(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】内装材
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20240814BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20240814BHJP
B32B 19/06 20060101ALI20240814BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20240814BHJP
D03D 15/267 20210101ALI20240814BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20240814BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
E04F13/08 A
B32B3/30
B32B19/06
D03D1/00 Z
D03D15/267
E04B1/86 M
G10K11/16 120
(21)【出願番号】P 2020048952
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】木下 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良介
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-105743(JP,A)
【文献】特開2017-066568(JP,A)
【文献】実開昭59-117000(JP,U)
【文献】特開2016-142089(JP,A)
【文献】特開2019-108712(JP,A)
【文献】特開平11-065572(JP,A)
【文献】実公昭63-013285(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0262607(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
E04B 1/62- 1/99
B32B 1/00-43/00
D03D 1/00
D03D 15/267
G10K 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音性を有する内装材であって、
吸音性を有する吸音体と、
前記吸音体の表面側に設けられて三軸織物を有する表面材と、
を備え、
前記吸音体の表面側及び前記表面材は、一体的な凹形状をなすように複数の窪部が形成され、
前記表面材の前記三軸織物は、空隙部の面積割合が5%以上50%以下の範囲となっている
ことを特徴とする内装材。
【請求項2】
前記三軸織物の繊維は、樹脂によって硬化している
ことを特徴とする請求項1に記載の内装材。
【請求項3】
前記三軸織物は、ガラス繊維を含んでいる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に
記載の内装材。
【請求項4】
前記吸音体と前記表面材との間に中間シートが設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の内装材。
【請求項5】
前記中間シートは、ガラス不織布を含んでいる
ことを特徴とする請求項4に記載の内装材。
【請求項6】
前記吸音体と前記表面材との間に接着層が介在している
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の内装材。
【請求項7】
前記接着層は、固形分100%のホットメルト接着剤,固形分100%の湿気硬化型接着剤,粘度40Pa・s以上のゴム系接着剤,粘度40Pa・s以上のウレタン樹脂系接着剤のうちの少なくとも一種を含んでいる
ことを特徴とする請求項6に記載の内装材。
【請求項8】
前記窪部は、深さが1mm以上10mm以下である
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の内装材。
【請求項9】
前記吸音体は、グラスウールを含んで板状をなしている
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の内装材。
【請求項10】
前記吸音体は、厚さが、8mm以上24mm以下であり、且つ、前記窪部の深さよりも3mm以上大きい
ことを特徴とする請求項9に記載の内装材。
【請求項11】
前記吸音体は、内部中空の吸音室を複数形成された吸音構造体である
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音性を有する内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラスウール等からなる基材の表面に、塩化ビニル樹脂系フィルムやガラスクロス等からなる化粧シートを貼り合わせた内装材が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。このような特許文献1に記載の内装材によれば、吸音性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、商業施設や駅舎等のような壁面や床が硬質の素材で装飾されている空間においては、反響音が一般住宅と比較して大きくなっている。また、オフィスの会議室等においては、床にカーペットタイルが主に利用されているものの、比較的小さい空間内で複数の発生音源が存在する状況となることから、反響音が自然と大きくなってしまっている。
【0005】
