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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】眼鏡装置
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/12 20060101AFI20240813BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20240813BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20240813BHJP
   G02C 7/08 20060101ALI20240813BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240813BHJP
   G02B 27/28 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G02C7/12
G02C7/06
G02C11/00
G02C7/08
G02B5/30
G02B27/28 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023214223
(22)【出願日】2023-12-19
【審査請求日】2023-12-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】石本 雄也
(72)【発明者】
【氏名】菊地 和博
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-323680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/12
G02C 7/06
G02C 11/00
G02C 7/08
G02B 5/30
G02B 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外光が入射され、右円偏光状態の光、及び左円偏光状態の光の一方を透過させ、他方を遮断する偏光素子と、
前記偏光素子の後段に多段に配置され、前記偏光素子から入射される光の収束と発散を切り替え可能な、n個(n:2以上の整数)の収束/発散ユニットと、を備え、
前記収束/発散ユニットは、
前記右円偏光状態、及び、前記左円偏光状態の一方から他方へと、光の偏光状態を変換させるか、又は、前記光の偏光状態を保持するかを切り替え可能な変換素子と、
前記変換素子の後段に配置され、前記右円偏光状態の光、及び前記左円偏光状態の光の一方を収束させ、他方を発散させる収束/発散素子と、を有する、
眼鏡装置。
【請求項2】
前記n個の収束/発散ユニットの光の収束と発散の切り替え入力を受け付ける受付部を備え、前記切り替え入力に基づいて、前記n個の収束/発散ユニットの光の収束と発散を切り替える、請求項1に記載の眼鏡装置。
【請求項3】
前記受付部は、ユーザの入力を受け付けるスイッチ部、又は、外部装置からの信号を受信する通信部である、請求項2に記載の眼鏡装置。
【請求項4】
前記n個の収束/発散ユニットは、互いに異なる眼鏡度数を有する、請求項1から3の何れか1項に記載の眼鏡装置。
【請求項5】
前記n個の収束/発散ユニットは、
最小の眼鏡度数を有する、1個の収束/発散ユニットと、
前記最小の眼鏡度数の2倍(m:整数、1≦m≦n-1)に対応する眼鏡度数をそれぞれ有する、他の「n-1」個の収束/発散ユニットと、を含む、請求項1から3の何れか1項に記載の眼鏡装置。
【請求項6】
前記n個の収束/発散ユニットの最小の眼鏡度数は、0.25以下である、請求項1から3の何れか1項に記載の眼鏡装置。
【請求項7】
前記複数の変換素子を制御して、
前記眼鏡装置の眼鏡度数を2段階に切り替え可能な制御部を備える、請求項1から3の何れか1項に記載の眼鏡装置。
【請求項8】
前記複数の収束/発散ユニットの後段に配置され、前記右円偏光状態の光、又は、前記左円偏光状態の光を遮断させる偏光遮断ユニットを備え、
前記偏光遮断ユニットは、
前記右円偏光状態、及び、前記左円偏光状態の一方から他方へと、光の偏光状態を変換させるか、又は、前記光の偏光状態を保持するかを切り替え可能な第2の変換素子と、
前記第2の変換素子から出射される光に含まれる、前記右円偏光状態の光、又は、前記左円偏光状態の光を遮断させる第2の偏光素子と、を有する、
請求項1から3の何れか1項に記載の眼鏡装置。
【請求項9】
前記眼鏡装置は、制御部を備え、
前記収束/発散素子は、
前記右円偏光状態、及び、前記左円偏光状態の一方の偏光状態の光を、前記右円偏光状態、及び、前記左円偏光状態の他方の偏光状態の光に変換して、収束させ、
前記他方の偏光状態の光を、前記一方の偏光状態の光に変換して、発散させ、
前記制御部は、
前記多段の収束/発散ユニットの最終段の収束/発散ユニットが、前記一方の偏光状態の光を収束させるときには、前記偏光遮断ユニットが、前記一方の偏光状態の光を遮断し、
