(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】コンピュータ、オフセット管理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/00 20240101AFI20240813BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20240813BHJP
【FI】
G06Q50/00
G06Q10/20
(21)【出願番号】P 2023075010
(22)【出願日】2023-04-28
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】510084297
【氏名又は名称】株式会社ブロードリーフ
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】茶原 正太
(72)【発明者】
【氏名】馬來 洋介
(72)【発明者】
【氏名】川上 恵
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-299547(JP,A)
【文献】特開2011-233046(JP,A)
【文献】特開2002-109151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0131603(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の
整備及び/又は修理
に基
づく温室効果ガスの排出量を算出する
コンピュータであって、
機器の整備及び/又は修理作業にかかる作業内容を特定す
る特定部と、
前記機器を構成し、整備及び/又は修理対象となる部品の部品情報を受け付ける受付部と、
前記特定部で特定した作業内容で生じる温室効果ガス排出量、または前記受付部で受け付けた部品情報の部品を用いることで生じる温室効果ガス排出量を算出する算出部と、
前記算出部
により算出
した前記温室効果ガス排出量
をクライアント端末に出力する出力部とを備え、
前記算出部は、
受け付けた部品情報の部品に対して、前記部品の種類に応じた区分情報に対応付けて保持している温室効果ガス排出量を特定し、
特定した作業内容に
対して、当該作業内容で使用する
設備機器の電力消費量と当該作業内容に要する
設備機器の使用時間
とに基づいて前記温室効果ガス排出量を算出する、
コンピュータ。
【請求項2】
前記受付部で受け付けた部品情報の部品に対する温室効果ガス排出量には、当該部品の取り外しに際して排出した温室効果ガスの排出量、または交換のために取り外した部品の処分に際して排出した温室効果ガスの排出量を含む、請求項1記載のコンピュータ。
【請求項3】
前記受付部で受け付けた部品情報の部品に対する温室効果ガス排出量には、前記部品の発送元情報に基づく前記クライアント端末が設置された前記部品の使用場所までの配送距離と、前記部品を配送する車両の係数とをかけ合わせた温室効果ガス排出量を含む、請求項1記載のコンピュータ。
【請求項4】
前
記算出部は、
前記部品を用いた前記作業内容にかかる温室効果ガス排出量を、前記機器の製造から廃棄までの1サイクルにおける全体排出量に対する割合のうち、当該機器
を用いた作業内容の割
合をもとに算出する、請求項1に記載の
コンピュータ。
【請求項5】
前記クライアント端末は、
前記受付部が受け付けた部品情報の部品に対して特定した温室効果ガス排出量と、前記特定部が特定した作業内容に対して算出した温室効果ガス排出量とを積算する、請求項1記載のコンピュータ。
【請求項6】
請求項
1記載の
コンピュータが備える前記算出部
で算出された前記温室効果ガス排出量を取得する取得部と、
取得した温室効果ガス排出量をオフセット
する手法を提示するオフセット手法提示部と、
を備える、オフセット管理装置。
【請求項7】
前記オフセット手法提示部は、整備・修理施設ごとに特徴づけられた整備・修理施設情報に基づいて1又は2以上のオフセット手法を提示する請求項
6に記載のオフセット管理装置。
【請求項8】
更に、
前記温室効果ガスの
削減量と、
前記温室効果ガスの排出量からなる履歴情報を保持するオフセット情報保持部を備
え、
前記オフセット手法提示部は、当該オフセット情報保持部が保持する温室効果ガスの
削減量と
前記履歴情報とに基づいて、1又は2以上のオフセット手法を提示する請求項
6に記載の
オフセット管理装置。
【請求項9】
請求項
1記載の
コンピュータが備える前記算出部
で算出された前記温室効果ガス排出量を取得する温室効果ガス排出量取得部と、
取得した温室効果ガスの
削減量をオフセット情報として保持するオフセット情報保持部と
、
を備え、
前記オフセット情報保持部は、ブロックチェーンによって構成されており、前記オフセット情報を、付加価値を有するNFT(非代替性トークン)として管理する、オフセット管理装置。
【請求項10】
コンピュータで実行され、機器の
整備及び/又は修理
に基
づく温室効果ガスの排出量を算出す
るプログラムであって、
機器の整備及び/又は修理作業にかかる作業内容を特定する特定ステップと、
前記機器を構成し、整備及び/又は修理対象となる部品の部品情報を受け付ける受付ステップと、
前記特定ステップで特定した作業内容で生じる温室効果ガス排出量、または前記受付ステップで受け付けた部品情報の部品を用いることで生じる温室効果ガス排出量を算出する算出ステップと、
前記算出ステップ
で算出
した前記温室効果ガス排出量
をクライアント端末に出力する出力ステップとを備え、
前記算出ステップは、
受け付けた部品情報の部品に対して、前記部品の種類に応じた区分情報に対応付けて保持している温室効果ガス排出量を特定し、
特定した作業内容に
対して、前記作業内容で使用する
設備機器の電力消費量と当該作業内容に要する
設備機器の使用時間とに基づいて前記温室効果ガス排出量を算出する
、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ、オフセット管理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策として、温室効果ガスである温室効果ガス等の排出量を削減する動きが活発化しており、温室効果ガス総排出量の削減を目指す京都議定書も発効している。また企業においても、企業活動における省エネルギー化の取り組み、製品におけるリサイクル設計、廃品の回収等の取り組み等が行われつつあり、資源採取、生産、流通、使用、廃棄などの製品のライフサイクルにおいて、環境に与える影響を数値化して示すことも行われている。
【0003】
そして自動車などの輸送車両や、家電などの電気製品のように長期的に使用される機器では、故障した際には当該機器もしくは構成する部品を修理して使用されることが一般的である。しかし、実際に修理を行うか否かは、コストや性能、あるいは修理期間などに基づいて行われるのが通例であって、このコスト等を踏まえたときに修理を行うことが見合わない場合、故障した部品等は廃棄して新たな部品(代替品等)を利用することが行われている。すなわち、この判断材料の中には、それらの対処方法において発生する温暖化負荷の影響は含まれておらず、それ故に消費者は、意図しないうちに、温暖化負荷の増加につながる対処方法を選択することもあった。
【0004】
