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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】レンジフード
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
F24F7/06 101A
F24F7/06 101Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019066766
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165597
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-23
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】横山 茂紀
(72)【発明者】
【氏名】野原 聰哲
(72)【発明者】
【氏名】北村 日出登
(72)【発明者】
【氏名】柳 博通
(72)【発明者】
【氏名】栗原 卓馬
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】鈴木 充
【審判官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-130761(JP,A)
【文献】特開平6-117789(JP,A)
【文献】特開2014-206325(JP,A)
【文献】特開2004-190899(JP,A)
【文献】特開2002-168495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24C15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、前記天板の下方に配置され水平面に対して傾斜した傾斜板と、前記天板から下方へ下り前記傾斜板の周囲を囲む囲い板とを備え、下側が開口したフード本体と、
前記傾斜板の傾斜方向下側端部の下方に配置されたドレン受けと、
前記フード本体の上部で前記傾斜板の上側端部に位置し、前記傾斜板の下面側の空気を排気する排気口と、が設けられ、
前記傾斜板の下面は、傾斜方向上側に設けられ調理器具の上方に配置される親水性領域と、傾斜方向下側に設けられ前記親水性領域よりも親水性が小さい低親水性領域とを備えている、
レンジフード。
【請求項2】
前記親水性領域には、親水性処理が施されている、請求項1に記載のレンジフード。
【請求項3】
前記傾斜板を加熱する加熱装置を有している、請求項1または請求項2に記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
食品加熱調理機器の上方に設けられるレンジフードがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、湯気を付着させる傾斜面状とされたパネルの表面に親水性処理が施されている点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-130761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、パネルの表面に親水性処理を行うことで、結露を滴下させずに受水手段に案内して集水することが記載されている。しかしながら、調理機器側から多量の湯気が排出された場合に、パネルの傾斜方向の途中で下面パネルの水膜が厚くなり、水滴となって下方にある調理機器の中に滴下する虞が有る。
【0005】
本発明は上記事実に鑑み、水滴の滴下をより抑制することできるレンジフードを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のレンジフードは、天板と、前記天板の下方に配置され水平面に対して傾斜した傾斜板と、前記天板から下方へ下り前記傾斜板の周囲を囲む囲い板とを備え、下側が開口したフード本体と、前記傾斜板の傾斜方向下側端部の下方に配置されたドレン受けと、前記フード本体の上部で前記傾斜板の上側端部に位置し、前記傾斜板の下面側の空気を排気する排気口と、が設けられ、前記傾斜板の下面は、傾斜方向上側に設けられ調理器具の上方に配置される親水性領域と、傾斜方向下側に設けられ前記親水性領域よりも親水性が小さい低親水性領域とを備えている。
【0007】
請求項1のレンジフードは、調理機器の上方に傾斜板の親水性領域が配置され、低親水性領域が調理機器の上方から外れた位置に配置されるように設けられて使用される。
このレンジフードは、調理機器から上昇する湯気を、下側が開口し、上部または側部に排気口が設けられたフード本体で集めることができる。
【0008】
フード本体に設けた傾斜板には、傾斜方向上側に親水性領域が設けられており、親水性領域においては、傾斜板の下面に付着した水分(凝縮水)が水膜状になって広がるので、水滴の滴下が抑制される。