このため、上述したような空間内に吸音材を多く配置することにより、反響音をほとんどなくすように吸音することが考えられるものの、反響音をなくしてしまうと、人は不安を感じるようになり、快適な空間にならなくなってしまう。
【0006】
このようなことから、本発明は、快適な空間とすることができる吸音性を有する内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための、本発明に係る内装材は、吸音性を有する内装材であって、吸音性を有する吸音体と、前記吸音体の表面側に設けられて三軸織物を有する表面材と、を備え、前記吸音体の表面側及び前記表面材は、一体的な凹形状をなすように複数の窪部が形成され、前記表面材の前記三軸織物は、空隙部の面積割合が5%以上50%以下の範囲となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る内装材によれば、三軸織物を有する表面材の空隙部の面積割合によって吸音体での吸音量を調整することができ、窪部の形状によって吸音体への音の入射角を調整して、吸音体での吸音波長(吸音周波数)を調整することができることから、表面材の空隙部の面積割合と窪部の形状とを適宜組み合わせることにより、目的とする波長(周波数)の音を吸収することができるので、快適な空間となる吸音性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る内装材の第一の実施形態の概略構成を表す断面図である。
【
図3】本発明に係る内装材の第二の実施形態の概略構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る内装材の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0011】
〈第一の実施形態〉
本発明に係る内装材の第一の実施形態を
図1,2に基づいて説明する。
【0012】
本実施形態に係る内装材は、
図1に示すように、吸音性を有する内装材10であって、吸音性を有する吸音体11と、吸音体11の表面側(
図1中、上面側)に設けられて三軸織物を有する表面材12と、吸音体11と表面材12との間に設けられた中間シート13と、を備え、吸音体11の表面側及び表面材12並びに中間シート13は、一体的な凹形状をなすように複数の窪部10aが形成されているものである。
【0013】
窪部10aは、その深さDsが1mm以上10mm以下であると好ましい。深さDsが1mm未満であると、十分な吸音性能を発現し難くなってしまい、好ましくない。他方、深さDsが10mmを超えると、表面積が大きくなり過ぎて、不燃認定範囲外になるおそれがあり、好ましくない。
【0014】
吸音体11は、グラスウール,ガラスペーパ,無機系接着剤で固められたフェルト材等を含んでおり、板状をなしている。無機系接着剤としては、例えば、シリカを主成分とするシリカ系接着剤,セラミックを主成分とするセラミック系接着剤,セメントを主成分とするセメント系接着剤を挙げることができる。吸音体11は、グラスウール等を含むことにより、多孔質となり、軽量性及び吸音性を大きく発現できる。
【0015】
特に、グラスウール(約2kg/m2程度)は、厚みによって若干異なってくるが、単体で残響室法において平均吸音率0.5%~1.0%程度の吸音性能を有しているため、非常に好ましい。
【0016】
また、吸音体11は、グラスウール(約2kg/m2程度)である場合、厚さTaが8mm以上24mm以下であると好ましい。厚さTaが8mmよりも小さいと、吸音性能(残響室法において平均吸音率が5%以上)を十分に発現し難くなってしまい、好ましくない。他方、厚さTaが24mmよりも大きいと、軽量性及び不燃性に難点を生じ易くなってしまい、好ましくない。
【0017】
さらに、吸音体11は、厚さTaが、窪部10aの深さDsよりも3mm以上大きい(Ta≧Ds+3(mm))と好ましい(例えば、窪部10aの深さDsを10mmとするとき、吸音体11の厚さTaを少なくとも13mmとする)。なぜなら、3mm未満であると、グラスウールのバインダとガラス繊維が崩れ易くなって成型性を保持し難くなってしまい、好ましくないからである。
【0018】
なお、吸音体11は、ISO5660-1に準拠し、建築基準法第2条第9号及び建築基準法施工令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において(1)加熱開始後20分間の総発熱量(MJ/m2)が4MJ/m2以下であり(2)加熱開始後20分間の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず(3)加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないという条件を満たす不燃性を有していると好ましい。
【0019】
このような不燃性を吸音体11が有することにより、内装材10の全体発熱量に余裕ができるので、内装材10に不燃性を付与しつつも、表面材12に対して加飾を施すことができ、内装材10の意匠性を高めることができる。
【0020】
表面材12は、
図1,2に示すように、一方面と他方面との間を貫通する空隙部12bを有するようにガラス繊維の糸条12aを三軸方向で織った三軸織物を含んでおり、空隙部12bの面積割合が5%以上50%以下の範囲に調整されている。
【0021】
三軸織物は、厚さが100μm以上1mm以下であり、質量が500g/m2以下であると、軽量化を図ることができるので好ましい。表面材12は、織物の糸条12aのガラス繊維間に樹脂が含浸して硬化しており、剛性が高くなっている。含浸樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂,熱硬化性樹脂,紫外線硬化性樹脂等を挙げることができる。
