100の上面図が存在する。
図15には、光ファイバ92によって分光計モジュール100に送出された光ビームのレイトレース
図140が重ね合わされている。図示するように、光ビーム28aは、分光計モジュール100に入り、入力スリット114を通りアクロマティックレンズ124に向かう。アクロマティックレンズ124は、オフアクシスで使用される;すなわち、アクロマティックレンズは、光ビーム28aに対してわずかにオフアクシスである。光ビーム28aは、アクロマティックレンズ124によってプリズム131まで送信され、光ビーム28aは、プリズムがするはずであるように、異なる波長の複数の光ビーム138a、138b、138cに屈折される。複数の光ビーム138a、138b、138cは、プリズム131によって、戻ってアクロマティックレンズ124を通るように反射される。アクロマティックレンズ124は、オフアクシスで使用されて、プリズム131からの複数の屈折及び反射光ビーム138a、138b、138cを光アレイ検出器116上に方向付ける。
【0048】
図16は、レイトレース
図140の拡大図である。アクロマティックレンズ124は、
入って来る光ビーム28aに対してオフアクシスで使用される。プリズム131のベース上に反射コーティング132を有するプリズム131と共に、アクロマティックレンズ124をオフアクシスで使用することによって、全血中のヘモグロビンパラメータ及び/又は総ビリルビンパラメータを測定するために使用されることが可能なコンパクトで最小コンポーネントの分光計モジュール100が達成される。
【0049】
温度の変化は、回折格子の代わりにプリズムを使用するとき、ビーム屈折角に大きな影響を及ぼす。本発明において、熱補償手段160は、光分散要素130によって生じる到来する光ビームの熱シフトを補償するために設けられる。分光計モジュール100内の温度変化は、分散プリズム131の屈折率の熱誘起変化によって引起される、光アレイ検出器116上での入力スリット114からのスリット画像の熱誘起移動を引起す。
図16は、プリズム131における熱による屈折率変化についての、光アレイ検出器116上での画像の移動方向を矢印400で示す。レンズ124が矢印402で示すのと同じ温度間隔にわたって反対方向に移動する場合、スリット画像は、光アレイ検出器116上にあるはずである場所に戻るように移動することになる。このシフトを防止するために、熱補償手段160は、分光計モジュール100の外で発生する温度変化から、分光計モジュール100内の温度変化を最小にするために分光計モジュール100を断熱体で包む程度の簡単なこと、又は、分光計モジュール100を温度制御式空間内に設置することである場合がある。別の手段は、分光計ハウジング102の内側表面又は外側表面に取付けられたリボン加熱器172、及び、分光計ハウジング及び加熱器回路の温度を測定するための熱電対又はサーミスタ等の温度センサ174を少なくとも含んで、予め規定済みの一定温度を維持する温度コントローラ組立体170を含むことである。
図17A及び17Bは、これらの可能性を示す。
【0050】
図17Cに示す一実施形態において、アクロマティックレンズマウント122は、熱補償レンズマウントである。熱補償レンズマウント122は、固定マウント端122a及び未固定マウント端122bを有する。固定マウント端122aは、分光計ベース104、又は、分光計ベース104にしっかり取付けられるベースプレート104aに固定的に留められる。未固定マウント端122bは、通常、レンズマウント122のレンズマウトスロット122cを通り、分光計ベース104又はベースプレート104a内に延在する締結具126を有する。締結具126のヘッド126aとレンズマウント122との間にホールドダウンばね128が存在する。温度変化によって引起されるレンズマウント122の膨張/収縮を可能にするのに十分な間隔がレンズマウトスロット122cと締結具126との間に存在する。レンズマウント122の膨張係数は、分光計ベース104及び/又はベースプレート104aの膨張係数より大きいため、未固定マウント端122bは、直線状でかつ入力スリット114からの光ビームを横断する矢印500で示す方向への熱補償レンズマウント122の熱膨張及び124が、収縮を可能にする。この構造は、アクロマティックレンズが、ベースプレート104a及び/又は分光計ベース104に搭載された他のコンポーネントに対して摺動することを可能にする。