IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チェ, ボンウィの特許一覧

<>
  • 特許-液体に気体を溶解させるための装置 図1
  • 特許-液体に気体を溶解させるための装置 図2
  • 特許-液体に気体を溶解させるための装置 図3
  • 特許-液体に気体を溶解させるための装置 図4
  • 特許-液体に気体を溶解させるための装置 図5
  • 特許-液体に気体を溶解させるための装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】液体に気体を溶解させるための装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 21/20 20220101AFI20240813BHJP
   B01F 23/23 20220101ALI20240813BHJP
   B01F 25/53 20220101ALI20240813BHJP
   B01F 25/20 20220101ALI20240813BHJP
   B01F 25/421 20220101ALI20240813BHJP
   B01F 25/42 20220101ALI20240813BHJP
   B01F 25/10 20220101ALI20240813BHJP
   B01F 101/22 20220101ALN20240813BHJP
【FI】
B01F21/20
B01F23/23
B01F25/53
B01F25/20
B01F25/421
B01F25/42
B01F25/10
B01F101:22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023515161
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 KR2021012036
(87)【国際公開番号】W WO2022055200
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0114335
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523079093
【氏名又は名称】チェ, ボンウィ
【氏名又は名称原語表記】CHOI, Bong Eui
【住所又は居所原語表記】303, 14-8, Yeonggyeong 1-gil, Wansan-gu, Jeonju-si, Jeollabuk-do 54984,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ボンウィ
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0638812(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-0852936(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0038532(KR,A)
【文献】特開2006-312160(JP,A)
【文献】特開2003-252824(JP,A)
【文献】特開2013-158724(JP,A)
【文献】特開2017-131840(JP,A)
【文献】特開2005-066387(JP,A)
【文献】米国特許第06447158(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
C02F 1/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽に収容された水に酸素源からの酸素を溶解させるための高濃度酸素水生成装置であって、
前記水槽の吐出口に流体流動可能に連結される循環ポンプと、
前記循環ポンプ及び前記酸素源に流体流動可能に連結され、前記循環ポンプを介して前記水槽に収容された水及び前記酸素源からの酸素を受け、水に対する溶存酸素濃度が増大した酸素水を排出する溶解槽と、
前記溶解槽に流体流動可能に連結され、巻回されたコイル部位または複数の折曲部位を備え、前記酸素水の溶存酸素濃度をもっと増加させて溶存酸素濃度180ppm以上の高濃度酸素水を排出する押圧溶解部と、
前記押圧溶解部及び前記水槽に流体流動可能に連結され、前記押圧溶解部から前記高濃度酸素水を受けて維持しながら利用者に提供するディスペンサー水槽と、
を備え、
前記溶解槽は、
それぞれが外側下方に延びる傾斜面を有する形態を有する複数の分散トレイと、
それぞれが内側下方に延びる傾斜面を有する形態を有し、下端に貫通孔が形成されている複数の集水トレイと、
を備え、
前記複数の分散トレイと前記複数の集水トレイとが上下方向に交互に配置されることで、水と酸素との接触面積及び接触時間を極大化するとともに、重力による衝突によって水及び酸素の混合物が受ける衝撃及びこれによる脱気を最小化することができる、高濃度酸素水生成装置。
【請求項2】
前記循環ポンプに連結され、前記酸素源からの酸素を気泡形態として水流内に分散させて水/酸素混合物を生成し、前記溶解槽に供給するミキサーをさらに備える、請求項1に記載の高濃度酸素水生成装置。
【請求項3】
前記複数の分散トレイのうちの少なくとも一部が円錐形を有する、請求項1に記載の高濃度酸素水生成装置。
【請求項4】
前記複数の集水トレイのうちの少なくとも一部が漏斗形を有し、下端に前記貫通孔が形成されている、請求項3に記載の高濃度酸素水生成装置。
【請求項5】
前記複数の集水トレイのそれぞれの外縁端が前記溶解槽の内壁に密着している、請求項1または4に記載の高濃度酸素水生成装置。
【請求項6】
前記押圧溶解部は、
第1入口及び前記第1入口より拡張した第1出口を有する縮径リデューサーと、
第2入口及び前記第2入口より縮小した第2出口を有する拡径リデューサーと、
前記縮径リデューサーの前記第1出口と前記拡径リデューサーの第2入口との間に配置され、前記巻回されたコイル部位または前記複数の折曲部位を備え、前記第1入口及び前記第2出口よりも上昇した圧力の下で前記溶存酸素濃度をもっと増加させる押圧溶解管と、
を備える、請求項1に記載の高濃度酸素水生成装置。
【請求項7】
前記ディスペンサー水槽と前記水槽との間に配置され、前記循環ポンプが動作していない状態で前記ディスペンサー水槽に収容された前記高濃度酸素水の脱気を水の重力によって抑制する安定化管、をさらに備える、請求項1に記載の高濃度酸素水生成装置。
