(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】容器詰紅茶飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/16 20060101AFI20240813BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20240813BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A23F3/16
A23L2/38 P
A23L2/56
(21)【出願番号】P 2023222688
(22)【出願日】2023-12-28
【審査請求日】2024-01-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】千葉 彩香
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 藍
(72)【発明者】
【氏名】大河内 蘭
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-198814(JP,A)
【文献】特開2022-116143(JP,A)
【文献】茶の科学,初版第8刷,1997年,pp.100-101
【文献】七訂 食品成分表 2016 本表編,初版第1刷,2016年,pp.210-213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
A23L
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料であって、さらに、以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たす前記容器詰紅茶飲料。
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
【請求項2】
牛乳、加工乳、濃縮乳、脱脂粉乳、全粉乳、調製粉乳、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質精製物、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質精製物、カゼインタンパク質濃縮物、及び、カゼインタンパク質精製物からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、請求項1に記載の容器詰紅茶飲料。
【請求項3】
乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するヘキサナール含有濃度(ppb)の比率が4.2~6670であるか、または、乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するゲラニオール含有濃度(ppb)の比率が4.2以上である、請求項1又は2に記載の容器詰紅茶飲料。
【請求項4】
乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料の製造方法であって、前記容器詰紅茶飲料がさらに以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製することを特徴とする、前記製造方法。
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
【請求項5】
容器詰紅茶飲料が、牛乳、加工乳、濃縮乳、脱脂粉乳、全粉乳、調製粉乳、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質精製物、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質精製物、カゼインタンパク質濃縮物、及び、カゼインタンパク質精製物からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
容器詰紅茶飲料における、乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するヘキサナール含有濃度(ppb)の比率が4.2~6670であるか、または、乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するゲラニオール含有濃度(ppb)の比率が4.2以上である、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料における獣臭を抑制する方法であって、前記容器詰紅茶飲料がさらに以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製することを特徴とする、前記方法。
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
【請求項8】
容器詰紅茶飲料が、牛乳、加工乳、濃縮乳、脱脂粉乳、全粉乳、調製粉乳、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質精製物、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質精製物、カゼインタンパク質濃縮物、及び、カゼインタンパク質精製物からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
容器詰紅茶飲料における、乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するヘキサナール含有濃度(ppb)の比率が4.2~6670であるか、または、乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するゲラニオール含有濃度(ppb)の比率が4.2以上である、請求項7又は8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰紅茶飲料、及びその製造方法等に関する。より詳細には、乳タンパク質を含有し、無糖(糖類含有濃度 0.5g/100mL 未満)の紅茶飲料における乳タンパク質に由来して発生する獣臭(以下、本明細書において単に「獣臭」とも表示する)を抑制した容器詰紅茶飲料及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ミルクティーは、一般的に紅茶の茶葉の抽出液と、牛乳などの乳成分を混合し調製される乳成分入り紅茶飲料である。ミルクティーは、近年は、缶詰、ペットボトル詰、又は紙パック等の容器詰飲料として、流通に供されている。ミルクティーは、紅茶の独特な香気と、苦味、渋味をもつ味覚、及び牛乳等の乳成分のもつ甘み等の味覚から、嗜好の面から或いは健康志向の面から、茶飲料の中でも特に愛用されている飲料の一つである。
【0003】
一方、これらの容器詰め飲料は、大量生産に適応させるため、工業的方法で抽出工程を行い、また長期保存に耐えられるように微生物安定性を高めるため、強い殺菌を行う必要がある。その結果、その工業的製造工程及び殺菌工程により、香気の散逸、加熱による香味の劣化を伴い、家庭や喫茶店にて急須などで淹れたお茶と比べて十分に満足のいく風味の製品を得ることが困難であった。
【0004】
他方、ヘキサナール(hexanal)は、鎖状脂肪族アルデヒドの一種で、化学式C6H12Oで表される物質であり、大豆や草などの青臭い芳香の原因として知られている。また、ゲラニオール(geraniol)は、直鎖モノテルペノイドの一種で、化学式C10H18Oで表される物質であり、バラ様の芳香を持つことが知られている。特許文献1には、フレッシュな風味を損なう酸化臭や青臭い香気を呈するヘキサナール及び2,4-ヘプタジエナールを所定の含有量(20.0ppb以下、好ましくは0~10.0ppb)に制限した烏龍茶飲料が開示されている。
【0005】
一方、乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料において、前記容器詰紅茶飲料がさらに以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製することによって、「獣臭」を抑制できることはこれまでに知られていなかった。
