(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】室内暖房設備、サウナ、及び室内暖房方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20240813BHJP
A61H 33/06 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
F24F7/06 M
A61H33/06 J
A61H33/06 V
A61H33/06 X
(21)【出願番号】P 2024005357
(22)【出願日】2024-01-17
【審査請求日】2024-02-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年3月25日にウェブサイト(https://twitter.com/wood_dream_deck/status/1639438443599237121)での公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年11月24日に雑誌「大人の科学マガジン Special サウナウォッチ」(ISBN:9784057508641)第36~40ページでの公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514020389
【氏名又は名称】TIS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0184077(US,A1)
【文献】特開昭64-046461(JP,A)
【文献】特開2004-019951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0092287(US,A1)
【文献】実開昭49-002644(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
A61H 33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の所定の箇所に設置された熱源が温めた前記室内の空気である温気が、上昇して流入する、前記温気の流入口と、
前記流入口よりも面積が小さい、前記温気の流出口と、
前記流入口から前記流出口にかけて、空気が流れる空気流路と、
を有する筐体を備え、
前記流出口は、前記空気流路を通って加速した前記温気が前記室内の天井に沿って流出するように配設され、
前記流出口から流出する前記温気は、前記室内の壁に到達して下方向に流
れ、
前記流出口から流出した前記温気が、前記天井の隅に到達する場合、前記到達の後、気流が水平方向に方向転換した前記温気が、衝突して前記温気のカルマン渦が生じるように、前記温気の進行方向における所定の箇所に設けられる、鉛直方向の柱をさらに備える、
室内暖房設備。
【請求項2】
室内の所定の箇所に設置された熱源が温めた前記室内の空気である温気が、上昇して流入する、前記温気の流入口と、
前記流入口よりも面積が小さい、前記温気の流出口と、
前記流入口から前記流出口にかけて、空気が流れる空気流路と、
を有する筐体を備え、
前記流出口は、前記空気流路を通って加速した前記温気が前記室内の天井に沿って流出するように配設され、
前記流出口から流出する前記温気は、前記室内の壁に到達して下方向に流れ、
前記室内の天井の所定の位置に設けられ、前記温気の進行方向に対して垂直方向に向く面を有する、整流板をさらに含む、
室内暖房設備。
【請求項3】
室内の所定の箇所に設置された熱源が温めた前記室内の空気である温気が、上昇して流入する、前記温気の流入口と、
前記流入口よりも面積が小さい、前記温気の流出口と、
前記流入口から前記流出口にかけて、空気が流れる空気流路と、
を有する筐体を備え、
前記流出口は、前記空気流路を通って加速した前記温気が前記室内の天井に沿って流出するように配設され、
前記流出口から流出する前記温気は、前記室内の壁に到達して下方向に流れ、
前記室内における所定の隅の少なくとも一部を隅丸状にする整流板をさらに備える、
室内暖房設備。
【請求項4】
室内の所定の箇所に設置された熱源が温めた前記室内の空気である温気が、上昇して流入する、前記温気の流入口と、
前記流入口よりも面積が小さい、前記温気の流出口と、
前記流入口から前記流出口にかけて、空気が流れる空気流路と、
を有する筐体を備え、
前記流出口は、前記空気流路を通って加速した前記温気が前記室内の天井に沿って流出するように配設され、
前記流出口から流出する前記温気は、前記室内の壁に到達して下方向に流れ、
前記流出口から流出して前記室内の壁に衝突した前記温気のうち、前記壁の反対方向に向かう温気の気流を制限するように、前記室内の所定の箇所に設けられる整流板をさらに備える、
