(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】移動ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B25J5/00 A
(21)【出願番号】P 2019127470
(22)【出願日】2019-07-09
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】清澤 勇貴
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106965150(CN,A)
【文献】特開2016-120561(JP,A)
【文献】特開平11-58271(JP,A)
【文献】特開2010-221355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を備えた移動架台と、
前記移動架台により支持されるベース及び前記ベースに取り付けられたアームを有するマニピュレーターと、
前記ベースと前記移動架台との間に配置されるスペーサーと、を備え、
前記ベースは、前記スペーサーを介して前記移動架台により支持され、
前記スペーサーは、前記移動架台に支持される第1表面と、前記ベースが取り付けられるベース取付面をなす第2表面と、前記第1表面及び前記第2表面がなす角を調整する調整機構を有し、
前記第2表面は、前記移動架台が移動するべき移動面に対して傾斜し
、
前記移動架台は、前記車輪が取り付けられた底面と、前記底面に対向する天面とを有するとともに、前記天面に設けられた作業板を有し、
前記ベース取付面は前記作業板に対して傾斜していることを特徴とする移動ロボット。
【請求項2】
前記移動面は水平面である、請求項
1に記載の移動ロボット。
【請求項3】
前記調整機構は、調整アクチュエーターを備え、前記調整アクチュエーターが駆動することにより前記第1表面及び前記第2表面がなす角を調整することを特徴とする請求項1
または2に記載の移動ロボット。
【請求項4】
前記調整機構は、固定部材と可動部材とを備え、
前記固定部材が前記第1表面を有し、
前記可動部材が前記第2表面を有し、
前記調整アクチュエーターは前記固定部材と前記可動部材との間に取り付けられ、
前記調整アクチュエーターが駆動することで、前記可動部材が前記固定部材に対して変位することを特徴とする請求項
3に記載の移動ロボット。
【請求項5】
車輪を備えた移動架台と、
前記移動架台により支持されるベース及び前記ベースに取り付けられたアームを有するマニピュレーターと、を備え、
前記移動架台は、前記車輪が取り付けられた底面と、前記底面と反対の天面と、前記天面に設けられた作業板と、前記作業板に対して凹んだ凹部と、を有し、
前記ベースが取り付けられるベース取付面は、
前記凹部に設けられ、
前記移動架台が移動するべき移動面に対して傾斜していて、
前記作業板に対して傾斜していることを特徴とする移動ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ロボットアームと、ロボットアームが載置され、ロボットアームが作業台上を往復するように移動する台車とを備える製造システムにおいて、ベース座標系における鉛直方向の座標軸を回転軸として台車が回転する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マニピュレーターによる作動空間はベースを基準に定まるため、ベース座標系における1つの座標軸が移動架台の鉛直方向に設定されると、環境によっては対象物に対する作業が困難な場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様は、車輪を備えた移動架台と、前記移動架台により支持されるベース及び前記ベースに取り付けられたアームを有するマニピュレーターと、を備え、前記ベースが取り付けられるベース取付面は、前記移動架台が移動するべき移動面に対して傾斜していることを特徴とする移動ロボットである。
【0006】
第2態様は、第1態様において、前記移動架台が、前記車輪が取り付けられた底面と、前記底面に対向する天面とを有するとともに、前記天面に設けられた作業板を備え、前記ベース取付面は前記作業板に対して傾斜していることである。
【0007】
第3態様は、第1又は第2態様において、前記移動面が水平面であることである。
【0008】
第4態様は、第1から第3態様のいずれかにおいて、前記ベースと前記移動架台との間に配置されるスペーサーを更に備え、前記ベースが、前記スペーサーを介して前記移動架台により支持されることを特徴とする。
【0009】
第5態様は、第4態様において、前記スペーサーが、前記移動架台に支持される第1表面と、前記ベース取付面をなす第2表面とを有することを特徴とする。
【0010】
