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特許7537055三次元積層装置、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】三次元積層装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/34 20140101AFI20240814BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240814BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20240814BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240814BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240814BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240814BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240814BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240814BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20240814BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B23K26/34
B23K26/21 Z
B23K26/03
B29C64/153
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B22F3/105
B22F3/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020061230
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021159922
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】ニデックマシンツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 浩
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-119098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0038954(US,A1)
【文献】特開2014-174101(JP,A)
【文献】特表2010-530809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
B29C 64/153
B29C 64/393
B33Y 10/00 - 50/02
B22F 3/105
B22F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体を造形するための粉末を、該粉末が噴射される噴射口と該積層体との位置関係を移動させつつ供給して、前記積層体を造形する三次元積層装置であって、
粉末を前記噴射口から前記積層体に向けて供給する粉末供給部と、
前記粉末に光ビームを照射して前記粉末を溶融固化させて積層体を造形する光照射部と、
前記積層体を造形している造形箇所の画像を撮像する撮像部と、
前記画像に基づき、前記造形箇所から前記粉末供給部までの距離を検出する距離検出部と、
前記距離の検出結果に基づいて、前記積層体に対する前記粉末供給部の移動速度を調整するフィードバック制御部と、
を含
前記光照射部は、前記光ビームが出射される光ビーム照射口が形成される管を備え、
前記撮像部は、前記造形箇所と、前記管の前記光ビーム照射口の周囲の内周面とが含まれた前記画像を撮像し、
前記距離検出部は、前記画像の、前記造形箇所が写っている領域と前記内周面が写っている領域とに基づき、前記距離を検出する、三次元積層装置。
【請求項2】
前記フィードバック制御部は、前記距離の検出結果に基づいて、前記積層体の積層方向に直交する方向における前記移動速度を調整する、請求項1に記載の三次元積層装置。
【請求項3】
前記フィードバック制御部は、前記距離が所定の閾値範囲より長い場合には、前記移動速度を低下させて、前記距離が前記所定の閾値範囲より短い場合には、前記移動速度を上昇させる、請求項2に記載の三次元積層装置。
【請求項4】
前記距離検出部は、前記画像の、溶融した前記粉末で形成される溶融池が写っている領域の面積に基づいて、前記距離を検出する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の三次元積層装置。
【請求項5】
前記距離検出部は、前記画像に対して輝度に基づく二値化処理を実行することで、前記画像を、輝度が高い第1領域と、前記第1領域よりも輝度が低い第2領域とに区分して、前記第1領域の面積に基づいて、前記距離を検出する、請求項4に記載の三次元積層装置。
【請求項6】
前記距離検出部は、前記第1領域の面積が所定の面積閾値範囲より狭い場合には、前記距離が所定の閾値範囲より長いと判断し、前記第1領域の面積が前記面積閾値範囲より広い場合には、前記距離が前記所定の閾値範囲より短いと判断し、
前記フィードバック制御部は、前記距離が所定の閾値範囲より長い場合には、前記移動速度を低下させて、前記距離が前記所定の閾値範囲より短い場合には、前記移動速度を上昇させる、請求項5に記載の三次元積層装置。
【請求項7】
前記距離検出部は、前記画像の、前記造形箇所が写っている領域の輝度と、前記内周面が写っている領域の輝度との比率に基づき、前記距離を検出する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の三次元積層装置。
【請求項8】
前記フィードバック制御部は、前記画像に基づき、前記光ビームの出力を調整する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の三次元積層装置。
【請求項9】
粉末を供給する粉末供給部と、光ビームが出射される光ビーム照射口が形成される管を有し、前記粉末に光ビームを照射して前記粉末を溶融固化させて積層体を形成する光照射部とを備える三次元積層装置を制御する制御方法であって、
前記積層体を造形している造形箇所と、前記管の前記光ビーム照射口の周囲の内周面とが含まれた画像を撮像するステップと、
前記画像の、前記造形箇所が写っている領域と前記内周面が写っている領域とに基づき、前記造形箇所から前記粉末供給部までの距離を検出するステップと、
前記距離に基づいて、前記積層体に対する前記粉末供給部の移動速度を調整するステップと、
を含む、制御方法。
【請求項10】
粉末を供給する粉末供給部と、光ビームが出射される光ビーム照射口が形成される管を有し、前記粉末に前記光ビームを照射して前記粉末を溶融固化させて積層体を形成する光照射部とを備える三次元積層装置を制御する制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記積層体を造形している造形箇所と、前記管の前記光ビーム照射口の周囲の内周面とが含まれた画像を撮像するステップと、