【請求項8】
前記安定化管は、
前記ディスペンサー水槽に連結され、上端に形成されている入口、及び下側に形成されている出口を備える第1安定化管と、
前記第1安定化管に連結され、下側に形成されている入口、及び上側に形成されている出口を備える第2安定化管と、
を含む、請求項7に記載の高濃度酸素水生成装置。
【請求項9】
前記第1安定化管は、
前記第1安定化管の前記入口の下方に設けられ、前記第1安定化管の前記入口を通して流入する高濃度酸素水が下方に自由落下することを防止し、前記第1安定化管の内壁に沿って下がるようにする緩衝トレイ、を備える、請求項8に記載の高濃度酸素水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体に気体を溶解及び溶存させるための装置に関するものであり、より詳しくは、電気化学的触媒または添加剤を媒介せず、物理的メカニズムで過飽和濃度まで気体を溶解及び溶存させることができ、常圧の条件で長時間脱気せず、溶存状態を持続させることができる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水に酸素を溶解させて用いる分野が多い。例えば、微生物を用いて有機物を分解処理する生物学的廃水処理場、魚類養殖場、水耕栽培などに酸素溶解装置が広く活用されている。
【0003】
溶存酸素が多く含有された酸素水の飲用は人体健康にも有益であると知られている。すなわち、呼吸に足りない酸素を満たすことができる方法として、溶存酸素濃度が一定値以上の過飽和溶存酸素水を摂取すれば、血中酸素濃度が増加して新陳代謝が向上し、健康に有益な多くの結果が得られる。例えば、運動選手は、肺機能バイパスによって脈搏数の増加なしに運動能力を向上させることができ、筋力及びスタミナ、かつ心臓及び肺の機能が向上し、疲労回復を促進させる。酸素水によって血液中に補充された酸素中の一部は脳に供給できるので、酸素水は頭脳活動の多い学生や研究者の思考力及び集中力の向上にも有用である。一方、高濃度酸素水は酸素不足によって引き起こされた脳疾患患者にも有用な治療効果を提供するものと知られている。
【0004】
本出願の発明者は、酸素水に関連して、コロナウイルス感染症-19(COVID-19)に注目している。COVID-19を引き起こす新種コロナウイルスは感染者の肺損傷を引き起こし、これによる低酸素症をもたらすものと知られている(Wei-Haas M., "They don't struggle to breathe - but COVID-19 is starving them of oxygen", National Geographic, 2020.5.8. ウェブアドレス: https://www.nationalgeographic.com/science/2020/05/they-do-not-struggle-tobreathe-but-coronavirus-starves-them-of-oxygen-cvd/)。肺損傷によって肺胞でのガス交換が正常になされない重症患者や中等症患者の場合、酸素呼吸器とは別に高濃度酸素水を摂取すれば身体機能の維持及び治療に大いに役立つであろう。
【0005】
一方、COVID-19患者の約80%は無症状または軽症患者であると知られている。このような軽症患者のうちでも相当数は呼吸で現れない低酸素症(silent hypoxia)を病んでいることがあり得ると知られている(Rizzo, A., "Silent hypoxia and its role in COVID-19 detection", 2020.6.3., ウェブアドレス: https://www.news-medical.net/news/20200603/Silent-hypoxia-and-its-role-in-COVID-19-detection.aspx)。したがって、軽症患者においても酸素補充を疎かにして血中酸素飽和度が落ちた状況が続く場合、新陳代謝を阻害することはもちろんのこと、患者の脳、心臓、腎臓、肝などの身体器管が損傷することがある。酸素呼吸器のような高価の装備を必要とするものではなく、活動に制約を与えないので、酸素水は軽症患者に対しても酸素を補う効果的な方案になることができる。
【0006】
このように、重症度にかかわらず、COVID-19患者の生命維持、脳を含めた身体器管の機能維持、及び疾患治療のためには、効果的に身体の内部に酸素を供給する方案が必要であり、酸素水はこれに対する一番効率的な代案になることができると言える。
【0007】
水に酸素を溶解させるために多様な装置が提示されている。従来技術は次の3種に大別することができる。
【0008】
一番目の従来技術は、養殖場、水耕栽培、生物学的汚廃水処理場などに主に適用する技術であり、水槽の底に散気管を設けることで、気体酸素を微細に散気させて水との接触面積を増加させる曝気方式である。この技術は欠乏した酸素濃度を飽和濃度に近く高めるのには適するが、過飽和のレベルに酸素が溶存する高濃度酸素水を生成することには採択しにくい。
【0009】
二番目の従来技術は、密閉した圧力容器に水を満たし、圧力を印加した状態で、容器の下端で微細酸素気泡を噴射し、押圧された状態で一定の時間滞留させることで、水中の溶存酸素濃度を過飽和状態まで溶解させる方式である。しかしながら、この技術は、高圧容器、高揚程ポンプ、及び高圧酸素タンクなどを必要とし、一定の時間滞留させなければならないため、装置の全体的な大きさが大きくなり、連続生産が難しいという問題点がある。また、取水するためには常圧に減圧しなければならないが、減圧の際に早く脱気して溶存酸素濃度が大きく減少するという限界がある。したがって、この技術は、溶存酸素濃度150ppm以上の超高濃度の酸素水を得にくく、酸素水飲料工場などでのみ採択可能であるだけで、小規模装置では適用しにくい。
【0010】
