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特許7537047金網の支持構造の製造方法およびワイヤロープ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】金網の支持構造の製造方法およびワイヤロープ
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/02 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
E01F7/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024097280
(22)【出願日】2024-06-17
【審査請求日】2024-06-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】橋口 寛史
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6504837(JP,B2)
【文献】特開昭53-12115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 1/00- 8/02
E01F 13/00-15/14
E04H 17/00-17/26
E04B 1/00- 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金網と、ワイヤロープと、枠体とを有し、前記枠体に直接若しくは他の部材を介して固定される前記ワイヤロープが前記金網の外周部において前記金網を通されることによって前記金網が前記枠体に支持される金網の支持構造の、製造方法であって、
前記ワイヤロープの一端側において、前記ワイヤロープを構成する素線又はストランドの一部を残して他の素線又はストランドが切除された導入部を形成するステップと、
前記導入部を用いて、前記ワイヤロープを前記金網に通すステップと、
を有する、金網の支持構造の製造方法。
【請求項2】
前記導入部の長さが、前記金網の何れかの1辺の長さの1/5以上である、請求項1に記載の金網の支持構造の製造方法。
【請求項3】
前記導入部の長さが、前記金網の何れかの1辺の長さ以上である、請求項2に記載の金網の支持構造の製造方法。
【請求項4】
前記金網の1辺に通された前記導入部の先端部を引っ張ることで、前記ワイヤロープの本体部を前記金網の1辺に通すステップを有する、請求項3に記載の金網の支持構造の製造方法。
【請求項5】
前記ワイヤロープが前記金網に通された後に、前記導入部を切除するステップを有する、請求項1から4の何れかに記載の金網の支持構造の製造方法。
【請求項6】
前記導入部を、心ストランド若しくは心線によって構成する、請求項1から4の何れかに記載の金網の支持構造の製造方法。
【請求項7】
前記枠体が、架構を構成する一部、若しくは架構に取り付けられた枠体であって、略垂直に仮支持されている前記金網に対して、前記ワイヤロープを通すステップを行う、請求項1から4の何れかに記載の金網の支持構造の製造方法。
【請求項8】
請求項1から4の何れかに記載の金網の支持構造の製造方法に用いられるワイヤロープであって、
ワイヤロープ本体部と、前記導入部と、を有する、ワイヤロープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金網と、ワイヤロープと、枠体とを有し、前記枠体に直接若しくは他の部材を介して固定される前記ワイヤロープが前記金網の外周部において前記金網を通されることによって前記金網が前記枠体に支持される金網の支持構造の、製造方法、及び、これに用いられるワイヤロープに関する。
【背景技術】
【0002】
台風や竜巻などによって発生する飛来物から構造物や設備(例えば発電所などの重要なインフラ設備)などを防護することを目的として、構造物や設備などの周囲に架台を設置し、架台に金網を取り付けることにより、構造物や設備などを防護ネットで覆うことが行われている。
このような防護設備に関する技術が、特許文献1において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6504837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示されている防護用の金網(膜状部材)の支持構造によれば、金網の周囲に通されたワイヤロープ(線状部材)によって金網が枠体に取り付けられるため、金網の耐衝撃性能を十分に発揮させることができ、非常に好適なものである。当該支持構造においては、金網の周囲(金網の網目)にワイヤロープを通す作業が必要であり、その作業性を向上することが求められている。
【0005】
本発明は、枠体に直接若しくは他の部材を介して固定されるワイヤロープが金網の外周部において金網を通されることによって金網が枠体に支持される金網の支持構造に関し、当該支持構造の形成の作業性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
