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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】シリンジポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A61M5/145 500
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020037804
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021137335
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽畑 元晴
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-107424(JP,A)
【文献】特開2007-029649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0229311(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレルおよび該バレルの内側に嵌入されるプランジャロッドを含むシリンジに適用されるシリンジポンプであって、
互いに着脱可能に組み合わせられる第1カバーと第2カバーとを含み、前記第1カバーが開口部を有するカバーと、
前記バレルに向かって前記プランジャロッドを移動可能に保持する駆動部、および、前記開口部と係合する係合部を有し、前記第1カバーに着脱可能に装着される駆動ユニットとを備え、
前記係合部には、前記バレルが載置されるバレル受け部が形成されており、
前記開口部は、前記駆動部が挿通可能な形状を有しており、
前記駆動部が前記開口部を挿通するとともに前記開口部と前記係合部とが係合するように、前記第1カバーと前記駆動ユニットとが組み合わせられることにより、前記開口部が前記係合部によって塞がれる、シリンジポンプ。
【請求項2】
前記駆動ユニットは、前記バレル受け部に載置されている前記バレルを保持するバレル保持部をさらに有している、請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項3】
前記バレルは、後端にフランジを有しており、
前記駆動ユニットは、前記駆動部の移動方向に対して直交するように、前記バレル受け部の駆動部側に位置する後端に隙間をあけて設けられた板状部をさらに有し、
前記バレル受け部の前記後端と前記板状部との間の前記隙間に、前記バレル受け部に載置されている前記バレルの前記フランジが挿入される、請求項1または請求項2に記載のシリンジポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジポンプの構成を開示した先行文献として、国際公開第2009/113341号(特許文献1)がある。特許文献1に記載されたシリンジポンプは、上カバーと、スライダ組立体と、スライダ送り機構とを含む。上カバーには、シリンジ本体が載置される置き台が形成されている。スライダ組立体は、シリンジの押子を把持する。スライダ送り機構は、パイプシャフトを介してスライダ組立体に連結されており、スライダ組立体を駆動する。パイプシャフトは、上側カバーに設けられた開口部に挿通されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/113341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたシリンジポンプにおいては、パイプシャフトとスライダ組立体とが分離している状態でなければ、上側カバーの開口部にパイプシャフトを挿抜することができない。そのため、シリンジポンプを容易に組立および分解することができない。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、容易に組立および分解することができる、シリンジポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づくシリンジポンプは、バレルおよびバレルの内側に嵌入されるプランジャロッドを含むシリンジに適用される。シリンジポンプは、カバーと、駆動ユニットとを備える。カバーは、開口部を有する。駆動ユニットは、バレルに向かってプランジャロッドを移動可能に保持する駆動部、および、上記開口部と係合する係合部を有する。駆動ユニットは、カバーに着脱可能に装着される。係合部には、バレルが載置されるバレル受け部が形成されている。開口部は、駆動部が挿通可能な形状を有している。駆動部が開口部を挿通するとともに開口部と係合部とが係合するように、カバーと駆動ユニットとが組み合わせられることにより、開口部が係合部によって塞がれる。
【0007】
本発明の一形態においては、駆動ユニットは、バレル受け部に載置されているバレルを保持するバレル保持部をさらに有している。
【0008】