熱補償レンズマウント122は、分光計ハウジング102内の温度変化があるにもかかわらず光アレイ検出器116によって生成される電気信号に影響を及ぼすことなく、複数の光ビーム138a、138b、138cが、光アレイ検出器116上に十分な強度で常に衝当することになることを保証する。レンズマウント122が(場合によっては)分光計ベース104及び/又はベースプレート104aより大きな膨張係数を有する要件を満たす1つのこうした材料は、プラスチックであり、プラスチックは、商標NORYL(登録商標)の下で販売されている、ポリフェニレンオキシド(PPO:polyphenylene oxide)、ポリフェニレンエーテル(PPE:polyphenylene ether)樹脂、及びポリスチレンのアモルファスブレンドからなる改変ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂である。
【0051】
図18は、レンズマウント122の代替の実施形態を示す。この実施形態において、レンズマウント122は、2つの固定マウント端122aを有し、それぞれの端122aは、締結具126によってベースプレート104a及び/又は分光計ベース104に留められる。レンズマウント122の両端122aが固定であるため、分光計モジュール100内のいずれの温度変化も、光アレイ検出器116上に衝当する複数の光ビーム138a、138b、138cの角度に影響を及ぼすことになる。スリット画像及び光アレイ検出器116の長さに関して先に開示したように、0.5℃より大きい温度変化は、その強度の光ビームのうちの1つの光ビームが、光アレイ検出器116上に完全に衝当しないようにさせ、したがって、不正確な読みをもたらすことになる。可能性のあるこの効果をゼロにするために、分光計モジュール100は、プリズム131及びアクロマティックレンズ組立体121が一定温度のままであるように温度コントローラ組立体(図示せず)を装備する。分光計モジュール100の内部を一定温度に維持するために利用可能な幾つかの方法が存在するが、これを達成するためのこうした温度コントローラ組立体の一例は、分光計モジュール100の内側又は外側に接着により取付けられたサーミスタを有するリボン加熱器であり、そのリボン加熱器は電子調整回路(図示せず)によって制御される。任意選択で、分光計モジュール100は、同様に、内側か、外側か、又は両方で断熱されて、所与の温度をより容易に維持し、分光計モジュール100を囲む近傍の温度の変化から保護することができる。他の機構は、温度制御式環境内への分光計モジュール100の設置を含む。
【0052】
学習データ:
約15人の異なる個人からの約180の血液サンプルのデータセットが開発された。血液サンプルは、MetHb値を上げるために亜硝酸ナトリウムを使用し、COHb値を上げるためにCOガスを使用して操作された。血漿は、tHbレベルを変更するためにサンプルから取除かれた又はサンプルに付加された。ビリルビンスパイキング溶液は、tBilレベルを変化させるために付加された。酸素レベルを操作するためにトノメータが使用された。血液サンプルは、広い範囲の分析物値をカバーするために操作された。血液サンプルは、その後、COOx分析器及び分析ソフトウェアを装備する参照溶解pHOxウルトラ分析器上で測定された。全血スペクトルは、先に述べたように、本発明の高角度収集光学系及び他の改造物を装備するpHOxウルトラ分析器上で採取され、溶解液供給ラインは完全に切離され、全血サンプルは、溶解液又は他の希釈液なしで、キュベット組立体40内に直接流れる。両方の分析器は、それぞれのキュベット内にZeonex窓を装備した。このデータセットは、Matlabスクリプトと共に使用するためのMatlab細胞アレイファイルになった。
【0053】
予測モデル:
計算の次のステップは、予測モデルを作成することである。3つのモデルが、分析のために開発された。3つのモデルとは、COOxパラメータtHb及びCOHb用のモデル、HHb及びMetHb用の第2のモデル、及びtBil用の第3のモデルである。O2Hbについての量は、100%からCOHb、HHb、及びMetHbを差し引くことによって決定された。Xデータアレイは、462nmと650nmとの間の1nm間隔の波長における測定吸光度から作成された項から構築された。tBilモデルは、20%以上のMetHb値を有するサンプルがモデルから排除されたことを除いて、COOxモデルと同じデータセットを使用して開発された。各モデルについて、5つのY予測値(O2Hb、HHb、COHb、MetHb、tBil)が割当てられ、tHbは、O2Hb、HHb、COHb、及びMetHbについて結果を付加することによって決定される。必要とされるY直交値の数は、マッピング関数血液予測と参照分析器値との相関残差の手動最適化によって決定された。
