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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】リテーナを有するコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20240814BHJP
   H01R 43/22 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01R13/42 E
H01R13/42 F
H01R13/42 B
H01R43/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020119453
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022016145
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】新堂 悟
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-031290(JP,A)
【文献】特開2001-297816(JP,A)
【文献】特開2003-168512(JP,A)
【文献】特開2013-246965(JP,A)
【文献】特開平09-045414(JP,A)
【文献】特開2018-125167(JP,A)
【文献】特開平09-045411(JP,A)
【文献】特開2002-324613(JP,A)
【文献】特開2011-076974(JP,A)
【文献】特開平06-251821(JP,A)
【文献】特開2003-123890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40 -13/533
H01R 43/027-43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトをそれぞれ収容する複数のコンタクト収容部と、前記複数のコンタクト収容部のそれぞれの両外側に形成された抜き取り治具挿入下面と、前記複数のコンタクト収容部にそれぞれ配置され前記コンタクトの係止部に係止する複数のランスとを有するハウジングと、
前記ハウジングの前方から挿入され、前記複数のコンタクトがそれぞれ挿入される複数のコンタクト挿入孔と、前記複数のコンタクト挿入孔それぞれの上方左右両側に配置された1対のランス解除孔と、前記ランスの前記コンタクトの係止部での係止状態の解除を抑止するランス解除抑止部とを有するリテーナと、
コンタクト抜き取り治具とを有し、
前記リテーナが、前記ハウジングに仮係止位置で係止されるとき、前記コンタクト収容部に挿入された前記コンタクトの係止部に前記ランスが係止して一次係止状態となり、
前記リテーナが、前記ハウジングに前記仮係止位置より奥の本係止位置で係止されるとき、前記ランス解除抑止部が前記ランスの前記コンタクトの係止部での一次係止状態の解除を抑止して二次係止状態となり、
前記リテーナが前記仮係止位置で係止された状態で、前記コンタクト抜き取り治具の先端の1対のランス解除片が抜き取り対象のコンタクトの前記1対のランス解除孔に挿入されると、前記1対のランス解除片が、前記リテーナの前記1対のランス解除孔の相互に対向する内壁及び上下面と、前記ハウジングの前記抜き取り治具挿入下面とによりガイドされて、前記コンタクトの左右外側を前記コンタクトの長手方向に沿って挿入され、前記ランスの両側位置に到達して前記ランスの前記一次係止状態を解除する、コネクタ。
【請求項2】
前記第2方向に隣接するコンタクト挿入孔が、前記隣接するコンタクト挿入孔の間のランス解除孔を共用する、請求項に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記リテーナが、前記仮係止位置で係止された状態で、前記コンタクト挿入孔に前記コンタクトの先端が挿入され、前記コンタクトの先端部が前記コンタクト挿入孔から突き出される、請求項に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記コンタクト抜き取り治具は、前記1対のランス解除片が前記リテーナの1対のランス解除孔に挿入されたときに前記リテーナの前面に当接する挿入ストッパを有し、
前記コンタクト抜き取り治具の1対のランス解除片が前記1対のランス解除孔に挿入されて、前記挿入ストッパが前記リテーナの前面に当接すると、前記1対のランス解除片の先端が前記ランスの両端位置に到達して前記ランスの一次係止状態を解除する、請求項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次係止されたコンタクト(端子)を二次係止状態にするリテーナを有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタは、オス側コネクタであればオスコンタクトを、メス側コネクタであればメスコンタクトを収容する。以下、オス側コネクタとメス側コネクタを区別せずにコネクタと称する。また、オスコンタクトとメスコンタクトも同様にコンタクトと称する。