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、乳タンパク質を含有し、無糖の紅茶飲料における乳タンパク質に由来して発生する獣臭が抑制された容器詰紅茶飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討した結果、乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料において、前記容器詰紅茶飲料がさらに以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように前記容器詰紅茶飲料を調製することによって、前述の容器詰紅茶飲料としての香味調和を保持しつつ、「獣臭」を抑制できることを見いだし、
本発明を完成するに至った。
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
なお、ヘキサナールは好ましくない臭いの原因としても知られている香気成分であるため、前述の容器詰紅茶飲料を上記の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製することによって、前述の容器詰紅茶飲料としての香味調和を保持しつつ、上記の獣臭を抑制できることは、当業者によって予想外であった。
【0009】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料であって、さらに、以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たす前記容器詰紅茶飲料;
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
(2)牛乳、加工乳、濃縮乳、脱脂粉乳、全粉乳、調製粉乳、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質精製物、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質精製物、カゼインタンパク質濃縮物、及び、カゼインタンパク質精製物からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、上記(1)に記載の容器詰紅茶飲料;
(3)乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するヘキサナール含有濃度(ppb)の比率が4.2~6670であるか、または、乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するゲラニオール含有濃度(ppb)の比率が4.2以上である、上記(1)又は(2)に記載の容器詰紅茶飲料;
(4)乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料の製造方法であって、前記容器詰紅茶飲料がさらに以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製することを特徴とする、前記製造方法;
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
(5)容器詰紅茶飲料が、牛乳、加工乳、濃縮乳、脱脂粉乳、全粉乳、調製粉乳、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質精製物、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質精製物、カゼインタンパク質濃縮物、及び、カゼインタンパク質精製物からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、上記(4)に記載の製造方法;
(6)容器詰紅茶飲料における、乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するヘキサナール含有濃度(ppb)の比率が4.2~6670であるか、または、乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するゲラニオール含有濃度(ppb)の比率が4.2以上である、上記(4)又は(5)に記載の製造方法;
(7)乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料における獣臭を抑制する方法であって、前記容器詰紅茶飲料がさらに以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製することを特徴とする、前記方法;
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
(8)容器詰紅茶飲料が、牛乳、加工乳、濃縮乳、脱脂粉乳、全粉乳、調製粉乳、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質精製物、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質精製物、カゼインタンパク質濃縮物、及び、カゼインタンパク質精製物からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、上記(7)に記載の方法;
(9)容器詰紅茶飲料における、乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するヘキサナール含有濃度(ppb)の比率が4.2~6670であるか、または、乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するゲラニオール含有濃度(ppb)の比率が4.2以上である、上記(7)又は(8)に記載の方法;
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乳タンパク質を含有し、無糖の紅茶飲料における乳タンパク質に由来して発生する獣臭が抑制された容器詰紅茶飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
[1]乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料であって、さらに、以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たす前記容器詰紅茶飲料(以下、「本発明の紅茶飲料」とも表示する。);
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
[2]乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料の製造方法であって、前記容器詰紅茶飲料がさらに以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製することを特徴とする、前記製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
[3]乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料における獣臭を抑制する方法であって、前記容器詰紅茶飲料がさらに以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製することを特徴とする、前記方法(以下、「本発明の抑制方法」とも表示する。);
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
等を含む。
【0012】
(紅茶飲料)
本発明の紅茶飲料には、紅茶抽出物と乳タンパク質は含まれるが、牛乳は含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。紅茶飲料が牛乳を含んでいる場合、紅茶飲料における牛乳の含有濃度としては特に制限されず、0.03~15質量%、0.07~15質量%、0.1~15質量%、0.2~12.5質量%、0.3~12質量%、1~10質量%が挙げられ、乳タンパク質の含有濃度の高さのわりに、糖類の濃度を低めに設定すること等が可能となることなどから、牛乳の含有濃度としては、好ましくは10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.8質量%以下、0.6質量%以下、0.4質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下、0.07質量%以下、0.03質量%以下が挙げられ、より好ましくは0質量%が挙げられる。これらの下限値及び上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。一般に、牛乳の含有濃度が低い紅茶飲料は、牛乳の含有濃度が高い紅茶飲料と比較して飲みごたえが低いところ、乳タンパク質を添加することで、飲みごたえを補填することができる。