第6態様は、第5態様において、前記スペーサーが、前記第1表面及び前記第2表面がなす角を調整する調整機構を有することを特徴とする。
【0011】
第7態様は、第6態様において、前記調整機構が、調整アクチュエーターを備え、前記調整アクチュエーターが駆動することにより前記第1表面及び前記第2表面がなす角を調整することを特徴とする。
【0012】
第8態様は、第7態様において、前記調整機構が、固定部材と可動部材とを備え、前記固定部材が前記第1表面を有し、前記可動部材が前記第2表面を有し、前記調整アクチュエーターが前記固定部材と前記可動部材との間に取り付けられ、前記調整アクチュエーターが駆動することで、前記可動部材が前記固定部材に対して変位することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る移動ロボットを説明する側面図。
【
図2】第1実施形態に係る移動ロボットを説明するブロック図。
【
図4】第1実施形態に係る移動ロボットの作動空間を説明する側面図。
【
図5】第1実施形態の第1変形例に係る移動ロボットを説明する側面図。
【
図6】第1実施形態の第2変形例に係る移動ロボットを説明する側面図。
【
図7】第1実施形態の第3変形例に係る移動ロボットを説明する側面図。
【
図8】第2実施形態に係る移動ロボットを説明する側面図。
【
図9】第2実施形態に係る調節機構を説明する側面図。
【
図10】第2実施形態の第1変形例に係る調節機構を説明する側面図。
【
図11】第2実施形態の第2変形例に係る調節機構を説明する側面図。
【
図12】第2実施形態の第3変形例に係る調節機構を説明する側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図面においては、同一又は類似の要素には同一又は類似の符号をそれぞれ付して、重複する説明を省略する。
【0015】
第1実施形態
図1に示すように、第1実施形態に係る移動ロボット1は、移動架台10と、移動架台10により支持されるベース21を有するマニピュレーター20とを備える。
図1に示す例において、移動ロボット1は、ベース21と移動架台10との間に配置されるスペーサー30を備える。ベース21は、スペーサー30を介して移動架台10により支持される。移動ロボット1は、例えば、工場や倉庫等の建物において移動し、マニピュレーター20を用いて対象物を取り扱う。このため、移動ロボット1は、マニピュレーター20により支持され、対象物に対して種々の作業を行うエンドエフェクター29を備える。エンドエフェクター29は、例えば、グリッパー、スクリュードライバー、グラインダー等のツールである。
【0016】
移動架台10は、移動面SP上を移動する。移動面SPは、移動ロボット1が配置される平面または水平面であり、例えば床面である。移動架台10は、例えば、予め移動面SP上に設定された経路に沿って走行する無人搬送車(AGV)であってもよく、任意の方向に自律的に移動する自律移動ロボット(AMR)であってもよい。移動架台10は、例えば、対象物を載置し作業を行うことが可能である作業板を有する本体11と、本体11を支持する複数の車輪12とを備える。即ち、移動ロボット1は車輪移動ロボットであり得る。その他、移動ロボット1は、脚移動ロボット、直交ロボット等であってもよく、レールに沿って移動してもよい。複数の車輪12は、本体11の底面112に取り付けられている。なお、車輪12は、タイヤのような、軸に取り付けられた円形の部品でもよく、鋼板を帯状につなぎ前後の車輪を取り巻くように取り付けたキャタピラであっても良い。
【0017】
図1においてX
0-Y
0-Z
0により示される3次元直交座標系は、移動面SPを有する環境に対して設定されるワールド座標系である。X
p-Y
p-Z
pにより示される3次元直交座標系は、移動架台10の本体11に対して設定される移動架台座標系である。
図1に示す例において、移動架台座標系は、X
p-Y
p平面が、本体11の天面111に対して平行になるように設定される。天面111は、移動架台10が位置する領域の移動面SPに対して平行である。この場合、移動面SPは、移動架台座標系のX
p-Y
p平面に平行である。なお、天面111と底面112とは、本体11において対向している。
【0018】
マニピュレーター20は、アーム22とベース21とを有する。アーム22は、例えば、複数の相互連結されたリンク及びジョイントを有することにより、複数の自由度で運動するロボティックアームである。アーム22は、例えば、6つの回転ジョイントを有する6軸アームである。ベース21は、アーム22の第1リンク、即ち最も移動架台10側に位置するリンクの原点を設定する。ベース21は、スペーサー30との接合面であるベース取付面SBにおいてスペーサー30により支持される。ベース取付面SBは、移動架台10が移動するべき移動面SPに対して傾斜する。
【0019】
