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特許7536995不可逆電気穿孔によるシングル・ショット心臓アブレーションのための電界印加
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】不可逆電気穿孔によるシングル・ショット心臓アブレーションのための電界印加
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023504524
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 US2021042586
(87)【国際公開番号】W WO2022020478
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】63/056,017
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】クープ、ブレンダン イー.
(72)【発明者】
【氏名】デ コック、アンドリュー エル.
(72)【発明者】
【氏名】シュロス、アラン シー.
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/143960(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/133608(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-18/00
A61F 2/01
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的組織を治療するための電気穿孔アブレーション・システムであって、
アブレーション・カテーテルを備え、前記アブレーション・カテーテルは、
前記アブレーション・カテーテルの長手方向軸を画定するシャフトと、
前記シャフトの遠位端にある電気穿孔電極構成であって、電気パルス・シーケンスが送達されたとき電界を生成するようにそれぞれが構成された複数のアノード-カソード対を画定するように配置された複数の電極を含む、電気穿孔電極構成と、
を含み、前記複数のアノード-カソード対は、
第1の電気パルス・シーケンスが送達されたとき概して前記長手方向軸と位置合わせされた第1の向きを有する第1の電界を生成するように配置された第1のアノード-カソード対と、
第2の電気パルス・シーケンスが送達されたとき前記長手方向軸に対して第2の向きを有する第2の電界を生成するように配置された第2のアノード-カソード対と、を含み、
前記電気穿孔アブレーション・システムはさらに、
前記電気穿孔電極構成に動作可能に結合され、第1のアノード-カソード対への前記第1の電気パルス・シーケンス、および前記第2のアノード-カソード対への前記第2の電気パルス・シーケンスを選択的に生成および送達するように構成された電気穿孔ジェネレータを備え
前記第1および第2の電気パルス・シーケンスのそれぞれは、複数の直流(DC)パルスを備え、前記DCパルスは、単相性パルス、二相性パルス、または三相性パルスであり、
前記電気穿孔ジェネレータは、パルス間遅延によって分離された各電気パルス・シーケンスの前記DCパルスを生成するように構成され、前記第2の電気パルス・シーケンスの前記DCパルスのうちの少なくともいくつかは、前記第1の電気パルス・シーケンスのそれぞれのパルス間遅延中に送達される、電気穿孔アブレーション・システム。
【請求項2】
記第2の向きは、前記長手方向軸周りの周方向である、請求項1に記載の電気穿孔アブレーション・システム。
【請求項3】
記第2の向きは、前記長手方向軸に対して横断方向である、請求項1に記載の電気穿孔アブレーション・システム。
【請求項4】
前記電気穿孔ジェネレータは、間に休止期間を有する複数の電気パルス・シーケンス・セットを生成するように構成され、各電気パルス・シーケンス・セットは、前記第1の電気パルス・シーケンスおよび前記第2の電気パルス・シーケンスを備える、請求項1に記載の電気穿孔アブレーション・システム。
【請求項5】
DCパルスは、二相性パルスであり、前記電気穿孔ジェネレータは、前記第1のアノード-カソード対への前記第1の電気パルス・シーケンスと前記第2のアノード-カソード対への前記第2の電気パルス・シーケンスとの間で交互に送達するように構成される、請求項1に記載の電気穿孔アブレーション・システム。
【請求項6】
前記DCパルスのそれぞれは、第1の相電圧および第1の位相長を有する第1の位相と、第2の相電圧および第2の位相長を有する第2の位相と、第3の相電圧および第3の位相長を有する第3の位相とによって画定される三相性パルスであり、前記第1および第3の位相は同じ極性を有し、前記第2の位相は、それらとは反対の極性を有する、請求項1に記載の電気穿孔アブレーション・システム。
【請求項7】
前記第1の相電圧、前記第1の位相長、前記第2の相電圧、前記第2の位相長、前記第3の相電圧、および前記第3の位相長は、各DCパルスが電荷およびエネルギーの平衡したものとなるように選択される、請求項6に記載の電気穿孔アブレーション・システム。
【請求項8】
前記第1、第2、および第3の相電圧は互いに等しく、前記第1および第3の位相長は、互いに等しく、前記第2の位相長の2分の1の持続時間を有する、請求項7に記載の電気穿孔アブレーション・システム。
【請求項9】
前記第1および第3の相電圧および位相長は、互いに等しく、前記第2の相電圧および前記第2の位相長とはそれぞれ異なる、請求項7に記載の電気穿孔アブレーション・システム。
【請求項10】
前記第1、第2、および第3の位相長、ならびに前記第1、第2、および第3の相電圧は、前記標的組織の電気分解を促進するように各DCパルスが電荷不平衡のものとなるように選択される、請求項6に記載の電気穿孔アブレーション・システム。
【請求項11】
前記第1の電気パルス・シーケンスの各DCパルスは、不可逆電気穿孔によって前記標的組織をアブレーションするために選択された第1の電圧および第1のパルス長を有し、前記第2の電気パルス・シーケンスの各DCパルスは、前記第2のアノード-カソード対に近接する前記標的組織において電解副産物を生み出すために選択された第2の電圧および第2のパルス長を有する、請求項1に記載の電気穿孔アブレーション・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、患者における組織をアブレーションするための医療装置、システム、および方法に関する。より詳細には、本開示は、電気穿孔による組織のアブレーションのための医療装置、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者における多数の異なる病状を治療するために、アブレーション術が使用される。アブレーションは、心臓不整脈、良性腫瘍、癌性腫瘍を治療するために、また手術中、出血を制御するために使用され得る。通常、アブレーションは、高周波(RF)アブレーションを含む熱的アブレーション技法および冷凍アブレーションを通じて行われる。RFアブレーションでは、プローブが患者に挿入され、高周波がプローブを通じて周囲の組織に伝達される。高周波は熱を生成し、熱は、周囲の組織を破壊し、血管を焼灼する。冷凍アブレーションでは、中空針または凍結プローブが患者に挿入され、冷えた伝熱流体がプローブを通して循環され、周囲の組織を凍結および死滅させる。RFアブレーション技法および冷凍アブレーション技法は、食道内の組織、横隔神経細胞、および冠動脈内の組織など他の健康な組織を損傷または死滅させ得る細胞壊死を通じて組織を無差別に死滅させる。
【0003】
別のアブレーション技法は、電気穿孔を使用する。電気穿孔またはエレクトロパーミアビリゼーション(electro-permeabilization)では、細胞膜の透過性を増大するために、電界が細胞に印加される。電気穿孔は、電界の強度に応じて可逆的または不可逆的なものとなり得る。電気穿孔が可逆である場合、細胞膜の増大された透過性は、細胞の治癒および回復の前に化学薬品、薬物、および/またはデオキシリボ核酸(DNA)を細胞内に導入するために使用され得る。電気穿孔が不可逆である場合、影響を受けた細胞は、アポトーシスを通じて死滅させられる。
【0004】
