(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】流動化計測器
(51)【国際特許分類】
G01N 11/14 20060101AFI20240813BHJP
G01N 11/00 20060101ALI20240813BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20240813BHJP
E04G 21/08 20060101ALN20240813BHJP
【FI】
G01N11/14 F
G01N11/00 E
G01N33/38
E04G21/08
(21)【出願番号】P 2023133191
(22)【出願日】2023-08-18
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】市川 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 博規
(72)【発明者】
【氏名】山根 康平
(72)【発明者】
【氏名】山崎 真史
(72)【発明者】
【氏名】田中 真史
(72)【発明者】
【氏名】昇 悟志
(72)【発明者】
【氏名】橋田 雅也
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-141148(JP,A)
【文献】特開平04-254739(JP,A)
【文献】特表2023-520090(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102713560(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/14
G01N 11/00
G01N 33/38
E04G 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加振または加熱により流動化する物質の流動化の程度を計測するための流動化計測器であって、
第1端部と、前記第1端部とは反対側に位置し、加振または加熱の工程を行う前に前記物質の中に挿入される第2端部と、を有する
挿抜治具と、
一端と、前記一端とは反対側に位置する他端とを有し、前記一端が前記挿抜治具と接続して前記挿抜治具と共に前記物質の中に挿入される軸部と、
第3端部と、前記第3端部とは反対側に位置する第4端部と、を有し、前記挿抜治具に対して前記軸部を回転軸として回転可能となるように、前記第3端部から前記第4端部の間に設けられた取付位置において前記軸部の他端と接続された回転体と、
前記回転体の回転を検出可能なセンサ部と、
を備え、
前記回転体は、前記第4端部が前記第3端部よりも深さ方向に深い第1姿勢を保ちつつ、その全体が前記物質の中に挿入された場合において、前記物質の流動化に伴う前記回転により、前記第1姿勢から、前記第3端部が前記第4端部よりも深さ方向に深い第2姿勢となるよう、前記回転体の浮心の位置と、前記回転体の重心の位置と、前記取付位置と、が構成されている、
流動化計測器。
【請求項2】
前記回転体は、前記第1姿勢の状態において、前記浮心が前記取付位置より前記第4端部側に位置し、前記重心が前記取付位置より前記第3端部側に位置する、請求項1に記載の流動化計測器。
【請求項3】
前記回転体は、前記第1姿勢の状態において、前記取付位置が、前記浮心及び前記重心より前記第4端部側に位置し、前記浮心から前記取付位置までの長さと、前記重心から前記取付位置までの長さとの比が、予め定められた第1の関係を具備するように構成されている、請求項1に記載の流動化計測器。
【請求項4】
前記回転体は、前記第1姿勢の状態において、前記取付位置が、前記浮心及び前記重心より前記第3端部側に位置し、前記浮心から前記取付位置までの長さと、前記重心から前記取付位置までの長さとの比が、予め定められた第2の関係を具備するように構成されている、請求項1に記載の流動化計測器。
【請求項5】
前記取付位置の中心は、前記浮心と前記重心とを通る直線上から離間するように構成されている、請求項2に記載の流動化計測器。
【請求項6】
前記軸部は、前記一端が前記挿抜治具と固定接続されている、請求項2に記載の流動化計測器。
【請求項7】
前記回転体は、前記軸部の他端と固定接続されている、請求項2に記載の流動化計測器。
【請求項8】
前記軸部は軸方向を中心に、前記挿抜治具に対して回動可能に接続されている、請求項7に記載の流動化計測器。
【請求項9】
前記センサ部は、前記回転体に搭載されている、請求項8に記載の流動化計測器。
【請求項10】
加振または加熱により流動化する物質の流動化の程度を計測するための流動化計測器であって、
第1端部と、前記第1端部とは反対側に位置し、加振または加熱の工程を行う前に前記物質の中に挿入される第2端部と、を有する挿抜治具と、
前記挿抜治具と固定接続される一端と、前記一端とは反対側に位置する他端とを有し、前記挿抜治具と共に前記物質の中に挿入される軸部と、
第3端部と、前記第3端部とは反対側に位置する第4端部と、前記軸部の他端側が、第1位置から、前記第1位置よりも前記第4
端部側の第2位置まで移動可能な長穴部と、を有し、前記軸部を回転軸として前記軸部の他端側に前記長穴部を介して回転可能に取り付けられた、前記物質の比重よりも小さい比重で構成された回転体と、
前記回転体の回転を検出可能なセンサ部と、
を備え、
前記回転体は、前記第4端部が前記第3端部よりも深さ方向に深い第1姿勢を保ちつつ、その全体が前記物質の中に挿入された状態であって、前記軸部の他端側が前記第1位置に位置する場合において、前記物質の流動化に伴う前記回転により、前記第1姿勢から、前記第3端部が前記第4端部よりも深さ方向に深い第2姿勢となるよう、前記回転体の浮心の位置と、前記回転体の重心の位置と、前記第1位置と、が構成されている、