【0013】
(紅茶抽出物)
紅茶飲料には紅茶抽出物が含まれる。本明細書において、「紅茶抽出物」とは、紅茶葉を抽出処理に供することにより得られる抽出物を意味する。また、本明細書において紅茶抽出物には、紅茶葉からの抽出液(紅茶抽出液)それ自体や、その加工品類(例えば、紅茶抽出液を濃縮処理や粉末化処理等した紅茶抽出物エキス)等が含まれる。紅茶飲料中のタンニン濃度としては、10mg/100mL 以上である限り、特に制限されず、10mg/100mL~200mg/100mL、20mg/100mL~180mg/100mL、20mg/100mL~150mg/100mL、30mg/100mL~120mg/100mL、40mg/100mL~100mg/100mL、40mg/100mL~80mg/100mLを好ましく挙げることができる。
【0014】
紅茶抽出物の原料として利用できる紅茶葉は特に限定されず、例えばCamelliasinensisの中国種(var.sinensis)、アッサム種(var.assamica)又はそれらの雑種から得られる茶葉から発酵工程を経て製茶されたものが挙げられる。茶期、茶葉の形状、産地、品種、等級、及び発酵条件等も特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。また、紅茶葉を抽出する際の茶葉の量、溶媒の量、抽出温度、抽出時間等の条件も特に限定されず、通常紅茶葉を抽出する際の条件を用いることができる。
【0015】
(乳タンパク質)
本明細書において、「乳タンパク質」とは、牛乳、山羊乳、羊乳などの、動物の乳由来のタンパク質を意味し、便宜上、乳タンパク質の加水分解物である乳ペプチドも包含する。乳タンパク質として、具体的には、カゼインタンパク質、ホエイタンパク質、及び、これらの加水分解物が挙げられる。上記のホエイタンパク質としては、アルブミン、ラクトグロブリン、ラクトフェリンなどが挙げられる。
【0016】
本発明の紅茶飲料における乳タンパク質の含有濃度としては、0.3質量%以上であれば特に限定されないが、獣臭がより強くなり、本発明の意義がより大きくなる観点、及び、紅茶飲料の飲みごたえのよさの観点から、下限値として、好ましくは0.33質量%以上、0.36質量%以上、0.39質量%以上、0.6質量%以上が挙げられ、上限値として、例えば2.0質量%以下、1.5質量%以下、1.2質量%以下が挙げられる。これらの下限値及び上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。
【0017】
本発明において、紅茶飲料中の乳タンパク質濃度は、例えば、乳タンパク質又は乳タンパク質含有組成物を紅茶飲料に含有させる量を調整すること等により調整することができる。乳タンパク質や乳タンパク質含有組成物は市販されているものを用いることができる。乳タンパク質含有組成物としては、乳タンパク質を含有する組成物である限り、特に制限されないが、例えば糖類の濃度を一定濃度以下に調整する場合などは、乳タンパク質含有組成物として、乾燥質量で40質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上が乳タンパク質である組成物を用いることが好ましい。乳タンパク質又は乳タンパク質含有組成物としては、牛乳、加工乳、濃縮乳、脱脂粉乳、全粉乳、調製粉乳、乳タンパク質濃縮物、乳タンパク質精製物、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質精製物、カゼインタンパク質濃縮物、及び、カゼインタンパク質精製物からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられ、乳タンパク質濃度が高いことから、乳タンパク質濃縮物(MPC)、乳タンパク質精製物、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質精製物、カゼインタンパク質濃縮物、及び、カゼインタンパク質精製物からなる群から選択される1種又は2種以上が好ましく挙げられる。
【0018】
紅茶飲料中の乳タンパク質の測定は公知の方法で行うことができ、例えばケルダール法、デュマ法及びこれらの改変型・改良型にて行うことができる(例えば、「五訂 日本食品標準成分表 分析マニュアルの解説」(財団法人日本食品分析センター(編)、中央法規出版)を参照)。また、ケルダール法に用いる分解促進剤等の試薬には市販品を適宜用いることができる。また測定機については市販品を用いることができる。
【0019】
(ヘキサナール)
本発明の紅茶飲料のうち、上記の(a)又は(c)の条件を満たす態様の本発明の紅茶飲料は、ヘキサナールを特定濃度で含有する。これにより、乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である紅茶飲料における、乳タンパク質に由来して発生する獣臭を抑制することができる。ヘキサナールは、鎖状脂肪族アルデヒドの一種で、化学式C6H12Oで表される物質である。上記の(a)又は(c)の条件を満たす態様の本発明の紅茶飲料中のヘキサナールの含有濃度としては、5~2000ppbが挙げられ、下限値としては、獣臭に対する抑制効果をより多く得る観点から、好ましくは10ppb以上、20ppb以上、好ましくは50ppb以上、より好ましくは100ppb以上、500ppb以上が挙げられ、上限値としては、ヘキサナールに由来する風味の程度が強くなり過ぎないようにする観点から、2000ppb以下が挙げられ、好ましくは1000ppb以下が挙げられる。これらの下限値及び上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、また、(a)の条件におけるヘキサナールの下限値及び上限値と、(c)の条件におけるヘキサナールの下限値及び上限値はそれぞれ異なる数値であってもよい。
【0020】
本発明の紅茶飲料のうち、上記の(a)又は(c)の条件を満たす態様の本発明の紅茶飲料においては、乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するヘキサナール含有濃度(ppb)の比率(ヘキサナール含有濃度/乳タンパク質含有濃度)は、特に限定されないが、例えば4.2~6670であり、好ましくは8.3~3330、より好ましくは16.7~1670が挙げられる。
【0021】
本発明の紅茶飲料中のヘキサナールの含有濃度は、公知のGC-MS法にて測定することができる。ただし、本発明においては、カラムに高極性カラム(アジレントテクノロジーズ社製、DB-WaxUI)、抽出法に固相マイクロ抽出法(CTCアナリティクス社製、SPME-Arrow Carbon WR/PDMS)、検出器に高分解能質量分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Q Exactive GC Orbitrap)を好適に用いることができる。
【0022】
上記の(a)又は(c)の条件を満たす態様の本発明で用いるヘキサナールは、特に限定されないが、精製品の他、粗製品であってもよい。例えば、ヘキサナールを含有する天然物又はその加工品(植物抽出物、精油、植物の発酵物、これらの濃縮物等)であってもよい。より具体的な例として、ヘキサナールを含有する香料の他、エキス等を挙げることができる。原料として紅茶飲料への添加量が少量で済むことから、ヘキサナールを含有する香料の使用が好ましい一例である。
【0023】
(ゲラニオール)
本発明の紅茶飲料のうち、上記の(b)又は(c)の条件を満たす態様の本発明の紅茶飲料は、ゲラニオールを含有する。これにより、乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である紅茶飲料における、乳タンパク質に由来して発生する獣臭を抑制することができる。ゲラニオールは、直鎖モノテルペノイドの一種で、化学式C10H18Oで表される物質である。