【0054】
初期較正データセットを使用して、機械学習アルゴリズムの較正シーケンスは、既知サ
ンプル特性の行列(Y行列)と、幾つかの波長における測定吸光度及び吸光度対波長に基づくおそらくは他の測定値の行列(X行列)との間の関係(マッピング関数)を確立する。この関係は、確立されると、分析器によって使用されて、全血サンプルについてXの新しい測定値から未知のY値を予測する。
【0055】
表1は、最適化済みモデルについて使用される設定及び入力を要約する。Xデータは、吸光度、及び、吸光度対波長に基づく他の項からなる。モデルを最適化するプロセスにおいて、吸光度微分対波長が付加された。非線形散乱効果に対してより感度のある分析物用のモデルは、吸光度及びその微分の平方根の項で構築された。散乱によってより大きく影響を受ける分析物用のモデルは、波長の4乗に比例する補正項を有した。Xベクトル行は、各モデルについて、表に示す3つの吸光度ベース項f、g、及びhのそれぞれについて、各波長について1つの値を有する。
【0056】
【0057】
較正セットY行列は、nの溶解血サンプルの較正サンプルセットの既知の値から次のように構築される
【0058】
【0059】
ここで、tHbは溶解血サンプルの総ヘモグロビン値であり、
COHbは溶解血サンプルのカルボキシヘモグロビン値であり、
HHbは溶解血サンプルの脱酸素化ヘモグロビン値であり、
MetHbは溶解血サンプルのメトヘモグロビン値であり、
tBilは溶解血サンプルの総ビリルビン値である。
【0060】
X行列は、次のように構築される。
【0061】
【0062】
ここで、f、g、及びhは、それぞれ、波長に対する表1に挙げた吸光度ベース関数である。
行列Xは、種々の波長における吸光度からの寄与を含む。本発明の範囲は、任意選択で、干渉効果を低減するために計算に対して他の測定値を付加することを含む。
【0063】
これらの行列は、形成されると、較正セットとして使用され、マッピング関数は、選択された機械学習アルゴリズムの特有の手順に従って計算される。
先に述べたように、従来の部分的最小二乗、線形回帰、線形代数、ニューラルネットワーク、多変量適応型回帰スプライン、潜在構造に対する射影、潜在構造に対するカーネルベース直交射影、又は他の機械学習数学が、データの較正セットから得られる結果と共に使用されて、吸光度値とヘモグロビンパラメータとの間の経験的関係(又はマッピング関数)を決定する。通常、数学パッケージが、結果を生成するために使用され、パッケージは、一般に、当業者に知られている機械学習数学のうちの1つの機械学習数学を選択するオプションを有する。種々の数学パッケージが、存在し、また、少数を挙げると、インターネットを通じてorange.biolab.siにおいて利用可能なOrange BioinformaticsからのOrangeデータマイニングソフトウェアと組合せた、マサチューセッツ州ネイティック(Natick,MA)のMatWorksによるMatlab、インターネットを通じてwww.r-project.orgにおいて利用可能な統計学的コンピューティングについてのRプロジェクトによる「R」、インターネットを通じてwww.python.orgにおいて利用可能なPython Software FoundationからのPythonを含むが、それに限定されない。
【0064】
潜在構造に対するカーネルベース直交射影(KOPLS:Kernel-Based Orthogonal Projection to Latent Structure)の方法が、マッピング関数を生成するために、1つのタイプの機械学習アルゴリズムとして使用することができることが示される。KOPLSの説明及び記述は、以下の参考文献によって最もよく例示される。以下の参考文献とは、Johan Trygg and Svante Wold「Orthogonal projections to latent structures(O-PLS)」J. Chemometrics
2002;16:119-128;Mattias Rantalainen et al.「Kernel-based orthogonal projections to latent structures(K-OPLS)」J.Chemometrics 2007;21:376-385;及びMax Bylesjo et al.
