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特許7537032ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤及びその製造方法、使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤及びその製造方法、使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20240813BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240813BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240813BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P25/16
A61P25/28
A61K47/36
A61K47/40
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/34
A61K9/70
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023548986
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2021083192
(87)【国際公開番号】W WO2022083063
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】202011145109.6
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523150831
【氏名又は名称】上海上薬中西製薬有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520440180
【氏名又は名称】上海現代薬物製剤工程研究中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI MODERN PHARMACEUTICAL ENGINEERING RESEARCH CENTER CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1111 Halei Road, Zhangjiang, Pudong New Area, Shanghai 201203, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ファン
(72)【発明者】
【氏名】ティン、イーシン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ピン
(72)【発明者】
【氏名】リー、トーシアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、リウリウ
(72)【発明者】
【氏名】フー、リンヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ミン
(72)【発明者】
【氏名】ティン、ユンホイ
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/168032(WO,A1)
【文献】特表2012-515775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/327
A61K31/33-31/80
A61K33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5~15%のラサギリン又はその医薬用塩、
30~85%の高分子成膜材料、
5%~40%のデキストリン、
0~30%(0%ではない)の他の補助材、
の処方成分を含み、
前記デキストリンは、マルトデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン及びスルホブチル-β-シクロデキストリンの1つ又は複数であり、
前記他の補助材は、抗酸化剤、崩壊剤、可塑剤、着色剤、エッセンス及び甘味料の1つ又は複数を含み、
上記百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の処方の全成分に対する各成分の質量百分率である、ことを特徴とするラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤。
【請求項2】
前記ラサギリン又はその医薬用塩はラサギリンメシル酸塩であり、
及び/又は、前記の高分子成膜材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC、ポリビニルアルコールPVA、ヒドロキシプロピルセルロースHPC、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na、ポリビニルピロリドンPVP、ポリエチレンオキシドPEO、アルギン酸ナトリウム、プルラン、ブレチラガム、コーンスターチ及びカラギーナンの1つ又は複数であり、
及び/又は、前記のデキストリンは、前記マルトデキストリン、前記ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、前記グルコシル-β-シクロデキストリン、前記スルホブチル-β-シクロデキストリン、前記マルトデキストリン及びグルコシル-β-シクロデキストリンの混合物、又は、前記マルトデキストリン及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの混合物であことを特徴とする、請求項1に記載のラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤。