スペーサー30は、例えば、本体11の天面111において移動架台10により支持される。スペーサー30は、移動架台10と対向する第1表面31と、ベース取付面SBをなす第2表面32とを有する。即ち、移動面SP及びベース取付面SBがなす角は、第1表面31及び第2表面32がなす角により定義される。スペーサー30は、例えば、第1表面31及び第2表面32が隣接する2つの側面をなす角柱形状を有する。
【0020】
図1においてX
1-Y
1-Z
1により示される3次元直交座標系は、ベース取付面SBに対して設定されるベース座標系である。ベース座標系は、Z
1軸がベース取付面SBに直交するように設定される。即ち、X
p-Y
p平面及びX
1-Y
1平面がなす角は、第1表面31及び第2表面32がなす角により定義される。
【0021】
図2に示すように、移動ロボット1は、制御装置40により制御される。制御装置40は、コンピューターシステムを構成する処理回路41及び記憶装置42を備える。制御装置40は、例えば様々な汎用のコンピューターにより構成可能である。処理回路41は、制御プログラムに応じた指令を実行することにより移動ロボット1を制御する。処理回路41は、例えば中央演算処理装置(CPU)である。記憶装置42は、移動ロボット1の制御に必要な制御プログラムや各種データ等を記憶する、コンピューターにより読み取り可能な記憶媒体である。記憶装置42は、例えば半導体メモリーである。制御装置40の構成要素の一部又は全部は、移動ロボット1の筐体の内側に配置されてもよい。
【0022】
移動架台10は、センサー部13と、第1制御回路15と、第1移動アクチュエーター16-1及び第2移動アクチュエーター16-2とを備える。センサー部13は、例えば、移動架台10の内部の状態を計測する内界センサー131と、移動架台10の環境に関する状態を計測する外界センサー132とを有する。内界センサー131は、例えば、回転運動する第1移動アクチュエーター16-1及び第2移動アクチュエーター16-2の回転角を計測するエンコーダー、本体11の速度や角速度を計測する慣性センサー等である。外界センサー132は、例えば、画像センサー、距離センサー等である。以下、第1移動アクチュエーター16-1及び第2移動アクチュエーター16-2を単に「移動アクチュエーター」と称することもある。
【0023】
第1制御回路15は、プロセッサー及びメモリーを備えるコンピューターシステムと、各種周辺回路とを備える。第1制御回路15は、センサー部13の出力及び制御装置40による制御に応じて、第1移動アクチュエーター16-1及び第2移動アクチュエーター16-2を駆動する。
【0024】
第1移動アクチュエーター16-1及び第2移動アクチュエーター16-2は、例えば、1本の軸の周りに回転するように配置された一対の車輪12をそれぞれ駆動するモーターである。この場合、第1移動アクチュエーター16-1及び第2移動アクチュエーター16-2は、互いに同一の方向及び速度で一対の車輪12を回転させることにより、本体11を一方向、例えばX軸方向に移動させる。また、第1移動アクチュエーター16-1及び第2移動アクチュエーター16-2は、一対の車輪12の回転方向及び回転速度のバランスを調整することにより、本体11のXp-Yp平面における配向、即ちZp軸周りの旋回角を変更する。移動アクチュエーターの構成は、上記の構成に限るものでなく、例えば、操舵角を変更するアクチュエーターを更に備えてもよく、3以上のアクチュエーターを備えるようにしてもよい。
【0025】
マニピュレーター20は、第1アクチュエーター26-1、第2アクチュエーター26-2、……、第nアクチュエーター26-nと、第2制御回路25とを備える。以下において、第1アクチュエーター26-1、第2アクチュエーター26-2、……、第nアクチュエーター26-nを単に「複数のアクチュエーター26」という。即ち、nは2以上の整数である。マニピュレーター20の複数のジョイントが複数のアクチュエーター26により駆動されることにより、マニピュレーター20のポーズが決定される。
【0026】
第2制御回路25は、プロセッサー及びメモリーを備えるコンピューターシステムと、各種周辺回路とを備える。第2制御回路25は、図示しない複数のエンコーダーにより計測される複数のアクチュエーター26の各回転角と、制御装置40による制御とに応じて、複数のアクチュエーター26及びエンドエフェクター29を駆動する。
【0027】
図3に示すように、スペーサー30を備えない移動ロボット1pは、例えば、移動架台10と、移動架台10の天面111により支持されるベース21を有するマニピュレーター20とを備える。移動ロボット1pのベース取付面は、移動面SPに対して平行である。即ち、移動面SPがX
0-Y
0平面に平行であれば、Z
0軸、Z
p軸及びZ
1軸は互いに平行である。
【0028】