前記最終段の収束/発散ユニットが、前記他方の偏光状態の光を発散させるときには、前記偏光遮断ユニットが、前記他方の偏光状態の光を遮断するように、
前記複数の収束/発散ユニット、及び、前記偏光遮断ユニットを制御する、請求項8に記載の眼鏡装置。
【請求項10】
前記偏光素子と前記複数の収束/発散ユニットとの間に配置される第2の収束/発散素子を備える、請求項1から3の何れか1項に記載の眼鏡装置。
【請求項11】
前記偏光素子、及び、前記複数の収束/発散ユニットの前段、後段、又は、これらの間に配置される光学レンズを備える、請求項1から3の何れか1項に記載の眼鏡装置。
【請求項12】
前記光学レンズは、可視光の波長域において、波長が大きくなると屈折率が小さくなる光学材料から構成される、請求項11に記載の眼鏡装置。
【請求項13】
前記複数の収束/発散ユニットは、人間の一対の目にそれぞれ対応する、一対の部位を有し、
前記一対の部位は、それぞれ、光学軸を有し、
前記一対の部位の前記光学軸間の距離は、前記一対の部位の幾何学的中心間の距離より小さい、請求項1から3の何れか1項に記載の眼鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1のレンズと、電圧の印加によって焦点距離が変化する第2のレンズとを有し、第2のレンズに複数の電圧値を所定の周期でステップ的に繰返し印加する、多焦点眼鏡の技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-212623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術は、多焦点の眼鏡を実現するためのものであり、ユーザの視力の変化に応じて、眼鏡の度数を切り替えることを意図するものではない。
【0005】
本発明の一態様は、度数を容易に切り替えることができる眼鏡装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る眼鏡装置は、外光が入射され、第1の偏光状態の光、又は、前記第1の偏光状態と直交する第2の偏光状態の光を透過させる偏光素子と、前記第1の偏光素子の後段に配置され、前記偏光素子から入射される光を収束、又は、発散させる収束/発散ユニットと、を備え、前記収束/発散ユニットは、前記第1の偏光状態、及び、前記第2の偏光状態の一方から他方へと、光の偏光状態を変換させるか、又は、前記光の偏光状態を保持するかを切り替え可能な変換素子と、前記変換素子の後段に配置され、前記第1の偏光状態の光を収束させ、前記第2の偏光状態の光を発散させる収束/発散素子と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、度数を容易に切り替えることができる眼鏡装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る眼鏡装置を表す斜視図である。
図2】ユーザが眼鏡装置を装着した状態の一例を表す斜視図である。
図3図2の一部を拡大して表す図である。
図4】レンズ部の構成例を表す模式図である。
図5】本発明の実施形態2に係る眼鏡装置のレンズ部を表す模式図である。
図6】本発明の実施形態2に係る眼鏡装置での眼鏡度数の切り替えの一例を表すテーブルである。
図7】本発明の実施形態3に係る眼鏡装置のレンズ部を表す模式図である。
図8】本発明の実施形態3に係る眼鏡装置での眼鏡度数の切り替えの一例を表すテーブルである。
図9】本発明の実施形態3に係る眼鏡装置のレンズ部の動作状態の一例を表す模式図である。
図10】本発明の実施形態4に係る眼鏡装置のレンズ部の動作状態の一例を表す模式図である。
図11】本発明の実施形態4に係る眼鏡装置での眼鏡度数の切り替えの一例を表すテーブルである。
図12】本発明の実施形態4に係る眼鏡装置のレンズ部の動作状態の一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る眼鏡装置10を表す斜視図である。眼鏡装置10は、フレーム20、レンズ部30、及び、制御部40を有する。
【0010】
フレーム20は、レンズ部30を保持する保持部21、ユーザ(人間)の耳に掛けるための耳当て22、ユーザの鼻に掛けるための鼻当て23を有する。
【0011】
レンズ部30は、ユーザの左右の目にそれぞれ対応するレンズ部30a、30bに区分できる。レンズ部30a、30bは、外界からの光を収束、あるいは、発散して、ユーザの目に入射させるレンズとして機能する。レンズ部30a、30bの度数(「眼鏡度数」ともいう)は、切り替え可能である。レンズ部30a、30bの詳細は後述する。
【0012】
この切り替えは、ユーザが適宜に行うことができる。例えば、眼鏡装置10は、度数切替用のスイッチ部を備えてもよい。スイッチ部は、例えば、フレーム20の横(一例として、耳当て22の箇所、又は、保持部21から耳当て22までの箇所)に設置することができる。フレーム20の横にスイッチ部を配置すると、ユーザの操作性が良好となる。すなわち、ユーザは、眼鏡を掛けて対象物を見た状態で、スイッチ部を操作して、度数を切り換えることができる。