上記の(b)の条件を満たす態様の本発明の紅茶飲料中のゲラニオールの含有濃度としては、5ppb以上、10ppb以上が挙げられ、下限値としては、獣臭に対する抑制効果をより多く得る観点から、好ましくは20ppb以上、より好ましくは50ppb以上、100ppb以上、さらにより好ましくは500ppb以上が挙げられ、上限値としては、特に制限されないが、ゲラニオールに由来する風味の程度を制御する場合には、例えば10000ppb以下、9000ppb以下、8000ppb以下、7000ppb以下、6000ppb以下、5000ppb以下が挙げられる。これらの下限値及び上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。
また、上記の(c)の条件を満たす態様の本発明の紅茶飲料中のゲラニオールの含有濃度としては、2~2000ppbが挙げられ、下限値としては、獣臭に対する抑制効果をより多く得る観点から、好ましくは5ppb以上、より好ましくは10ppb以上、さらに好ましくは20ppb以上、さらにより好ましくは50ppb以上が挙げられ、より好ましくは100ppb以上が挙げられ、上限値としては、ゲラニオールに由来する風味の程度が強くなり過ぎないようにする観点から、2000ppb以下が挙げられ、好ましくは1000ppb以下が挙げられる。これらの下限値及び上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。
また、(b)の条件におけるゲラニオールの下限値(及び上限値を設定する場合は上限値)と、(c)の条件におけるゲラニオールの下限値及び上限値はそれぞれ異なる数値であってよい。
【0024】
本発明の紅茶飲料のうち、上記の(b)又は(c)の条件を満たす態様の本発明の紅茶飲料においては、乳タンパク質含有濃度(質量%)に対するゲラニオール含有濃度(ppb)の比率(ゲラニオール含有濃度/乳タンパク質含有濃度)は、特に限定されないが、例えば4.2以上が挙げられ、好ましくは4.2~6670であり、より好ましくは8.3~3330、さらに好ましくは16.7~1670が挙げられる。
【0025】
本発明の紅茶飲料中のゲラニオールの含有濃度は、公知のGC-MS法にて測定することができる。ただし、本発明においては、カラムに高極性カラム(アジレントテクノロジーズ社製、DB-WaxUI)、抽出法に固相マイクロ抽出法(CTCアナリティクス社製、SPME-Arrow Carbon WR/PDMS)、検出器に高分解能質量分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Q Exactive GC Orbitrap)を好適に用いることができる。
【0026】
上記の(b)又は(c)の条件を満たす態様の本発明で用いるゲラニオールは、特に限定されないが、精製品の他、粗製品であってもよい。例えば、ゲラニオールを含有する天然物又はその加工品(植物抽出物、精油、植物の発酵物、これらの濃縮物等)であってもよい。より具体的な例として、ゲラニオールを含有する香料の他、エキス等を挙げることができる。原料として紅茶飲料への添加量が少量で済むことから、ゲラニオールを含有する香料の使用が好ましい一例である。
【0027】
(任意成分)
本発明の紅茶飲料は、例えば、酸味料、色素、甘味料、酸化防止剤(ビタミンC等)、保存料、増粘安定剤、乳化剤、植物油脂、及び、pH調整剤(重曹など)のいずれか1つ又は2つ以上を含んでいなくてもよいが、含んでいてもよい。また、本発明の紅茶飲料は豆乳を含んでいてもよいが、含んでいなくてもよい。
【0028】
上記の「甘味料」としては、果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖、乳糖、トレハロース、麦芽糖、ショ糖等の二糖、粉末水あめ中の単糖、二糖等といった結晶性糖類;や、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖;水あめ、異性化液糖(例えば果糖ブドウ糖液糖)等の非結晶性糖類;マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール;スクラロース、ステビア、甘草抽出物、ソーマチン、グリチルリチン、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK等の高甘味度甘味料;を挙げることができ、甘味の自然さの観点から、糖類(結晶性糖類及び非結晶性糖類)が好ましく挙げられ、また、カロリーの低さの観点から、糖アルコールや高甘味度甘味料が好ましく挙げられる。甘味料を用いる場合、本発明の飲料における甘味料の濃度としては特に制限されないが、甘味料が糖類である場合は、例えば0.5g/100mL 未満、0.4質量%以下、0.05~0.4質量%、0.1~0.4質量%、0.1~0.35質量%が挙げられる。糖類濃度(牛乳に含まれる乳糖も含む)が0.5g/100mL未満であれば、「無糖」と表示することができる。なお、本明細書における糖類には、牛乳を配合した場合に牛乳に含まれる乳糖も包含され、本明細書における糖類濃度には、かかる乳糖も考慮する。また、甘味料が糖アルコールや高甘味度甘味料の場合、ショ糖換算の甘味度で0.5質量%未満や、0.4質量%以下、0.05~0.4質量%、0.1~0.4質量%、0.1~0.35質量%となる濃度が挙げられる。また、本明細書における甘味度は、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料を考慮した甘味度であってもよいし、さらに糖類を考慮した甘味度であってもよい。なお、糖類濃度が0.5g/100mL未満である場合や、ショ糖換算の甘味度が0.5質量%未満である場合は、糖類濃度が高い場合や甘味度が高い場合と比較して、獣臭が目立ちやすいため、本発明の意義がより大きくなる。
【0029】
(本発明の紅茶飲料)
本発明の紅茶飲料としては、乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料であって、さらに、以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たしていること以外は、用いる製造原料、製造方法並びに製造条件において、通常の容器詰紅茶飲料と特に相違する点はない。
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
また、「ヘキサナール」、「ゲラニオール」又は、「ヘキサナール及びゲラニオール」の添加時期は、加熱殺菌前後のいずれの段階でもよいが、加熱殺菌前が好ましい。また、加熱殺菌処理の方法や条件としては、容器詰飲料などの飲料に使用される通常の方法や条件を用いることができる。
【0030】
本発明の飲料は、容器詰飲料である。かかる容器としては、ペットボトル、ポリプロピレンボトル、ポリ塩化ビニルボトル等の樹脂ボトル容器;ビン容器;缶容器;紙容器;等の容器が挙げられる。
【0031】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法としては、乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料の製造方法であって、前記容器詰紅茶飲料がさらに以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製することを特徴とする、前記製造方法である限り特に制限されない。
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
【0032】
本発明の紅茶飲料は、乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料の製造方法であって、前記容器詰紅茶飲料がさらに上記の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製すること以外は、容器詰紅茶飲料の一般的な製造方法により製造することができる。容器詰紅茶飲料の一般的な製造方法は公知であり、例えば、紅茶抽出液を調製し、調合工程、充填工程、加熱殺菌工程を経て紅茶飲料を製造することができる。本発明の紅茶飲料の製造においては、前述の任意成分を添加してもよく、これら任意成分の添加時期は特に制限されない。
【0033】
本発明における「ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbとなるように調製する」方法としては、本発明の紅茶飲料において、ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbとなるように、製造工程のいずれかで、ヘキサナール、又はヘキサナール含有組成物を紅茶飲料に含有させる方法が挙げられ、例えば、乳タンパク質含有紅茶抽出液に、ヘキサナール、又はヘキサナール含有組成物を含有させる方法が挙げられる。
