(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】媒体カセット
(51)【国際特許分類】
B65H 16/08 20060101AFI20240814BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20240814BHJP
B41J 11/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B65H16/08
B41J15/04
B41J11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020062025
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】山口 真誠
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-179376(JP,A)
【文献】実開平04-037143(JP,U)
【文献】特開2020-179456(JP,A)
【文献】特開2017-217816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 16/00-16/10
B41J 15/00-15/24
B41J 11/00-11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続媒体がロール状に巻回されたロール媒体を収容可能な媒体カセットであって、
前記ロール媒体の下端を挟む位置であって前記ロール媒体の回転軸方向の各端部位置で前記ロール媒体の下側部分の外周面と接触し、前記ロール媒体の前記回転軸方向の中央部分で前記ロール媒体の下側部分の外周面と接触せずに、前記ロール媒体を回転可能に支持する2組の支持ローラ対を含む支持部を備えて
おり、
前記支持部は、前記回転軸方向において前記2組の支持ローラ対の内側に配置され、その上端が前記2組の支持ローラ対の上端よりも下方に配置された2組の内側支持ローラ対をさらに含んでおり、
前記2組の内側支持ローラ対は、前記ロール媒体よりも前記回転軸方向の長さが短い別のロール媒体の下端を挟む位置であって前記別のロール媒体の前記回転軸方向の各端部位置で前記別のロール媒体の下側部分の外周面と接触し、前記別のロール媒体の前記回転軸方向の中央部分で前記別のロール媒体の下側部分の外周面と接触せずに、前記別のロール媒体を回転可能に支持し、
前記2組の内側支持ローラ対のそれぞれのローラは、その回転軸が前記2組の支持ローラ対のそれぞれのローラの回転軸よりも下方にあるように配置されていることを特徴とする媒体カセット。
【請求項2】
前記2組の支持ローラ対及び前記2組の内側支持ローラ対のそれぞれのローラは、個別に軸部を有する個別ローラから構成されていることを特徴とする請求項
1に記載の媒体カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール媒体を収容可能な媒体カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像形成装置本体の装着口に着脱可能であり、ロール紙(ロール媒体)を軸支した状態で収容する給紙カセット(媒体カセット)について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の給紙カセットにおけるロール紙の支持構成では、ロール紙の交換作業が煩雑になり得る。例えば、新しいロール紙の軸を給紙カセットに取り付ける際に、給紙カセットの軸受けにロール紙の軸が適切に支持されるようにロール紙の位置を調整する作業等が生じ得る。
【0005】
そこで、本発明者は、ロール媒体(例えば、ロール紙)の交換作業を容易にするために、ロール媒体の下端を挟む両側のそれぞれにおいて、ロール媒体の回転軸方向に隣接して配置された複数の支持ローラで、当該回転軸方向に亘ってロール媒体の下側部分の外周面全体を支持する媒体カセットの構成について検討した。かかる構成においては、回転軸方向において配置された複数の支持ローラが、製造誤差などによりローラ外径にばらつきが生じていると、ロール媒体は最も外径の大きなローラと接触した状態で支持される。このとき、支持ローラがロール媒体の回転軸方向の中央部分と接触していると、ロール媒体の回転軸が比較的大きく傾く。このようにロール媒体の回転軸が大きく傾いた状態であると、ロール媒体から巻き解かれた連続媒体(ロール状に巻回されることでロール媒体を構成する連続媒体)に斜行が生じやすくなる。
