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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】汚水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20230101AFI20240814BHJP
   C02F 3/00 20230101ALI20240814BHJP
【FI】
C02F3/12 B
C02F3/00 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022131360
(22)【出願日】2022-08-02
(62)【分割の表示】P 2020105665の分割
【原出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2022159534
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】520218718
【氏名又は名称】有限会社シー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】230121452
【弁護士】
【氏名又は名称】十河 陽介
(72)【発明者】
【氏名】廣山 登
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-115754(JP,A)
【文献】特開2006-247494(JP,A)
【文献】特開2001-162297(JP,A)
【文献】特開2000-288572(JP,A)
【文献】特開昭52-011645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F3/00-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水に対して前処理を行う前処理工程と、
前記前処理工程で前記前処理が行われた後の前処理後汚水及び活性汚泥を曝気槽に供給するとともに、前記曝気槽において前記前処理後汚水及び前記活性汚泥を含む第1液に対して曝気を行う第1曝気工程と、
前記第1液を沈殿槽に供給するとともに、前記沈殿槽において前記第1液を上澄水と沈殿物とに分離する分離工程と、
前記上澄水及び前記沈殿物を培養タンクに供給するとともに、前記培養タンクにおいて前記上澄水及び前記沈殿物を含む第2液に対して曝気を行う第2曝気工程と、
前記第2液を前記活性汚泥として前記曝気槽に供給する供給工程とを備え、
前記第2曝気工程は、栄養剤が追加された上で行われ、
前記栄養剤は、前記前処理が行われる前記汚水に含まれる汚泥であ
前記供給工程において、前記第2液の一部のみが前記曝気槽に前記活性汚泥として供給され、
前記第2曝気工程及び前記供給工程は、前記上澄水及び前記沈殿物を前記培養タンクに追加した上で繰り返し行われ、
前記第2液の一部のみが前記曝気槽に前記活性汚泥として供給された後の前記第2曝気工程は、前記第2液の残部に対して曝気を行う第1工程と、前記上澄水を追加した上で曝気を行う第2工程と、前記沈殿物を追加した上で曝気を行う第3工程とを有し、
前記第3工程は前記第2工程の後又は前記第2工程と同時に行われる、汚水処理方法。
【請求項6】
汚水に対して前処理を行う前処理工程と、
前記前処理工程で前記前処理が行われた後の前処理後汚水及び活性汚泥を曝気槽に供給するとともに、前記曝気槽において前記前処理後汚水及び前記活性汚泥を含む第1液に対して曝気を行う第1曝気工程と、
前記第1液を沈殿槽に供給するとともに、前記沈殿槽において前記第1液を上澄水と沈殿物とに分離する分離工程と、
前記上澄水及び前記沈殿物を培養タンクに供給するとともに、前記培養タンクにおいて前記上澄水及び前記沈殿物を含む第2液に対して曝気を行う第2曝気工程と、
前記第2液を前記活性汚泥として前記曝気槽に供給する供給工程とを備え、
前記第2曝気工程は、栄養剤が追加された上で行われ、
前記栄養剤は、前記前処理が行われる前記汚水に含まれる汚泥であり、
前記供給工程において、前記第2液の一部のみが前記曝気槽に前記活性汚泥として供給され、
前記第2曝気工程及び前記供給工程は、前記上澄水及び前記沈殿物を前記培養タンクに追加した上で繰り返し行われ、
前記上澄水及び前記沈殿物の追加は、曝気が行われている間に連続的に行われ、
追加される前記上澄水の体積を追加される前記沈殿物の体積で除した値は、前記第2曝気工程の繰り返し回数が増加するに伴って減少される、汚水処理方法。
【請求項7】
前記第2曝気工程が行われる時間は、前記第2曝気工程の繰り返し回数が増加するに伴って減少される、請求項又は請求項に記載の汚水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水処理方法に関する。より具体的には、本発明は、活性汚泥法を用いた汚水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に記載されているように、一般的な活性汚泥法においては、第1に、曝気槽に汚水及び活性汚泥が供給される。第2に、曝気槽内において汚水及び活性汚泥の混合液が曝気される。これにより、活性汚泥に含まれる好気性微生物の作用により、汚水中の有機物が分解される。