前記画像の、前記造形箇所が写っている領域と前記内周面が写っている領域とに基づき、前記造形箇所から前記粉末供給部までの距離を検出するステップと、
前記距離に基づいて、前記積層体に対する前記粉末供給部の移動速度を調整するステップと、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元積層装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属粉末などの粉末を原料として積層体を成形する積層体成形方法が実用化されている。例えば特許文献1には、レーザ光出射機構からレーザ光を照射しつつ粉末供給機構から粉末を供給する積層造形装置が記載されている。特許文献1には、造形精度を向上させるために、溶融池の面積に基づいてレーザ光の出力値をフィードバック制御する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-112677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、三次元積層装置においては、粉末供給路の形状や粉末の噴射量のずれなどが原因で、粉末の供給量、粉末の収束径など、粉末供給にムラが生じる場合がある。このような場合には、特許文献1のようにレーザ光の出力値を制御しても、造形精度が適切に向上できない場合がある。そのため、造形精度を適切に向上可能な三次元積層装置が求められている。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、造形精度を向上可能な三次元積層装置、制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る三次元積層装置は、積層体を造形するための粉末を、該粉末が噴射される噴射口と該積層体との位置関係を移動させつつ供給して、前記積層体を造形する三次元積層装置であって、粉末を前記噴射口から前記積層体に向けて供給する粉末供給部と、前記粉末に光ビームを照射して前記粉末を溶融固化させて積層体を造形する光照射部と、前記積層体を造形している造形箇所の画像を撮像する撮像部と、前記画像に基づき、前記造形箇所から前記粉末供給部までの距離を検出する距離検出部と、前記距離の検出結果に基づいて、前記積層体に対する前記粉末供給部の移動速度を調整するフィードバック制御部と、を含む。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る制御方法は、粉末を供給する粉末供給部と、前記粉末に光ビームを照射して前記粉末を溶融固化させて積層体を形成する光照射部とを備える三次元積層装置を制御する制御方法であって、前記積層体を造形している造形箇所の画像を撮像するステップと、前記画像に基づき、前記造形箇所から前記粉末供給部までの距離を検出するステップと、前記距離に基づいて、前記積層体に対する前記粉末供給部の移動速度を調整するステップと、を含む。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るプログラムは、粉末を供給する粉末供給部と、前記粉末に光ビームを照射して前記粉末を溶融固化させて積層体を形成する光照射部とを備える三次元積層装置を制御する制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記積層体を造形している造形箇所の画像を撮像するステップと、前記画像に基づき、前記造形箇所から前記粉末供給部までの距離を検出するステップと、前記距離に基づいて、前記積層体に対する前記粉末供給部の移動速度を調整するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、造形精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態の三次元積層装置の模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る積層ヘッドの模式図である。
図3図3は、本実施形態に係る制御装置のブロック図である。
図4図4は、撮像部が撮像した画像の例を示す模式図である。
図5図5は、撮像部が撮像した画像の例を示す模式図である。
図6図6は、撮像部が撮像した画像の例を示す模式図である。
図7図7は、第1実施形態に係る距離検出の例を説明するための模式図である。
図8図8は、第1実施形態に係る送り速度の制御フローを説明するフローチャートである。
図9図9は、光ビームの出力の制御フローを説明するフローチャートである。
図10図10は、比較例に係る時間毎の送り速度と光ビームの出力との変化の例を示すグラフである。
図11図11は、本実施形態に係る時間毎の送り速度と光ビームの出力との変化の例を示すグラフである。
図12図12は、造形の停止判断フローを説明するフローチャートである。
図13図13は、第2実施形態に係る送り速度の制御フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0012】
(第1実施形態)
(三次元積層装置の全体構成)
図1は、本実施形態の三次元積層装置の模式図である。ここで、本実施形態では、水平面内の一方向を方向X、水平面内において方向Xと直交する方向を方向Y、方向X及び方向Yのそれぞれと直交する方向、すなわち鉛直方向を、方向Zとする。また、方向Zに沿う方向のうち一方の方向を、方向Z1とし、方向Zに沿う方向のうち他方の方向、すなわち方向Z1の反対方向を、方向Z2とする。本実施形態では、方向Z1が鉛直方向上方に向かう方向であり、方向Z2が鉛直方向下方に向かう方向である。
【0013】
図1に示すように、三次元積層装置1は、三次元積層室R内に、台部10と、基台移動部12と、基台部14と、台部16と、積層ヘッド18と、ヘッド移動部20と、撮像部22と、制御装置26とを備える。制御装置26は、三次元積層室Rの外部に設けられていてもよい。
【0014】
三次元積層装置1は、基台部14に、三次元形状物である積層体Aを成形する装置である。三次元積層装置1は、粉末が噴射される後述の粉末噴射口34Bと積層体Aとの位置関係を移動させつつ、積層体Aを造形するための粉末Pを供給して、積層体Aを造形する。基台部14は、積層体Aが成形される土台となる部材である。本実施形態の基台部14は、板状の部材である。なお、基台部14は、これに限定されない。基台部14は、積層体Aとは別体として積層体Aの土台となる部材であるが、積層体Aと結合されて積層体Aの一部となる部材であってもよい。
【0015】
(台部、基台移動部)
台部10は、基台移動部12や基台部14などを支持する台である。基台移動部12は、台部10上に設けられ、基台部14を支持する。基台移動部12は、制御装置26の制御により、基台部14を移動させる機構である。基台移動部12は、第1移動部12Aと、第2移動部12Bと、回転部12Cとを有する。第1移動部12Aは、水平方向に沿った(鉛直方向に直交する)第1方向に基台部14を移動させる機構である。本実施形態では、第1移動部12Aは、基台部14を方向Yに沿って移動させる。さらに言えば、本実施形態においては、第1移動部12A上に、第2移動部12B、回転部12C、及び基台部14が配置され、第1移動部12Aは、第2移動部12B、回転部12C、及び基台部14を、方向Yに沿って移動させる。
【0016】