【0034】
本発明における「ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上となるように調製する」方法や、「ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbとなるように調製する」方法としては、本発明の紅茶飲料において、ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上又は2~2000ppbとなるように、製造工程のいずれかで、ゲラニオール、又はゲラニオール含有組成物を紅茶飲料に含有させる方法が挙げられ、例えば、乳タンパク質含有紅茶抽出液に、ゲラニオール、又はゲラニオール含有組成物を含有させる方法が挙げられる。
【0035】
本発明の製造方法においては、任意成分として、例えば、酸味料、色素、甘味料、酸化防止剤(ビタミンC等)、保存料、増粘安定剤、乳化剤、植物油脂、及び、pH調整剤(重曹など)のいずれか1つ又は2つ以上をさらに含有させてもよい。また、本発明の製造方法において、豆乳を含有させてもよいが、含有させなくてもよい。また、本発明の製造方法においては、本発明の飲料を製造し得る限り、製造原料を含有させる順序等は特に制限されない。製造原料が混合されている液を調製した後、容器に充填して密封し、本発明の飲料を得ることができる。
【0036】
(加熱殺菌)
本発明の製造方法は、紅茶飲料を加熱殺菌する工程を含むことが好ましい。かかる加熱殺菌する方法としては、容器詰紅茶飲料における通常の加熱殺菌方法を特に制限なく用いることができる。例えば、金属缶のように充填後に加熱殺菌できる場合にあっては、食品衛生法に定められた殺菌条件等で殺菌処理を行うことができる。また、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、充填前に該飲料を、あらかじめ上記と同等の殺菌条件で、例えばプレート式熱交換器等を用いて高温短時間殺菌(UHT殺菌)した後、一定の温度まで冷却し、殺菌済み容器に充填する等の方法を採用することができる。
【0037】
(本発明の抑制方法)
本発明の抑制方法としては、乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料における獣臭を抑制する方法であって、前記容器詰紅茶飲料がさらに以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製することを特徴とする、前記方法である限り特に制限されない。
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
【0038】
乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料がさらに上記の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製する方法は、上記の(本発明の製造方法)に記載した方法と同様の方法を用いることができる。
【0039】
(獣臭が抑制された容器詰紅茶飲料)
本発明の容器詰紅茶飲料は、乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満であって、獣臭が抑制された容器詰紅茶飲料(本明細書において、単に「獣臭が抑制された容器詰紅茶飲料」とも表示する。)である。かかる「獣臭」は、乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である紅茶飲料が加熱殺菌されることにより特に課題となるオフフレーバーであり、本発明における「獣臭」とは、ミドルノート(香り初めであるトップノートに続いて感じられる香り)以降に発現する硫黄臭、乳臭さ、及び/又は粉っぽい臭いを意味する。
【0040】
本明細書において、「獣臭が抑制された」容器詰紅茶飲料としては、ヘキサナールの含有濃度が2ppb未満(好ましくは1ppb以下)、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2ppb未満(好ましくは1ppb以下)であること以外は、同種の原料を同じ最終濃度となるように用いて同じ製法で製造した飲料(以下、「コントロール飲料」とも表示する。)と比較して、獣臭が抑制された飲料などが挙げられる。ある紅茶飲料において、獣臭が抑制されているかどうかは、コントロール飲料における獣臭を基準として、例えば複数人のパネルの評価の平均を採用してもよい。
【0041】
(香味が調和した容器詰紅茶飲料)
本発明の飲料は、乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料としての香味が調和した容器詰紅茶飲料であることが好ましい。本発明において、「乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料としての香味」とは、かかる容器詰紅茶飲料における紅茶の風味を意味し、かかる香味が調和したとは、このような香味が保持されていることを意味する。ある紅茶飲料において、そのような香味が保持されているかどうかは、パネルによって、容易かつ明確に決定することができ、好ましくは複数のパネルの評価の平均を香味調和の程度として採用することができる。なお、「乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料としての香味」が保持されていない容器詰紅茶飲料としては、いずれかの原料に由来するオフフレーバーが紅茶飲料としての香味が調和しなくなるほど過度である容器詰紅茶飲料が挙げられ、より具体的には、ヘキサナール濃度が5000ppb以上である容器詰紅茶飲料や、ゲラニオール濃度が5000ppb以上である容器詰紅茶飲料などが挙げられる。
【0042】
本明細書において、特に断りのない限り%、比率等の表示は質量%を意味する。
【実施例】
【0043】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0044】
試験1.[紅茶飲料における乳タンパク質濃度等の、獣臭等への影響]
紅茶飲料における乳タンパク質濃度等が、乳タンパク質に由来して発生する獣臭等の程度に与える影響について、以下の実験により調べた。
【0045】
(1.紅茶抽出液の調製)
紅茶葉を90℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。これらの紅茶抽出液のタンニン値を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。かかる紅茶抽出液に、表2記載の濃度となるようにL-アスコルビン酸ナトリウム(0.04質量%)、乳タンパク質(乳タンパク質濃縮物:MPC)及び、牛乳(6.0質量%)を添加した後、pHが6.8となるように重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加してから、容器内に充填し、レトルト殺菌(加熱加圧殺菌)処理して、試験例2~6の各サンプル飲料を調製した。また、上記の乳タンパク質(MPC)を配合していない試験例1のサンプル飲料と、上記の牛乳を配合していない試験例7も調製した。
なお、配合した牛乳中にも、乳タンパク質が3.3質量%含まれているため、試験例2~6のサンプル飲料における乳タンパク質濃度は、配合した乳タンパク質(MPC)濃度よりも高い。また、乳糖は、牛乳及び乳タンパク質(MPC)のいずれにも含まれており、牛乳における乳糖濃度は約4.8質量%であり、配合した乳タンパク質(MPC)における乳糖濃度は約10質量%である。また、表2の各サンプル飲料におけるタンニン濃度は、60mg/100mLである。
【0046】
(2.官能評価試験)
試験例1のサンプル飲料と比較した、試験例2~6のサンプル飲料における、「獣臭」の程度について、訓練した専門パネル5名によって、以下の表1に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。なお、1点と2点の獣臭の程度の差、2点と3点の獣臭の程度の差、3点と4点の獣臭の程度の差、4点と5点の獣臭の程度の差は、それぞれ同程度とした。また、各試験例のサンプル飲料における獣臭の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。なお、サンプル飲料における獣臭の程度の評価が例えば2.0点以上である場合に、獣臭の課題があると評価することができる。