【0003】
第3に、曝気後の混合液が、沈殿槽に供給される。第4に、沈殿槽において、混合液が静置される。これにより、混合液が、沈殿物と上澄水とに分離される。この上澄水は、処理水として排出される。この沈殿物のうちの一部は、活性汚泥として、曝気槽で再利用される(以下においては、沈殿槽から曝気槽に供給される沈殿物を「返送汚泥」とする)。
【0004】
特許文献1(特許第3699570号公報)には、改良された活性汚泥法が記載されている。特許文献1に記載の活性汚泥法においては、培養タンクにおいて返送汚泥を培養した後に、活性汚泥として曝気槽に供給される。培養タンクにおいて返送汚泥の培養が行われる際、返送汚泥には、微生物製剤が加えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3699570号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】池上徹、「好気性微生物の働きを利用した活性汚泥法」、インターネット<URL:https://kcr.kurita.co.jp/wtschool/016.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的な活性汚泥法においては、返送汚泥がそのまま活性汚泥として再利用されることになる。返送汚泥は、微生物のみならず、微生物の代謝により放出された有機物(Biomass Associated Products、以下においては「BAP」とする)及び微生物の死滅に伴って放出された有機物(Utilizing Associated Products、以下においては「UAP」とする)を含んでいる。
【0008】
BAP及びUAPも汚水中の有機物とともに汚泥化されることになるため、一般的な活性汚泥法においては、余剰汚泥が大量に発生することになる。また、曝気槽にBAP及びUAPが戻される結果、汚泥の沈降性が低下する。
【0009】
特許文献1に記載の活性汚泥法によると、汚水処理能力が相対的に改善されることになる。しかしながら、特許文献1に記載の活性汚泥法においては、返送汚泥に微生物製剤が加えられるため、環境負荷が増大する。
【0010】
本発明は、上記のような従来技術のような問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、環境負荷を増大させることなく、汚水処理能力の改善、汚泥沈降性の改善及び余剰汚泥の低減が可能な汚水処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の汚水処理方法は、汚水及び活性汚泥を曝気槽に供給するとともに、曝気槽において汚水及び活性汚泥を含む第1液に対して曝気を行う第1曝気工程と、第1液を沈殿槽に供給するとともに、沈殿槽において第1液を上澄水と沈殿物とに分離する分離工程と、上澄水及び沈殿物を培養タンクに供給するとともに、培養タンクにおいて上澄水及び沈殿物を含む第2液に対して曝気を行う第2曝気工程と、第2液を活性汚泥として曝気槽に供給する供給工程とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の汚水処理方法においては、第2液に含まれる沈殿物中の微生物が培養された上で活性汚泥として利用されるため、汚水処理能力が改善される。
【0013】
また、本発明者が見出した知見によると、分離工程において分離された沈殿物は、BAP及びUAPを含んでいるため、その沈殿物を含む第2液を第2曝気工程において培養することにより、BAP及びUAPを分解可能な微生物(より具体的には、BAP及びUAPを発生させた微生物)に選択圧が加わる。その結果、第2曝気工程においては、BAP及びUAPを分解可能な微生物が、優先的に増殖・進化される。そのため、本発明の汚水処理方法においては、BAP及びUAPを分解可能な微生物が活性汚泥に多く含まれることになり、BAP及びUAPに起因した余剰汚泥の発生及び沈降性悪化が抑制される。
【0014】
さらに、本発明の汚水処理方法においては、沈殿物中の微生物の培養に際して微生物製剤が用いられないため、汚水処理に伴う環境負荷の増加を抑制することができる。なお、本発明者が見出した知見によると、沈殿物への微生物製剤の追加は、培養タンクにおけるBAP及びUAPを分解可能な微生物の培養の妨げにもなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る汚水処理システムの模式図である。
図2】第1実施形態に係る汚水処理方法を示す工程図である。
図3】汚水処理能力と実験開始後の経過月数との関係を示すグラフである。
図4】汚泥沈降性と実験開始後の経過月数との関係を示すグラフである。
図5】余剰汚泥量と実験開始からの経過月数との関係を示すグラフである。