特許文献1(特開2007-109146号公報)では、消費者に対して、地球温暖化への負荷を配慮した選択が行えるよう支援する技術を提案している。すなわちこの文献では、顧客システムからの業務依頼を受け付けて、該依頼に対応する温暖化負荷軽減の効果を、第1のデータベースに蓄積されている基準に基づいて算定する手段と、算定された温暖化負荷軽減の効果、第2のデータベースに蓄積される温暖化負荷軽減量を示す値に基づいて、期待できる効果を示すシンボル画像を選定し、業務形態を提案する画面を構成するデータを生成して、依頼元の顧客システムに送ることを提案している。
【0005】
また耐久消費財のうち、特に自動車などの輸送機器は定期的な整備や点検を必要とするところ、従前においては、排気ガスに含まれる二酸化炭素などの特性成分の排出量について着目されているに過ぎなかった。例えば特許文献2(特開2007-64091号公報)では、車両の排気ガスに含まれる特定成分の排出に関する正確な履歴情報を簡易に取得し、環境問題に貢献するために、車両の走行距離を検知する手段及び前記車両の燃料使用量を検知する手段を含む各種センサ類から供給される検知信号を数値化する数値管理手段と、該数値化したデータに基づいて前記車両から排出される排気ガスに含まれる特性成分の排出量を算出する排出量算出手段とを備えた車両履歴取得装置が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-109146号公報
【文献】特開2007-64091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1では、顧客が、製品、サービス等の提供を受けるに当たり、環境に配慮すること、特に、CO2排出量の削減を行える製品、サービスの提供を選択することができるように支援する技術が提案されている。しかしながら、この文献で提案しているのは、買い替えか修理かの選択、修理に際して使用する部品が買替相当品か交換部品かの選択、配送方法の選択だけである。
【0008】
また特許文献2は、車両のパーツ名(例えばドア、バンパー、タイヤ等)、パーツ毎の修理・交換によるCO2排出量削減率(統計データ等により算出)等が蓄積されたメンテナンスデータベースを使用することが提案されているが、これに基づいて算出するのは排気ガスに含まれる温室効果ガスなどの特性成分の排出量に過ぎない。
【0009】
そこで本発明は、修理や整備の作業によって生じる温室効果ガスの排出量に基づいて機器の整備や修理の内容を選択できるようにするべく、機器の整備・修理に伴う温室効果ガス排出量を算出できるようにした温室効果ガス排出量算出装置を提供することを課題の1つとする。
【0010】
また本発明は、自動車などの輸送機器のように、整備や修理が行われるのが通例となっている機器において、使用する部品の種類(部品名など)や区分(新品かリサイクル部品の区分など)の違いも考慮して、当該部品を使用した修理に際して排出される温室効果ガス量を算出できるようにした、温室効果ガス排出量算出装置を提供することも前記とは別の課題とする。
【0011】
そして本発明では、温室効果ガスについて、カーボンオフセットの実施の事実や実施による削減量を証書化し、削減した温室効果ガスの排出量についての取引を実現するためのカーボンオフセット管理装置を提供することも前記とは別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明では自動車などの輸送機器をはじめとする各種機器の整備や修理の作業によって排出されるメタン、一酸化二窒素、代替フロン類などの温室効果ガスの排出量を算出し、これを出力することのできる温室効果ガス排出量算出装置を提供する。
即ち本発明では、機器を整備及び/又は修理するための作業内容に基づいた温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出装置であって、機器の整備・修理作業によって生じる温室効果ガスの排出量を算出する、温室効果ガス排出量算出部と、機器の整備・修理作業にかかる作業内容を特定する整備・修理作業特定部と、特定した作業内容における前記温室効果ガス排出量算出部の算出結果を出力する温室効果ガス排出量出力部とを備え、前記温室効果ガス排出量算出部は、特定した作業内容において使用する機器の電力消費量と、当該作業内容に要する機器の使用時間に基づいて、前記温室効果ガス排出量を算出する、温室効果ガス排出量算出装置を提供する。
また当該温室効果ガス排出量算出装置は、更に、前記作業内容によって交換する、前記機器を構成する部品を選択する交換部品選択部とを具備し、前記温室効果ガス排出量算出部は、前記交換部品選択部で選択した部品を用いた前記作業内容にかかる温室効果ガス排出量を、前記機器の製造から廃棄までの1サイクルにおける全体排出量に対する割合のうち、当該機器を構成する前記部品を用いた作業内容の割合にかかる排出量と、当該部品を出荷する出荷元から前記作業内容を行う場所までの輸送に際して発生する温室効果ガス排出量とを用いて算出する温室効果ガス排出量算出装置を提供する。
【0013】
前記機器の製造から廃棄までの1サイクルとは、当該機器を構成する部品を製造し、当該部品を組み立てて機器を製造し、当該機器を販売し、必要に応じて当該機器を中古品として販売し、当該機器を解体してパーツ化し、そして最終的に廃棄されるまでの当該機器の部品製造から廃棄に至るまでの周期を言う。そして当該1サイクルにおける全体排出量に対する割合とは、機器の1サイクルにおける全体排出量に対して、当該1サイクルに含まれる段階ごとに設定された係数(割合)であり、前記の例でいえば、一例として、機器を構成する部品の製造に割合が20%、当該部品を組み立てて機器を製造する機器メーカーが30%、当該機器の販売が5%、当該機器の中古品販売が10%、当該機器の解体・パーツ化が22%、そして最終的な廃棄が13%のように、各段階ごとに設定することができる。
【0014】
そして前記1サイクルにおける各段階についても、その段階における処理ごとに係数(割合)を設定することができる。例えば、前記の例における機器の解体・パーツ化は1サイクルにおいて22%の負担割合であるところ、機器の解体・パーツ化で実施する処理ごとに係数(割合)を設定する。具体的には、機器からの部品の取り外しが20%、取り外した部品の修理が50%、修理した部品の保存が10%、そして修理した部品の運搬が30%のように、当該段階における処理ごとに負担割合を設定する。
【0015】
したがって、機器の修理に際して故障した部品を取り外して修理する場合には、解体・パーツ化の段階(1サイクルにおける22%の割合)における、機器からの部品の取り外しの20%と、取り外した部品の修理50%の合計を温室効果ガス排出量とすることができる。また機器の修理に際して故障した部品を交換する場合には、解体・パーツ化の段階(1サイクルにおける22%の割合)における、機器からの部品の取り外しの20%と、機器を構成する部品の製造の段階(1サイクルにおける20%の割合)における当該部品の製造1サイクルにおける全体排出量の割合の合計として参集することができる。
【0016】
また本発明では前記課題の少なくとも何れかを解決するために、温室効果ガス排出量についてのオフセット手法を提示するカーボンオフセット管理装置を提供する。すなわち、前記温室効果ガス排出量算出装置における温室効果ガス排出量算出部から前記温室効果ガス排出量を取得する温室効果ガス排出量取得部と、取得した温室効果ガス排出量について、これをオフセットするための手法を提示するオフセット手法提示部とを備える、カーボンオフセット管理装置を提供する。