不可逆電気穿孔は、非熱的アブレーション技法として使用され得る。不可逆電気穿孔では、アポトーシスを通じて細胞を死滅させるための十分強い電界を生成するために、短い高電圧パルス列が使用される。心臓組織のアブレーションでは、不可逆電気穿孔は、RFアブレーションなどの熱的アブレーション技法および冷凍アブレーションの無差別の死滅に対して安全で効果的な代替となり得る。不可逆電気穿孔は、或る電界強度、および標的となる組織を死滅させるが非標的の心筋層組織、赤血球、血管平滑筋組織、内皮組織、および神経細胞など他の細胞または組織を永続的に損傷させない持続時間を使用することによって、心筋層組織など標的となる組織を死滅させるために使用され得る。しかし、電気穿孔の有効性は、標的となる組織を臨界電界強度にさらすことに依存し、これは電極幾何形状に依存する。このことは、不可逆電気穿孔の有効性が、生成される電界に対する細胞の幾何形状および/または向きに依存するのでまさにその通りである。また、電極幾何形状はしばしば、電極によって生成される電界が限られた(たとえば、単一の)向きを有するようにされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
例1は、アブレーション・カテーテルと電気穿孔ジェネレータとを備える、標的組織を治療するための電気穿孔アブレーション・システムである。アブレーション・カテーテルは、アブレーション・カテーテルの長手方向軸を画定するシャフトと、シャフトの遠位端にある電気穿孔電極構成であって、電気パルス・シーケンスが送達されたとき電界を生成するようにそれぞれが構成された複数のアノード-カソード対を画定するように配置された複数の電極を含む、電気穿孔電極構成と、を含む。複数のアノード-カソード対は、第1の電気パルス・シーケンスが送達されたとき長手方向軸に対して第1の向きを有する第1の電界を生成するように配置された第1のアノード-カソード対と、第2の電気パルス・シーケンスが送達されたとき長手方向軸に対して第2の向きを有する第2の電界を生成するように配置された第2のアノード-カソード対と、を含む。電気穿孔ジェネレータは、電気穿孔電極構成に動作可能に結合され、第1のアノード-カソード対への第1の電気パルス・シーケンス、および第2のアノード-カソード対への第2の電気パルス・シーケンスを選択的に生成および送達するように構成される。
【0006】
例2は、第1の向きは、概して長手方向軸と位置合わせされ、第2の向きは、長手方向軸周りの周方向である、例1に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
例3は、第1の向きは、概して長手方向軸と位置合わせされ、第2の向きは、長手方向軸に対して横断方向である、例1に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0007】
例4は、第1の向きは、長手方向軸に対して横断方向であり、第2の向きは、概して長手方向軸周りの周方向である、例1に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
例5は、第1および第2のパルス・シーケンスのそれぞれは、複数の直流(DC)パルスを備える、例1乃至4のいずれかに記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0008】
例6は、DCパルスは、単相性パルス、二相性パルス、または三相性パルスである、例5に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
例7は、電気穿孔ジェネレータは、パルス間遅延によって分離された各電気パルス・シーケンスのDCパルスを生成するように構成され、第2の電気パルス・シーケンスのDCパルスのうちの少なくともいくつかは、第1の電気パルス・シーケンスのそれぞれのパルス間遅延中に送達される、例6に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0009】
例8は、電気穿孔ジェネレータは、間に休止期間を有する複数の電気パルス・シーケンス・セットを生成するように構成され、各電気パルス・シーケンス・セットは、第1の電気パルス・シーケンスおよび第2の電気パルス・シーケンスを備える、例6に記載の電気穿孔システムである。
【0010】
例9は、DCパルスは、二相性パルスであり、電気穿孔アブレーション・ジェネレータは、第1のアノード-カソード対への第1の電気パルス・シーケンスと第2のアノード-カソード対への第2の電気パルス・シーケンスとの間で交互に送達するように構成される、例6に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0011】
例10は、DCパルスのそれぞれは、第1の相電圧および第1の位相長を有する第1の位相と、第2の相電圧および第2の位相長を有する第2の位相と、第3の相電圧および第3の位相長を有する第3の位相とによって画定される三相性パルスであり、第1および第3の位相は同じ極性を有し、第2の位相は、それらとは反対の極性を有する、例6に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0012】
例11は、第1の相電圧、第1の位相長、第2の相電圧、第2の位相長、第3の相電圧、および第3の位相長は、各DCパルスが電荷およびエネルギーの平衡したものとなるように選択される、例10に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0013】
例12は、第1、第2、および第3の相電圧は互いに等しく、第1および第3の位相長は、互いに等しく、第2の位相長の2分の1の持続時間を有する、例11に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0014】
例13は、第1および第3の相電圧および位相長は、互いに等しく、第2の相電圧および第2の位相長とはそれぞれ異なる、例11に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0015】
例14は、第1、第2、および第3の位相長、ならびに第1、第2、および第3の相電圧は、標的組織の電気分解を促すように各DCパルスが電荷不平衡のものとなるように選択される、例10に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0016】
例15は、第1の電気パルス・シーケンスの各DCパルスは、不可逆電気穿孔によって標的組織をアブレーションするために選択された第1の電圧および第1のパルス長を有し、第2のパルス・シーケンスの各DCパルスは、第2のアノード-カソード対に近接する標的組織において電解副産物を生み出すために選択された第2の電圧および第2のパルス長を有する、例5に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0017】
例16は、アブレーション・カテーテルと電気穿孔ジェネレータとを備える、標的組織を治療するための電気穿孔アブレーション・システムである。アブレーション・カテーテルは、ハンドルと、遠位端を有しアブレーション・カテーテルの長手方向軸を画定するシャフトと、シャフトの遠位端にある電気穿孔電極構成であって、電気パルス・シーケンスが電極の選択された対に送達されたとき複数の電界を生成するように空間的に配置された複数の電極を含む電気穿孔電極構成と、を含み、複数の電界は、長手方向軸に対して第1の向きを有する第1の電界と、長手方向軸に対して第2の向きを有する第2の電界と、を含む。電気穿孔ジェネレータは、電気穿孔電極構成に動作可能に結合され、電極の各選択された対への電気パルス・シーケンスを選択的に生成および送達するように構成される。
【0018】
例17は、第1の向きは、概して長手方向軸と位置合わせされ、第2の向きは、長手方向軸周りの周方向である、例16に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
例18は、第1の向きは、概して長手方向軸と位置合わせされ、第2の向きは、長手方向軸に対して横断方向である、例16に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0019】
例19は、第1の向きは、長手方向軸に対して横断方向であり、第2の向きは、概して長手方向軸周りの周方向である、例16に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0020】
