(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】フックおよび吊り下げ具
(51)【国際特許分類】
A47F 5/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A47F5/00 D
(21)【出願番号】P 2020012100
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】田中 栄一
(72)【発明者】
【氏名】大森 正義
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-029646(JP,A)
【文献】登録実用新案第3161386(JP,U)
【文献】特開2001-061618(JP,A)
【文献】登録実用新案第3144964(JP,U)
【文献】登録実用新案第3162720(JP,U)
【文献】実開平07-001857(JP,U)
【文献】特開平07-008366(JP,A)
【文献】実開平05-028269(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔であるフック孔が形成された背面板の所定の位置に固定するとともに、被吊り下げ物に接触して直接支えるフックであって、
前記フックは、被吊り下げ物を支える支持部と、前記支持部に延設された第1板係合部と、前記第1板係合部と溝部を隔てて形成された第2板係合部と、前記第1板係合部の延伸方向と平行に延伸する第3板係合部と、を有し、
前記支持部の延伸方向を基準とするとき、前記第1板係合部および前記第2板係合部が、一方の側に向って延伸し、かつ前記第3板係合部が他方の側に向かって延伸しており、前記一方の側の前記第1板係合部および前記第2板係合部の互いに対向する縁と前記他方の側の前記第3板係合部の前記支持部側の縁が平行となる部分を有することによって、前記フックを前記背面板に嵌め込むことが可能であり、
前記フックは所定の厚みを持ち、前記支持部の延設方向に延伸し、板状体を貫通しない切込みである第1切込みと、当該第1切込みの延伸する方向と所定の傾きをもつ方向に延伸し、板状体を貫通する切込みを含む第2切込みを有する板状体からなり、
前記第1切込みから折り畳まれて板状体が互いに重ね合わせることにより形成されるものであり、
前記支持部の上端を前記支持部の延伸方向に延長した端部である終端と、前記第2板係合部の外縁上で前記終端から最も遠い点である前記第2板係合部の下端との距離が、前記フック孔の上下方向の長さと略同一であり、
前記第2切込みは、前記第3板係合部を囲む三方向の切込みのうち、前記第1切込みと略平行な切込み以外の2辺の切込みが前記第1切込みの延伸する方向と鈍角である所定の傾きをもつ方向に延伸している、フック。
【請求項2】
前記支持部から前記第1板係合部とは反対側の方向に、前記支持部の延伸する方向と傾いた方向に延伸する抑え部を備え、
当該抑え部は、前記第1切込みの延伸する方向から前記第2切込みの側に傾いた方向に延伸し、板状体を貫通する切込みを含む第3切込みにより分離されて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のフック。
【請求項3】
前記支持部の延伸する方向と、前記第1板係合部の延伸する方向とのなす角度は鈍角であることを特徴とする請求項2に記載のフック。
【請求項4】
前記支持部から前記第1板係合部とは反対側の方向に、前記支持部の延伸する方向と傾いた方向に延伸する抑え部を備え、
当該抑え部は、前記第1切込みの延伸する方向から前記第2切込みと反対の側に傾いた方向に延伸して形成されたものであることを特徴とする請求項1記載のフック。
【請求項5】
前記支持部の延伸する方向と、前記第1板係合部の延伸する方向とのなす角度は鋭角であることを特徴とする請求項4記載のフック。
【請求項6】
前記フックは紙製であることを特徴とする請求項1から請求項5いずれか一項に記載のフック。
【請求項7】
台形と長方形を上下に組み合わせた前記貫通孔が形成された前記背面板を有し、前記貫通孔を利用して、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のフックが固定されてなることを特徴とする吊り下げ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗などの陳列箇所において、商品等の被吊り下げ物を吊り下げるためのフックおよび吊り下げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品等の被吊り下げ物の上部に貫通孔である吊下用孔を形成しておき、陳列箇所に固定されたフックと呼ばれる長手方向を有する部材を吊下用孔に通すことにより、被吊り下げ物を吊り下げて陳列することが行われている。近年では、フックや、フックを用いた吊り下げ具についても、環境に配慮した製品が望まれている。
【0003】
このような要望に応えるため、背面板とフックが共に紙製であるものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のフックや吊り下げ具では、耐荷重性が十分でなく、被吊り下げ物の対象が一部に限定されてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、環境に配慮するとともに耐荷重性を高めたフック、および吊り下げ具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、
所定の位置に固定するとともに、被吊り下げ物に接触して直接支えるフックであって、
前記フックは、被吊り下げ物を支える支持部と、前記支持部に延設された第1板係合部と、前記第1板係合部と溝部を隔てて形成された第2板係合部と、前記第1板係合部の延伸方向と平行に延伸する第3板係合部と、を有することを特徴とするフックを提供する。
【0008】
また、本発明のフックは、
前記フックは所定の厚みを持ち、前記支持部の延設方向に延伸し、板状体を貫通しない切込みである第1切込みと、当該第1切込みの延伸する方向と所定の傾きをもつ方向に延伸し、板状体を貫通する切込みを含む第2切込みを有する板状体からなり、
前記第1切込みから折り畳まれて板状体が互いに重ね合わせることにより形成されるものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のフックは、