【0003】
コネクタは、ハウジングに設けた複数のコンタクト収容部内にコンタクトが収容され、ハウジングに設けたランスが収容されたコンタクトの係止部に係止し、コンタクトがハウジングから抜けるのを抑止する。更に、コンタクトのハウジング内での係止状態を保証又は強化するために、ランスによるコンタクトの一次係止に加えて、リテーナをハウジングの前方から挿入してランスの係止状態が解除されることを抑止する二次係止が行われる。特に、振動に対する高い信頼性が求められる車載用のコネクタ等では、リテーナによる二次係止が広く採用されている。
【0004】
以下の特許文献1、2には、ハウジングのランスとハウジングとは別のリテーナとによりコンタクトの一次係止と二次係止を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-297521号公報
【文献】特開2006-54141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の先行技術では、誤って挿入されたコンタクトをハウジングから抜き取ることが容易ではない。例えば、特許文献1では、コンタクトをハウジングから抜き取る場合、ハウジングに装着したリテーナを取り外す必要があり作業が煩雑である。更に、コンタクト抜き取り治具を抜き取り対象のコンタクトを一次係止しているランスに接触させランスの一次係止を解除してコンタクトを引き抜く必要があり、ランスへの位置合わせ及び一次係止の解除は容易ではない。
【0007】
特許文献2では、リテーナをハウジングから取り外す必要はないが、リテーナに設けられた抜き取り治具挿入孔から抜き取り治具を挿入し、解除対象のランスに接触させランスの一次係止を解除してコンタクトを引き抜く必要があり、ランスへの位置合わせ及び一次係止の解除は容易ではない。
【0008】
そこで、本実施の形態の第1の側面の目的は、ランスの一次係止の解除作業が容易なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施の形態の第1の側面は、複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトをそれぞれ収容する複数のコンタクト収容部と、前記複数のコンタクト収容部にそれぞれ配置され前記コンタクトの係止部に係止する複数のランスとを有するハウジングと、前記ハウジングの前方から挿入され、前記複数のコンタクトがそれぞれ挿入される複数のコンタクト挿入孔と、前記複数のコンタクト挿入孔それぞれの近傍に配置された1対のランス解除孔と、前記ランスの前記コンタクトの係止部での係止状態の解除を抑止するランス解除抑止部とを有するリテーナと、コンタクト抜き取り治具とを有し、前記リテーナが、前記ハウジングに仮係止位置で係止されるとき、前記コンタクト収容部に挿入された前記コンタクトの係止部に前記ランスが係止して一次係止状態となり、前記リテーナが、前記ハウジングに前記仮係止位置より奥の本係止位置で係止されるとき、前記ランス解除抑止部が前記ランスの前記コンタクトの係止部での一次係止状態の解除を抑止して二次係止状態となり、前記リテーナが前記仮係止位置で係止された状態で、前記コンタクト抜き取り治具の先端の1対のランス解除片が抜き取り対象のコンタクトの前記1対のランス解除孔に挿入されると、前記1対のランス解除片が前記ランスの両端位置に到達して前記ランスの前記一次係止状態を解除する、コネクタである。
【発明の効果】
【0010】
第1の側面によれば、ランスの一次係止の解除作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態におけるコネクタの全体構成を示す斜視図である。
図2】コンタクトが装着されたコネクタの一部断面の斜視図である。
図3図2においてコネクタのハウジングにリテーナを本係止位置で装着したときの斜視図である。
図4】リテーナの構成例を示す斜視図である。
図5図2においてコネクタのハウジングにリテーナを仮係止位置で装着したときの斜視図である。
図6図5の状態でハウジングの上部を除去してハウジング内のコンタクトを示す斜視図である。
図7】コンタクトの抜き取り作業を示す斜視図である。
図8】コンタクトの抜き取り作業を示す斜視図である。
図9】コンタクトの抜き取り作業を示す拡大斜視図である。
