(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】溶着方法及び溶着装置
(51)【国際特許分類】
B29C 65/18 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B29C65/18
(21)【出願番号】P 2020040684
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2022-11-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 渉
(72)【発明者】
【氏名】平田 賢輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】今久保 知史
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-043379(JP,A)
【文献】特開2017-001371(JP,A)
【文献】特開2019-178234(JP,A)
【文献】特開2005-007606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0075988(US,A1)
【文献】特開2015-120334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00 - 43/58
B29C 65/00 - 65/82
B29C 70/00 - 70/88
B29B 11/16
B29B 15/08 - 15/14
C08J 5/04 - 5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の複合材料を溶着する方法であって、
ヒータと、前記複合材料との間に、複数枚のシートを含む、絶縁性の部材を配置するステップと、
前記絶縁性の部材を介在させて、前記ヒータと、前記複合材料とを押圧するステップと
を備え、
前記複数枚のシートは、対向した1対のシートを備え、
前記対向した一対のシートは、押圧していない状態で、相互にスライド可能な領域を備える溶着方法。
【請求項2】
前記対向した1対のシートは、押圧していない状態で相互にスライドしない固定領域を備える、請求項1に記載の溶着方法。
【請求項3】
前記絶縁性の部材は、絶縁性の第1のシートと前記複合材料に当接する第2のシートとを備え、
前記第2のシートは、前記第1のシートより離形性が高い、請求項1に記載の溶着方法。
【請求項4】
前記第1のシートは、前記第2のシートよりも耐熱性が高い、請求項1に記載の溶着方法。
【請求項5】
導電性の複合材料を溶着する溶着装置であって、
ヒータと、
前記ヒータと前記複合材料とを相互に押圧させる押圧機構と、
溶着対象と対向する面に取り付けられた、複数枚のシートからなる絶縁性の部材と
を備え、
前記複数枚のシートは、対向した1対のシートを備え、
前記対向した一対のシートは、押圧していない状態で、相互にスライド可能な領域を備え
、
前記ヒータはインパルスヒータである、
溶着装置。
【請求項6】
前記絶縁性の部材は、一端が前記ヒータに取り付けられ、前記一端と対向する他端が自由端となっている、請求項5に記載の溶着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶着方法及び溶着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維複合材料を所望の形状とする際には、複数のプリプレグ片を積層し、溶着することがある。例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂を炭素繊維に含侵させたプリプレグ片を複数積層し、押圧しつつ加熱することにより各層を溶着させ、板状体を形成する繊維強化樹脂構造物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シート状の繊維複合材料の積層体の加熱に、通電される加熱面が露出した電熱ヒータ(例えば、急速な昇温が可能なインパルスヒータ)を用いることが考えられる。他方、シート状の繊維複合材料の中には、電気的に導電性材料となるものがある。例えば、含む炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は内部に炭素繊維を含んでいる。このような炭素繊維強化プラスチックは、当該炭素繊維の導電性のため、電気的には導電性材料となりうる。このため、複合材料に押圧された状態で発熱するヒータと、導電性の複合材料との絶縁性の確保が重要になる。
【0005】
電熱ヒータと、導電性の複合材料との絶縁性を確保する方法として、電熱ヒータと、導電性の複合材料との間に絶縁性の薄膜シートを介在させることが考えられる。