前記支持部から前記第1板係合部とは反対側の方向に、前記支持部の延伸する方向と傾いた方向に延伸する抑え部を備え、
当該抑え部は、前記第1切込みの延伸する方向から前記第1切込みの側に傾いた方向に延伸し、板状体を貫通する切込みを含む第3切込みにより分離されて形成されたものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のフックは、
前記支持部の延伸する方向と、前記第1板係合部の延伸する方向とのなす角度は鈍角であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のフックは、
前記支持部から前記第1板係合部とは反対側の方向に、前記支持部の延伸する方向と傾いた方向に延伸する抑え部を備え、
当該抑え部は、前記第1切込みの延伸する方向から前記第1切込みと反対の側に傾いた方向に延伸して形成されたものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のフックは、
前記支持部の延伸する方向と、前記第1板係合部の延伸する方向とのなす角度は鋭角であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のフックは、
前記フックは紙製であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明では、
台形と長方形を上下に組み合わせた貫通孔が形成された背面板を有し、前記貫通孔を利用して、前記フックが固定されてなることを特徴とする吊り下げ具を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環境に配慮するとともに耐荷重性を高めたフック、および吊り下げ具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明第1の実施形態に係るフックの側面図である。
【
図2】本発明第1の実施形態に係るフックを作成するための板材の展開図である。
【
図3】本発明第1の実施形態に係るフックの斜視図である。
【
図4】本発明第1の実施形態に係る背面板の平面図である。
【
図5】本発明第1の実施形態に係る吊り下げ具の斜視図である。
【
図6】本発明第2の実施形態に係るフックの側面図である。
【
図7】本発明第2の実施形態に係るフックを作成するための板材の展開図である。
【
図8】本発明第2の実施形態に係るフックの斜視図である。
【
図9】本発明第2の実施形態に係る背面板の平面図である。
【
図10】本発明第2の実施形態に係る吊り下げ具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
<1.第1の実施形態>
本発明第1の実施形態に係る吊り下げ具について説明する。本実施形態に係る吊り下げ具は、被吊り下げ物に接触して直接支えるフックと、このフックを支えるためにフックが挿入されるフック挿入孔を備えた背面板と、を備えている。まず、本発明第1の実施形態に係るフックについて説明する。
図1は、本発明第1の実施形態に係るフックの側面図である。
図1(a)(b)は、それぞれ異なる側面から見た側面図になっている。
図2は、フック1を作成するための板材の展開図である。
図3は、フック1の斜視図である。
図3(a)は
図2の第1切込みK1から山折りされた側を示しており、
図3(b)は、
図2の第1切込みK1に沿って谷折りされた側を示している。
【0019】
フック1は、
図2に示したようなフック板材1Aを第1切込みK1に沿って折り畳むことにより形成される。そのため、互いに対向する位置に同様の機能を果たす部分が存在する。
図2においては、支持部第1部分11aと支持部第2部分11b、第1板係合部第1部分12aと第1板係合部第2部分12b、第2板係合部第1部分13aと第2板係合部第2部分13b、溝部第1部分15aと溝部第2部分15b、がそれぞれ第1切込みK1に対称に形成されている。以降、説明の便宜上、これらの第1部分と第2部分を総称して呼ぶことがある。例えば、支持部第1部分11aと支持部第2部分11bを総称して支持部11と呼ぶことがある。
【0020】
図1に示すように、フック1は、被吊り下げ物を支える支持部11と、支持部11に延設された第1板係合部12と、第1板係合部12と溝部15を隔てて形成された第2板係合部13と、第2板係合部13の延伸方向と平行に延伸する第3板係合部14と、を有する。
【0021】
支持部11は、被吊り下げ物の荷重を受け、非吊り下げ物を支持する部分であり、所定の幅を有し、所定の方向に延伸している。
図1の例では、第1板係合部12から抑え部16を結ぶ方向(
図1における左右方向)に延伸している。第1板係合部12、第2板係合部13、第3板係合部14は、後述する背面板3に係合するための部分であり、第1板係合部12は、フック1の外縁が連続するようにして支持部11に延設されている。第2板係合部13は、第1板係合部12と溝部15を隔てて形成されている。第3板係合部14は、第1板係合部12の延伸方向と平行に延伸するように形成されている。支持部11の延伸方向(
図1の左右方向)を基準とすると、第1板係合部12、第2板係合部13が、下方に向って延伸しているのに対して、第3板係合部14は、上方に向かって延伸している。
【0022】
抑え部16は、フック1の先端から被吊り下げ物が脱落しないように形成された部分である。そのため、フック1を背面板3に固定した状態で、支持部11の側から他方の端部側に向かって、上方に向かうように傾斜している。支持部11の延伸方向(
図1の左右方向)を基準とすると、第1板係合部12、第2板係合部13が、下方に向って延伸しているのに対して、抑え部16は、上方に向かって延伸している。したがって、抑え部16は、支持部11から見て第1板係合部12とは反対側の方向に、支持部11の延伸する方向から傾いた方向に延伸している。すなわち、支持部11の延伸方向(
図1の左右方向)を基準とすると、抑え部16は、第3板係合部14と同様、上方に向かって延伸している。
【0023】
本実施形態に係るフック1は、連結部17を中心として板状の部材であるフック板材1Aを2つ折りにすることにより形成されている。支持部11、第1板係合部12、第2板係合部13は、折り畳まれることにより、元の部材の2倍の厚みを有している。