例20は、複数の電気パルス・シーケンスのそれぞれは、複数の直流(DC)パルスを備える、例16に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
例21は、DCパルスは、単相性パルス、二相性パルス、または三相性パルスである、例20に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0021】
例22は、電気穿孔ジェネレータは、パルス間遅延によって分離された各パルス・シーケンスのDCパルスを生成するように構成され、第1の電気パルス・シーケンスのDCパルスのうちの少なくともいくつかは、第2の電気パルス・シーケンスのそれぞれのパルス間遅延中に送達される、例20に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0022】
例23は、電気穿孔ジェネレータは、間に休止期間を有する複数の電気パルス・シーケンス・セットを生成するように構成され、各電気パルス・シーケンス・セットは、複数の電気パルス・シーケンスを備える、例16に記載の電気穿孔システムである。
【0023】
例24は、電気穿孔ジェネレータは、パルス間遅延によって分離された各電気パルス・シーケンスのDCパルスを生成するように構成され、第2の電気パルス・シーケンスのDCパルスのうちの少なくともいくつかは、第1の電気パルス・シーケンスのそれぞれのパルス間遅延中に送達される、例20に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0024】
例25は、DCパルスは、二相性パルスであり、電気穿孔アブレーション・ジェネレータは、第1のアノード-カソード対への第1の電気パルス・シーケンスと第2のアノード-カソード対への第2の電気パルス・シーケンスとの間で交互に送達するように構成される、例20に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0025】
例26は、標的組織を治療するための電気穿孔アブレーション・システムであって、ハンドルと、遠位端を有しアブレーション・カテーテルの長手方向軸を画定するシャフトと、シャフトの遠位端にある電気穿孔電極構成であって、電気パルス・シーケンスが送達されたとき電界を生成するようにそれぞれが構成された複数の電極対を画定するように配置された複数の電極を含む、電気穿孔電極構成と、を含むアブレーション・カテーテルを備え、複数の電極対は、第1の電気パルス・シーケンスが送達されたとき長手方向軸に対して第1の向きを有する第1の電界を生成するように配置された第1の電極対と、第2の電気パルス・シーケンスが送達されたとき長手方向軸に対して第2の向きを有する第2の電界を生成するように配置された第2の電極対と、を含む、電気穿孔アブレーション・システムである。電気穿孔ジェネレータは、電気穿孔電極構成に動作可能に結合され、第1の電極対への第1の電気パルス・シーケンス、および第2の電極対への第2の電気パルス・シーケンスを選択的に生成および送達するように構成される。
【0026】
例27は、第1の向きは、概して長手方向軸と位置合わせされ、第2の向きは、長手方向軸周りの周方向である、例26に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
例28は、第1の向きは、概して長手方向軸と位置合わせされ、第2の向きは、長手方向軸に対して横断方向である、例26に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0027】
例29は、第1の向きは、長手方向軸に対して横断方向であり、第2の向きは、概して長手方向軸周りの周方向である、例26に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0028】
例30は、第1および第2の電気パルス・シーケンスはそれぞれ、複数の二相性DCパルスを備え、電気穿孔アブレーション・ジェネレータは、第1の電極対への第1の電気パルス・シーケンスと第2の電極対への第2の電気パルス・シーケンスとの間で交互に送達するように構成される、例26に記載の電気穿孔アブレーション・システムである。
【0029】
例31は、電気穿孔アブレーション・システム内の電極への信号を生成および送達する方法であって、長手方向軸に対して第1の向きを有する第1の電界を生成するように、長手方向軸を有する電気穿孔カテーテルの第1の電極対に第1の電気パルス・シーケンスを送達する工程と、長手方向軸に対して第2の向きを有する第2の電界を生成するように電気穿孔カテーテルの第2の電極対に第2の電気パルス・シーケンスを送達する工程と、を備える方法である。
【0030】
例32は、第1の電極対に第1の電気パルス・シーケンスを送達する工程、および第2の電極対に第2の電気パルス・シーケンスを送達する工程は、或る期間にわたって変化するパターンを備える動的に旋回する電界を生成するために、その期間にわたって交互に、第1の電極対に第1の電気パルス・シーケンスを送達すること、および第2の電極対に第2の電気パルス・シーケンスを送達することを含む、例31に記載の方法である。
【0031】
例33は、第1の向きは、概して長手方向軸と位置合わせされ、第2の向きは、長手方向軸周りの周方向である、例32に記載の方法である。
例34は、第1の向きは、概して長手方向軸と位置合わせされ、第2の向きは、長手方向軸に対して横断方向である、例32に記載の方法である。
【0032】
例35は、第1の向きは、長手方向軸に対して横断方向であり、第2の向きは、概して長手方向軸周りの周方向である、例32に記載の方法である。
複数の実施形態が開示されているが、本発明の例示的な実施形態を示し説明する以下の詳細な説明から、当業者には本発明のさらに他の実施形態が明らかになろう。したがって、図面および詳細な説明は、事実上例示的なものとみなされるべきであり、限定的なものとみなされるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本開示の主題の実施形態による、電気生理システムを使用して患者を治療するための、また患者の心臓を治療するための例示的な臨床設定を示す図。
図2A】本開示の主題の実施形態による、カテーテルに含まれるシャフトの遠位端、および電極対間の相互作用を示す図。
図2B】本開示の主題の実施形態による、電極対間の相互作用によって生成された軸方向電界を示す図。
図2C】本開示の主題の実施形態による、カテーテル内の電極対間の相互作用によって生成された周方向電界を示す図。
図3A】本開示の主題の実施形態による、カテーテルの電気穿孔電極構成内の電極に送達されることになる交錯した単相性パルスを有するパルス・シーケンスを有する2つのパルス・シーケンス・セットを含む2つのパルス・シーケンス・シリーズを示す図。
図3B】本開示の主題の実施形態による、カテーテルの電気穿孔電極構成内の電極に送達されることになる交錯した二相性パルスを有するパルス・シーケンスを有する2つのパルス・シーケンス・セットを含む2つのパルス・シーケンス・シリーズを示す図。
図3C】本開示の主題の実施形態による、電極構成内の電極に送達されることになる例示的な二相性電気パルス・シーケンスを概略的に示す図。
図3D】本開示の主題の実施形態による、電極構成内の電極に送達されることになる例示的な二相性電気パルス・シーケンスを概略的に示す図。
図3E】本開示の主題の実施形態による、カテーテルの電気穿孔電極構成内の電極に送達されることになる電荷およびエネルギーの平衡した対称の三相性パルスの、一方は交互せず、他方は交互する2つのパルス・シーケンスを示す図。
図3F】本開示の主題の実施形態による、カテーテルの電気穿孔電極構成内の電極に送達されることになる電荷およびエネルギーの平衡した非対称の三相性パルスの、一方は交互せず、他方は交互する2つのパルス・シーケンスを示す図。
図3G】本開示の主題の実施形態による、電極構成内の電極に送達されることになる例示的な電荷不平衡のパルス・シーケンスを概略的に示す図。
図3H】本開示の主題の実施形態による、電極構成内の電極に送達されることになる例示的な電荷不平衡のパルス・シーケンスを概略的に示す図。
図3I】本開示の主題の実施形態による、電極構成内の電極に送達されることになる例示的な電荷不平衡のパルス・シーケンスを概略的に示す図。