第2移動部12Bは、水平方向に沿った(鉛直方向に直交する)第2方向に基台部14を移動させる機構であり、第2方向は、第1方向に直交する方向である。本実施形態では、第2移動部12Bは、基台部14を方向Xに沿って移動させる。さらに言えば、本実施形態においては、第2移動部12B上に、回転部12C及び基台部14が配置され、第2移動部12Bは、回転部12C及び基台部14を方向Xに沿って移動させる。なお、本実施形態では、第1移動部12Aと第2移動部12Bは、上部に載せた基台部14を移動させるスライダであるが、スライダ以外の機構であってもよい。
【0017】
回転部12Cは、基台部14が配置される回転テーブルである。回転部12Cは、少なくとも1つの回転軸を中心として回転することで、上部に配置されている基台部14を回転させる。本実施形態では、回転部12Cは、互いに直交する3つの回転軸を回転中心として基台部14を回転させる。
【0018】
このように、基台移動部12は、第1移動部12Aと第2移動部12Bとにより、基台部14を方向X及び方向Yに沿って移動させ、回転部12Cにより、基台部14を3つの回転軸を回転中心として回転させる。すなわち、基台移動部12は、基台部14を、2つの軸に沿って移動させ3つの回転軸を中心に回転させる、5軸の移動機構である。ただし、基台移動部12は、5軸の移動機構に限られず、例えば、基台部14を方向X及び方向Yに沿って移動させる2軸の移動機構であってもよい。
【0019】
(台部)
台部16は、三次元積層室R内に設けられる台座であり、本実施形態ではヘッド移動部20が設けられている。
【0020】
(ヘッド移動部)
ヘッド移動部20は、積層ヘッド18を方向Zに沿って移動させる。本実施形態では、ヘッド移動部20は、台部16に取付けられている。ヘッド移動部20は、積層ヘッド18を、方向Zに沿って移動させる。本実施形態では、ヘッド移動部20は、積層ヘッド18を移動させるスライダであるが、スライダ以外の機構であってもよい。また、ヘッド移動部20は、台部16に取付けられることに限られず、取付け位置は任意である。
【0021】
このように、本実施形態においては、基台移動部12で基台部14(積層体A)をX方向及びY方向に移動させることで、積層体Aに対する積層ヘッド18のX方向及びY方向の位置を変化させる。そして、本実施形態においては、ヘッド移動部20で積層ヘッド18をZ方向に移動させることで、積層体Aに対する積層ヘッド18のZ方向の位置を変化させる。ただし、積層体Aに対する積層ヘッド18の位置を変化させる方法はそれに限られず、例えば、積層ヘッド18をX方向及びY方向の少なくとも1方向に移動させてもよいし、積層体AをZ方向に移動させてもよい。すなわち、三次元積層装置1は、積層体Aを移動させることで、積層体Aに対する積層ヘッド18の位置を変化させてもよいし、積層ヘッド18を移動させることで、積層体Aに対する積層ヘッド18の位置を変化させてもよいし、積層体A及び積層ヘッド18の両方を移動させることで、積層体Aに対する積層ヘッド18の位置を変化させてもよい。
【0022】
(積層ヘッド)
積層ヘッド18は、基台部14の方向Z1側、すなわち基台部14の鉛直方向上方側に設けられる。積層ヘッド18は、光ビーム照射口32Bから、基台部14に向けて光ビームLを照射し、粉末噴射口34Bから、基台部14に向けて粉末Pを噴射することで、基台部14上で積層体Aを形成する。すなわち、本実施形態に係る三次元積層装置1は、積層ヘッド18を備えるデポジション方式の三次元積層装置である。
【0023】
図2は、本実施形態に係る積層ヘッドの模式図である。図2に示すように、積層ヘッド18は、内管32と外管34とを有する。外管34は、管状の部材であり、先端、すなわち方向Z2に向かって径が小さくなっている。内管32も、管状の部材であり、先端、すなわち方向Z2に向かって径が小さくなっている。内管32は、外管34の内部に挿入されているため、内管32と外管34とで、二重管を構成している。積層ヘッド18は、内管32の内側の空間が、光ビームLが通過するビーム経路32Aとなる。また、積層ヘッド18は、内管32の外周面と外管34の内周面との間の空間が、粉末Pが通過する粉末流路34Aとなる。すなわち、粉末流路34Aは、ビーム経路42Aの周囲を囲う形状の流路となる。本実施形態では、粉末流路34Aは、ビーム経路32Aの外周に同心円状に配置される。
【0024】
積層ヘッド18は、方向Z2側の端部30Aに、ビーム経路32Aに連通する光ビーム照射口32Bが開口している。すなわち、光ビーム照射口32Bは、ビーム経路32Aの方向Z2側の開口である。ビーム経路32A内には、光学素子36が設けられる。光学素子36は、例えば、光ビームLをコリメートするコリメートレンズと、コリメートした光ビームLを集光する集光レンズと、を備える。積層ヘッド18は、光源28に接続されている。光源28は、光ビームLを出力する光源である。光源28から出力された光ビームLは、光源28とビーム経路32Aとの間に設けられたミラー38、40で反射して、ビーム経路32A内に導入される。光ビームLは、ビーム経路32A内をZ2方向側に進行して、光学素子36で集光されて、光ビーム照射口32Bから積層ヘッド18の外部に出射される。光ビーム照射口32Bから出射された光ビームLは、方向Z2に向けて進み、基台部14に向けて照射される。
【0025】
また、積層ヘッド18は、方向Z2側の端部30Aに、粉末流路34Aに連通する粉末噴射口34Bが開口している。すなわち、粉末噴射口34Bは、ビーム経路32Aの方向Z2側の開口である。粉末噴射口34Bは、光ビーム照射口32Bを囲うように開口する。粉末流路34Aは、粉末Pを貯留する図示しない粉末貯留機構に接続されており、粉末貯留機構から粉末Pが供給される。粉末流路34A内に供給された粉末Pは、粉末流路34A内を方向Z2に向けて流れ、粉末噴射口34Bから積層ヘッド18の外部に噴射される。粉末噴射口34Bから噴射された粉末Pは、方向Z2に向けて進み、基台部14に向けて噴射される。
【0026】
ここで、粉末Pは、所定のスポット径をもって基台部14に向かって噴射され、光ビームLは、所定のスポット径をもって基台部14に向かって照射される。粉末Pは、光ビームLの熱や、光ビームLの照射によって加熱された積層体Aの熱によって溶融して、溶融池Mを形成する。溶融池Mは、溶融した粉末Pと、溶融した積層体Aとの少なくとも1つを含むといえる。基台部14は、積層ヘッド18に対して移動するため、光ビームLが照射される位置が変化する。従って、光ビームLが照射されて溶融池Mを形成していた箇所は、光ビームLが照射されなくなることで冷却されて固化して、ビードBを形成する。このビードBを三次元状に積層することで、積層体Aが成形される。以下、基台部14上において光ビームLを照射して粉末Pを噴射している箇所を、すなわちビードBを形成している箇所を、造形箇所と記載する。造形箇所は少なくとも溶融池Mが形成されている部分を含み、さらにいえば、溶融池Mと溶融池Mの周辺のビードBとを含むともいえる。
【0027】
このように、本実施形態においては、内管32が、言い換えれば粉末流路34A及び粉末噴射口34Bが、粉末Pを供給する粉末供給部であり、外管34が、言い換えればビーム経路32A及び光ビーム照射口32Bが、粉末Pに光ビームLを照射して粉末Pを溶融固化させて積層体Aを形成する光照射部であるといえる。すなわち、本実施形態では、粉末供給部と光照射部とが、積層ヘッド18として一体で構成されている。ただし、粉末供給部と光照射部とは別体であってもよい。また、本実施形態における光ビームLは、レーザ光であるが、レーザ光に限られず、例えば電子ビームなどであってもよい。また、本実施形態における粉末Pは、金属粉末であるが、金属粉末に限られない。