三番目の従来技術は、流れる流体に酸素を注入し、溶解管内で水と酸素との接触を増大させることで、安定的に溶解効率を高める方式である。その例として、韓国特許第10-0638799号に記載された酸素溶解装置を挙げることができる。この文献に記載された酸素溶解装置では、溶解管の内部に平面トレイを多段に構成することで、各トレイから溢れて直下トレイに落下する水/酸素混合物が直下トレイに入っている水/酸素混合物と衝突して混合することにより水と酸素との接触が最大化して溶解効率を高めることができるようになっている。ところが、このように、水/酸素混合物間の衝突または水/酸素混合物と装置内部構造物との衝突を前提として動作する装置は衝突過程でむしろ溶存酸素の脱気を促進することがある。例えば、150ppm以上の超高濃度過飽和レベルに酸素を溶解させることに限界がある。また、この装置は、静止状態で溶存酸素が次第に脱気し、時間が経つのに伴って溶存酸素濃度が低くなるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国特許第10-0638799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような問題点を解決するためのものであり、高濃度に酸素が溶解している酸素水を生成することができ、循環動作が停止した状態でも溶存酸素の脱気を最大限抑制して溶存酸素濃度を維持することができ、サイズや騷音が小さくて家庭、事務室、病院などの室内設置場所で高濃度酸素水を常時取水及び飲用することができるようにする高濃度酸素水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記技術的課題を達成するための本発明の高濃度酸素水生成装置は、水槽に収容された水に酸素源からの酸素を溶解させて高濃度酸素水を生成する。高濃度酸素水生成装置は、前記水槽の吐出口に流体流動可能に連結される循環ポンプと、前記循環ポンプ及び前記酸素源に流体流動可能に連結され、前記循環ポンプを介して前記水槽に収容された水及び前記酸素源からの酸素を受け、水に対する溶存酸素濃度が増大した酸素水を排出する溶解槽と、前記溶解槽に流体流動可能に連結され、巻回されたコイル部位または複数の折曲部位を備え、前記酸素水の溶存酸素濃度をもっと増加させて溶存酸素濃度180ppm以上の高濃度酸素水を排出する押圧溶解部と、前記押圧溶解部及び前記水槽に流体流動可能に連結され、前記押圧溶解部から前記高濃度酸素水を受けて維持しながら利用者に提供するディスペンサー水槽とを備える。前記溶解槽は、それぞれが外側下方に延びる傾斜面を有する形態を有する複数の分散トレイと、それぞれが内側下方に延びる傾斜面を有する形態を有し、下端に貫通孔が形成されている複数の集水トレイとを備える。前記複数の分散トレイと前記複数の集水トレイとが上下方向に交互に配置されることで、水と酸素との接触面積及び接触時間を極大化するとともに、重力による衝突によって水及び酸素の混合物が受ける衝撃及びこれによる脱気を最小化することができる。
【0014】
高濃度酸素水生成装置は、前記循環ポンプに連結され、前記酸素源からの酸素を気泡形態として水流内に分散させて水/酸素混合物を生成し、前記溶解槽に供給するミキサーをさらに備えることができる。
【0015】
前記複数の分散トレイのうちの少なくとも一部が円錐形になることができる。
【0016】
前記複数の集水トレイのうちの少なくとも一部が漏斗形を有し、下端に前記貫通孔が形成されることができる。
【0017】
前記複数の集水トレイのそれぞれの外縁端が前記溶解槽の内壁に密着することができる。
【0018】
前記押圧溶解部は、第1入口及び前記第1入口より拡張した第1出口を有する縮径リデューサーと、第2入口及び前記第2入口より縮小した第2出口を有する拡径リデューサーと、前記縮径リデューサーの前記第1出口と前記拡径リデューサーの第2入口との間に配置され、前記巻回されたコイル部位または前記複数の折曲部位を備え、前記第1入口及び前記第2出口よりも上昇した圧力の下で前記溶存酸素濃度をもっと増加させる押圧溶解管とを備えることができる。
【0019】
高濃度酸素水生成装置は、前記ディスペンサー水槽と前記水槽との間に配置され、前記循環ポンプが動作していない状態で前記ディスペンサー水槽に収容された前記高濃度酸素水の脱気を水の重力によって抑制する安定化管をさらに備えることができる。
【0020】
前記安定化管は、前記ディスペンサー水槽に連結され、上端に形成されている入口、及び下側に形成されている出口を備える第1安定化管と、前記第1安定化管に連結され、下側に形成されている入口、及び上側に形成されている出口を備える第2安定化管とを含むことができる。
【0021】
前記第1安定化管は、前記第1安定化管の前記入口の下方に設けられ、前記第1安定化管の前記入口を通して流入する高濃度酸素水が下方に自由落下することを防止し、前記第1安定化管の内壁に沿って下がるようにする緩衝トレイを備えることができる。
【0022】
より一般的な観点で、本発明は、酸素が水に溶解した酸素水に限定されず、高濃度に液体に気体を溶解させることができ、循環動作が停止した状態でも溶存気体濃度を維持することができる気体溶解装置を提供する。本発明の気体溶解装置は、循環ポンプ及び気体源からそれぞれ液体及び気体を受け、液体に対する溶存気体濃度が増大した液体/気体混合物を排出する溶解槽と、前記溶解槽に流体流動可能に連結され、巻回されたコイル部位または複数の折曲部位を備え、前記溶存気体濃度をもっと増加させて高濃度気体溶液を排出する押圧溶解部とを備える。前記溶解槽は、それぞれが外側下方に延びる傾斜面を有する形態を有する複数の分散トレイと、それぞれが内側下方に延びる傾斜面を有する形態を有し、下端に貫通孔が形成されている複数の集水トレイとを備え、前記複数の分散トレイと前記複数の集水トレイとは上下方向に交互に配置されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、溶解槽の内部に投入された水/酸素混合物が溶解槽内で最大限に長さの伸ばされた傾斜面に沿って広く拡散して落下することにより、水と酸素との接触面積及び接触時間が極大化し、よって酸素水内の溶存酸素と溶解槽の上部に充填された酸素気体との平衡がなされるまで十分に溶解することになるので、溶存酸素濃度180ppm以上の高濃度酸素水を生成することができる。
【0024】
高濃度酸素水生成装置の内部で酸素水間の衝突や酸素水と装置内部構造物との衝突が最大限抑制されるので、酸素の脱気を最大限抑制するだけでなく、衝突音その他の騷音の発生がほとんどなくなる。例えば、溶解槽内で水/酸素混合物が落下することによって発生し得る、下部に溜まっている酸素水との衝突衝撃を最小化することができるように、部材の形状及び配置が決定され、第1安定化管でも、これと同じ観点で部材の形状及び配置が決定される。したがって、衝撃に敏感な高濃度酸素水が装置の内部で衝撃によって脱気することを最大限防止することができる。
【0025】