例えば、移動ロボット1pのマニピュレーター20、詳細にはエンドエフェクター29による作業の目標空間PTが、天面111近傍の空間、即ち天面111から上方に所定距離までの空間であるとする。このとき、移動ロボット1pのマニピュレーター20の作動空間PWが、目標空間PTの上部と重なる。作動空間PWは、例えば、ベース座標系において、マニピュレーター20の先端に設定された基準点によって掃引され得る空間である。作動空間PWは、目標空間PTの下部と重ならないため、目標空間PTの下部におけるマニピュレーター20による作業ができないことが理解される。
【0029】
一方、
図4に示すように、移動ロボット1は、スペーサー30を備えることにより、ベース取付面SBが移動面SPに対して傾斜する。即ち、Z
1軸が、Z
0軸及びZ
p軸に対して傾斜する。これにより、
図3に示す場合と比べて、作動空間PWが目標空間PTと重なる量が増加し、マニピュレーター20による作業が可能な空間が増加する。
【0030】
一般に、マニピュレーターの作動空間は、マニピュレーターの機械的構造により決定され、ベースに対して固定される。このため、目標空間の相対位置によっては、移動架台上に搭載されたマニピュレーターによる作業が困難な場合がある。これに対して、移動ロボット1は、ベース取付面SBが移動面SPに対して傾斜するため、マニピュレーター20の作動空間PWを移動架台10に対して変位させることができる。よって、作動空間PWが目標空間PTと重なる量を増加することが可能となり、マニピュレーター20の汎用性を向上できる。
【0031】
また一般に、マニピュレーターの作動空間は、ベース近傍を除く領域に固定される場合がある。即ち、ベース近傍における作業が困難な場合がある。一方、移動ロボット1では、例えば対象物を載置するなど、本体11の天面111を作動空間PWの一部として使用することが可能である。
図4に示す例において、ベース取付面SBは、スペーサー30がない場合と比べて、作動空間PWを移動架台10の天面111に近づけるように、移動面SPに対して傾斜する。これにより、マニピュレーター20の作動空間PWを移動架台10に対して変位させることができ、移動ロボット1の汎用性を向上することができる。
【0032】
第1変形例
図5に示すように、第1実施形態の第1変形例に係る移動ロボット1aは、移動架台10aが、天面111において開口する凹部110を有する本体11aを備える点等で上述の第1実施形態と異なる。以下の変形例において説明しない構成、作用及び効果は、既述の実施形態と同様であり、重複するため省略する。
【0033】
移動ロボット1aのスペーサー30は、凹部110の底面に支持される第1表面31と、ベース取付面SBをなす第2表面32とを有する。このため、第1表面31は、天面111を基準とするレベルにおいて下方、即ち-Zp方向に位置する。凹部110の形状は、マニピュレーター20の取り得る経路に重ならないように決定される。このような構成により、マニピュレーター20の作動空間PWを、上述の第1実施形態と比べて更に下方に変位させることができる。
【0034】
第2変形例
図6に示すように、第1実施形態の第2変形例に係る移動ロボット1bは、スペーサー30より高い高さを有するスペーサー30bを備える点で上述の第1実施形態と異なる。例えば、スペーサー30bは、互いに平行な上面及び下面を有するベーススペーサー301と、ベーススペーサー301の上面に支持される取付スペーサー302とを有する。
【0035】
ベーススペーサー301は、移動架台10の天面111により支持される第1表面31を下面として有する。取付スペーサー302は、ベーススペーサー301の上面に支持される下面と、ベース取付面SBをなす第2表面32を有する。取付スペーサー302は、上述の第1実施形態におけるスペーサー30と同等の構造を有し得る。即ち、ベース取付面SBは、移動面SPに対して傾斜する。このような構成により、上述の第1実施形態と比べてマニピュレーター20の作動空間PWを上方に変位させることができる。
【0036】
第3変形例
図7に示すように、第1実施形態の第3変形例に係る移動ロボット1cは、ベース取付面SBが移動面SPに直交する点で上述の第1実施形態と異なる。即ち、ベース取付面SBと移動面SPとのなす傾斜角は90°を含み得る。移動ロボット1cのスペーサー30cは、移動架台10の天面111により支持される第1表面31と、第1表面31に直交してベース取付面SBをなす第2表面32とを有する。これにより、上述の第1実施形態と比べてマニピュレーター20の作動空間PWを更に変位させることができる。
【0037】
第4変形例
第1実施形態の第4変形例に係る移動ロボットは、移動架台の本体の天面の少なくとも一部が移動面に対して傾斜している点で上述の第1実施形態と異なる。このとき、天面がベース取付面を含むこととなる。そのため、ベースと本体との間にスペーサーを設けることなく、移動面に対してベース取付面を傾斜させることが可能となる。これにより、上述の第1実施形態と比べて移動ロボットの機構が簡略化され、製造が容易となる。また、上述の第1実施形態と比べて移動ロボットの小型化を図ることができる。