室内暖房設備。
【請求項5】
前記熱源によって温められて上昇する前記温気を、前記流入口に案内す
る整流板をさらに備える、
請求項1に記載の室内暖房設備。
【請求項6】
室内の所定の箇所に設置された熱源が温めた前記室内の空気である温気が、上昇して流入する、前記温気の流入口と、
前記流入口よりも面積が小さい、前記温気の流出口と、
前記流入口から前記流出口にかけて、空気が流れる空気流路と、
を有する筐体を備え、
前記流出口は、前記空気流路を通って加速した前記温気が前記室内の天井に沿って流出するように配設され、
前記流出口から流出する前記温気は、前記室内の壁に到達して下方向に流れ、
前記筐体は、開閉可能な小窓をさらに有し、
前記小窓の位置は、前記流入口と前記流出口の間にあり、
前記小窓を開放することにより、前記流出口、及び前記小窓から前記温気が前記室内に流出する、
室内暖房設備。
【請求項7】
室内の所定の箇所に設置された熱源が温めた前記室内の空気である温気が、上昇して流入する、前記温気の流入口と、
前記流入口よりも面積が小さい、前記温気の流出口と、
前記流入口から前記流出口にかけて、空気が流れる空気流路と、
を有する筐体を備え、
前記流出口は、前記空気流路を通って加速した前記温気が前記室内の天井に沿って流出するように配設され、
前記流出口から流出する前記温気は、前記室内の壁に到達して下方向に流れ、
前記流出口から流出した前記温気が、前記天井の隅に到達する場合、前記到達の後、気流が水平方向の前記温気が、衝突して前記温気のカルマン渦が生じるように、前記温気の進行方向における所定の箇所に設けられる柱をさらに備え、
前記室内における所定の隅の少なくとも一部を隅丸状にする整流板をさらに備える、
室内暖房設備。
【請求項8】
室内の所定の箇所に設置された熱源が温めた前記室内の空気である温気が、上昇して流入する、前記温気の流入口と、
前記流入口よりも面積が小さい、前記温気の流出口と、
前記流入口から前記流出口にかけて、空気が流れる空気流路と、
を有する筐体を備え、
前記流出口は、前記空気流路を通って加速した前記温気が前記室内の天井に沿って流出するように配設され、
前記流出口から流出する前記温気は、前記室内の壁に到達して下方向に流れ、
前記流出口から流出した前記温気が、前記天井の隅に到達する場合、前記到達の後、気流が水平方向の前記温気が、衝突して前記温気のカルマン渦が生じるように、前記温気の進行方向における所定の箇所に設けられる柱をさらに備え、
前記流出口から流出して前記室内の壁に衝突した前記温気のうち、前記壁の反対方向に向かう温気の気流を制限するように、前記室内の所定の箇所に設けられる整流板をさらに備える、
室内暖房設備。
【請求項9】
請求項1乃至請求項
6のいずれかに記載の室内暖房設備と、
前記熱源と、
を備える、サウナ。
【請求項10】
室内の所定の箇所に設置された熱源が温めた前記室内の空気である温気を、前記温気の流入口に流入させるステップと、
前記流入口から前記流入口より面積が小さい前記温気の流出口にかけて空気が流れる空気流路から、前記温気を流出させるステップと、
を含み、
前記流出させるステップは、前記空気流路を通って加速した前記温気が前記室内の天井に沿って流出するように、前記流出口から前記温気を流出させ、
前記流出口から流出する前記温気は、前記室内の壁に到達して下方向に流れ
、
前記流出口から流出した前記温気が、前記天井の隅に到達する場合、前記到達の後、気流が水平方向に方向転換した前記温気が、前記温気の進行方向における所定の箇所に設けられる鉛直方向の柱に衝突して前記温気のカルマン渦が生じる、
室内暖房方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内暖房設備、サウナ、及び室内暖房方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ストーブで加熱した部屋で熱気浴をするサウナ(いわゆるドライサウナ)や、サウナ室に設置されているサウナストーン等の熱源に水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」を行うサウナ(いわゆるフィンランド式サウナ)が知られている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】公益社団法人日本サウナ・スパ協会、“サウナ健康法の時代”、[online]、平成28年5月8日、公益社団法人日本サウナ・スパ協会、[令和5年12月11日検索]、インターネット<URL:https://www.sauna.or.jp/kisochishiki/saunabook_1.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、サウナの室内では、熱源によって温められた高温(又は高温高湿)の空気は、部屋の上方に上り、天井に沿って拡散する。この場合、天井付近に、高温の空気と、低温(又は低湿低温)の空気の層ができる。そして、高温の空気は下りてきにくく、足付近が温まりにくいという問題が生じ得る。そして、このような問題は、サウナに限らず、一般的に、通常の部屋に熱源を設けて暖房する場合にも言い得ることである。