また、稼働が停止した状態でディスペンサー水槽に別途の人為的圧力が印加されることなしに、ディスペンサー水槽に常圧に近い条件が付与されるが、第1及び第2安定化管に収容された水カーテン(water curtain)方式の流体遮断作用によってディスペンサー水槽の内部に収容された流体の移動が制限されるので、ディスペンサー水槽の内部に収容された酸素水から溶存酸素の脱気が最大限抑制される。したがって、利用者が取水しようとするとき、溶解槽を再駆動して動作させなくても、すぐ高濃度酸素水を取水して飲用することができるようになる。
【0026】
このような高濃度酸素水生成装置は、家庭、事務室、病院などの場所で室内空間のどこにも設置することができる。特に、本発明の高濃度酸素水生成装置は、酸素源として医療用酸素タンクが適用された状態で病院その他の関連治療施設に設置することができ、本出願が施行される時点で全世界的に大流行しているCOVID-19患者に高濃度酸素水を提供することができる。これにより、高濃度酸素水生成装置は、患者の重症度にかかわらず、COVID-19患者の生命維持、脳を含めた身体器管の機能維持、及び疾患治療に役立つことができる。他の呼吸器疾患、及びその他の疾患を病んでいる患者にも有用であるというのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施例による高濃度酸素水生成装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1に示す溶解槽の断面図である。
図3図2に示す分散トレイ及び集水トレイの斜視図である。
図4図1に示す押圧溶解部の構成を具体的に示す図である。
図5図1に示すディスペンサー水槽、第1安定化管、及び第2安定化管の構成を具体的に示す図である。
図6】装置の動作過程で溶解槽内の水の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の課題解決手段の特徴及び利点をより明確にするために、添付図面に示す特定の実施例を参照して本発明をより具体的に説明する。
【0029】
添付図面で、同じ構成要素はなるべく同じ符号で示すことにする。図面で、一部の構成要素は誇張しているか、省略するかまたは概略的に示されており、各構成要素の大きさが実際の大きさをそのまま反映するものではない。
【0030】
以下の説明で、本発明の実施例を理解するのに必要な部分のみを説明し、発明の要旨をあいまいにする可能性がある公知の機能及び構成についての詳細な説明は便宜上省略する。
【0031】
また、ある構成要素が他の構成要素に「連結」されているかまたは「接続」されていると言及する場合、これは、論理的、物理的または流体的に連結されるか接続されることができることを意味する。言い換えれば、構成要素が他の構成要素に直接的に連結されるか接続されていることもあるが、中間に他の構成要素が存在することもでき、他の構成要素を媒介とするか他の構成要素を介して間接的に連結されるか接続される場合を含めて記述したものと理解されなければならない。
【0032】
本明細書で使用する用語は単に特定の実施例を説明するために使うものであり、本発明を限定しようと選択されたものではない。単数の表現は、文脈上明白に他に指示しない限り、複数の表現を含む。また、本明細書で記述する「含む」または「備える」という表現は明細書上に記載した特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらの組合せが存在することを指定しようとするものであるだけで、一つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらの組合せが追加的に存在するか付加される可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0033】
以下の説明で、「前方」、「後方」、「上部」、「下部」、「左側」、「右側」などの用語は図面を基準として表現したものであり、この用語によって各構成要素の形状及び位置を制限しようとするものではない。一方、「接続チューブ」という用語は部材間の流体の流れを媒介する導管を指称する意味として使われるものであり、特定の形状または素材に限定するものではない。他方で、「~槽」や「~管」は相対的な大きさを勘案して任意に付与した名称であるが、形状や機能において本質的な相違点を内包しているものではなく、よって変動可能な表現であるというのに気を付けなければならない。
【0034】
図1を参照すると、本発明の一実施例による高濃度酸素水生成装置は、水槽10に収容された水に酸素を溶解させ、再び水槽10に復帰させ、このような循環過程を数回繰り返すことによって水に酸素を過飽和させる装置であり、循環ポンプ20と、酸素源30と、ミキサー40と、冷却チラー50と、溶解槽60と、押圧溶解部70と、ディスペンサー水槽90と、第1安定化管100と、第2安定化管110とを含む。また、高濃度酸素水生成装置は、全般的な動作を制御するための制御回路が実装されたプリント基板(図示せず)をさらに備える。
【0035】
循環ポンプ20は、第1接続チューブ12を介して水槽10の下端の吐出口に接続される流入口と、第2接続チューブ22を介してミキサー40に接続される流出口とを備え、水槽10に収容された水を吸引してミキサー40側の流出口に排出することで、水槽10の水をミキサー40と、冷却チラー50と、溶解槽60と、押圧溶解部70と、ディスペンサー水槽90と、第1安定化管100と、第2安定化管110とを通して循環させる。
【0036】
酸素源30は、第3接続チューブ38を通してミキサー40に酸素気体を供給する。酸素源30としては、医療用酸素気体が充填された医療用酸素タンクを使うことができる。酸素タンク30の上端には、酸素流量または残留酸素量を表示する酸素ゲージ32と、必要に応じて酸素供給を完全に遮断するためのノブ34とが設けられる。また、酸素タンク30と第3接続チューブ38との接続部位には、プリント基板からの指令に応じてミキサー40側への酸素供給を断続するソレノイドバルブ36が設けられる。また、第3接続チューブ38を通して酸素や水がミキサー40から酸素タンク30側に逆流することを防止するために、第3接続チューブ38の一地点にはチェックバルブ(図示せず)が設けられることができる。一方、本発明の他の実施例においては、酸素源30として、圧力スイング吸着方式、メンブレイン方式または電気分解方式酸素発生装置またはその他の方式の酸素供給器を使うこともできる。このような酸素源30は高濃度酸素水生成装置のハウジング内に格納される装置構成の一部ではなく、高濃度酸素水生成装置の外部に備えられ、第3接続チューブ38に接続される別途の装置であってもよい。