図4】電気穿孔アブレーション・システム内の電極への信号を生成および送達する方法の工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は様々な修正および代替形態を容易に受け入れるが、特定の実施形態が例として図面に示されており、下記に詳細に記載されている。しかし、本発明を記載されている特定の実施形態に限定することは意図していない。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲に入るすべての修正、均等物、および代替を包含することが意図されている。
【0035】
以下の詳細な説明は、事実上例示的なものであり、本発明の範囲、利用可能性、または構成を限定することは決して意図されていない。それどころか、以下の説明は、本発明の例示的な実施形態を実装するためのいくつかの実際的な例示を提供する。構成、材料、および/または寸法の例は、選択された要素のために提供されている。当業者なら、記載の例の多数が様々な好適な代替を有することを理解するであろう。
【0036】
図1は、本開示の主題の実施形態による、電気生理システム50を使用して患者20を治療するための、また患者20の心臓30を治療するための例示的な臨床設定10を示す図である。電気生理システム50は、電気穿孔カテーテル・システム60と、局在場発生器80、マッピング・ナビゲーション・コントローラ90、およびディスプレイ92を含む電気解剖マッピング(EAM)システム70と、を含む。また、臨床設定10は、イメージング機器94(C字形アームによって表される)などの追加の機器、およびオペレータが電気生理システム50の様々な側面を制御することができるように構成されたフット・コントローラ96などの様々なコントローラ要素を含む。当業者には理解されるように、臨床設定10は、図1に示されていない他の構成要素および構成要素の配置を有してもよい。
【0037】
電気穿孔カテーテル・システム60は、電気穿孔カテーテル105、イントロデューサ・シース110、および電気穿孔ジェネレータ130を含む。さらに、電気穿孔カテーテル・システム60は、電気穿孔カテーテル・システム60の構成要素を互いに、またEAMシステム70の構成要素に、機能的に接続するように動作する様々な接続要素(たとえば、ケーブル、アンビリカルなど)を含む。接続要素のこの配置は、本開示にとってあまり重要なものではなく、当業者なら、本明細書に記載の様々な構成要素が様々な方法で相互接続され得ることを理解するであろう。
【0038】
実施形態では、電気穿孔カテーテル・システム60は、電界エネルギーを患者の心臓30内の標的となる組織に送達し、組織アポトーシスを生み出し、組織が電気信号を導通することができないようにするように構成される。電気穿孔ジェネレータ130は、電気穿孔カテーテル・システム60の機能面を制御するように構成される。実施形態では、電気穿孔ジェネレータ130は、本明細書により詳細に記載されるように、電気穿孔カテーテル105へのパルス・シーケンスを生成および供給するための電気穿孔パルス発生器として動作可能である。
【0039】
実施形態では、電気穿孔ジェネレータ130は、電気穿孔カテーテル・システム60の機能面を制御および/または実施するためにメモリからのコードを実行する1つまたは複数のコントローラ、マイクロプロセッサ、および/またはコンピュータを含む。実施形態では、メモリは、1つまたは複数のコントローラ、マイクロプロセッサ、および/もしくはコンピュータの一部、ならびに/またはワールド・ワイド・ウェブなどのネットワークを通じてアクセス可能なメモリ容量の一部であってよい。
【0040】
実施形態では、イントロデューサ・シース110は、そこを通して患者の心臓30内の特定の標的部位に電気穿孔カテーテル105が展開され得る送達導管を提供するように動作可能である。しかし、イントロデューサ・シース110は、電気生理システム50全体に文脈を与えるために本明細書に例示および記載されているが、本明細書に記載の様々な実施形態の新規な態様にとって重要でないことを理解されたい。
【0041】
EAMシステム70は、電気穿孔カテーテル・システム60の様々な機能構成要素の位置を追跡し、対象の心腔の高忠実度3次元解剖学的および電気解剖マップを生成するように動作可能である。実施形態では、EAMシステム70は、Boston Scientific Corporationによって販売されているRHYTHMIA(商標)HDxマッピング・システムであってよい。また、実施形態では、EAMシステム70のマッピング・ナビゲーション・コントローラ90は、EAMシステム70の機能面を制御および/または実施するためにメモリからのコードを実行する1つまたは複数のコントローラ、マイクロプロセッサ、および/またはコンピュータを含み、メモリは、実施形態では、1つまたは複数のコントローラ、マイクロプロセッサ、および/もしくはコンピュータの一部、ならびに/またはワールド・ワイド・ウェブなどのネットワークを通じてアクセス可能なメモリ容量の一部であってよい。
【0042】
当業者には理解されるように、図1に示されている電気生理システム50の図は、システム50の様々な構成要素の概観を提供することが意図されており、本開示が構成要素の何らかのセットまたは構成要素の配置に限定されることを暗示することは決して意図されていない。たとえば、当業者なら、追加のハードウェア構成要素、たとえばブレークアウト・ボックス、ワークステーションなどが電気生理システム50に含まれ得、また含まれる可能性が高いことを容易に理解するであろう。
【0043】
EAMシステム70は、心臓30周りで局在容積を画定するように局在場発生器80を介して局在場を生成し、被追跡デバイス、たとえば電気穿孔カテーテル105上の1つまたは複数の位置センサまたは検知要素は、局在容積内でセンサ、したがって対応するデバイスの位置を追跡するためにマッピング・ナビゲーション・コントローラ90によって処理され得る出力を生成する。図示の実施形態では、デバイス追跡は、磁気追跡技法を使用して行われ、局在場発生器80は、局在容積を画定する磁界を生成する磁界発生器であり、被追跡デバイス上の位置センサは、磁界センサである。
【0044】
他の実施形態では、様々なデバイスの位置を追跡するために、インピーダンス追跡方法が使用され得る。そのような実施形態では、局在場は、たとえば、体内もしくは心臓内デバイス、たとえば心臓内カテーテル、または両方によって、外部電界発生器構成、たとえば表面電極によって生成される電界である。これらの実施形態では、位置検知要素は、局在容積内で様々な位置検知電極の位置を追跡するためにマッピング・ナビゲーション・コントローラ90によって受信および処理される出力を生成する被追跡デバイス上の電極を構成し得る。
【0045】
実施形態では、EAMシステム70は、磁気とインピーダンス両方の追跡能力のために装備される。そのような実施形態では、インピーダンス追跡精度は、場合によって、前述のRHYTHMIA HDx(商標)マッピング・システムを使用して可能であるように、磁気位置センサを備えるプローブを使用して対象の心腔内で電界発生器によって誘導された電界のマップを最初に作成することによって向上させることができる。1つの例示的なプローブは、Boston Scientific Corporationによって販売されているINTELLAMAP ORION(商標)マッピング・カテーテルである。
【0046】
使用される追跡方法にかかわらず、EAMシステム70は、様々な被追跡デバイスについての位置情報を、たとえば、検知電極を備える電気穿孔カテーテル105または別のカテーテルもしくはプローブによって取得される心臓電気活動と共に使用し、心腔の詳細な3次元の幾何学的な解剖学的マップまたは表現、ならびに対象の心臓電気活動が幾何学的な解剖学的マップ上に重ね合わされた電気解剖マップを生成し、ディスプレイ92を介して表示する。さらに、EAMシステム70は、幾何学的な解剖学的マップおよび/または電気解剖マップ内で様々な被追跡デバイスのグラフィカル表現を生成し得る。
【0047】
EAMシステム70は、例示的な臨床設定10を包括的に示すために電気穿孔カテーテル・システム60との組合せで示されているが、EAMシステム70は、電気穿孔カテーテル・システム60の動作および機能にとって重要ではない。すなわち、実施形態では、電気穿孔カテーテル・システム60は、EAMシステム70または任意の類似の電気解剖マッピング・システムから独立して使用することができる。
【0048】