【0009】
例えば、調理機器側から排出された多量の湯気がレンジフードに流入した場合、傾斜板の親水性領域に付着する水分量が多くなり、水膜の厚みが厚くなって傾斜板の傾斜方向下方に向かって流動し、傾斜方向下側の低親水性領域に進入する。低親水性領域に進入した水膜は、水滴に変化してドレン受けに落下して排出される。
【0010】
即ち、請求項1のレンジフードでは、調理機器側から排出された多量の湯気がレンジフードに流入しても、水分が親水性領域に滞留することが抑制され、親水性領域の下方にある調理機器の中に水滴が落下することを抑制できる。
なお、低親水性領域から滴下した水滴は、ドレン受けで受けることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレンジフードにおいて、前記親水性領域には、親水性処理が施されている。
【0012】
請求項2に記載のレンジフードでは、親水性処理を施すことで、傾斜板の材料が親水性を有していなくても、親水性を得ることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のレンジフードにおいて、前記傾斜板を加熱する加熱装置を有している。
【0014】
請求項3に記載のレンジフードでは、傾斜板が加熱されることで、傾斜板の下面で水分が凝縮し難くなるので、水滴の落下を更に抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレンジフードは上記の構成としたので、水滴の滴下をより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係るレンジフードを示す縦断面図である。
図2】第1の実施形態に係るレンジフードを示す水平断面図である(図1の2-2線断面図)。
図3】第2の実施形態に係るレンジフードを示す縦断面図である。
図4】第3の実施形態に係るレンジフードを示す縦断面図である。
図5】第4の実施形態に係るレンジフードを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
図1、及び図2にしたがって、本発明の第1の実施形態に係るレンジフード10を説明する。
図1、及び図2に示すように、本実施形態のレンジフード10は、一例として、天板12、天板12の下方に配置される一方向(図面矢印B方向)に傾斜した傾斜板14と、傾斜板14の周囲を囲む囲い板16とを含んで構成されるフード本体18を備えている。
【0018】
囲い板16は、傾斜板14の傾斜方向上側に配置される前板20と、傾斜板14の傾斜方向下側に配置される背面板22と、傾斜板14の側方に配置される一対の側板24とを含んで構成されている。前板20、背面板22、側板24は、何れも鉛直方向に沿って配置され、ステンレススチール等の金属板で形成されている。
また、前板20、背面板22、側板24の下端部は、フード本体18の内側に折り曲げられてドレン受け26を形成している。
【0019】
傾斜板14は、傾斜方向下側の端縁が、背面板22の下端近傍、且つドレン受け26の上側に接続されており、傾斜方向上側の端縁が、天板12の前板側の近傍に接続されている。なお、天板12には、傾斜板14の傾斜方向上側の端縁と前板20との間に、排気口28が形成されている。排気口28にはダクト30を介して排気用の換気ファン32が接続されている。
【0020】
傾斜板14は、ステンレススチール等の金属板で形成されており、釜等の調理機器34の上方に配置される。
【0021】
傾斜板14の下面には、傾斜方向上側に親水性領域36が設けられ、傾斜方向上側に親水性領域36よりも相対的に親水性が低い低親水性領域38が設けられている。
【0022】
本実施形態では、傾斜板14を構成するステンレススチール板に二酸化チタン等の光触媒を含んだ親水性塗料を塗布(コーティング)することで親水性処理された親水性領域36を形成している。
一方、本実施形態の低親水性領域38は、親水性塗料が塗布されていない領域であり、表面は、ステンレススチール板そのものである。
【0023】
ここで、傾斜板14の親水性領域36は、調理機器34の上方に配置され、低親水性領域38は、調理機器の上方から外れた位置に配置される(または、調理機器34を移動する場合、調理機器34は親水性領域36の下方で、かつ低親水性領域38の下方へ掛らない位置に配置する)。
【0024】
(作用、効果)
次に、本実施形態に係るレンジフード10の作用、効果を以下に説明する。
調理機器34から上昇した湯気Sは、フード本体18の内部に集められ、ダクト30、換気ファン32を介して屋外等に排出される。
【0025】
傾斜板14に設けられた親水性領域36に湯気Sが接すると、水分(湯気が凝縮した凝縮水)が水膜状になって広がるので、親水性領域36においては、落下するような水滴は生じ難い。
【0026】
