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特許7536998蓄電池管理装置、蓄電池管理方法、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】蓄電池管理装置、蓄電池管理方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20240813BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240813BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240813BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/392
H02J7/00 Y
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023506424
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010523
(87)【国際公開番号】W WO2022195701
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宏次
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 高弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 武則
(72)【発明者】
【氏名】三ッ本 憲史
(72)【発明者】
【氏名】炭田 義尚
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 廣次
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169161(JP,A)
【文献】特開2013-231441(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141500(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/103705(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/147322(WO,A1)
【文献】特開2020-195264(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147194(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/142114(WO,A1)
【文献】特開2017-76422(JP,A)
【文献】特開2015-164378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 - 10/48
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
G01R 31/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電池を備えた蓄電池システムの現在の運用状態データとして、前記蓄電池システムの充電/放電電力、充電/放電容量、SOC(State of Charge)を取得する取得部と、
前記充電/放電電力、前記充電/放電容量、前記SOCに基づいて前記蓄電池システムの劣化を予測する劣化予測部と、
前記蓄電池システムの動作を模擬的に再現可能なデジタルモデル、前記劣化予測部による劣化予測結果に基づいて、パラメータとしての、前記充電/放電電力、充放電の速さを示すCレート、SOC上下限値、待機時のSOC値を示す待機SOC値、周波数上下限値のうちの少なくとも1つ以上について複数パターンで劣化に関する演算を行い、寿命延伸効果が相対的に高いパターンを特定する演算部と、
前記演算部によって特定された寿命延伸効果が相対的に高いパターンの前記パラメータを表示部に表示させる表示制御部と、を備え
前記演算部は、前記蓄電池システムの寿命延伸効果よりも前記蓄電池システムによる収入を優先するように定義された所定の目的関数をさらに用いて、前記演算を行う、蓄電池管理装置。
【請求項2】
複数の蓄電池を備えた蓄電池システムの現在の運用状態データとして、前記蓄電池システムの充電/放電電力、充電/放電容量、SOC(State of Charge)を取得する取得部と、
前記充電/放電電力、前記充電/放電容量、前記SOCに基づいて前記蓄電池システムの劣化を予測する劣化予測部と、
前記蓄電池システムの動作を模擬的に再現可能なデジタルモデル、前記劣化予測部による劣化予測結果に基づいて、パラメータとしての、前記充電/放電電力、充放電の速さを示すCレート、SOC上下限値、待機時のSOC値を示す待機SOC値、周波数上下限値のうちの少なくとも1つ以上について複数パターンで劣化に関する演算を行い、寿命延伸効果が相対的に高いパターンを特定する演算部と、