図示の実施形態では、電気穿孔カテーテル105は、ハンドル105aと、シャフト105bと、以下にさらに記載されている電気穿孔電極構成150と、を含む。ハンドル105aは、電気穿孔電極構成150を所望の解剖学的位置で位置決めするためにユーザによって操作されるように構成される。シャフト105bは、遠位端105cを有し、電気穿孔カテーテル105の長手方向軸を概して画定する。図のように、電気穿孔電極構成150は、シャフト105bの遠位端105cに位置し、またはそこに近接する。実施形態では、電気穿孔電極構成150は、電気パルス・シーケンスまたはパルス列を受信し、それにより不可逆電気穿孔によって標的組織をアブレーションするための電界を選択的に生成するように、電気穿孔ジェネレータ130に電気的に結合される。
【0049】
上記のように、また本明細書の他のところにより詳細に記載されているように、電気穿孔カテーテル・システム60は、不可逆電気穿孔を介して標的組織をアブレーションするための多方向電界を生成するように動作可能である。そのような手技は、シングルショット・アブレーション術、たとえば肺静脈隔離(PVI)術、ならびにフォーカル心臓アブレーション術を含む。
【0050】
図2A図2Cは、実施形態による電気穿孔電極構成150を含む電気穿孔カテーテル105の特徴を示す。図2Aにおける図示の実施形態では、電気穿孔電極構成150は、電極201a、201b、201c、201d、201e、および201fのそれぞれが、軸方向に(すなわち、長手方向軸LAの方向に)、長手方向軸LA周りで周方向に、および/または長手方向軸LAに対して径方向に、互いに離隔されるように3次元電極アレイで配置された複数の電極201a、201b、201c、201d、201e、および201fを含む。実施形態では、電極201a、201b、201c、201d、201e、および201fはそれぞれ、複数のアノード-カソード電極対を画定するように電気穿孔ジェネレータ130(図1)を介して個々に選択的にアドレス可能であり、各電極対は、電気穿孔ジェネレータ130から電気パルス・シーケンスを受信し、したがって、不可逆電気穿孔を介して標的組織を選択的にアブレーションすることが可能な電界を生み出すことが可能である。図2Aは、電気穿孔カテーテル105に含まれる電極201(たとえば、201a、201b、201c、201d、201e、および201f)間に形成された電極対間の相互作用(たとえば、電界を形成する電流の流れ)を概略的に示す。この図では、相互作用は、電極201間の電流の流れを示す対の矢印(たとえば、a-d、b-e、およびd-f)として示されている。電極対(たとえば、201aと201d、201bと201e、および201dと201f)が、それらのそれぞれの電流の流れ(たとえば、a-d、b-e、およびd-f)にラベル付けされて示されている。
【0051】
図2Bは、電気穿孔カテーテル105内の電極対間の相互作用によって生成された電界210を示す図である。この図では、軸方向に向いた電界210が、左心房223と左下肺静脈225との間の口221に位置決めされて示されている。実施形態では、軸方向に向いた電界210は、電気パルスを軸方向に離隔されたアノードおよびカソードに送達することによって生成される。
【0052】
図2Cもまた、電気穿孔カテーテル105内の電極対間の相互作用によって生成された電界210を示す図である。しかし、ここでは、電界210は、周方向に向いたものである。実施形態では、周方向に向いた電界210は、電気パルスを周方向に離隔されたアノード(「A」)およびカソード(「C」)に送達することによって生成される。
【0053】
図2A図2Cの間には、複数の電界210が同時におよび/または順次、ならびに軸方向および周方向の向きに生成され得ることが明らかである。たとえば、実施形態では、軸方向および周方向に向いた電界210を、それぞれの電極201への電気パルスの送達のタイミングを選択的に制御することによって、事前定義されたシーケンスで非同時に生成することができる。さらに、電極対のセット間のジグザグの相互作用ならびに軸方向および周方向以外の電界の向きによって引き起こされる、断続的に生成される電界210は、本開示の範囲を越えるものでなく、実際、以下に詳細に記載されていることを理解されたい。
【0054】
図2Aに見られるように、電気穿孔電極構成150は、複数の電極対(たとえば、アノード-カソード対)を選択的に画定するように配置された複数の個々にアドレス可能な電極201(たとえば、アノードまたはカソード)を含み得る。各アノード-カソード対は、パルス・シーケンスが送達されたとき電界を生成するように構成され得る。複数のアノード-カソード対は、第1のアノード-カソード対、第2のアノード-カソード対、および第3のアノード-カソード対のうちの少なくとも2つを含み得る。第1のアノード-カソード対は、第1のパルス・シーケンスが送達されたとき長手方向軸に対して概して周方向に向いた第1の電界を生成するように配置され得る。第2のアノード-カソード対は、第2のパルス・シーケンスが送達されたとき概して長手方向軸と同じ方向に向いた第2の電界を生成するように配置され得る。第3のアノード-カソード対は、第3のパルス・シーケンスが送達されたとき長手方向軸に対して概して横断方向に向いた第3の電界を生成するように配置され得る。実施形態では、第1、第2、および第3のパルス・シーケンスの任意の組合せが同時に、または断続的に送達されてよく、以下に記載されているように様々な形態をとり得る。
【0055】
実施形態では、電気穿孔電極構成150は、電極201a、201b、201c、201d、201e、および201fを、遠位に位置する第1の領域およびより近位に位置する第2の領域に構造的に配置するように構成され得る。したがって、電極対は、第1の領域と第2の領域との間で、電気穿孔電極構成150内の様々な電極201にわたって形成され得る。たとえば、電極201dと201fは、電極対を形成するように構成され得る。同様に、電極201aと201dもしくは電極201bと201eまたはそれらの組合せが、それぞれの電極対を形成するように選択され得る。したがって、電極対は、軸方向に離隔された電極、横断方向に離隔された電極、または周方向に離隔された電極を備え得る。さらに、実施形態では、所与の電極(たとえば、201d)が、電界210を生成するための少なくとも2つの電極対における共通電極として働き得る。
【0056】
図2Bは、電気穿孔電極構成150によって生成され得る例示的な電界210の図を示す。電気穿孔電極構成150は、少なくとも1つのパルス・シーケンスが送達されたとき多方向電界210を生成するように構成され得る。多方向電界210は、長手方向軸に対する以下の方向、すなわち概して軸方向、周方向、および横断方向のうちの少なくとも2つを含み得る。本明細書で使用されるとき、横断方向は、長手方向軸に対して任意の非平行の角度にあることを意味し得る。本明細書の他の箇所に記載されているように、電気穿孔電極構成150は、少なくとも1つのパルス・シーケンスを生成するように構成される電気穿孔ジェネレータに動作可能に結合するように構成され得る。電気穿孔電極構成150は、電気穿孔ジェネレータから少なくとも1つのパルス・シーケンスを受信するように構成され得る。したがって、電気穿孔電極構成150および電気穿孔ジェネレータは、互いに動作可能に連絡し得る。本開示では、そのような連絡は、少なくとも実質的に間隙のない電界210を生成するために使用され得る。
【0057】
電気穿孔電極構成150によって生成される電界210内の望ましくない間隙は、制限され、または少なくとも実質的に解消され得る。そのような間隙は、損傷間隙をもたらす可能性があり、したがって、たとえばカテーテルの複数回の位置変更を必要とし得る。重なり合う電界210は、そのような間隙の数を少なくとも実質的に制限し得る。実施形態では、第1のパルス・シーケンス・セットにおいて生成される電界210の少なくともいくつかは、互いに少なくとも部分的に重なり合うものとなり得る。たとえば、組合せ電界211内の隣接する電界210(たとえば、軸方向、横断方向、および/または周方向)は、組合せ電界211内に限られた間隙がある状態から間隙がない状態までになるように、互いに交差し得る。重なり合いは、隣接する電界210の周縁もしくはその近くで生じ得、または1つもしくは複数の隣接する電界210の大半もしくは大多数にわたって生じ得る。本開示では、「隣接する」は、隣り合う電極201同士、または他の形で互いに近い電極201同士を意味する。電気穿孔ジェネレータは、重なり合う電界を生成する際に使用されるパルス・シーケンスを生成するように構成され得る。