金網と、ワイヤロープと、枠体とを有し、前記枠体に直接若しくは他の部材を介して固定される前記ワイヤロープが前記金網の外周部において前記金網を通されることによって前記金網が前記枠体に支持される金網の支持構造の、製造方法であって、前記ワイヤロープの一端側において、前記ワイヤロープを構成する素線又はストランドの一部を残して他の素線又はストランドが切除された導入部を形成するステップと、前記導入部を用いて、前記ワイヤロープを前記金網に通すステップと、を有する、金網の支持構造の製造方法。
【0007】
(構成2)
前記導入部の長さが、前記金網の何れかの1辺の長さの1/5以上である、構成1に記載の金網の支持構造の製造方法。
【0008】
(構成3)
前記導入部の長さが、前記金網の何れかの1辺の長さ以上である、構成2に記載の金網の支持構造の製造方法。
【0009】
(構成4)
前記金網の1辺に通された前記導入部の先端部を引っ張ることで、前記ワイヤロープの本体部を前記金網の1辺に通すステップを有する、構成2又は3に記載の金網の支持構造の製造方法。
【0010】
(構成5)
前記ワイヤロープが前記金網に通された後に、前記導入部を切除するステップを有する、構成1から4の何れかに記載の金網の支持構造の製造方法。
【0011】
(構成6)
前記導入部を、心ストランド若しくは心線によって構成する、構成1から5の何れかに記載の金網の支持構造の製造方法。
【0012】
(構成7)
前記枠体が、架構を構成する一部、若しくは架構に取り付けられた枠体であって、略垂直に仮支持されている前記金網に対して、前記ワイヤロープを通すステップを行う、構成1から6の何れかに記載の金網の支持構造の製造方法。
【0013】
(構成8)
構成1から7の何れかに記載の金網の支持構造の製造方法に用いられるワイヤロープであって、ワイヤロープ本体部と、前記導入部と、を有する、ワイヤロープ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、枠体に直接若しくは他の部材を介して固定されるワイヤロープが金網の外周部において金網を通されることによって金網が枠体に支持される金網の支持構造に関し、当該支持構造の形成の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の金網の支持構造を有する防護ネットの概略を示す図
図2】本実施形態の金網の支持構造の一部を示す説明図
図3】ワイヤロープの一端側に形成された導入部を示す図
図4】金網に本実施形態に係るワイヤロープを通した状態を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0017】
図1は、本実施形態の金網の支持構造を有する防護ネットを示す図(構成の理解の容易のため、一部透過的に示すなどしている図)であり、それぞれ、図1(a):正面図、図1(b):側面図、図1(c):上面図、である。
本実施形態の金網の支持構造を有する防護ネット1は、特許文献1で示される支持構造を有しているものである。即ち、「枠体」であるH形鋼によって構成された架構13に対して、その両端が固定されるワイヤロープ(特許文献1における“線状部材”)12が、金網11の外周部において金網を通されることによって、金網が架構(枠体)に支持されている。また、「枠体」の四隅となる位置に「緩衝体」14が固定されており、この緩衝体14を巻き回すようにワイヤロープ12が配置されている。
図1の防護ネット1は、説明の簡単化のために、防護施設全体の中の1単位分のみを示したものである。実際の防護施設全体は、図1で示された単位が縦横に繰り返し配置された壁面状の側面(及び天面)で保護対象物を保護するような構成となり、例えば発電所の建屋を全体的に囲うように設けられる。
【0018】
図1の防護ネット1は、1枚の金網を取り付けるためにワイヤロープが2本使用されおり、図1(a)における金網11の左辺と上辺を通されるワイヤロープと、右辺と下辺を通されるワイヤロープが使用されている。
また、図1の防護ネット1では、2枚目(2重)の金網を取り付けるために図1(a)における上辺と右辺を通されるワイヤロープと、下辺と左辺を通されるワイヤロープが使用されている。
従って、図1の防護ネット1では、合計4本のワイヤロープが使用されているが、それぞれの取り付け構造の概念は同様なものであるため、以下、そのうちの1本(図1(a)における金網11の左辺と上辺を通されるワイヤロープ12)を例として説明する。
【0019】
ワイヤロープ12の一端側は、アルミロック加工1211によってアイが形成されており、架構13に固定(溶接)されているアイプレート131に、接続金具(シャックル)15を介して接続されている。