図6】第2実施形態に係る汚水処理方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0017】
(第1実施形態に係る汚水処理システム)
以下に、第1実施形態に係る汚水処理システムの構成を説明する。
【0018】
図1は、第1実施形態に係る汚水処理システムの模式図である。第1実施形態に係る汚水処理システムは、図1に示されるように、前処理槽10と、曝気槽20と、沈殿槽30と、培養タンク40と、制御装置50とを有している。第1実施形態に係る汚水処理システムは、活性汚泥法により汚水処理を行うためのシステムである。第1実施形態に係る汚水処理システムにより処理される汚水W1は、有機物を含んでいる。汚水W1は、例えば工場排水である。
【0019】
前処理槽10には、汚水W1が貯留される。前処理槽10においては、汚水W1から汚泥SL1が分離される。以下においては、前処理槽10での前処理が行われた後の汚水W1を、前処理後汚水W2という。
【0020】
曝気槽20は、槽本体21と、空気供給部22とを有している。槽本体21には、前処理後汚水W2及び活性汚泥SL2が貯留される。以下においては、前処理後汚水W2及び活性汚泥SL2を含む液体を、第1液L1という。空気供給部22は、散気管23と、ポンプ24とを有している。散気管23は、槽本体21の内部に配置されている。ポンプ24は、散気管23に接続されている。ポンプ24は、散気管23を介して、槽本体21の内部に空気を供給する。
【0021】
沈殿槽30には、曝気槽20での曝気を経た第1液L1が貯留される。曝気槽20において、第1液L1が、上澄水W3と沈殿物SL3とに分離される。なお、沈殿物SL3の一部は、培養タンク40に供給され、沈殿物SL3の他の一部は活性汚泥SL2として曝気槽20に供給され、沈殿物SL3の残部は廃棄される。
【0022】
培養タンク40は、タンク本体41と、空気供給部42とを有している。タンク本体41には、上澄水W3の一部及び沈殿物SL3の一部が貯留される。以下においては、上澄水W3及び沈殿物SL3を含む液体を、第2液L2という。なお、タンク本体41に貯留されない上澄水W3は、処理済の水として放流される。
【0023】
空気供給部42は、散気管43と、ポンプ44とを有している。散気管43は、タンク本体41の内部に配置されている。ポンプ44は、散気管43に接続されている。ポンプ44は、散気管43を介して、タンク本体41の内部に空気を供給する。水位センサ45は、タンク本体41の内部に配置されている。水位センサ45は、タンク本体41の内部における第2液L2の水位を測定するとともに、測定結果に対応した信号を制御装置50に出力する。第2液L2は、ポンプ46を駆動することにより、培養タンク40から曝気槽20へと供給される。
【0024】
制御装置50は、例えば、プログラマブルコントローラ、マイクロコントローラ等を含む制御盤により構成されている。制御装置50は、水位センサ45からの出力信号が入力される。制御装置50からの出力信号は、ポンプ46に入力される。より具体的には、制御装置50は、水位センサ45により検知される第2液L2の水位が所定未満となったときにポンプ46を停止し、曝気槽20への第2液L2の供給を停止する。
【0025】
(第1実施形態に係る汚水処理方法)
以下に、第1実施形態に係る汚水処理方法を説明する。
【0026】
図2は、第1実施形態に係る汚水処理方法を示す工程図である。第1実施形態に係る汚水処理方法は、図2に示されるように、前処理工程S1と、第1曝気工程S2と、分離工程S3と、第2曝気工程S4と、供給工程S5とを有している。
【0027】
前処理工程S1においては、前処理槽10に汚水W1が供給され、貯留される。前処理槽10において汚水W1が静置されることにより、汚水W1から汚泥SL1が分離され、分離された汚泥SL1が前処理槽10の底部に溜まる。なお、汚泥SL1は、前処理槽10に貯留されている汚水W1に対して空気を供給して浮き上がらせること等により、汚水W1から分離されてもよい。
【0028】
第1曝気工程S2においては、第1に、曝気槽20(槽本体21)に前処理後汚水W2及び活性汚泥SL2を含む第1液L1が供給され、貯留される。第2に、第1液L1が曝気槽20に貯留された状態で空気供給部22が駆動されることにより、曝気槽20の内部に空気が供給される。より具体的には、ポンプ24を駆動することにより、散気管23を介して曝気槽20の内部に空気が供給される。これにより、第1液L1が、曝気槽20の内部において曝気される。
【0029】
活性汚泥SL2は、微生物を含んでいる。活性汚泥SL2中の微生物には、好気性の微生物が含まれている。第1液L1に含まれている有機物は、上記の微生物により酸化分解され、上記の微生物とともに塊状のフロックになる。
【0030】
分離工程S3においては、第1に、沈殿槽30に、第1曝気工程S2の曝気を経た第1液L1が供給され、貯留される。第2に、沈殿槽30に貯留されている第1液L1が、静置される。これにより、第1液L1中のフロックが沈殿物SL3として沈殿槽30の底部に沈殿し、第1液L1が上澄水W3と沈殿物SL3とに分離される。