【0058】
様々な実施形態における電気穿孔電極構成150の構成は、現在知られているか今後開発されるかにかかわらず、3次元電極構造に適した任意の形態をとり得る。例示的な実施形態では、電気穿孔電極構成150は、それぞれの電極201a、201b、201c、201d、201e、および201fが当技術分野で知られている任意の方法で複数のスプライン上に位置決めされたスプラインド・バスケット・カテーテルの形態にあり得る。実施形態では、たとえばバルーン表面上に配置された可撓性の回路分岐または個々のトレース上に電極が形成された膨張可能なバルーン上に、電気穿孔電極構成150を形成することができる。他の実施形態では、電気穿孔電極構成150は、伸長可能なメッシュの形態にあり得る。要するに、電気穿孔電極構成150を形成するために使用される特定の構造は、本開示の実施形態にとって重要でない。
【0059】
図3A図3Iは、たとえば、本開示の主題の実施形態による電気穿孔ジェネレータによって電気穿孔電極構成に送達され得る様々な電気パルス・シーケンスを示す。図3A図3Iでわかるように、また本明細書に記載されているように、上記の複数のアノード-カソード対に送達することができる様々な例示的なパルス・シーケンスは、単相性パルス、二相性パルス、三相性パルス、および四相性パルスを含み得る。各パルスの時間ベースの特性は、軸上で示されているように、向き(たとえば、軸方向、周方向、または横断方向)および極性(たとえば、正(+)または負(-))を含む。
【0060】
図3Aは、それぞれが2つのパルス・シーケンス・セット310a、320aを有する2つのパルス・シーケンス・シリーズ301a、302aを示す図である。図のように、パルス・シーケンス・セット310aは、単相性直流(DC)電気パルス311a、312a、313a、および314aから構成される。図示の実施形態では、電気パルス311a、313aは、電気穿孔カテーテルの長手方向軸に対して概して軸方向に向いたアノード-カソード対に送達され、一方、電気パルス312a、314aは、長手方向軸に対して周方向に配置されたアノード-カソード対に送達される。図のように、隣接する軸方向に導かれる電気パルス311a、313aは、所定のパルス間遅延だけ時間で分離された単相性DCパルスであり、反対の極性を有する。同様に、隣接する周方向に導かれる電気パルス312a、314aは、所定のパルス間遅延だけ時間で分離された単相性DCパルスであり、反対の極性を有する。実施形態では、電気パルス311aおよび313aは、同じ(たとえば、正の)極性を有してもよく、同様に、電気パルス312aおよび314aもまた、同じ極性を有してもよいことを理解されたい。図のように、一連の電気パルス311a、313a、312a、および314aは、所定の長さの休止期間だけ時間で分離された2つの電気パルス・シーケンス・セット310aにグループ化される。図示の実施形態では、それぞれの周方向に導かれる電気パルス312a、314aは、隣接する軸方向に導かれる電気パルス311a、313a間のパルス間遅延中に生成および送達される。
【0061】
図示の実施形態では、パルス・シーケンス・シリーズ302aおよび対応するパルス・シーケンス・セット320aは、電気パルス312a、314aの極性が逆転されている点で、パルス・シーケンス・シリーズ301aおよびパルス・シーケンス・セット310aとは異なる。
【0062】
図3Aをさらに参照すると、パルス・シーケンス・セット(たとえば、310a、320a)内の交錯するパルスは、パルス・シーケンス・セット内のパルス・シーケンスにおける遅延を使用して達成され得る。本明細書の他の箇所に記載されているように、複数のパルス・シーケンス・セットは、第1の生成されたパルス・シーケンスおよび第2の生成されたパルス・シーケンスを共に含む第1のパルス・シーケンス・セット310aを有し得る。また、第1の生成されたパルス・シーケンス(たとえば、両パルス311a)および第2の生成されたパルス・シーケンス(たとえば、両パルス312a)のそれぞれは、複数のパルスを含み得る。第1の生成されたパルス・シーケンスは、少なくとも2つのパルス間(たとえば、パルス・シーケンス・セット310a内の各パルス311a間)の第1のパルス間遅延を有し得る。第1の生成されたパルス・シーケンスおよび第2の生成されたパルス・シーケンスは、第2の生成されたパルス・シーケンス内の少なくとも1つのパルス(たとえば、最も左のパルス312a)が第1のパルス間遅延内で発生するように第1のパルス・シーケンス・セット310a内で交互に配置され得る。第2の生成されたパルス・シーケンスは、少なくとも2つのパルス間(たとえば、パルス・シーケンス・セット310a内の各パルス312a間)の第2のパルス間遅延を有し得る。第1の生成されたパルス・シーケンス内の少なくとも1つのパルス(たとえば、最も右のパルス311a)は、第2のパルス間遅延内で発生し得る。複数のパルス・シーケンス・セットは、第1のパルス・シーケンス・セット310a、320aから(それぞれ)分離され、第1のパルス・シーケンス・セットと第2のパルス・シーケンス・セットとの間に休止期間を有する第2のパルス・シーケンス・セット310a、320aを含み得る。実施形態では、ここに示されているように、任意の2つのパルス・シーケンス間(たとえば、311aと312aとの間)のパルス間遅延は、任意の2つのパルス・シーケンス・セット間の休止期間未満であり得る。しかし、本開示は、たとえば実施形態では、このパルス間遅延は、望ましい場合、このパルス間設定遅延以下であってもよいので、そのような構成に限定されるべきでない。遅延は、交錯したパルス・シーケンス・セット310aおよび/またはパルス・シーケンス間のタイミングを形成するのを容易にし得る。当業者なら理解するように、これらの概念は、任意の数のパルス・シーケンスまたはポスト・シーケンス・セットおよび任意のタイプのパルスに及び得る。
【0063】
図3Aは軸方向および周方向に向いた電極対への送達のための電気パルスを示すが、他の実施形態では、これらの向きの1つが、横断方向に向いた電極対に置き換えられてもよいことを理解されたい。
【0064】
図3Bは、電気穿孔カテーテルの電気穿孔電極構成内の軸方向および周方向に向いた電極対にそれぞれ送達されることになる交錯した二相性DCパルス(たとえば、311bおよび312b)を有する複数のパルス・シーケンスからそれぞれが構成される2つのパルス・シーケンス・セット310b、320bをそれぞれが有する2つのパルス・シーケンス・シリーズ301b、302bを示す図である。図のように、パルス・シーケンス・セット310bは、パルス間遅延だけ時間で分離された、軸方向に導かれる二相性パルス311bと、軸方向に導かれる二相性パルスと時間的に交錯した、周方向に導かれる二相性電気パルス312bと、を含む。さらに図のように、所与のパルス・シーケンス・セット310bでは、第1の周方向に導かれる電気パルス312bは、隣接する軸方向に導かれる電気パルス311b間のパルス間遅延中に生成される。しかし、他の実施形態では、この順番は逆転され得ることを理解されたい。図示の実施形態では、パルス・シーケンス・シリーズ320bは、パルス・シーケンス・シリーズ320bでは周方向に導かれる電気パルス312bの極性が1つのパルスと次のパルスで逆転することを除いて、実質的にパルス・シーケンス・シリーズ310bと同じである。
【0065】
図3Bをさらに参照すると、電気穿孔電極構成内の電極対の異なるセットは、異なるパルス・シーケンス・シリーズを実施し得る。電極対の第1のセットは、第1のパルス・シーケンス・シリーズ301bを受信し得、電極対の第2のセットは、第2のパルス・シーケンス・シリーズ302bを受信し得る。第1のパルス・シーケンス・シリーズ301bは、第2のパルス・シーケンス・シリーズ302bとは異なってもよい。このようにして、たとえば、電気穿孔電極構成は、或る向きで電界を生成するための専用の電極対を有し得る。電極対の第1のセットは、軸方向、横断方向、または周方向に向いた電界の1つを生成し得、電極対の第2のセットは、電極の第1のセットが生成しなかった向きのいずれかを生成し得る。たとえば、ここに示されているように、第1のパルス・シーケンス・シリーズ301bは、パルス・シーケンス内の交互しないパルス(たとえば、301b内の312b)を含み、一方、第2のパルス・シーケンス・シリーズ302は、パルス・シーケンス内の交互するパルス(たとえば、302b内の312b)を含む。第1のパルス・シーケンス・シリーズ301bおよび第2のパルス・シーケンス・シリーズ302bは、同期的または非同期的に生成され、および/または電気穿孔電子配置に送達され得る。本明細書にさらに記載されているように時間の経過につれて実施された場合、これらの概念は、動的な旋回を有する電界を生成し得る。電極対の第1のセットと第2のセットは共に、第1のパルス・シーケンス・シリーズまたは第2のパルス・シーケンス・シリーズ(たとえば、301bまたは302b)を受信し得る。このようにして、所与の向きにおける電界の大きさは、電極対の第1のセットまたは第2のセットだけが第1のパルス・シーケンス・シリーズまたは第2のパルス・シーケンス・シリーズ(たとえば、301bまたは302b)を生成するときより増大され得る。電界がいかに効果的に電気穿孔を実施するかを増大する際に、他のパルス操作技法が役に立つ。