図1(a)(b)を比較するとわかるように、第3板係合部14と抑え部16は、2つ折りした一方の部材のみに形成されている。また、第3板係合部14と同形状の凹部18が、第3板係合部14が形成されている側と対向する側の部材に形成されている。
【0024】
本実施形態に係るフック1は、被吊り下げ物を支える支持部11が折り畳まれて形成されているので、部材として紙(厚紙)を用いた場合であっても、支持部11が元の部材の2倍の厚みとなって、耐荷重を向上させることができる。すなわち、比較的薄い部材を用いた場合であっても、耐荷重を向上させたフックを得ることが可能となる。また、支持部11の延伸方向(
図1の左右方向)を基準とすると、第1板係合部12、第2板係合部13が、下方に向って延伸しているのに対して、第3板係合部14は、上方に向かって延伸している。すなわち、支持部11の延伸方向を基準として、一方の側に2つの係合部、他方の側に1つの係合部が形成され、一方の側の2つの係合部の互いに対向する縁と、他方の側の1つの係合部の支持部11側の縁が平行となる部分を有しているので、背面板3に容易に嵌め込むことが可能となる。
【0025】
図1においては、支持部11の延伸方向が水平方向(
図1の左右方向)となるような状態で示しているが、フック1を背面板3に固定する際は、支持部11が背面板3から離れるにつれて上方に向かうように固定されることが好ましい。支持部11が背面板3から離れるにつれて上方に向かうように固定されることにより、被吊り下げ物がフック1の先端から外れることを抑止することができる。支持部11の背面板3から離れた側が上方を向いていることにより、抑え部16を設けない場合であっても、被吊り下げ物のずり落ちを抑止することができる。
【0026】
図1(a)において、一点鎖線で示す3本の直線は、それぞれ支持部11の延伸方向、第1板係合部12の延伸方向、抑え部16の延伸方向を示している。
図1(a)に示すように、これらの一点鎖線の交差する角度が、支持部11の延伸方向と第1板係合部12の延伸方向が内側(180°未満となる側)になす角度RA、支持部11の延伸方向と抑え部16の延伸方向が支持部11の連結部17側(
図1で180°未満となる側)になす角度RBを示している。
【0027】
支持部11の延伸方向と第1板係合部12の延伸方向のなす角度RAは、鈍角(90°<RA<180°)であることが好ましい。特に、角度RAは、90°<RA<120°であることが、より好ましい。本実施形態では、角度RA=100°としている。第1板係合部12の延伸方向とは、第1板係合部12の溝部15側の縁部の延伸方向である。第1板係合部12の溝部15側の縁部は、直線状になっている。この直線状の第1板係合部12の溝部15側の縁部は、後述するように、背面板3の面に平行に嵌め込まれる。このため、フック1を背面板3に固定した際、角度RAが鈍角であると、支持部11が、背面板3から離れるにつれて上方に向かうように固定されることになる。
【0028】
また、本実施形態では、第2板係合部13の延伸方向、第3板係合部14の延伸方向は、ともに第1板係合部12の延伸方向と同一方向である。すなわち、第1板係合部12の延伸方向、第2板係合部13の延伸方向、第3板係合部14の延伸方向は、互いに平行である。なお、第2板係合部13の延伸方向とは、第2板係合部13の溝部15側の縁部の延伸方向である。また、第3板係合部14の延伸方向とは、第3板係合部14の支持部11側(
図1(a)における右側、
図1(b)における左側)の縁部の延伸方向である。
【0029】
第2板係合部13の溝部15側の縁部、第3板係合部14の支持部11側の縁部は、いずれも直線状になっている。これらの縁部は、後述するように、背面板3の面に平行に嵌め込まれ、背面板3の背面側の面に接触する。すなわち、第1板係合部12の溝部15側の縁部、第2板係合部13の溝部15側の縁部、第3板係合部14の支持部11側の縁部が全て平行な直線状であることにより、背面板3へフック1をしっかりと固定することができる。
【0030】
本実施形態では、第1板係合部12の溝部15側の縁部、第2板係合部13の溝部15側の縁部、第3板係合部14の支持部11側の縁部は、全て直線状となっている。しかし、必ずしも全て直線状である必要はなく、各縁部が直線状の部分を含んでいればよい。
【0031】
支持部11の延伸方向と抑え部16の延伸方向のなす角度RBは、鈍角(90°<RB<180°)であることが好ましい。特に、角度RBは、130°<RB<170°であることが、より好ましい。本実施形態では、角度RB=140°としている。抑え部16の延伸方向とは、抑え部16の長手方向の中心線の延びる方向である。角度RBが180°より大きいと、支持部11の延伸方向よりも抑え部16の延伸方向が下方に向うことになり、被吊り下げ物の脱落を抑止することが困難となる。一方、角度RBが90°より小さいと、フック1の先端(抑え部16の先端)から被吊り下げ物を通すための手間がかかることになる。
【0032】
図2は、フック1を作成するための板材の展開図である。
図1に示したような本実施形態に係るフック1は、
図2に示したような形状の板状体であるフック板材を2つ折りすることにより形成される。
図2において、
図1と同一の箇所については、同一符号を付して説明を省略する。
図2に示すように、支持部第1部分11aと支持部第2部分11bの間には、直線状の第1切込みK1が形成されている。第1切込みK1は、フック板材1Aを貫通しない切込みである。第1切込みK1により、支持部第1部分11aと支持部第2部分11bに区分される。本実施形態では、フック板材1Aを4枚の紙を積層して貼り合わせた合紙としており、第1切込みK1は、4枚のうち3枚を貫通する切込みとしている。残りの1枚が切り込まれていないため、第1切込みK1の位置からフック板材1Aを2つ折りした場合に、残りの1枚が連結部17として2つに分離することを防ぐことになる。
【0033】