【0017】
かかるカーボンオフセット管理装置において、前記オフセット手法提示部は、整備・修理施設ごとに特徴づけられた整備・修理施設情報に基づいて1又は2以上のオフセット手法を抽出して提示することができる。
【0018】
また前記カーボンオフセット管理装置では、更に、これまでに実施したカーボンオフセットで取得した温室効果ガスの差削減量情報と、その履歴情報を保持するカーボンオフセット情報保持部を備えることができ、前記オフセット手法提示部は、当該カーボンオフセット情報保持部が保持する温室効果ガスの差削減量情報と、その履歴情報に基づいて、1又は2以上のオフセット手法を提示することができる。
【0019】
そして本発明では前記課題の少なくとも何れかを解決するために、温室効果ガス排出量についてのカーボンオフセットで取得した温室効果ガスの差削減量を管理するカーボンオフセット管理装置を提供する。すなわち、前記本発明の温室効果ガス排出量算出装置における温室効果ガス排出量算出部から前記温室効果ガス排出量を取得する温室効果ガス排出量取得部と、これまでに実施したカーボンオフセットで取得した温室効果ガスの差削減量情報をカーボンオフセット情報として保持するカーボンオフセット情報保持部とを備え、当該カーボンオフセット情報保持部はブロックチェーンによって構成されており、前記カーボンオフセット情報を、付加価値を有するNFT(非代替性トークン)として管理する、カーボンオフセット管理装置を提供する。
【0020】
そして本発明では前記課題の少なくとも何れかを解決するために、コンピュータで実行され、機器を整備及び/又は修理するための作業内容に基づいた温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出プログラムを提供する。すなわち、機器の整備及び/又は修理に関する作業(以下、「整備・修理作業」という)によって生じる温室効果ガスの排出量を算出する、温室効果ガス排出量算出ステップと、機器の整備・修理作業にかかる作業内容を特定する整備・修理作業特定ステップと、特定した作業内容における前記温室効果ガス排出量算出ステップの算出結果を出力する温室効果ガス排出量出力ステップとを備え、前記温室効果ガス排出量算出ステップは、特定した作業内容において使用する機器の電力消費量と、当該作業内容に要する機器の使用時間に基づいて、前記温室効果ガス排出量を算出する、温室効果ガス排出量算出プログラムを提供する。
【0021】
また本発明では、機器を整備及び/又は修理するための作業内容を選択する整備・修理作業選択装置を提供する。すなわち、機器の整備・修理作業によって生じる温室効果ガスの排出量を、作業内容または作業で使用する機器に応じて算出する、整備・修理作業温室効果ガス排出量算出部と、機器の整備・修理作業の作業内容を特定する整備・修理作業特定部と、特定した整備・修理作業における前記整備・修理作業温室効果ガス排出量算出部の算出結果を出力する整備・修理作業温室効果ガス排出量出力部とを備える、機器の整備・修理に伴う温室効果ガス排出量算出機能を備えた整備・修理作業選択装置を提供する。
【0022】
前記整備・修理作業温室効果ガス排出量算出部は、特定した整備・修理作業に使用する機器の電力消費量と、その整備・修理作業に要する機器の使用時間に基づいて、前記整備・修理作業温室効果ガス排出量を算出することができる。
【0023】
前記整備・修理作業で部品交換を行う場合には、当該部品の製造や再生によって発生する温室効果ガスの排出量を考慮することもできる。すなわち、更に、整備・修理作業によって交換する部品を選択する交換部品選択部と、交換する部品ごとに当該部品の製造又は再生において発生した温室効果ガス排出量を記録する部品温室効果ガス排出量記録部と、交換部品選択部で選択した部品の温室効果ガス排出量を出力する交換部品温室効果ガス排出量出力部とを備えることができる。
【0024】
また、必要な整備・修理作業を、当該交換部品に対応させて特定して、温室効果ガスの排出量を算出することもできる。すなわち、前記整備・修理作業温室効果ガス排出量算出部は、前記交換部品選択部における交換部品の選択の有無、又は前記交換部品選択部で選択した部品に応じて、その整備・修理作業に使用する機器を設定し、当該設定した機器の電力消費量と、整備・修理作業に要する使用時間に基づいて整備・修理作業温室効果ガス排出量を算出することもできる。
【0025】
また、整備・修理作業において部品を交換する場合に、新品部品を使用するか、中古部品を使用するか、あるいはリサイクル部品を使用するかなどによって、当該整備や修理で排出される温室効果ガスの量を算出し、出力することもできる。すなわち、前記温室効果ガス排出量記録部は、修理作業において交換する部品を、部品の種類情報と、当該部品が新品か又はリサイクル品かの区分情報を伴って保持することもできる
【0026】
また、部品などの交換を伴う整備・修理作業において、当該交換部品の輸送などによって発生する温室効果ガスの排出量を算出することもできる。すなわち、前記温室効果ガス排出量記録部は、交換部品ごとに出荷元情報を保持しており、更に、当該出荷元情報に基づいて、機器の修理作業を行う場所までの輸送に際して発生する温室効果ガス排出量を算出する輸送温室効果ガス排出量算出部と、当該輸送温室効果ガス排出量算出部が算出した輸送温室効果ガス排出量を出力する輸送温室効果ガス排出量出力部とを備えることもできる。
【0027】
そして本発明では前記課題の少なくとも何れかを解決するために、機器の整備及び/又は修理を行う整備・修理施設における温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出装置を提供する。すなわち、機器を整備及び/又は修理を行う整備・修理施設における温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出装置であって、機器の整備及び/又は修理時に発生する温室効果ガス排出量の算出は、前記本発明にかかる温室効果ガス排出量算出機能を備えた整備・修理作業選択装置が使用されている、温室効果ガス排出量算出装置を提供する。
【0028】
かかる温室効果ガス排出量算出装置において、前記整備・修理作業温室効果ガス排出量算出部は、整備・修理対象となった各機器ごとの整備・修理作業において発生した温室効果ガスの排出量を集計するほか、前記整備・修理施設に設けられた整備・修理作業に使用する機器の電力消費量と、その機器の所定期間における使用時間に基づいて、前記整備・修理作業温室効果ガス排出量を算出することができる。
【0029】
また本発明では、前記温室効果ガス排出量算出機能を備えた整備・修理作業選択装置で算出した整備・修理作業温室効果ガス排出量や部品温室効果ガス排出量、もしくは前記温室効果ガス排出量算出装置で算出した整備・修理施設における温室効果ガス排出量について、その温室効果ガス排出量をオフセットするための手法を提示するカーボンオフセット管理装置を提供する。
【0030】