【0037】
ミキサー40は、第2接続チューブ22を介して循環ポンプ20の吐出口に接続される第1入口と、第3接続チューブ38を介して酸素源30に接続される第2入口と、第4接続チューブ42を介して冷却チラー50に接続される出口とを備え、酸素源30から供給される酸素を第1及び第2接続チューブ12、22を通過する水流内に気泡形態として分散させる。一実施例において、ミキサー40はT字形接続具(Tee Fitting)によって具現される。しかし、他の実施例においては、ミキサー40がベンチュリ型インジェクターによって具現されることもできる。
【0038】
冷却チラー50は、溶解槽60などの動作によって酸素が水に溶解する過程で溶解度が増加するように、第4接続チューブ42を通してミキサー40から供給される水/酸素混合物を冷却させるとともに、水/酸素混合物の温度をなるべく一定に維持させる。冷却チラー50は、冷却した水/酸素混合物を第5接続チューブ52を通して溶解槽60に供給する。
【0039】
溶解槽60は第5接続チューブ52を通して投入される水/酸素混合物を受け、水に酸素気体を過飽和水準に溶解させる。溶解槽60は略円筒状を有し、垂直に立設される。溶解槽60の上面中央には第5接続チューブ52の一端部が結合される流入口が形成されており、底面には押圧溶解部70との接続のための第6接続チューブ66の一端部が結合される流出口が形成されている。溶解槽60の上面外側または一側面には、溶解槽60の内圧を検出して示す圧力センサー62が設けられる。また、溶解槽60の他側面には溶解槽60の内部水位を検出する水位センサー64が設けられる。
【0040】
図2は溶解槽60の構成を具体的に示す。図2を参照すると、溶解槽60の上端にある流入口202と下端にある流出口204との間には多数の分散トレイ210a~210g及び集水トレイ220a~220fが上下方向に交互に、すなわち、互い違いに配置されている。すなわち、溶解槽60の流入口202の下側には第1分散トレイ210aが配置され、第1分散トレイ210aの下側には第1集水トレイ220aが配置され、第1集水トレイ220aの下側には第2分散トレイ210bが配置され、第2分散トレイ210bの下側には第2集水トレイ220bが配置され、第2集水トレイ220bの下側には第3分散トレイ210cが配置され、第3分散トレイ210cの下側には第3集水トレイ220cが配置され、第3集水トレイ220cの下側には第4分散トレイ210dが配置され、第4分散トレイ210dの下側には第4集水トレイ220dが配置され、第4集水トレイ220dの下側には第5分散トレイ210eが配置され、第5分散トレイ210eの下側には第5集水トレイ220eが配置され、第5集水トレイ220eの下側には第6分散トレイ210fが配置され、第6分散トレイ210fの下側には第6集水トレイ220fが配置され、第6集水トレイ220fの下側には第7分散トレイ210gが配置される。
【0041】
第1~第7分散トレイ210a~210gは互いに同じ形態を有することができる。また、第1~第6集水トレイ220a~220fは互いに同じ形態を有することができる。図2には7個の分散トレイ210a~210g及び6個の集水トレイ220a~220fが示されているが、各トレイの個数がこれに限定されるものではなく、高濃度酸素水生成装置のサイズまたは諸元に応じてトレイの個数は設計的に変更可能である。一方、図2には溶解槽60の流出口204の直上にある最下端トレイが分散トレイ210gであるものとして示されているが、最後のトレイが集水トレイになることもできる。他方で、最上端トレイが分散トレイ210aでなく集水トレイになることもできる。
【0042】
図3に示すように、各分散トレイ210a~210gは緩やかな傾斜面を有する円錐形を有する。分散トレイ210a~210gの外縁端の直径は溶解槽60の内径よりも少し小さく製作され、よって分散トレイ210a~210gの外縁端と溶解槽60の内壁との間に隙間が形成される。したがって、分散トレイ210a~210gに流入する水または水/酸素混合物はその上部傾斜面上で外縁端に向かって下がった後、当該分散トレイ210a~210gの外縁端と溶解槽60の内壁との間の隙間を通して下方に移動するようになる。溶解槽の製作過程で、各分散トレイ210a~210gは複数の地点を支持部材212~218を媒介して溶解槽60の内壁に溶接するかまたは接着剤で付着することで固定できる。
【0043】
一方、各集水トレイ220a~220fは緩やかな傾斜面を有する漏斗、すなわち逆円錐形を有する。各集水トレイ220a~220fは下端頂点部位が切開されて貫通孔222が形成された形態を有する。集水トレイ220a~220fの外縁端の直径は、溶解槽60内に集水トレイ220a~220fを挿入及び設置することができる範囲内で、溶解槽60の内径と同じ大きさを有する。各集水トレイ220a~220fは、外縁端を溶解槽60の内壁に溶接するかまたは接着剤で付着させることによって固定される。組立が完了した状態で、各集水トレイ220a~220fに流入する水/酸素混合物は当該集水トレイ220a~220fの上部傾斜面上で貫通孔222に向かって下がり、貫通孔222に集まった後、貫通孔222を通して下方に排出される。
【0044】
流入口202を通して投入される水/酸素混合物が第1分散トレイ210aに衝突するとき、衝撃が最小化するように、溶解槽60の流入口202と最上端の第1分散トレイ210aとの距離はできるだけ小さく決定することが好ましい。また、各分散トレイ210a~210gの外縁端から下方に落下する水/酸素混合物が受ける衝撃を最小化するように、各分散トレイ210a~210fの外縁端とその直下の集水トレイ220a~220fの外縁端との間の距離も最小化することが好ましい。同様に、各集水トレイ220a~220fの貫通孔222から下方に落下する水/酸素混合物が受ける衝撃を最小化するように、各集水トレイ220a~220fの下端と各分散トレイ210b~210gの上端との間の距離も最小化することが好ましい。
【0045】