前記演算部によって特定された寿命延伸効果が相対的に高いパターンの前記パラメータを表示部に表示させる表示制御部と、を備え
前記演算部は、複数の前記蓄電池のそれぞれの劣化をコスト換算してコストの合計が最小になるように、使用する前記蓄電池を選択するように定義された目的関数をさらに用いて、前記演算を行う、蓄電池管理装置。
【請求項3】
前記演算部は、ユーザによって設定された所定の制約条件をさらに用いて、前記演算を行う、請求項1または請求項2に記載の蓄電池管理装置。
【請求項4】
前記所定の制約条件は、前記蓄電池システムにおける性能を低下させないことを示す制約条件であって、周波数を規格内に収める制約条件である、請求項に記載の蓄電池管理装置。
【請求項5】
前記演算部は、クラウドコンピューティングシステムに配置される機能オブジェクトである、請求項1または請求項2に記載の蓄電池管理装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記蓄電池システムの現在の運用を継続すると前記蓄電池システムの劣化が所定速度よりも速く進行するか否かを判定し、
前記蓄電池システムの劣化が所定速度よりも速く進行すると判定された場合、前記表示制御部は、警報情報を前記表示部に表示させる、請求項1または請求項2に記載の蓄電池管理装置。
【請求項7】
前記演算部は、定期的に、前記蓄電池の運用時の温度を含むデータに基づいて前記蓄電池の劣化状態を推定し、
前記劣化状態が所定の劣化状態閾値に達した場合、前記表示制御部は、前記蓄電池の劣化を報知するための情報を前記表示部に表示させる、請求項1または請求項2に記載の蓄電池管理装置。
【請求項8】
前記演算部は、前記デジタルモデルを用いた処理の前に、前記パラメータごとの重み付けをAI(Artificial Intelligence)を用いて学習する、請求項1または請求項2に記載の蓄電池管理装置。
【請求項9】
複数の蓄電池を備えた蓄電池システムの現在の運用状態データとして、前記蓄電池システムの充電/放電電力、充電/放電容量、SOCを取得する取得ステップと、
前記充電/放電電力、前記充電/放電容量、前記SOCに基づいて前記蓄電池システムの劣化を予測する劣化予測ステップと、
前記蓄電池システムの動作を模擬的に再現可能なデジタルモデル、前記劣化予測ステップによる劣化予測結果に基づいて、パラメータとしての、前記充電/放電電力、充放電の速さを示すCレート、SOC上下限値、待機時のSOC値を示す待機SOC値、周波数上下限値のうちの少なくとも1つ以上について複数パターンで劣化に関する演算を行い、寿命延伸効果が相対的に高いパターンを特定する演算ステップと、
前記演算ステップによって特定された寿命延伸効果が相対的に高いパターンの前記パラメータを表示部に表示させる表示制御ステップと、を含み、
前記演算ステップは、前記蓄電池システムの寿命延伸効果よりも前記蓄電池システムによる収入を優先するように定義された所定の目的関数をさらに用いて、前記演算を行う、蓄電池管理方法。
【請求項10】
複数の蓄電池を備えた蓄電池システムの現在の運用状態データとして、前記蓄電池システムの充電/放電電力、充電/放電容量、SOCを取得する取得ステップと、
前記充電/放電電力、前記充電/放電容量、前記SOCに基づいて前記蓄電池システムの劣化を予測する劣化予測ステップと、
前記蓄電池システムの動作を模擬的に再現可能なデジタルモデル、前記劣化予測ステップによる劣化予測結果に基づいて、パラメータとしての、前記充電/放電電力、充放電の速さを示すCレート、SOC上下限値、待機時のSOC値を示す待機SOC値、周波数上下限値のうちの少なくとも1つ以上について複数パターンで劣化に関する演算を行い、寿命延伸効果が相対的に高いパターンを特定する演算ステップと、
前記演算ステップによって特定された寿命延伸効果が相対的に高いパターンの前記パラメータを表示部に表示させる表示制御ステップと、を含み、
前記演算ステップは、複数の前記蓄電池のそれぞれの劣化をコスト換算してコストの合計が最小になるように、使用する前記蓄電池を選択するように定義された目的関数をさらに用いて、前記演算を行う、蓄電池管理方法。
【請求項11】
コンピュータを、
複数の蓄電池を備えた蓄電池システムの現在の運用状態データとして、前記蓄電池システムの充電/放電電力、充電/放電容量、SOCを取得する取得部と、
前記充電/放電電力、前記充電/放電容量、前記SOCに基づいて前記蓄電池システムの劣化を予測する劣化予測部と、
前記蓄電池システムの動作を模擬的に再現可能なデジタルモデル、前記劣化予測部による劣化予測結果に基づいて、パラメータとしての、前記充電/放電電力、充放電の速さを示すCレート、SOC上下限値、待機時のSOC値を示す待機SOC値、周波数上下限値のうちの少なくとも1つ以上について複数パターンで劣化に関する演算を行い、寿命延伸効果が相対的に高いパターンを特定する演算部と、