【0006】
本発明の目的は、ロール媒体の交換作業が容易であり、且つ、連続媒体の斜行を抑制することが可能な媒体カセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の媒体カセットは、連続媒体がロール状に巻回されたロール媒体を収容可能な媒体カセットであって、前記ロール媒体の下端を挟む位置であって前記ロール媒体の回転軸方向の各端部位置で前記ロール媒体の下側部分の外周面と接触し、前記ロール媒体の前記回転軸方向の中央部分で前記ロール媒体の下側部分の外周面と接触せずに、前記ロール媒体を回転可能に支持する2組の支持ローラ対を含む支持部を備えており、前記支持部は、前記回転軸方向において前記2組の支持ローラ対の内側に配置され、その上端が前記2組の支持ローラ対の上端よりも下方に配置された2組の内側支持ローラ対をさらに含んでおり、前記2組の内側支持ローラ対は、前記ロール媒体よりも前記回転軸方向の長さが短い別のロール媒体の下端を挟む位置であって前記別のロール媒体の前記回転軸方向の各端部位置で前記別のロール媒体の下側部分の外周面と接触し、前記別のロール媒体の前記回転軸方向の中央部分で前記別のロール媒体の下側部分の外周面と接触せずに、前記別のロール媒体を回転可能に支持し、前記2組の内側支持ローラ対のそれぞれのローラは、その回転軸が前記2組の支持ローラ対のそれぞれのローラの回転軸よりも下方にあるように配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の媒体カセットによると、支持部の2組の支持ローラ対がロール媒体の下側部分の外周面と接触してロール媒体を支持する構成となる。このため、ロール媒体の位置を調整する作業が不要となり、ロール媒体の交換作業が容易となる。また、2組の支持ローラ対でロール媒体の中央部分を支持せずに両端部位置を支持することが可能となる。このため、ロール媒体をその回転軸方向の中央部分で支持するよりも回転軸の傾きが小さくなる。このため、ロール媒体から巻き解かれた連続媒体の斜行を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る給紙カセットが採用されたプリンタの概略構成図である。
【
図3】
図2に示すIII-III線に沿った支持部の断面図である。
【
図4】
図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】2組の支持ローラ対間においてロール紙を支持する支持位置に上下方向のズレが生じたときのロール紙の回転軸の傾き状況を示しており、(a)はロール紙の両端部を支持するときの状況図であり、(b)は一方がロール紙の中央部分を支持し他方がロール紙の端部を支持するときの状況図である。
【
図6】第1変形例に係る支持部の要部断面図である。
【
図7】第2変形例に係る給紙カセットを示しており、(a)は要部断面図であり、(b)は要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る給紙カセット1が採用されたプリンタ100について説明する。
【0011】
プリンタ100は、
図1に示すように、筐体100aと、給紙カセット1と、給紙部2と、搬送部3と、切断部4と、ヘッド5と、排紙トレイ6と、制御部7とを含む。給紙カセット1は、筐体100aの下部に着脱可能である。本実施形態における給紙カセット1が、本発明の「媒体カセット」に該当する。排紙トレイ6は、筐体100aの上部の一側壁を構成し、筐体100aに対して開閉可能である。
【0012】
給紙カセット1には、本発明の「ロール媒体」に該当するロール紙R1,R2を選択的に収容可能である。ロール紙R1は、後述のロール紙R2よりも軸方向D(
図1中紙面垂直方向)の長さが長いだけであり、それ以外はロール紙R2と同様な構成である。このため、ロール紙R1について主に説明し、ロール紙R2の詳細の構成は省略する。ロール紙R1は、
図1に示すように、円筒状の芯部材(紙管)Rcの外周面に、本発明の「連続媒体」に該当する用紙Pがロール状に巻回されたものである。ロール紙R1は、その回転軸Rx(芯部材Rcの中心軸)に沿った軸方向Dが鉛直方向と直交するように配置される。なお、ロール紙R2についても、同様にして配置される。回転軸Rxの軸方向Dは、用紙Pの幅方向にも該当する。また、本実施形態においては、ロール紙R1から用紙Pが巻き解かれて当該ロール紙R1から離れるように搬送される方向Aが、搬送方向である。そして、用紙Pが搬送されるときのロール紙R1の回転方向が、ロール紙R1の巻き解かれる方向Bである。