図10】コンタクの抜き取り作業を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施の形態におけるコネクタの全体構成を示す斜視図である。コネクタ1は、コネクタハウジング(以下、ハウジングと称する)10と、ハウジングのコンタクト収容部12に収容される複数のコンタクト20と、ハウジング10のフード11内に装着されるフロントリテーナ(以下、リテーナと称する)30とを有する。ハウジング10とリテーナ30は、絶縁性の樹脂材料を成形加工して製造される。
【0013】
図1に示したコネクタは、一例として36極のワイヤ・ツー・ワイヤである。図1では、ハウジング10の図面左側の前方から見て右側の一部が切断されその断面が表れているため、各行12極で3行合計36極のコンタクトのうち、最下行に12極、残りの2行に11極のコンタクト20が示される。これは、3つの行のコンタクトの位置が水平方向にずれてハウジングに挿入されるからである。コンタクト20は、コンタクト本体部21と、コンタクト本体部に設けられた段差形状の係止部22と、コンタクト先端部23とを有し、コンタクト20の右側には電気線(ワイヤ)24が接続される。
【0014】
ハウジング10は、コンタクト20がそれぞれ収容される複数のコンタクト収容部12を有し、前方にフード11を有する。図1の例では、下から2行のコンタクト収容部12にコンタクト20が挿入、収容済みである。また、最上行のコンタクト収容部に、コンタクト20がハウジング10の図面右側の後方から挿入されようとする状態が示される。
【0015】
リテーナ30は、コンタクトの先端部23がそれぞれ挿入される3行の複数のコンタクト挿入孔31を有し、それぞれのコンタクト挿入孔31の上方近傍にコンタクト挿入孔31から独立した1対のランス解除孔32を有する。各行の複数のコンタクト挿入孔31は行の間で水平方向にずれて形成され、それに伴いランス解除孔32も行の間で水平方向にずれて形成される。水平方向にずらすことで、コンタクト挿入孔31間の距離を長くすることができる。
【0016】
リテーナ30は、その前面33とは反対側に、リテーナがハウジング内に装着されたときハウジングのコンタクト収容部12内に挿入されるランス解除抑止部34を3行分有する。通常、ハウジング10のフード11内にリテーナ30を仮係止位置に係止した状態で、コンタクト20がハウジング10のコンタクト収容部12内に後方から挿入される。
【0017】
図2は、コンタクトが装着されたコネクタの一部断面の斜視図である。コネクタ内にリテーナを仮係止位置に装着した状態でコンタクトが挿入されるが、図2では、リテーナを装着していない状態を示す。リテーナを装着した状態は後で図5等で示す。
【0018】
コネクタのハウジング10は、前述のとおり、前方のフード11と、コンタクト20がそれぞれ収容される複数のコンタクト収容部12を有する。コンタクト収容部12の前方側には、ランス13がランス収容空間14に突き出すように形成される。ランス13は、コンタクト20が挿入されると、コンタクト本体部21に形成された段差状の係止部22に係止する。
【0019】
ランス13は、ハウジング10からランス収容空間14内にやや下向きに突き出す形状を有し、樹脂材料による弾性力を有する。これにより、コンタクト20をコネクタの後方(図面右側)から挿入すると、ランス13がランス収容空間14内で上方に弾性変形しコンタクト20の挿入を可能にする。そして、コンタクト20が収容位置まで挿入されると、ランス13が上方への弾性変形を解除され、コンタクト本体部21の係止部22の位置に戻りコンタクトを係止する。
【0020】
リテーナの複数のコンタクト挿入孔の位置が各行で水平方向にずれているのと同様に、コネクタのハウジング10の複数のコンタクト収容部12も各行で水平方向にずれている。そのため、図2のハウジング10の断面には、異なる行のランス13の異なる断面が見えている。同様に、3行のコンタクトのコンタクト本体部21は、上下のコンタクトではその断面が見えるが、真ん中のコンタクトのコンタクト本体部21はハウジング10により隠されている。
【0021】
図4は、リテーナの構成例を示す斜視図である。図4中、左側にリテーナ全体の斜視図が、右側にリテーナの断面が示された斜視図が、それぞれ示される。リテーナに設けられた各行の複数のコンタクト挿入孔31の位置は、行の間で水平方向にずれている。また、各コンタクト挿入孔31の上側の左右両側に1対のランス解除孔32が設けられる。1対のランス解除孔32の位置も、行の間で水平方向にずれている。図4の右側の斜視図の断面のコンタクト挿入孔31とランス解除孔32を見ると、水平方向のずれが明白である。
【0022】