ワイヤロープ12は、図1(a)において、上述の架構13(アイプレート131)に対する固定位置から下方に向かい、左下の緩衝体14を巻き回されて、上方へ向かうように配置されている。そして、金網11の1辺(図1(a)における左辺)の網目を縫うようにして通されて、左上の緩衝体14を巻き回されて、右へ向かうように配置されている。左辺と同じように金網11の上辺の網目を縫うようにしてワイヤロープ12が通され、右上の緩衝体14を巻き回されて、左へ向かうように配置されている。
ワイヤロープ12の他端側は、ワイヤグリップ及びシンブルを用いて形成されたアイ加工部1212を有し、架構13に固定(溶接)されているアイプレート131に、接続金具(ターンバックル)16を介して接続されている。
なお、特許文献1にも記載されているように、架構(枠体)に対するワイヤロープの端部の固定方法は、上記説明したものに限らず、任意の固定方法を用いるものであってよい(例えば、ワイヤロープの端末加工や接続金具はそれぞれ任意のものを利用するものであってよいし、接続金具を用いずに直接ワイヤロープ端部を架構(枠体)に接続するようなものであってもよい)。
【0020】
本実施形態の金網11は、網目寸法が50mm若しくは40mmのひし形金網であり、引張強度が1400N/mmの4.0φの素線を使用した高強度金網である。また、ワイヤロープ12は、7×7/16φのワイヤロープである。なお、本発明をこれに限るというものではなく、金網やワイヤロープの仕様は、求められる強度等に応じて任意に定められるものであってよい。
架構(枠体)13や緩衝体14については、特許文献1で説明されているものと同様の概念であり、具体的な仕様については求められる防護能力に応じて適宜定められるものであるため、ここでの説明を省略する。
【0021】
次に、上記構造の防護ネット1の製造方法(特に、金網にワイヤロープを通す方法)について説明する。
図2は、ワイヤロープ12の配置(取り回し)を示す説明図であり、図3は、ワイヤロープ12の他端側(ワイヤロープ12を金網11に通す作業時に先端となる側)に形成された導入部122を示す図である。また、図4は金網11にワイヤロープ12を通した状態を示す(防護ネット1としての取り付け状態ではなく、単に金網11にワイヤロープ12を通した状態を示している)写真である。
【0022】
本実施形態の防護ネット1は、架構13が組み上げられた(立設されている)状態において、これに金網11が取り付けられるものである(即ち、略鉛直の取り付け面に金網を取り付けるものである)。架構13の組み上げ(及び架構13に対する緩衝体14の設置)については本発明が対象とするものではなく、ここでの説明を省略し、既に鉛直に立設されている架構13(緩衝体14設置済み)に対する金網11の取り付け(ワイヤロープ12を通す方法)について以下説明する。
【0023】
本実施形態で使用されるワイヤロープ12は、工場でその一端側にアルミロック加工1211がなされ、他端側にはメッセンジャー部(導入部)122が形成されたものが、現場に搬入されて使用される。
一端側のアルミロック加工については、周知のものであり、また、任意の端末加工でアイ部を形成するものであってよい(その他、アイ部に限らず、ワイヤロープを引き留めるための任意の端末加工であってよい)ため、ここでの詳しい説明を省略する。
他端側のメッセンジャー部122(図3参照)は、ワイヤロープ12の本体部121に対して、心ストランド(心鋼)のみを残して、周囲のストランドを切除することで形成される。即ち、「ワイヤロープの一端(他端)側において、ワイヤロープを構成する素線又はストランドの一部を残して他の素線又はストランドが切除された導入部を形成」しているものであり、「導入部を、心ストランドによって構成する」ものである。なお、本体部121とメッセンジャー部122の境で、その太さが太くなる個所(段差となる個所)において、その段差を軽減するように、本体部121の角部(段差部分)を面取り(グラインダー等を用いて切削)するとより好ましい。
本実施形態におけるメッセンジャー部122は、その長さが、金網11の1辺(ワイヤロープ12が通される辺であり、2辺以上に通される場合にはそのうちの一番長い辺)よりも長くなるように形成されている。
なお、ここでは工場で上記の端末加工がされるものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、例えば現場にて端末加工がされるものであってもよい。
【0024】
上記構成を有するワイヤロープ12を使用して、金網11が架構13に取り付けられる。
前述のごとく、架構13は鉛直に立設されており、これにワイヤロープ12を使用して金網11を取り付ける(網目にワイヤロープ12を通す)ために、まず、金網11をクレーンなどを使用して吊り上げて、取り付け位置で保持する。そして、番線(針金)を用いる等して、金網11を架構13に対して仮止め(仮支持)する。取り付け位置に仮支持された(鉛直に吊り下げられた)金網11に対して、ワイヤロープ12を通す作業を行う。
本実施形態では、金網11を構成する列線が横方向(水平方向)となるように、金網11が配置される。