【請求項3】
前記高分子成膜材料はヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC及びポリビニルアルコールPVAの混合物、ヒドロキシプロピルセルロースHPC及びカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Naの混合物、ポリビニルアルコールPVA及びコーンスターチの混合物、プルラン及びポリビニルアルコールPVAの混合物、又は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC及びアルギン酸ナトリウムの混合物であることを特徴とする、請求項2に記載のラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤。
【請求項4】
前記高分子成膜材料が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC及びポリビニルアルコールPVAの混合物である場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC及びポリビニルアルコールPVAの質量比は、(27.5~45):(22.5~40)であり
前記高分子成膜材料が、ヒドロキシプロピルセルロースHPC及びカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Naの混合物である場合、ヒドロキシプロピルセルロースHPC及びカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Naの質量比は、40:(25~35)であり
前記高分子成膜材料が、ポリビニルアルコールPVA及びコーンスターチの混合物である場合、ポリビニルアルコールPVA及びコーンスターチの質量比は、30:(25~35)であり
前記高分子成膜材料が、プルラン及びポリビニルアルコールPVAの混合物である場合、プルラン及びポリビニルアルコールPVAの質量比は、20:(15~25)であり
前記高分子成膜材料が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC及びアルギン酸ナトリウムの混合物である場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC及びアルギン酸ナトリウムの質量比は、20:(5~15)であることを特徴とする、請求項2又は3に記載のラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤。
【請求項5】
前記デキストリンが、前記マルトデキストリン及びグルコシル-β-シクロデキストリンの混合物である場合、マルトデキストリン及びグルコシル-β-シクロデキストリンの質量比は、1:(0.8~1.2)であり
前記デキストリンが、前記マルトデキストリン及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの混合物である場合、マルトデキストリン及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの質量比は、1:(0.8~1.2)であることを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載のラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤。
【請求項6】
前記崩壊剤は、カルボキシメチルスターチナトリウムCMS-Naであり、前記崩壊剤の投与量は3~7%であり百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤に対する処方全成分の質量百分率であり、
及び/又は、前記可塑剤は、PEG400であり、前記可塑剤の投与量は7~11%であり百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤に対する処方全成分の質量百分率であり、
及び/又は、前記着色剤は、二酸化チタンであり、前記着色剤の投与量は2~6%であり百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤に対する処方全成分の質量百分率であり、
及び/又は、前記エッセンスは、ストロベリーエッセンス、グレープエッセンス及びオレンジエッセンスの1つ又は複数であり、前記エッセンスの投与量は1~3%であり、百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤に対する処方全成分の質量百分率であり、
及び/又は、前記甘味料は、キシリトール、マルチトール、ステビオシド、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム及びシクラメートの1つ又は複数を含む、請求項~5のいずれか一項に記載のラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤。
【請求項7】
前記ラサギリン又はその医薬用塩の投与量は1~8%であり、前記百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤に対する処方全成分に対する質量百分率であり、
及び/又は、前記高分子成膜材料の投与量は40~60%であり、前記百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤に対する処方全成分に対する質量百分率であり、