このような溶解槽60内で、流入口202を通して流入する水/酸素混合物は第1分散トレイ210aの頂点部位に落下し、第1分散トレイ210aの上部傾斜面上で外縁端に向かって下がった後、第1分散トレイ210aの外縁端と溶解槽60の内壁との間の隙間を通してまたは溶解槽60の内壁に沿って第1集水トレイ220aの外縁端部位に落下する。第1集水トレイ220aに落下した水/酸素混合物は第1集水トレイ220aの上部傾斜面上で貫通孔222に向かって下がった後、貫通孔222に集まった後、貫通孔222を通して第2分散トレイ210bの頂点部位に落下する。このような動作は、水/酸素混合物が溶解槽60の流出口204に至るまですべての分散トレイ及び集水トレイ上で遂行される。
【0046】
上部空間に酸素気体が充填されており、ポンプによる圧力がかかる溶解槽60の内部環境でこのように酸素気泡と混合された水が最大限に長さの延びた傾斜面に沿って広がって落下することにより、水と酸素(すなわち、溶解槽の上部に充填された酸素及び水に混合された酸素気泡)との接触面積及び接触時間を極大化する。これにより、水に溶解した溶存酸素の分圧と溶解槽の上部に充填された酸素気体の圧力とが平衡になるまで十分に溶解することにより、過飽和水準に水に酸素が溶解した高濃度酸素水を生成することができる。溶解槽60は、酸素水に酸素気泡が混合された酸素水/酸素混合物を第6接続チューブ66を通して押圧溶解部70に排出する。
【0047】
また、図1を参照すると、押圧溶解部70は、縮径リデューサー72と、押圧溶解管74と、拡径リデューサー76とを含む。
【0048】
図4に示すように、押圧溶解管74は大きい長さを有する中空の部材であり、コイル形に巻回されているかまたは多数回折り曲げられた外形を有し、ナイロンその他の合成樹脂または金属材からなっている。押圧溶解管74は、溶解槽60から第6接続チューブ66を通して受けた酸素水/酸素混合物を通過させながら酸素水/酸素に乱流を形成して酸素水/酸素混合物内の残留酸素気泡が水に完全に溶解するようにすることで、溶存酸素濃度を増加させ、溶存状態を安定化させる。
【0049】
押圧溶解部70の押圧溶解管74の管径は、溶解槽60に接続される第6接続チューブ66またはディスペンサー水槽80に接続される第7接続チューブ78の管径よりも小さくなっている。縮径リデューサー72は、第6接続チューブ66と押圧溶解管74との管径差を解消するとともにこれらを連結させることができるようにする管接続部材である。一方、拡径リデューサー76は、押圧溶解管74と第7接続チューブ78との管径差を解消するとともにこれらを連結することができるようにする管接続部材であり、縮径リデューサー72のような部材を前後方向に逆様にしたものと言える。押圧溶解管74と第6及び第7接続チューブ66、78との管径差によって、押圧溶解管74の内圧は第6及び第7接続チューブ66、78の内圧よりも高くなる。押圧溶解管74の上昇した圧力は残留酸素気泡の2次溶解及び酸素水の安定化を促進させる。そして、縮径リデューサー72と拡径リデューサー76とが形成する内圧差は圧力調節のためのバルブを不要にし、バルブの使用の際にバルブの内部で発生し得るスピン及び衝撃、そしてこれによる酸素の脱気を防止するようになる利点がある。
【0050】
また、図1を参照すると、押圧溶解部70とディスペンサー水槽90とを連結する第7接続チューブ78上にはソレノイドバルブ80が設けられる。前記ソレノイドバルブ80は循環ポンプ20が動作しているうちには開放することで、第7接続チューブ78を通して流体が移動することができるようにするが、循環ポンプ20が動作していないうちには閉鎖することで、流体の移動を遮断する。よって、装置の内部で流体循環が静止しているうち、ソレノイドバルブ80は、溶解槽60及び押圧溶解管74の内圧によって、溶解槽60及び押圧溶解管74の内部にある流体とディスペンサー水槽90に収容されている高濃度酸素水との圧力差によって徐々にディスペンサー水槽90側に意図に反して離脱することを防止するようになる。
【0051】
ディスペンサー水槽90は、押圧溶解部70で2次溶解が完了した高濃度酸素水を第7接続チューブ78を通して受けて収容し、循環ポンプ20がずっと動作するか否かによって、高濃度酸素水を収容している状態を維持するかまたは水槽10に復帰させる。すなわち、循環ポンプ20が動作していないうちにはディスペンサー水槽90が押圧溶解部70から受けた高濃度酸素水を収容している状態を維持するが、循環ポンプ20が動作しているうちにはディスペンサー水槽90内の高濃度酸素水が第1及び第2安定化槽100、110を経由して水槽に復帰して循環するようになる。一方、ディスペンサー水槽90にはその外周面を取り囲むように冷媒コイルが配置されているので、高濃度酸素水の温度を5~6℃に維持させることができる。また、ディスペンサー水槽90の外周面には、コルク92が付設された取出口94が外部に露出されるように設けられている。よって、循環ポンプ20の動作有無に関係なく、使用者はコルク92を操作することで、取出口94を通して高濃度酸素水を取水して飲用することができる。
【0052】
第1及び第2安定化槽100、110はディスペンサー水槽90と水槽10との間に配置されている。第1及び第2安定化槽100、110は、循環ポンプ20の動作時にはディスペンサー水槽90に収容されている高濃度酸素水が水槽10に復帰して循環する経路を提供するが、循環ポンプ20が動作していない状態ではディスペンサー水槽90に収容されている高濃度酸素水から酸素気体が脱気して水槽10の方向に移動することを遮断するようになる。よって、ディスペンサー水槽90に収容されている高濃度酸素水からの酸素気体の脱気を最大限抑制することができる。
【0053】
ここで、第1安定化槽100は第8接続チューブ96を介してディスペンサー水槽90に接続される。図5に示すように、第1安定化槽100の入口は第1安定化槽100の上側に設けられることができるが、出口は第1安定化槽100の底面または側面下端に設けられることが好ましい。ディスペンサー水槽90に収容されている高濃度酸素水からわずかに脱気して生成される酸素気体は第8接続チューブ96を通して第1安定化槽100に移動するようになる。よって、第1安定化槽100の下部には液体、すなわち、高濃度酸素水が満たされているが、上部には酸素気体が充填されている。
【0054】