【0022】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂,ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂,ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂,ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂,液晶ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂や、ポリエチレン(PE)樹脂,ポリプロピレン(PP)樹脂,ポリブチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂や、スチレン系樹脂や、ポリオキシメチレン(POM)樹脂,ポリアミド(PA)樹脂,ポリカーボネート(PC)樹脂,ポリメチレンメタクリレート(PMMA)樹脂,ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂,ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂,ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂,変性PPE樹脂,熱可塑性ポリイミド(PI)樹脂,ポリアミドイミド(PAI)樹脂,ポリエーテルイミド(PEI)樹脂,ポリスルホン(PSU)樹脂,変性PSU樹脂,ポリエーテルスルホン(PES)樹脂,ポリケトン(PK)樹脂,ポリエーテルケトン(PEK)樹脂,ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂,ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂,ポリアリレート(PAR)樹脂,ポリエーテルニトリル(PEN)樹脂,熱可塑性フェノール系樹脂,フェノキシ樹脂,ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素系樹脂、更に、ポリスチレン系樹脂,ポリオレフィン系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリアミド系樹脂,ポリブタジエン系樹脂,ポリイソプレン系樹脂,フッ素系樹脂等の熱可塑エラストマーや、これらの共重合体,変性体,2種類以上ブレンドした樹脂等が挙げられる。
【0023】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂(PF),エポキシ樹脂(EP),メラミン樹脂(MF),ユリア樹脂(UF),不飽和ポリエステル樹脂(UP),アルキド樹脂,ポリウレタン(PUR),熱硬化性ポリイミド(PI)等が挙げられる。
【0024】
上記紫外線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系,エポキシ系等が挙げられる。
【0025】
図1に示すように、中間シート13は、吸音体11を覆うようにして配設され、不燃性能及び吸音性能を満たす厚さ及び密度等を有するガラス不織布を含んでいる。
【0026】
また、吸音体11と表面材12との間、すなわち、吸音体11と中間シート13との間及び中間シート13と表面材12との間には、これらの間を接合する接着層(図示省略)が介在している。
【0027】
上記接着層としては、例えば、固形分100%のホットメルト接着剤,固形分100%の湿気硬化型(例えばポリウレタン(PUR)系樹脂)接着剤,高粘度のゴム系接着剤,高粘度のウレタン樹脂系接着剤を挙げることができる。ホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂),ポリアミド系樹脂等が挙げられる。
【0028】
上記接着層に上述した接着剤を適用すると、吸音体11や表面材12や中間シート13の細孔内や、表面材12の空隙部12b内に入り込んでしまうことを抑制して、吸音体11と中間シート13と表面材12との接着強度の低下を抑制できるので、非常に好ましい。なお、高粘度のゴム系接着剤や高粘度のウレタン樹脂系接着剤としては、例えば、粘度40Pa・s以上、より好ましくは50Pa・s以上のものを適用すると好ましい。
【0029】
このような本実施形態に係る内装材10の製造方法を次に説明する。
まず、上述した樹脂(例えば熱硬化性樹脂)を水等の溶媒に溶解又は分散させて含浸液を作成し、表面材12を含浸液中に浸漬して、表面材12の織物の糸条12aのガラス繊維間に樹脂を含浸させる。
【0030】
なお、樹脂の含浸方法としては、例えば、容器内の含浸液中に枚葉状の表面材12をそのまま浸漬する方法や、含浸液を付着させた対をなすロール間にウエブ状の表面材を走行させて含浸液を表面材に含浸させた後、ウエブを裁断する方法等が挙げられる。
【0031】
次に、吸音体11の表面(
図1中、上面)に、シート状に形成した接着層(例えばホットメルト接着剤)と、中間シート13と、網目状に形成した接着層(例えばホットメルト接着剤)と、樹脂を含浸させた表面材12とを順次積層する。
【0032】
続いて、吸音体11の表面側及び表面材12並びに中間シート13が一体的な凹形状をなすように、凸形状を複数有する金型を表面材12へ向けて押圧しながら加熱(例えば100℃前後×30秒前後)する。これにより、樹脂が硬化すると共に接着剤が溶融し、表面材12が硬化すると共に、吸音体11と中間シート13と表面材12とが接着層により接合して、一体的な凹形状をなすように複数の窪部10aが形成された内装材10を得ることができる。