【0028】
(撮像部)
撮像部22は、本実施形態では赤外光Iの像を撮像する赤外カメラである。撮像部22は、例えば、InGaAsカメラである。撮像部22は、積層ヘッド18に取り付けられて、積層ヘッド18に対して位置が固定されている。図2に示すように、撮像部22は、積層ヘッド18のZ1方向側に設けられており、撮像部22の光軸は、ビーム経路32Aにおける光ビームLの光軸と同軸となっている。造形箇所(溶融池Mやその周囲の積層体A)からは、赤外光Iが放出される。赤外光Iは、光ビーム照射口32Bから、ビーム経路32A内をZ1方向に進行する。ミラー40は、光ビームLは反射するが赤外光Iを透過するため、赤外光Iは、ミラー40を透過して、撮像部22に入射する。撮像部22は、この赤外光Iの像を撮像することで、造形箇所の画像を撮像できる。撮像部22が検出する赤外光Iの波長は、例えば、0.75μm以上1000μm以下であり、さらに言えば、例えば波長が0.75μm以上1.4μm以下程度の近赤外線であることが好ましい。なお、撮像部22が設けられる位置は、以上で説明した位置に限られず、任意の位置であってもよい。また、撮像部22は、赤外カメラであることに限られない。
【0029】
(制御装置)
制御装置26は、三次元積層装置1を制御する装置、ここではコンピュータである。図3は、本実施形態に係る制御装置のブロック図である。図3に示すように、制御装置26は、制御部50と記憶部52とを備える。記憶部52は、制御部50の演算内容やプログラムの情報などを記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。
【0030】
制御部50は、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)である。制御部50は、画像取得部60と、距離検出部62と、フィードバック制御部64とを含む。制御部50は、記憶部52からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで画像取得部60、距離検出部62、及びフィードバック制御部64を実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部50は、1つのCPUによって処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、画像取得部60、距離検出部62、及びフィードバック制御部64の少なくとも1つを、ハードウェア回路で実現してもよい。画像取得部60、距離検出部62、及びフィードバック制御部64の具体的な処理内容は後述する。
【0031】
(送り速度の制御について)
以上のように構成される三次元積層装置1は、図2に示すように、光ビームLの照射と粉末Pの噴射を行いつつ、基台部14に対する積層ヘッド18の位置を水平方向に沿った一方向に移動させることで、一方向に伸びるビードBを形成する。そして、三次元積層装置1は、ビードBをZ方向に積層することで、積層体Aを形成する。以下、ビードBの伸びる方向、すなわち基台部14に対して積層ヘッド18の位置が移動する一方向を、送り方向Dとする。送り方向Dは、例えばX方向やY方向に沿った方向である。本実施形態では、基台部14を移動させることで、基台部14に対する積層ヘッド18の位置を送り方向Dに移動させるが、上述のようにそれに限られず、基台部14を移動させてもよいし、基台部14と積層ヘッド18の両方を移動させてもよい。
【0032】
ここで、三次元積層装置においては、粉末供給路の形状や粉末Pの噴射量のずれなどが原因で、粉末Pの供給量や粉末Pの収束径など、粉末Pの供給にムラが生じる場合がある。このような場合には、ビードBの高さD1を適切な高さに維持できなくなり、造形精度が低下するおそれが生じる。なお、ビードBの高さD1とは、図2に示すように、ビードBのZ方向における長さを指す。それに対し、本実施形態に係る制御装置26は、造形中に、送り方向Dにおける基台部14に対する積層ヘッド18の移動速度(すなわち基台部14に対する積層ヘッド18の相対速度)をフィードバック制御することで、粉末Pの供給のムラを吸収してビードBの高さD1を適切な高さに維持して、造形精度を適切に向上させることを可能としている。なお、以下、送り方向Dにおける基台部14に対する積層ヘッド18の移動速度を、送り速度Vと記載する。
【0033】
制御装置26は、撮像部22が撮像した画像から、造形箇所から積層ヘッド18(粉末供給部)までの距離D2を検出し、検出した距離D2に基づいて、送り速度Vを制御する。距離D2は、図2に示すように、造形箇所と積層ヘッド18(粉末供給部)の端部30Aとの間の、Z方向における距離を指す。積層ヘッド18の端部30AのZ方向における位置は、積層ヘッド18からの光ビームLや粉末Pが造形箇所で適切に収束するように、基台部14のZ方向の位置に合わせて設定される。そのため、造形箇所から積層ヘッド18までのD2は、ビードBの高さD1に依存する。すなわち、ビードBの高さD1が低ければ、距離D2が長くなり、ビードBの高さD1が高ければ、距離D2が短くなる。そのため、制御装置26は、距離D2を検出することで、ビードBの高さD1を推定すると言え、距離D2の検出結果に基づき、送り速度Vをフィードバック制御する。以下、より具体的に説明する。
【0034】
(画像取得部)
制御装置26の画像取得部60は、撮像部22を制御して、撮像部22に造形箇所の画像を撮像させて、撮像部22が撮像した画像Kを取得する。画像取得部60は、所定の時間毎に撮像部22に撮像を行わせることで、所定の時間毎に撮像された画像Kを取得する。ここで、図2に示すように、造形箇所(溶融池Mやその周囲の積層体A)からの赤外光Iの一部は、ビーム経路32A内をZ1方向に直進して撮像部22に到達するが、赤外光Iの他の一部は、内管32の内周面32Cで反射して、撮像部22に入射する。撮像部22は、このように内周面32Cで反射して撮像部22に到達した赤外光Iの像も撮像する。すなわち、撮像部22は、光ビーム照射口32BをZ1方向に直進した赤外光Iの像、すなわち内周面32Cで反射せずに撮像部22に到達した赤外光Iの像と、内周面32Cで反射して撮像部22に到達した赤外光Iの像とを、撮像する。内周面32Cで反射せずに撮像部22に到達した赤外光Iの像は、光ビーム照射口32Bの外周よりも内側の領域内の像であり、造形箇所(溶融池Mやその周囲の積層体A)の像であるといえる。また、内周面32Cで反射して撮像部22に到達した赤外光Iの像は、内周面32Cの像であるといえる。以下、撮像部22が撮像した画像Kのうちの、光ビーム照射口32Bの内側の領域の像が写っている領域を、すなわち造形箇所が写っている領域を、内側領域AR1とし、内周面32Cの像が写っている領域を、外側領域AR2とする。
【0035】