及び/又は、前記デキストリンの投与量は10~30%であり、前記百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤に対する処方全成分に対する質量百分率であり、
及び/又は、前記他の補助材の投与量は、2~20%であり、前記百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤に対する処方全成分に対する質量百分率であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤。
【請求項8】
スラリーをコーティングしてフィルムと製造するステップを含み、ここで、前記スラリーは、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の処方成分及び水を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の製造方法。
【請求項9】
前記スラリーは、前記高分子成膜材料以外の処方成分を前記高分子成膜材料を含む水性スラリーに加え、均一に混合する方法で製造し、
ここで、前記高分子成膜材料を含む水性スラリーにおいて、前記高分子成膜材料の質量濃度は10%~40%であり
前記コーティングしてフィルムと製造する過程において、コーティングの厚さは0.3~0.5mmであり
前記コーティングしてフィルムと製造する過程において、コーティング速度は40~150cm/分であることを特徴とする、請求項8に記載のラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の製造方法。
【請求項10】
パーキンソン病、アルツハイマー病に関連する疾患を治療するための医薬としての使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載のラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は出願日が2020年10月23である中国特許出願2020111451096の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
本発明は、ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤及びその製造方法、使用に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(PD)は、2番目に多い神経変性疾患であり、主に40歳以上で発症し、65歳以上の高齢者の2~3%がこの病気に罹患している。パーキンソン病患者ごとに症状はそれぞれ異なるが、最も一般的な症状は、運動障害と骨格筋の硬直、震戦、運動遅延、バランスの悪さ及び歩行障害である。また、うつ病、睡眠障害、めまい、認知症、言語障害、呼吸器疾患及び嚥下障害などを伴うことが多く、症状は年々悪化し、死亡にまで至ることもある。
【0003】
現在、パーキンソン病の治療薬は主に、レボドパ、DA受容体作動薬、MAO-B阻害剤、COMT阻害剤及び抗コリン作動薬などがある。ここで、最も一般的なのはレボドパであり、レボドパはパーキンソン病の症状を迅速に改善することができ、代替不可能な利点を持っているが、その優位性は治療初期の数年に過ぎず、長期使用すると臨床的効果が有意に弱まり、運動障害、薬物効果の変動(一般に「スイッチ効果」として知られている)及び精神的混乱など深刻な副作用をもたらす。
【0004】
ラサギリンメシル酸塩は、脳内のMAOを阻害することによって、パーキンソン病、アルツハイマー病及びその他の様々な障害の治療に使用される、強力で選択的で不可逆的なMAO-B阻害剤であり、ラサギリンの代謝はアンフェタミンが生成せず、不要な交感神経刺激作用は起こらない。レボドパと比較して、ラサギリンは安全性が高く、早期パーキンソン病患者の治療に単独で使用できる。現在市販されているラサギリンメシル酸塩の製剤は、一般的な錠剤で、商品名はAZILECTで、2005年3月にイスラエル、6月にイギリス、9月にアイルランド、2006年にアメリカで発売され、2017年に中国に正式に発売され、規格は0.5mgと1mg(ラサギリンとして計算)である。ラサギリン及びその医薬用塩に関する製剤特許は、いずれも経口投与製剤であり、例えば、ラサギリン経口崩壊組成物(CN101098685A)、ラサギリン製剤及びその製造方法(CN103315983A)、ラサギリン錠剤(CN105496979A)、ラサギリン錠剤及びその製造方法(CN107753446A)、ラサギリン経口固形製剤(CN1911211A)、ラサギリン又はその医薬用塩口腔内崩壊錠及びその製造方法(CN101874790A)、Rasagiline soft gelatin capsules(EP2285214B1)、Rasagiline formulations and processes for their preparation(US7619117B1)、Rasagiline formulations(WO2010111264A2)などである。
【0005】
ラサギリンメシル酸塩は経口投与後、肝臓のファーストパス効果の影響を受け、バイオアベイラビリティーは約36%と低い。そして、ラサギリンの使用における主なリスク源は高血圧であり、一般に「チーズ効果」として称される。(Simpson.G.M. and White K.,“Tyramine studies and the safety of MAOI drugs ”,The Journal of Clinical Psychiatry ,01 Jul 1984, 45(7 Pt 2):59-61)。この効果は、胃に高濃度で見られる末梢MAOの阻害によって引き起こされる。ラサギリンは経口で消化管を通じて吸収され、高チラミン食を摂取した患者は、どの投与量でも血圧が上昇する危険がある(FDA:AZILECT(R)(rasagiline) Tablets:Label)。また、パーキンソン病患者は通常消化管運動障害を伴い、主に嚥下障害、胃排出障害及び便秘として表られ(Wolfgang, H.Jost. “Gastrointestinal motility problems in patients with Parkinson’s disease” Drugs&Aging, 10, pages249-258(1997))、末梢MAOに対する阻害効果を延長して、「チーズ効果」を更に悪化させる。