【0066】
図3C図3Dは、本開示の実施形態による代替パルス・シーケンス・シリーズ301c、301dを概略的に示す図である。図3Cに示されているように、パルス・シーケンス・シリーズ301cは、それぞれの休止期間だけ時間で分離された複数の交互するパルス・シーケンス305c、306cを含む。図のように、各パルス・シーケンス305c、306cは、それぞれ一連の二相性DC電気パルス311c、312cからできている。図示の実施形態では、パルス・シーケンス305cは、概して軸方向に向いた電界を生成するように、軸方向に導かれる電極対に送達され、一方、パルス・シーケンス306cは、周方向に向いた電界を生成するように、周方向に向いた電極対に送達される。本明細書の他の箇所で論じられているように、実施形態では、前述の順番は逆転され得、および/またはパルス・シーケンス305c、306cの1つを、横断方向に向いた電極対に送達することができる。
【0067】
図3Dの実施形態では、パルス・シーケンス・シリーズ301dは、所定の休止期間だけ分離された2つの電気パルス・シーケンス305dを備え、これらは、軸方向に向いた電極対に送達され、その後に、所定の休止期間だけ分離され、周方向に向いた電極対に送達される2つの電気パルス・シーケンス306dが続く。図3Dの実施形態と同様に、前述の順番は逆転され得、および/またはパルス・シーケンス305d、306dの1つを、横断方向に向いた電極対に送達することができる。
【0068】
本開示は、図3A図3Dに示されている向きに限定されるべきでないことを強調しておく。これらの図では、軸方向および周方向の向きを有するものとして示されているが、本開示におけるパルス・シーケンスは、向きの他の組合せを含み得る。たとえば、パルス・シーケンスは、軸方向および横断方向の向き、周方向および横断方向の向き、または軸方向、周方向、および横断方向の向きのそれぞれを含み得る。それらの形態にかかわらず、パルス・シーケンスはパルス・シーケンス・セットに、またパルス・シーケンス・セットはパルス・シーケンス・シリーズに配置され得る。
【0069】
本明細書の他の箇所で論じられているように、複数のアノード-カソード対に送達される、生成されたパルス・シーケンスのそれぞれは、たとえばイオン副産物の蓄積および電気分解を防止するために、また筋刺激の助けとなるように、電荷およびエネルギーの平衡したものであり得る。或る数、向き、または配置のパルス・シーケンス、パルス・シーケンス・セット、またはパルス・シーケンス・シリーズを用いて示され論じられているが、当業者なら理解するように、本開示は、そのようなものに限定されるべきでない。また、パルス・シーケンスは、同一の、または異なるパルスを含み得、パルス・シーケンス・セットは、同一の、または異なるパルス・シーケンスを含み得ることを理解されたい。
【0070】
図3Eは、カテーテルの電気穿孔電極構成内の電極に送達されることになる、電荷およびエネルギーの平衡した対称の三相性パルス(311t)の、一方は交互せず(301e)他方は交互する(302e)2つのパルス・シーケンス305eを示す図である。図3Fは、カテーテルの電気穿孔電極構成内の電極に送達されることになる、電荷およびエネルギーの平衡した非対称の三相性パルス(311t)の、一方は交互せず(301f)他方は交互する(302f)2つのパルス・シーケンス305fを示す図である。
【0071】
図3Eを参照すると、電圧シフトおよび振幅が、本開示の実施形態により、所与のパルスについて、またはパルス間で変わり得る。迅速な電圧シフトは、細胞膜内のより多くの孔を開き得る。この電圧シフトを生成するために、パルス・シーケンス内の1つまたは複数のパルスは、交互する極性を有し得る。たとえば、パルス・シーケンス・シリーズ302e、およびその中のパルス・シーケンス・セット310eに注目すると、1つまたは複数のパルスは、第1のパルス311t1および第2のパルス311t2を含み得る。第2のパルス311t2は、第1のパルス311t1の後に続くものであり得、第1のパルス311t1および第2のパルス311t2は、交互する極性を有し得る。この図に示されているものなどの三相性パルスは、1つのパルス内で迅速な電圧シフトを生み出し、2つのパルス間でもそれを行い得る。たとえば、図のように、第1のパルス311t1は、正、負、および正の極性間で交互し得る三相性パルスであり、第2のパルス311t2は、負、正、負の極性間で交互する三相性パルスである。実施形態では、第1のパルス311t1および第2のパルス311t2は、本開示の範囲から逸脱することなく逆転され得る。当業者なら理解するように、これらの概念は、任意の数のパルスに及び得る。さらに、細胞膜内の開いた孔の数の増大は、短いパルス距離の場合でさえ、高電圧振幅に比例して達成され得る。これらの概念のそれぞれは、パルス・シーケンス内で電荷およびエネルギーを平衡させながら達成され得る。図の三相性パルスは、d1がd2の2分の1にほぼ等しくなるように対称の電圧振幅(v)および変動するパルス長を有し、したがって電荷およびエネルギーの平衡したものとなる。しかし、所望の応用例に応じて、これらの変量は、より短いパルス長でより高い電圧振幅、およびより長いパルス長でより短い電圧振幅を生み出すように比例的に変わり得る。
【0072】
実施形態では、三相性パルス・シーケンス305e、305fは、電荷およびエネルギーの平衡したままの状態で様々な形態で送達され得る。たとえば、境界条件が各パルスについて確立され得、境界条件は、電圧振幅のための、および/またはパルス長のためのパラメータを含み得る。複数のアノード-カソード対に送達されるパルス・シーケンス305e、305fが1つまたは複数の三相性パルスを備えるとき、各三相性パルスは、第1の電圧振幅および第2の電圧振幅を有し得、第1の電圧振幅は、第2の電圧振幅以上である。また、各三相性パルスは、第1の電圧パルス長および第2の電圧パルス長を有し得、第1の電圧パルス長は、第2の電圧パルス長以下である。図の三相性パルスは、d1がd2未満であるように非対称の電圧振幅(v)および変動するパルス長を有し、したがって対称の三相性パルス(図3Eに示されているものなど)より高い電圧振幅を有しながら電荷およびエネルギーの平衡したものとなる。形態にかかわらず、上記のものなどのパルス・シーケンスは、細胞膜内でより多くの孔を体系的に開くために、電気穿孔操作中に繰り返され得る。
【0073】
様々な実施形態では、標的組織内で電気分解を促進するように、電荷平衡されていない電気パルス・シーケンスを生成し、標的組織に選択的に送達することが有利になり得る。一般的に言えば、心筋細胞において可逆電気穿孔または不可逆電気穿孔を引き起こす際に、比較的短い高電圧電気パルスが有効である。対照的に、比較的長い低電圧電気パルスは、電極に近接する心筋組織内で電解副産物の形成を促進することができる。これらの電解副産物は、電界勾配に沿って外向きに、電気穿孔を介して細胞内に生み出された孔内へ拡散する傾向があり得、したがって、細胞内の電解質不平衡により細胞死を引き起こすか、または少なくとも促す。この技法は、不可逆電気穿孔および可逆電気穿孔された細胞において共に細胞死を引き起こすことができる。したがって、本開示は、標的組織のアブレーションを成功させる可能性を高めるために、前述の電気分解を促進するように構成されたパルスを用いて不可逆電気穿孔を引き起こすように構成された、交錯する電気パルスを企図している。
【0074】