図4から図6は、撮像部が撮像した画像の例を示す模式図である。図4に示すように、画像Kは、光ビーム照射口32Bの内側の造形箇所の像が写っている内側領域AR1と、内周面32Cの像が写っている外側領域AR2と、を含む。内側領域AR1は、造形箇所が写っている造形箇所領域AR1aと、造形箇所領域AR1aの周囲の輝度が低い周囲領域AR1bとを含む。溶融池Mを含む造形箇所は高温になっているため、造形箇所が写っている造形箇所領域AR1aは、輝度が高くなっている。一方、周囲領域AR1bは、造形箇所の周囲であって温度が低下している箇所が写っているため、造形箇所領域AR1aよりも輝度が低くなっている。外側領域AR2は、内側領域AR1を囲うように形成されている。外側領域AR2は、造形箇所からの赤外光Iの内周面32Cでの反射光を撮像した領域であるため、周囲領域AR1bよりも輝度が高く、造形箇所領域AR1aよりも輝度が低い。
【0036】
ここで、積層ヘッド18の端部30AのZ方向における位置は、距離D2(ビードBの高さD1)が適正な範囲内にある場合に画像Kのピントが適正な範囲内となるように、設定されている。従って、距離D2が適正な範囲から外れた場合には、撮像部22が撮像する画像Kは、ピントがずれた画像となり、ぼやけた画像となる。図4は、距離D2が適正な範囲内であるためピントが適正な範囲内となった画像Kの例を示している。
【0037】
一方、図5は、ビードBの高さD1が適正な範囲よりも低くなって、距離D2が適正な範囲よりも長くなった場合の画像Kの例を示している。このような場合、撮像部22は、造形箇所から離れるため、造形箇所から受光する赤外光Iが小さくなり、かつ、造形箇所の像のピントがずれる。そのため、図5の画像Kは、図4の画像Kと比べて、造形箇所領域AR1aの輝度及び面積が小さくなる。
【0038】
図6は、ビードBの高さD1が適正な範囲よりも高くなって、距離D2が適正な範囲よりも短くなった場合の画像Kの例を示している。このような場合、撮像部22は、造形箇所に近づくため、造形箇所から受光する赤外光Iが大きくなり、かつ、造形箇所の像のピントがずれる。そのため、図6の画像Kは、図4の画像Kと比べて、造形箇所領域AR1aの輝度及び面積が大きくなる。
【0039】
(距離検出部)
このように、撮像部22が撮像する画像Kは、距離D2に応じて特徴量が変化する。具体的には、画像Kは、距離D2に応じて、造形箇所領域AR1aの輝度や面積が変化する。本実施形態に係る距離検出部62は、その現象を利用して、画像Kに基づき、さらに言えば画像Kの輝度に基づき、距離D2を検出する。以下、具体的に説明する。
【0040】
図7は、第1実施形態に係る距離検出の例を説明するための模式図である。距離検出部62は、画像Kの画素毎の輝度値を取得して、画像Kに対して輝度値に基づく二値化処理を実行する。すなわち、距離検出部62は、輝度閾値を設定して、輝度値が輝度閾値以上となる画素の輝度を、第1輝度とし、輝度値が輝度閾値以下となる画素の輝度を、第2輝度とする。この場合、二値化処理された画像Kである画像K1は、図7の例に示すようになる。すなわち、画像K1は、第1輝度の画素で形成される輝度の高い第1領域ARaと、第2輝度の画素で形成される輝度の低い第2領域ARbとを含む画像となる。第1領域ARaが、造形箇所領域AR1aに対応する領域となる。なお、輝度閾値は、任意に設定してよく、例えば、予め設定された固定値としてもよいし、光ビームLの出力に基づいて設定してもよい。輝度閾値を光ビームLの出力に基づいて設定する場合、距離検出部62は、例えば、光ビームLの出力値が高いほど、輝度閾値を高く設定することが好ましい。
【0041】
距離検出部62は、第1領域ARaの面積に基づいて、距離D2を検出する。面積閾値範囲を設定して、第1領域ARaの面積が、面積閾値範囲より大きいか、面積閾値範囲内か、又は面積閾値範囲より小さいかを判断する。距離検出部62は、第1領域ARaの面積が面積閾値範囲の範囲内である場合には、距離D2が所定の閾値範囲内であると判断する(すなわちビードBの高さD1が適正範囲にあると判断する)。距離検出部62は、第1領域ARaの面積が面積閾値範囲より大きい場合には、距離D2が所定の閾値範囲より短いと判断する(すなわちビードBの高さD1が高いと判断する)。距離検出部62は、第1領域ARaの面積が面積閾値範囲より小さい場合には、距離D2が所定の閾値範囲より長いと判断する(すなわちビードBの高さD1が低いと判断する)。なお、ここでの面積閾値範囲は、任意に設定してよく、例えば、予め設定された固定値としてもよいし、光ビームLの出力に基づいて設定してもよい。面積閾値範囲を光ビームLの出力に基づいて設定する場合、距離検出部62は、例えば、光ビームLの出力値が高いほど、面積閾値範囲を高く設定することが好ましい。
【0042】
このように、距離検出部62は、画像Kを輝度で二値化処理して、距離D2を検出するが、画像Kに基づく距離D2の検出方法はこれに限られない。
【0043】
(フィードバック制御部)
(送り速度の調整)
フィードバック制御部64は、距離検出部62による距離D2の検出結果に基づき、送り速度Vを調整する。フィードバック制御部64は、距離検出部62によって距離D2が所定の閾値範囲内にあると判断された場合、送り速度Vを変えずに維持する。フィードバック制御部64は、距離検出部62によって距離D2が所定の閾値範囲よりも短いと判断された場合、送り速度Vを上昇させる。フィードバック制御部64は、距離検出部62によって距離D2が所定の閾値範囲よりも長いと判断された場合、送り速度Vを低下させる。また、フィードバック制御部64は、距離検出部62によって距離D2が所定の閾値範囲よりも短いと判断された場合には、距離D2が短いほど、すなわちここでは第1領域ARaの面積が大きいほど、送り速度Vの上昇量を大きくしてもよい。また、フィードバック制御部64は、距離検出部62によって距離D2が所定の閾値範囲よりも長いと判断された場合には、距離D2が長いほど、すなわちここでは第1領域ARaの面積が小さいほど、送り速度Vの低下量を大きくしてもよい。
【0044】
図8は、第1実施形態に係る送り速度の制御フローを説明するフローチャートである。図8に示すように、制御装置26は、積層ヘッド18を制御して、粉末Pを供給させつつ光ビームLを照射させながら(ステップS10)、撮像部22に画像Kを撮像させる(ステップS12)。制御装置26は、撮像部22が撮像した画像Kを二値化処理して、画像Kを第1領域ARaと第2領域ARbとに区分して、第1領域ARaの面積を算出する(ステップS14)。制御装置26は、第1領域ARaの面積が面積閾値範囲より広いかを判断する(ステップS16)。第1領域ARaの面積が面積閾値範囲より広い場合(ステップS16;Yes)、制御装置26は、距離D2が閾値範囲より短いと判断して(ステップS18)、送り速度Vを上昇させる(ステップS20)。一方、第1領域ARaの面積が面積閾値範囲より広くない場合(ステップS16;No)、すなわち第1領域ARaの面積が面積閾値範囲以下である場合、制御装置26は、第1領域ARaの面積が面積閾値範囲より狭いかを判断する(ステップS22)。第1領域ARaの面積が面積閾値範囲より狭い場合(ステップS22;Yes)、制御装置26は、距離D2が閾値範囲より長いと判断して(ステップS24)、送り速度Vを低下させる(ステップS26)。第1領域ARaの面積が面積閾値範囲より狭くない場合(ステップS22;No)、すなわち第1領域ARaの面積が面積閾値範囲の範囲内である場合、制御装置26は、距離D2が閾値範囲内と判断して(ステップS28)、送り速度Vを維持する(ステップS30)。ステップS20、S26、又はステップS30を実行した後、処理を終了する場合(ステップS32;Yes)、本処理を終了し、処理を終了しない場合(ステップS32;No)、ステップS10に戻って処理を続ける。