【0006】
中国特許出願CN200910191252.6は、安定なラサギリン組成物を開示し、その実施例11は、口腔粘膜に付着するフィルム剤を開示しているが、それから製造して得られたフィルム剤は安定性が悪く、60℃で10日間保存すると不純物の含有量が2.6~15.33%と高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、先行技術におけるラサギリン製剤の安定性が低いという欠点を克服するための、ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤及びその製造方法、使用を提供することである。本発明は、薬物を投与が便利で品質が安定した舌下フィルム剤に製造し、水なしで服用できるようにしたもので、フィルムが速やかに溶解し、薬物が製剤から素早く溶解し、薬物が口腔粘膜から吸収されるため、ファーストパス効果を回避してバイオアベイラビリティを向上させるだけではなく、胃での末梢MAO阻害による「チーズ効果」を回避して副作用を軽減させることができる。
【0008】
ラサギリンは、酸化されやすく、酸性及びアルカリ性の両条件で不安定であり、水に溶けやすく、投与量(1mg未満)が少なく、補助材の相対量が多いため、薬物の安定性は補助材によって大きく影響される。発明者らは、様々な補助材がラサギリンと相互作用しやすく、酸化不純物の含有量が大幅に増加し、抗酸化剤を添加しても依然として安定性の問題を効果的に解決できないことを発見した。ラサギリン又はその医薬用塩によって製造された舌下フィルム剤の処方において、発明者は、所定含有量のマルトデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン又はスルホブチル-β-シクロデキストリンの1つ又は複数を加え、処方の他の成分と併用することにより、フィルムの安定性を効果的に改善し、長期放置中の薬物の安定性を効果的に高めることができることを創造的な作業を通じて偶然発見した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の技術的解決手段を通じて上記の技術的問題を解決する。
【0010】
本発明は、下記の処方成分を含む、ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤を提供する。
0.5~15%のラサギリン又はその医薬用塩、
30~85%の高分子成膜材料、
5%~40%のデキストリン、
0~30%(0%ではない)の他の補助材;
前記のデキストリンは、マルトデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン及びスルホブチル-β-シクロデキストリンの1つ又は複数であり、
上記の百分率率は、ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の処方全成分に対する各成分の質量百分率である。
【0011】
本発明において、前記のラサギリン又はその医薬用塩は、好ましくはラサギリンメシル酸塩である。
【0012】
本発明において、前記の高分子成膜材料は、当該技術分野の通常の成膜に使用される水溶性高分子材料であってもよく、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、アルギン酸ナトリウム、プルラン、ブレチラガム、コーンスターチ及びカラギーナンの1つ又は複数であり、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、アルギン酸ナトリウム、プルラン及びコーンスターチの1つ又は複数であり、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びポリビニルアルコール(PVA)の混合物、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)の混合物、ポリビニルアルコール(PVA)及びコーンスターチの混合物、プルラン及びポリビニルアルコール(PVP)の混合物、又は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びアルギン酸ナトリウムの混合物である。
【0013】
前記の高分子成膜材料がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びポリビニルアルコール(PVA)の混合物である場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びポリビニルアルコール(PVA)の質量比は、(27.5~45):(22.5~40)であってもよく、例えば、45:40、42.5:37.5、37.5:32.5、32.5:27.5又は27.5:22.5である。
【0014】
前記の高分子成膜材料がヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)の混合物である場合、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)の質量比は、40:(25~35)であってもよく、例えば、40:30である。
【0015】