なお、可能であるならば、番線(針金)等を用いた仮止めをすることなく、クレーンに吊り下げた状態のままワイヤロープ12を通す作業を行うものであっても良い(金網を取り付け位置に“仮支持”する方法は任意のものであってよい)。
【0025】
ワイヤロープ12を使用した金網11の取り付け作業では、ワイヤロープ12のアルミロック加工1211を、架構13に固定(溶接)されているアイプレート131に、接続金具(シャックル)15を介して接続する作業を行う(なお、当該接続作業は、下記のワイヤロープ12を通す作業の後で行うものであってもよい)。
次に、図2に矢印で示されるように、ワイヤロープ12の他端側(メッセンジャー部122がある側)を、左下の緩衝体14を巻き回すように通して、下から上に向かって金網11の左辺部分の金網内部を通す作業を行う。
当該作業はメッセンジャー部122を用いて行われる。より具体的には、メッセンジャー部122を、金網内部に先に通した上で、上部側に金網11から飛び出たメッセンジャー部122の先端部を引っ張ることで、ワイヤロープ12の本体部121を金網11の1辺に通す(図4参照)。
本体部121が金網11の左辺に十分に通されたら、図2に矢印で示されるように、左上の緩衝体14を巻き回すように通して、左から右に向かって金網11の上辺部分の金網内部にワイヤロープ12を通す作業を行う。当該金網の上辺を通す作業は、左辺を通す作業と同様に、メッセンジャー部122を用いて行われ、右側に金網11から飛び出たメッセンジャー部122の先端部を引っ張ることで、ワイヤロープ12の本体部121を金網11の1辺に通す。なお、金網11の列線が横方向(水平方向)となる配置であるため、金網の上辺(及び下辺)を通すワイヤロープ12は、列線の(らせん状の素線)の中を通される形(図4で示されるもの)となる。
本体部121が金網11の上辺に十分に通されたら、図2に矢印で示されるように、右上の緩衝体14を巻き回すように通して、ワイヤロープ12を折り返すように配置し、メッセンジャー部122を切除する。なお、メッセンジャー部122の切除は、ワイヤロープ12が金網11に通された後の任意のタイミングで行うことができる(例えば、右上の緩衝体14を巻き回す前に行うものであってもよい)。
メッセンジャー部122が切除されたワイヤロープ12の他端側に、ワイヤグリップ及びシンブルを用いてアイ加工部1212を形成し、架構13に固定されているアイプレート131に対して接続金具(ターンバックル)16を介して接続し、ターンバックルによって張力調整を行う。なお、他端側における端末加工についても、ワイヤロープを引き留めることができる任意の端末加工であってよい
なお、番線(針金)等を用いた、架構13に対する金網11の仮止め(仮支持)は、ワイヤロープ12による取り付けにより不要になった任意のタイミングで取り外すことができる(取り外さずに残しておくものであっても構わない)。
【0026】
前述のごとく、防護ネット1では合計4本のワイヤロープを使用して2枚の金網を取り付けるものであるが、それぞれのワイヤロープを使用した取り付けは上記の説明と同様の概念(ワイヤロープを配置する位置や方向が異なるだけの違い)であるため、説明を省略する。
【0027】
上記により、架構13に対する金網11のワイヤロープ12を用いた張設が行われる。
金網の目合いが50mm(若しくは40mm)で、直径が4.0mmの素線を使用して一定程度の厚みで形成された高強度金網に、直径が16mmのワイヤロープを通そうとすると、寸法的にはぎりぎりのものとなる。例えば、ビニールテープをワイヤロープに1周巻いただけでも、通すことが難い。
金網を地面に平置きした状態(図4の写真のような状態)であれば、金網やワイヤロープの自由度も比較的高いため、ワイヤロープ12の本体部121をそのまま金網に通す作業も可能ではあるが、金網を吊った状態であると、金網自体の自重によって金網が引っ張られているような状態となり、ワイヤロープ12の本体部121をそのまま金網に通す作業が非常に難しくなる。
これに対し、本実施形態によれば、本体部121よりも細くて柔軟なメッセンジャー部122を用いることにより、金網に通す作業が容易となる。さらにメッセンジャー部122を金網の1辺よりも長く形成することで、金網を通したメッセンジャー部122の先端が飛び出るまで、作業性よく金網を通す作業を行うことができ、この飛び出たメッセンジャー部122の先端を引っ張ることで、本体部121を比較的容易に金網に通すことができる。ワイヤロープは柔軟性のある部材であり、押し込む際に真っ直ぐに力を加える(前進方向のみに力を作用させる)ことが難しいため、ワイヤロープを押し込むようにして金網に通すことは難しい一方、引っ張ることで金網に通すことは比較的容易なものである(引っ張る力の場合、ロープの前進方向のみに作用するため)。