第1安定化槽100の内側上部には緩衝トレイ102が設けられている。緩衝トレイ102はコップ形または皿形になることもでき、図3に示す溶解槽60の分散トレイ210a~210gまたは集水トレイ220a~220fのようになることもできる。どの形状を有するかに関係なく、緩衝トレイ102の外縁端の直径は第1安定化槽100の内径よりも少し小さく製作され、よって緩衝トレイ102の外縁端と第1安定化槽100の内壁との間に隙間が形成される。したがって、酸素水の溶存酸素濃度を高めるための循環過程で緩衝トレイ102に流入する高濃度酸素水は、緩衝トレイ102の外縁端から溢れるとき、第1安定化槽100の上部を満たしている気体空間内で直ちに自由落下するものではなく、第1安定化槽100の内壁に沿って下がることができるようになる。よって、緩衝トレイ102から下側に移動する酸素水が下部に溜まっている酸素水と衝突するときに発生し得る衝撃を最小化し、衝突による騷音及び脱気を抑制することができる。
【0055】
一方、第2安定化槽110は第9接続チューブ104を介して第1安定化槽100に接続され、第10接続チューブ112を介して水槽10に接続される。第2安定化槽110は、その高さに相応する水圧が第1安定化槽100に印加されるようにすることで、第1安定化槽100内の酸素水からの脱気を抑制し、第1安定化槽100の上側に溜まっている酸素気体が水槽10に向かって移動することを沮止する。このような第1及び第2安定化槽100、110の作用によって、ディスペンサー水槽90に収容されている高濃度酸素水からの脱気による溶存酸素濃度の低下を最大限抑制することができる。
【0056】
図1に示す高濃度酸素水生成装置は次のように動作する。
【0057】
水槽10に収容された水は第1接続チューブ12を通して循環ポンプ20の入口に供給された後、押圧されて第2接続チューブ22を通してミキサー40に供給される。ミキサー40によって混合された水及び酸素の混合物は冷却チラー50を経由して溶解槽60の上端流入口202に投入される。
【0058】
溶解槽60の流入口202から重力によって下方に落下する水/酸素混合物は第1分散トレイ210aの頂点部位に分散して衝突する。この際、流入口202と第1分散トレイ210aとの間の距離が小さく、第1分散トレイ210aの上面が傾いているので、衝突による衝撃は大きくなくなる。
【0059】
水/酸素混合物に溶解されていない状態で水と単純に混合されている酸素気体の大部分は溶解槽60内で水/酸素混合物から分離されて溶解槽60の上部空間を充填するようになる。このような状態で、図6に示すように、第1分散トレイ210aに衝突した水/酸素混合物は第1分散トレイ210aの上部傾斜面上で小さい厚さに広がりながら外縁端に向かって下がるようになる。この際、水/酸素混合物が第1分散トレイ210aの上部傾斜面上で小さい厚さで広がりながら側下方に下がることにより、溶解槽60の流入口202から直下方に落下する場合に比べて、溶解槽60の上部に溜まっている酸素気体との接触面積が著しく増加し、滞留時間が延ばされる分だけ接触時間も大きく増加する。このように押圧された状態で水と酸素気体との接触面積及び接触時間が大きく増加することにより、多量の酸素が水に溶解することができるようになる。
【0060】
第1分散トレイ210aの上部傾斜面上で側下方に下がった水/酸素混合物は第1分散トレイ210aの外縁端と溶解槽60の内壁との間の隙間を通してまたは溶解槽60の内壁に沿って第1集水トレイ220aの外縁端部位に衝突するようになる。このときにも、第1分散トレイ210aの外縁端と第1集水トレイ220aの外縁端との間の距離が小さいので、衝突衝撃が無視できるほどに少なくなり、衝突衝撃による脱気が少なくなる。
【0061】
第1集水トレイ220aに落下した水/酸素混合物は第1集水トレイ220aの上部傾斜面上で小さい厚さで広がりながら貫通孔222に向かって下がる。このときにも、水/酸素混合物が第1集水トレイ220aの上部傾斜面上で小さい厚さで広がりながら下がることにより、制約なしに直下方に落下する場合に比べて、溶解槽60の上部に溜まっている酸素気体との接触面積が著しく増加し、滞留時間が延ばされる分だけ接触時間も大きく増加するようになる。押圧状態での水と酸素気体との接触面積及び接触時間の増加は溶存酸素量の増加に大きく寄与するようになる。貫通孔222で集まった水/酸素混合物は貫通孔222を通して第2分散トレイ210bの頂点部位に落下する。このときにも、第1集水トレイ220aの貫通孔222と第2分散トレイ210bの上端との距離が小さいので、衝突衝撃は無視できるほど少なくなり、衝突衝撃による脱気も少なくなる。
【0062】
このように、水または水/酸素混合物が傾斜面で小さい厚さで広がりながら下がる動作はすべての分散トレイ210a~210g及び集水トレイ220a~220fで遂行される。よって、溶解槽60内での溶存酸素量の増加は、水と酸素とを単純に接触させる場合または水/酸素混合物が滝水のように単純に落下する場合に比べて、数十~数百倍向上する。結局、溶解槽60内で、充分に高い濃度に1次的に酸素が溶解することができる。また、直上下方にある分散トレイ210a~210gと集水トレイ220a~220fとの間の距離が小さいので、酸素水または水/酸素混合物が落下する過程で酸素水が受ける衝突衝撃を最小化し、衝撃によって微細気泡を起こしながら発生する脱気を最小化することができる。
【0063】
溶解槽60での1次溶解後の溶存酸素濃度は、水槽10を経由した酸素水の循環回数または頻度、溶解槽60内部の圧力、及び溶解槽60内部の水位によって変わる。すなわち、溶存酸素濃度は酸素水の循環回数または頻度が多いほど、かつ溶解槽60の内圧が高いほど増加するようになる。そして、溶解槽60の内部水位が高いほど、分散トレイ210a~210g及び集水トレイ220a~220f上での水と酸素との接触面積及び滞留時間が減少するので、溶存酸素濃度が減少することができる。プリント基板に搭載された制御回路は、圧力センサー62が検出する溶解槽60の内圧及び水位センサー64が検出する溶解槽60の内部水位に基づいて循環ポンプ20及びソレノイドバルブ36を制御することで、循環動作及び酸素供給をそれぞれ断続する。
【0064】
溶解槽60から排出される酸素水/酸素混合物は押圧溶解管74に供給されることで、残留酸素微細気泡が水に完全に溶解することができる。押圧溶解管74は減少した管径によって圧力が増加した内部環境を提供するようになり、多数の折曲部または曲線部を備えた幾何学的構造によって、その内部を流れる酸素水/酸素混合物に乱流を形成するようになる。この圧力及び乱流により、溶解槽60から供給される水/酸素混合物に含まれた大部分の残留酸素気泡が押圧溶解管74で水に強制で溶解し、溶存状態が安定化する。
【0065】