【0047】
【0048】
試験例1~6のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表2に示す。
【0049】
【0050】
表2の結果から、紅茶飲料中の乳タンパク質濃度が0.3質量%以上であると、獣臭の課題が生じ、乳タンパク質濃度に依存して獣臭の程度が強くなる傾向が示された。また、この獣臭は、牛乳を配合せずに、乳タンパク質(MPC)を配合した場合(試験例7)でも課題となることが示された。
【0051】
試験2.[獣臭に対するヘキサナールの影響 1]
獣臭に対するヘキサナールの影響について、以下の実験により調べた。
【0052】
(1.紅茶抽出液の調製)
紅茶葉を90℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。これらの紅茶抽出液のタンニン値を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。かかる紅茶抽出液に、表5及び表6記載の濃度となるようにL-アスコルビン酸ナトリウム(0.04質量%)、乳タンパク質(MPC)、牛乳(6.0質量%)、及び、ヘキサナールを添加した後、pHが6.8となるように重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加してから、容器内に充填し、レトルト殺菌(加熱加圧殺菌)処理して、試験例8~17の各サンプル飲料を調製した。また、コントロール飲料として、ヘキサナールを添加していない試験例4のサンプル飲料も調製した。なお、表5及び表6の各サンプル飲料におけるタンニン濃度は、60mg/100mLである。
【0053】
(2.官能評価試験)
コントロール飲料である試験例4のサンプル飲料と比較した、試験例8~17のサンプル飲料における、「獣臭」の抑制の程度について、訓練した専門パネル5名によって、以下の表3に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。なお、1点と2点の獣臭の抑制の程度の差、2点と3点の獣臭の抑制の程度の差、3点と4点の獣臭の抑制の程度の差、4点と5点の獣臭の抑制の程度の差は、それぞれ同程度とした。また、各試験例のサンプル飲料における獣臭の抑制の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。各サンプル飲料についての、各パネルの評価点の標準偏差は、いずれのサンプル飲料においても0.55以下であった。なお、サンプル飲料における「獣臭」の抑制の程度の評価が例えば2.0点以上である場合に、獣臭の抑制が見られたと評価することができる。
【0054】
【0055】
また、試験例4、8~17のサンプル飲料における、容器詰紅茶飲料(具体的には、乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料)としての香味調和の程度について、訓練した専門パネル5名によって、以下の表4に記載されるような5段階の評価基準で官能評価試験を行った。なお、1点と2点の香味調和の程度の差、2点と3点の香味調和の程度の差、3点と4点の香味調和の程度の差、4点と5点の香味調和の程度の差は、それぞれ同程度とした。また、各試験例のサンプル飲料における香味調和の程度の評価としては、各パネルの評価点の平均値の小数第2位を四捨五入した値を採用した。各サンプル飲料についての、各パネルの評価点の標準偏差は、いずれのサンプル飲料においても0.55以下であった。なお、サンプル飲料における「香味調和」の程度の評価が例えば1.5点以上である場合に、乳タンパク質を含有する容器詰紅茶飲料として許容範囲内であると評価することができる。
【0056】
【0057】
試験例4、8~17のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表5及び表6に示す。
【0058】
【0059】
【0060】
表5及び表6の結果から、ヘキサナールの含有濃度が5ppb以上であると、獣臭の抑制の程度の評価が2.0以上となり、また、ヘキサナールの含有濃度に依存して獣臭の抑制の程度が高くなる傾向が示された。一方、ヘキサナールの含有濃度が5000ppbの場合(試験例17)は、獣臭が大幅に抑制されたものの、ヘキサナールの香味が強くなり過ぎて、紅茶飲料としての香味調和がとれていない(「1.0」)という評価となった。これらのことから、本発明の紅茶飲料におけるヘキサナール濃度は、獣臭の抑制と、香味調和の保持のバランスの観点から、好ましくは5~2000ppb、10~2000ppb、20~2000ppb、50~2000ppb、100~2000ppb、5~1000ppb、10~1000ppb、20~1000ppb、50~1000ppb、100~1000ppbなどが挙げられることが示された。
【0061】
試験3.[獣臭に対するヘキサナールの影響 2]
試験2の実験の場合よりも、乳タンパク質濃度が低い場合(0.3質量%)と、高い場合(1.2質量%)で、獣臭に対するヘキサナールの影響を、以下の実験により調べた。
【0062】
(1.紅茶抽出液の調製)
紅茶葉を90℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。これらの紅茶抽出液のタンニン値を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。かかる紅茶抽出液に、表7及び表8記載の濃度となるようにL-アスコルビン酸ナトリウム(0.04質量%)、乳タンパク質(MPC)、牛乳(6.0質量%)、及び、ヘキサナールを添加した後、pHが6.8となるように重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加してから、容器内に充填し、レトルト殺菌(加熱加圧殺菌)処理して、試験例18~23の各サンプル飲料を調製した。また、コントロール飲料として、ヘキサナールを添加していない試験例2のサンプル飲料(乳タンパク質の合計濃度が0.3質量%)、及び、試験例6のサンプル飲料(乳タンパク質の合計濃度が1.2質量%)も調製した。なお、表7及び表8の各サンプル飲料におけるタンニン濃度は、60mg/100mLである。
【0063】
(2.官能評価試験)
「獣臭」の抑制の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。なお、表7においては、コントロール飲料である試験例2のサンプル飲料と比較した、試験例18~20のサンプル飲料における、「獣臭」の抑制の程度を評価し、表8においては、コントロール飲料である試験例6のサンプル飲料と比較した、試験例21~23のサンプル飲料における、「獣臭」の抑制の程度を評価した。
【0064】
また、香味調和の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。
【0065】
試験例18~20のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表7に示し、試験例21~23のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表8に示す。
【0066】
【0067】
【0068】
表7及び表8の結果から、乳タンパク質濃度が低い場合(0.3質量%)や、高い場合(1.2質量%)のいずれであっても、ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbの範囲で、香味調和が保持されつつ、獣臭が抑制されることが示された。
【0069】
試験4.[獣臭に対するゲラニオールの影響 1]
獣臭に対するゲラニオールの影響について、以下の実験により調べた。
【0070】
(1.紅茶抽出液の調製)
紅茶葉を90℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。これらの紅茶抽出液のタンニン値を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。かかる紅茶抽出液に、表9及び表10記載の濃度となるようにL-アスコルビン酸ナトリウム(0.04質量%)、乳タンパク質(MPC)、牛乳(6.0質量%)、及び、ゲラニオールを添加した後、pHが6.8となるように重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加してから、容器内に充填し、レトルト殺菌(加熱加圧殺菌)処理して、試験例24~33の各サンプル飲料を調製した。また、コントロール飲料として、ゲラニオールを添加していない試験例4のサンプル飲料も調製した。なお、表9及び表10の各サンプル飲料におけるタンニン濃度は、60mg/100mLである。