また、本実施形態によれば、メッセンジャー部122が、ワイヤロープを構成するストランドによって形成されており、従って、「ワイヤロープ本体部とメッセンジャー部とを接続するための別の部材」といったものが不要である。メッセンジャー部を別部材として用意すると、これとワイヤロープを接続するための何らかの部材が必要になるが、これがあるとどうしても一部ワイヤロープよりも太くなる個所が生じやすくなる。メッセンジャー部を設けるために、ワイヤロープよりも太くなる個所が生じてしまうのでは、その部分で金網を通すことが難しくなってしまう。
これに対して、本実施形態によれば、ワイヤロープ本体部よりも太くなる個所が生じないため、非常に好適である。
【0028】
以上のごとく、本実施形態によれば、枠体に直接若しくは他の部材を介して固定されるワイヤロープが金網の外周部において金網を通されることによって金網が枠体に支持される金網の支持構造に関し、当該支持構造の形成の作業性を向上することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、メッセンジャー部(導入部)が心ストランドによって構成されるものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、導入部は、「ワイヤロープを構成する素線又はストランドの一部を残して他の素線又はストランドを切除」することで形成されるものであればよい。例えば、心ストランド以外のストランドを残すものであってもよいし、何れかのストランドを構成する素線のみを残すものであってもよい。また、複数のストランド又は複数の素線を残すようなものであってもよく、例えば、各ストランドの心線を残して、これをより合わせて新たなストランドとして、これを導入部とするもの等であってもよい。ただし、心ストランド、若しくは、心ストランドの心線を導入部とするのがより好ましい(心ストランド、心ストランドの心線は、より直線状であり、断面視において中心部に位置するものであるため)。
【0030】
実施形態では、メッセンジャー部(導入部)122が、金網11の1辺よりも長くなるように形成されるものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、導入部が金網の1辺よりも短いものであってもよく、例えば、金網の1辺の1/5以上となるようにメッセンジャー部(導入部)を形成するものであってもよい。金網にワイヤロープを通す作業は、金網に通したワイヤロープ(本体部分)の長さが長くなるにつれてより難しくなるものであり、本体部分の挿入長さが比較的短いうちは金網を通す作業も可能であるため、適宜必要な長さでメッセンジャー部(導入部)を形成するようにしてもよい。
ただし、導入部が金網の1辺よりも長いことにより、本体部を金網に通す前に導入部を金網の1辺に通すことができる。金網の1辺に通された導入部の先端部を引っ張ることで、ワイヤロープの本体部を金網の1辺に通すことができ、より作業性に優れるため、金網の1辺よりも長くなるように形成するとより好ましい。
【0031】
実施形態では、1枚の金網を取り付けるためにワイヤロープが2本使用されるもの(1本のワイヤロープが金網の2辺に通されるもの)を例としているが、本発明をこれに限るものではなく、ワイヤロープ1本で1枚の金網を取り付けるもの(1本のワイヤロープが金網の4辺に通されるもの)や、3本以上のワイヤロープを使用して1枚の金網を取り付けるもの等であってもよい。
【0032】
実施形態では、枠体が架構そのものによって構成されるもの(枠体が、架構を構成する一部であるもの)を例とし、垂直状態で金網の取り付け作業をするものを例としているが、本発明をこれに限るものではない。例えば、枠体が、ユニット状に架構とは別体で構成され、架構に対して取り付けられるように構成されるものであっても勿論よい。枠体が架構とは別体として構成される場合は、枠体を平置き(水平)にした状態で金網を取り付け、金網が取り付けられたユニットとして架構に取り付けることができるが、平置き状態での金網の取り付け作業においても、上記説明したメッセンジャー部(導入部)を用いることにより、金網にワイヤロープを通す作業性を向上することができる。
【符号の説明】
【0033】
1...防護ネット
11...金網
12...ワイヤロープ
121...本体部(ワイヤロープ本体部)
122...メッセンジャー部(導入部)
13...架構(枠体)
【要約】
【課題】枠体に固定されるワイヤロープが金網の外周部において金網を通されることによって金網が枠体に支持される金網の支持構造に関し、当該支持構造の形成の作業性の向上。
【解決手段】金網と、ワイヤロープ12と、枠体とを有し、前記枠体に直接若しくは他の部材を介して固定されるワイヤロープ12が前記金網の外周部において前記金網を通されることによって前記金網が前記枠体に支持される金網の支持構造の、製造方法であって、ワイヤロープ12の一端側において、ワイヤロープを構成する素線又はストランドの一部を残して他の素線又はストランドが切除された導入部122を形成するステップと、導入部122を用いて、ワイヤロープ12を前記金網に通すステップと、を有する、金網の支持構造の製造方法。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4