押圧溶解管74で2次溶解が完了しyr安定化した高濃度酸素水はディスペンサー水槽90に供給されて収容される。ディスペンサー水槽90の外周面を取り囲む冷媒コイルによって高濃度酸素水の冷却を維持する状態で、使用者はコルク92を操作することで、取出口94を通して高濃度酸素水を取水して飲用することができる。
【0066】
第1及び第2安定化槽100、110はディスペンサー水槽90と水槽10との間に配置されており、循環ポンプ20の動作時にはディスペンサー水槽90に収容されている高濃度酸素水が水槽10に復帰して循環する経路を提供するが、循環ポンプ20が動作していない状態ではディスペンサー水槽90に収容されている高濃度酸素水から酸素気体が脱気して水槽10の方向に移動することを抑制する水カーテン(water curtain)の作用をする。
【0067】
ディスペンサー水槽90に収容されている高濃度酸素水からわずかに脱気することがある。このように脱気によって生成される酸素気体は第8接続チューブ96を通して第1安定化槽100に移動する。これにより、第1安定化槽100の下部には液体、すなわち、高濃度酸素水が満たされているが、上部には酸素気体が充填されている。しかし、このように第1安定化槽100の上部空間に充填された酸素気体は第2安定化槽110を満たしている水(すなわち、酸素水)の水圧によって第1安定化槽100の下部に溜まっている水を押し出して第2安定化槽110に進入することができない。よって、外力、すなわちポンプ圧力が作用しない状態で、第1安定化槽100の上部空間に充填された酸素気体の移動を防止するだけでなく、第1安定化槽100の内圧によってディスペンサー水槽90及び第1安定化槽100からの脱気を大きく抑制する。
【0068】
本発明の高濃度酸素水生成装置は、一過式で水及び酸素を通過させながら溶解させるものではなく、周期的にまたは非周期的に繰り返し循環させることによって溶存酸素濃度を高める。例えば、最初動作の際、制御回路はソレノイドバルブ36、80を開放し、循環ポンプ20を動作させることで、水槽10の水が循環しているうちに水に酸素が溶解するようにすることができる。この際、水槽10の水が平均的に約3回循環するように装置が作動することができる。1回循環の後、ディスペンサー水槽90から取り出される酸素水は約100ppmの溶存酸素濃度を示し、2回循環及び3回循環の後、約150ppm及び約180ppmの溶存酸素濃度をそれぞれ示すことを確認した。
【0069】
その後、引き続く使用過程でも周期的にまたは非周期的に(例えば、高濃度酸素水の取出直後に)制御回路は、ソレノイドバルブ36、80を開放し、循環ポンプ20を再稼動することで、酸素水の循環及び溶解動作がなされるようにする。
【0070】
本発明の高濃度酸素水生成装置によれば、循環ポンプ20が静止している待機状態でも酸素水からの酸素脱気を最大限抑制する。このような脱気抑制は二つの側面で見ることができる。
【0071】
一番目、停止した循環ポンプ20の流体遮断作用及びソレノイドバルブ80の作用は、冷却チラー50、溶解槽60及び押圧溶解部70の内部に残留している酸素水の溶存酸素の脱気を抑制するだけでなく、これらの部材の内部にある酸素水または水/酸素混合物が徐々に流出することを防止する。一方、溶解槽60などで酸素水と装置部材との間、または酸素水と酸素水との間の衝突が大きく抑制されるので、衝突による脱気が著しく減少する。
【0072】
二番目、ディスペンサー水槽90に収容されている高濃度酸素水の溶存酸素の脱気は、ソレノイドバルブ80の作用と第1及び第2安定化槽100、110の作用とによって抑制される。すなわち、第1安定化槽100が部分的に水(すなわち、酸素水)で満たされており、第2安定化槽110がいっぱい満たされている状態で、第2安定化槽110を満たしている水が印加する水圧はディスペンサー水槽90及び第1安定化槽100内の流体が水槽10の方向に移動することを防止するだけでなく、ディスペンサー水槽90及び第1安定化槽100からの脱気も抑制する作用をする。また、ディスペンサー水槽90や第1安定化槽100で酸素水と装置部材との間または酸素水と酸素水との間の衝突が抑制されるので、衝突による脱気が少なくなる。特に、本発明によれば、第1安定化槽100の緩衝トレイ102のように、酸素水と装置部材などとの衝突を引き起こす酸素水の落下を根本的に防止することで、衝突による脱気を最小化する。
【0073】
本発明によれば、このように脱気を抑制することにより、高濃度酸素水の溶存酸素の濃度を維持することができ、循環ポンプ20による循環頻度を低めることができるという利点がある。また、脱気の抑制は気泡の生成及び浮上による騷音も減少させることになるという追加的な利点もある。
【0074】
以上で本発明の好適な実施例を説明したが、本発明が属する技術分野の当業者は本発明を、その技術的思想や必須特徴を変更せず、他の具体的な形態に実施することができるというのが理解可能であろう。
【0075】
例えば、以上では酸素溶解に直接関連した部材を中心に説明したが、水槽10に浄水された水を供給するためのフィルターを付加することができる。このような実施例が変形された実施例では、水槽10に対して生水を供給する生水ボトルを装置内に付加することもできる。
【0076】
また、以上の説明では溶解槽60内の集水トレイ220a~220fの外縁端の直径が溶解槽60の内径と同一であると記述したが、集水トレイ220a~220fの外縁端の直径が必ずしも溶解槽60の内径と同一でなければならないものではなく、少し小さくてもかまわない。ただ、この場合にも、分散トレイ210a~210gの外縁端の直径は集水トレイ220a~220fの外縁端の直径より小さくて、分散トレイ210a~210gの傾斜面上で下がる水の大部分が集水トレイ220a~220f上に落下することができるようにすることが好ましい。
【0077】
他方で、以上の説明では循環ポンプ20によって、水槽10内の水と酸素源30からの酸素とがミキサー40によって混合された状態で溶解槽60に投入されるものとして記述したが、変形実施例においてはミキサー40が省略したままで水槽10内の水と酸素源30からの酸素とが別に溶解槽60に投入されることもできる。
【0078】
したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって決定され、特許請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導出されるすべての変更または変形の形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6