【0033】
ここで、吸音体11及び中間シート13は、柔軟性を有していることから、凸形状を有する金型で押圧しても、当初の形状に復元し易くなっている。他方、表面材12は、樹脂を含浸していることから、凸形状を有する金型で押圧されながら加熱されることにより、金型の形状に沿った形状に硬化して、その形状を保ち続けることができる。このため、内装材10は、窪部10aを有した形状を維持することができる。
【0034】
また、二軸(縦糸,横糸)織物からなる表面材であると、方向性が縦方向及び横方向であることから、樹脂を含浸させて硬化させたとき、縦方向又は横方向に撓み易くなってしまう。これに対し、三軸(軸糸,右上がりバイアス糸,左上がりバイアス糸)織物からなる表面材12であるので、方向性が斜め方向となることから、樹脂を含浸させて硬化させたとき、剛性を保つことができる。
【0035】
このようにして得られた内装材10は、表面材12の空隙部12bの面積割合によって吸音体11での吸音量を調整することができ、窪部10aの形状(例えば傾斜角度等)によって吸音体11への音の入射角を調整して、吸音体11での吸音波長(吸音周波数)を調整することができる。
【0036】
具体的には、例えば、ガラス繊維の糸条12aの幅Wを4mm、織角度θを60°としたとき、表面材12の空隙部12bの面積割合を約30%とすることができる。このとき、糸条12aの幅Wを小さくする、又は、織角度θを大きくすると、表面材12の空隙部12bの面積割合を大きくすることができる。他方、糸条12aの幅Wを大きくする、又は、織角度θを小さくすると、表面材12の空隙部12bの面積割合を小さくすることができる。
【0037】
このように表面材12の空隙部12bの面積割合(5%以上50%以下)と窪部10aの形状とを適宜組み合わせることにより、目的とする波長(周波数)の音を吸収することができる。
【0038】
具体的には、一般的に、男性の話し声は周波数500Hz前後,女性の話し声は周波数1000Hz,人が不快に感じる音は周波数2000~4000Hzぐらいである。そこで、人が不快に感じる音(2000~4000Hz)を主に吸収して、人が不快に感じにくい雑音(ホワイトノイズ)をほとんど吸収することなく空間に残すように吸音周波数を調整するのである。
【0039】
したがって、本実施形態に係る内装材10によれば、快適な空間となる吸音性を有することができる。
【0040】
また、吸音体11(約2kg/m2程度)及び表面材12(500g/m2以下)が軽量であることから、壁材はもちろんのこと、天井材に利用することができる。
【0041】
このとき、四角形状の枠により内装材10の四辺を保持して吊支できるだけでなく、表面材12を成形硬化させることができることから、例えば、枠を嵌合させる溝を内装材10の中央部分に形成し、内装材10の中央部分を枠で保持して吊支できるようにすると、枠の数を減らすことができる。また、曲面形状や部分的に段差を有する形状等に成形することも可能であることから、ドーム形状をなす天井や、梁等の段差を有する天井の天井材としても適用することができる。
【0042】
〈第二の実施形態〉
本発明に係る内装材の第二の実施形態を
図3に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態の説明と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態の説明と重複する説明を省略する。
【0043】
本実施形態に係る内装材は、
図3に示すように、吸音性を有する内装材20であって、吸音性を有する吸音体21と、吸音体21の表面側(
図3中、上面側)に設けられて三軸織物を有する表面材12と、吸音体21と表面材12との間に設けられた中間シート13と、を備え、吸音体21の表面側及び表面材12並びに中間シート13が一体的な凹形状をなすように複数の窪部10aが形成されているものである。
【0044】
吸音体21は、表面材12と対向するように配設される背面板21aと、表面材12と背面板21aとの間に複数配設されて中間シート13と背面板21aとの間を繋ぐ壁板21bと、隣り合う壁板21bの間に複数配設されて隣り合う壁板21bの間及び背面板21aと表面材12との間を繋ぐ仕切板21cと、を備えることにより、内部中空の吸音室21Aを複数形成された吸音構造体となっている。
【0045】
背面板21aは、表面材12及び中間シート13の全面域にわたって対向できる大きさをなしている。壁板21bは、基端側(
図3中、下端側)が、背面板21aの、
図3中、紙面垂直方向全長にわたって垂直方向で立設され、先端側(
図3中、上端側)が、表面材12及び中間シート13の窪部20a部分に固定されている。仕切板21cは、壁板21bの長手方向(
図3中、紙面垂直方向)に沿って規定の間隔で複数配設されている。
【0046】
背面板21a,壁板21b,仕切板21cは、不燃性や軽量性を有する材料(例えば、大建工業株式会社製ダイライト(登録商標)や、エムエフ株式会社製メガボード(登録商標)等)からなり、その厚さが3mm以上6mm以下であると好ましい。厚さが3mm未満であると、剛性が低くなって撓み易くなり、構造体を構成し難くなるため、好ましくない。他方、厚さが6mmを超えると、発熱量が増加してしまい、不燃性に難点を生じ易くなってしまうため、好ましくない。
【0047】