図2における支持部11の下方には、第2切込みK2が形成されている。第2切込みK2は、フック板材1Aを貫通する切込みである。第2切込みK2は、第3板係合部14を形成するための切込みである。第2切込みK2は、第3板係合部14の輪郭の一部を形成している。第2切込みK2は、第1切込みK1の延伸する方向と所定の傾きREをもつ方向に延伸する部分を有している。すなわち、第3板係合部14を囲む三方向の切込みのうち、第1切込みK1と略平行な切込み以外の2辺が、第1板係合部12の延伸方向と略平行な直線状の切込みとなっており、これら2辺の切込みが第1切込みK1の延伸する方向と所定の傾きREをもつ方向に延伸している。第1切込みK1の延伸する方向と第2切込みK2の延伸する方向のなす角度は、適宜設定することができるが、支持部11の延伸方向と第1板係合部12の延伸方向のなす角度RAに近い値であることが好ましく、同一であることがより好ましい。したがって、角度REは、鈍角(90°<RE<180°)であることが好ましい。特に、角度REは、90°<RE<120°であることが、より好ましい。本実施形態では、角度RE=100°としている。第1切込みK1は、フック板材1Aにおいて、支持部11の上端から、フック板材1Aの下端まで形成されているが、第3板係合部14と連結される部分だけは、形成されていない。この第1切込みK1の非形成部分と第2切込みK2により第3板係合部14の輪郭が形成されることになる。
【0034】
図4は、背面板3の平面図である。背面板3は、フック1を支持するための板である。本実施形態では、
図4に示すように、フック1を固定するための貫通孔であるフック孔31が上下方向に3個形成されている。フック孔31は、上側の台形と下側の長方形を組み合わせた形状をしている。フック孔31には、抑え部16の反対側である第2板係合部13側からフック1を挿入し、固定するようになっている。このため、フック孔31の上下方向の長さLAは、
図1におけるフック1の抑え部16の反対側の端部である終端PAと、第2板係合部13の外縁上で終端PAから最も遠い点である第2板係合部下端PBとの距離LAと同一である。また、フック孔31の上下方向の長さLAは、フック1の第2板係合部上端PCと、第3板係合部付け根部PDとの距離LBよりも長い。これにより、フック1をフック孔31に挿入することができ、簡単にはフック孔31から抜けなくなる。第1板係合部12の延伸方向の長さ(
図1に示した連結部17から下端に至る長さ)は、フック孔31の上下方向の長さLAよりも長いため、抑え部16側からフック1が抜けることもない。
【0035】
本実施形態では、終端PAは、支持部11の上端を支持部11の延伸方向に延長した直線状の端部であるが、必ずしもこのような位置である必要はなく、支持部11の上端を支持部11の延伸方向に延長した直線状から上方や下方にずれた位置であってもよい。また、第2板係合部下端PBは、溝部15の第2板係合部側の下端ともなる点であり、第2板係合部13の溝部15側の直線状の縁部の下端であるが、終端PAとの距離LAを規定するための点は、必ずしも第2板係合部13の下端ではなく、第2板係合部13において終端PAから最も距離が遠い点であればよい。終端PAと第2板係合部13において終端PAから最も距離が遠い点との距離LAがフック孔31の上下方向の長さLAと同一であれば、フック1をフック孔31に挿入した後、抜け難くなるためである。なお、距離LAがフック孔31の上下方向の長さLAと同一とは、完全に同一でなく、実質的にフック1をフック孔31に挿入することができ、抜け難くなる程度の差まで含む意味である。
【0036】
本実施形態では、フック1の第2板係合部上端PCと、第3板係合部付け根部PDの距離LBをフック孔31の上下方向の長さLAよりも短くしているが、フック孔31の上下方向の長さLAより距離が短い2点は、この2点に限定されることはない。フック1の第2板係合部上端PCと、第3板係合部付け根部PDの距離に限定されず、第2板係合部13より第1板係合部12側のフック1外縁上の点と、第3板係合部14より支持部11部側のフック1外縁上の点の距離が、フック孔31の上下方向の長さLAより短い2点が存在すればよい。フック1の外縁上にこのような2点が存在すれば、フック1を通した後、フック孔31によりフック1を保持できるためである。
【0037】
また、フック孔31の上端辺と下端辺の長さWBは、フック板材1Aを折り畳んだ厚さ、すなわちフック板材1A2枚分の厚さと同一である。これにより、折り畳んだ状態のフック1を最小限の幅で通すことができる。また、フック孔31の左右方向の最大部分(台形状部分の下底)の長さWAは、WBの2倍~3倍程度に設定されている。フック孔31が下が広い台形状の部分を有し、台形状の最も広い下底部分の幅WAが、長さWBの2倍~3倍程度に設定されていることにより、フック孔31に通した後に、フック1が2つ折り状態から戻る力で広がる。この2つ折り状態から戻ろうとする力によりフック1が背面板3を抑えるため、フック1をより強固に背面板3に固定することができる。
【0038】
次に、吊り下げ具の組立について説明する。背面板3については、所定の厚みを有する厚紙を所定形状(
図4の例では上下に長い矩形状)で所定の大きさに切り取り、所定の位置に複数のフック孔を形成することにより作成する。フック板材1Aについては、厚紙(例えば4枚を貼り合わせた合紙)から
図2に示したような形状を切り取り、ハーフカット加工により第1切込みK1を形成し、貫通する切込みを入れることにより、第2切込みK2、第3切込みK3を形成する。このようにして得られたフック板材1Aを第1切込みK1から山折りして2つに折り畳み、
図1、
図3に示したようなフック1が得られる。フック板材1Aを形成する4枚のうち3枚を貫通する第1切込みK1から山折りすることにより、
図3(a)に示すように、貫通していない1枚の部分が連結部17として表出する。一方、第1切込みK1に沿って谷折りされた側から見た状態は
図3(b)のようになり、支持部第1部分11aと支持部第2部分11b側が連結された状態となっていることがわかる。支持部第1部分11aと支持部第2部分11b側は完全に重なる状態に2つ折りすることもできるが、連結部17でつながっているのみであるので、連結部17から遠ざかる程、互いに離れた状態となる。支持部第1部分11aと支持部第2部分11bの広がりは、実際には、
図4に示した背面板3のフック孔31の形状により規定される。フック1が得られたら、終端となる第2板係合部13側から背面板3のフック孔31に挿入する。
【0039】
そして、フック1の終端PAと第2板係合部下端PBを結ぶ線がフック孔31の上下方向に収まるようにして第2板係合部13を通過させ、さらに溝部15を利用して、第3板係合部14も通過させる。第1板係合部12の延伸方向の長さ(