前記演算部によって特定された寿命延伸効果が相対的に高いパターンの前記パラメータを表示部に表示させる表示制御部と、して機能させるためのプログラムであって、
前記演算部は、前記蓄電池システムの寿命延伸効果よりも前記蓄電池システムによる収入を優先するように定義された所定の目的関数をさらに用いて、前記演算を行う、プログラム
【請求項12】
コンピュータを、
複数の蓄電池を備えた蓄電池システムの現在の運用状態データとして、前記蓄電池システムの充電/放電電力、充電/放電容量、SOCを取得する取得部と、
前記充電/放電電力、前記充電/放電容量、前記SOCに基づいて前記蓄電池システムの劣化を予測する劣化予測部と、
前記蓄電池システムの動作を模擬的に再現可能なデジタルモデル、前記劣化予測部による劣化予測結果に基づいて、パラメータとしての、前記充電/放電電力、充放電の速さを示すCレート、SOC上下限値、待機時のSOC値を示す待機SOC値、周波数上下限値のうちの少なくとも1つ以上について複数パターンで劣化に関する演算を行い、寿命延伸効果が相対的に高いパターンを特定する演算部と、
前記演算部によって特定された寿命延伸効果が相対的に高いパターンの前記パラメータを表示部に表示させる表示制御部と、して機能させるためのプログラムであって、
前記演算部は、複数の前記蓄電池のそれぞれの劣化をコスト換算してコストの合計が最小になるように、使用する前記蓄電池を選択するように定義された目的関数をさらに用いて、前記演算を行う、プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池管理装置、蓄電池管理方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の蓄電池を備えた蓄電池システムが、例えば、バックアップ用電源や再生可能エネルギー発電による電力の蓄積装置などとして利用されている。
【0003】
また、蓄電池は、種々の要因によって徐々に劣化する。そのため、従来、蓄電池システムの運用者は、例えば、蓄電池管理装置の表示画面で、蓄電池の充放電サイクル数や、メンテナンス時の容量測定の結果などに基づいて、蓄電池の寿命診断を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2013-507628号公報
【文献】特開2012-135148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、蓄電池を今後どのように運用すれば寿命延伸が期待できるかなどの運用支援は行われていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、蓄電池システムの現在の運用状態データなどを用いて、寿命延伸に関する運用支援を行うことができる蓄電池管理装置、蓄電池管理方法、および、プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の蓄電池管理装置は、複数の蓄電池を備えた蓄電池システムの現在の運用状態データとして、前記蓄電池システムの充電/放電電力、充電/放電容量、SOCを取得する取得部と、前記充電/放電電力、前記充電/放電容量、前記SOCに基づいて前記蓄電池システムの劣化を予測する劣化予測部と、前記蓄電池システムの動作を模擬的に再現可能なデジタルモデル、前記劣化予測部による劣化予測結果に基づいて、パラメータとしての、前記充電/放電電力、充放電の速さを示すCレート、SOC上下限値、待機時のSOC値を示す待機SOC値、周波数上下限値のうちの少なくとも1つ以上について複数パターンで劣化に関する演算を行い、前記演算部によって特定された寿命延伸効果が相対的に高いパターンを特定する演算部と、寿命延伸効果が相対的に高いパターンの前記パラメータを表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の蓄電池システムの概要を示す全体構成図である。
図2図2は、第1実施形態のセルモジュール等の構成ブロック図である。
図3図3は、第1実施形態の上位制御装置の構成ブロック図である。
図4図4は、第1実施形態の上位制御装置の制御部の機能構成ブロック図である。
図5図5は、第1実施形態の上位制御装置の処理の概要を示す説明図である。
図6図6は、第1実施形態における変動抑制時の電力の周波数の経時変化の様子を模式的に示すグラフである。
図7図7は、第1実施形態の上位制御装置の処理を示すフローチャートである。
図8図8は、第2実施形態の上位制御装置の処理の概要を示す説明図である。
図9図9は、第2実施形態の上位制御装置の処理を示すフローチャートである。