また、調理機器34側から排出された多量の湯気がレンジフード10に流入した場合、傾斜板14の親水性領域36に付着する水分量が多くなり、水膜の厚みが厚くなるが、厚くなった水膜は、水滴となって落下せず、傾斜板14の傾斜方向下方に向かって流動し、傾斜方向下側の低親水性領域38に流れ込む。低親水性領域38に流れ込んだ水膜は、水滴に変化してドレン受け26に落下して排出される。
【0027】
このようにして、本実施形態のレンジフード10では、調理機器34側から排出された多量の湯気がレンジフード10に流入した場合であっても、水分が親水性領域36に滞留することが抑制され、親水性領域36の下方にある調理機器34の中に水滴が落下することが抑制される。
【0028】
なお、傾斜板14の傾斜角度は、親水性領域36に生じた水膜が、低親水性領域38側へ移動できるように設定されることは勿論である。
【0029】
[第2の実施形態]
次に、図3にしたがって、本実施形態の第2の実施形態に係るレンジフード10を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0030】
図3に示すように、本実施形態のレンジフード10には、光触媒を含んだ親水性塗料を塗布(コーティング)することで形成された親水性領域36に、紫外線を含む光を照射可能なランプ40が取り付けられている。ランプ40としては、一例として紫外線ランプ、紫外線LEDを用いることができる。
【0031】
光触媒は、紫外線等、比較的波長の短い光線が照射されることで親水性が高まるので、親水性領域36に向けて紫外線を含む光を照射することが好ましい。
また、紫外線には殺菌作用があるので、レンジフード10内面に紫外線を含む光を照射することで、レンジフード10内面に付着した細菌を殺菌することもできる。
【0032】
[第3の実施形態]
次に、図4にしたがって、本実施形態の第3の実施形態に係るレンジフード10を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
図4に示すように、本実施形態のレンジフード10では、傾斜板14の上面側に、傾斜板14を加熱するヒータ42が配置されている。ヒータ42は、傾斜板14を加熱できるものであれば何でもよく、例えば、蒸気配管、電気ヒータ等を挙げることができる。ヒータ42は、少なくとも親水性領域36を加熱するように親水性領域36と対向する位置に設けられるが、更に、低親水性領域38を加熱するように低親水性領域38と対向する位置に設けもよい。
【0034】
本実施形態のレンジフード10では、ヒータ42で傾斜板14を加熱することで、湯気が傾斜板14に接した際に凝縮することを抑制でき、水滴の落下をより一層抑制することができる。
【0035】
[第4の実施形態]
次に、図5にしたがって、本実施形態の第4の実施形態に係るレンジフード10を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
前述した第1~3の実施形態のレンジフード10では、一方向に傾斜した傾斜板14が1枚設けられていたが、レンジフード10の構造は第1~3の実施形態に示す構造に限らず、図5に示すように、傾斜方向が異なる複数の傾斜板14が山形に設けられていてもよい。
【0036】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0037】
上記実施形態では、ステンレス板の表面に光触媒を含んだ塗料を塗布することで親水性領域36を形成したが、親水性(ここで言う親水性とは、ステンレス板よりも親水性が高いことを意味する)が得られればよく、光触媒以外の親水性材料を含んだ塗料を塗布(コーティング)してもよく、親水性材料を含んだフィルムを貼り付けたり、親水性材料からなるフィルムを貼り付けたり、傾斜板14を構成する材料をステンレススチールよりも親水性の高い材料に変更する等で親水性領域36を形成してもよい。
【0038】
低親水性領域38は、親水性領域36よりも親水性が低ければよく、撥水性を有していてもよい。撥水性を持たせるためには、撥水性の材料を含んだ塗料を塗布(コーティング)してもよく、撥水性の材料を含んだフィルムを貼り付けたり、親水性材料からなるフィルムを貼り付けたり、傾斜板14を構成する材料を親水性領域36よりも撥水性の高い材料に変更する等で低親水性領域38を形成してもよい。
【0039】
光触媒は、可視光で親水性が発揮されるタイプのものを用いることができる。
【0040】
第1~3実施形態では、天板12に排気口28が形成されていたが、排気口28は、天板12に限らず、囲い板16に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 レンジフード
14 傾斜板
18 フード本体
26 ドレン受け
28 排気口
36 親水性領域
38 低親水性領域
42 ヒータ(加熱装置)
図1
図2
図3
図4
図5