図1に示した連結部17から下端に至る長さ)がフック孔31の上下方向の長さLAより大きいため、第1板係合部12を通過させることはできない。したがって、フック孔31の上端が支持部11と第3板係合部14の境界付近、フック孔31の下端が溝部15、にそれぞれ位置する状態で固定される。このとき、背面板3の正面側は、第1板係合部12により固定され、背面板3の背面側は、第2板係合部13および第3板係合部14により固定される(
図5参照)。
【0040】
図5は、背面板にフックを固定した吊り下げ具を示す図である。
図5(a)は、背面板の正面側(被吊り下げ物を陳列する側)からの斜視図であり、
図5(b)は、背面板の背面側からの斜視図である。
図5の例では、3つのフック孔31が上下方向に配列されて形成された背面板3において、下の2つのフック孔31にフック1を固定した状態を示している。
【0041】
フック1は、フック板材1Aを2つ折りして通した後、第1板係合部12と、第2板係合部13および第3板係合部14との間で背面板3を挟んだ状態で、手を離すと、2つ折りされたフック板材1Aが戻ろうとする力により広がる。この広がりは、フック孔31の上部の台形状の部分の斜辺により制御され、第1板係合部12と、第2板係合部13および第3板係合部14との間の部分がフック孔31の斜辺部分に当たることにより、固定される。このため、
図5(a)に示すように、支持部第1部分11aと支持部第2部分11b、第1板係合部第1部分12aと第1板係合部第2部分12b、がそれぞれ広がった状態で固定される。また、
図5(b)に示すように、第2板係合部第1部分13aと第2板係合部第2部分13bが広がった状態で固定される。
【0042】
本実施形態では、支持部11の延伸方向と第1板係合部12の延伸方向のなす角度RAは、鈍角(90°<RA<180°)であることが好ましい。本実施形態では、角度RA=100°(
図1(a)参照)としている。
【0043】
本実施形態のフック1によれば、所定の位置に固定するとともに、被吊り下げ物に接触して直接支えるフック1であって、フック1は、被吊り下げ物を支える支持部11と、支持部11に延設された第1板係合部12と、第1板係合部12と溝部15を隔てて形成された第2板係合部13と、第1板係合部12の延伸方向と平行に延伸する第3板係合部14と、を有するので、第1板係合部12と第2板係合部13との間に背面板3が挟まり、フック1を固定することができる。
【0044】
本実施形態のフック1によれば、フック1は所定の厚みを持ち、支持部11の延設方向に延伸し、板状体(フック板材1A)を貫通しない切込みである第1切込みK1と、当該第1切込みK1の延伸する方向と所定の傾きREをもつ方向に延伸し、板状体を貫通する切込みを含む第2切込みK2を有する板状体からなり、第1切込みK1から折り畳まれて板状体を互いに重ね合わせることにより形成されるものであるので、1枚の板材から作成することができ、折り畳むことにより容易に強度を増強することができる。
【0045】
本実施形態のフック1によれば、前記支持部から第1板係合部12とは反対側の方向に、支持部11の延伸する方向と傾いた方向に延伸する抑え部16を備え、抑え部16は、第1切込みK1の延伸する方向から第1切込みK1の側に傾いた方向に延伸し、板状体を貫通する切込みを含む第3切込みK3により分離されて形成されたものであるので、被吊り下げ物の脱落を抑える抑え部16を1枚の板材から容易に作成することができる。
【0046】
本実施形態のフック1によれば、支持部11の延伸する方向と、第1板係合部12の延伸する方向とのなす角度は鈍角であるので、支持部11を、背面板3から離れるにつれて上方に向かうように固定することができ、支持部11で支持された被吊り下げ物が前面側に滑り落ちることを抑止することができる。
【0047】
<2.第2の実施形態>
本発明第2の実施形態に係る吊り下げ具について説明する。
第2の実施形態に係る吊り下げ具も、第1の実施形態と同様、被吊り下げ物に接触して直接支えるフックと、このフックを支えるためにフックが挿入されるフック挿入孔を備えた背面板と、を備えている。まず、本発明第2の実施形態に係るフックについて説明する。
図6は、本発明第2の実施形態に係るフックの側面図である。
図6(a)(b)は、それぞれ異なる側面から見た側面図になっている。
図7は、フック2を作成するための板材の展開図である。
図8は、フック2の斜視図である。
図8(a)は
図7の第1切込みK4に沿って谷折りされた側を示しており、
図8(b)は、
図7の第1切込みK4から山折りされた側を示している。
【0048】
フック2は、
図7に示したようなフック板材2Aを第1切込みK4に沿って折り畳むことにより形成される。そのため、互いに対向する位置に同様の機能を果たす部分が存在する。
図7においては、支持部第1部分21aと支持部第2部分21b、第1板係合部第1部分22aと第1板係合部第2部分22b、第2板係合部第1部分23aと第2板係合部第2部分23b、溝部第1部分25aと溝部第2部分25b、がそれぞれ第1切込みK4に対称に形成されている。以降、説明の便宜上、これらの第1部分と第2部分を総称して呼ぶことがある。例えば、支持部第1部分21aと支持部第2部分21bを総称して支持部21と呼ぶことがある。
【0049】
図6に示すように、フック2は、被吊り下げ物を支える支持部21と、支持部21に延設された第1板係合部22と、第1板係合部22と溝部25を隔てて形成された第2板係合部23と、第2板係合部23の延伸方向と平行に延伸する第3板係合部24と、を有する。
【0050】
支持部21は、被吊り下げ物の荷重を受け、非吊り下げ物を支持する部分であり、所定の幅を有し、所定の方向に延伸している。
図6の例では、第1板係合部22から抑え部26を結ぶ方向(
図6における左右方向)に延伸している。第1板係合部22、第2板係合部23、第3板係合部24は、後述する背面板4に係合するための部分であり、第1板係合部22は、フック2の外縁が連続するようにして支持部21に延設されている。第2板係合部23は、第1板係合部22と溝部25を隔てて形成されている。第3板係合部24は、第1板係合部22の延伸方向と平行に延伸するように形成されている。支持部21の延伸方向(
図6の左右方向)を基準とすると、第1板係合部22、第2板係合部23が、上方に向って延伸しているのに対して、第3板係合部24は、下方に向かって延伸している。
【0051】
抑え部26は、フック2の先端から被吊り下げ物が脱落しないように形成された部分である。そのため、フック2を背面板4に固定した状態で、支持部21の側から他方の端部側に向かって、上方に向かうように傾斜している。支持部21の延伸方向(