【0013】
給紙カセット1は、
図1に示すように、トレイ11と、支持部12とを有する。トレイ11は、上方に開口した箱形状を有し、ロール紙R1,R2を選択的に収容可能に構成されている。支持部12は、支持台13と、4組の支持ローラ対21~24と、ローラ25とを有し、収容されたロール紙R1,R2の下側部分の外周面を支持しつつ当該ロール紙R1を回転可能に支持する。
【0014】
支持台13は、
図1及び
図2に示すように、回転軸Rxと直交する水平方向Cに互いに離隔して配置された2つの台部13a,13bを有している。これら2つの台部13a,13bは、
図1に示すように、トレイ11の底部11aに着脱可能に設けられている。また、各台部13a,13bは、
図2に示すように、軸方向Dに沿って長尺に延在している。本実施形態における台部13a,13bは、用紙P、すなわちロール紙R1の幅よりも若干長く形成されている。台部13aは、支持部12に支持されたロール紙R1の回転軸Rxよりも
図1中左側に配置されている。台部13aは、傾斜面13a1を有している。台部13bは、支持部12に支持されたロール紙R1の回転軸Rxよりも
図1中右側に配置されている。台部13bも傾斜面13b1を有している。これら支持台13の2つの傾斜面13a1,13b1は、
図1に示すように、水平方向Cにおいて、トレイ11の底面11a1からの高さが回転軸Rxから離れるに連れて高くなるように傾斜している。
【0015】
2組の支持ローラ対21,22は、
図2及び
図3に示すように、水平方向Cにおいて、ロール紙R1の下端を挟む位置にそれぞれ配置された2つの支持ローラ21a,22aによって構成されている。また、2組の支持ローラ対23,24は、水平方向Cにおいて、ロール紙R2の下端を挟む位置にそれぞれ配置された2つの支持ローラ23a,24aによって構成されている。各支持ローラ21a~24aは、傾斜面13a1,13b1の下方側に配置されている。また、各支持ローラ21a~24aは、
図2及び
図3に示すように、円筒状のローラ本体21a1~24a1と、ローラ本体21a1~24a1に挿通された軸部21a2~24a2とを有している。軸部21a2~24a2は、ローラ本体21a1~24a1に一体的に固定されている。これら支持ローラ21a~24aは、軸部21a2~24a2を介して支持台13に個別に回転可能に支持されている。つまり、各組の支持ローラ対21~24は、個別に回転可能な支持ローラ21a~24aによって構成されている。本実施形態における支持ローラ21a~24aは、本発明の「個別ローラ」に該当する。
【0016】
4組の支持ローラ対21~24は、
図2に示すように、軸方向Dに配置されており、そのうちの2組の支持ローラ対21,22が、軸方向Dにおいて最も外側に配置されている。つまり、2組の支持ローラ対23,24は、軸方向Dにおいて、2組の支持ローラ対21,22の内側に配置されている。また、2組の支持ローラ対21,22は、
図2及び
図3に示すように、ロール紙R1の軸方向Dの両端部位置でロール紙R1の下側部分の外周面と接触し、ロール紙R1を回転可能に下方から支持する。なお、2組の支持ローラ対21,22は、ロール紙R1の軸方向Dの中央部分でロール紙R1の下側部分の外周面と接触しない。本実施形態における2組の支持ローラ対21,22が、本発明の「2組の支持ローラ対」に該当する。また、本実施形態においては、
図3に示すように、ロール紙R1,R2のそれぞれを軸方向Dに沿って略3等分し、軸方向Dの両端に位置する部分を各端部とし、各端部に挟まれた部分を中央部分と定義し、これらが本発明の「端部」及び「中央部分」に該当する。
【0017】
また、2組の支持ローラ対23,24は、
図2及び
図3に示すように、ロール紙R2の軸方向Dの両端部位置でロール紙R2の下側部分の外周面と接触し、ロール紙R2を回転可能に下方から支持する。なお、2組の支持ローラ対23,24は、ロール紙R2の軸方向Dの中央部分でロール紙R2の下側部分の外周面と接触しない。また、2組の支持ローラ対23,24は、