流動化計測器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は物質の流動化の程度を計測する流動化計測器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの締固め完了判定方法の従来技術として、
図22に示すように、型枠内に打込まれたコンクリートにバイブレータを挿入し振動を加えてコンクリートを締固める際に、コンクリートの締固め完了を容易に判定できるようにするものがある(例えば、特許文献1参照)。この方法では、型枠M内のコンクリートCのバイブレータVによる締固めによってコンクリートC中をコンクリートCの締固め度合いに応じて浮上する浮遊体Fを、コンクリート打込み前の型枠M内でコンクリートの締固め完了を判定しようとする箇所の底部に設置し、この状態から型枠M内にコンクリートCを打込み、バイブレータVで締固めて、浮遊体Fの浮上をもってコンクリートの締固め完了と判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のコンクリートの締固め完了判定方法は、浮遊体が浮上しない場合に浮遊体の回収ができなくなるおそれがある。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑み、加振や加熱により流動化する物質の流動性の程度を安定的に計測ができ、かつ、計測に用いるセンサを、より確実に回収できる流動化計測器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本実施形態に係る流動化計測器は、加振または加熱により流動化する物質の流動化の程度を計測するための流動化計測器であって、第1端部と、第1端部とは反対側に位置し、加振または加熱の工程を行う前に物質の中に挿入される第2端部と、を有する挿抜治具と、一端と、一端とは反対側に位置する他端とを有し、一端が挿抜治具と接続して挿抜治具と共に物質の中に挿入される軸部と、第3端部と、第3端部とは反対側に位置する第4端部と、を有し、挿抜治具に対して軸部を回転軸として回転可能となるように、第3端部から第4端部の間に設けられた取付位置において軸部の他端と接続された回転体と、回転体の回転を検出可能なセンサ部と、を備えている。回転体は、第4端部が第3端部よりも深さ方向に深い第1姿勢を保ちつつ、その全体が物質の中に挿入された場合において、物質の流動化に伴う回転により、第1姿勢から、第3端部が第4端部よりも深さ方向に深い第2姿勢となるよう、回転体の浮心の位置と、回転体の重心の位置と、取付位置と、が構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態の流動化計測器によれば、加振や加熱により流動化する物質の流動性の程度を安定的に計測ができ、かつ、計測に用いるセンサを、より確実に回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る流動化計測器1を、生コンクリートが流し込まれた型枠200に設置した状態を上方から見た天面図である。
【
図3】
図3は、流動化計測器1を用いた流動化計測方法を示したフローチャートである。
【
図4】
図4(a)は、第1実施形態に係る流動化計測器1の斜視図であり、
図4(b)は、流動化計測器1のA-A(
図1)断面図である。
【
図5】
図5は、挿抜治具10側から見た回転体30の正面図である。
【
図6】
図6(a)は体積V1の図形であり、
図6(b)は外形形状が
図6(a)と同一形状を有する体積V2の図形である。
【
図7】
図7は、回転体30の穴部30Hを端部32側に設けた場合であって、
図7(a)は、浮心C
bよりも重心C
gの方が穴部30Hに近い場合の一例であり、
図7(b)は、重心C
gよりも浮心C
bの方が穴部30Hに近い場合の一例である。
【
図8】
図8は、回転体30の穴部30Hを端部31側に設けた場合であって、
図8(a)は、重心C
gよりも浮心C
bの方が穴部30Hに近い場合の一例であり、
図8(b)は、浮心C
bよりも重心C
gの方が穴部30Hに近い場合の一例である。
【
図9】
図9は、回転体30の穴部30Hを、重心C
gと浮心C
bの間に設けた場合であって、
図9(a)は、重心C
gが浮心C
bよりも端部31側にある場合の一例であり、
図9(b)は、浮心C
bが重心C
gよりも端部31側にある場合の一例である。
【
図10】
図10(a)は、センサ部40として磁気方式を採用した場合の流動化計測器1の斜視図であり、
図10(b)はその側面図である。
【
図11】
図11は、センサ部40として磁気方式を採用した場合の回転体30の一例を挿抜治具10側から見た正面図である。
【
図12】
図12は、センサ部40として磁気方式を採用した場合の挿抜治具10の一例を回転体30側から見た正面図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態の変形例に係る軸部20と回転体30の接続手法の一例を示した図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態の変形例に係る軸部20と回転体30の接続手法の他の例を示した図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態の変形例に係る挿抜治具10と軸部20の接続手法の一例を示した図である。
【
図16】
図16は、挿抜治具10の構成の他の手法を示した図である。
【
図17】
図17(a)は、第2実施形態に係る流動化計測器1Aの斜視図であり、