即ち、温室効果ガス排出量についてのオフセット手法を提示するカーボンオフセット管理装置であって、前記温室効果ガス排出量算出機能を備えた整備・修理作業選択装置、もしくは前記温室効果ガス排出量算出装置から、これらの装置で算出した温室効果ガス排出量を取得する温室効果ガス排出量取得部と、取得した温室効果ガス排出量について、これをオフセットするための手法を1又は2以上抽出するオフセット手法抽出部と、当該オフセット手法抽出部が抽出したオフセットするための手法を提示するオフセット手法提示部とを備えるカーボンオフセット管理装置を提供する。
【0031】
前記オフセット手法抽出部は、前記整備・修理作業選択装置や温室効果ガス排出量算出装置が算出した温室効果ガスの排出量について、これを削減する為に有効なカーボンオフセット取引所との取引(オフセット取引)内容を1又は2以上抽出するものであり、温室効果ガスの排出量に関連付けて、「温室効果ガスの排出量に応じて木を購入して植える」、「〇〇kW発電する太陽光パネルを導入する」、「オフセットするための費用負担(オフセットクレジット)を行う」などのカーボンオフセット手法を、データベースやファイルシステムなどの記録手段に保持しておくことができる。
【0032】
また前記オフセット手法抽出部におけるオフセット取引内容(即ちオフセット手法)の抽出は、整備及び/又は修理を行う施設(以下、「整備・修理施設」という)ごとに特徴づけられた整備・修理施設情報を参照して実施することができる。かかる整備・修理施設情報としては、当該整備・修理施設における設備情報、経営情報(財務情報を含む)、施設の広さ情報、従業員情報、住宅地か郊外かなどの所在情報、施設周辺に川又は山があるなどの環境情報のような、当該整備・修理施設に起因した施設固有情報の他、所定の期間や単位時間当たりの温室効果ガスの排出量や整備・修理件数などからなる履歴情報で構成することができる。
【0033】
また前記カーボンオフセット管理装置は、実際に行われたカーボンオフセットの取引情報を管理することも望ましい。その為に当該カーボンオフセット管理装置は、整備・修理施設ごとにカーボンオフセットの取引情報を保持するオフセット情報保持部を備えることが望ましい。更に、整備・修理施設を指定した照会情報の受領を契機として、前記オフセット情報保持部の記録情報から、当該整備・修理施設に関するカーボンオフセットの取引情報を出力するオフセット情報認証部を備えることも望ましい。そして当該カーボンオフセット管理装置は、整備・修理施設におけるカーボンオフセットの取引の事実(内容)を証書化することにより信ぴょう性を担保することが望ましい。かかる証書化ではブロックチェーン技術により信ぴょう性を確保するのが望ましい。
【0034】
このブロックチェーンとは、ブロックと呼ばれる順序づけられた増え続ける記録のリストを保持する分散型データベースである。各ブロックはカーボンオフセット等の取引明細の他、前のブロックの情報を暗号化したハッシュ値を含んでおり、このハッシュ値が前のブロックへのリンクとして機能し、ブロック間の整合性を保つ役割を担っている。したがって、起源となるブロックに至るまで全ブロックにわたり追跡することができるブロックの「チェーン」が形成され、前のどのブロックにいかなる修正をしても、各ハッシュ値が必ず変わることになり、チェーンが無効になる。
【0035】
更に、カーボンオフセットの取引の事実(内容)をブロックチェーン技術で管理することにより、当該カーボンオフセットの取引の事実を、付加価値を有するNFT「NON―FUNGIBLE(代替不可能な) TOKEN(証拠)」として管理することができ、これによりカーボンオフセットの取引の事実(内容)を、固有の価値を有する非代替性のデジタルトークンとし、当該NFTを売買の対象とすることができる。
【0036】
また本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決するために、コンピュータで実行されるプログラムを提供する。すなわち、コンピュータで実行され、機器を整備及び/又は修理するための作業内容を選択する整備・修理作業選択プログラムであって、機器の整備・修理作業によって生じる温室効果ガスの排出量を、作業内容または作業で使用する機器に応じて算出する、整備・修理作業温室効果ガス排出量算出ステップと、機器の整備・修理作業の作業内容を特定する整備・修理作業特定ステップと、特定した整備・修理作業における前記整備・修理作業温室効果ガス排出量算出ステップの算出結果を出力する整備・修理作業温室効果ガス排出量出力ステップとを備える、機器の整備・修理に伴う温室効果ガス排出量算出処理を備えた整備・修理作業選択プログラムを提供する。
【0037】
かかる整備・修理作業選択プログラムにおいて、前記整備・修理作業温室効果ガス排出量算出ステップは、特定した整備・修理作業に使用する機器の電力消費量と、その整備・修理作業に要する機器の使用時間に基づいて、前記整備・修理作業温室効果ガス排出量を算出することができる。
【0038】
また、前記整備・修理作業選択プログラムは、更に、整備・修理作業によって交換する部品を選択する交換部品選択ステップと、交換する部品ごとに当該部品の製造又は再生において発生した温室効果ガス排出量を記録する温室効果ガス排出量記録部から交換部品選択部で選択した部品の温室効果ガス排出量を読み出して出力する交換部品温室効果ガス排出量出力ステップとを備えることもできる。
【0039】
また前記整備・修理作業選択プログラムにおいて、前記整備・修理作業温室効果ガス排出量算出ステップは、前記交換部品選択ステップにおける交換部品の選択の有無、又は前記交換部品選択ステップで選択した部品に応じて、その整備・修理作業に使用する機器を設定する整備・修理機器設定ステップを実行し、当該設定した機器の電力消費量と、整備・修理作業に要する使用時間に基づいて整備・修理作業温室効果ガス排出量を算出する整備・修理作業温室効果ガス排出量算出ステップを実行することもできる。
【0040】
また前記整備・修理作業選択プログラムにおいて、前記温室効果ガス排出量記録ステップで温室効果ガス排出量を読み出す温室効果ガス排出量記録部は、修理作業において交換する部品を、部品の種類情報と、当該部品が新品か又はリサイクル品かの区分情報を伴って保持することができる。
【0041】
また、前記温室効果ガス排出量記録部は、交換部品ごとに出荷元情報を保持しており、当該出荷元情報に基づいて、機器の修理作業を行う場所までの輸送に際して発生する温室効果ガス排出量を算出する輸送温室効果ガス排出量算出ステップと、当該輸送温室効果ガス排出量算出ステップで算出した輸送温室効果ガス排出量を出力する輸送温室効果ガス排出量出力ステップを備えることもできる。
【発明の効果】
【0042】
本発明により、温室効果ガスの排出量を可視化することができ、地球環境を考慮した整備や修理等の作業が可能になるという効果を奏する。
【0043】
また、本発明により、最適なカーボンオフセットの仕組みを提供することができるという効果を奏する。さらに、本発明では、この仕組みを提供することによって、地球環境を意識した商取引が可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる温室効果ガス排出量算出装置を用いた二酸化炭素排出量削減システムの全体構成図。
【
図2】温室効果ガス排出量算出装置が備える部品二酸化炭素排出量記録部の一例。
【
図3】温室効果ガス排出量算出装置が備える設備機器定格電力量記録部の一例。
【
図4】温室効果ガス排出量算出装置が備える作業毎設備機器使用時間記録部の一例。
【