【0031】
沈殿物SL3中には、好気性の微生物が含まれている。また、沈殿物SL3中には、UAP及びBAPが含まれている。
【0032】
第2曝気工程S4においては、第1に、培養タンク40(タンク本体41)に、上澄水W3及び沈殿物SL3を含む第2液L2が供給され、貯留される。第2に、第2液L2が培養タンク40に貯留された状態で空気供給部42が駆動されることにより、培養タンク40の内部に空気が供給される。より具体的には、ポンプ44を駆動することにより、散気管43を介して培養タンク40の内部に空気が供給される。
【0033】
これにより、第2液L2の培養が行われる。すなわち、第2液L2中のBAP及びUAPを分解可能な微生物(具体的には、そのBAP及びUAPを発生させた微生物)が、第2液L2中のBAP及びUAPを分解するとともに、活性化される。
【0034】
第2曝気工程S4においては、第2液L2に対して微生物製剤が追加されない。第2曝気工程S4においては、第2液L2に対して栄養剤が追加されてもよい。この栄養剤は、例えば、汚泥SL1であってもよい。
【0035】
供給工程S5においては、培養タンク40で培養された第2液L2が、活性汚泥SL2として、曝気槽20に供給される。好ましくは、培養タンク40で培養された第2液L2の一部のみが、活性汚泥SL2として曝気槽20に供給される。第2曝気工程S4及び供給工程S5は、上澄水W3及び沈殿物SL3を培養タンク40に補充した上で、繰り返し行われる。水位センサ45により検知される第2液L2の水位が所定未満となったときに制御装置50がポンプ46の動作を停止することにより、培養タンク40で培養された第2液の一部のみが曝気槽20に供給されることになる。
【0036】
<第2曝気工程S4の詳細>
第2曝気工程S4は、第1工程S41と、第2工程S42と、第3工程S43とを有している。第1工程S41においては、供給工程S5が行われた後の第2液L2の残部に対して、曝気が行われる。第2工程S42においては、第2液L2の残部に対して上澄水W3を追加した上で、曝気が行われる。第3工程S43においては、第2液L2の残部に対して沈殿物SL3を追加した上で、曝気が行われる。
【0037】
第2工程S42及び第3工程S43は、第1工程S41の後に行われる。第3工程S43は、第2工程S42の後に行われる。第3工程S43は、第2工程S42と同時に行われてもよい。すなわち、第2液L2の残部に対して上澄水W3及び沈殿物SL3の双方を追加した上で、曝気が行われてもよい。
【0038】
第2工程S42において追加される上澄水W3の体積をVW3とし、第3工程S43において追加される沈殿物SL3の体積をVSL3とする。VW3をVSL3で除した値は、第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するにしたがって減少されることが好ましい。
【0039】
W3をVSL3で除した値は、第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するごとに減少されてもよく、第2曝気工程S4の繰り返し回数が2回以上の所定回数増加するごとに減少されてもよい。第2曝気工程S4の繰り返し回数が所定回数に達した後は、第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するにしたがってVW3をVSL3で除した値が減少されなくてもよい(一定とされてもよい)。
【0040】
第1工程S41が行われる時間をTS41とし、第2工程S42が行われる時間をTS42とし、第3工程S43が行われる時間をTS43とする。TS41、TS42及びTS43は、第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するにしたがって減少されることが好ましい。
【0041】
S41、TS42及びTS43は、第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するごとに減少されてもよく、第2曝気工程S4の繰り返し回数が2回以上の所定回数増加するごとに減少されてもよい。第2曝気工程S4の繰り返し回数が所定回数に達した後は、第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するにしたがってTS41、TS42及びTS43が減少されなくてもよい(一定とされてもよい)。
【0042】
第1工程S41において培養タンク40(タンク本体41)の内部に供給される空気量をVair1とする。また、第2工程S42において培養タンク40の内部に供給される空気量を、Vair2とする。さらに、第3工程S43において培養タンク40の内部に供給される空気量を、Vair3とする。
【0043】
air1、Vair2及びVair3は、一定範囲内に維持されている。Vair1、Vair2及びVair3に変動があっても、上限値及び下限値が所定の範囲内(例えば、制御目標値の±10パーセントの範囲内)に収まっているときは、Vair1、Vair2及びVair3が一定範囲に維持されていることになる。