図3に示すように、上端が2組の支持ローラ対21,22の上端よりも下方に配置されている。つまり、2組の支持ローラ対23,24は、2組の支持ローラ対21,22によって支持されたロール紙R1と接触しないように、下方に配置されている。本実施形態における2組の支持ローラ対23,24が、本発明の「2組の内側支持ローラ対」に該当する。
【0018】
ローラ25は、ロール紙Rから巻き解かれた用紙Pを案内するためのローラであって、軸方向Dに沿って長尺に延在している。ローラ25も、
図2に示すように、円柱状のローラ本体25aと、ローラ本体25aに挿通された軸部25bとを有している。軸部25bは、ローラ本体25aに一体的に固定されている。ローラ25は、軸部25bを介して支持台13に回転可能に支持されている。
【0019】
給紙部2は、
図1に示すように、給紙ローラ2aと、アーム2bと、伝達機構(不図示)と、給紙モータ2M(
図4参照)とを有する。給紙ローラ2aは、アーム2bの先端に軸支されている。アーム2bは、支軸2cに回動自在に支持されている。伝達機構は、制御部7の制御により給紙モータ2Mが駆動されたときに、その動力を給紙ローラ2aに伝達する。つまり、給紙モータ2Mが正回転するように駆動されると、用紙Pが搬送方向Aに給紙されるように給紙ローラ2aが回転する。このとき、伝達機構は、給紙ローラ2aがトレイ11の底面11a1に近づくようにアーム2bを付勢する。これにより、用紙Pが搬送方向Aに給紙される。なお、アーム2bは、給紙カセット1を取り外す際に上方へ退避可能に構成されている。
【0020】
搬送部3は、
図1に示すように、3組の搬送ローラ対3a~3cと、第1搬送モータ3Ma(
図4参照)と、第2搬送モータ3Mb(
図4参照)とを有している。搬送ローラ対3aは、第1搬送モータ3Maの駆動により回転する駆動ローラと、駆動ローラに連れ回る従動ローラとで構成されている。2組の搬送ローラ対3b,3cは、第2搬送モータ3Mbの駆動により回転する駆動ローラと、駆動ローラに連れ回る従動ローラとで構成されている。制御部7の制御により第1及び第2搬送モータ3Ma,3Mbが駆動され、各搬送ローラ対3a~3cが用紙Pを挟持しつつ回転することで、用紙Pが搬送される。
【0021】
センサ9は、
図1に示すように、筐体100aに設けられており、用紙Pの搬送方向Aにおいて、搬送ローラ対3aよりも上流で給紙ローラ2aよりも下流に配置されている。また、センサ9は、用紙Pの搬送方向Aにおいて、搬送ローラ対3aと給紙ローラ2aとの間における用紙Pの先端を検出し、その検出信号を制御部7に出力する。
【0022】
切断部4は、
図1に示すように、筐体100aに固定されており、搬送ローラ対3aの上方に配置されている。切断部4は、カッター4aと、カッター4aを駆動させる切断モータ4M(
図4参照)とを含む。ロール紙R1から巻き解かれて搬送された用紙Pは、制御部7の制御により切断モータ4Mが駆動されることで、カッター4aにより切断される。これにより、用紙Pの後端が形成される。
【0023】
ヘッド5は、下面に形成された複数のノズル(図示略)と、ドライバIC5a(
図4参照)とを含む。制御部7の制御によりドライバIC5aが駆動されると、ノズルからインクが吐出され、搬送部3によって搬送された用紙Pに対して画像が記録される。なお、ヘッド5は、位置が固定された状態でノズルからインクを吐出するライン式、及び、軸方向Dに移動しつつノズルからインクを吐出するシリアル式のいずれでもよい。ヘッド5により画像が記録されかつカッター4aにより切断された用紙Pは、筐体100aに対して開いた状態の排紙トレイ6に受容される。
【0024】
制御部7は、
図4に示すように、内部バス100cを介して、給紙モータ2M、第1搬送モータ3Ma、第2搬送モータ3Mb、ドライバIC5a、切断モータ4M、及び、センサ9と接続されている。
【0025】
制御部7は、CPU(Central Processing Unit)7a、ROM(Read Only Memory)7b及びRAM(Random Access Memory)7cを有する。ROM7bには、CPU7aが各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM7cは、CPU7aがプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。
【0026】
続いて、給紙カセット1に収容されたロール紙R1の用紙Pへの画像記録動作について説明する。
【0027】