図17(b)はその側面図である。
【
図18】
図18は、挿抜治具10A側から見た回転体30Aの正面図である。
【
図19】
図19は、回転体30A側から見た挿抜治具10Aの正面図である。
【
図20】
図20は、流動化計測器1Aを用いた流動化計測方法を示したフローチャートである。
【
図21】
図21は、回転体30Aにおける、重心C
gと浮心C
bと軸部20との位置関係の一例を示す図である。
【
図22】
図22は、コンクリートの締固め完了判定方法の従来技術を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の流動化計測方法と、この方法に用いる流動化計測器1の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以降の説明において、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0010】
<流動化計測方法>
図1は、第1実施形態に係る流動化計測器1を、生コンクリートが流し込まれた型枠200に設置した状態を上方から見た天面図である。
図2は、
図1におけるA-A断面を示した図である。
図3は、流動化計測器1を用いた流動化計測方法を示したフローチャートである。
【0011】
本開示の流動化計測方法は、例えば、型枠200の中に流し込まれた生コンクリートの流動化の程度を計測する。具体的には、生コンクリートの中に、流動化計測器1を挿入し、加振器400により加振する。この加振により生コンクリートが流動化した状態では、その流動化の程度により回転体30が軸部20を回転軸として回転する。この回転体30の回転をセンサ部40により計測することにより、その流動化の程度を計測する。計測対象が加熱により流動化する物質の場合には、加振器400の代わりに加熱器を用いる。以下、計測対象として生コンクリートを例に挙げて説明する。
【0012】
図3に示すように、本開示の流動化計測方法は、まず、流動化計測器1の端部11を上方方向(
図4のZ方向)、端部12を下方方向(
図4の-Z方向)に位置する姿勢に対して、回転体30の端部31を上方方向(
図4のZ方向)、端部32を下方方向(
図4の-Z方向)に位置する姿勢(以下、「第1姿勢」ともいう。)に位置合わせを行う(ステップS1)。端部11及び端部12については後述する。
【0013】
次に、第1姿勢を保ちつつ、挿抜治具10の端部12側を、生コンクリートの上層90Aの中に挿入する(ステップS2)。これにより、
図2に示すように、挿抜治具10の一部に加え、軸部20、回転体30、及びセンサ部40が、生コンクリートの上層90Aの中に挿入される。ステップS2により、回転体30を所望の計測位置に確実に設置することができる。なお、万一、ステップS2によって、回転体30が回転して第1姿勢を保たなくなってしまった場合には、他の治具を用いて、回転体30が第1姿勢になるように位置合わせをする。
【0014】
次に、
図2に示すように、回転体30から長さLL離れた位置に、加振中あるいは加振前の加振器400を挿入する(ステップS3)。長さLL及び後述する深さHは、事前に調整された計測対象の流動化の程度を計測するのに好ましいと判断された長さである。長さLLは、回転体30が加振器400自体の振動の影響を受けにくく、かつ、流動化に必要な振動が伝達される範囲内が好ましい。
【0015】
計測対象が、生コンクリートの場合、回転体30の挿入深さは、
図2に示すように、すでに1回目に打たれ、すでに締固められた生コンクリートの下層90Bよりも上方側(Z方向側)に打たれた上層90Aの上面から深さHの位置とする。なお、流動化計測器1は、1回目に打たれた生コンクリートや、3回目以降に打たれた生コンクリートの流動化計測方法にも用いることができる。ステップS3を経ることにより、回転体30は、加振器400からLL離れ、かつ深さHの位置に配置されることとなる。
【0016】
本実施形態の加振器400は、生コンクリートの締固め用の一般的な加振器で構成されている。生コンクリートが2層からなる場合、加振器400は、これから締固めがなされる上層90Aを貫通し、その先端付近の、例えば100mm程度をすでに締固められた下層90Bに挿入する。なお、評価対象の生コンクリートが1回目に打たれた生コンクリートである場合には、加振器400が底に接触しないようにする必要がある。加振器400は、直径や振動の出力強度にもよるが、例えば、その直径が50mmの場合、加振器400を中心とする例えば半径250mm程度の範囲が、振動が伝達されて生コンクリートの締固めを行える範囲となる。
【0017】
次に、加振器400により、生コンクリートを加振させる(ステップS4)。加振器400の加振により、生コンクリートの流動化が開始する。加振器400による生コンクリートへの加振によって、生コンクリートの締固めを行う。加振器400が生コンクリートの中で作動すると、振動によって生コンクリートを構成する粒子が粒子間の間隙に落ち込もうとする。粒子の間隙への落ち込みにより間隙の水圧が上昇する。水圧の上昇により、粒子間の摩擦力が低下して、生コンクリートの上層90Aでは摩擦力よりも浮力が支配的となる。これによって、生コンクリートが流動化する。
【0018】
上層90Aの流動化が進むと、回転体30周辺の摩擦力が低下する。ステップS4では、回転体30に働く浮力または重力によって、第1姿勢(端部31が上方方向(
図4のZ方向)、端部32が下方方向(-Z方向))にある回転体30は、端部32が上方方向(Z方向)に向かうように軸部20を回転軸として回転していく。これによって、回転体30は、第1姿勢から、第2姿勢(端部31が下方方向(-Z方向)、端部32が上方方向(Z方向))に変化しようとする。