【0044】
(第1実施形態に係る汚水処理方法の効果)
以下に、第1実施形態に係る汚水処理方法の効果を説明する。
【0045】
一般的な活性汚泥法では、沈殿槽30の沈殿物がそのまま活性汚泥SL2として曝気槽20に戻される。他方で、第1実施形態に係る汚水処理方法では、沈殿槽30の沈殿物が第2曝気工程S4において培養された上で曝気槽20に戻されることになる。そのため、第1実施形態に係る汚水処理方法によると、一般的な活性汚泥法と比較して、汚水処理能力が改善されている。
【0046】
一般的な活性汚泥法では、沈殿槽30の沈殿物がそのまま活性汚泥SL2として曝気槽20に戻される。BAP及びUAPも汚水中の有機物とともに汚泥化されることになるため、一般的な活性汚泥法では、余剰汚泥が大量に発生する。また、曝気槽20にBAP及びUAPが戻される結果、汚泥の沈降性が低下する。
【0047】
本発明者が見出した知見によると、汚泥中のBAP及びUAPは、そのBAP及びUAPを発生させた微生物によってのみ分解されることになるため、第1実施形態に係る汚水処理方法では、第2曝気工程S4において第2液L2が曝気される際に、第2液L2中のBAP及びUAPを分解可能な微生物に選択圧が加わる。
【0048】
また、第1実施形態に係る汚水処理方法では、第2曝気工程S4における曝気が第2液L2に上澄水W3が加えられた状態で行われるため、第2液L2中の酸素環境が改善されている。そのため、第2曝気工程S4が行われている間に、第2液L2中のBAP及びUAPを分解可能な微生物が、優先的に増殖・進化されることになる。
【0049】
その結果、第1実施形態に係る汚水処理方法によると、BAP及びUAPを分解可能な微生物を多く含む活性汚泥SL2が曝気槽20に戻されることになり、BAP及びUAPに起因した余剰汚泥の発生及び沈降性悪化が抑制される。
【0050】
第2液L2に微生物製剤が追加される場合、環境負荷が増大される(例えば、微生物製剤に含まれる微生物種により、汚水処理方法が実施されている場所の生態系が破壊されるおそれがある)。他方で、第1実施形態に係る汚水処理方法においては、第2液L2に微生物製剤が追加されないため、環境負荷の増大が抑制される。
【0051】
なお、本発明者らが見出した知見によると、微生物製剤の追加によりUAP及びBAPを分解可能な微生物に対する選択圧が低下するため、UAP及びBAPを分解可能な微生物の優先的な増殖・進化が抑制されることになる。
【0052】
第1実施形態に係る汚水処理方法において、第2曝気工程S4を経た第2液L2の一部のみが活性汚泥SL2として曝気槽20に戻されるとともに、上澄水W3及び沈殿物SL3を追加した上で第2曝気工程S4が繰り返し行われる場合、曝気槽20に戻されなかった第2液L2の残部が種菌として作用するため、第2曝気工程S4でのUAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化を円滑に行うことができる。
【0053】
第1工程S41では、UAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化が進む。第2工程S42では、上澄水W3が追加された上で曝気が行われるため、酸素環境が改善され、UAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化がさらに進む。第3工程S43では、沈殿物SL3が追加されるため、UAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化が進んだ状態で第2液L2にUAP及びBAPが供給されることになる。
【0054】
そのため、第2曝気工程S4が第1工程S41、第2工程S42及び第3工程S43を有している場合、UAP及びBAPを分解可能な微生物に対する選択圧が大きくなり、第2曝気工程S4でのUAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化をより円滑に行うことができる。
【0055】
第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するにしたがってUAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化が進むため、VW3をVSL3で除した値を小さくしても(すなわち、培養タンク40に貯留されている第2液L2中における酸素環境を悪化させても)、UAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化を進めることができる。そして、VW3をVSL3で除した値が小さくされる(すなわち、第2液L2に供給されるUAP及びBAPの量及び濃度が増加される)結果、第2液L2中のUAP及びBAPを分解可能な微生物に対する選択圧がさらに高くなる。
【0056】