図6の左右方向)を基準とすると、第1板係合部22、第2板係合部23が、上方に向って延伸しており、抑え部26も、第1板係合部22、第2板係合部23と同様、上方に向かって延伸している。したがって、抑え部26は、支持部21から見て第1板係合部22と同じ側の方向に、支持部21の延伸する方向から傾いた方向に延伸している。すなわち、支持部21の延伸方向(
図6の左右方向)を基準とすると、抑え部26は、第3板係合部24と反対側の方向である上方に向かって延伸している。
【0052】
本実施形態に係るフック2は、連結部27を中心として板状の部材を2つ折りにすることにより形成されている。支持部21、第1板係合部22、第2板係合部23は、折り畳まれることにより、元の部材の2倍の厚みを有している。
図6(a)(b)を比較するとわかるように、第3板係合部24と抑え部26は、第1の実施形態と同様、2つ折りした一方の板材のみに形成されている。また、第3板係合部24と同形状の凹部28が、第3板係合部24が形成されている側と対向する側の部材に形成されている。なお、凹部28は、第1切込みK4から完全に2つ折りした状態では、対向する部材を底とする凹部となるが、実際には、第3板係合部24の形状に貫通した部分となる。
【0053】
本実施形態に係るフック2は、被吊り下げ物を支える支持部21が折り畳まれて形成されているので、部材として紙(厚紙)を用いた場合であっても、支持部21が元の部材の2倍の厚みとなって、耐荷重を向上させることができる。すなわち、比較的薄い部材を用いた場合であっても、耐荷重を向上させたフックを得ることが可能となる。また、支持部21の延伸方向(
図6の左右方向)を基準とすると、第1板係合部22、第2板係合部23が、上方に向って延伸しているのに対して、第3板係合部24は、下方に向かって延伸している。すなわち、支持部21の延伸方向を基準として、一方の上側に2つの係合部、他方の下側に1つの係合部が形成され、一方の上側の2つの係合部の互いに対向する縁と、他方の下側の1つの係合部の第2板係合部23側(支持部21と反対の側)の縁が平行となる部分を有しているので、背面板4に容易に嵌め込むことが可能となる。
【0054】
図6においては、支持部21の延伸方向が水平方向(
図6の左右方向)となるような状態で示しているが、フック2を背面板4に固定する際は、第1の実施形態と同様、支持部21が背面板4から離れるにつれて上方に向かうように固定されることが好ましい。支持部21が背面板4から離れるにつれて上方に向かうように固定されることにより、被吊り下げ物がフック2の先端から外れることを抑止することができる。支持部21の背面板4から離れた側が上方を向いていることにより、抑え部26を設けない場合であっても、被吊り下げ物のずり落ちを抑止することができる。
【0055】
図6(b)において、一点鎖線で示す3本の直線は、それぞれ支持部21の延伸方向、第1板係合部22の延伸方向、抑え部26の延伸方向を示している。
図6(b)に示すように、これらの一点鎖線の交差する角度が、支持部21の延伸方向と第1板係合部22の延伸方向が内側(180°未満となる側)になす角度RC、支持部21の延伸方向と抑え部26の延伸方向が支持部21の連結部27の反対側(180°未満となる側)になす角度RDを示している。
【0056】
支持部21の延伸方向と第1板係合部22の延伸方向のなす角度RCは、鋭角(0°<RC<90°)であることが好ましい。特に、角度RCは、30°<RC<80°であることが、より好ましい。本実施形態では、角度RC=70°としている。第1板係合部22の延伸方向とは、第1板係合部22の溝部25側の縁部の延伸方向である。第1板係合部22の溝部25側の縁部は、直線状になっている。この直線状の第1板係合部22の溝部25側の縁部は、後述するように、背面板4の面に平行に嵌め込まれる。このため、フック2を背面板4に固定した際、角度RCが鋭角であると、支持部21が、背面板4から離れるにつれて上方に向かうように固定されることになる。
【0057】
また、本実施形態では、第2板係合部23の延伸方向、第3板係合部24の延伸方向は、ともに第1板係合部22の延伸方向と平行な方向である。すなわち、第1板係合部22の延伸方向、第2板係合部23の延伸方向、第3板係合部24の延伸方向は、互いに平行である。なお、第2板係合部23の延伸方向とは、第2板係合部23の溝部25側の縁部の延伸方向である。また、第3板係合部24の延伸方向とは、第3板係合部24の第2板係合部23側の(支持部21と反対の側)(
図6(a)における左側、
図6(b)における右側)の縁部の延伸方向である。
【0058】
第1板係合部22の溝部25側の縁部、第3板係合部24の第2板係合部23側の(支持部21と反対の側)の縁部は、いずれも直線状になっている。これらの縁部は、後述するように、背面板4の面に平行に嵌め込まれ、背面板4の面の前面側に接触する。すなわち、第1板係合部22の溝部25側の縁部、第2板係合部23の溝部25側の縁部、第3板係合部24の第2板係合部23側(支持部21と反対の側)の縁部が全て平行な直線状であることにより、3つの係合部により背面板をしっかりと固定することができる。
【0059】
本実施形態では、第1板係合部22の溝部25側の縁部、第2板係合部23の溝部25側の縁部、第3板係合部24の第2板係合部23側(支持部21と反対の側)の縁部は、全て直線状となっている。しかし、必ずしも全て直線状である必要はなく、各縁部が直線状の部分を含んでいればよい。
【0060】
支持部21の延伸方向と抑え部26の延伸方向のなす角度RDは、鈍角(90°<RB<180°)であることが好ましい。特に、角度RDは、130°<RD<170°であることが、より好ましい。本実施形態では、角度RD=140°としている。抑え部26の延伸方向とは、抑え部26の長手方向の中心線の延びる方向である。角度RDが180°より大きいと、支持部21の延伸方向よりも抑え部26の延伸方向が下方に向うことになり、被吊り下げ物の脱落を抑止することが困難となる。一方、角度RDが90°より小さいと、フック2の先端(抑え部26の先端)から被吊り下げ物を通すための手間がかかることになる。
【0061】
図7は、フック2を作成するための板材の展開図である。
図6に示したような本実施形態に係るフック2は、
図7に示したような形状の板状体を2つ折りすることにより形成される。