「K-OPLS package:Kernel-based orthogonal projections to latent structures for prediction and interpretation in feature spase」BMC Bioinformatics 2008,9:106であり、それらの参考文献は、参照により本明細書に組込まれる。カーネルベース数学は、カーネル関数を使用してオリジナルデータを高次空間にマッピングすることによってシステムにおける非線形挙動を扱うときに有用である。先に述べた機械学習数学のどの数学も、当業者が本発明を実施することを可能にするために使用することができるが、KOPLSは、例えば、従来の部分最小二乗等の他の計算に勝る更なる利点を有する。その理由は、KOPLS
が、決定すべき定量化済み変動と分析物値との間の関係を確立できるだけでなく、オリジナルデータにおける、定量化済みでないが常に存在する変動を除去できるからである。これらの定量化済みでない変動は、散乱損失及び明示的に測定されない他の干渉現象等の分析器及び/又は血液効果による場合がある。これらの定量化済みでない変動をデータから抽出することによって、方法は、測定値を予測するために使用される情報をデータ内に残す。
【0065】
初期訓練データセットを使用して、KOPLSモデルは、KOPLS法によって指定されるカーネル関数を通して処理される、既知サンプル特性の行列(Y行列)と、幾つかの波長における測定吸光度及び吸光度対波長に基づくおそらくは他の測定値の行列(X行列)との間の関係(マッピング関数)を確立する。この関係のKOPLS係数が確立されると、KOPLS係数は、分析器によってカーネル関数と共に使用されて、サンプルに関する吸光度の新しい測定値から未知のヘモグロビンパラメータ値を予測する。
【0066】
この例で使用されるカーネル関数は、先に挙げたMattias Rantalainen et al.の参考文献に記載され、以下の式:
【0067】
【0068】
によって表される単純な線形カーネル関数である。ここで、測定値Xの行列は、カーネル関数内に置かれ、KOPLS訓練係数を作成するために上記の挙げたKOPLS参考文献(参照により組込まれる)に指定される更なる処理を受ける。
【0069】
訓練係数のセット又はマッピング関数は、確立されると、更なる測定値から血液サンプルのヘモグロビンパラメータ値及び/又は総ビリルビンパラメータ値を予測するために使用される。単一行X行列は、新しい測定値から作成され、その後、この単一行X行列からの値が、カーネル及びマッピング関数を通して置かれて、先に開示したKOPLS参考文献に詳細に記載されるKOPLS手順に従って使用されるマッピング関数について必要な手順に従って、ヘモグロビンパラメータ値及び/又は総ビリルビンパラメータ値を生成する。
【0070】
上述した血液サンプルから収集されるデータは、KOPLS法を通して交差検証プロセスに置かれた。交差検証は、データセットを使用して方法を試験するためのプロセスである。幾つかのデータ行は、取っておかれ、残りは、マッピング関数を作成するために使用される。取っておかれた値は、その後、「新しい(new)」測定値として使用され、そのY行列値が計算される。このプロセスは、他の測定値を取っておき、別のマッピング関数を計算することによって繰返される。血液データの既知の値を計算値に対してプロットすることによって、方法の有効性を、プロットを調べることによって確認することができる。
【0071】
ここで
図18~23を参照すると、KOPLS法を使用して、溶解血の種々のヘモグロビンパラメータを全血と比較する相関結果のグラフィカルプロットが示される。血液サンプルは、広い範囲の分析物値をカバーするように操作された。60分割を使用するn分割交差検証の技法がデータを試験するために使用された。この技法において、データセットは、n=60の別個のセットに分割され、モデルは、セットのうちのn-1から作られ、残りのセットはモデルを使用して予測される。プロセスは、各群について60回繰返される。そのため、全てのデータポイントは、モデルに含まれることなく、他のデータポイン