図5】温室効果ガス排出量算出装置が備える作業毎二酸化炭素排出量記録部の一例。
【
図6】温室効果ガス排出量算出装置により行われる処理の流れを示すシーケンス図。
【
図7】温室効果ガス排出量算出装置により出力される出力画面。
【
図8】温室効果ガス排出量算出装置を構成するコンピュータハードウエア構成図。
【
図9】本発明の一実施形態にかかるカーボンオフセット管理装置を用いて構成したシステム全体の構成図。
【
図10】カーボンオフセット管理装置により出力されるダッシュボード画面。
【
図11】カーボンオフセットの取引情報の流れを示すシステム全体図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態にかかる温室効果ガス排出量算出装置10を具体的に説明する。特に本実施の形態は整備・修理する機器が輸送機器、特に自動車の例を示しているが、家電機器や産業機器など、その他の機器においても当然実施することができる。また本発明の一実施形態では、算出又は削減対象の温室効果ガスとして二酸化炭素を例に示しているが、これに限ることなくメタン、一酸化二窒素、代替フロン類等であっても良く、これら温室効果ガスの何れか2以上又は全てであっても良い。
【0046】
図1は本発明の一実施形態にかかる温室効果ガス排出量算出装置10を用いた二酸化炭素排出量管理システム100の全体構成図である。この図に示すように、本実施の形態にかかる二酸化炭素排出量管理システム100は、二酸化炭素排出量算出機能を備えた温室効果ガス排出量算出装置10と、自動車整備工場などに設置されたクライアント端末20で構成されており、これらはインターネットなどの情報通信手段を介して接続されている。また前記温室効果ガス排出量算出装置10には、自動車部品などを卸販売する部品商に設置された受注端末30を接続することもできる。
【0047】
クライアント端末20は自動車の整備・修理内容を入力し、その情報を温室効果ガス排出量算出装置10に送信する。具体的には、作業内容の情報と、部品交換を伴う場合には部品情報を送信する。温室効果ガス排出量算出装置10は、これら作業内容情報と部品情報を取得すると、当該作業内容や交換部品によって発生する二酸化炭素の排出量を算出又は抽出し、これを整備工場に設置されたクライアント端末20、すなわち作業内容や交換部品を入力したクライアント端末20に送信又は出力する。これにより、クライアント端末20では、自動車の整備や修理によって発生する二酸化炭素の排出量を正確に知ることができる。
【0048】
特に本実施の形態にかかる温室効果ガス排出量算出装置10では、自動車の整備・修理の費用の見積もりや作業スケジュールの設定に際して入力された整備・修理内容の情報を利用して、整備・修理に伴う二酸化炭素排出量を算出することができる。すなわち、自動車の整備や修理を行う際には、整備・修理工場において作業内容や交換部品を特定することが必要になる。そこで修理費用の見積もりや、作業スケジュールの設定のために入力された作業内容や交換部品の情報を利用して、二酸化炭素排出量を算出することもできる。よって、本実施の形態にかかる温室効果ガス排出量算出装置10は、整備作業や修理作業の費用見積りや、作業スケジュールを算出できるように構成することが望ましい。具体的には、当該温室効果ガス排出量算出装置10は、作業内容ごとの作業費用を保持する作業料金記録部と、部品ごとに料金を記録した部品料金記録部と、選択した作業内容や交換部品の料金を集計する修理費用算出部とを備えることが望ましく、さらに作業スケジュールを記録して保持する作業スケジュール記録部を備えることが望ましい。
【0049】
上記整備・修理作業(整備及び/又は修理に関する作業)に伴う二酸化炭素の排出量を算出するためには、当該整備・修理で使用する設備機器を明確にすることが望ましい。この
図1では、整備工場に設置している設備機器として、ホイールアライメントテスタ、サイドスリップテスタ、ブレーキテスタ、速度計試験器、複合試験器、前照灯試験器、エアコンプレッサ、洗車装置、塗装乾燥ブース、溶接機、バッテリー充電器の例を示しているが、これらに限定されるものではなく電動ドライバ等の各種電動機器を含めることができる。そして温室効果ガス排出量算出装置10は、前記二酸化炭素の排出量を算出するために、部品二酸化炭素排出量記録部11、設備機器定格電力量記録部12、作業毎設備機器使用時間記録部13を備えているが、その他にも二酸化炭素の排出量の算出に使用する各種の記録部を備えることができる。
【0050】
図2は温室効果ガス排出量算出装置10が備える部品二酸化炭素排出量記録部11の一例を示している。この実施の形態では、部品の種類に応じて、新品、リサイクル品、リビルト品、中古品などの区分情報と、価格と、当該部品の製造、リサイクル、リビルトに際して排出されたに際して発生する二酸化炭素排出量と、発送元の情報を保持している。特に部品の種類は部品の型番であっても良く、区分情報は部品の状態を示すさらに別の情報を含んでも良い。また二酸化炭素排出量は、リサイクル品、リビルト品、中古品の場合には、当該部品の取り外しに際して排出された二酸化炭素の量を含めることができる。更に当該二酸化炭素排出量は、交換のために取り外した部品の処分に際して発生する二酸化炭素排出量を含めることもできる。これにより、交換に使用する部品の種類と区分が特定されれば、当該部品二酸化炭素排出量記録部に基づいて二酸化炭素の排出量を特定することができ、さらに当該部品の価格も特定することができる。さらに当該部品二酸化炭素排出量記録部11は、発送元情報も保持している事から、当該部品を使用場所である整備工場まで輸送するための輸送コストや輸送によって発生する二酸化炭素の量も算出することができる。かかる発送元情報は図示するように都道府県などの住所である他、部品取扱い者(リサイクル業・部品商等)を特定する情報であってよく、整備工場までの配送(出荷)距離に、配送する車両に基づく係数をかけた値として算出することができる。そのために当該部品二酸化炭素排出量記録部は、更に当該部品の輸送時における大きさや質量に関する情報を保持していても良い。
【0051】
前記「部品の製造、リサイクル、リビルトに際して排出されたに際して発生する二酸化炭素排出量」の値は、例えば温室効果ガス排出量算出装置10に入力又は登録された「交換した部品種類」と「区分情報(新品、リサイクル品、リビルト品、中古品など)」の情報より特定することができる。交換部品における新品・リサイクル品の二酸化炭素排出量は、各団体(新品:社団法人日本自動車部品工業会、リサイクル品:一般社団法人日本自動車リサイクル部品協議会など)が策定している係数を用いることができる。
【0052】
図3は温室効果ガス排出量算出装置10が備える設備機器定格電力量記録部12の一例を示している。この実施の形態では、整備工場などの設備に設けている設備機器ごとに、その定格電力を保持している。その結果、「定格電力(kW)×整備工場での設備稼働時間×日数×整備・修理作業台数×二酸化炭素の排出係数」の演算式によって、当該設備機器における二酸化炭素の排出量を算出することができる。このうち「整備工場での設備稼働時間」は、整備種別に対する必要部品および作業内容、使用する設備とその標準設備使用時間によって算出することができる。また「日数」と「整備・修理作業台数」の数は、車両ごとの整備履歴(整備内容、整備内容、整備者、整備日付など)によって特定することができる。