【0071】
(2.官能評価試験)
「獣臭」の抑制の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。なお、表9及び表10においては、コントロール飲料である試験例4のサンプル飲料と比較した、試験例24~33のサンプル飲料における、「獣臭」の抑制の程度を評価した。
【0072】
また、香味調和の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。
【0073】
試験例4、24~29のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表9に示し、試験例30~33のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表10に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
表9及び表10の結果から、ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上であると、獣臭の抑制の程度の評価が2.0以上となり、また、ゲラニオールの含有濃度に依存して獣臭の抑制の程度が高くなる傾向が示された。これらのことから、本発明の紅茶飲料におけるゲラニオール濃度は5ppb以上とすることができることが示された。
【0077】
試験5.[獣臭に対するゲラニオールの影響 2]
試験2の実験の場合よりも、乳タンパク質濃度が低い場合(0.3質量%)と、高い場合(1.2質量%)で、獣臭に対するゲラニオールの影響を、以下の実験により調べた。
【0078】
(1.紅茶抽出液の調製)
紅茶葉を90℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。これらの紅茶抽出液のタンニン値を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。かかる紅茶抽出液に、表11及び表12記載の濃度となるようにL-アスコルビン酸ナトリウム(0.04質量%)、乳タンパク質(MPC)、牛乳(6.0質量%)、及び、ゲラニオールを添加した後、pHが6.8となるように重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加してから、容器内に充填し、レトルト殺菌(加熱加圧殺菌)処理して、試験例34~39の各サンプル飲料を調製した。また、コントロール飲料として、ゲラニオールを添加していない試験例2のサンプル飲料(乳タンパク質の合計濃度が0.3質量%)、及び、試験例6のサンプル飲料(乳タンパク質の合計濃度が1.2質量%)も調製した。なお、表11及び表12の各サンプル飲料におけるタンニン濃度は、60mg/100mLである。
【0079】
(2.官能評価試験)
「獣臭」の抑制の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。なお、表11においては、コントロール飲料である試験例2のサンプル飲料と比較した、試験例34~36のサンプル飲料における、「獣臭」の抑制の程度を評価し、表12においては、コントロール飲料である試験例6のサンプル飲料と比較した、試験例37~39のサンプル飲料における、「獣臭」の抑制の程度を評価した。
【0080】
また、香味調和の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。
【0081】
試験例2、34~36のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表11に示し、試験例6、37~39のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表12に示す。
【0082】
【0083】
【0084】
表11及び表12の結果から、乳タンパク質濃度が低い場合(0.3質量%)や、高い場合(1.2質量%)のいずれであっても、ゲラニオールの含有濃度が例えば5~2000ppbの範囲で、香味調和が保持されつつ、獣臭が抑制されることが示された。
【0085】
試験6.[獣臭に対するヘキサナールとゲラニオールの併用の影響 1]
獣臭に対して、ヘキサナールとゲラニオールを併用することの影響について、以下の実験により調べた。
【0086】
(1.紅茶抽出液の調製)
紅茶葉を90℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。これらの紅茶抽出液のタンニン値を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。かかる紅茶抽出液に、表13及び表14記載の濃度となるようにL-アスコルビン酸ナトリウム(0.04質量%)、乳タンパク質(MPC)、牛乳(6.0質量%)、ヘキサナール、及び、ゲラニオールを添加した後、pHが6.8となるように重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加してから、容器内に充填し、レトルト殺菌(加熱加圧殺菌)処理して、試験例40~49の各サンプル飲料を調製した。また、コントロール飲料として、ヘキサナールもゲラニオールも添加していない試験例4のサンプル飲料も調製した。また、ゲラニオールは添加していないが、ヘキサナールを添加した試験例12のサンプル飲料も調製した。なお、表13及び表14の各サンプル飲料におけるタンニン濃度は、60mg/100mLである。
【0087】
(2.官能評価試験)
「獣臭」の抑制の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。なお、表13及び表14において、コントロール飲料である試験例4のサンプル飲料と比較した、試験例12、40~49のサンプル飲料における、「獣臭」の抑制の程度を評価した。
【0088】
また、香味調和の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。
【0089】
試験例4、12、40~44のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表13に示し、試験例45~49のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表14に示す。
【0090】
【0091】
【0092】
表13及び表14の結果から、ゲラニオールをヘキサナールと併用した場合であっても、獣臭の抑制効果が得られることが示された。また、ゲラニオールをヘキサナールと併用する場合、ゲラニオールの含有濃度が10ppb以上であると、ヘキサナール単独の場合と比較して、獣臭の抑制効果がより多く得られることが示された。また、ゲラニオールをヘキサナールと併用する場合、ゲラニオールの含有濃度に依存して獣臭の抑制の程度が高くなる傾向が示された。一方、ヘキサナールの含有濃度が50ppbで、ゲラニオールの含有濃度が5000ppbの場合(試験例49)は、獣臭が大幅に抑制されたものの、ヘキサナールとゲラニオールの併用による香味が強くなり過ぎて、紅茶飲料としての香味調和がとれていない(「1.3」)という評価となった。これらのことから、本発明の紅茶飲料において、ゲラニオールをヘキサナールと併用する場合、ゲラニオール濃度は、獣臭の抑制と、香味調和の保持のバランスの観点から、好ましくは2~2000ppb、5~2000ppb、10~2000ppb、20~2000ppb、50~2000ppb、100~2000ppb、2~1000ppb、5~1000ppb、10~1000ppb、20~1000ppb、50~1000ppb、100~1000ppbなどが挙げられることが示された。
【0093】
試験7.[獣臭に対するヘキサナールとゲラニオールの併用の影響 2]
試験2の実験の場合よりも、乳タンパク質濃度が低い場合(0.3質量%)と、高い場合(1.2質量%)で、獣臭に対して、ヘキサナールとゲラニオールを併用することの影響を、以下の実験により調べた。
【0094】
(1.紅茶抽出液の調製)