前記の高分子成膜材料がポリビニルアルコール(PVA)及びコーンスターチの混合物である場合、ポリビニルアルコール(PVA)及びコーンスターチの質量比は、30:(25~35)であってもよく、例えば、30:30である。
【0016】
前記の高分子成膜材料がプルラン及びポリビニルアルコール(PVP)の混合物である場合、プルラン及びポリビニルアルコール(PVP)の質量比は、20:(15~25)であってもよく、例えば、20:20である。
【0017】
前記の高分子成膜材料がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びアルギン酸ナトリウムの混合物である場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びアルギン酸ナトリウムの質量比は、20:(5~15)であってもよく、例えば、20:10である。
【0018】
本発明において、前記のデキストリンは、好ましくは前記マルトデキストリン、前記ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、前記グルコシル-β-シクロデキストリン、前記スルホブチル-β-シクロデキストリン、前記マルトデキストリン及びグルコシル-β-シクロデキストリンの混合物、又は、前記マルトデキストリン及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの混合物である。
【0019】
前記のデキストリンが前記マルトデキストリン及びグルコシル-β-シクロデキストリンの混合物である場合、マルトデキストリン及びグルコシル-β-シクロデキストリンの質量比は、好ましくは1:(0.8~1.2)であり、例えば、1:1である。
【0020】
前記のデキストリンが前記マルトデキストリン及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの混合物である場合、マルトデキストリン及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの質量比は、好ましくは1:(0.8~1.2)であり、例えば、1:1である。
【0021】
本発明において、前記の他の補助材は、当該技術分野の通常の補助材であってもよく、好ましくは抗酸化剤、崩壊剤、可塑剤、着色剤及びエッセンスの1つ又は複数を含む。
【0022】
ここで、前記崩壊剤は、カルボキシメチルスターチナトリウムCMS-Naであってもよい。前記崩壊剤の投与量は、3~7%であってもよく、例えば、5%であり、百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の処方全成分に対する質量百分率である。
【0023】
ここで、前記可塑剤は、PEG400であってもよい。前記可塑剤の投与量は、7~11%であってもよく、例えば、9%であり、百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の処方全成分に対する質量百分率である。
【0024】
ここで、前記着色剤は、二酸化チタンであってもよい。前記着色剤の投与量は、2~6%であってもよく、例えば、4%であり、百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の処方全成分に対する質量百分率である。
【0025】
ここで、前記エッセンスは、ストロベリーエッセンス、グレープエッセンス及びオレンジエッセンスの1つ又は複数であってもよい。前記エッセンスの投与量は、1%又は3%であってもよく、百分率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の処方全成分に対する質量百分率である。
【0026】
本発明において、前記他の補助材は甘味料も含むことができる。前記甘味料は、当該技術分野の通常のものであってもよく、好ましくは、キシリトール、マルチトール、ステビオシド、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム及びシクラメートの1つ又は複数を含み、より好ましくはキシリトール、マルチトール、アスパルテーム、シクラメート及びステビオシドの1つ又は複数であり、例えば、キシリトール、マルチトール、アスパルテーム、シクラメート又はステビオシドである。
【0027】
ここで、前記の甘味料の投与量は、当該技術分野の通常のものであってもよく、1%、4%、5%、10%又は30%であってもよく、好ましくは3%~30%であり、より好ましくは5~20%であり、上記の率は、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の処方全成分に対する甘味料の質量百分率である。
【0028】
本発明において、前記ラサギリン又はその医薬用塩の投与量は、1%、5%、8%、10%又は15%であってもよく、好ましくは1~8%である。
【0029】
本発明において、前記の高分子成膜材料の投与量は、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は85%であってもよく、好ましくは40~60%である。前記高分子成膜材料の投与量が30%未満である場合、成膜が悪く、フィルムの強度及び靭性が使用のニーズを満たさない可能性があり、85%を超える場合、他の補助材の割合が少な過ぎて、ラサギリン又はその医薬用塩の口腔フィルム剤の安定性、味などの側面で要件を満たすことができない。
【0030】
本発明において、前記のデキストリンの投与量は、5%、10%、20%、25%、30%又は40%であってもよく、好ましくは10~30%である。前記デキストリンの投与量が5%未満である場合、ラサギリン又はその医薬用塩舌下フィルムの安定性が有意に改善されず、40%を超える場合、フィルムが脆く破れやすくなる。