【0045】
このように、本実施形態に係る制御装置26は、画像Kから、距離D2が閾値範囲内であるかを判断して、距離D2が閾値範囲より小さい場合は、送り速度Vを低下させる。距離D2が閾値範囲より小さい場合は、ビードBの高さD1が不足しているため、制御装置26は、送り速度Vを低下させて単位面積当たりの粉末Pの供給量を増加させることで、ビードBの高さを高くすることが可能となる。一方、制御装置26は、距離D2が閾値範囲より長い場合は、送り速度Vを上昇させる。距離D2が閾値範囲より長い場合は、ビードBの高さD1が想定より高いため、制御装置26は、送り速度Vを上昇させて単位面積当たりの粉末Pの供給量を減少させることで、ビードBの高さが高くなりすぎることを抑制することが可能となる。
【0046】
なお、例えば粉末貯留機構(タンク)から積層ヘッド18への粉末Pの単位時間当たりの供給量を調整することも考えられるが、供給量の調整が反映されるのには時間を要し、迅速なフィードバック制御が難しい。それに対し、本実施形態に係る制御装置26は、送り速度Vを調整することで、粉末Pの供給量を迅速に制御して、ビードBの高さD1を調整できる。また、本実施形態に係る制御装置26は、画像Kに基づいて距離D2を検出するが、画像Kに基づいて距離D2を検出することに限られず、例えば、距離D2を計測可能なセンサを設けて、そのセンサの検出値から、距離D2を検出してもよい。この場合のセンサは任意の方式のものが用いられるが、例えば、OCT(Optical Coherence Tomograph)センサなどが挙げられる。ただし、本実施形態のように画像Kを用いることで、距離D2を高精度に検出することを可能となるため、好ましい。
【0047】
(光ビームの出力調整)
フィードバック制御部64は、画像Kに基づいて、光ビームLの出力を制御する。フィードバック制御部64は、画像Kの輝度値に基づいて、光ビームLの出力を制御する。ここでの画像Kの輝度値とは、例えば、造形箇所領域AR1aの輝度値であり、造形箇所領域AR1a内の画素の輝度値の平均値であってよい。フィードバック制御部64は、画像Kの輝度値が所定の輝度閾値範囲内である場合には、光ビームLの出力を変化させずに維持し、画像Kの輝度値が所定の輝度閾値範囲より高い場合には、光ビームLの出力を低下させ、画像Kの輝度値が所定の輝度閾値範囲より低い場合には、光ビームLの出力を上昇させる。また、フィードバック制御部64は、画像Kの輝度値が所定の輝度閾値範囲より高い場合、画像Kの輝度値が高いほど、光ビームLの出力の低下量を大きくしてもよい。また、フィードバック制御部64は、画像Kの輝度値が所定の輝度閾値範囲より低い場合、画像Kの輝度値が低いほど、光ビームLの出力の上昇量を大きくしてもよい。なお、ここでの輝度閾値範囲は、任意に設定してよく、例えば、予め設定された固定値としてもよいし、距離D2に基づいて設定してもよい。輝度閾値範囲を距離D2に基づいて設定する場合、距離検出部62は、例えば、距離D2が短いほど、輝度閾値範囲を高く設定することが好ましい。
【0048】
図9は、光ビームの出力の制御フローを説明するフローチャートである。図9に示すように、制御装置26は、積層ヘッド18を制御して、粉末Pを供給させつつ光ビームLを照射させながら(ステップS10)、撮像部22に画像Kを撮像させる(ステップS12)。制御装置26は、撮像部22が撮像した画像Kの輝度が輝度閾値範囲より高いかを判断する(ステップS40)。画像Kの輝度が輝度閾値範囲より高い場合(ステップS40;Yes)、制御装置26は、光ビームLの出力を低下させる(ステップS42)。一方、画像Kの輝度が輝度閾値範囲より高くない場合(ステップS40;No)、すなわち画像Kの輝度が輝度閾値範囲以下である場合、制御装置26は、画像Kの輝度が輝度閾値範囲より低いかを判断する(ステップS44)。画像Kの輝度が輝度閾値範囲より低い場合(ステップS44;Yes)、制御装置26は、光ビームLの出力を増加させる(ステップS46)。画像Kの輝度が輝度閾値範囲より低くない場合(ステップS44;No)、すなわち画像Kの輝度が輝度閾値範囲内である場合、制御装置26は、光ビームLの出力を維持する(ステップS48)。ステップS42、S46、又はステップS48を実行した後、処理を終了する場合(ステップS50;Yes)、本処理を終了し、処理を終了しない場合(ステップS50;No)、ステップS10に戻って処理を続ける。
【0049】
このように、本実施形態に係る制御装置26は、画像Kの輝度が輝度閾値範囲より小さい場合は、光ビームLの出力を上昇させる。画像Kの輝度が輝度閾値範囲より小さい場合は、粉末Pの溶融が適切に行われていないため、光ビームLの出力を上げて溶融を適切に行わせることで、ビードBの高さを高くすることが可能となる。一方、制御装置26は、画像Kの輝度が輝度閾値範囲より高い場合は、光ビームLの出力を低下させる。画像Kの輝度が輝度閾値範囲より高い場合は、粉末Pの溶融が進みすぎているため、光ビームLの出力を下げて溶融を適切に行わせることで、ビードBの高さが高くなりすぎることを抑制することが可能となる。ただし、光ビームLの出力制御は必須ではなく、少なくとも送り速度Vの制御を行うことで、ビードBの高さを適切に保って造形精度を向上できる。
【0050】
図10は、比較例に係る時間毎の送り速度と光ビームの出力との変化の例を示すグラフであり、図11は、本実施形態に係る時間毎の送り速度と光ビームの出力との変化の例を示すグラフである。比較例では、光ビームLの出力の制御を行っているが、送り速度Vの制御を実行せずに一定に保っている。本実施形態では、光ビームLの出力の制御と送り速度Vの制御との両方を行っている。図10の線分S1Xは、比較例における時間毎の送り速度Vを示しており、線分S2Xは、比較例における時間毎の光ビームLの出力を示している。図11の線分S1は、本実施形態における時間毎の送り速度Vを示しており、線分S2は、本実施形態における時間毎の光ビームLの出力を示している。
【0051】
図10に示すように光ビームLの出力を調整することで、ビードBの高さD1をある程度適切に調整することができるが、図11に示すように送り速度Vの制御も実行することにより、ビードBの高さD1をより適切に調整して、造形精度を向上させることができる。さらに言えば、図11のように送り速度Vの制御も実行することにより、光ビームLの出力を制御している際にも、光ビームLの出力が低下することを抑制することも可能となる。なお、光ビームLの出力を調整せずに送り速度Vを制御した場合にも、光ビームLの出力を調整するよりも、ビードBの高さD1をより適切に調整できる。ただし、送り速度Vと光ビームLの出力との両方を調整することにより、ビードBの高さD1をより適切に保ち、かつ、ビードBの幅も適切に保つことが可能となる。
【0052】
(造形の停止判断)
また、フィードバック制御部64は、画像Kに基づいて、造形箇所の温度を検出する。フィードバック制御部64は、画像Kの輝度から、造形箇所の温度を検出する。例えば、フィードバック制御部64は、画像Kの輝度が高いほど、造形箇所の温度が高いと判断する。フィードバック制御部64は、造形箇所の温度の検出結果に基づいて、造形を続行するか停止するかを判断する。フィードバック制御部64は、造形箇所の温度が所定の閾値温度以下である場合には、造形を、すなわち光ビームLの照射、粉末Pの噴射、及び送り方向Dへの送りを、継続する。一方、フィードバック制御部64は、造形箇所の温度が所定の閾値温度より高い場合には、造形を、すなわち光ビームLの照射、粉末Pの噴射、及び送り方向Dへの送りを、停止する。その後、造形箇所の温度が所定の閾値温度以下に下がった場合には、フィードバック制御部64は、造形を再開させる。