1対のランス解除孔32には、後述するコンタクト抜き取り治具の1対のランス解除片が挿入される。本実施の形態の例では、隣接する2つのコンタクト挿入孔31が、それらの間に設けられた1つのランス解除孔32を共用する。これにより、各コンタクト挿入孔31に1対のランス解除孔31をそれぞれ設けるよりも、各行の複数のコンタクト挿入孔31の間隔を短くできる。各行の複数のコンタクト挿入孔31の間隔が十分に長い場合は、ランス解除孔32を隣接するコンタクト挿入孔31で共用する必要はない。
【0023】
リテーナ30の前面33は平面であるのに対して、リテーナ30の後方には、3行のランス解除抑止部34と、前面33の斜め方向の1対の角に設けられた突起状のリテーナ取り出し部材36と、リテーナ側一次係止爪35が形成される。
【0024】
[リテーナが仮係止位置にある場合]
図5は、図2においてコネクタのハウジングにリテーナを仮係止位置で装着したときの斜視図である。図6は、図5の状態でハウジングの上部を除去してハウジング内のコンタクトを示す斜視図である。前述したとおり、リテーナを仮係止位置に装着した状態で、ハウジング後方からコンタクト収容部12内にコンタクト20を挿入する。
【0025】
図5、6では、リテーナ30がハウジング10内の仮係止位置にあり、リテーナのランス解除抑止部34がハウジングのランス収容空間14の手前までしか挿入されていない。この状態では、ランス13はランス収容空間14内に弾性変形可能な状態にある。そのため、第1に、コンタクト20をハウジング10のコンタクト収容部12内に後方から挿入して装着可能である。第2に、コンタクト20がコンタクト収容部12内に装着されると、ランス13がコンタクトの係止部22に係止し、コンタクト20はハウジング内に一次係止される。そして、第3に、後述するコンタクト抜き取り治具によりランス13をランス収容空間14へ押し上げることで、ランスによるコンタクトの一次係止を解除できる。ランスの一次係止を解除することで、装着されたコンタクト20を抜き取ることができる。
【0026】
図6に示されるとおり、リテーナが仮係止位置では、ハウジング10に設けられたハウジング側一次係止爪15と、リテーナ30に設けられたリテーナ側一次係止爪35とが係止状態になり、リテーナ30がハウジング10に係止される。また、ハウジングの2行目の最右端のコンタクト挿入孔31の上部右側のランス解除孔32には、後述するコンタクト抜き取り治具の右側のランス解除片が挿入される。ハウジングに設けられた2行目の最右端のランス13は、挿入されたランス解除片が到達する位置にあり、ランス収容空間14内の上方向に弾性変形される。図5には、コンタクト抜き取り治具40の1対のランス解除片41がランス解除孔に向かって侵入している様子が示される。
【0027】
[リテーナが本係止位置にある場合]
図3は、図2においてコネクタのハウジングにリテーナを本係止位置で装着したときの斜視図である。図3においても、ハウジング10とリテーナ30の断面が示される。
【0028】
前述のとおり、リテーナ30をハウジング10の仮係止位置に装着した状態でコンタクト20をハウジングのコンタクト収容部12内に挿入し、ランス13がコンタクトの係止部22に係止しコンタクトを一次係止する。
【0029】
その後、リテーナを更にハウジングの奥側に押し込むと、図3に示すとおり、リテーナ30のランス解除抑止部34がランス13の上のランス収容空間14内に挿入される。ランス解除抑止部34がランス収容空間14内に挿入されることで、ランス13が上方向に弾性変形することができなくなり、コンタクトの係止状態が強化され、コンタクトが二次係止される。この状態で、リテーナ30はハウジングの本係止位置に係止される。リテーナのハウジングへの二次係止は、リテーナがハウジングの奥側に押し込められたとき、図6に示したリテーナ側二次係止爪37がハウジング側二次係止爪17に係止されることで行われる。
【0030】
[リテーナを仮係止位置にしてコンタクトを抜き取る場合]
上記でリテーナの仮係止位置と本係止位置での状態を説明した。次に、リテーナを仮係止位置にした状態でコンタクトを抜き取る場合について説明する。コネクタのハウジングとハウジングに仮係止されたリテーナと、未挿入のコンタクトが、例えばハーネスベンダに供給される。ハーネスベンダは、コンタクトにハーネスの電線を接続し、そのコンタクトをコネクタのハウジング10のコンタクト収容部12に挿入し、コンタクトをハウジングに一次係止する。例えば、コンタクトはそれぞれ極番を有し、その局番に対応したコンタクト収容部12に挿入することが要求される。コンタクト収容部の局番と対応しないコンタクトが誤って挿入されると、一次係止されたコンタクトを抜き取ることが必要になる。
【0031】