【0005】
そこで、本発明は、温めた室内の空気を効率的に循環させる室内暖房設備、及び、当該室内暖房設備を備えるサウナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る室内暖房設備は、室内の所定の箇所に設置された熱源が温めた前記室内の空気である温気が、上昇して流入する、前記温気の流入口と、前記流入口よりも面積が小さい、前記温気の流出口と、前記流入口から前記流出口にかけて、空気が流れる空気流路と、を有する筐体を備え、前記流出口は、前記空気流路を通って加速した前記温気が前記室内の天井に沿って流出するように配設され、前記流出口から流出する前記温気は、前記室内の壁に到達して下方向に流れる。
【0007】
本発明の一態様に係るサウナは、上述した室内暖房設備と、室内の所定の箇所に設置された熱源と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る室内暖房方法は、室内の所定の箇所に設置された熱源が温めた前記室内の空気である温気を、前記温気の流入口に流入させるステップと、前記流入口から前記流入口より面積が小さい前記温気の流出口にかけて空気が流れる空気流路から、前記温気を流出させるステップと、を含み、前記流出させるステップは、前記空気流路を通って加速した前記温気が前記室内の天井に沿って流出するように、前記流出口から前記温気を流出させ、前記流出口から流出する前記温気は、前記室内の壁に到達して下方向に流れる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、温めた室内の空気を効率的に循環させる室内暖房設備、及び、当該室内暖房設備を備えるサウナを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】所定の部屋10に備え付けられた筐体Aの一例を示す図である。
【
図2】筐体Aを備えるサウナ室10を天井側から見た図である。
【
図3】筐体Aをサウナ室10に設置するバリエーションを示す図である。
【
図4】柱Bを設置したサウナ室10の一例を示す図である。
【
図5】柱Bをサウナ室10に設置するバリエーションを示す図である。
【
図6A】整流板イが備えられる位置を説明するための図である。
【
図6B】整流板イが設けられているサウナ室10の隅を水平方向から見た状態を示す図である。
【
図7】サウナ室10の筐体Aに整流板エを取り付けた状態の一例を示す図である。
【
図8】筐体Aに設けられる小窓の態様の一例を示す図である。
【
図9】本設備によって室内を暖房する際の流れを示すフローチャートである。
【
図10】通常のサウナ室(a)と、本発明に係るサウナ室(b)とを比較するイメージ図である。
【
図11】水平方向に循環する温気h1について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0012】
図1~
図8を参照して、本発明の一実施形態に係る室内暖房設備(以下、まとめて「本設備」ということがある。)について説明する。
【0013】
本設備は、例えば、
図1に示す筐体Aのように、所定の部屋10に少なくとも1つ備え付けられる。所定の部屋10は、生活の場として用いられる空間であってよい。また、所定の部屋10は、特定の用途のために用意された空間であってもよく、例えば、サウナを含んでいてよい。
【0014】
また、所定の部屋10は、熱源hを備えていてよい。熱源hは、例えば、設置されるストーブ等であってよい。例えば、所定の部屋10がサウナの場合、熱源hは、サウナストーブやサウナストーンを含んでいてよい。
【0015】
一般的に、熱源が部屋に設置されると、熱源によって温められた室内の空気(以下、「温気」という。)は、空気の密度が下がり、相対的に周囲の空気よりも質量が軽くなり、上昇する。上昇した温気は天井に沿って部屋に拡散する。このように、温気は室内の天井付近に滞留しやすい。
【0016】
本設備は、このような温気を下方向に流れるようすることや、室内の空気を撹拌すること等により、熱源によって温められた空気を効率的に室内に行き届かせる仕組みを提供する。
【0017】