【0013】
また、切り替えは、携帯端末(一例として、スマートホン)等の外部装置から実行可能としてもよい。例えば、眼鏡装置10は、携帯端末等の外部装置と通信可能な通信部(例えば、Bluetooth(登録商標)、WiFi(登録商標))を備え、ユーザは、携帯端末を操作して、度数を切り替えてもよい。
【0014】
さらに、スイッチ部と、携帯端末とを併用可能としてもよい。例えば、携帯端末によって、眼鏡装置10の度数の可変範囲から複数の度数をプリセットとして設定し、スイッチ部によって、設定された複数の度数を順番に切り替え可能としてもよい。例えば、後述の図6に示される度数から-3.75と1.75をプリセットとして選択(設定)し、スイッチ部によって、-3.75と1.75を交互に切り替えてもよい。この場合、携帯端末において選択した遠近両用の度数を眼鏡装置10のスイッチ部で切り替えることになる。なお、このようなプリセットの度数の設定と、度数の切り替えの双方を携帯端末で実行してもよい。
【0015】
制御部40は、眼鏡装置10、特に、レンズ部30a、30bの動作を制御する。制御部40の詳細は後述する。
【0016】
図2は、ユーザが眼鏡装置を装着した状態の一例を表す斜視図である。図3は、図2の一部を拡大して表す図である。
【0017】
ここでは、図3に示されるように、レンズ部30a、30bは、幅W、高さHの略四角形の外形を有する。例えば、幅Wは48mm、高さHは29mmである。レンズ部30a、30bは、円形状、楕円形状であってもよい。レンズ部30a、30bは、それぞれ、光学軸Aoa、Aob、幾何学的中心Cga、Cgbを有する。
【0018】
光学軸Aoa、Aobは、レンズ部30a、30bそれぞれでの光の収束、発散の中心軸を意味し、光が収束する場合、焦点を通る。光学軸Aoa、Aobとレンズ部30a、30bの交点は、光学中心Coa、Cobである。光学中心Coa、Cobは、レンズ部30a、30bの外形の、例えば、2/5程度の位置であることが好ましい。ここでは、光学中心Cobは、レンズ部30bの内側の辺から距離Dx、及び、レンズ部30bの上側の辺から距離Dyに配置される。例えば、距離Dxは20mm、距離Dyは12mmである。
【0019】
幾何学的中心Cga、Cgbは、レンズ部30a、30bを外界側から見たときのレンズ部30a、30bの中心を意味し、外界側から見たレンズ部30a、30bの面形状の中心である。
【0020】
光学軸Aoa、Aobは、一般に、ユーザ(人間)の目(瞳)の中心に対応するように設定される。すなわち、光学軸Aoa、Aobは、人間の一対の眼球の光軸と対応するように設定される。一方、幾何学的中心Cga、Cgbは、一般に、ユーザの目(瞳)の中心よりも左右の外寄りに設定される。ユーザがレンズ部30a、30bを通して、左右を広く見られるようにするためである。この結果、図2に示されるように、一対の光学軸Aoa、Aob間(又は、一対の光学中心Coa、Cob間)の距離D0は、一対の幾何学的中心Cga、Cgb間の距離Dより小さい。距離D0が距離D以上になると、ユーザがレンズ部30a、30bを通して、左右を見られる範囲が狭くなる。
【0021】
なお、この光学軸Aoa、Aob(光学中心Coa、Cob)は、レンズ部30a、30b、特に、(レンズ部30a、30bを構成する)後述の収束/発散ユニット32によって規定される。このため、(複数の)収束/発散ユニット32が、人間の一対の目にそれぞれ対応する、一対の部位(レンズ部30a、30bに対応)を有し、これら一対の部位は、それぞれ、光学軸を有するとしてもよい。
【0022】
図4は、レンズ部30(30a、30b)の構成例を表す模式図である。レンズ部30は、外界からの光L1を入射し、この光L1を収束、又は発散させて、光L2として、ユーザの目Eに入射させる。ユーザは、自己の視力に対応するように、光が収束、又は発散されることで、眼鏡装置10(レンズ部30)を介して、外界の像を明瞭に目視することができる。レンズ部30(眼鏡装置10)は、偏光素子31、及び、収束/発散ユニット32を有する。
【0023】
偏光素子31は、外光が入射され、第1の偏光状態の光、又は、前記第1の偏光状態と直交する第2の偏光状態の光を透過させる素子である。第1、第2の偏光状態は、例えば、右円偏光、左円偏光である。偏光素子31は、例えば、円偏光素子(circular polarizer、以下、「pol」とも称する)、すなわち、右円偏光を通過させる右円偏光素子(right-handed circular polarizer、以下、「R-pol」とも称する)、又は、左円偏光を通過させる左円偏光素子(left-handed circular polarizer、以下、「L-pol」とも称する)を用いることができる。円偏光素子は、例えば、直線偏光板、1/4波長板の組み合わせから構成できる。直線偏光板、1/4波長板の軸がなす角度を設定することで、右円偏光素子、又は、左円偏光素子とすることができる。