【0038】
第2実施形態
図8に示すように、第2実施形態に係る移動ロボット1dは、スペーサー30dが、第1表面31及び第2表面32がなす角を調整する調整機構35を有する点で第1実施形態と異なる。第2実施形態において説明しない構成、作用及び効果は第1実施形態と同様であるため省略する。
【0039】
調整機構35は、例えば、本体11に相対的に固定された固定部材351と、固定部材351に相対的に固定された回転軸Qの周りに回転する可動部材352とを備える。例えば、固定部材351は、天面111と対向する第1表面31を下面として有する。可動部材352は、ベース取付面SBをなす第2表面32を上面として有する。可動部材352は、回転軸Qを中心とする円の円弧状に設けられたスリット355を有する。可動部材352は、スリット355の内部に位置する、固定部材351に設けられたストッパー356により、可動範囲が規制される。或いは、ストッパー356をねじ締めすること等により可動部材352の傾斜角を固定してもよい。
【0040】
図9に示すように、調整機構35は、例えば、ウォームホイール353と、ウォームホイール353に噛み合うウォーム354とからなるウォームギヤを備える。可動部材352及びウォームホイール353は、互いに固定される。調整機構35は、ウォームホイール353の中心を通り、回転軸Qを定義する回転シャフト33を有する。回転シャフト33は、固定部材351に設けられた一対の軸受により支持される。ウォーム354は、例えば、ユーザーのハンドル34に対する操作に応じて回転する。これにより、第1表面31及び第2表面32がなす角が調整される。
【0041】
第1変形例
図10に示すように、第2実施形態の第1変形例に係る調整機構35aは、固定部材351aと、固定部材351aの端部に固定された回転軸Qの周りに回転する可動部材352aとを備える点等で上述の第2実施形態と異なる。例えば、固定部材351aは、
図10において図示しない天面111により支持される第1表面31を下面として有する。可動部材352aは、
図10において図示しないベース取付面SBをなす第2表面32を上面として有する。
【0042】
固定部材351aは、Zp軸方向から見た平面パターンにおける端部に設けられたヒンジ36を介して、可動部材352aに連結される。ヒンジ36は、回転軸Qを定義する。可動部材352aは、例えば固定部材351aの上面を開閉するように、回転軸Qの周りに回転し得る。可動部材352aは、例えば、図示しないリンク機構を介して、固定部材351a及び可動部材352aの間に設けられた動力シリンダー37により駆動される。動力シリンダー37は、例えば、図示しないハンドルに対する操作に応じて入力されるエネルギーを直線運動に変化する調整アクチュエーターである。動力シリンダー37は、例えば、電動シリンダー、油圧シリンダー、ガス圧シリンダー、水圧シリンダー等から選択され得る。このように、調整機構35aは、調整アクチュエーターの駆動により第1表面31及び第2表面32がなす角を調整する。調整アクチュエーターは、制御装置40により制御されてもよく、制御装置40とは異なる制御装置により制御されても良い。
【0043】
第2変形例
図11に示すように、第2実施形態の第2変形例に係る調整機構35bは、固定部材351bと、固定部材351bの上方において固定部材351bに対して相対的に固定された回転軸Qの周りに回転する可動部材352bとを備える点等で上述の第2実施形態と異なる。
【0044】
固定部材351bは、
図11において図示しない天面111により支持される第1表面31を下面として有する。可動部材352bは、
図11において図示しないベース取付面SBをなす第2表面32を上面として有する。固定部材351bは、例えば、回転軸Qを中心として有する円の円弧状に設けられた一対のガイドレール38を有する。可動部材352bは、ガイドレール38にガイドされることにより、回転軸Qの周りに回転する。可動部材352bは、ガイドレール38上の任意の位置に位置決めされた状態で、図示しない固定具により固定され得る。これにより、第1表面31及び第2表面32がなす角が調整される。調整機構35bは、アクチュエーターの駆動に応じて可動部材352bが変位することにより、第1表面31及び第2表面32がなす角を調整するようにしてもよい。
【0045】
第3変形例
図12に示すように、第2実施形態の第3変形例に係る調整機構35cは、ウォーム354がモーター39により回転される点で上述の第2実施形態と異なる。モーター39は、例えば制御装置40により駆動を制御されるアクチュエーターである。調整機構35cは、アクチュエーターの駆動により第1表面31及び第2表面32がなす角を調整する。
【0046】
他の実施形態