図10図10は、第3実施形態の上位制御装置等の処理の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の蓄電池管理装置、蓄電池管理方法、および、プログラムの実施形態(第1実施形態~第3実施形態)について説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の蓄電池システム100の概要を示す全体構成図である。蓄電池システム100は、例えば、図1に示すように、電力計2と、蓄電池ユニット4と、蓄電池制御装置5と、上位制御装置6(蓄電池管理装置)と、を備える。なお、蓄電池システム100の構成はこれに限定されず、また、蓄電池システム100を構成する個別の機器の構成も以下のものに限定されない。
【0011】
商用電源1は、商用電力を供給する。電力計2は、商用電源1からの供給電力を測定する。負荷3は、電力を消費する機器である。
【0012】
蓄電池ユニット4は、電力計2の測定結果に基づいて商用電源1の電力を充電したり、商用電源1からの電力供給がなくなった場合には放電して負荷3に対して電力供給を行ったりする。
【0013】
蓄電池制御装置5は、蓄電池ユニット4のローカル制御を行う。上位制御装置6は、蓄電池制御装置5のリモート制御等を行う。
【0014】
上記構成において、負荷3は、通常時は商用電源1からの電力供給を受けて動作し、商用電源1からの電力供給がなくなった場合には蓄電池ユニット4からの電力供給を受けて動作する。
【0015】
蓄電池ユニット4は、電力を蓄える蓄電池装置11と、蓄電池装置11から供給された直流電力を所望の電力品質を有する交流電力に変換して負荷に供給する動作等を行うPCS(Power Conditioning System:電力変換装置)12と、を備えている。
【0016】
蓄電池装置11は、複数の電池盤ユニットや電池端子盤などを備えている。それぞれの電池盤は、複数のセルモジュールや、セルモジュールにそれぞれ設けられた複数のCMUや、セルモジュール間に設けられたサービスディスコネクトや、電流センサや、コンタクタなどを備える。
【0017】
また、電池盤は、BMUを備える。また、各CMUの通信ライン、電流センサの出力ラインは、BMUに接続されている。
【0018】
ここで、セルモジュール、CMUおよびBMUの詳細構成について説明する。図2は、第1実施形態のセルモジュール等の構成ブロック図である。セルモジュール31-1~31-20は、例えば、図2に示すように、それぞれ、直列接続された複数の電池セル61-1~61-101を備えている。
【0019】
CMU32-1~32-20は、対応するセルモジュール31-1~31-20を構成している電池セルの電圧及び所定箇所の温度を測定するためのAFEIC(Analog Front End IC:電圧温度計測IC)62と、それぞれが対応するCMU32-1~32-20全体の制御を行うMPU63と、BMU36との間でCAN(Controller Area Network)通信を行うためのCAN規格に則った通信コントローラ64と、セル毎の電圧に相当する電圧データ及び温度データを格納するメモリ65と、を備えている。
【0020】
以下の説明において、セルモジュール31-1~31-20のそれぞれと、対応するCMU32-1~32-20と、を合わせた構成については、蓄電池モジュール37-1~37-20と称する。例えば、セルモジュール31-1と対応するCMU32-1を合わせた構成を蓄電池モジュール37-1と称する。また、以下では、蓄電池モジュール37-1~37-20を特に区別しない場合は、単に、蓄電池モジュール37、または、蓄電池とも称する。
【0021】
また、BMU36は、BMU36全体を制御するMPU71と、CMU32-1~32-20との間でCAN通信を行うためのCAN規格に則った通信コントローラ72と、CMU32-1~32-20から送信された電圧データ及び温度データを格納するメモリ73と、を備えている。
【0022】
図3は、第1実施形態の上位制御装置6の構成ブロック図である。上位制御装置6は、コンピュータ装置として構成されており、例えば、図3に示すように、外部記憶装置6Aと、上位制御装置6全体を制御する制御部6Bと、各種情報を運用者に対し表示する表示部6Cと、運用者が各種情報を入力するための入力装置6Dと、制御部6Bと外部記憶装置6Aとの間および制御部6Bと蓄電池制御装置5等の外部装置との通信を行うための通信ネットワーク6Eと、を備えている。
【0023】
ここで、図4は、第1実施形態の上位制御装置6の制御部6Bの機能構成ブロック図である。制御部6Bは、例えば、図4に示すように、機能構成として、取得部91と、劣化予測部92と、演算部93と、表示制御部94と、処理部95と、を備える。また、以下では、図5を併せて参照する。図5は、第1実施形態の上位制御装置6の処理の概要を示す説明図である。
【0024】
取得部91は、外部装置(蓄電池ユニット4、蓄電池制御装置5など)から各種情報を取得する。取得部91は、例えば、蓄電池システム100の現在の運用状態データとして、蓄電池ユニット4の充電/放電電力[kW]と、充電/放電容量[kWh]と、SOC[%]と、の各データを取得し、外部記憶装置6Aに保存する。