【0024】
収束/発散ユニット32は、偏光素子31の後段に配置され、偏光素子31から入射される光を収束、又は、発散させる素子である。収束/発散ユニット32は、変換素子33、収束/発散素子34を有する。
【0025】
変換素子33は、第1の偏光状態、及び、第2の偏光状態の一方から他方へと、光の偏光状態を変換させるか、又は、光の偏光状態を保持するかを切り替え可能な素子である。変換素子33は、電圧の印加によって、付与する位相差を1/2波長とゼロ波長とで切り替え可能な1/2波長板(switchable half-wave plate、以下、「sHWP」とも称する)を用いることができる。変換素子33は、右円偏光、左円偏光をそのまま通過させる透過状態(位相差:ゼロ)、右円偏光を左円偏光に変換し、左円偏光を右円偏光に変換する反転状態(位相差:1/2波長)の2つの状態を有する。このため、眼鏡装置10は、変換素子33に電圧を供給する電圧供給部を有する(図示せず)。電圧供給部は、制御部40によって制御され、変換素子33の状態(透過状態、反転状態)を切り替えることができる。
【0026】
この電圧供給部は、充電可能なバッテリーを有してよい。これにより、電源ケーブルによる、眼鏡装置10と電源との接続が不要となる。この結果、ユーザの指等が電源ケーブルに引っ掛かかり、装着する眼鏡装置10がユーザから外れることがなくなる。
【0027】
このバッテリーは、例えば、レンズ部30に近いフレーム20の横側のいずれかの位置に配置してよい。このとき、フレーム20の左右両方に、略同じ重量のバッテリーを設置してよい。これにより、眼鏡装置10の左右のバランスが確保され、眼鏡装置10を装着したユーザの快適性を向上することができる。また、眼鏡装置10の左右の重さのアンバランスに起因して、ユーザから眼鏡装置10が外れて、落下することを防止できる。
【0028】
眼鏡装置10は、電源ケーブルの接続端子を備えてもよい。バッテリーの充電量が少なくなった場合に、電源と眼鏡装置10を電源ケーブルで接続し、バッテリーを充電することができる。なお、後述のように、バッテリーの無線充電が可能であれば、電源ケーブルの接続端子は無くてもよい。
【0029】
眼鏡装置10は、バッテリーの無線充電を可能とする無線充電部を備えてもよい。ここで、フレーム20の左右にバッテリーが配置される場合、フレーム20を折り曲げて重ね合わせることで、左右のバッテリーを一度に無線充電してもよい。
【0030】
収束/発散素子34は、変換素子33の後段に配置され、第1の偏光状態の光を収束させ、第2の偏光状態の光を発散させる素子である。収束/発散素子34として、Pancharatnam-Berryレンズ(以下、「PBレンズ」とも称する)を用いることができる。PBレンズは、液晶ポリマを用いて作成できる。例えば、(1)透光性の基板上に、液晶ポリマの分子を整列するための配向膜のパターン(配向パターン)を形成し、(2)配向膜のパターン上に液晶ポリマを塗布し、紫外線(UV)等によって硬化させる。PBレンズにおいて、液晶分子は、中心が共通な複数の円周方向に周期性を有して配列される。この結果、PBレンズは、偏光回折レンズとして機能し、光を収束、又は、発散させることができる。
【0031】
本実施形態において、PBレンズは、右円偏光を収束させ、左円偏光を発散させる。より詳細には、PBレンズは、入射した右円偏光を収束する左円偏光として出射し、入射した左円偏光を発散する右円偏光として出射する。このようなPBレンズは、例えば、PBレンズにおける液晶の配向パターン、PBレンズの多層化の一方、又は双方によって、形成できる。
【0032】
以下、収束/発散素子34として、「入射した右円偏光を収束させ、入射した左円偏光を発散させる」PBレンズを例に挙げて説明する。但し、収束/発散素子34として、「入射した左円偏光を収束させ、入射した右円偏光を発散させる」PBレンズを用いることも可能である。
【0033】
ここで、PBレンズから収束する左円偏光が出射される場合、出射される光は、右円偏光をノイズ成分として含み得る。一方、PBレンズから発散する右円偏光が出射される場合、出射される光は、左円偏光をノイズ成分として含み得る。このノイズ成分は、ユーザにとって、多重像(ゴースト)の原因となる。この解消のための手法は、実施形態3において説明する。
【0034】
PBレンズは、光の波長依存性を有し得る。すなわち、PBレンズは、光の回折現象を利用していることから、光の波長が長くなると焦点距離が小さくなり(回折角が大きい)、光の波長が短くなると焦点距離が大きくなる(回折角が小さい)傾向がある。すなわち、PBレンズは、光の波長が長くなると、光の収束/発散が大きくなる。この波長依存性は、色収差、すなわち、ユーザにとって、色彩による像の滲みの原因となる。この解消のための手法は、実施形態4において説明する。
【0035】