以上のように実施形態を説明したが、本発明はこれらの開示に限定されるものではない。各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成に置換されてよく、また、本発明の技術的範囲内において、各実施形態における任意の構成が省略されたり追加されたりしてもよい。このように、これらの開示から当業者には様々な代替の実施形態が明らかになる。
【0047】
例えば、上述の各実施形態において、制御装置40は省略されてもよい。即ち第1制御回路15及び第2制御回路25が直接的に通信することにより、移動架台10及びマニピュレーター20等の駆動を互いに制御するようにしてもよい。また、移動架台10及びマニピュレーター20は、必ずしも互いに関連付けて制御される必要はなく、独立して制御されてもよい。上述の実施形態において、マニピュレーター20がロボティックアームである例を説明したが、マニピュレーター20は、互いに連結され相対的に回転又は直進運動する一連の部材で構成された機械であればよい。即ち、マニピュレーター20の自由度は1であってもよい。センサー部13は、外界センサー132が省略された構成を有してもよい。調整機構35の可動部材352は、必ずしも回転軸Qの周りに回転する構成でなくてもよい。例えば、調整機構35は、複数自由度のリンク機構であってもよい。或いは、
図11に示す例において、ガイドレール38は、回転軸Qを中心とする円の円弧状と異なる他の形状を有してもよい。
【0048】
その他、上述の各構成を相互に応用した構成等、本発明は以上に記載しない様々な実施形態を含むことは勿論である。本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0049】
以下に、上述した実施形態から導き出される内容を、各態様として記載する。
【0050】
第1態様は、車輪を備えた移動架台と、前記移動架台により支持されるベース及び前記ベースに取り付けられたアームを有するマニピュレーターと、を備え、前記ベースが取り付けられるベース取付面は、前記移動架台が移動するべき移動面に対して傾斜していることを特徴とする移動ロボットである。第1態様によれば、マニピュレーターの作動空間を移動架台に対して変位させることができるため、移動ロボットの汎用性を向上できる。
【0051】
第2態様は、第1態様において、前記移動架台が、前記車輪が取り付けられた底面と、前記底面に対向する天面とを有するとともに、前記天面に設けられた作業板を備え、前記ベース取付面は前記作業板に対して傾斜していることである。第2態様によれば、作動空間を移動架台に対して変位させることができる。これにより、作業板を作業時の目標空間に設定することが可能となる。
【0052】
第3態様は、第1又は第2態様において、前記移動面が水平面であることである。第3態様によれば、水平面を移動する移動ロボットを実現することができる。
【0053】
第4態様は、第1から第3態様のいずれかにおいて、前記ベースと前記移動架台との間に配置されるスペーサーを更に備え、前記ベースが、前記スペーサーを介して前記移動架台により支持されることを特徴とする。第4態様によれば、移動ロボットがスペーサーを備えることにより、ベース取付面を移動面に対して簡単に傾斜させることができる。
【0054】
第5態様は、第4態様において、前記スペーサーが、前記移動架台に支持される第1表面と、前記ベース取付面をなす第2表面とを有することを特徴とする。第5態様によれば、ベース取付面を移動面に対して簡単に傾斜させるスペーサーを実現することができる。
【0055】
第6態様は、第5態様において、前記スペーサーが、前記第1表面及び前記第2表面がなす角を調整する調整機構を有することを特徴とする。第6態様によれば、移動面に対するベース取付面の傾斜角を調整することができる。
【0056】
第7態様は、第6態様において、前記調整機構が、調整アクチュエーターを備え、前記調整アクチュエーターが駆動することにより前記第1表面及び前記第2表面がなす角を調整することを特徴とする。第7態様によれば、移動面に対するベース取付面の傾斜角を簡単に調整することができる。
【0057】
第8態様は、第7態様において、前記調整機構が、固定部材と可動部材とを備え、前記固定部材が前記第1表面を有し、前記可動部材が前記第2表面を有し、前記調整アクチュエーターが前記固定部材と前記可動部材との間に取り付けられ、前記調整アクチュエーターが駆動することで、前記可動部材が前記固定部材に対して変位することを特徴とする。第8態様によれば、作動空間を移動架台に対して簡単に変位させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1a~1d,1p…移動ロボット、10,10a…移動架台、20…マニピュレーター、21…ベース、22…アーム、26…複数のアクチュエーター、30,30b,30c,30d…スペーサー、31…第1表面、32…第2表面、35,35a,35b,35c…調整機構、37…動力シリンダー、39…モーター。