【0019】
回転体30が第1姿勢から第2姿勢に移動する間、又は第1姿勢から第2姿勢に至る途中までの間に、センサ部40が回転体30の回転を検出する(ステップS5)。即ち、センサ部40は、軸部20を回転軸として回転する回転体30の回転の度合を検出する。センサ部40の検出結果は、有線あるいは無線で接続された評価部50に送出される。
【0020】
次に、評価部50は、センサ部40から受信した検出結果をもとに計測対象の流動化の程度を評価できる計測結果を出力する(ステップS6)。例えば、回転体30の回転の度合を時系列で表示する、あるいは予め定められた回転の度合と計測対象の流動化の程度との関係のグラフを表示する、などが挙げられる。ただし、これらはあくまで例示であり、計測対象の流動化の程度を評価できる計測結果であれば、どのような出力でもよい。ユーザは、ステップS6により、計測対象の流動化の程度を評価する。
【0021】
ステップS6による計測結果の出力によって、ユーザが所望の流動化の程度になったと判断した場合には、挿抜治具10を引き上げる(ステップS7)。挿抜治具10は、後述するように軸部20と接続し、軸部20は回転体30と接続している。したがってステップS7による挿抜治具10の引き上げにより、回転体30を確実に回収することができる。
【0022】
計測対象が生コンクリートの場合、ステップS7は、締固め完了と予測される時刻よりも前に行われる。具体的には、締固め完了と予測される時刻の数秒~数十秒前、好ましくは1~10秒前、より好ましくは1~5秒前までに行われる。一方、ステップS4の加振器400の作動は、締固め完了と予測される時刻まで継続して行い、その後、加振器400を引き上げる(ステップS8)。
【0023】
締固め完了と予測される加振時間は、例えば、ステップS6により、回転体30の加速度のグラフが得られるとした場合、そのグラフから読み取れる1~十数秒までの間に定めた勾配の延長線が、予め設定した締固め完了と予測される合成加速度に到達するまでとする。締固め完了と予測される合成加速度は、合成加速度と硬化後のコンクリートの品質との関係を根拠として設定される。これにより、流動化計測方法が終了する。
【0024】
上述した流動化計測方法に用いられる流動化計測器1の実施形態について、以下に説明する。
【0025】
<第1実施形態>
図4(a)は、第1実施例に係る流動化計測器1の斜視図であり、
図4(b)は、流動化計測器1のA-A(
図1)断面図である。本開示の第1実施形態に係る流動化計測器1は、加振または加熱より流動化する物質(物質D)の流動化の程度を計測するためのものである。流動化計測器1は、
図4(a)(b)に示すように、挿抜治具10と、軸部20と、回転体30と、センサ部40とを、例えば備える。
【0026】
(挿抜治具10)
挿抜治具10は、端部11と、端部11とは反対側に位置し、加振または加熱の工程を行う前に物質Dの中に挿入される端部12と、を有する。挿抜治具10は、例えば略長方形の断面を有した細長棒状の形状を有する。挿抜治具10は、例えばステンレス製である。
図4の例では、端部11は平面を有し、端部12は曲面を有している。端部12は先端が尖る等の先細形状であることが好ましい。先細形状は、角錐形状や円錐形状などの他の先細形状であってもよい。挿抜治具10の端部12側は、計測対象である物質Dに挿入される側に相当する。挿抜治具10の端部11側は、回転体30を物質Dの中に挿入して所望の計測位置に配置するために、使用者が挿抜治具10を操作する、持ち手側に相当する。
【0027】
(軸部20)
軸部20は、例えば略円形の断面を有した細長棒状の形状を有し、端部21と、端部21とは反対側に位置する端部22とを有する。軸部20は、例えばSUS製である。端部21側は挿抜治具10と、軸部20を回転軸として回動可能に接続しており、端部22側は回転体30と固定接続されている。軸部20は、物質Dの流動化の程度を計測するために、挿抜治具10の端部12側と共に物質Dの中に挿入される。
【0028】
(回転体30)
回転体30は、例えば、略長方形の断面を有した略直方体の形状を有し、端部31と、端部31とは反対側に位置する端部32とを有する。この例では、回転体30が物質Dの中に挿入しやすいよう、回転体30の端部32側は三角柱の形状として構成された先細形状を有している。先細形状は、他の角錐形状や円錐形状などの他の先細形状であってもよい。回転体30は、例えばSUS製である。回転体30は、端部31から端部32の間に設けられた所定位置(取付位置T)において、軸部20の端部22側と固定接続している。これにより、回転体30は軸部20を回転軸として、挿抜治具10に対して回動可能となるように軸部20と固定接続されている。
【0029】
図5は、挿抜治具10側から見た回転体30の正面図である。この例では、回転体30の長さはLであり、端部31から長さL
rの位置に軸部20が挿入されるように穴部30Hが設けられている。穴部30Hが取付位置Tに該当する。この例では、回転体30における回転方向を一の方向へ促進させるために、穴部30Hの中心軸が、回転体30の幅方向の中心軸よりも、長さL
sだけ、
図5でいう左側(Y方向)にずれている(シフトしている)。換言すれば、取付位置Tの中心は、回転体30の浮心(浮心C
b)と、回転体30の重心(重心C
g)とを通る直線上から離間している。但し、このずれ(離間)は、必要により設ければよく、必須のものではない。この例では、穴部30Hの中心軸から端部31側の長さL
bの地点に回転体30の浮心C
bがあるものとする。この例では、穴部30Hの中心軸から端部31側の長さL
gの地点に回転体30の重心C
gがあるものとする。浮心C
bや重心C