【0053】
かかる設備機器定格電力量記録部12は、設備機器の使用による二酸化炭素の排出量を算出するために使用される。よって当該設備機器定格電力量記録部に変えて、設備機器ごとに、単位時間又は単位日数当たりの「電気使用量」を記録した設備機器電気使用量記録部を使用することもできる。この場合、「1日当たりの電気使用量(kWh)×30.5日×二酸化炭素排出係数」の演算式によって、当該設備機器における一か月あたりの二酸化炭素排出量を算出することができる。
【0054】
なお設備機器の使用に伴って発生する二酸化炭素の排出量は、整備工場などの施設単位で算出する他、整備・修理する自動車ごとに算出することもできる。この場合には、それぞれの自動車の整備・修理ごとに、当該設備機器の使用時間を算出することが必要となる。
【0055】
また、各設備機器の定格電力や電気使用量の値は、利用者である各整備工場ごとに設定することができる。同じ設備機器(例えばコンプレッサー)であっても、その製造メーカやモデルごとに値が異なることもあり、より正確な二酸化炭素排出量を算出するためである。
【0056】
図4は温室効果ガス排出量算出装置10が備える作業毎設備機器使用時間記録部13の一例を示している。この実施の形態では作業内容に対応させて、その作業で使用する設備機器と、その作業における当該設備機器の標準設備使用時間を関連付けて保持している。特に1つの作業内容において複数の作業機器を使用する場合には、当該作業機器ごとの標準設備使用時間を規定することができる。かかる標準設備使用時間を設定しておくことで、利用者である整備工場では、自社の設備機器を設備機器定格電力量記録部に設定するだけで、各整備工場が共通して利用できる作業毎設備機器使用時間記録部により、当該整備・修理作業によって発生する二酸化炭素の排出量を算出することができる。なお、当該標準設備使用時間は、それぞれの整備工場によって異なることも有り得るために、当該作業毎設備機器使用時間記録部13も、各利用者ごとに設定できるように形成しても良い。また当該作業内容に関連して作業料金も保持しておくことにより、整備・修理費用の見積もりも行うことができる。
【0057】
図5は作業毎二酸化炭素排出量記録部の一例を示している。この図に示す作業毎二酸化炭素排出量記録部は、前記設備機器定格電力量記録部と作業毎設備機器使用時間記録部を1つの表に簡略化したものであって、各作業内容対応させて、その作業で排出される二酸化炭素の量を規定している。特にこの
図5では簡素化した内容を示しているが、実施に際しては同じ作業内容であっても整備・修理対象となる自動車や部品の大きさや排気量などによって細かく規定することもできる。すなわち、同じバッテリー充電であっても大型のバッテリーと小型のバッテリーとでは、排出される二酸化炭素の量を異ならせることができる。かかる作業毎設備機器使用時間記録部は、平均的な数値の者を使用する他、各利用者ごとに設定することも可能である。
【0058】
図6は、以上のように構成した温室効果ガス排出量算出装置10における処理の流れを示すシーケンス図であり、
図7は温室効果ガス排出量算出装置10における出力画面を示している。この整備・修理作業選択処理において、最初に利用者である整備工場に、整備・修理対象となる自動車が入庫すると(S10)、利用者はクライアント端末20を操作して整備・修理対象となる作業部位の特定を含む整備種別を指定する(S11)。
図7においては、当該整備種別として(A)新品バッテリー交換、(B)リサイクルバッテリー交換、(C)バッテリー充電がそれぞれ選択されている状態を示している。
【0059】
そして整備種別を指定した後においては、部品の交換が必要か否かが選択され(S12)、部品交換が必要な場合には、どのような部品を使用するのかを選択する(S13)。なお、交換部品が選択されない場合には、部品交換なしと設定することができる。例えば
図7では、交換部品の項目で作業で交換する部品(新品バッテリー又はリサイクルバッテリー)を設定することができ、交換部品を設定しない場合には交換部品が「なし」と設定される。なお、この交換部品の選択は部品の種類を設定し、そのあとで新品かリサイクル品かなどの区分情報を設定するように構成しても良い。更に、
図7では説明の便宜上、交換部品の設定部が1欄の例を示しているが、当然に複数の交換部品設定欄を設けることもできる。
【0060】
このようにして交換部品が設定されると、その情報は温室効果ガス排出量算出装置10に送信される。温室効果ガス排出量算出装置10では、当該交換部品情報を取得すると(S14)、前記部品二酸化炭素排出量記録部を参照して、当該部品を使用することによる二酸化炭素排出量を算出する(S15)。その際、前記部品二酸化炭素排出量記録部11では、部品の価格の情報も保持していることから、
図7に示すように交換部品の価格と二酸化炭素の排出量を出力することができる。この時、多くの場合、新品バッテリーを選択するよりも、リサイクルバッテリーを使用した方が二酸化炭素の排出量を削減することができる。また、前記部品二酸化炭素排出量記録部11は、当該部品の発送元の情報を保持していることから、当該発送元情報に基づいて、利用者である整備工場までの距離を算出し、当該部品の輸送に伴うコストや二酸化炭素排出量を算出し、これを表示させることもできる。特に
図7では、発送元を任意に選択できるように発送元の選択欄を設けている。これは例えばリサイクルバッテリーが2以上登録されている場合に、より近い発送元を選択できる様にするためである。また、発送元の所在などに基づいて、選択した交換部品の送料も算出して、これを出力させることもできる。以上のようにして温室効果ガス排出量算出装置10が算出した部品交換に伴う二酸化炭素排出量は、整備工場などに設置されたクライアント端末20に送信される(S16)。
【0061】
交換部品がない場合、又は交換部品を選択した場合において、次に整備・修理作業によって排出される二酸化炭素の量を算出する。そのために、指定した整備種別に対応する作業内容を選択することが必要になる(S17)。例えばバッテリーの電力不足の場合には、バッテリーを交換するか充電するかの選択肢が存在することになり、ここで作業内容を特定することになる。なお、前記交換部品を選択した段階において、当該作業内容が特定されるように構成することもできる。そしてクライアント端末20で特定した作業内容は、温室効果ガス排出量算出装置10に送信され、温室効果ガス排出量算出装置10は当該作業内容情報を取得する(S18)。温室効果ガス排出量算出装置10は当該作業内容の情報に基づいて、前記作業毎設備機器使用時間記録部13を参照し、そして当該作業に使用する設備機器とその標準設備使用時間を抽出する。その後、前記設備機器定格電力量記録部12に規定されている定格電力に基づいて電気使用量を算出し、これに環境省が公表している電気事業者別の二酸化炭素排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)の値を乗算することにより、整備・修理の作業によって排出される二酸化炭素の量を算出することができる(S19)。このようにして温室効果ガス排出量算出装置10が算出した整備・修理の作業によって排出される二酸化炭素の量は、整備工場などに設置されたクライアント端末20に送信される(S20)。なお、前記
図5に示した作業毎二酸化炭素排出量記録部を利用した場合には、作業内容の特定によって直ちに二酸化炭素の量を抽出することができる。