本発明の一形態においては、バレルは、後端にフランジを有している。駆動ユニットは、駆動部の移動方向に対して直交するように、バレル受け部の駆動部側に位置する後端に隙間をあけて設けられた板状部をさらに有する。バレル受け部の後端と板状部との間の上記隙間に、バレル受け部に載置されているバレルのフランジが挿入される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリンジポンプを容易に組立および分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプの外観を示す斜視図である。
図2図1のシリンジポンプを矢印II方向から見た斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプが備える第1カバーを正面側から見た斜視図である。
図4図3の第1カバーを矢印IV方向から見た側面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプが備える駆動ユニットの構成を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプが備える駆動ユニットにおける係合部、並びに、係合部に取り付けられているバレル保持部および板状部の構成を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプが備える駆動ユニットにおける係合部の構造を示す斜視図である。
図8】本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプが備える駆動ユニットにおける板状部の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプについて図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプの外観を示す斜視図である。図2は、図1のシリンジポンプを矢印II方向から見た斜視図である。図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプ100は、シリンジ10に適用されるシリンジポンプである。シリンジ10は、バレル20およびプランジャロッド30を含む。
【0013】
バレル20は、略円筒形状の外形を有している。バレル20の先端に注液口が設けられている。バレル20は、後端に第1フランジ21を有する。バレル20は、ポリプロピレンなどの透明または半透明の樹脂にて構成されている。バレル20の内周面に、シリコーンオイルなどの潤滑油が塗布されていてもよい。バレル20の内側には、薬液が充填される。
【0014】
プランジャロッド30は、バレル20の内側に嵌入され、後端に第2フランジ31を有する。プランジャロッド30の先端側には、バレル20の内周面と摺接する図示しないガスケット部が設けられている。ガスケット部は、加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマなどの弾性体で構成されている。プランジャロッド30におけるガスケット部以外の部分は、ポリプロピレンなどの樹脂にて構成されている。
【0015】
図1および図2に示すように、本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプ100は、カバー110と、駆動ユニット120とを備える。駆動ユニット120は、カバー110に着脱可能に装着される。カバー110は、互いに着脱可能に組み合わせられる第1カバー110aと第2カバー110bとを含む。
【0016】
図3は、本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプが備える第1カバーを正面側から見た斜視図である。図4は、図3の第1カバーを矢印IV方向から見た側面図である。図5は、本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプが備える駆動ユニットの構成を示す斜視図である。
【0017】
図3および図4に示すように、第1カバー110aは、前面の上部に表示用窓部が設けられている。第1カバー110aは、前面の下部に開口部113を有する。
【0018】
第1カバー110aを正面から見て、開口部113の左側に第1面部111が位置しており、開口部113の右側に第2面部112が位置している。第2面部112は、第1面部111より後ろ側に位置している。すなわち、開口部113は、第1カバー110aの幅方向および奥行き方向に亘って形成されている。
【0019】
開口部113は、後述する駆動部121が挿通可能な形状を有している。本実施の形態においては、第1カバー110aを正面から見て、開口部113は、略矩形状の形状である。図4に示すように、第1カバー110aを側面から見て、開口部113は、略台形状の形状である。
【0020】
図5に示すように、駆動ユニット120は、駆動部121および係合部127を有する。駆動部121は、バレル20に向かってプランジャロッド30を移動可能に保持する。駆動部121によって、プランジャロッド30がバレル20に向かって移動させられることにより、バレル20内の薬液が注液口からチューブ内に注入される。