【0053】
(造形の停止判断フロー)
図12は、造形の停止判断フローを説明するフローチャートである。図12に示すように、制御装置26は、積層ヘッド18を制御して、粉末Pを供給させつつ光ビームLを照射させて(ステップS10)、撮像部22が撮像した画像Kの輝度から、造形箇所の温度を検出する(ステップS60)。制御装置26は、造形箇所の温度が閾値温度より高いかを判断し(ステップS62)、造形箇所の温度が閾値温度より高い場合(ステップS62;Yes)、制御装置26は、造形を停止させる(ステップS64)。制御装置26は、撮像部22による撮像と造形箇所の温度検出とを継続して、造形箇所の温度が閾値温度以下まで低下した場合(ステップS66;Yes)、造形を再開させる(ステップS68)。一方、造形箇所の温度が閾値温度以下まで低下しない場合(ステップS66;No)、すなわち造形箇所の温度が閾値温度以上である場合、ステップS64に戻り造形の停止を続ける。また、造形箇所の温度が閾値温度より高くない場合(ステップS62;No)、制御装置26は、造形を続行させる(ステップS70)。その後、処理を終了する場合(ステップS72;Yes)、本処理を終了し、処理を終了しない場合(ステップS72;No)、ステップS10に戻って処理を続ける。
【0054】
このように、本実施形態に係る制御装置26は、造形箇所の温度も監視することで、造形精度を適切に高くすることができる。さらにいえば制御装置26は、送り速度Vや光ビームLの出力を調整するため、送り速度Vが低くなったり光ビームLの出力が高くなったりした場合に備えて、このように造形箇所の温度に基づき造形停止の判断を行うことが有効となる。ただし、造形箇所の温度に基づいたこの制御は必須ではない。
【0055】
(本実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態に係る三次元積層装置1は、三次元積層装置1は、粉末が噴射される後述の粉末噴射口34Bと積層体Aとの位置関係を移動させつつ、積層体Aを造形するための粉末Pを供給して、積層体Aを造形する。三次元積層装置1は、噴射口(粉末噴射口34B)から積層体Aに向けて粉末Pを供給する粉末供給部(本実施形態では積層ヘッド18)と、粉末Pに光ビームLを照射して粉末Pを溶融固化させて積層体Aを造形する光照射部(本実施形態では積層ヘッド18)と、積層体Aを造形している造形箇所の画像Kを撮像する撮像部22と、画像Kに基づき、造形箇所から粉末供給部までの距離D2を検出する距離検出部62と、距離D2の検出結果に基づいて、積層体Aに対する粉末供給部の移動速度(送り速度V)を調整するフィードバック制御部64と、を含む。本実施形態に係る三次元積層装置1は、距離D2を検出することで、ビードBの高さD1を推定して、距離D2の検出結果から送り速度Vを調整することで、ビードBの高さD1を適切に保って、造形精度を適切に向上させることができる。また、画像Kから距離D2を検出するため、距離D2の検出精度を高くして、造形精度をより適切に向上させることができる。また、送り速度Vを調整することで、迅速なフィードバック制御が可能となる。
【0056】
また、フィードバック制御部64は、距離D2の検出結果に基づいて、積層体Aの積層方向(Z方向)に直交する方向(送り方向D)における移動速度を調整する。本実施形態に係る三次元積層装置1は、送り方向Dの送り速度Vを調整することで、ビードBの高さD1を適切に保って、造形精度を適切に向上させることができる。
【0057】
また、フィードバック制御部64は、距離D2が所定の閾値範囲より長い場合には、移動速度(送り速度V)を低下させて、距離D2が所定の閾値範囲より短い場合には、移動速度(送り速度V)を上昇させる。本実施形態に係る三次元積層装置1は、このように送り速度Vを調整することで、ビードBの高さD1を適切に保って、造形精度を適切に向上させることができる。
【0058】
また、距離検出部62は、画像Kの、溶融した粉末Pで形成される溶融池Mが写っている領域(造形箇所領域AR1a)の面積に基づいて、距離D2を検出する。本実施形態に係る三次元積層装置1は、このようにして距離D2を検出することで、距離D2の検出精度を高くして、造形精度をより適切に向上させることができる。
【0059】
また、距離検出部62は、画像Kに対して輝度に基づく二値化処理を実行することで、画像Kを、輝度が高い第1領域ARaと、第1領域ARaよりも輝度が低い第2領域ARbとに区分して、第1領域ARaの面積に基づいて、距離D2を検出する。本実施形態に係る三次元積層装置1は、このようにして距離D2を検出することで、距離D2の検出精度を高くして、造形精度をより適切に向上させることができる。
【0060】
また、距離検出部62は、第1領域ARaの面積が所定の面積閾値範囲より狭い場合には、距離D2が所定の閾値範囲より長いと判断し、第1領域ARaの面積が面積閾値範囲より広い場合には、距離D2が前記所定の閾値範囲より短いと判断する。フィードバック制御部64は、距離D2が所定の閾値範囲より長い場合には、移動速度(送り速度V)を低下させて、距離D2が所定の閾値範囲より短い場合には、移動速度(送り速度V)を上昇させる。本実施形態に係る三次元積層装置1は、このようにして距離D2を検出することで、距離D2の検出精度を高くして、造形精度をより適切に向上させることができる。
【0061】
また、フィードバック制御部64は、画像Kに基づき、光ビームLの出力を調整する。本実施形態に係る三次元積層装置1は、送り速度Vに加えて光ビームLの出力も調整することで、造形精度をより適切に向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態に係る制御方法は、粉末Pを供給する粉末供給部(本実施形態では積層ヘッド18)と、粉末Pに光ビームLを照射して粉末Pを溶融固化させて積層体Aを形成する光照射部(本実施形態では積層ヘッド18)とを備える三次元積層装置1を制御する。本制御方法は、積層体Aを造形している造形箇所の画像Kを撮像するステップと、画像Kに基づき、造形箇所から粉末供給部までの距離D2を検出するステップと、距離D2に基づいて、積層体Aに対する粉末供給部の移動速度(送り速度V)を調整するステップと、を含む。本制御方法によると、造形精度を適切に向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態に係るプログラムは、粉末Pを供給する粉末供給部(本実施形態では積層ヘッド18)と、粉末Pに光ビームLを照射して粉末Pを溶融固化させて積層体Aを形成する光照射部(本実施形態では積層ヘッド18)とを備える三次元積層装置1を制御する制御方法をコンピュータに実行させる。本プログラムは、積層体Aを造形している造形箇所の画像Kを撮像するステップと、画像Kに基づき、造形箇所から粉末供給部までの距離D2を検出するステップと、距離D2に基づいて、積層体Aに対する粉末供給部の移動速度(送り速度V)を調整するステップと、を、コンピュータに実行させる。本プログラムによると、造形精度を適切に向上させることができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、画像Kに基づいた距離D2の検出方法が第1実施形態とは異なる。第2実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0065】