トのほとんどから作られるモデルを使用して予測される。
【0072】
図19は、K-OPLS法を使用するtHbについての相関結果を示す。水平軸は、溶解血の1デシリットルあたりのグラムで総ビリルビンを表す単位を有する。垂直軸は、全血の1デシリットルあたりのグラムで総ビリルビンを表す単位を有する。プロットを見てわかるように、全血サンプルのtHbを決定する方法は、99%より大きい相関を有する。
【0073】
図20は、K-OPLS法を使用するO2Hbについての相関結果を示す。水平軸は、溶解血のパーセント酸素化ヘモグロビンを表す単位を有する。垂直軸は、全血のパーセント酸素化ヘモグロビンを表す単位を有する。プロットを見てわかるように、全血サンプルのO2Hbを決定する方法は、99%より大きい相関を有する。
【0074】
図21は、K-OPLS法を使用するカルボキシヘモグロビンについての相関結果を示す。水平軸は、溶解血のパーセントカルボキシヘモグロビンを表す単位を有する。垂直軸は、全血のパーセントカルボキシヘモグロビンを表す単位を有する。プロットを見てわかるように、全血サンプルのCOHbを決定する方法は、99%より大きい相関を有する。
【0075】
図22は、K-OPLS法を使用する脱酸素化ヘモグロビンについての相関結果を示す。水平軸は、溶解血のパーセント脱酸素化ヘモグロビンを表す単位を有する。垂直軸は、全血のパーセント脱酸素化ヘモグロビンを表す単位を有する。プロットを見てわかるように、全血サンプルのHHbを決定する方法は、99%より大きい相関を有する。
【0076】
図23は、K-OPLS法を使用するメトヘモグロビンについての相関結果を示す。水平軸は、溶解血のパーセントメトヘモグロビンを表す単位を有する。垂直軸は、全血のパーセントメトヘモグロビンを表す単位を有する。プロットを見てわかるように、全血サンプルのMetHbを決定する方法は、99%より大きい相関を有する。
【0077】
図24は、K-OPLS法を使用するtBilについての相関結果を示す。水平軸は、溶解血の1デシリットルあたりのミリグラムで総ビリルビンを表す単位を有する。垂直軸は、全血の1デシリットルあたりのミリグラムで総ビリルビンを表す単位を有する。プロットを見てわかるように、全血サンプルのtBilを決定する方法は、99%より大きい相関を有する。
【0078】
本発明のCOOx分析器システム10を使用して全血測定を行う方法が、ここで述べられる。吸光度スキャンは、「ブランク」スキャンとして知られている水又は分析器フラッシュ溶液等の透明流体で充填されたキュベットモジュール43によって透過光強度スキャンを最初に記録することによって測定される。その後、全血サンプルで充填されたキュベットモジュール43による透過光強度スキャンが記録される。分光計ダーク応答及び検出器線形性を補正した後、スペクトル吸収率は、全血スキャンと、測定範囲内の各波長で計算された透過流体スキャンとの比の10を底とする負の対数である。
【0079】
より具体的には、COOx分析器サブシステムのコンポーネントの図が
図1~18に示される。このサブシステムの実施形態は、キュベットモジュール43に導入される液体の吸光度を測定する。吸光度測定を実施するために使用される光は、LED光源28から発生し、コリメーティングレンズ30によって収集され透過され、キュベットモジュール43に達する前に、第1の拡散板32、円偏光子34、収束レンズ36、及びオプションの保護窓38を通過する。吸光度測定にとって、キュベット経路長の知識が重要である。キュベット経路長は、それぞれの個々のキュベットモジュール43について予め測定され、キュベットモジュール43上の電子チップ48c内にプログラムされる。経路長情報は、
必要であるときはいつでも、分析器のデータプロセッサモジュール130によって読取られる/取出される。
【0080】