【0025】
劣化予測部92は、充電/放電電力[kW]と、充電/放電容量[kWh]と、SOC[%]と、に基づいて蓄電池ユニット4の劣化を予測する。
【0026】
演算部93は、各種情報に基づいて各種演算処理を実行する。演算部93は、例えば、蓄電池システム100の動作を模擬的に再現可能なデジタルモデル(例えば、シミュレータプログラムや等価回路等)、劣化予測部92による劣化予測結果に基づいて、寿命延伸に関係するパラメータとしての、充電/放電電力[kW]、充放電の速さを示すCレート、SOC上下限値[%]、待機時のSOC値を示す待機SOC値[%]、周波数上下限値[Hz]のうちの少なくとも1つ以上について複数パターンで劣化に関する演算を行い、寿命延伸効果が相対的に高いパターンを特定する。以下では、上述の5つのパラメータのすべてを用いるものとして説明する。
【0027】
そして、演算部93によって寿命延伸効果が相対的に高いパターンのパラメータ値を特定し、表示制御部94によって表示させることによって、運用者に対して蓄電池ユニット4の寿命延伸に関する運用支援を行うことができる。運用支援とは、例えば、寿命延伸に寄与する充電/放電電力[kW]、Cレート、SOC上下限値[%]、待機SOC値[%]、周波数上下限値[Hz]を表示することや、ほかには、運用者によって与えられた充電/放電電力[kW]の制御に対し、所定の制約条件や所定の目的関数を用いて制御を調整することをいう。
【0028】
なお、寿命延伸の方法について、周波数調整、需給バランス調整、ピークシフトなどの場合に共通する方法としては、例えば、蓄電池ユニット4の最大出力の抑制、SOC範囲の限定、運転温度制約の設定、休み時間の設定などが考えられる。
【0029】
また、周波数調整の場合であれば、周波数に対する感度低下、不感帯の拡張などが考えられる。また、需給バランス調整の場合であれば、例えば、ランプレート(出力変化率)の緩和などが考えられる。また、ピークシフトの場合であれば、例えば、ピーク電力の閾値の引き上げ、放電レートの低下などが考えられる。
【0030】
表示制御部94は、各種情報を表示部6Cに表示させる制御を実行する。表示制御部94は、例えば、演算部93によって特定された、寿命延伸効果が相対的に高いパターンのパラメータを表示部6Cに表示させる。
【0031】
また、演算部93は、運用者によって設定された所定の制約条件をさらに用いて、上述の演算を行うようにしてもよい。制約条件としては、例えば、以下の(1)~(4)が考えられる。
【0032】
(1)蓄電池ユニット4における性能を低下させないようにする制約条件
(2)変動抑制によって得られる収入を減らさないようにする制約条件
(3)ピークシフトの際にピークシフトの量を減らさないようにする制約条件
(4)運用時間の制約条件(例えば、夜間は使用しないなど)
【0033】
(1)の例について、図6を用いて説明する。図6は、第1実施形態における変動抑制時の電力の周波数の経時変化の様子を模式的に示すグラフである。蓄電池ユニット4における性能を低下させない場合の例として、周波数を規格内に収める場合について説明する。
【0034】
図6において、周波数下限値から周波数上限値までの範囲が規格内である。そして、周波数を規格内に収めるには、周波数の変動抑制において、例えば、領域R1に示すように、従来技術のように周波数変動を最小限に抑えればよい。しかし、領域R2に示すように、不感帯を広げて変動を周波数の規格内に収められる範囲で蓄電池が動作するようにすることもできる。そうすれば、蓄電池ユニット4の動作を最小限に抑え、寿命延伸に寄与することができる。
【0035】
図4図5に戻って、また、演算部93は、蓄電池ユニット4の寿命延伸効果よりも蓄電池システム100による収入を優先するように定義された所定の目的関数をさらに用いて、演算を行うようにしてもよい。
【0036】
具体的には、例えば、以下のような目的関数を用いる。蓄電池システム100の運用で得られる収入をBとする。また、蓄電池の劣化、交換、追加によってかかるコストをCとする。また、αを、0<α<1を満たす定数とする。そうすると、目的関数Tは、以下の式(1)によって表すことができる。
T=α×B-(1-α)×C ・・・式(1)
【0037】
この目的関数Tを最大にするように各パラメータを決定する。そして、運用者の立場の違いにより、例えば、寿命延伸より収入を優先させたい場合や、収入よりも長期運用を目指して寿命延伸を優先させたい場合などがある。
【0038】
具体的には、例えば、収入とコストを同等に扱う場合、α=0.5とすればよい。
また、収入を優先させたい場合、0.5<α<1とすればよい。
また、寿命延伸を優先させたい場合、0<α<0.5とすればよい。
【0039】
このようにして、収入とコストのそれぞれの優先度に応じてαを決定することで、運用者の意向に沿ったパラメータを決定することができる。