なお、吸音体21は、ISO5660-1に準拠し、建築基準法第2条第9号及び建築基準法施工令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において(1)加熱開始後20分間の総発熱量(MJ/m2)が4MJ/m2以下であり(2)加熱開始後20分間の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず(3)加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないという条件を満たす不燃性を有していると好ましい。
【0048】
このような本実施形態に係る内装材20においては、前述した実施形態の場合と同様にして、中間シート13と、網目状に形成した接着層(例えばホットメルト接着剤)と、樹脂を含浸させた表面材12とを積層し、金型を押圧しながら加熱(例えば100℃前後×30秒前後)して窪部20aを形成した後、吸音体21の壁板21bを表面材12及び中間シート13の窪部20a部分に接着剤又はビス等で固定することにより、得ることができる。
【0049】
このようにして得られた内装材20においては、前述した実施形態の場合と同様に、表面材12の空隙部12bの面積割合によって吸音体21での吸音量を調整することができると共に、窪部20aの形状(例えば傾斜角度等)によって吸音体21への音の入射角を調整して、吸音体21での吸音波長(吸音周波数)を調整することができるのはもちろんのこと、さらに、吸音体21の吸音室21Aの空間サイズ(例えば仕切板21cの間隔)によって、吸音性能を調整することができる。
【0050】
具体的には、例えば、背面板21a,壁板21b,仕切板21cの厚さを3mmとし、対向する壁板21b間の長さ及び対向する仕切板21cの間の長さ並びに壁板21bの高さをそれぞれ15mmとすることにより、吸音室21Aに吸収した音を効果的に散乱させて、吸音効果を促進させることができる。
【0051】
したがって、本実施形態に係る内装材20によれば、前述した実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した実施形態の場合よりも効率よく吸音することができる。
【0052】
〈他の実施形態〉
なお、前述した実施形態においては、吸音体11,21と中間シート13との間及び中間シート13と表面材12との間に接着剤を設けて接着層を介在させた内装材10,20の場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、接着剤を省略して、表面材12に含浸させた樹脂を利用することによって、吸音体11,21と表面材12との間を接合させた内装材とすることも可能である。
【0053】
また、前述した実施形態においては、表面材12に含浸させた樹脂によって表面材12を硬化させた内装材10,20の場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、樹脂を含浸させていない表面材を使用して、吸音体11,21と表面材との間に接着剤を設けて接着層を介在させることにより、接着剤によって表面材を硬化させた内装材とすることも可能である。
【0054】
また、前述した実施形態においては、吸音体11,21と表面材12との間に中間シート13を設けた内装材10,20の場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、中間シート13を省略した内装材とすることも可能である。
【0055】
また、前述した実施形態において、表面材12の表面に加飾層をさらに設けて意匠性を高めた内装材とすることも可能である。加飾層は、印刷インキが塗布されて形成される層である。印刷インキとしては、例えば、無機系インキ,有機系インキ等を挙げることができる。印刷方法としては、例えば、インクジェット印刷法,ドブ漬け法,シルク印刷法等を挙げることができる。例えば、多彩なグラデーションの表現を行う場合、インクジェット印刷法が好適である。また、単色の表現を行う場合、ドブ漬け法が好適である。印刷インキの硬化方法としては、例えば、UV硬化法、熱硬化法等を挙げることができる。
【0056】
このような内装材は、例えば、印刷時のインキの裏抜けを防止するために、表面材の裏面にバックシートを貼り合わせてから、インクジェット印刷等によって、表面材の表面にインキを塗布して加飾層を形成した後、表面材からバックシートを剥がし、以下、前述した実施形態と同様に実施することにより、得ることができる。
【0057】
なお、バックシートは、接着力が2.5N/25mm以上3.5N/25mm以下であると好ましい。接着力が2.5N/25mm未満であると、接着力が小さ過ぎるため、バックシートが剥がれ易くなってしまうので、好ましくない。他方、接着力が3.5N/25mmを超えると、印刷終了後にバックシートを剥がすときに表面材の端部がほつれてしまうおそれがあるため、好ましくない。
【0058】
また、前述した実施形態において、表面材の表面に凹凸形状(模様)をさらに設けた内装材とすることも可能である。このような内装材は、前述した実施形態で使用した金型の内面にさらに凹凸形状を設けておくことにより、容易に製造することができると共に、意匠性を高めることができると同時に、さらなる吸音特性も発現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る内装材は、快適な空間となる吸音性を有することができるので、建設産業等を始めとして、各種産業において極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 内装材
10a 窪部
11 吸音体
12 表面材
12a 糸条
12b 空隙部
13 中間シート
20 内装材
20a 窪部
21 吸音体
21A 吸音室
21a 背面板
21b 壁板
21c 仕切板