【0021】
具体的には、駆動部121は、第2フランジ31を押圧する押圧面122、および、第2フランジ31を押圧面122と挟持して保持する可動爪部123を有している。可動爪部123は、ばねなどの付勢機構により押圧面122に接近する方向に付勢されている。
【0022】
駆動部121は、プランジャロッド30を着脱する際に、プランジャロッド30の延在方向における、駆動部121自体の位置および可動爪部123の位置を、手動で調整するためのクラッチレバー124をさらに有している。具体的には、クラッチレバー124を一方向に回動させることにより、駆動部121は手動で移動することが規制されるロック状態になるとともに、可動爪部123は押圧面122側に付勢された状態で維持される。クラッチレバー124を他方向に回動させることにより、駆動部121はアンロック状態になるとともに、可動爪部123は付勢力に抗して押圧面122から離間するように移動させられる。
【0023】
なお、駆動部121の構成は上記に限られず、駆動部121は、第2フランジ31を押圧する押圧面122、および、第2フランジ31を押圧面122との間に収容する固定爪部を有していてもよい。駆動部121は、駆動シャフト125をさらに有している。駆動シャフト125は、駆動シャフト125の軸方向に移動する。駆動シャフト125の一部の外周は、蛇腹状のカバーで覆われている。
【0024】
図5に示すように、駆動ユニット120は、本体部126をさらに有している。本体部126は、図示しないモータおよびモータの出力を駆動シャフト125に伝達する動力伝達機構を内蔵している。本実施の形態においては、動力伝達機構は、ボールねじを含んでいるが、動力伝達機構の構成は、ボールねじを含むものに限られない。
【0025】
図1および図2に示すように、係合部127は、カバー110の開口部113と係合する。図6は、本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプが備える駆動ユニットにおける係合部、並びに、係合部に取り付けられているバレル保持部および板状部の構成を示す斜視図である。図7は、本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプが備える駆動ユニットにおける係合部の構造を示す斜視図である。
【0026】
図6および図7に示すように、係合部127には、バレル受け部128が形成されている。図1に示すように、バレル受け部128には、バレル20が載置される。バレル受け部128は、バレル20の外周面の下側部分と接する凹面部を有している。
【0027】
図1および図2に示すように、開口部113と係合部127とが係合した状態において、第1カバー110aの幅方向における係合部127の一端は、第1カバー110aの第1面部111と連続しており、第1カバー110aの幅方向における係合部127の他端は、第1カバー110aの第2面部112と連続している。図7に示すように、バレル受け部128の駆動部121側に位置する後端130は、第1カバー110aの幅方向に対して略垂直に曲折している。係合部127には、後述する板状部132を回動可能に支持する1対の支持穴131が設けられている。1対の支持穴131の各々は、互いに間隔をあけて第1カバー110aの奥行き方向に延在している。
【0028】
係合部127は、樹脂などで構成されており、一体成形されて形成されている。なお、係合部127における開口部113との接触部に、シール材が設けられていてもよい。
【0029】
図6に示すように、駆動ユニット120は、係合部127に取り付けられているバレル保持部129および板状部132をさらに有している。バレル保持部129は、バレル受け部128に載置されているバレル20を保持する。具体的には、バレル保持部129は、係合部127との接続箇所に設けられた図示しないばねなどの付勢機構によりバレル受け部128に向かって付勢されており、バレル受け部128との間においてバレル20を挟持する。
【0030】
図2に示すように、板状部132は、駆動部121の移動方向に対して直交するように、バレル受け部128の駆動部121側に位置する後端130に隙間Sをあけて設けられている。
【0031】
図8は、本発明の一実施の形態に係るシリンジポンプが備える駆動ユニットにおける板状部の構造を示す斜視図である。図8に示すように、板状部132は、梁部132bおよび梁部132bを支持する1対の柱部132pを有するアーチ状の外形を有している。梁部132bの第1面には、プランジャロッド30と干渉しないための凹部132cが設けられている。梁部132bの第1面とは反対側の第2面には、駆動シャフト125と干渉しないための凹部132dが設けられている。
【0032】
1対の柱部132pのうちの一方の根元の側面には、回動中心となる図示しない連結軸が挿入される穴部132hが設けられている。板状部132は、連結軸によって係合部127に対して回動可能に連結されている。1対の柱部132pの各々の根元には、板ばね部132sが設けられている。図7に示すように、板ばね部132sは、支持穴131に挿入されている。板状部132は、樹脂などで構成されており、一体成形されて形成されている。