以下では、一例として、本設備を備える所定の部屋10が、サウナであるものとして説明する。
【0018】
サウナは、熱源によって加熱された室内(以下、「サウナ室」という。)に入り、体を温める温浴法である。熱源は、例えば、サウナストーブ、サウナストーンであってよい。その他、熱源は、サウナに用いられる範囲での加熱装置、又は加熱する仕組みを含んでいてよい。サウナ室は、熱源によって加熱され、サウナ室内の温度を保っている。
【0019】
また、サウナ室内における体感温度を高めるために、例えば、熱源のサウナストーンに水をかけて蒸気を生じさせ、サウナ室を高温高湿の状態にすること(いわゆる「ロウリュ」)がある。このようなロウリュを用いるサウナにおいて、本発明の一実施形態に係る本設備を適用することが可能である。
【0020】
まず、
図1を参照して、本設備のうち筐体Aについて説明する。
図1は、所定の部屋10に備え付けられた、筐体Aの一例を示す図である。
【0021】
筐体Aは、空気の流入口と空気の流出口を有するダクト状の構造物であって、所定の部屋10(以下、「サウナ室10」という。)に設置されている熱源hの上方に設けられる。筐体Aは、熱源hによって温められた空気である温気h1が、上昇して流入するための流入口A1を備える。また、筐体Aは、流入口A1に流入した温気h1が通る空気流路を有しており、温気h1が流出する流出口A2を備えている。
【0022】
熱源hは、例えば、サウナストーブによって加熱されたサウナストーンであってよい。そして、熱源hに水をかけると水蒸気が発生する。そのため、温気h1は、高温高湿の状態でサウナ室10を循環する。
【0023】
筐体Aの流出口A2の面積は、流入口A1の面積より小さい。例えば、流出口A2の面積は、流入口A1の10パーセント~20パーセントの大きさであってよい。そして、筐体Aの空気流路は、流出口A2にかけて狭くなっていてよい。これにより、流入口A1から流出口A2にかけて流れる温気h1の縮流が生じ得る。すなわち、温気h1が筐体Aの空気流路の中で加速して進行する効果(いわゆる、ベンチュリ―効果)が得られる。
【0024】
図1に示す通り、上昇する温気を流入口A1に流入させるために、筐体Aは熱源hの上方に設置され、流入口A1は、熱源hに向かって開口していることが望ましい。
【0025】
流出口A2は、天井に沿った向きに開口していてよい。流出口A2は、天井に接している、又は、天井に近い位置に配設されていることが望ましい。
【0026】
流出口A2から流出した温気h1は、天井に沿って進行し、例えば、壁に到達すると下方向に方向転換する。
【0027】
このように、サウナ室10で生じた温気h1が、筐体Aの空気流路を通る際、ベンチュリ―効果によって加速し、流出口A2から流出した後、壁に衝突して下方向に方向転換する。これにより、天井付近に温気h1が滞留することを防ぎ、サウナ室10において、高温高湿の温気と、低温低湿の空気と、の層を押し下げることができる。すなわち、サウナの利用者は足付近まで温まりやすくなる。
【0028】
筐体Aは、流出口A2から流出して天井に沿って進行する温気h1が、下方向に方向転換しやすいように、壁付近に設けられていてもよい。
【0029】
例えば、筐体Aを壁付近に設けることができない場合、
図1に示すように、整流板アを設けてもよい。この場合、温気h1が整流板アに衝突すると、温気h1は下方向に方向転換する。これにより、温気h1が壁に到達せずとも、温気h1が下方向に方向転換する仕組みを提供できる。
【0030】
図2は、筐体Aを備えるサウナ室10を、天井側から見た図である。
図2に示すように、設備Aは、流出口A2が、サウナ室10の天井の隅に向くように配設されていてもよい。これにより、流出口A2から流出した温気h1は、サウナ室10の隅に衝突すると、下方向に方向転換するとともに、水平方向に方向転換し、サウナ室10を旋回する気流も生じる。このように、筐体Aによって、サウナ室10の温気が水平方向に循環する仕組みも提供可能となる。
【0031】
図3は、筐体Aをサウナ室10に設置するバリエーション(サウナ室11、サウナ室12)を示す図である。
図3は、サウナ室11、及びサウナ室12について、水平方向から見た図(11a及び12a)と、天井側から見た図(11b及び12b)と、をそれぞれ示す図である。
【0032】
図3において、サウナ室11は、流出口A2が2つ配設された筐体Aを備えている。11bに示すように、例えば、熱源hはサウナ室11の辺側に寄せて設置されてもよい。そして、熱源hの上方に設置される筐体Aの流出口A2は、熱源hが設置されている側の天井の二隅に向いている。そのため、温気h1は、11a及び11bにおいて表された矢印が示すような気流で循環する。
【0033】