図7において、
図6と同一の箇所については、同一符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、支持部第1部分21aと支持部第2部分21bの間には、直線状の第1切込みK4が形成されている。第1切込みK4は、フック板材2Aを貫通しない切込みである。第1切込みK4により、支持部第1部分21aと支持部第2部分21bに区分される。本実施形態では、フック板材2Aを4枚の紙を積層した合紙としており、第1切込みK4は、4枚のうち3枚を貫通する切込みとしている。残りの1枚が切り込まれていないため、第1切込みK4の位置からフック板材2Aを2つ折りした場合に、残りの1枚が連結部27として2つ折りされた2つの部分の分離を防ぐことになる。
【0062】
図7における支持部21の下方には、第2切込みK5が形成されている。第2切込みK5は、フック板材2Aを貫通する切込みである。第2切込みK5は、第3板係合部24を形成するための切込みである。第2切込みK5は、第3板係合部24の輪郭の一部を形成している。第2切込みK5は、第1切込みK4の延伸する方向と所定の傾きRFをもつ方向に延伸する部分を有している。すなわち、第3板係合部24を囲む三方向の切込みのうち、第1切込みK4と略平行な切込み以外の2辺が、第1板係合部22の延伸方向と略平行な直線状の切込みとなっており、これら2辺の切込みが第1切込みK4の延伸する方向と所定の傾きRFをもつ方向に延伸している。第1切込みK4の延伸する方向と第2切込みK5の延伸する方向のなす角度RFは、適宜設定することができるが、支持部21の延伸方向と第1板係合部22の延伸方向のなす角度RCに近い値であることが好ましく、同一であることがより好ましい。したがって、角度RFは、鈍角(90°<RF<180°)であることが好ましい。特に、角度RFは、90°<RF<120°であることが、より好ましい。本実施形態では、角度RF=100°としている。第1切込みK4は、フック板材2Aにおいて、支持部21の上端から、フック板材2Aの下端まで形成されているが、第3板係合部24と連結される部分だけは、形成されていない。この第1切込みK4の非形成部分と第2切込みK5により第3板係合部24の輪郭が形成されることになる。
【0063】
図9は、背面板4の平面図である。背面板4は、フック2を支持するための板である。本実施形態では、
図9に示すように、フック2を固定するための貫通孔であるフック孔41が上下方向に3個形成されている。フック孔41は、上側の長方形と下側の台形を組み合わせた形状をしている。フック孔41には、抑え部26の側からフック2を挿入し、固定するようになっている。このため、フック孔41の上下方向の長さLCは、フック2の第1板係合部22の上端PEと、第3板係合部24と支持部21の境界部である第3板係合部第1付け根部PFとの距離LCと同一である。また、フック孔41の上下方向の長さLCは、フック2の第1板係合部下端PGと、第3板係合部第2付け根部PHとの距離LDよりも長い。これにより、フック2をフック孔41に挿入することができ、簡単にはフック孔41から抜けなくなる。第2板係合部23の延伸方向の長さ(
図6に示した連結部27から上端に至る長さ)は、フック孔41の上下方向の長さLCよりも長いため、第2板係合部23側からフック2が抜けることもない。
【0064】
本実施形態では、第1板係合部上端PEは、溝部25の第1板係合部側の上端ともなる点であり、第1板係合部22の溝部25側の直線状の縁部の上端であるが、第3板係合部第1付け根部PFとの距離LCを規定するための点は、必ずしも第1板係合部22の上端ではなく、第1板係合部22において第3板係合部第1付け根部PFから最も距離が遠い点であればよい。第3板係合部第1付け根部PFと第1板係合部22において第3板係合部第1付け根部PFから最も距離が遠い点との距離LCがフック孔41の上下方向の長さLCと同一であれば、フック2をフック孔41に挿入した後、抜け難くなるためである。なお、距離LCがフック孔41の上下方向の長さLCと同一とは、完全に同一でなく、実質的にフック2をフック孔41に挿入することができ、抜け難くなる程度の差まで含む意味である。
【0065】
本実施形態では、フック2の第1板係合部下端PGと、第3板係合部第2付け根部PHの距離LDをフック孔41の上下方向の長さLCよりも短くしているが、フック孔41の上下方向の長さLCより距離が短い2点は、この2点に限定されることはない。フック2の第1板係合部下端PGと、第3板係合部第2付け根部PHの距離に限定されず、第1板係合部22より第2板係合部23側のフック2外縁上の点と、第3板係合部24より第2板係合部23側のフック2外縁上の点の距離が、フック孔41の上下方向の長さLCより短い2点が存在すればよい。フック2の外縁上にこのような2点が存在すれば、フック2を通した後、フック孔41によりフック2を保持できるためである。
【0066】
また、フック孔41の上端辺と下端辺の長さWDは、フック板材2Aを折り畳んだ厚さ、すなわちフック板材2Aの2枚分の厚さと同一である。これにより、折り畳んだ状態のフック2を最小限の幅で通すことができる。また、フック孔41の左右方向の最大部分(台形状部分の上底)の長さWCは、WDの2倍~3倍程度に設定されている。フック孔41が、上が広い台形状の部分を有し、台形状の最も広い上底部分の幅WCが、長さWDの2倍~3倍程度に設定されていることにより、フック孔41に通した後に、フック2が2つ折り状態から戻る力で広がる。この2つ折り状態から戻ろうとする力によりフック2が背面板4を抑えるため、フック2をより強固に背面板4に固定することができる。
【0067】
次に、吊り下げ具の組立について説明する。背面板4については、所定の厚みを有する厚紙を所定形状(
図9の例では上下に長い矩形状)で所定の大きさに切り取り、所定の位置に複数のフック孔を形成することにより作成する。フック板材2Aについては、厚紙から
図7に示したような形状を切り取り、ハーフカット加工により第1切込みK4を形成し、貫通する切込みを入れることにより、第2切込みK5を形成する。このようにして、得られたフック板材2Aを第1切込みK4から山折りして2つに折り畳み、
図6、
図8に示したようなフック2が得られる。フック板材2Aを形成する4枚のうち3枚を貫通する第1切込みK4から山折りすることにより、