gは、シフト長L
sを設ける場合には、回転体30の幅方向Wの中心軸からずれることもあるが、ここではそのずれは割愛している。
【0030】
(センサ部40)
センサ部40は、回転体30の回転を検出する。センサ部40は、例えば、ロータリエンコーダ、あるいはレゾルバである。センサ部40が、ロータリエンコーダあるいはレゾルバである場合、センサ部40は、例えば、挿抜治具10の面13側に装着される。軸部20の端部21は、
図4(b)に示すように、挿抜治具10に設けられた面13と面14とを貫通する穴部10Hを介して、センサ部40内に挿入される。センサ部40は、軸部20の軸の回転を検出する。軸部20と回転体30とは固定接続されていることから、センサ部40による軸部20の回転の検出により、センサ部40は、間接的に回転体30の回転を検出する。
【0031】
(回転体30における、重心Cg、浮心Cb、及び取付位置Tの相対的な位置関係)
流動化計測器1を用いた流動化計測方法は、物質Dの中に挿入された回転体30の回転の変化を計測することにより行われる。ここでは、回転体30の全体が物質Dの中に挿入された場合において、回転体30の重心Cg、浮心Cb、及び軸部20の取り付け位置である取付位置Tの相対的な位置関係が、回転体30の回転挙動にどのように影響するかについて説明する。
【0032】
図3のステップS1,S2により、回転体30は、第1姿勢で物質Dに挿入される。したがって、この第1姿勢を基本の状態として説明する。
【0033】
以下、理解を促進させるために、(1)穴部30H(取付位置T)を、浮心Cb及び重心Cgよりも端部32側に設ける場合、(2)穴部30Hを、浮心Cb及び重心Cgよりも端部31側に設ける場合、(3)穴部30Hを、浮心Cbと重心Cgとの間に設ける場合、の3通りに分けて説明する。
【0034】
[(1)穴部30Hを、浮心Cb及び重心Cgよりも端部32側に設ける場合]
回転体30が、その内部に空間を有さず、単一の材質で構成されている場合、回転体30の浮心Cbと重心Cgは同一の位置となる。回転体30が比重の異なる複数の材質で構成されている場合、あるいは単一の材質であっても内部に空間がある場合など、回転体30の内部の全てが、同一の材質で充填された構成とはなっていない場合、回転体30の浮心Cbと重心Cgとは異なる位置となる。これは、回転体30に限らず、他の部品であっても同様となる一般的な現象である。
【0035】
図6(a)は体積V1の図形であり、
図6(b)は外形形状が
図6(a)と同一形状を有する体積V2の図形である。
図6(a)に示した図形は、体積がV1の直方体であり、内部は、例えばSUS304等の、1つの材質で充填されているものとする。この場合、重心C
gと浮心C
bの位置が一致する。
図6(b)に示した図形は、外見上の形状は
図6(a)と同一であり、例えばSUS304等の、1つの材質が充填されている点では一致する。但し、中央から上方側(Z側)に内部空間としての体積Pの空間を有しており、結果としてV2(=V1-P)の体積となっているものとする。この場合、
図6(b)の浮心C
bは、
図6(a)と同じ位置となるものの、
図6(b)の重心C
gは、
図6(a)よりも下方側(-Z側)に移動する。このように、外見上同じ形状であっても、材質の構成や、内部に空間を持たせるなど、比重を異にする部分を設けることにより、重心C
gの位置を調整することができる。したがって、回転体30の形状や比重を調整することにより、重心C
g,浮心C
b,及び取付位置Tの位置を調整することが可能である。
【0036】
図7は、回転体30の穴部30Hを端部32側に設けた場合であって、
図7(a)は、浮心C
bよりも重心C
gの方が穴部30Hに近い場合の一例であり、
図7(b)は、重心C
gよりも浮心C
bの方が穴部30Hに近い場合の一例である。
図7(a)(b)では、理解を促進させるために、穴部30Hの中心軸に対して回転体30が右回りに10度回転した状態を示している。また、シフト長L
sは設けていない。
図7(a)(b)では、浮心C
bから上方向(Z方向)に浮力F
bが働き、重心C
gから下方向(-Z方向)に重力F
gが働く。したがって、物質Dの流動化に伴い、穴部30Hの中心軸を中心に回転体30を回転させるためには、
図7(a)(b)の状態を更に右回りに回転させる力が必要となる。ここでは、回転体30の回転に関わる力を、重力F
gと浮力F
bのみであると仮定すると、
図7(a)(b)では、F
g×L
g>F
b×L
bの条件が必要となる。ここで、物質Dの比重をS
0とし、回転体30の比重をS
1とする。回転体30は、内部に空間を有していないものとする。重力加速度をgとする。F
b=S
0×(回転体30の体積)×gであり、F
g=S
1×(回転体30の体積)×gである。したがって、L
g>(S
0/S
1)L
bという条件(以下、「第1の関係」ともいう。)が必要となる。即ち、上述の(1)の場合、浮心C
bから取付位置Tまでの長さと、重心C
gから取付位置Tまでの長さとの比が、予め定められた第1の関係を具備する。
【0037】
例えば、物質Dが生コンクリート(比重S0=2.3)であり、回転体30の材質がSUS304(比重S1=7.9)であるとすると、Lg>0.291Lbとなるように、回転体30を構成する必要がある。例えば、回転体30の材質がポリプロピレン(比重S1=0.9)であるとすると、Lg>2.55Lbとなるように、回転体30を構成する必要がある。
【0038】
[(2)穴部30Hを、浮心C
b及び重心C
gよりも端部31側に設ける場合]
図8は、回転体30の穴部30Hを端部31側に設けた場合であって、
図8(a)は、重心C
gよりも浮心C
bの方が穴部30Hに近い場合の一例であり、