しかしながら、本開示の発明者が試行を行った結果、繊維複合材料の表面から突出した繊維が、シートを傷つけ、損耗させる可能性があることが判明した。
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたもので、導通を抑制する溶着方法及び、絶縁性の材料を用いた溶着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上記課題を解決するために、溶着方法に係る第1の手段として、導電性の複合材料を溶着する方法であって、ヒータと、前記複合材料との間に、複数枚のシートからなる絶縁性の部材を配置するステップと、前記絶縁性の部材を介在させて、前記ヒータと、前記複合材料とを押圧するステップとを備える、という構成を採用する。
【0007】
溶着方法に係る第2の手段として、上記第1の手段において、前記絶縁性の部材は、押圧していない状態で、相互にスライド可能とされる1対の対向したシートを備える、という構成を採用する。
【0008】
溶着方法に係る第3の手段として、上記第2の手段において、前記絶縁性の部材は、押圧していない状態で前記1対のシートが相互にスライドしない固定領域を備える、という構成を採用する。
【0009】
溶着方法に係る第4の手段として、上記第1の手段において、前記絶縁性の部材は、絶縁性の第1のシートと前記複合材料に当接する第2のシートとを備え、前記第2のシートは、前記第1のシートより離形性が高い、という構成を採用する。
【0010】
溶着方法に係る第5の手段として、上記第4の手段において、前記第1のシートは、前記第2のシートよりも耐熱性が高い、という構成を採用する。
【0011】
溶着方法に係る第6の手段として、上記第4または第5の手段において、前記絶縁性の部材は、前記第1のシートと前記第2のシートとの間に介在し、前記第2のシートよりも強度の高い第3のシートを備える、という構成を採用する。
【0012】
溶着方法に係る第7の手段として、上記第6の手段において、前記第3のシートは、前記複合材料より強度が高い、という構成を採用する。
【0013】
溶着装置に係る第1の手段として、導電性の複合材料を溶着する溶着装置であって、ヒータと、前記ヒータと前記複合材料とを相互に押圧させる押圧機構と、前記溶着対象と対向する面に取り付けられた、複数枚のシートからなる絶縁性の部材とを備える、という構成を採用する。
【0014】
溶着装置に係る第1の手段として、上記第1の手段において、前記絶縁性の部材は、一端が前記ヒータに取り付けられ、前記一端と対向する他端が自由端となっている、という構成を採用する。
【0015】
また、本開示では、溶着方法に係る手段として、導電性の強化材料を含む複合材料を溶着する溶着方法であって、 前記複合材料の加熱源としてヒータを用い、前記ヒータと複合材料との間に絶縁性を有する第1のシートを配置し、前記第1のシートと前記複合材料との間に、前記第1のシートよりも離形性に優れた第2のシートを配置し、前記第1のシート及び前記第2のシートを挟んだ状態で前記ヒータを前記複合材料に押圧させて前記複合材料を溶着させる、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、電熱ヒータと溶着対象との間の絶縁性を担保する構造の強度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る溶着装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る溶着装置におけるシートの配置を示す部分拡大図である。
【
図3】本開示の第2実施形態に係る溶着装置の構成を示す模式図である。
【
図4】本開示の第2実施形態に係る溶着装置の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本開示の一実施形態に係る溶着装置及び溶着方法について説明する。
【0019】
[第1実施形態]
本開示の第1の態様に係る溶着装置1は、ワークWを加熱溶着させるインパルス式の装置である。この溶着装置1は、
図1に示すように、制御装置2と、ヒータコントローラ3と、押付機構4と、ヒータ5と、4枚のシート6a、6b、6c、6dと、受け台7とを備えている。
【0020】
なお、ワークWは、シート状の複合材料の積層体である。また、複合材料は、例えば熱可塑性樹脂をマトリックスとし、炭素繊維を強化材料とするシート状のプリプレグ片である。さらに、上記炭素繊維は、周知のように電気的には導電性材料である。すなわち、本実施形態におけるワークWは、導電性材料を材料の一部として含む積層体である。
【0021】