【0031】
本発明において、前記他の補助材の投与量は、好ましくは2~20%であり、例えば、9%、12%、15%又は20%である。
【0032】
本発明はまた、スラリーをコーティングしてフィルムと製造するステップを含む、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の製造方法を提供する。
【0033】
ここで、前記スラリーは、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の処方成分及び水を含む。
【0034】
本発明において、前記スラリーは、当該技術分野の通常の方法によって製造することができ、好ましくは前記高分子成膜材料以外の処方成分を前記高分子成膜材料を含む水性スラリーに加え、均一に混合する方法で製造することができる。
【0035】
ここで、前記高分子成膜材料を含む水性スラリーにおいて、前記高分子成膜材料の質量濃度は、好ましくは10%~40%であり、より好ましくは13%~30%である。
【0036】
本発明において、前記スラリーにおいて、水の投与量は、当該技術分野の通常の量であってもよく、一般に、所定の粘度及び良好な流動性を有する溶液にすることに準ずる。
【0037】
本発明において、前記のスラリーは、一般に均一なスラリーである。前記スラリーは、コーティングしてフィルムと製造する前に、一般に静置して脱泡させる。
【0038】
本発明において、前記コーティングしてフィルムと製造する方法は、当該技術分野の通常の方法であってもよく、例えば、当該技術分野の通常のフィルムコーティング機を使用してコーティングし、乾燥させ、スリットすることができる。
【0039】
ここで、前記コーティングしてフィルムと製造する過程において、コーティングの厚さは、0.3~0.5mmであってもよく、例えば、0.4mmである。
【0040】
ここで、前記の乾燥温度は、80~95℃であってもよく。
ここで、前記コーティングしてフィルムと製造する過程において、コーティング速度は、40~150cm/minであってもよく、例えば、50cm/minである。
【0041】
ここで、前記スリットフィルムの仕様は、実際のニーズに応じて選択することができる。
【0042】
本発明はまた、パーキンソン病及びアルツハイマー病に関連する疾患を治療するための医薬の製造における、前記ラサギリン又はその医薬用塩の舌下フィルム剤の使用を提供する。
【0043】
当技術分野の常識に違反しない限り、前記各好ましい条件は、任意に組み合わせて、本発明の各好ましい実施例を得ることができる。
【0044】
本発明で使用される試薬及び原料は市販品として入手できる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の積極的で進歩的な効果:
1)本発明の舌下フィルムは、水を使用せずに投与部位に接着し、速やかに溶解するため、患者は飲み込む必要がなく、コンプライアンスが良好であり、看護者が投与を補助するのにより便利である。
2)薬物は口腔粘膜から吸収されるため、肝臓のファーストパス効果を避け、バイオアベイラビリティーが高く、経口製剤に比べて投与量を減らすことができる。
3)薬物は口の中で溶け、消化管を通らずに口腔粘膜から吸収されるため、「チーズ効果」を回避し、副作用を軽減することができる。
4)本発明の舌下フィルム剤は、安定性がよく、長期保存後も不純物の含有量が依然として少ない。
5)本発明の舌下フィルムは、優れた溶解特性を有し、それは、薬物が迅速、完全に溶解し、薬物が舌下粘膜を介して血液循環に速やかに吸収され、効果が早いことで現れる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】実施例1の処方1及び実施例2~5の舌下フィルムの溶解曲線である。
図2】実施例3の舌下フィルム投与、静脈内注射及び胃内投与によりそれぞれ投与した後、ラサギリンの血中薬物濃度の経時変化曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、実施例の形態によってさらに本発明を説明するが、これによって本発明を前記実施例の範囲内に限定するわけではない。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常の方法及び条件、或いは商品の説明書に従って選ばれる。
【実施例
【0048】
実施例及び比較例で使用される原料及び補助材は、いずれも通常の市販品として入手できる。
【0049】
効果実施形態における安定性試験、適合性試験、溶解曲線試験は、いずれも薬局方規則の実験条件及び試験方法に従って実行される。
【0050】
実施例1
処方1~5及び比較処方の成分及び投与量は、表1に示された通りである。
【0051】
【表1】
【0052】
製造プロセス:
1、成膜材料の水スラリーを製造:処方百分率に従って、HPMC及びPVPを水に溶解させ、質量濃度が25%である水スラリーを調製した。
2、ラサギリンメシル酸塩、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ステビオシド、二酸化チタン、ストロベリーエッセンスを上記水スラリーに加え、均一に撹拌した。
3、静置脱泡後、コーティングの厚さが0.4mmであり、乾燥温度が85℃である条件でコーティングし、コーティングしてフィルムと製造する速度は50cm/分であった。
4、0.5mg/錠の仕様に合わせてスリット包装した。
【0053】
表1より、(1)本発明の処方1~3フィルムの物性は、処方4~5フィルムの物性と比べて、強度及び靭性が優れていた。(2)本発明の処方4~5のフィルムの物性は、比較処方フィルムの物性よりも相対的に劣るものの、效果実施例4から分かるように比較処方は、高温安定性が悪く、不合格であった。具体的には、60℃で5日間放置した後、比較処方に関連する物質の含有量は1.33%と高く、本発明の処方1~5よりもはるかに高く、60℃で10日間放置した後、比較処方に関連する物質の含有量は2.35%と高く、本発明の処方1~5よりもはるかに高かった。