【0033】
図6に示すように、バレル受け部128の後端130と板状部132との間の隙間Sに、図1に示すように、バレル受け部128に載置されているバレル20の第1フランジ21が挿入される。これにより、板状部132が図6中の矢印方向に回動し、板ばね部132sが圧縮させられる。その結果、板ばね部132sの反発力により、板状部132が第1フランジ21をバレル受け部128の後端130に向けて付勢する。その結果、異なる厚みを有する第1フランジ21に対応して、隙間Sに第1フランジ21を収容することができる。
【0034】
本実施の形態に係るシリンジポンプ100を組み立てる際には、図3の矢印に示すように駆動部121が第1カバー110aの内側から開口部113を挿通するとともに開口部113と係合部127とが係合するように、第1カバー110aと駆動ユニット120とを組み合わせることにより、図1および図2に示すように開口部113が係合部127によって塞がれる。さらに、第1カバー110aと第2カバー110bとを組み合わせることにより、カバー110に駆動ユニット120を装着して、シリンジポンプ100を組み立てることができる。
【0035】
本実施の形態に係るシリンジポンプ100を分解する際には、まず、第1カバー110aから第2カバー110bを取り外す。その後、開口部113と係合部127との係合を解除するとともに駆動部121が第1カバー110aの外側から開口部113を通過するように、第1カバー110aから駆動ユニット120を取り外すことにより、カバー110から駆動ユニット120を脱着して、シリンジポンプ100を分解することができる。
【0036】
本実施の形態に係るシリンジポンプ100においては、第1カバー110aは、開口部113を有する。駆動ユニット120は、バレル20に向かってプランジャロッド30を移動可能に保持する駆動部121、および、開口部113と係合する係合部127を有する。駆動ユニット120は、カバー110に着脱可能に装着される。係合部127には、バレル20が載置されるバレル受け部128が形成されている。開口部113は、駆動部121が挿通可能な形状を有している。駆動部121が開口部113を挿通するとともに開口部113と係合部127とが係合するように、カバー110と駆動ユニット120とが組み合わせられることにより、開口部113が係合部127によって塞がれる。
【0037】
これにより、駆動ユニット120を分解することなくカバー110に駆動ユニット120を着脱することができるため、シリンジポンプ100を容易に組立および分解することができる。具体的には、駆動部121を駆動シャフト125だけ残るように分解することなく、駆動部121を開口部113に挿通させることができるため、駆動ユニット120の分解作業を不要にして、シリンジポンプ100を容易に組立および分解することができる。
【0038】
本実施の形態に係るシリンジポンプ100においては、駆動ユニット120が、バレル受け部128に載置されているバレル20を保持するバレル保持部129をさらに有していることにより、駆動ユニット120に可動部材を集約して、カバー110の構成を簡易にすることができる。
【0039】
本実施の形態に係るシリンジポンプ100においては、駆動ユニット120は、駆動部121の移動方向に対して直交するように、バレル受け部128の駆動部121側に位置する後端130に隙間Sをあけて設けられた板状部132をさらに有する。バレル受け部128の後端130と板状部132との間の隙間Sに、バレル受け部128に載置されているバレル20の第1フランジ21が挿入される。これにより、駆動ユニット120にバレル20の固定部材を集約して、カバー110の構成を簡易にすることができる。
【0040】
本実施の形態に係るシリンジポンプ100においては、板状部132は、板ばね部132sを有しており、バレル受け部128の後端130と板状部132との間の隙間Sに、バレル受け部128に載置されているバレル20の第1フランジ21が挿入される。これにより、異なる厚みを有する第1フランジ21に対応して、隙間Sに第1フランジ21を収容することができる。
【0041】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではない。また、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 シリンジ、20 バレル、21 第1フランジ、30 プランジャロッド、31 第2フランジ、100 シリンジポンプ、110 カバー、110a 第1カバー、110b 第2カバー、111 第1面部、112 第2面部、113 開口部、120 駆動ユニット、121 駆動部、122 押圧面、123 可動爪部、124 クラッチレバー、125 駆動シャフト、126 本体部、127 係合部、128 バレル受け部、129 バレル保持部、130 後端、131 支持穴、132 板状部、132b 梁部、132c,132d 凹部、132h 穴部、132p 柱部、132s 板ばね部、S 隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8