このようなワークWは、シート状のプリプレグ片を所定枚数積層した積層体であり、最終製品の製造過程で製造される中間製造物である。すなわち、このようなワークW(積層体)を加熱溶着させる溶着装置1は、製造設備の1つである。
【0022】
制御装置2は、予めプログラムされた処理フローに基づいて押付機構4及びヒータコントローラ3の制御を行う所謂PLC(Programmable Logic Controller)である。この制御装置2は、ヒータコントローラ3にヒータ5の制御情報を出力すると共に、押付機構4の制御情報を出力する。
【0023】
ヒータコントローラ3は、後述するヒータ5の電極端子5bと接続されている。ヒータコントローラ3は、制御装置2から入力される制御情報に基づいて、ヒータ5に所定のパルス幅かつ所定レベルのインパルス状駆動電流を出力する。このインパルス状駆動電流におけるパルス幅及びレベルは、ヒータ5の発熱量を規定するものであり、制御装置2から入力される制御情報に基づいて適宜設定される。
【0024】
押付機構4は、伸縮部4aと、押付ブロック4bとを備えている。伸縮部4aは、シリンダ構造とされ、不図示のモータによって伸縮可能な長尺部材である。また、このような押付機構4は、溶着装置1において複数個所(例えば、4カ所)に設けられている。なお、伸縮部4aに設けられるモータは、制御装置2から入力される制御情報に基づいて制御される。
【0025】
押付ブロック4bは、直方体状の金属部材である。この押付ブロック4bは、複数の伸縮部4aの一端と固定されることにより、ワークWが載置された受け台7に近づく方向または離れる方向へと移動される。また、押付ブロック4bは、ワークWに面する押圧面が平滑とされ、ワークWの面積よりも大きく形状設定されている。
【0026】
ヒータ5は、リボンヒータであり、矩形シート状の発熱部5aと、当該発熱部5aを挟むように設けられた一対の電極端子5bとを備えている。発熱部5aは、押付ブロック4bの押圧面にシート6aを介して重ねて配置される。電極端子5bは、金属等の導電性材料から形成されており、ヒータコントローラ3にケーブルを介して接続されている。
【0027】
このようなヒータ5は、一対の電極端子5bが押付ブロック4bに係合することにより、押付ブロック4bと一体化されている。また、このようなヒータ5は、ヒータコントローラ3から一対の電極端子5b間にインパルス状駆動電流が給電されることにより、発熱部5aが全体的にインパルス状に発熱する。なお、ヒータ5における発熱部5aの矩形サイズは、ワークWのサイズよりも大きく設定されている。
【0028】
続いて、
図1に加え、
図2をも参照して4枚のシート6a、6b、6c、6dについて説明する。シート6aは、耐熱性及び電気絶縁性のある矩形のシートであり、例えば、シリコンラバーシートを用いる。このようなシート6aは、押付ブロック4bとヒータ5との間に設けられている。このシート6aは、絶縁性を有すると共に、300℃程度の熱に耐え得る耐熱性を有しており、ヒータ5による熱に耐えつつヒータ5と押付ブロック4bとを絶縁する。また、シリコンラバーシートのような弾性材料であれば、ヒータ5の形状に倣うよう変形する。
【0029】
シート6b、6c、6dは、ワークWとヒータ5との間に介在しており、本開示における絶縁性の部材60に相当する部材である。このようなシート6b、6c、6dは、溶着時において、ワークWとヒータ5とに押圧される部材である。シート6bはヒータと対面し、シート6dは溶着対象であるワークWと対面する。シート6cは、シート6bとシート6dの間に位置する。
【0030】
シート6bは、ヒータ5とワークWとの間に設けられると共に絶縁性を有する第1のシートである。このシート6bは、例えばポリイミド製シートである。また、このシート6bは、その厚さがシート6aと比較して薄く設定されている。さらに、このシート6bは、シート6dと比較して耐熱性及び絶縁性が高い特性を有している。
【0031】
シート6cは、例えば銅製シートであり、熱伝導性が高く、かつシート6b、6d及びワークWと比較して強度が高い特性を有している。なお、このシート6cは、銅製であるために導電性を有している。しかしながら、ヒータ5との間に介在するシート6b(第1のシート)は絶縁性の材料となっている。
【0032】
シート6dは、シート6c(第3のシート)とワークWとの間、つまりシート6b(第1のシート)とワークWとの間に設けられ、シート6b(第1のシート)よりも離形性に優れた第2のシートである。このシート6dは、複合材シートであり、押圧時にワークWと接触する。
【0033】
このシート6dは、耐熱性及び強度を向上させるため、例えばガラス繊維にフッ素樹脂を含侵させた絶縁性の複合材シートである。また、シート6dは、ガラス繊維を機材としていることからシート6dの表面には微細な孔や繊維に起因する凹凸が形成されている。そのため、接触面積が小さくなり、離形性が高い。さらに、フッ素樹脂は高い離形性もつ物質である。そのため、ガラス繊維に含浸させることで、シート6dの離形性をさらに高めている。したがって、シート6dは、他のシート6a、6b、6cと比較して離形性に優れている。