【0054】
実施例2
実施例2の処方は表2に示された通りである。
【0055】
【表2】
【0056】
製造プロセス:
1、成膜材料の水スラリーを製造:40gのHPC及び30gのCMC-Naを水に溶解させ、質量濃度が20%である水スラリーを調製した。
2、ラサギリンメシル酸塩、マルトデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルチトール、二酸化チタン、グレープエッセンスを上記水スラリーに加え、均一に撹拌した。
3、静置脱泡後、コーティングの厚さが0.4mmであり、乾燥温度が85℃である条件でコーティングし、コーティングしてフィルムと製造する速度は50cm/分であった。
4、0.5mg/錠の仕様に合わせてスリット包装した。
【0057】
実施例3
実施例3の処方は、表3に示された通りである。
【0058】
【表3】
【0059】
製造プロセス:
1、成膜材料の水スラリーを製造:30gのPVA及び30gのコーンスターチを水に溶解させ、質量濃度が16%である水スラリーを調製した。
2、ラサギリンメシル酸塩、マルトデキストリン、アスパルテーム、二酸化チタン、オレンジエッセンスを上記水スラリーに加え、均一に撹拌した。
3、静置脱泡後、コーティングの厚さが0.4mmであり、乾燥温度が85℃である条件でコーティングし、コーティングしてフィルムと製造する速度は50cm/分であった。
4、0.5mg/錠の仕様に合わせてスリット包装した。
【0060】
実施例4
実施例4の処方は、表4に示された通りである。
【0061】
【表4】
【0062】
製造プロセス:
1、成膜材料の水スラリーを製造:20gのプルラン及び30gのPVAを水に溶解させ、質量濃度が14%である水スラリーを調製した。
2、ラサギリンメシル酸塩、スルホブチル-β-シクロデキストリン、キシリトール、二酸化チタン、ストロベリーエッセンス、CMS-Naを上記水スラリーに加え、均一に撹拌した。
3、静置脱泡後、コーティングの厚さが0.4mmであり、乾燥温度が85℃である条件でコーティングし、コーティングしてフィルムと製造する速度は50cm/分であった。
4、0.5mg/錠の仕様に合わせてスリット包装した。
【0063】
実施例5
実施例5の処方は、表5に示された通りである。
【0064】
【表5】
【0065】
製造プロセス:
1、成膜材料の水スラリーを製造:20gのHPMC及び10gのアルギン酸ナトリウムを水に溶解させ、質量濃度が10%である水スラリーを調製した。
2、ラサギリンメシル酸塩、マルトデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、シクラメート、二酸化チタン、ストロベリーエッセンス、PEG400を上記水スラリーに加え、均一に撹拌した。
3、静置脱泡後、コーティングの厚さが0.4mmであり、乾燥温度が85℃である条件でコーティングし、コーティングしてフィルムと製造する速度は50cm/分であった。
4、0.5mg/錠の仕様に合わせてスリット包装した。
【0066】
比較例1
実施例3処方におけるマルトデキストリンをPVAに置き換え、他の処方プロセスは変更しなかった。
【0067】
比較例2
実施例4処方におけるスルホブチル-β-シクロデキストリンをプルランに置き換え、他の処方プロセスは変更しなかった。
【0068】
効果実験例1 原材料及び補助材の適合性試験
高分子成膜材料などの補助材と薬物を所定の百分率で混合した後、精製水を加えて均一に研磨し、コーティングし、乾燥させ、60℃の条件で10日間放置し、5日目及び10日目に試料を取って、関連物質の変化を研究した。結果は表6に示された通りである。
【0069】
【表6】
【0070】
表6で示されるように、HPMC、PVA成膜材料を単独で使用するか、又はHPMCをそれぞれEDTA、ピロ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、重亜硫酸水素ナトリウム及び様々な通常の安定剤と混合する場合、その総不純物の含有量は、HPMCと「マルトデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン」を混合する場合の総不純物の含有量よりも遥かに高かった。
【0071】
他の補助材と薬物を所定の百分率で混合した後、60℃の条件で10日間放置し、5日目及び10日目に試料を取って、関連物質の変化を研究した。実験結果は表7に示された通りである。
【0072】
【表7】
【0073】
表6~7の結果から分かるように、ラサギリンメシル酸塩と各種補助材との適合安定性が悪く、各種の通常の安定剤を加えても改善されなかったが、デキストリンを加えた後安定性が有意に向上した。
【0074】
効果実験例2 溶解曲線
実施例1の処方1と実施例2~5のフィルム(規格:0.5mg、即ち各フィルムは0.5mgのラサギリンを含む)各6錠を取り、溶解度測定法(中国薬局方2015年版四部通則0931第2法)に従って、pH6.8のリン酸緩衝液500mlを溶媒とし、回転速度は50rpm/分であり、規定通り操作し、1、2、3、5、10及び15分後、それぞれ1mlの溶液を取って濾過し、20uLの連続濾液を正確に秤量し、高速液体クロマトグラフィーによって測定し、異なる時間点の溶解量を算出した。溶解曲線は図1に示された通りである。
【0075】
図1の結果は、本発明のラサギリンメシル酸塩の舌下フィルムは、溶解が速く、3分でほぼ完全に溶解したことを表した。
【0076】
効果実験例3 ビーグルの薬物動態実験