制御部40は、レンズ部30a、30bの度数を切り替えさせる。制御部40は、例えば、ユーザからの情報の入力によって、レンズ部30a、30bの度数を切り替える。具体的には、制御部40は、変換素子33に電圧を印加する電圧印加部を制御して、変換素子33の状態、ひいては、レンズ部30a、30bの度数を切り替えさせる。制御部40は、例えば、ユーザの入力、及び、総度数と変換素子の状態の関係を表すテーブル(例えば、図6、8、11参照)によって、変換素子の状態を制御することができる。
【0036】
ここで、偏光素子31、変換素子33、収束/発散素子34がそれぞれ、左円偏光素子(L-pol)、sHWP、PBレンズであるとして、眼鏡装置10の動作を説明する。sHWPは、制御部40によって、左円偏光(及び、右円偏光)をそのまま通過させる透過状態(位相差:ゼロ)と、左円偏光を右偏光に変換し、右円偏光を左偏光に変換する反転状態(位相差:1/2波長)とが切り替えられる。
【0037】
sHWPが透過状態のとき、L-polから出射される左円偏光は、そのままPBレンズに入射され、PBレンズによって発散される。一方、sHWPが反転状態のとき、L-polから出射される左円偏光は、右円偏光に変換されてPBレンズに入射され、PBレンズによって収束される。
【0038】
以上のように、実施形態1によれば、制御部40によって、変換素子33の状態を切り替えることによって、レンズ部30での光の収束、発散を切り替え、眼鏡装置10を近視用、遠視用(又は老視用)に切り替えることができる。
【0039】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0040】
図5は、本発明の実施形態2に係る眼鏡装置10のレンズ部30を表す模式図である。実施形態2において、レンズ部30は、多段に配置されるn個(n:2以上の整数)の収束/発散ユニット32を備える。ここでは、一例として、収束/発散ユニット32の個数nを4としている。
【0041】
n個の収束/発散ユニット32は、制御部40によって、眼鏡度数の正負を切り替え可能である。n個の収束/発散ユニット32は、互いに異なる眼鏡度数を有することが好ましい。例えば、n個の収束/発散ユニットは、最小の眼鏡度数を有する、1個の収束/発散ユニット32と、最小の眼鏡度数の2倍(m:整数、1≦m≦n-1)に対応する眼鏡度数をそれぞれ有する、他の「n-1」個の収束/発散ユニットと、を含む。ここで、n個の収束/発散ユニットの最小の眼鏡度数は、例えば、0.25[D]以下としてよい。最小の眼鏡度数を0.25[D]とすることで、人間の目に適合した0.5[D]刻みでの度数の切り替えが可能となる。
【0042】
図6は、本発明の実施形態2に係る眼鏡装置での度数の切り替えの一例を表すテーブルである。制御部40は、段(1)~(4)の収束/発散ユニット32(1)~32(4)での眼鏡度数の正負を切り替えることができる。段(4)の収束/発散ユニット32(4)では、(最小の)眼鏡度数0.25[D]が正負に切り替えられる。一方、変換素子33(3)~(1)は、最小の眼鏡度数0.25[D]のそれぞれ、2倍、2倍、2倍の眼鏡度数0.5[D]、1.0[D]、2.0[D]が正負に切り替えられる。ここでは、判り易さのために、段(1)~(4)の順に度数が小さくなっているが、この順序は、適宜に変更してよい。
【0043】
制御部40は、例えば、図6に示すテーブルに基づいて、複数の変換素子33の状態(透過状態、反転状態)を切り替えることによって、眼鏡装置10(レンズ部30)の眼鏡度数を2段階に切り替えることができる。ここでは、眼鏡装置10(レンズ部30)度数(総度数)を-3.75[D]~+3.75[D]の範囲で0.5[D]刻みで切り替えることができる。この結果、近視から遠視(老視)まで、多様な視力への対応が容易となる。
【0044】
以上のように、実施形態2によれば、制御部40によって、複数の変換素子33の状態(透過状態、反転状態)を切り替えることによって、レンズ部30での度数(総度数)を多段で切り替えることができる。
【0045】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0046】
図7は、本発明の実施形態3に係る眼鏡装置10のレンズ部30を表す模式図である。ここでは、眼鏡装置10は、最終段である段(5)に偏光遮断ユニット35(5)を備える。偏光遮断ユニット35(5)は、複数の収束/発散ユニット32の後段に配置され、第1の偏光状態の光、又は、前記第2の偏光状態の光を遮断させる。
【0047】
偏光遮断ユニット35は、第2の変換素子33(5)と第2の偏光素子31(5)とを有する。第2の変換素子33(5)は、第1の偏光状態、及び、第2の偏光状態の一方から他方へと、光の偏光状態を変換させるか、又は、光の偏光状態を保持するかを切り替え可能な素子であり、前段の変換素子33と同様としてよい。
【0048】
第2の偏光素子31(5)は、第2の変換素子33(5)から出射される光に含まれる、第1の偏光状態の光、又は、第2の偏光状態の光を遮断させる素子であり、前段の偏光素子31と同様としてよい。