第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するにしたがってUAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化が進むため、TS41、TS42及びTS43を減少させても、UAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化を進めることができる。その結果、単位時間あたりに培養タンク40から供給可能な活性汚泥SL2の量を増加させることができる。
【0057】
第1工程S41、第2工程S42及び第3工程S43の順に第2曝気工程S4が進行するにしたがって、培養タンク40の容積に対する第2液L2の体積の比率が増加することになる。Vair1、Vair2及びVair3が一定範囲内に維持されている場合、第1工程S41、第2工程S42及び第3工程S43の順に第2曝気工程S4が進行するにしたがって、第2液L2の体積あたりの空気の供給量が減少される。その結果、第2液L2中のUAP及びBAPを分解可能な微生物に対する選択圧がさらに高くなる。
【0058】
第2曝気工程S4において第2液L2に汚泥SL1等の栄養剤が追加される場合、その栄養剤中の有機物が第2液L2中の微生物の栄養源となるため、第2液L2中の微生物の活性化をさらに進めることができる。
【0059】
<実験例>
以下に、第1実施形態に係る汚水処理方法の効果を確認するために行った汚水処理実験を説明する。
【0060】
図3は、汚水処理能力と実験開始後の経過月数との関係を示すグラフである。図3中において、汚水処理能力は、BOD(Biochemical Oxygen Demand)負荷容量により評価されている。BOD負荷容量の値が高いほど、汚水処理能力が高いことになる。図3に示されるように、第1実施形態に係る汚水処理方法にしたがって汚水の処理を行った場合、BOD負荷容量は、1.8kg/m以上3.8kg/mの範囲内になり、BOD負荷容量の平均値は、2.7kg/mであった。
【0061】
他方で、一般的な活性汚泥法にしたがって汚水の処理を行った場合におけるBOD容量は、0.5kg/mから1.0kg/m程度である。この比較から、第1実施形態に係る汚水処理方法は、一般的な活性汚泥法と比較して、3倍程度の汚水処理能力がある。
【0062】
図4は、汚泥沈降性と実験開始後の経過月数との関係を示すグラフである。図4中において、汚泥沈降性は、SVI(Sludge Volume Index)により評価されている。SVIの値が小さいほど、汚泥沈降性がよいことになる。図4に示されるように、第1実施形態に係る汚水処理方法にしたがって汚水の処理を行った場合、40か月の実験期間のうちの19か月の間、SVIの値が、連続して100(良好と考えられているSVIの値)未満となっていた。また、この場合、40か月の実験期間のうちの39か月の間、SVIの値が、連続して200(不良と考えられているSVIの値)未満となっていた。
【0063】
他方で、一般的な活性汚泥法にしたがって汚水の処理を行った場合、4か月以上連続してSVIの値が100未満となることはなかった。また、この場合、連続してSVIの値が200未満となる期間は、最大で18か月であった。
【0064】
図5は、余剰汚泥量と実験開始からの経過月数との関係を示すグラフである。図5中において、余剰汚泥量は、COD(Chemical Oxygen Demand)単位汚泥量により評価されている。COD単位汚泥量は、汚泥の重量を汚水中に含まれる有機物の重量で除した値である。COD単位汚泥量の値が低いほど、余剰汚泥の量が少ないことになる。図5に示されるように、第1実施形態に係る汚水処理方法にしたがって汚水の処理を行った場合、COD単位汚泥量の平均値は、6.2であった。
【0065】
他方で、一般的な活性汚泥法にしたがって汚水の処理を行った場合、COD単位汚泥量の平均値は、11.5であった。この比較から、第1実施形態に係る汚水処理方法によると、一般的な活性汚泥法と比較して、余剰汚泥が約40パーセント減容されていた。
【0066】
以上の汚水処理実験の結果から、第1実施形態に係る汚水処理方法によると汚水処理能力の改善、汚泥沈降性の改善及び余剰汚泥の低減が可能であることが、実験的にも明らかにされた。
【0067】
(第2実施形態に係る汚水処理システム)
第2実施形態に係る汚水処理システムの構成は、第1汚水処理システムの構成と共通している。そのため、ここでは、第2実施形態に係る汚水処理システムの構成に関する説明を省略する。
【0068】
(第2実施形態に係る汚水処理方法)
以下に、第2実施形態に係る汚水処理方法を説明する。ここでは、第1実施形態に係る汚水処理方法と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0069】
図6は、第2実施形態に係る汚水処理方法を示す工程図である。第2実施形態に係る汚水処理方法は、図6に示されるように、前処理工程S1と、第1曝気工程S2と、分離工程S3と、第2曝気工程S4と、供給工程S5とを有している。この点に関して、第2実施形態に係る汚水処理方法は、第1実施形態に係る汚水処理方法と共通している。しかしながら、第2実施形態に係る汚水処理方法は、第2曝気工程S4の詳細に関して、第1実施形態に係る汚水処理方法と異なっている。