【0040】
なお、蓄電池システム100の運用で得られる収入としては、例えば、以下の(11)~(13)が考えられる。
(11)周波数調整の場合、周波数調整に対する対価
(12)需給バランス調整の場合、再生可能エネルギー発電機による発電量の変動や需要変動に対する需給バランス調整への対価
(13)ピークシフトの場合、ピーク時とオフピーク時の電力料金の差など
【0041】
また、演算部93は、複数の蓄電池のそれぞれの劣化をコスト換算してコストの合計が最小になるように、使用する蓄電池を選択するように定義された目的関数をさらに用いて、演算を行うようにしてもよい。
【0042】
また、演算部93は、蓄電池システム100の現在の運用を継続すると蓄電池ユニット4の劣化が所定速度よりも速く進行するか否かを判定するようにしてもよい。そして、蓄電池ユニット4の劣化が所定速度よりも速く進行すると判定された場合、表示制御部94は、警報情報(アラーム)を表示部6Cに表示させる。
【0043】
また、演算部93は、定期的に、蓄電池の運用時の温度を含むデータに基づいて蓄電池の劣化状態を推定するようにしてもよい。そして、劣化状態が所定の劣化状態閾値に達したと推定された場合、表示制御部94は、蓄電池の劣化を報知するための情報を表示部6Cに表示させる。なお、一般的に、蓄電池の温度が高いほど、蓄電池の劣化速度は大きくなるので、蓄電池ユニット4の劣化状態の推定に蓄電池の温度を用いるのは有効である。また、蓄電池ユニット4の劣化状態の推定に、蓄電池の温度以外の情報を用いてもよい。
【0044】
また、処理部95は、各部91~94が行う処理以外の処理を実行する。
【0045】
図7は、第1実施形態の上位制御装置6の処理を示すフローチャートである。まず、取得部91は、ステップS1において、蓄電池システム100の現在の運用状態データとして、蓄電池ユニット4の充電/放電電力[kW]と、充電/放電容量[kWh]と、SOC[%]と、の各データを取得し、ステップS2において、それらの各データを外部記憶装置6Aに保存する。
【0046】
次に、ステップS3において、劣化予測部92は、充電/放電電力[kW]と、充電/放電容量[kWh]と、SOC[%]と、に基づいて蓄電池ユニット4の劣化を予測する。
【0047】
次に、ステップS4において、取得部91は、パラメータ(充電/放電電力[kW]、Cレート、SOC上下限値[%]、待機SOC値[%]、周波数上下限値[Hz])の入力があったか否かを判定し、Yesの場合はステップS5に進み、Noの場合はステップS4に戻る。
【0048】
ステップS5において、演算部93は、デジタルモデル、ステップS3による劣化予測結果に基づいて、寿命延伸に関係するパラメータとしての、充電/放電電力[kW]、Cレート、SOC上下限値[%]、待機SOC値[%]、周波数上下限値[Hz]について複数パターンで劣化に関する演算を行う。
【0049】
次に、ステップS6において、演算部93は、ステップS5によるデジタルモデル演算の結果として、寿命延伸効果が相対的に高いパターンの充電/放電電力[kW]、Cレート、SOC上下限値[%]、待機SOC値[%]、周波数上下限値[Hz]を算出する。
【0050】
次に、ステップS7において、表示制御部94は、ステップS6によって算出された、寿命延伸効果が相対的に高いパターンのパラメータを表示部6Cに表示させる。
【0051】
次に、ステップS8において、演算部93は、パラメータ(充電/放電電力[kW]、Cレート、SOC上下限値[%]、待機SOC値[%]、周波数上下限値[Hz])が変更されたか否かを判定し、Yesの場合はステップS5に戻り、Noの場合は処理を終了する。
【0052】
このように、第1実施形態の上位制御装置6によれば、蓄電池システム100の現在の運用状態データなどを用いて、寿命延伸に関する運用支援を行うことができる。具体的には、デジタルモデル演算の結果として、寿命延伸効果が相対的に高いパターンのパラメータ(充電/放電電力[kW]、Cレート、SOC上下限値[%]、待機SOC値[%]、周波数上下限値[Hz])を算出、表示することができる。
【0053】
つまり、蓄電池システム100は運転方法によってその寿命が大きく変わるが、上述のデジタルモデル演算による運用支援によって、運用者は蓄電池システム100の寿命延伸を容易に行うことができる。
【0054】
また、さらに、上述の制約条件や目的関数を用いることで、運用者の意図に沿ったパターンのパラメータを算出、表示することができる。具体的には、例えば、蓄電池システム100の運用で得られる収入と、蓄電池の劣化、交換、追加によってかかるコストと、のどちらをどの程度優先するかを反映したパラメータを算出、表示することができる。
【0055】
また、蓄電池ユニット4の劣化速度が速い場合に警報情報を表示させることで、運用者は迅速に必要な措置を講じることができる。
【0056】