図8(b)は、浮心C
bよりも重心C
gの方が穴部30Hに近い場合の一例である。
図8(a)(b)では、穴部30Hの中心軸に対して回転体30が右回りに10度回転した状態であり、シフト長L
sは設けていない。物質Dの流動化に伴い、回転体30を回転させるためには、
図8の状態を更に右回りに回転させる力が必要となる。
図7と同様に回転モーメントの関係を考えてみると、
図8(a)(b)では、L
g<(S
0/S
1)L
bという条件(以下、「第2の条件」ともいう。)が必要となる。即ち、上述の(2)の場合、浮心C
bから取付位置Tまでの長さと、重心C
gから取付位置Tまでの長さとの比が、予め定められた第2の関係を具備する必要がある。
【0039】
例えば、物質Dが生コンクリート(比重S0=2.3)であり、回転体30の材質がSUS304(比重S1=7.9)であるとすると、Lg<0.291Lbとなるように、回転体30を構成する必要がある。例えば、回転体30の材質がポリプロピレン(比重S1=0.9)であるとすると、Lg<2.55Lbとなるように、回転体30を構成する必要がある。
【0040】
[(3)穴部30Hを、浮心C
bと重心C
gとの間に設ける場合]
図9は、回転体30の穴部30Hを、重心C
gと浮心C
bの間に設けた場合であって、
図9(a)は、重心C
gが浮心C
bよりも端部31側にある場合の一例であり、
図9(b)は、浮心C
bが重心C
gよりも端部31側にある場合の一例である。
図9(a)(b)では、穴部30Hの中心軸に対して回転体30が右回りに10度回転した状態であり、シフト長L
sは設けていない。物質Dの流動化に伴い、回転体30を回転させるためには、
図9の状態を更に右回りに回転させる力が必要となる。
図7と同様に回転モーメントの関係を考えてみると、
図9(a)では、浮力F
bと重力F
gの双方が、軸部20を中心軸に回転体30を更に右回りに回転するように促す力が働く。
図9(b)では、浮力F
bと重力F
gの双方が、軸部20を中心軸に回転体30を左回りに回転するように促す力が働く。即ち、
図9(a)は回転体30の回転の様子を検出するには良好な位置関係と考えられる。一方、
図9(b)は回転体30の回転の様子を検出するには不向きの位置関係と考えられる。即ち、上述の(3)の場合、回転体30は、第1姿勢の状態において、浮心Cbが取付位置Tより端部32側に位置し、重心Cgが取付位置Tより端部31に位置する関係(以下、「第3の関係」ともいう。)を具備する必要がある。
【0041】
以上をまとめると、(1)回転体30における軸部20の取り付け位置となる穴部30Hの位置が、浮心Cb、重心Cgよりも端部32側に設ける場合には、Lg>(S0/S1)Lbとなる第1の関係を具備する必要がある。(2)回転体30における穴部30Hの位置が、浮心Cb、重心Cgよりも端部31側に設ける場合には、Lg<(S0/S1)Lbとなる第2の関係を具備する必要がある。(3)回転体30における穴部30Hの位置が、浮心Cbと重心Cgとの間に設ける場合は、浮心Cbを端部32側、重心Cgを端部31側となる、第3の関係を具備する必要がある。
【0042】
但し、実際の現象では、例えば、挿抜治具10と軸部20との間の摩擦抵抗など、他の要因の影響を受ける。特に生コンクリートでは、流動化して、生コンクリートの上層90Aでは摩擦力よりも浮力が支配的となるが、依然として摩擦力が要因として浮力が十分に発揮されない状況もある。したがって、上記(1)~(3)は基本の基準として活用し、実際には、実験等を繰り返すことにより、重心Cg、浮心Cb、及び取付位置Tの相対的な位置関係を決定することが好ましい。即ち、本実施形態の回転体30は、端部32が端部31よりも深さ方向に深い第1姿勢を保ちつつ、その全体が物質Dの中に挿入された場合において、物質Dの流動化に伴う回転により、第1姿勢から、端部31が端部32よりも深さ方向に深い第2姿勢となるよう、回転体30の浮心Cbの位置と、回転体30の重心Cgの位置と、取付位置Tと、が構成される必要がある。決定した位置関係において、回転体30の回転の変化と物質Dの流動化の程度との関係を予め取得しておくこととなる。
【0043】
以上、本開示による流動化計測器の実施形態を説明した。流動化計測器1を上述の構成とすることにより、挿抜治具10を操作することにより、加振器400との関係で、回転体30を所望の計測位置に設置することができる。回転体30は、挿抜治具10に対して、軸部20を中心軸に回転させることができ、物質Dの流動化の程度を計測することができる。計測後は、挿抜治具10を引き上げることにより、回転体30を確実に回収することができる。即ち、本実施形態の流動化計測器によれば、加振や加熱により流動化する物質の流動性の程度を安定的に計測ができ、かつ、計測に用いるセンサを、より確実に回収できる。
【0044】
<第1実施形態の変形例>
流動化計測器1は、センサ部40として磁気方式を採用してもよい。
図10(a)は、センサ部40として磁気方式を採用した場合の流動化計測器1の斜視図であり、
図10(b)はその側面図である。
図10(b)では、本来、側面図では視認できない磁気センサ40aと磁石30aを点線で表記している。
図11は、センサ部40として磁気方式を採用した場合の回転体30の一例を挿抜治具10側から見た正面図である。
図12は、センサ部40として磁気方式を採用した場合の挿抜治具10の一例を回転体30側から見た正面図である。
図10~12では、例示として、取付位置Tを、回転体30における端部32側に設け、上述した(1)の条件で示している。但し、本変形例は、上述した(1)~(3)の条件のいずれであってもよい。
【0045】
本変形例の回転体30には、
図10(b)、