【0062】
以上のように算出した整備・修理作業二酸化炭素排出量は、前記クライアント端末20に出力される(S21)。そしてクライアント端末20では、前記部品二酸化炭素排出量と整備・修理作業二酸化炭素排出量を積算し、そして修理費用などを考慮しながら、いかなる整備・修理作業とするかを選択できるようにしている。
【0063】
以上の温室効果ガス排出量算出装置10は、コンピュータのハードウエアと、ハードウエアに実装されて情報処理を行うプログラムによって構成することができる。
図8は、上記温室効果ガス排出量算出装置10を構成するコンピュータハードウエア構成図である。ただし、上記した処理を実行する演算装置やメモリ及びプログラムを備える限りにおいて、専用の装置として構成しても良い。
【0064】
この
図8に示すコンピュータ500は、CPU501、メモリ502、音声出力装置503、ネットワークインタフェース504、ディスプレイコントローラ505、ディスプレイ506、入力機器インタフェース507、キーボード508、マウス509、外部記憶装置510、外部記録媒体駆動装置511、およびこれらの構成要素を互いに接続するバス512を含んで構成されている。
【0065】
CPU501は、コンピュータ500の各構成要素の動作を制御し、OSの制御下で、機器の整備・修理作業によって生じる二酸化炭素の排出量を、作業内容または作業で使用する機器に応じて算出する、整備・修理作業二酸化炭素排出量算出ステップと、機器の整備・修理作業の作業内容を特定する整備・修理作業特定ステップと、特定した整備・修理作業における前記整備・修理作業二酸化炭素排出量算出部の算出結果を出力する整備・修理作業二酸化炭素排出量出力ステップの実行をコントロールし、その動作を制御する。メモリ502は通常、不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)、および揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)から構成される。ROMには、コンピュータ500の起動時に実行されるプログラム等が格納される。RAMには、CPU501で実行され、各装置の処理を実行する為のアプリケーションプログラムや、データベースプログラム、それらのプログラムが実行中に使用するデータ(たとえば、データベースやファイルシステムから読み出されたデータやスクリプト)が一時的に格納される。音声出力装置503は、スピーカ等の、音声を出力する機器であり、通信インタフェース504は、各種の機器と情報交換する為のネットワーク520に接続するためのインタフェースである。ディスプレイコントローラ505は、CPU501が発する描画命令を実際に処理するための専用コントローラである。ディスプレイコントローラ505で処理された描画データは、一旦グラフィックメモリに書き込まれ、その後、表示部としてのディスプレイ506に出力される。
【0066】
入力機器インタフェース507は、キーボード508やマウス509、或いはタッチパッドなどの入出力デバイスから入力された信号を受信して、その信号パターンに応じて所定の指令をCPU501に提供する。キーボード508やマウス509は、プログラムの実行や設定などの操作を行う場合に必要となる。
【0067】
外部記憶装置510も本明細書における記憶手段の範疇に含まれる。この外部記憶装置内には上述したプログラムやデータが記録され、実行時に、必要に応じてそこからメモリ502のRAMにロードされる。外部記録媒体駆動装置511は、可搬型の外部記録媒体530の記録面にアクセスして、そこに記録されているデータを読み取る装置である。
【0068】
以上のようにして、自動車などの機器の整備・修理作業によって発生する二酸化炭素の量を算出することにより、利用者である自動車整備工場などにおける全体の二酸化炭素排出量を算出する二酸化炭素排出量算出装置を構成することもできる。自動車整備工場などの施設全体における二酸化炭素の排出量は、例えば、当該施設に設定されている電気メータなどの計測結果からも算出することができる。その際、上記の実施の形態にかかる温室効果ガス排出量算出装置10を使用すれば、いかなる部品を使用するかも考慮した上で二酸化炭素排出量を算出することができ、それ故に単に施設に設置されている電気メータだけに基づいた二酸化炭素排出量の算定よりも、実情に沿った二酸化炭素排出量を算出することができる。また、前記温室効果ガス排出量算出装置10により、整備・修理作業で発生する二酸化炭素の量と、当該施設における照明器具などの他の電気機器の使用による二酸化炭素の排出量とを対比しながら、その削減方向を検討することができる。その際、前記整備・修理作業二酸化炭素排出量算出部は、前記整備・修理施設に設けられた個々の設備機器の電力消費量と、その機器の所定期間(例えば1カ月や1年)における使用時間に基づいて、前記整備・修理作業二酸化炭素排出量を算出することもできる。
【0069】
図9は、上記温室効果ガス排出量算出装置10や二酸化炭素排出量算出装置で算出した二酸化炭素排出量をオフセットする手法等を提示するカーボンオフセット管理装置50を用いて構成したシステム全体の構成図である。特にこの実施の形態に示すカーボンオフセット管理装置50には、輸送会社、リース会社、レンタカー会社、カーシェア業者、個人カーオーナー等の自動車オーナーが操作する依頼者端末40と、前記温室効果ガス排出量算出装置10を介して接続された整備工場のクライアント端末20と、部品商などに設置された受注・出荷端末30とがインターネットなどを介して接続されている。依頼者端末40や受注・出荷端末30からは、各施設や企業において排出した二酸化炭素量を受信するとともに、各端末に対して最適なカーボンオフセット手法(より詳細には、温室効果ガスの一例であるカーボン(炭素)(特に、二酸化炭素)の排出量に見合った削減活動に投資することで、その排出量を実質的に相殺(ゼロに(「ニュートラル」とも称する))する手法)を提案するように構成している。よって当該カーボンオフセット管理装置50は、各端末から二酸化炭素排出量を取得する二酸化炭素排出量取得部を備えるとともに、取得した二酸化炭素排出量に基づいて、これをオフセットするための手法を1又は2以上抽出するオフセット手法抽出部と、当該オフセット手法抽出部が抽出したオフセットするための手法を提示するオフセット手法提示部とを備えている。
【0070】
かかるオフセット手法抽出部は、前記温室効果ガス排出量算出装置10や二酸化炭素排出量算出装置が算出した二酸化炭素の排出量に基づいて、これをカーボンオフセット取引所にて取引(オフセット取引)する内容を抽出するものであり、例えば、「温室効果ガスの排出量に応じて木を購入して植える」、「〇〇kW発電する太陽光パネルを導入する」、「オフセットするための費用負担(オフセットクレジット)を行う」などの手法を抽出することができる。これらのオフセット手法は、二酸化炭素の排出量に関連付けて、データベースやファイルシステムなどの記録手段に保持しておくことができる。
【0071】