【0034】
ここで、上述した3つのシート6b、6c、6dは、ヒータ5側からワークW側にシート6b、シート6c、シート6dの順に配置されている。また、シート6bとシート6dとは、ヒータ5と重ならない縁部において接着されることで袋状(筒状)とされている。そして、シート6b及びシート6dにより形成された袋の内部にシート6cが配置される。
【0035】
受け台7は、
図1及び
図2に示すようにワークWが載置される。この受け台7における載置面(上面)は、平板状のワークWを変形させないように水平面である。このような受け台7は、例えば弾性を有するゴム製の板部材である。
【0036】
次に、本第1実施形態に係る溶着方法について説明する。この溶着方法は、上述した溶着装置1を用いてワークW(積層体)を融着するものである。
【0037】
この溶着方法では、製造の前工程で製造されたワークW(積層体)を溶着装置1の受け台7上に載置する。このワークWの載置は、例えば製造ラインに別途設けられた搬送装置によって行われる。なお、作業人による手作業によってワークWを受け台7上に載置してもよい。
【0038】
ワークWが受け台7上に載置されると、溶着装置1は、
図1に示すように、押付ブロック4bを受け台7側へと移動(下降)させ、押付ブロック4bにより、3枚のシート6b、6c、6dを介してヒータ5をワークWに押し付ける。すなわち、溶着装置1は、制御装置2が押付機構4に制御情報を出力することによって押付ブロック4bを下降させ、以ってシート6b、6c、6dを挟んだ状態で押付ブロック4bによってワークWを所定の押圧力で押圧させる。
【0039】
そして、制御装置2は、上記押圧状態において、ヒータコントローラ3からヒータ5にインパルス状駆動電流を給電する。すなわち、制御装置2は、制御装置2がヒータコントローラ3に制御情報を出力することによって、ヒータコントローラ3がインパルス状駆動電流を生成する。そして、このインパルス状駆動電流は、ヒータコントローラ3からヒータ5に給電される。
【0040】
この結果、ヒータ5は、インパルス状駆動電流のパルス幅及びレベルに応じた熱を発生させる。すなわち、ヒータ5に設けられた一対の電極端子5bを介して矩形シート状の発熱部5aにインパルス状駆動電流が流れることによって、発熱部5aが全体として所定温度まで発熱する。
【0041】
そして、発熱部5aが発する熱は、3枚のシート6b、6c、6dを介してワークWに伝熱し、当該ワークWを所定温度まで昇温させる。そして、この昇温によってワークWを構成する熱可塑性樹脂が溶融することで、プリプレグ片が相互に融着する。すなわち、ワークWを構成する各プリプレグ片は、各々の熱可塑性樹脂がヒータ5によって溶融温度まで加熱されることによって相互に融着する。
【0042】
ここで、ヒータ5は、インパルス状駆動電流におけるパルス幅の期間だけ発熱するので、当該期間が経過すると発熱を停止する。すなわち、ワークWの昇温は、パルス幅の期間だけに生じる。したがって、この期間が経過するとヒータ5からの加熱が終了するので、ワークWは急激に温度低下する。すなわち、この温度低下によって各プリプレグ片の熱可塑性樹脂が急激に温度低下して再固化する。そして、この再固化によってワークWは融着状態が機械的に安定したものとなる。
【0043】
このようにしてワークWの融着が完了すると、溶着装置1は、押付ブロック4bを上昇させてワークWの押圧状態を解除する。すなわち、溶着装置1は、制御装置2が押付機構4に制御情報を出力することにより押付ブロック4bを上昇させ、以って押付ブロック4b及びヒータ5をワークWから離間させる。
【0044】
本開示の1態様に係る溶着装置1及び溶着方法では、ヒータ5によるワークWの加熱において、ヒータ5とワークWとの間に絶縁性のシート6b(第1のシート)が介在される。また,シート6bとワークWとの間には、シート6cとシート6dとが介在される。
【0045】
例えば、ワークW中の炭素繊維がシート6dを破損させた場合やシート6dが熱により破損した場合においても、ヒータ5とワークWとの間にシート6b(第1のシート)が設けられ、かつシート6b(第1のシート)ワークWとの間にシート6c(第3のシート)が設けられることによって、絶縁性のシート6bにまで炭素繊維が達することを抑制できる。そのため,ヒータ5とワークWとの導通を抑制できる。
【0046】
[第2実施形態]
本開示の別の態様について説明する。なお、既に記載した態様と同一の構成については符号を同一とし、説明を省略する。
【0047】
本態様に係る溶着装置1は、