【0049】
本実施形態では、偏光遮断ユニット35(5)を備えることによって、二重像(ゴースト)の解消が可能となる。以下、詳細に説明する。
【0050】
既述のように、収束/発散ユニット32は、第1の偏光状態の光を収束させ、第2の偏光状態の光を発散させる特性を有する。しかし、収束/発散ユニット32から出射される光は、第1、第2の偏光状態の一方の光(信号光)に、ノイズ成分として、第1、第2の偏光状態の他方の光(ノイズ光)を含む。すなわち、次の段の収束/発散ユニット32において、信号光が収束されるときに、ノイズ光は発散され、一方、次の段の収束/発散ユニット32において、信号光が発散されるときに、ノイズ光は収束されることになる。この結果、多段の収束/発散ユニット32を通過した光は、異なる倍率(度数)で縮小拡大された像が重なり合った状態となる。すなわち、眼鏡装置10のユーザから見ると、本来の信号光の映像に加えて、ノイズ光による複数の倍率の映像が重なって見えることになり、眼鏡装置10の有用性が低下することになる。
【0051】
収束/発散素子34は、第1の偏光状態の光を、前第2の偏光状態の光に変換して、収束させ(ノイズ成分:第1の偏光状態の光)、前記第2の偏光状態の光を、第1の偏光状態の光に変換して、発散させる(ノイズ成分:第2の偏光状態の光)。
【0052】
制御部40は、次の(1)、(2)のように複数の収束/発散ユニット32、及び、偏光遮断ユニット35を制御する。
(1)多段の収束/発散ユニット32の最終段の収束/発散ユニット32が、第1の偏光状態の光を収束させるときには、この偏光遮断ユニットは、第1の偏光を遮断する。
(2)最終段の収束/発散ユニット32が、第2の偏光状態の光を発散させるときには、前記偏光遮断ユニットは、第2の偏光を遮断する。
【0053】
図8は、本発明の実施形態3に係る眼鏡装置10での度数の切り替えの一例を表すテーブルである。図9は、本発明の実施形態3に係る眼鏡装置10のレンズ部30の動作状態の一例を表す模式図である。図9は、図8のテーブルの最上段でのレンズ部30の動作状態を表す。
【0054】
以下、図8図9に基づいて、レンズ部30の動作状態を説明する。ここでは、偏光素子31、変換素子33、収束/発散素子34それぞれに左偏光素子(L-pol)、sHWP、PBレンズを用いているものとする。
【0055】
A(偏光素子31:POL)での動作状態
偏光素子31(L-pol)は、入射した光を左円偏光(L)に変換して、変換素子33(1)に入射させる。
【0056】
B(収束/発散ユニット32(1))での動作状態
変換素子33(1)(sHWP)は、左円偏光(L)をそのまま通過させ(透過状態:0)、収束/発散素子(1)(PBレンズ)は、左円偏光(L)を右円偏光(R)に変換して、発散させ、変換素子33(2)に入射させる。
【0057】
C(収束/発散ユニット32(2))での動作状態
変換素子33(2)(sHWP)は、右円偏光(R)を左円偏光(L)に変換し(反転状態:1)、収束/発散素子(2)は、左円偏光(L)を右円偏光(R)に変換して、発散させ、変換素子33(3)に入射させる。
【0058】
D(収束/発散ユニット32(3))での動作状態
変換素子33(3)(sHWP)は、右円偏光(R)を左円偏光(L)に変換し(反転状態:1)、収束/発散素子(3)は、左円偏光(L)を右円偏光(R)に変換して、発散させ、変換素子33(4)に入射させる。
【0059】
E(収束/発散ユニット32(4))での動作状態
変換素子33(4)(sHWP)は、右円偏光(R)を左円偏光(L)に変換し(反転状態:1)、収束/発散素子(4)は、左円偏光(L)を右円偏光(R)に変換して、発散させ、変換素子33(5)に入射させる。
【0060】
F(偏光遮断ユニット35(5))での動作状態
変換素子33(4)(sHWP)は、右円偏光(R)を左円偏光(L)に変換し(反転状態:1)、偏光素子31(5)は、左円偏光(L)を通過させ、右円偏光(R)を遮断する。この結果、変換素子33(4)(さらに、変換素子33(1)~33(3))からの出射光に含まれるノイズ成分(左円偏光)が除去され、多重像が解消される。
【0061】
ここでは、制御部40は、収束/発散ユニット32(1)~32(4)の全てで光が発散されるように変換素子33(1)~33(4)を制御し、変換素子33(1)~33(4)からのノイズ成分がカットされるように、変換素子33(5)を制御する。
【0062】
以上のように、実施形態3によれば、偏光遮断ユニット35によって、変換素子33(4)からの出射光に含まれるノイズ成分(左円偏光)が除去され、多重像(ゴースト)が解消される。
【0063】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0064】