紅茶葉を90℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。これらの紅茶抽出液のタンニン値を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。かかる紅茶抽出液に、表15及び表16記載の濃度となるようにL-アスコルビン酸ナトリウム(0.04質量%)、乳タンパク質(MPC)、牛乳(6.0質量%)、ヘキサナール、及び、ゲラニオールを添加した後、pHが6.8となるように重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加してから、容器内に充填し、レトルト殺菌(加熱加圧殺菌)処理して、試験例50~55の各サンプル飲料を調製した。また、コントロール飲料として、ヘキサナールを添加していない試験例2のサンプル飲料(乳タンパク質の合計濃度が0.3質量%)、及び、試験例6のサンプル飲料(乳タンパク質の合計濃度が1.2質量%)も調製した。なお、表15及び表16の各サンプル飲料におけるタンニン濃度は、60mg/100mLである。
【0095】
(2.官能評価試験)
「獣臭」の抑制の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。なお、表15においては、コントロール飲料である試験例2のサンプル飲料と比較した、試験例50~52のサンプル飲料における、「獣臭」の抑制の程度を評価し、表16においては、コントロール飲料である試験例6のサンプル飲料と比較した、試験例53~55のサンプル飲料における、「獣臭」の抑制の程度を評価した。
【0096】
また、香味調和の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。
【0097】
試験例2、50~52のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表15に示し、試験例6、53~55のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表16に示す。
【0098】
【0099】
【0100】
表15及び表16の結果から、乳タンパク質濃度が低い場合(0.3質量%)や、高い場合(1.2質量%)のいずれであっても、ゲラニオールをヘキサナールと併用した場合に、香味調和が保持されつつ、獣臭が抑制されることが示された。
【0101】
試験8.[獣臭に対するヘキサナールとゲラニオールの併用の影響 3]
ヘキサナールが5ppb又は2000ppbの場合であって、かつ、ゲラニオールが5ppb又は2000ppbの場合においても、獣臭に対する抑制効果が得られるかを、以下の実験により調べた。
【0102】
(1.紅茶抽出液の調製)
紅茶葉を90℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。これらの紅茶抽出液のタンニン値を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。かかる紅茶抽出液に、表17記載の濃度となるようにL-アスコルビン酸ナトリウム(0.04質量%)、乳タンパク質(MPC)、牛乳(6.0質量%)、ヘキサナール、及び、ゲラニオールを添加した後、pHが6.8となるように重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加してから、容器内に充填し、レトルト殺菌(加熱加圧殺菌)処理して、試験例56~59の各サンプル飲料を調製した。また、コントロール飲料として、ヘキサナールもゲラニオールも添加していない試験例4のサンプル飲料も調製した。なお、表17の各サンプル飲料におけるタンニン濃度は、60mg/100mLである。
【0103】
(2.官能評価試験)
「獣臭」の抑制の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。なお、表17においては、コントロール飲料である試験例4のサンプル飲料と比較した、試験例56~59のサンプル飲料における、「獣臭」の抑制の程度を評価した。
【0104】
また、香味調和の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。
【0105】
試験例4、56~59のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表17に示す。
【0106】
【0107】
表17の結果から、ヘキサナールが5ppb又は2000ppbの場合であって、かつ、ゲラニオールが5ppb又は2000ppbの場合においても、香味調和が保持されつつ、獣臭が抑制されることが示された。
【0108】
試験9.[獣臭に対するタンニン濃度の影響]
獣臭に対するタンニン濃度の影響について、以下の実験により調べた。
【0109】
(1.紅茶抽出液の調製)
紅茶葉を90℃のお湯に入れて6分間抽出し固液分離を行い、紅茶抽出液を作製した。これらの紅茶抽出液のタンニン値を、日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)にて測定した。かかる紅茶抽出液に、表18記載の濃度となるようにL-アスコルビン酸ナトリウム(0.04質量%)、乳タンパク質(MPC)、牛乳(6.0質量%)、及び、ヘキサナールを添加した後、pHが6.8となるように重曹(炭酸水素ナトリウム)を添加してから、容器内に充填し、レトルト殺菌(加熱加圧殺菌)処理して、試験例12、60~63の各サンプル飲料を調製した。
また、試験例44、64~67については、さらにゲラニオールも添加したこと以外は同様の方法で、各サンプル飲料を調製した(表19)。
また、試験例12、60~63の各サンプル飲料を調製する方法において、ヘキサナールに代えてゲラニオールを用いたこと以外は同様の方法で、試験例28、68~70の各サンプル飲料を調製した(表20)。
なお、表18~20におけるタンニン濃度は、サンプル飲料における濃度である。
【0110】
(2.官能評価試験)
「獣臭」の抑制の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。なお、表18~20において、試験例12、44、28、60~70のサンプル飲料における「獣臭」の抑制の程度は、それぞれのサンプル飲料において、ヘキサナールもゲラニオールも含まないサンプル飲料を比較対照として評価した。
【0111】
また、香味調和の程度について、試験2.の官能評価試験と同様の方法で評価した。
【0112】
試験例12、60~63のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表18に示し、試験例44、64~67のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表19に示し、試験例28、68~70のサンプル飲料についての官能評価試験の結果を表20に示す。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
表18~20の結果から、タンニン濃度が1mg/100mLの場合は、獣臭の抑制がみられず、香味調和も取れていなかったのに対し、タンニン濃度が10mg/100mL 以上である場合に、香味調和が保持されつつ、獣臭が抑制されることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば、乳タンパク質を含有し、無糖の紅茶飲料における乳タンパク質に由来して発生する獣臭が抑制された容器詰紅茶飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
【要約】
【課題】本発明の課題は、乳タンパク質を含有し、無糖の紅茶飲料における乳タンパク質に由来して発生する獣臭が抑制された容器詰紅茶飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
【解決手段】乳タンパク質の含有濃度が0.3質量%以上であり、タンニンの含有濃度が10mg/100mL 以上であり、かつ、糖類の含有濃度が0.5g/100mL 未満である容器詰紅茶飲料において、前記容器詰紅茶飲料がさらに以下の(a)~(c)のうち、いずれかの条件を満たすように調製する。
(a)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbである;
(b)ゲラニオールの含有濃度が5ppb以上である;
(c)ヘキサナールの含有濃度が5~2000ppbであり、かつ、ゲラニオールの含有濃度が2~2000ppbである;
【選択図】なし