また前記オフセット手法抽出部は、二酸化炭素の排出量を算出した整備・修理施設における整備・修理施設情報に基づいて二酸化炭素の排出量をオフセットする手法を提案するように構成することができる。すなわち当該整備・修理施設における設備情報、経営情報(財務情報を含む)、施設の広さ情報、従業員情報、住宅地か郊外かなどの所在情報、施設周辺に川又は山があるなどの環境情報からなる、当該整備・修理施設に起因した施設固有情報や、あるいは所定の期間や単位時間当たりの温室効果ガスの排出量や整備・修理件数などからなる履歴情報を参照するように構成することができる。これらの環境情報や履歴情報に基づいてオフセット手法抽出部がオフセット手法を抽出することにより、整備・修理施設の状況にあった最適な手法を提供することができる。例えば、特定の期間における二酸化炭素の排出量や整備・修理件数などの履歴情報と、その期間の従業員の作業スケジュールなどから、当該期間に植樹を行うか、あるいは再生可能エネルギー施設を建設するなどの手法を抽出することができる。
【0072】
そして実際に整備・修理作業を実施する整備工場に設置されたクライアント端末20は、前記温室効果ガス排出量算出装置10を介して、当該カーボンオフセット管理装置50に接続されている。これにより、前述の処理によって算出した整備・修理作業によって発生する二酸化炭素の量、又は当該施設において発生させた二酸化炭素の量を、直接、カーボンオフセット管理装置50に送信することができる。そして当該カーボンオフセット管理装置50では、取得した二酸化炭素排出量に応じたカーボンオフセット手法を直接、又は温室効果ガス排出量算出装置10を介して間接的に、前記クライアント端末20に送信することができる。この時、前記温室効果ガス排出量算出装置10では、整備・修理作業で発生する二酸化炭素の量と、使用する交換部品によって発生する二酸化炭素の量を区別して保持することができるため、その内容や内訳を考慮した上で、最適なカーボンオフセット手法を提供することができる。
【0073】
そして前記カーボンオフセット管理装置50では、更に
図10に示すようなダッシュボード画面51を各端末に出力することができる。このダッシュボード画面51は1例であるが、二酸化炭素排出量の月額推移や、化石燃料電力と再生可能エネルギー電力の割合、現在における排出した二酸化炭素の削減量などを表示することができる。かかるダッシュボード画面51は、利用者における二酸化炭素排出量の削減状況を的確に示すために提供しており、その他の意匠を施した画面であっても良い。
【0074】
図11は、カーボンオフセットの取引情報の流れを示すシステム全体図であり、認証局として機能する前記カーボンオフセット管理装置50とオフセット取引を行うオフセット取引装置60と、整備工場に設置されたクライアント端末20を用いて構成している。このシステムにおいて、整備・修理施設がオフセット取引所とカーボンオフセットの取引を行った場合には、当該取引について、カーボンオフセット管理装置50は印刷物又は電子形式の証書を発行する。特に当該オフセット取引の証書化に際してはブロックチェーン技術などによって信ぴょう性を担保するのが望ましい。これにより当該整備・修理施設は、実際にカーボンオフセットの取引を行ったことを証明することができ、カーボンオフセット管理装置は当該取引に関する情報を保持することができる。
【0075】
その結果、カーボンオフセットの取引を行った整備・修理施設(例えば自動車整備工場)においては、機器の修理や整備を依頼する依頼者(例えばカーオーナー)に対して、当該カーボンオフセットの取引に基づいた二酸化炭素排出量を提示することができる。特に環境意識の高い需要者は、商品や役務の選択に際して環境負荷も考慮することが考えられることから、当該整備・修理施設における二酸化炭素排出量の提示は、提供者を選択する際の要素になり得る。
【0076】
また前記認証局が発行した証書について、信ぴょう性を確認できることが望ましい。そこで本実施の形態におけるシステムでは、依頼者端末からカーボンオフセットの取引の事実を確認する事実確認情報を取得した場合には、これに呼応する形で、問い合わせのあった整備・修理施設についてのカーボンオフセットの取引の事実を認証することができる。かかるカーボンオフセットの取引の事実は、実際に行ったカーボンオフセットの取引内容である他、二酸化炭素排出量の削減量であっても良い。また前記認証局に設置されるカーボンオフセット管理装置50が、当該整備・修理施設における二酸化炭素排出量の情報を保持する場合には、ユーザー端末からの事実確認に対して、当該整備・修理施設における二酸化炭素排出量を提供することもできる。当該整備・修理施設における二酸化炭素排出量の情報は、カーボンオフセット管理装置50が、当該整備・修理施設における二酸化炭素排出量の情報を保持しており、かつカーボンオフセットの取引情報を保持することにより実施することができる。
【0077】
そして上記のようにカーボンオフセットの取引をブロックチェーン技術によって証書化した場合には、当該カーボンオフセットの取引の事実を、付加価値を有するNFTとして管理することもできる。カーボンオフセット取引の電子証券を、固有の価値を有する非代替性のデジタルトークン(NFT)として管理することにより、当該NFTを取引の対象とすることができる。
【0078】
以上、本実施の形態では整備・修理の対象として自動車などの輸送機器に基づいて説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、他の機器の整備・修理でも実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のコンピュータは、機器を整備及び/又は修理に基づく温室効果ガス排出量を算出するために利用することができ、更に当該機器を整備及び/又は修理する施設における温室効果ガスの排出量を算出するため、及びその排出量に基づいて削減目標を策定するために利用することができる。
また本発明のオフセット管理装置は、排出した温室効果ガスを削減するための最適な方法を提案する為に利用することができ、更にカーボンオフセットを証書化することにより真正であることを保証し、更に証書化したカーボンオフセット取引の流通を実現するために利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 温室効果ガス排出量算出装置
11 部品二酸化炭素排出量記録部
12 設備機器定格電力量記録部
13 作業毎設備機器使用時間記録部
20 クライアント端末
30 受注端末
30 受注・出荷端末
40 依頼者端末
50 カーボンオフセット管理装置
51 ダッシュボード画面
60 オフセット取引装置
100 二酸化炭素排出量管理システム
500 コンピュータ
520 ネットワーク
【要約】
【課題】修理や整備の作業によって生じる温室効果ガスの排出量に基づいて機器の整備や修理の内容を選択できるようにした、温室効果ガス排出量算出装置を提供する。
【解決手段】機器を整備及び/又は修理するための作業内容に基づいた温室効果ガス排出量を算出する温室効果ガス排出量算出装置であって、機器の整備及び/又は修理作業によって生じる温室効果ガスの排出量を算出する、温室効果ガス排出量算出部と、機器の整備及び/又は修理作業にかかる作業内容を特定する整備・修理作業特定部と、特定した作業内容における前記温室効果ガス排出量算出部の算出結果を出力する温室効果ガス排出量出力部とを備え、前記温室効果ガス排出量算出部は、特定した作業内容において使用する機器の電力消費量と、当該作業内容に要する機器の使用時間に基づいて、前記温室効果ガス排出量を算出する、温室効果ガス排出量算出装置とする。
【選択図】
図1