【0070】
より具体的には、第2実施形態に係る汚水処理方法の第2曝気工程S4は、第1工程S41、第2工程S42及び第3工程S43に分割されていない。第2実施形態に係る汚水処理方法の第2曝気工程S4は、第2曝気工程S4が行われている間に上澄水W3及び沈殿物SL3が連続的に追加されながら、繰り返される。
【0071】
第2曝気工程S4において追加される単位時間あたりの上澄水W3の体積を、QW3とする。また、第2曝気工程S4において追加される単位時間当たりの沈殿物SL3の体積を、QSL3とする。QW3をQSL3で除した値は、第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するにしたがって減少されることが好ましい。
【0072】
W3をQSL3で除した値は、第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するごとに減少されてもよく、第2曝気工程S4の繰り返し回数が2回以上の所定回数増加するごとに減少されてもよい。第2曝気工程S4の繰り返し回数が所定回数に達した後は、第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するにしたがってQW3をQSL3で除した値が減少されなくてもよい(一定とされてもよい)。
【0073】
第2曝気工程S4が行われる時間を、TS4とする。TS4は、第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するにしたがって減少されることが好ましい。TS4は、第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するごとに減少されてもよく、第2曝気工程S4の繰り返し回数が2回以上の所定回数増加するごとに減少されてもよい。第2曝気工程S4の繰り返し回数が所定回数に達した後は、第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するにしたがってTS4が減少されなくてもよい(一定とされてもよい)。
【0074】
(第2実施形態に係る汚水処理方法の効果)
以下に、第2実施形態に係る汚水処理方法の効果を説明する。ここでは、第1実施形態に係る汚水処理方法の効果と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0075】
第2実施形態に係る汚水処理方法は、第1実施形態に係る汚水処理方法と同様に、第2曝気工程S4及び供給工程S5を有している。そのため、第2実施形態に係る汚水処理方法も、第1実施形態に係る汚水処理方法と同様に、環境負荷を増大させることなく、汚水処理能力の改善、汚泥沈降性の改善及び余剰汚泥の低減が可能である。
【0076】
第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するにしたがってUAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化が進むため、QW3をQSL3で除した値を小さくしても(すなわち、培養タンク40に貯留されている第2液L2中における酸素環境を悪化させても)、UAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化を進めることができる。そして、QW3をQSL3で除した値が小さくされる(すなわち、第2液L2に供給されるUAP及びBAPの量及び濃度が増加される)結果、第2液L2中のUAP及びBAPを分解可能な微生物に対する選択圧がさらに高くなる。
【0077】
第2曝気工程S4の繰り返し回数が増加するにしたがってUAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化が進むため、TS4を減少させても、UAP及びBAPを分解可能な微生物の活性化を進めることができる。その結果、単位時間あたりに培養タンク40から供給可能な活性汚泥SL2の量を増加させることができる。
【0078】
上記のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
上記の各実施形態は、有機物を含む排水の処理に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0080】
10 前処理槽、20 曝気槽、21 槽本体、22 空気供給部、23 散気管、24 ポンプ、30 沈殿槽、40 培養タンク、41 タンク本体、42 空気供給部、43 散気管、44 ポンプ、45 水位センサ、50 制御装置、L1 第1液、L2 第2液、S1 前処理工程、S2 第1曝気工程、S3 分離工程、S4 第2曝気工程、S5 供給工程、S41 第1工程、S42 第2工程、S43 第3工程、SL1 汚泥、SL2 活性汚泥、SL3 沈殿物、W1 汚水、W2 前処理後汚水、W3 上澄水。
図1
図2
図3
図4
図5
図6