図3において、サウナ室12は、サウナ室11の場合と異なり、12bに示すように、熱源hがサウナ室12の中央に設置されてもよい。そして、熱源hの上方に設置される筐体Aの流出口A2は、天井の対角線の二隅に向かって配設されている。そのため、温気h1は、12a及び12bにおいて表された矢印が示すような気流で循環する。
【0034】
次に、
図4を参照して、本設備のうち柱Bについて説明する。
図4は、柱Bを設置したサウナ室10の一例を示す図である。
【0035】
柱Bは、サウナ室10の所定の位置に設置される、柱状の設備である。柱Bは、円柱であっても、角柱であってもよい。
【0036】
柱Bは、例えば、サウナ室10において、温気h1の進行先に位置するように設置されてよい。
図4の場合、流出口A2から流出し、水平方向に方向転換した温気h1が、柱Bに衝突する。
【0037】
柱Bに温気h1が衝突すると、柱Bの後方に温気h1の渦B1を生じる。このような渦をカルマン渦という。
【0038】
カルマン渦とは、流れる流体(例えば、空気や水等)に対して障害物を置いたとき、当該障害物の後方に生じる渦をいう。
【0039】
図4に示すように、流出口A2から流出した温気h1は、柱Bに衝突して、カルマン渦B1を生じさせる。そして、温気h1は、カルマン渦B1を伴いながら、サウナ室10内を水平方向に循環する。
【0040】
このように、柱Bは、水平方向に進行する温気h1の経路に設けられ、衝突した温気h1のカルマン渦を生み出すための設備である。これにより、サウナ室10を水平方向に進行する温気h1が、渦を伴いながら循環することができ、サウナ室10の空気を撹拌する仕組みを提供することができる。
【0041】
なお、柱Bは鉛直方向の柱であることを想定しているが、これに限られず、水平方向の柱であってもよい。
【0042】
図5は、柱Bをサウナ室10に設置するバリエーション(サウナ室13、サウナ室14)を示す図である。
図5は、サウナ室13、及びサウナ室14について、水平方向から見た図(13a及び14a)と、天井側から見た図(13b及び14b)と、をそれぞれ示す図である。
【0043】
図5において、サウナ室13は、
図3のサウナ室11と同様に、筐体Aが設置されている。13a、13bに示すように、柱Bは、2つの流出口A2によって流出する温気h1の進行先にそれぞれ設置される。そのため、温気h1は、13bに表された矢印が示すような気流で、カルマン渦B1を伴いながら循環する。
【0044】
図5において、サウナ室14は、
図3のサウナ室12と同様に、筐体Aが設置されている。14bに示すように、温気h1はサウナ室10の天井の2隅に衝突するため、4つの水平方向への温気h1の気流が生じ得る。そして、4つの柱Bが、各方向に循環する温気h1の進行先に配置されてよい。そのため、温気h1は、14bに表された矢印が示すような気流で、カルマン渦B1を伴いながら循環する。
【0045】
また、
図6Aに示すように、流出口A2から流出した温気h1が壁に衝突して水平方向に循環するとき、サウナ室10の部屋の隅を隅丸状にする整流板イを設けてもよい。
【0046】
なお、整流板イは、サウナ室10の各隅に設けてもよいし、いくつか設置個所を限定してもよい。
【0047】
図6Bは、整流板イが設けられているサウナ室10の隅を水平方向から見た状態を示す図である。整流板イは、サウナ室10の隅を、天井から床までの全てを隅丸にしなくてもよい。すなわち、
図6Bに示すように、例えば、温気h1が衝突し得る範囲を隅丸にしてもよい。
【0048】
これにより、サウナ室10を循環する温気h1が、よりスムーズに水平方向の方向転換をすることができる。
【0049】
さらに、サウナ室10は、
図6Bに示すように、整流板ウを設けてもよい。整流板ウは、例えば、流出口A2から流出した温気h1のうち、進行先の壁に衝突して逆行する温気の気流(すなわち、流出口A2の方向に戻る気流)を制限する。
図6Bの場合、整流板ウは、流出口A2から流出した温気h1のうちの一部の温気が、反対方向に進行して流出口A2の下方に潜り込んでいく気流を制限する。これにより、水平方向に循環しない温気の気流を制限することが可能となる。
【0050】
また、
図7に示すように、整流板エを取り付けてもよい。
図7は、サウナ室10に整流板エを取り付けた状態の一例を示す図である。
図7の場合、整流板エは、筐体Aの流入口A1の縁に取り付けられている。
【0051】
整流板エは、例えば、熱源hによって生じて上昇する温気h1を流入口A1に案内する整流板である。これにより、温気h1が流入口A1から漏れることを制限し、温気h1を設備Aに効率よく誘導することができる。
【0052】
図8に示すように、筐体Aは小窓を設けた構造であってもよい。
図8は、筐体Aに設けられている小窓の各態様である小窓オ(1)、及び、小窓オ(2)を示す図である。