図8(a)に示すように、貫通していない1枚の部分が連結部27として表出する。一方、第1切込みK4に沿って谷折りされた側から見た状態は
図8(b)のようになり、支持部第1部分21aと支持部第2部分21b側が連結された状態となっていることがわかる。支持部第1部分21aと支持部第2部分21b側は完全に重なる状態に2つ折りすることもできるが、連結部27でつながっているのみであるので、連結部27から遠ざかる程、互いに離れた状態となる。支持部第1部分21aと支持部第2部分21bの広がりは、実際には、
図9に示した背面板4のフック孔41の形状により規定される。フック2が得られたら、先端となる抑え部26側から背面板4のフック孔41に挿入する。
【0068】
そして、フック2の第1板係合部上端PEと第3板係合部第1付け根部PFを結ぶ線がフック孔41の上下方向に収まるようにして第1板係合部22を通過させ、さらに溝部25を利用して、第3板係合部24も通過させる。第2板係合部23の延伸方向の長さ(
図6に示した連結部27から上端に至る長さ)がフック孔41の上下方向の長さLCより大きいため、第2板係合部23を通過させることはできない。したがって、フック孔41の上端が溝部25、フック孔41の下端が第3板係合部第2付け根部PH付近、にそれぞれ位置する状態で固定される。このとき、背面板4の正面側は、第1板係合部22および第3板係合部24により固定され、背面板4の背面側は、第2板係合部23により固定される。
【0069】
図10は、第2の実施形態において背面板にフックを固定した吊り下げ具を示す図である。
図10(a)は、背面板の正面側(被吊り下げ物を陳列する側)からの斜視図であり、
図10(b)は、背面板の背面側からの斜視図である。
図10の例では、3つのフック孔41が上下方向に配列されて形成された背面板4において、下の2つのフック孔41にフック2を固定した状態を示している。
【0070】
フック2は、フック板材2Aを2つ折りして通した後、第1板係合部22および第3板係合部24と、第2板係合部23との間で背面板4を挟んだ状態で、手を離すと、2つ折りされたフック板材2Aが戻ろうとする力により広がる。この広がりは、フック孔41の下部の台形状の部分の斜辺により制御され、第1板係合部22および第3板係合部24と、第2板係合部23との間の部分がフック孔41の斜辺部分に当たることにより、固定される。このため、
図10(a)に示すように、支持部第1部分21aと支持部第2部分21b、第1板係合部第1部分22aと第1板係合部第2部分22b、がそれぞれ広がった状態で固定される。また、
図10(b)に示すように、第2板係合部第1部分23aと第2板係合部第2部分23bが広がった状態で固定される。
【0071】
本実施形態では、支持部21の延伸方向と第1板係合部22の延伸方向のなす角度RCは、鋭角(0°<RC<90°)であることが好ましい。本実施形態では、角度RC=70°としている。
【0072】
本実施形態のフック2によれば、支持部21から第1板係合部22とは反対側の方向に、支持部21の延伸する方向と傾いた方向に延伸する抑え部26を備え、抑え部26は、第1切込みK4の延伸する方向から第1切込みK4と反対の側に傾いた方向に延伸して形成されたものであるので、被吊り下げ物の脱落を抑える抑え部26を1枚の板材から容易に作成することができる。
【0073】
本実施形態のフック2によれば、支持部21の延伸する方向と、第1板係合部22の延伸する方向とのなす角度は鋭角であるので、支持部21を、背面板4から離れるにつれて上方に向かうように固定することができ、支持部21で支持された被吊り下げ物が前面側に滑り落ちることを抑止することができる。
【0074】
<3.フック板材と背面板の材質>
フック1、2を形成するフック板材1A、2Aの材質、および背面板3、4の材質は、特に限定されず、本実施形態のフック1、2および背面板3、4を実現可能なものであれば、紙、樹脂等どのようなものであってもよい。ただし、環境配慮、加工性の観点から紙とすることが好ましい。素材として紙を用いた場合、紙基材からフック板材1A、2A、背面板3、4を切り出し、孔開け、切込み形成等の加工を容易に行うことができる。本実施形態では、同一種の紙基材からフック板材1A、2A、背面板3、4を切り出して加工している。
【0075】
本実施形態では、フック板材1A、2A、背面板3、4として、4層の合紙を用いている。一例として、坪量420g/m2の紙を4枚貼り合わせ、4層の総厚は、2000μm程度の板材とすることができる。また、フック板材1A、2A、背面板3、4として、例えば、3層の合紙を用いることもできる。この場合、例えば、両端は坪量310g/m2の紙とし、中央は650g/m2の紙とすることができる。この場合、3層の総厚は1500μm程度である。これらに限定されず、ある程度の剛性を有する板材を構成することができれば、どのようなものを用いてもよい。
【0076】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態、変形例に限定されず、さらに種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、抑え部や係合部等の先端を円弧状としているが、角張った端部を有するようにしてもよい。また、逆に、角張った端部を円弧状に形成するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、フックおよび背面板を紙製としたが、樹脂製等、他の素材により構成されるものであってもよい。上記実施形態に示したように、環境への影響を考慮すると、紙製であることが好ましいが、樹脂製であっても、作成が容易で耐荷重性に優れた吊り下げ具を提供することができる。
【符号の説明】
【0078】
1、2・・・フック
1A、2A・・・フック板材
3、4・・・背面板
11、21・・・支持部
12、22・・・第1板係合部
13、23・・・第2板係合部
14、24・・・第3板係合部
15、25・・・溝部
16、26・・・抑え部
17、27・・・連結部
18、28・・・凹部
31、41・・・フック孔
K1、K4・・・第1切込み
K2、K5・・・第2切込み
K3・・・第3切込み
PA・・・終端
PB・・・第2板係合部下端
PC・・・第2板係合部上端
PD・・・第3板係合部付け根部
PE・・・第1板係合部上端
PF・・・第3板係合部第1付け根部
PG・・・第1板係合部下端
PH・・・第3板係合部第2付け根部