図3Gは、交錯した軸方向に導かれる電気パルス311g、313gと、周方向に導かれる電気パルス312g、314gとから構成され、電気パルス312g、314gは、隣接する電気パルス311g、313g間に挟まれている、例示的なパルス・シーケンス・シリーズ301gを概略的に示す図である。図のように、電気パルス311g、313gは、パルス長d1および電圧V1によって特徴付けられ、一方、電気パルス312g、314gは、パルス長d2および電圧V2によって特徴付けられる。実施形態では、パルス長d1および電圧V1は、比較的短く、それぞれ高く、不可逆電気穿孔によって標的組織をアブレーションするように設計されている。さらに、パルス長d2は、パルス長d1より実質的に短く、電圧V2は、電圧V1より実質的に低い。電気パルス311g、312g、313g、および314gが送達されるそれぞれの電極対において生み出される、結果的に得られる交錯した電界は、不可逆電気穿孔を介して、また電解質不平衡による細胞死を介して共に細胞をアブレーションするという前述の二重効果を有することができる。
【0075】
図3Hおよび図3Iは、不可逆電気穿孔と、標的細胞内で電解質不平衡を生み出すことによる細胞死とを共に介してアブレーションを促進するために、様々な実施形態において使用することができる追加の例示的な電気パルス形態を概略的に示す。図3Hは、位相長d1および電圧V1によって特徴付けられる同じ極性の第1の位相および第3の位相と、位相長d2および電圧V2によって特徴付けられる第2の位相とをそれぞれが有する複数の三相性電荷不平衡の電気パルス311h1、311h2から構成されるパルス・シーケンス・シリーズ301hを示す。電気パルス311h2は、各位相の極性が電気パルス311h1における対応する位相のものと反対である点で電気パルス311h1とは異なるが、他の実施形態では、各対応する位相が同じ極性を有することができる。図のように、実施形態では、位相長d1、d2および電圧V1、V2は、位相長d1および電圧V1が電気穿孔を引き起こすように選択され、位相長d2および電圧V2は、電気分解と、細胞死をもたらす電解質不平衡の形成とを促進するように選択されて、電気パルス311h1または311h2の全体的な電荷不平衡をもたらすように選択され得る。
【0076】
図3Iに概略的に示されている四相性電気パルス311iを使用することによって、同様の効果を達成することができる。図のように、電気パルス311iは、位相長d1および電圧V1によって特徴付けられる、反対の極性の第1の位相および第4の位相と、同じ位相長d2および電圧V2をそれぞれが有する反対の極性の第2の位相および第3の位相とから構成される。図のように、位相長d1は、位相長d2より実質的に短く、電圧V1は、電圧V2より実質的に大きく、前述の電荷不平衡と、電気穿孔および電解質不平衡によって共に細胞死を引き起こすという対応する二重効果とをもたらす。
【0077】
電気穿孔ジェネレータは、複数のパルス・シーケンス305を通して電気穿孔アブレーション・システムをループするためにフィードバック・ループを実施するように構成され得る。実施形態では、フィードバック・ループは、自動であってもよく、および/またはプログラムされたパターンに従ってもよい。どちらの場合も、電界の向きの変化は、連続的なものであっても断続的なものであってもよい。フィードバック・ループは、電位図振幅減少(electrogram amplitude reduction)、インピーダンス変化、または別の同様のメトリックなどの標的メトリックに基づいて実施され得る。標的メトリックが達成されたとき、たとえば、電気穿孔ジェネレータは、生成されたパルス・シーケンスを、以前使用されていたものとは異なる電極対にわたって印加し得る。一例として、フィードバック・ループは、軸方向に向いた電界と、それに続く横断方向に向いた電界とを生成し得る。フィードバック・ループは、多方向電界と一方向電界の混合したものを任意の順番で使用してもよく、したがってこの概念は、本開示の範囲を越えないことを理解されたい。本開示の方法は、これらの概念、および本明細書に開示されている他の実施形態に関して記載されているものを使用し得る。
【0078】
図4は、電気穿孔アブレーション・システム内の電極への信号を生成および送達する方法400の工程を示す図である。そのような方法400、および電気穿孔アブレーション・システム内の電極への信号を生成および送達する他の関連の方法が本明細書に開示されている。方法400の工程402は、本明細書の他の箇所に開示されているものと同様であってよい電気穿孔アブレーション・システムを選択することを含むことができる。方法400は、電気穿孔ジェネレータを介して、第1のパルス・シーケンス、第2のパルス・シーケンス、および第3のパルス・シーケンスのうちの少なくとも2つを含む生成されたパルス・シーケンス・セットを生成することを含み得る。方法400は、生成されたパルス・シーケンス・セットをアブレーション・カテーテルに送達することを含み得る。例は、工程404で、第1の生成されたパルス・シーケンス・セットを生成すること、および工程406で、第1の生成されたパルス・シーケンス・セットをアブレーション・カテーテルに送達することを含む。工程408では、第2の生成されたパルス・シーケンス・セットが生成され、工程410で、アブレーション・カテーテルに送達され得る。工程412では、方法400は、以下に記載されているようにフィードバック・ループが使用されるべきかどうか決定することを含み得る。
【0079】
パルス・シーケンス・セットを生成することは、複数のパルス・シーケンス・セットを生成することを含むことができる。工程404では、第1の生成されたパルス・シーケンス・セットが、工程408では、第1の生成されたパルス・シーケンス・セットとは異なる第2の生成されたパルス・シーケンス・セットが生成され得る。たとえば、第1の生成されたパルス・セットは、軸方向の向きを有するものなどの、本明細書の他の箇所に開示されているものと同様とすることができる。また、第2の生成されたパルス・セットは、周方向の向きを有するものなどの、本明細書の他の箇所に開示されているものと同様とすることができる。実施形態では、生成されたパルス・シーケンス・セットを生成することは、或る期間にわたって変化するパターンを備える動的に旋回する電界を生成するために、第1のパルス・シーケンス、第2のパルス・シーケンス、および第3のパルス・シーケンスのうちの少なくとも2つを、その期間にわたって交互に生成することを含み得る。
【0080】
旋回する電界は、本明細書の他の箇所に開示されているものなどの、フィードバック・ループを介して達成され得る。たとえば、工程412では、フィードバック・ループを使用するかどうかが決定され得る。使用する場合、方法400は、第1の生成されたパルス・センス・セットを生成するための工程404などの、以前の工程にループバックし得る。工程412においてフィードバック・ループが使用されない場合、方法400は終了し得る。
【0081】
実施形態では、生成されたパルス・シーケンス・セットをアブレーション・カテーテルに送達することは、電極対のセットを使用する、または患者の特性に依存し得る。たとえば、工程408では、第1の生成されたパルス・シーケンスは、軸方向に離隔された電極、横断方向に離隔された電極、または周方向に離隔された電極の第1のセットにわたって、対応するように向いた電界を生成するために印加され得る。また、工程410では、第2の生成されたパルス・シーケンスが、第1の生成されたパルス・シーケンスで使用されなかった第1のセットの軸方向に離隔された電極、横断方向に離隔された電極、または周方向に離隔された電極のいずれかにわたって印加され得る。実施形態では、第1および第2の生成されたパルス・シーケンスは、第1および第2の生成されたパルス・シーケンスが印加される少なくとも1つの共通電極を共用し得る。実施形態では、(たとえば、局所EGM検知を使用して)心周期の異なる段階で、交互する波形が送達されてもよい。
【0082】
本発明の範囲から逸脱することなく、論じられている例示的な実施形態に様々な修正および追加がなされ得る。たとえば、上記の実施形態は特定の特徴を参照しているが、本発明の範囲は、特徴の異なる組合せを有する実施形態、および記載されている特徴のすべてを必ずしも含まない実施形態をも含む。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲に入るそのような代替、修正、および変形形態すべてを、そのすべての均等物と共に包含することが意図されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4