キュベットモジュール43を通過した後、光は、レンズ66によって収集され、コリメートされ、第2の拡散板68及びビームスプリッタ69を通して送られる。ビームスプリッタ69の目的は、レンズ74によって収集される較正光源72(例えば、クリプトンガス放電ランプ)からの光が光路21に入ることを可能にすることである。較正光源72は、少数の既知の波長の光を提供し、その光は、分光計モジュール100の波長スケールを定期的に較正するために使用される。ビームスプリッタ69を通過した後、光は、レンズ82によって光ファイバ92上に収束される。光ファイバ92は、分光計モジュール100の入力スリット114に光を誘導する。光は、アクロマティックレンズ124を通過し、反射性後部132を有する光分散要素130を通って進む。光は、例えば、プリズム130等の光分散要素130を通過することによって波長分散され、その後、レンズ124を通してリターンパスを作り、レンズ124は、光を光アレイ検出器116のピクセル上に再び収束させる。光アレイ検出器116は、光エネルギーを、光のスペクトル強度を示す電気信号に変換する。電気信号は、更なる処理及びユーザに対する最終結果の表示のためにデータプロセッサモジュール150に送られる。光受信及び変換組立体110は、入力スリット114及び光アレイ検出器116を一体ユニットとして非常に接近して保持する単一基板である。
【0081】
入力スリット114は、光アレイ検出器116としてかつそれに非常に接近して同じ回路基板サブストレート112上に直接適用される。他の従来技術の分光計は、これらのコンポーネントを別個の平面上に置き、そのコンポーネントは、独立した調整及び位置合せを必要とする別個の搭載構造を有する。本発明の搭載スキームは、分光計モジュール100のコスト及びサイズを下げる幾つかの利点を有する。幾つかの利点とは、1)別個の搭載構造のコストが回避されること、2)入力スリット114が光アレイ検出器116に対して精密な位置でレーザエッチングされ、位置合せを労働集約的でなくし得ること、3)検出器上のスリットの画像が光学システムの中心軸からほんのわずかにオフアクシスであり、収差を最小にするため、安価な球表面光学系が光学システムにおいて使用され得ること、及び、4)統合されたスリット及び検出器組立体についての1回の位置合せ手順が、2つの別個の組立体についての位置合せ手順を置換えることである。
【0082】
第1拡散板32及び第2拡散板68がキュベットモジュール43の前及び後ろにそれぞれ位置決めされることに留意することが重要である。拡散サンプルの吸光度測定は、特有の問題を呈する。サンプルの拡散透過は、光源に特有の不均一性によって引起される測定システムの初期空間光分布をかき乱す。そのため、「ブランク(blank)」スキャンの空間光分布は、全血サンプルスキャンと全く異なり得る。光学検出器が空間的に変動(vary)する応答を有するため、全体の強度が変化していなかったとしても、応答は、入射光の空間分布変化によって変動し得る。サンプルスキャンとブランクスキャンとの比に基づく吸光度スキャンは、サンプルだけによる吸光度に加えて、この効果による有意の吸光度成分を有することになる。これは、coオキシメトリについて許容できないサンプル吸光度の有意の測定誤差をもたらす。
【0083】
キュベットモジュール43を第1及び第2の拡散板32と68との間に設置する利点は、空間光分布がブランクスキャンとサンプルスキャンについて同じに見え、この誤差効果を取除くことになることである。拡散板32、68は、入射光のレイを、光学システムの全受容円錐に入るように拡散させるように、しかし、それほど多くはないが、フィールドを完全に横切る光レイをかき乱しながら、出来る限り多くの光スループットが保持されるように、特に選択される。
【0084】
本発明の好ましい実施形態が本明細書で述べられたが、先の説明は例証に過ぎない。本明細書で開示される本発明の更なる修正は、当業者に想起されることになり、全てのこうした修正は、添付特許制球の範囲によって規定される本発明の範囲内にあると見なされる。