本実施の形態では、一次係止されたコンタクトを抜き取る場合、リテーナをコネクタのハウジングから抜き取る必要はなく、更に、リテーナに設けたランス解除孔32にコンタクト抜き取り治具のランス解除片を挿入するだけで確実にランスの一次係止状態を解除できる。しかも、ランスの一次係止を解除する作業中に、コンタクト抜き取り治具がコンタクトに接触することがなく、安全且つ確実にランスの一次係止解除ができ、コンタクトを安全に抜き取ることができる。以下、コンタクト抜き取り治具とリテーナのランス解除孔とランスとの関係を示しながらランスの一次係止解除作業について説明する。
【0032】
図5に示すとおり、作業員は、リテーナをハウジングの仮係止位置に係止した状態で、抜き取り対象のコンタクトの先端部23が挿入されたコンタクト挿入孔31の上部左右のランス解除孔32をめがけて、コンタクト抜き取り治具40をフード内に侵入させる。
【0033】
図7は、コンタクトの抜き取り作業を示す斜視図である。図7には、コンタクト抜き取り治具40の1対のランス解除片41が、リテーナ30のコンタクト挿入孔31の上部左右の1対のランス解除孔32に挿入され始めた状態が示される。
【0034】
図9は、コンタクトの抜き取り作業を示す拡大斜視図である。図9(1)が図7の拡大斜視図である。図9では、図7と同様に、挿入されるランス解除片41が見えるように、リテーナ30ではランス解除孔32の位置の断面が見えるように、ハウジング10ではランス13の両側のランス解除部材13Aの位置の断面が見えるように、それぞれ切断されている。
【0035】
図9(1)に示されるとおり、ハウジング10に形成されたランス13は、コンタクトの係止部22を係止するために、係止部22に当接される垂直面の下端が略直角形状を有する。そして、ランス13のコンタクト先端部23からみた両側には、側面視で下辺が傾斜形状(テーパ)をなすランス解除部材13Aがランス13に片持ちで形成される。さらに、ハウジング10には、挿入されるランス解除片41の下面をガイドする水平方向の抜き取り治具挿入下面16が、収納されたコンタクト本体部21の両側に形成される。
【0036】
一方、コンタクト抜き取り治具40は、先端が二股に別れた1対のランス解除片41を有し、ランス解除片41の先端は側面視で上辺が傾斜形状(テーパ)を有する。二股形状は図10の平面図に示される。また、コンタクト抜き取り治具40は、長手方向の途中に段差状の挿入ストッパ42を有する。
【0037】
そして、ランス解除孔32の垂直方向のサイズが、コンタクト抜き取り治具40のランス解除片41の垂直方向のサイズと、挿入マージンを除くとほぼ一致する。これにより、リテーナ30において、ランス解除孔32内の平行な上下面である抜き取り治具挿入上下面32Aが、挿入されるコンタクト抜き取り治具40のランス解除片41の上下面をそれぞれ水平方向にガイドして、ランスのランス解除部材13Aに確実に到達させる。
【0038】
図8は、コンタクトの抜き取り作業を示す斜視図である。図9(2)は、図8の拡大斜視図である。図8図9(2)では、コンタクト抜き取り治具40の1対のランス解除片41が、リテーナ30の1対のランス解除孔32の更に奥に挿入され、挿入ストッパ42がリテーナ30の前面33に当接した状態である。この挿入により、ランス解除片41のテーパ形状の先端が、逆のテーパ形状のランス解除部材13Aを押し上げてランス13を弾性変形させ、ランス13のコンタクト係止部22での一次係止が解除される。一次係止が解除された状態で、コンタクト20をハウジングの後方に抜き取ることができる。
【0039】
図10は、コンタクの抜き取り作業を示す平面断面図である。図10は、図8図9(2)のコンタクト抜き取り治具40が奥まで挿入された状態において、ハウジング10の上からみた平面断面図である。図10は、コンタクト抜き取り治具40及びそのランス解除片41が見えるように、リテーナ30のランス解除孔32の上部を除去した断面図である。
【0040】
図10に示すとおり、コンタクト抜き取り治具40は、長手方向途中で二股に別れ、1対のランス解除片41を有する。また、リテーナ30に形成されたランス解除孔32は、リテーナの平面視でコンタクト挿入孔31の両側にそれぞれ設けられ、1対のランス解除孔32の内側側面は抜き取り治具挿入内壁32Bをなし、1対のランス解除片41のリテーナの平面視での水平方向の挿入位置を決める。
【0041】
また、図9に示すとおり、ランス解除孔32の上下内面は抜き取り治具挿入上下面32Aをなし、1対のランス解除片41のリテーナの平面視での垂直方向の挿入位置を決める。
【0042】
さらに、ランス解除孔32の抜き取り治具挿入上下面32A及び抜き取り治具挿入内壁32Bは、ランス解除片41の挿入のガイドの機能を有する。また、ハウジング10のコンタクト収容部12の両外側に設けた抜き取り治具挿入下面16も、ランス解除片41の挿入のガイドの機能を有する。これらのガイド機能により、1対のランス解除片41は、ランス解除孔32に挿入されたとき、ハウジング内のコンタクト本体部21の左右外側をコンタクト本体部21を不用意に傷つけないように水平方向に侵入し、その先端がランス13の両側のランス解除部材13Aの下に侵入し、ランス13を押し上げる。そのため、コンタクト本体部21の幅W21と、ランス13のランス解除部材13Aを含むランス全幅W13と、1対のランス解除片41の間隔W41との関係は、図10に示すとおり、W21<W41、W21<W13となる。