静脈内注射:オスとメス半分ずつの健康なビーグルを4匹取り、それぞれ4mlのラサギリンメシル酸塩溶液(溶媒:水)(0.5mg/ml、ラサギリンで計算)、即ち2mgの投与量で静脈内注射した。
【0077】
舌下フィルム及び胃内投与:2サイクルのダブルクロスオーバー試験を使用し、洗浄期間は1週間であった。オスとメス半分ずつの健康なビーグルを4匹取り、無作為に2群に分け、それぞれラサギリンメシル酸塩舌下フィルム(実施例3)を舌下投与及びラサギリンメシル酸塩溶液を胃内投与し、投与量は、2mgであった。
【0078】
投与前に16時間禁食させ、自由に水を飲ませた。投与4時間後自由に水を飲ませ、食物を摂取させた。投与前(0時間)及び投与後の0.033、0.083、0.167、0.25、0.333、0.5、0.75、1、1.5、2、3、4、6時間に、前肢又は後肢の静脈から2mlを採血し、ヘパリンナトリウム抗凝固チューブに置いた。採取した血液試料は直ちに遠心分離(1006×g、10分)し、血漿を分離し、-20℃で保存した。内部標準として塩酸セレギリンを使用し、アセトニトリルタンパク質沈殿法を使用して処理した後、LC-MS/MSで試料のラサギリンの血漿濃度を測定し、平均薬物時間曲線を作成した(図2)。DAS2.0ソフトウェアの非コンパートメントモデルを使用して、血漿濃度データを処理し、ラサギリンのバイオアベイラビリティーを計算した。
【0079】
図2の結果は、ラサギリンメシル酸塩をビーグルに胃内投与した後、ファーストパス効果により、バイオアベイラビリティーが低く、絶対バイオアベイラビリティーが11.8%±3.3%(n=4)であることを表した。本発明のラサギリンメシル酸塩舌下フィルムを舌下投与して、薬物が舌下黏膜から吸収されると、バイオアベイラビリティーが有意に増加し、絶対バイオアベイラビリティーが77.8%±9.7%(n=4)であり、胃内投与の6.9±1.3倍(n=4)に増加し、また効果が速く、Tmaxは(0.07±0.02)時間(n=4)であった。
【0080】
効果実験例4 処方中に異なる割合のデキストリンが含まれる試料の安定性試験
実施例1の比較処方と処方1~5のフィルム(規格:0.5mg)を取り、外装を取り出して、高温試験を実行し、試料の安定性を測定した。
【0081】
フィルムをシャーレに置き、60℃の条件で10日間放置し、5日目及び10日目に試料を取り、フィルムにおけるラサギリンの関連物質を検出した。試験結果は、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの百分率が5~40%の範囲内にあり、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの投与量の増加とともに、薬物の高温環境での安定性が増強することを表した。しかし、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの投与量の増加に伴い、成膜材料の投与量をそれに応じて減らす必要があり、フィルムの強度は徐々に低下し、靭性は徐々に悪化した。実験結果は表8に示された通りである。
【0082】
【表8】
【0083】
効果実験例5
異なる処方試料の安定性試験
比較例1、比較例2及び実施例2~5のフィルム(規格:0.5mg)を取り、外装を取り出して、高温試験を実行し、試料の安定性を測定した。
【0084】
フィルムをシャーレに置き、60℃の条件で10日間放置し、5日目及び10日目に試料を取り、フィルムにおけるラサギリンの含有量、関連物質及び溶解度(溶解度方法は効果実験例2を参照)を検出した。試験結果により、試験期間中、比較例1と比較例2で製造されたラサギリンメシル酸塩の舌下フィルムの関連物質が有意に増加したことを表し、結果は表9~10に示された通りである。本発明で製造されたラサギリンメシル酸塩の舌下フィルム、即ち実施例2~実施例5は、各指標に有意な変化はなく、製品の品質は安定しており、結果は表11~14に示された通りである。
【0085】
【表9】
【0086】
【表10】
【0087】
【表11】
【0088】
【表12】
【0089】
【表13】
【0090】
【表14】
【0091】
表9~14の結果は、本発明のラサギリンメシル酸塩の舌下フィルムは、各成分の相乗効果により、60℃の高温で10日間保存された場合、総不純物がいずれも1%未満であり、デキストリン百分率が増加すると、安定性が増加した。デキストリンを加えてない比較例1及び比較例2と比べると、高温に放置した後、溶解度及び含有量に有意な変化はなく、関連物質の増加も有意に減少し、安定性は有意に向上したことを表した。
【0092】
本発明において、前記のラサギリン経口フィルム剤は、服用時に水又は他の液体を必要とせず、乾いた手で袋を破ってフィルムを取り出し、完全に溶けるまで口の中に入れて服用する。本製品を折りたたんだり、噛んだり又は飲み込んだりしないように注意すべきである。投与後10分以内に飲食を控えるべきである。
【0093】
効果実験例6
異なる水分試料の安定性調査
実施例3の処方及び製造方法に従って、それぞれ異なる含水量のフィルム(下記の表の第2列の通りである)を製造して、PET/Al/PEバッグに密封包装し、60℃の条件で10日間放置し、5日目及び10日目に試料を取り、フィルムにおける関連物質を検出した。試験結果は表15に示された通りである。
【0094】
【表15】
【0095】
表15の結果により、水分は本発明のラサギリンメシル酸塩の舌下フィルムの安定性に影響を及ぼし、水分が増加するにつれて、本発明の舌下フィルムの安定性が向上したことを表した。
【0096】
以上、本発明の具体的な実施形態を記述したが、当業者にとって、これらは例示の説明だけで、本発明の原理と実質に反しないという前提下、これらの実施形態に対して様々な変更や修正をすることができる。そのため、本発明の保護範囲は添付の請求の範囲によって限定される。
図1
図2