図10は、本発明の実施形態4に係る眼鏡装置10のレンズ部30の動作状態の一例を表す模式図である。ここでは、レンズ部30(眼鏡装置10)は、偏光遮断ユニット35を備える。レンズ部30(眼鏡装置10)は、偏光素子31と複数の収束/発散ユニット32との間に配置される第2の収束/発散素子34(0)も備える。この第2の収束/発散素子34(0)は、制御部40に制御されないオフセットレンズとして機能する。
【0065】
図10では、偏光素子31を左円偏光素子(L-pol)としている。この結果、第2の収束/発散素子34(0)がPBレンズである場合に、負のオフセットがもたらされる。
【0066】
図11は、本発明の実施形態5に係る眼鏡装置での度数の切り替えの一例を表すテーブルである。制御部40は、このテーブルに従って、変換素子33(1)~33(5)を制御する。この結果、-2D±3.75Dの範囲で、度数を変化させることができる。また、偏光遮断ユニット35(5)によって、多重像(ゴースト)が解消される。
【0067】
図12は、本発明の実施形態4に係る眼鏡装置10のレンズ部30の動作状態の他の例を表す模式図である。図12では、偏光素子31を右円偏光素子(R-pol)としているため、正のオフセットがもたらされる。この結果、+2D±3.75Dの範囲で、度数を変化させることができる。また、偏光遮断ユニット35(5)によって、多重像(ゴースト)が解消される。
【0068】
以上のように、実施形態4によれば、偏光素子31と複数の収束/発散ユニット32との間に配置される第2の収束/発散素子34(0)によって、度数のオフセットを設定できる。
【0069】
〔実施形態5〕
本発明の実施形態5について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0070】
本発明の実施形態5において、レンズ部30(眼鏡装置10)は、偏光素子31、及び、複数の収束/発散ユニット32の前段、後段、又は、これらの間に配置される光学レンズを備える。光学レンズは、可視光の波長域において、波長が長くなると屈折率が小さくなる光学材料から構成される。
【0071】
既述のように、PBレンズは、波長が長くなると光の収束/発散が大きくなる波長依存性を有し、色彩による像の滲みの原因となる。これに対して、光学レンズは、波長が長くなると屈折率が小さくなり、その結果、PBレンズの波長依存性を打ち消す方向に作用する。光学レンズの波長依存性は、アッベ数によって規定され、アッベ数が小さくなると屈折率の波長依存性が大きくなる。このため、アッベ数がある程度小さい光学材料を光学レンズに用いることが考えられる。この光学材料の一例として、アッベ数が25~30程度のPC(ポリカーボネート)を挙げることができる。
【0072】
以上のように、実施形態5によれば、可視光の波長域において、波長が長くなると屈折率が小さくなる光学材料からなる光学レンズを用いることで、PBレンズの波長依存性を打ち消し、PBレンズの色収差をキャンセルできる。
【0073】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る眼鏡装置は、外光が入射され、第1の偏光状態の光、又は、前記第1の偏光状態と直交する第2の偏光状態の光を透過させる偏光素子と、前記偏光素子の後段に配置され、前記偏光素子から入射される光を収束、又は、発散させる収束/発散ユニットと、を備え、前記収束/発散ユニットは、前記第1の偏光状態、及び、前記第2の偏光状態の一方から他方へと、光の偏光状態を変換させるか、又は、前記光の偏光状態を保持するかを切り替え可能な変換素子と、前記変換素子の後段に配置され、前記第1の偏光状態の光を収束させ、前記第2の偏光状態の光を発散させる収束/発散素子と、を有する。
【0074】
上記の構成によれば、レンズ部での光の収束、発散を切り替え、眼鏡装置を近視用、遠視用(又は老視用)に切り替えることができる。
【0075】
本発明の態様2に係る眼鏡装置は、上記態様1において、多段に配置されるn個(n:2以上の整数)の前記収束/発散ユニットを備えてもよい。上記の構成によれば、レンズ部での度数(総度数)を多段で切り替えることができる。
【0076】
本発明の態様3に係る眼鏡装置は、上記態様2において、前記n個の収束/発散ユニットは、眼鏡度数の正負を切り替え可能であってもよい。レンズ部での度数(総度数)の正負を切り替えることができる。
【0077】
本発明の態様4に係る眼鏡装置は、上記態様2又は3において、前記n個の収束/発散ユニットは、互いに異なる眼鏡度数を有してよい。これにより、切り替えることができるレンズ部での眼鏡度数(総度数)の段数を大きくすることができる。
【0078】
本発明の態様5に係る眼鏡装置は、上記態様2~4の何れかにおいて、前記n個の収束/発散ユニットは、最小の眼鏡度数を有する、1個の収束/発散ユニットと、前記最小の眼鏡度数の2倍(m:整数、1≦m≦n-1)に対応する眼鏡度数をそれぞれ有する、他の「n-1」個の収束/発散ユニットと、を含む。これにより、変化させることができる眼鏡度数の幅を大きくすることができる。
【0079】