図11に示すように、面33の端部32側に、磁石30aが埋め込まれている。挿抜治具10には、
図10(b),
図12に示すように、面14側における軸部20との接続部である穴部10H周辺に、磁石30aの磁気を検出するための磁気センサ40aが複数埋め込まれている。本変形例の構成によれば、回転体30が軸部20を中心軸として回転することにより、回転体30に埋め込まれている磁石30aも軸部20を中心軸として回転する。磁石30aの回転の動きを、挿抜治具10に埋め込まれた磁気センサ40aが検出する。
【0046】
図13は、第1実施形態の変形例に係る軸部20と回転体30の接続手法の一例を示した図である。
図14は、第1実施形態の変形例に係る軸部20と回転体30の接続手法の他の例を示した図である。
図13、14は、
図4(b)と同様、A-A(
図1)断面図において、軸部20と回転体30として示している。センサ部40として磁気センサ40aを使用する場合、一例として、回転体30を軸部20に対して回動可能に接続させることが考えられる。この場合には、
図13に示すように、回転体30の穴部30Hには、軸部20の径d1よりも大きい径d2を有する貫通穴として設け、軸部20を挿通させるようにしてもよい。この場合、端部22側の接続をより確実なものとするため、径d2よりも大きな径d3として構成しておくことが好ましい。なお、回転体30を軸部20に対して回動可能に接続させる場合には、軸部20と挿抜治具10とは固定接続されることとなる。
【0047】
回転体30を軸部20に対して回動可能に接続させる他の例としては、
図14に示すように、穴部30Hを、貫通穴ではなく、径d5を有した円柱形の穴を回転体30内に設け、面33側から、この円柱形の穴まで通じる径d5よりも小さい径d2の穴を設けるようにしてもよい。ここで、端部22の径d4は、d5>d4>d2となるように構成しておく。これにより、径d4を有する端部22が回転体30の内部で回転することができ、回転体30が軸部20に対して回動可能に接続される。
図14の回転体30を得るには、例えば、幅方向W(
図11)の中心軸を基準に、回転体30を2つの部分として構成し、軸部20を2つの部分の間に挟み込んだ上で、当該2つの部分を接合させることにより回転体30が得られる。
【0048】
図15は、第1実施形態の変形例に係る挿抜治具10と軸部20の接続手法の一例を示した図である。センサ部40に磁気センサを使用する場合であって、回転体30と軸部20とを固定接続する場合には、軸部20を挿抜治具10に対して回動可能に接続させることが必要となる。この場合、
図15に示すように、軸部20の端部21側は、軸部20の軸径d1よりも大きな径d7を有するように構成し、挿抜治具10内には、径d7よりも大きな径d8を有する円柱形の穴を設け、面14側から、この円柱形の穴まで通じる径d6(d7>d6>d1)の穴を設ける。これにより、軸部20の端部21が挿抜治具10の内部で回転することができ、軸部20が挿抜治具10に対して回動可能に接続されることとなる。
図15の挿抜治具10を得るには、例えば、
図14にて既述したのと同様、挿抜治具10を2つの部分として構成し、軸部20を2つの部分の間に挟み込んだ上で、当該2つの部分を接合させることにより挿抜治具10が得られる。
【0049】
図15の形状を採用する場合、磁石30aは、回転体30内ではなく、端部21側に貼り付け、この磁石30aの磁気を検出できるような位置に磁気センサ40aを設けるようにしてもよい。
図15の場合、軸部20と回転体30とは固定接続されることから、端部21側に貼り付けられている磁石30aの回転の動きにより間接的に回転体30の回転の動きを検出することが可能となる。この場合、磁石30aの貼り付けにより、軸部20の回転により、軸部20が共振しないように配慮する必要がある。
【0050】
挿抜治具10は、
図16に示すような構成であってもよい。
図16は、挿抜治具10の構成の他の手法を示した図である。
図4や
図10では、軸部20は、挿抜治具10の端部12近傍の端部12側と接続されているが、
図16(a)に示すように、挿抜治具10の端部12から、直接に、軸部20が突出するように接続してもよい。あるいは、軸部20は、端部21側において、挿抜治具10と接続させるだけでなく、
図16(b)に示すように、挿抜治具10に相当する挿抜治具10Xを端部22側にも設け、挿抜治具10Xと端部22側とを接続するようにしてもよい。この場合、
図16(c)に示したように、挿抜治具10と、挿抜治具10Xとは、端部11側が夫々結合されて、両者が一体となるような構成としてもよい。
【0051】
<第2実施形態>
流動化計測器1において、回転体30を物質Dの比重よりも小さな比重で構成する場合には、
図17に示した流動化計測器1Aのような構成にしてもよい。例えば、物質Dが生コンクリート(比重S
0=2.3)の場合に、回転体30をポリプロピレン(比重S
1=0.9)で構成する如くである。
図17(a)は、第2実施形態に係る流動化計測器1Aの斜視図であり、
図17(b)はその側面図である。
図17(a)では、本来、斜視図では視認できない軸部20と回転体30の一部を点線で表記している。
図17(b)では、本来、側面図では視認できない磁気センサ40aと磁石30aを点線で表記している。流動化計測器1Aは、挿抜治具10Aと、軸部20と、回転体30Aと、センサ部40とを備える。センサ部40は、上述した磁気センサ方式(磁気センサ40a)を採用している。
【0052】
図18は、挿抜治具10A側から見た回転体30Aの正面図である。
図19は、回転体30A側から見た挿抜治具10Aの正面図である。
【0053】
流動化計測器1では、回転体30の穴部30Hが円形の穴形状を有していた。流動化計測器1Aでは、回転体30Aの穴部30Hの形状が、軸部20が回転体30Aの長さ方向(