図3に示すように、シート6cとして、シート6bと同等のシートを用いている。つまり、先の態様の銅製のシート6cに代わり、先の態様におけるシート6bと同等のシートに置き換えた配置となっている。2枚のシート6b、6cは、第1実施形態と同様にポリイミド製である。そして、シート6b、6cとワークWとの間には、シート6dが配置される。また、シート6bとシート6cは、後述のように相対的にスライド可能とされている。
【0048】
この場合、シート6b、6cは、それぞれがスライドされることにより、一カ所に荷重が集中することなく、破損しにくくなる。一例として、ワークWに押圧されることで、中間に位置するシート6cに細かな孔が空いたとする。この場合、ワークWを押圧することで、孔を介してワークWに含まれる繊維が、ヒータ側に位置するシート6bにダメージを与えうる。しかし、本実施形態のシート6b、6cは相対的にスライド可能となっている。そのため、次のワークWの押圧では、先のワークWでダメージを受けた部位と中間に位置するシート6cに形成された孔とが、スライドすることで重ならなくなり、破損しにくくなる。そのため、ヒータ5とワークWとの導通を抑制できる。このように、本実施形態においては、シート6b、6cを積層することにより、シート6bの1枚の厚さを厚くした場合よりも、シート6bが炭素繊維と接触することを抑制できる。なお、本態様においては、ヒータ5側に位置するシート6bが本開示における第1のシート、中間に位置するシート6cが本開示における第2のシートに相当する。
【0049】
このようなシート6b、6c、6dは、それぞれ互いに固定され、さらに押付ブロック4bと接着された状態とされる。シート6b、6c、6dには、
図4に破線で示すように、それぞれ、端部に接着部位A、Bが設けられている。なお、接着部位Aと接着部位Bとは、シート6b、6dの積層方向から見て、互いに重ならない位置であって、ヒータ5と接触しない位置かつ、
図3の左右方向に沿って設けられている。そして、ヒータ側に位置するシート6bとシート6dとは、一端に設けられた接着部位Aにおいて接着されている。また、中間に位置するシート6cとシート6dとは、接着部位Aと反対側である他端に設けられた接着部位Bにおいて接着されている。また、中間に配置されるシート6cは、一端側においてヒータ5側のシート6bと接着されていない。これにより、シート6b、6cは、シート6dに対し互い違いに一方の端部が接着・固定されずに自由端とされている。そのため、押圧面あるいはワークWの押しつけブロックと対向する面に対し、シート6b、6cは相対的にスライド可能となっている。
【0050】
また、本実施形態に係る溶着装置1及び溶着方法においては、シート6b、6c、6dは、それぞれ端部の接着部位A、Bのいずれかにおいて接着され、他端が自由端とされている。これにより、シート6b、6c、6dに熱延びが生じた場合でも、シート6b、6c、6dは、自由端方向へと伸長可能であり、皺や折れ曲がりが生じにくい。
【0051】
以上、図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
また、上記各実施形態においては、シート6bをポリイミド製、シート6dをフッ素樹脂が含まれた複合材製としたが、本開示はこれに限定されない。例えば、シート6bは、耐熱性に優れた素材であれば、例えばシリコンとすることも可能である。また、シート6dについても、表面加工により離形性を確保した他の樹脂製としてもよい。
【0053】
また、上記第1実施形態においては、シート6b、6c、6dは、互いに一端が接着された状態としたが、本開示はこれに限定されない。例えば、シート6b、6c、6dは、複数個所を点接着されるものとしてもよい。また、シート6b、6c、6dは、ヒータ5及びワークWと接触しない端部において、スリーブケース状の固定部材等で固定されるものとしてもよい。
【0054】
さらに、上記各実施形態においては、強化材料として採用した炭素繊維により導電性を有するワークWを溶着対象物としたが、本開示はこれに限定されない。本開示は、炭素繊維以外の強化材料を採用する導電性の溶着対象物にも適用することが可能である。
【0055】
また、上記実施形態においては、溶着装置1は、インパルス式の溶着装置としたが、本開示はこれに限定されず、通電される加熱面が露出した溶着装置、または伝熱ヒータであれば適用可能である。
【0056】
また、シート6cは、銅以外の金属製シートとしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 溶着装置
2 制御装置
3 ヒータコントローラ
4 押付機構
4a 伸縮部
4b 押付ブロック
5 ヒータ
5a 発熱部
5b 電極端子
6a シート
6b シート
6c シート
6d シート
7 受け台