第1実施形態で説明したように、撮像部22が撮像する画像Kは、光ビーム照射口32Bの内側の造形箇所の像が写っている内側領域AR1と、内周面32Cの像が写っている外側領域AR2と、を含む(図4参照)。外側領域AR2は、内周面32Cで反射された赤外光Iの像である。そのため、距離D2が長くなると、撮像部22が受光する内周面32Cで反射された赤外光Iの強度が下がるため、外側領域AR2の輝度が下がり、距離D2が短くなると、撮像部22が受光する赤外光Iの強度が上がるため、外側領域AR2の輝度が上がる。第2実施形態に係る制御装置26の距離検出部62は、この現象を利用し、内側領域AR1と外側領域AR2とに基づき、さらに言えば、内側領域AR1の輝度と外側領域AR2の輝度とに基づき、距離D2を検出する。なお、内側領域AR1の輝度は、内側領域AR1の全体の輝度でもよいし、造形箇所を含んだ造形箇所領域AR1aの輝度であってもよい。また、内側領域AR1の輝度は、内側領域AR1の全体や造形箇所領域AR1aの画素毎の輝度の平均値でもよいし、画素毎の輝度の最大値でもよい。すなわち、内側領域AR1の輝度は、造形箇所領域AR1a(造形箇所)の輝度に基づく値であればよい。また、外側領域AR2の輝度も、外側領域AR2の画素毎の輝度の平均値でもよいし、画素毎の輝度の最大値でもよい。すなわち、外側領域AR2の輝度は、外側領域AR2(内周面32C)の輝度に基づく値であればよい。
【0066】
より詳しくは、距離検出部62は、造形箇所が写っている内側領域AR1の輝度と、前記ノズル内周面が写っている外側領域AR2の輝度との比率に基づき、距離D2を検出する。距離検出部62は、内側領域AR1の輝度に対する外側領域AR2の輝度の比率である輝度比率を算出して、輝度比率に基づいて、距離D2を検出する。距離検出部62は、輝度比率が、比率閾値範囲より大きいか、比率閾値範囲内か、又は比率閾値範囲より小さいかを判断する。距離検出部62は、輝度比率が比率閾値範囲の範囲内である場合には、距離D2が所定の閾値範囲内であると判断する(すなわちビードBの高さD1が適正範囲にあると判断する)。距離検出部62は、輝度比率が比率閾値範囲より大きい場合には、距離D2が所定の閾値範囲より短いと判断する(すなわちビードBの高さD1が高いと判断する)。距離検出部62は、輝度比率が比率閾値範囲より小さい場合には、距離D2が所定の閾値範囲より長いと判断する(すなわちビードBの高さD1が低いと判断する)。なお、ここでの比率閾値範囲は、任意に設定してよく、例えば、予め設定された固定値としてもよい。
【0067】
フィードバック制御部64は、距離検出部62によって距離D2が所定の閾値範囲内にあると判断された場合、送り速度Vを変えずに維持する。フィードバック制御部64は、距離検出部62によって距離D2が所定の閾値範囲よりも短いと判断された場合、送り速度Vを上昇させる。フィードバック制御部64は、距離検出部62によって距離D2が所定の閾値範囲よりも長いと判断された場合、送り速度Vを低下させる。また、フィードバック制御部64は、距離検出部62によって距離D2が所定の閾値範囲よりも短いと判断された場合には、距離D2が短いほど、すなわちここでは輝度比率が大きいほど、送り速度Vの上昇量を大きくしてもよい。また、フィードバック制御部64は、距離検出部62によって距離D2が所定の閾値範囲よりも長いと判断された場合には、距離D2が長いほど、すなわちここでは輝度比率が小さいほど、送り速度Vの低下量を大きくしてもよい。
【0068】
第2実施形態においては、このように、内側領域AR1の輝度に対する外側領域AR2の輝度比率から、距離D2を検出するため、距離D2の検出精度を高くして、造形精度を適切に向上させることができる。さらに、外側領域AR2の輝度は光ビームLの出力にも依存するため、外側領域AR2の輝度だけでは距離D2を適切に検出できなくなる可能性があるが、本実施形態では、光ビームLの出力に依存する内側領域AR1の輝度も用いているため、光ビームLの出力の影響を小さくして、距離D2の検出精度を高くすることができる。
【0069】
図13は、第2実施形態に係る送り速度の制御フローを説明するフローチャートである。図13に示すように、制御装置26は、積層ヘッド18を制御して、粉末Pを供給させつつ光ビームLを照射させながら(ステップS10)、撮像部22に画像Kを撮像させる(ステップS12)。制御装置26は、画像Kの内側領域AR1の輝度に対する外側領域AR2の輝度の比率である輝度比率が、比率閾値範囲より高いかを判断する(ステップS16a)。輝度比率が比率閾値範囲より高い場合(ステップS16a;Yes)、制御装置26は、距離D2が閾値範囲より短いと判断して(ステップS18)、送り速度Vを上昇させる(ステップS20)。一方、輝度比率が比率閾値範囲より高くない場合(ステップS16a;No)、すなわち輝度比率が比率閾値範囲以下である場合、制御装置26は、輝度比率が比率閾値範囲より低いかを判断する(ステップS22a)。輝度比率が比率閾値範囲より低い場合(ステップS22a;Yes)、制御装置26は、距離D2が閾値範囲より長いと判断して(ステップS24)、送り速度Vを低下させる(ステップS26)。輝度比率が比率閾値範囲より低くない場合(ステップS22a;No)、すなわち輝度比率が比率閾値範囲内である場合、制御装置26は、距離D2が閾値範囲内と判断して(ステップS28)、送り速度Vを維持する(ステップS30)。ステップS20、S26、又はステップS30を実行した後、処理を終了する場合(ステップS32;Yes)、本処理を終了し、処理を終了しない場合(ステップS32;No)、ステップS10に戻って処理を続ける。
【0070】
以上説明したように、光照射部(本実施形態では積層ヘッド18)は、光ビームLが出射される光ビーム照射口32Bが形成される管(内管32)を備える。撮像部22は、造形箇所と、管の光ビーム照射口32Bの周囲の内周面32Cとが含まれた画像Kを撮像する。距離検出部62は、画像Kの、造形箇所が写っている領域(内側領域AR1)と内周面32Cが写っている領域(外側領域AR2)とに基づき、距離D2を検出する。本実施形態に係る三次元積層装置1によると、内側領域AR1と外側領域AR2とに基づき距離D2を検出するため、距離D2の検出精度を高くして、造形精度を適切に向上できる。
【0071】
また、距離検出部62は、画像Kの、造形箇所が写っている領域(内側領域AR1)の輝度と内周面32Cが写っている領域(外側領域AR2)の輝度との比率に基づき、距離D2を検出する。本実施形態に係る三次元積層装置1によると、内側領域AR1の輝度と外側領域AR2の輝度との比率に基づき距離D2を検出するため、距離D2の検出精度を高くして、造形精度を適切に向上できる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
1 三次元積層装置
18 積層ヘッド(粉末供給部、光照射部)
22 撮像部
26 制御装置
60 画像取得部
62 距離検出部
64 フィードバック制御部
A 積層体
B ビード
K 画像
V 送り速度(移動速度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13