図18のZ方向、-Z方向)に移動可能となるような長穴形状を有している。換言すれば、穴部30Hの形状は、軸部20の端部22側が、所定の位置(第1位置α)から、第1位置αよりも端部32側の位置(第2位置β)まで移動可能となる形状を有している。回転体30は、軸部20を回転軸として軸部20の端部22側に穴部30Hを介して回転可能に取り付けられている。なお、流動化計測器1Aでは、回転体30の回転中心から磁石30aまでの長さR
mに合わせて挿抜治具10Aの幅が広くなっており、これを
図19にW’
10として反映して示している。なお、回転体30Aは軸部20に対して回動可能に接続していることから、軸部20と挿抜治具10とは固定接続される。
【0054】
図20は、流動化計測器1Aを用いた流動化計測方法を示したフローチャートである。
図20では、
図3の挿抜治具10が挿抜治具10Aに変わり、回転体30が回転体30Aに変わり、センサ部40が磁気センサ40aに変わり、ステップS7の表記が「引き上げ」から「第2の引き上げ」へと形式上変わっている。流動化計測器1Aの流動化計測方法が、流動化計測器1の流動化計測方法と実質的に異なる点は、ステップS2-2が追加されている点である。回転体30Aは、物質Dよりも比重が小さいため、ステップS2により、流動化計測器1を物質Dの中に挿入した際に、軸部20が、穴部30Hの長穴において回転体30の端部32側に位置する状態(第2位置β)で、深さ方向に挿入されていく。即ち、回転体30Aを長穴の構成とすることにより、ステップS2による挿抜治具10Aの挿入中は、回転体30Aの回転が生じにくい状態が維持できる。
【0055】
回転体30Aを所望の計測位置に配置できた段階で、軸部20が回転体30Aの穴部30Hの端部31側(第1位置α)に移動するように、挿抜治具10Aを所定の長さだけ上に引きあげる(第1の引き上げ。ステップS2-2)。即ち、軸部20を第2位置βから第1位置αまで引き上げる。ステップS2-2を実施することにより、Rmを大きくした状態で、回転体30Aの回転を促すことできる。
【0056】
図21は、回転体30Aにおける、重心C
gと浮心C
bと軸部20との位置関係の一例を示す図である。回転体30は、端部32が端部31よりも深さ方向に深い第1姿勢を保ちつつ、その全体が物質Dの中に挿入された状態であって、軸部20の端部22側が第1位置αに位置する場合において、物質Dの流動化に伴う回転体30Aの回転により、第1姿勢から、端部31が端部32よりも深さ方向に深い第2姿勢となるよう、回転体30Aの浮心C
bの位置と、回転体30の重心C
gの位置と、第1位置αと、が構成されている。磁石30aは、回転体30Aの中でも端部32側に埋め込まれていることから、軸部20と磁石30aとの間の距離R
mを大きく確保でき、これに伴い、流動化計測器1よりも広い半径R
mとする周方向の回転移動が可能となりやすい。第1実施形態の回転体30よりも半径R
mを長く確保できる場合には、流動化計測器1Aは、回転体30Aの回転の移動を、流動化計測器1の回転体30の回転の移動よりも精度よく検出することが可能となる。
【0057】
以上、本開示の実施形態および変形例について説明した。本実施形態における物質Dは、例示として生コンクリートを用いて説明したが、物質Dは、加振または加熱により流動化するものであれば生コンクリートに限られない。例えば、加熱により流動化するカレールーなどの食料品や、その他の物質でもよい。
【0058】
また、センサ部40に磁気センサ方式を採用する場合に代えて、受光素子と発光素子の組み合わせで対応するようにしてもよい。例えば、磁石の代わりに発光素子を用い、磁気センサの代わりに受光素子とするように構成してもよい。センサ部40として加速度計を採用する場合には、回転体30に搭載し、その結果を評価部50へ送出するように構成してもよい。評価部50の機能を挿抜治具10あるいは挿抜治具10Aに備えるようにしてもよい。その他、本実施形態で説明した、挿抜治具10や、軸部20、回転体30、センサ部40は、その形状、大きさ、材質等については、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1,1A 流動化計測器
10,10A 挿抜治具
10H,30H 穴部
11,12,21,22,31,32 端部
13,14,33,34 面
20 軸部
200 型枠
30,30A 回転体
30a 磁石
310 第1部
320 第2部
40 センサ部
40a 磁気センサ
400 加振器
50 評価部
90A 上層
90B 下層
Cg 重心
Cb 浮心
d1 軸径
d2~d8 径
D 物質
Fb 浮力
Fg 重力
L,LL,Lb,Lg,Lr,Ls,Rm,W,W10 長さ
S0,S1 比重
T 取付位置
α 第1位置
β 第2位置
【要約】
【課題】物質の流動性を安定的に計測ができ、計測に用いるセンサを確実に回収する。
【解決手段】流動化計測器1は、端部11と端部12を有する挿抜治具10と、端部21と端部22を有し、端部21が挿抜治具10と接続して挿抜治具10と共に物質Dの中に挿入される軸部20と、端部31と端部32とを有し、挿抜治具10に対して軸部20を回転軸として回転可能となるように、取付位置Tにおいて端部22と接続された回転体30と、回転体の回転を検出可能なセンサ部40と、を備える。回転体30は、端部32が端部31よりも深さ方向に深い第1姿勢を保ちつつ、その全体が物質Dの中に挿入された場合において、物質Dの流動化に伴う回転により、第1姿勢から、端部31が端部32よりも深さ方向に深い第2姿勢となるよう、浮心Cb、重心Cg、取付位置T、が構成されている。
【選択図】
図4