本発明の態様6に係る眼鏡装置は、上記態様2~5の何れかにおいて、前記n個の収束/発散ユニットの最小の眼鏡度数は、0.25以下である。これにより、人間の視力に対応して、眼鏡度数を0.5[D]毎に適宜に切り替えることができる。
【0080】
本発明の態様7に係る眼鏡装置は、上記態様2~6の何れかにおいて、前記複数の変換素子を制御して、前記眼鏡装置の眼鏡度数を2段階に切り替え可能な制御部を備える。制御部は、例えば、ユーザの入力、及び、総度数と変換素子の状態の関係を表すテーブルによって、変換素子の状態を制御する。
【0081】
本発明の態様8に係る眼鏡装置は、上記態様2~7の何れかにおいて、前記複数の収束/発散ユニットの後段に配置され、前記第1の偏光状態の光、又は、前記第2の偏光状態の光を遮断させる偏光遮断ユニットを備え、前記偏光遮断ユニットは、前記第1の偏光状態、及び、前記第2の偏光状態の一方から他方へと、光の偏光状態を変換させるか、又は、前記光の偏光状態を保持するかを切り替え可能な第2の変換素子と、前記第2の変換素子から出射される光に含まれる、前記第1の偏光状態の光、又は、前記第2の偏光状態の光を遮断させる第2の偏光素子と、を有する。これにより、偏光遮断ユニットによって、ノイズ光を遮断し、多重像(ゴースト)を低減することが可能となる。
【0082】
本発明の態様9に係る眼鏡装置は、上記態様8において、前記眼鏡装置は、制御部を備え、前記収束/発散素子は、前記第1の偏光状態の光を、前記第2の偏光状態の光に変換して、収束させ、前記第2の偏光状態の光を、前記第1の偏光状態の光に変換して、発散させ、前記制御部は、前記多段の収束/発散ユニットの最終段の収束/発散ユニットが、前記第1の偏光状態の光を収束させるときには、前記偏光遮断ユニットが、前記第1の偏光を遮断し、前記最終段の収束/発散ユニットが、前記第2の偏光状態の光を発散させるときには、前記偏光遮断ユニットが、前記第2の偏光を遮断するように、前記複数の収束/発散ユニット、及び、前記偏光遮断ユニットを制御する。これにより、制御部が複数の収束/発散ユニット、及び、偏光遮断ユニットを制御することによって、多重像(ゴースト)をより確実に低減することが可能となる。
【0083】
本発明の態様10に係る眼鏡装置は、上記態様2~9の何れかにおいて、前記偏光素子と前記複数の収束/発散ユニットとの間に配置される第2の収束/発散素子を備える。これにより、第2の収束/発散素子をオフセットレンズとして機能させることができる。
【0084】
本発明の態様11に係る眼鏡装置は、上記態様2~10の何れかにおいて、前記偏光素子、及び、前記複数の収束/発散ユニットの前段、後段、又は、これらの間に配置される光学レンズを備える。光学レンズによって、収束/発散ユニットの波長特性をキャンセルすることが可能となる。
【0085】
本発明の態様12に係る眼鏡装置は、上記態様10において、前記光学レンズは、可視光の波長域において、波長が大きくなると屈折率が小さくなる光学材料から構成される。これにより、収束/発散ユニットの波長特性をより確実にキャンセルすることが可能となる。
【0086】
本発明の態様13に係る眼鏡装置は、上記態様1~12の何れかにおいて、前記複数の収束/発散ユニットは、人間の一対の目にそれぞれ対応する、一対の部位を有し、前記一対の部位は、それぞれ、光学軸を有し、前記一対の部位の前記光学軸間の距離は、前記一対の部位の幾何学的中心間の距離より小さい。これにより、ユーザは、眼鏡装置を介して、左右を広く見ることが可能となる。
【0087】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0088】
10 眼鏡装置
20 フレーム
21 保持部
30、30a、30b レンズ部
31 偏光素子
32 収束/発散ユニット
33 変換素子
34 収束/発散素子
35 偏光遮断ユニット
40 制御部
【要約】
【課題】度数を容易に切り替えることができる眼鏡装置を実現する
【解決手段】眼鏡装置(10)は、外光が入射され、第1の偏光状態の光、又は、前記第1の偏光状態と直交する第2の偏光状態の光を透過させる偏光素子(31)と、前記第1の偏光素子の後段に配置され、前記偏光素子から入射される光を収束、又は、発散させる収束/発散ユニット(32)と、を備え、前記収束/発散ユニットは、前記第1の偏光状態、及び、前記第2の偏光状態の一方から他方へと、光の偏光状態を変換させるか、又は、前記光の偏光状態を保持するかを切り替え可能な変換素子(33)と、前記変換素子の後段に配置され、前記第1の偏光状態の光を収束させ、前記第2の偏光状態の光を発散させる収束/発散素子(34)と、を有する。
【選択図】図1
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図2
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図6
図7
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図10
図11
図12