【0053】
図8のオ(1)、オ(2)で示すように、筐体Aの小窓は、開け閉め可能な構造となっている。小窓オ(1)は、窓を開けた状態を示し、小窓オ(2)は、窓を閉めた状態を示している。このように、筐体Aの小窓は、筐体Aにおいて、流出口A2以外の空気の流出口を作る構造である。
【0054】
小窓は、オ(2)の状態のとき、設備Aの流入口A1に流入した温気h1は、流出口A2のみから流出する。一方、オ(1)の状態のとき、小窓オ(1)から温気h1が排出される気流も生じ、流出口A2から流出する温気h1の気流の勢いは弱まる。このように、筐体Aの小窓は、開け閉め可能な構造であり、例えば、サウナ室10内を循環する温気h1の気流の量を制御する仕組みを提供することが可能となる。
【0055】
図9~
図11を参照しながら、本設備によって室内を暖房する流れを説明する。
図9は、本設備によって室内を暖房する時系列を示すフローチャートである。なお、以下では、一例として、本設備を含むサウナによって本発明を実施するものとして説明する。
【0056】
まず、サウナ室10において、熱源hによって温気h1が生じる(S1)。なお、温気h1は、熱源であるサウナストーンに水をかけて生じる蒸気を含んでいてよい。
【0057】
次に、生じた温気h1は上昇し、筐体Aの流入口A1に流入し、筐体Aの空気流路を通って流出口A2から流出する(S2)。この時、筐体Aの空気流路を通る温気h1は、上述したベンチュリ―効果によって加速し、勢いを得て流出口A2から流出する。
【0058】
次に、流出した温気h1は、サウナ室10の壁、もしくは整流板アに衝突して下方向に流れる(S3)。これにより、サウナ室10において、高温高湿の温気と、低温低湿の空気と、の層を押し下げることができる。
図10は、通常のサウナ室(a)と、本発明に係るサウナ室(b)とを比較するイメージ図である。(a)では、生じた温気h1は天井付近に滞留しやすく、温気h1と、低温低湿の空気c1との空気の層が、サウナ室の上方に生じている。(b)では、本設備によって、当該層が押し下げられる。これにより、例えば、サウナ室10の利用者は足付近まで温まることができる。
【0059】
そして、壁に衝突した温気h1のうち、一部は水平方向に方向転換する。
【0060】
図11に示すように、水平方向に方向転換した温気h1は、進行方向に備えられた柱Bに衝突する。これにより、温気h1はカルマン渦B1を伴いながら、サウナ室10を循環し、サウナ室10の空気を撹拌する(S4)。これにより、サウナ室10の利用者に効率よく温気h1を届けることができる。
【0061】
このように、サウナ室10において、上述したS1~S4が繰り返される。この場合、本設備によって、サウナ室10は温気h1が利用者の足付近まで届くようになり、しかも温気h1が室内を効率よく循環する仕組みを提供できる。これにより、サウナ室10の利用者の体感温度を維持することができ、例えば、熱源hに水をかけて利用者の体感温度を高めるロウリュの頻度を下げ、熱源hに水がかけられ続けられることによるサウナ室10の室温低下を防ぐことができる。すなわち、サウナ室10の室温維持を実現することができ、サウナ室10の品質が安定する。
【0062】
上述した実施形態において、本発明に係る本設備及びサウナは、筐体A、柱B、整流板ア、整流板イ、整流板ウ、整流板エ、及び、小窓オのうち一部又は全部を備える構成としてもよい。上述した実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。さらに、当業者であれば、以下に述べる各要素を均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であり、かかる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10,11,11a,11b,12,12a,12b,13,14,(a),(b)…所定の部屋(サウナ室)、A…筐体、B…柱、ア,イ,ウ,エ…整流板、オ(1),オ(2)…小窓、A1…流入口、A2…流出口、h…熱源、h1…温気、c1…低温低湿の空気
【要約】
【課題】温めた室内の空気を効率的に循環させる室内暖房設備を提供すること。
【解決手段】室内の所定の箇所に設置された熱源が温めた前記室内の空気である温気が、上昇して流入する、前記温気の流入口と、前記流入口よりも面積が小さい、前記温気の流出口と、前記流入口から前記流出口にかけて、空気が流れる空気流路と、を有する筐体を備え、前記流出口は、前記空気流路を通って加速した前記温気が前記室内の天井に沿って流出するように配設され、前記流出口から流出する前記温気は、前記室内の壁に到達して下方向に流れる。
【選択図】
図10