【0043】
すなわち、1対のランス解除片41の挿入がコンタクト本体部21を不用意に傷つけないためには、コンタクト本体部21の幅W21よりも、一対のランス解除片41が外側に位置すること(W21<W41)が必要である。また、一対のランス解除片41によりランス13を解除するためには、少なくともランス解除部材13Aを含むランス全幅W13もコンタクト本体部21の幅W21より広いこと(W21<W13)が必要である。
【0044】
図8図9(2)、図10に示すとおり、コンタクト抜き取り治具40を使用してランス13の一次係止を解除する場合、作業員は、コンタクト抜き取り治具の1対のランス解除片41を、リテーナ30の抜き取り対象コンタクトが挿入されるコンタクト挿入孔31の上方左右に設けられた1対のランス解除孔32に挿入し、挿入ストッパ42がリテーナ30の前面33に当接するまで押し込むだけで良い。
【0045】
リテーナ30の1対のランス解除孔32内部の内側側面(抜き取り治具挿入内壁32B)と抜き取り治具挿入上下面32Aとで、抜き取り治具のランス解除片41のリテーナの前面33での左右上下の位置が決めされる。更に、抜き取り治具挿入内壁32Bと、リテーナの抜き取り治具挿入上下面32Aと、ハウジングの抜き取り治具挿入下面16とにガイドされて、コンタクト抜き取り治具の1対のランス解除片41が、確実にコンタクト本体部21の両側に沿って挿入され、ランス13の両側のランス解除部材13Aに確実に到達できる。このとき1対のランス解除片41がコンタクト本体部21に接触することがない。
【0046】
更に、コンタクト抜き取り治具40のランス解除片41の位置決めを行うランス解除孔32は、仮係止位置にあるリテーナ30の前面33に形成され、前面33はコネクタハウジングのフード11の入り口から比較的近い。そのため、抜き取り治具のランス解除片41とランス解除孔32との位置合わせが容易であり、誤って抜き取り対象でないコンタクトのランスを解除することが抑制される。特に、フード11内は暗いので、位置合わせが容易であることは作業性の向上になる。
【0047】
また、リテーナ30が仮係止位置にあるので、コンタクトの先端がリテーナのコンタクト挿入孔31内に収容された状態で、コンタクト抜き取り治具40が挿入される。これにより、コンタクトの先端が保護され、コンタクトが変形してその先端位置が変化することが防止され、相手側コネクタとの嵌合位置精度を高く保つことができる。
【0048】
そして、作業員は、コンタクト抜き取り治具40を、その挿入ストッパ42がリテーナ30の前面に当接するまで挿入すれば、1対のランス解除片41の先端がランス13の両側のランス解除部材13Aを押し上げて、ランスの一次係止を解除できる。ランス13の両側のランス解除部材13Aを押し上げるので、左右バランス良くランス13を押し上げることができる。
【0049】
これに対して、特許文献2の公知例では、リテーナに大きな工具挿入孔が設けられるだけであり、作業員は、抜き取り工具を工具挿入孔から挿入し工具先端をマニュアルで解除対象のランスの下側に侵入させ、工具を上下に動かす必要があり、本実施の形態例に比べて作業性が悪い。
【0050】
本実施の形態では、オスコネクタとオスコンタクトを例にしてハウジングとリテーナとコンタクト抜き取り治具について説明した。しかし、本実施の形態は、メスコネクタとメスコンタクトに対しても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10:ハウジング、オスハウジング
11:フード
12:コンタクト収容部
13:ランス
13A:ランス解除部材
14:ランス収容空間
15:ハウジング側一次係止爪
16:抜き取り治具挿入下面
17:ハウジング側二次係止爪
W13A:ランス解除部材の幅
20:コンタクト、端子
21:コンタクト本体部
22:係止部
23:先端部
24:電気線(ワイヤ)
W21:コンタクト本体幅
30:リテーナ
31:コンタクト挿入孔
32:ランス解除孔
32A:抜き取り治具挿入上下面
32B:抜き取り治具挿入内壁
33:前面
34:ランス解除抑止部
35:リテーナ側一次係止爪
36:リテーナ取り出し部材
37:リテーナ側二次係止爪
40:コンタクト抜き取り治具
41:1対のランス解除片
42:挿入ストッパ
W41:1対のランス解除片の幅
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