また、定期的に蓄電池の劣化状態を推定し、劣化と推定されたときに運用者に報知することで、運用者は迅速に必要な措置を講じることができる。
【0057】
また、図6に示すように、周波数を規格内に収める場合に、周波数の変動抑制において、領域R1に示すように従来技術のように周波数変動を最小限に抑える代わりに、領域R2に示すように不感帯を広げて変動を周波数の規格内に収められる範囲で蓄電池が動作するようにすることができる。そうすれば、蓄電池ユニット4の動作を最小限に抑え、寿命延伸に寄与することができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の事項については、重複する説明を適宜省略する。第2実施形態では、第1実施形態の場合と比較して、AI(Artificial Intelligence)学習を用いる点で異なっている。
【0059】
図8は、第2実施形態の上位制御装置6の処理の概要を示す説明図である。演算部93は、デジタルモデルを用いた処理の前に、パラメータ(充電/放電電力[kW]、Cレート、SOC上下限値[%]、待機SOC値[%]、周波数上下限値[Hz])ごとの重み付けを、AIを用いて学習する。
【0060】
図9は、第2実施形態の上位制御装置6の処理を示すフローチャートである。第1実施形態の図7のフローチャートと比較して、ステップS5の前にステップS11が挿入されている点で異なっている。
【0061】
ステップS4でYesの場合、ステップS11において、演算部93は、デジタルモデルを用いた処理の前に、パラメータごとの重み付けを、AIを用いて学習する。
【0062】
その後、ステップS5において、演算部93は、デジタルモデル、ステップS3による劣化予測結果、および、ステップS11によるAI学習結果に基づいて、パラメータについて複数パターンで劣化に関する演算を行う。
【0063】
このように、第2実施形態の上位制御装置6によれば、パラメータ(充電/放電電力[kW]、Cレート、SOC上下限値[%]、待機SOC値[%]、周波数上下限値[Hz])ごとの重み付けをAI学習によって決定することで、演算精度をより向上し、寿命延伸効果等をより高めることができる。
【0064】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第1実施形態と同様の事項については、重複する説明を適宜省略する。第3実施形態では、第1実施形態の場合と比較して、デジタルモデル演算をクラウドコンピューティングシステム(不図示。以下、単に「クラウド」ともいう。)によって行う点で異なっている。
【0065】
図10は、第3実施形態の上位制御装置6等の処理の概要を示す説明図である。演算部93(図4)は、クラウドコンピューティングシステムに配置される機能オブジェクトである。具体的には、クラウドにおける演算部93は、蓄電池群に関する運用状態データや劣化予測結果等を集めて、デジタルモデル演算を行い、演算結果として寿命延伸効果が高いパラメータを算出し、各蓄電池群へフィードバックする。処理フロー自体は図7と同様なので、詳細な説明を省略する。
【0066】
このように、第3実施形態の上位制御装置6によれば、クラウドによってデジタルモデル演算を行うことによって、例えば、演算量が多い場合等にも容易に対応できる。
【0067】
本実施形態の蓄電池管理装置として機能する上位制御装置6は、CPU(Central Processing Unit)などの制御装置、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)、CD(Compact Disc)ドライブ装置などの外部記憶装置、ディスプレイ装置などの表示装置、キーボードやマウスなどの入力装置等を備えた通常のコンピュータを利用したハードウェア構成とすることが可能である。
【0068】
したがって、本実施形態の蓄電池管理装置として機能する上位制御装置6で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供可能である。
【0069】
また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、当該プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
また当該プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0070】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0071】
例えば、蓄電池管理装置は、上位制御装置6とは別のコンピュータ装置によって実現してもよい。
【0072】
また、第1実施形態に対して、第2実施形態と第3実施形態の両方を組み合わせて、AI学習とクラウドを同時に実現してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10