制御部7は、記録指令を受信すると、給紙モータ2Mが正回転するように駆動する。これにより、用紙Pが給紙ローラ2aにより、搬送方向Aに給紙される。このとき、ロール紙R1の軸方向Dの両端部を支持する2組の支持ローラ対21,22は、給紙ローラ2aの用紙Pの給紙に伴うロール紙R1の回転に伴って回転する。そして、制御部7は、センサ9から用紙Pの先端を検出した信号を受信すると、用紙Pの先端部が搬送ローラ対3aに挟持可能な位置まで給紙モータ2Mを駆動させてから停止させる。この後、制御部7は、第1及び第2搬送モータ3Ma,3Mbが正回転するように駆動させて3組の搬送ローラ対3a~3cで用紙Pを搬送する。そして、用紙Pがヘッド5と対向する位置を通過する際に、制御部7が、ドライバIC5aを駆動して、ヘッド5のノズルからインクを吐出させる。こうして、用紙Pに所望の画像を記録する。また、このとき、制御部7は、第1及び第2搬送モータ3Ma,3Mbの駆動を停止した後、切断モータ4Mを駆動して、用紙Pを所望位置で切断する。この後、制御部7は、第2搬送モータ3Mbを駆動して、切断された用紙Pを搬送する。このとき、用紙Pに画像をさらに記録する際は、制御部7が、ドライバIC5aを駆動して、ヘッド5のノズルからインクを吐出させる。そして、画像が形成された用紙Pを排紙トレイ6に排出し、制御部7は、第2搬送モータ3Mbの駆動を停止する。こうして、ロール紙R1の用紙Pへの一連の画像記録動作が終了する。
【0028】
なお、ロール紙R2の用紙Pに画像を記録する際は、ロール紙R1に代えてロール紙R2を給紙カセット1に収容する。このとき、ロール紙R2は、2組の支持ローラ対23,24によって軸方向Dの両端部が支持される。そして、上述のロール紙R1のときと同様にして、ロール紙R2の用紙Pが搬送されて画像が記録される。このとき、2組の支持ローラ対23,24は、搬送に伴うロール紙R2の回転に伴って、回転する。この後、画像が形成された用紙Pが排紙トレイ6に排出され、ロール紙R2の用紙Pへの一連の画像記録動作が終了する。
【0029】
2組の支持ローラ対21,22を構成する各支持ローラ21a,22aは、それ自体の製造誤差や支持台13への取り付け誤差などにより、例えば、
図5(a)に示すように、2組の支持ローラ対21,22間において、ロール紙R1と接触して支持する左右の支持位置の高さにズレ量tが生じることがある。
【0030】
本実施形態においては、
図5(a)中二点鎖線で示すロール紙R1は軸方向Dの両端部で下方から支持されているため、ロール紙R1の軸方向Dの中心を通る水平線Hに対して回転軸Rxの傾き角度θ1が大きくなるのを抑制し小さくすることができる。一方、
図5(b)中二点鎖線で示すように、ズレ量tが同じで、一方(左側)の支持ローラがロール紙R1の中央部分を支持する場合、当該水平線Hに対する回転軸Rxの傾き角度θ2がθ1よりも大きくなる。
【0031】
なお、2組の支持ローラ対23,24を構成する各支持ローラ23a,24aにおいても、それ自体の製造誤差や支持台13への取り付け誤差などにより、2組の支持ローラ対23,24間において、ロール紙R2を支持する左右の支持位置にズレ量が生じることがある。しかしながら、これにおいても、ロール紙R2は軸方向Dの両端部で下方から支持されているため、上述と同様に、ロール紙R2の軸方向Dの中心を通る水平線に対して回転軸Rxの傾き角度が大きくなるのを抑制し小さくすることができる。
【0032】
以上に述べたように、本実施形態の給紙カセット1によると、2組の支持ローラ対21,22がロール紙R1の下側部分の外周面と接触してロール紙R1を支持し、2組の支持ローラ対23,24がロール紙R2の下側部分の外周面と接触してロール紙R2を支持する構成となる。このため、ロール紙R1,R2の位置を調整する作業が不要となり、ロール紙R1,R2の交換作業が容易となる。
【0033】
また、ロール紙R1においては、2組の支持ローラ対21,22でロール紙R1の中央部分を支持せずに両端部位置を支持することが可能となる。これにより、2組の支持ローラ対21,22間において、ロール紙R1と接触して支持する支持位置に、上下方向において多少ズレが生じていても、ロール紙R1をその軸方向Dの中央部分で支持するよりも回転軸Rxの傾きが小さくなる。このため、ロール紙R1から巻き解かれた用紙Pの斜行を抑制することが可能となる。
【0034】
また、ロール紙R2においては、2組の支持ローラ対23,24でロール紙R2の中央部分を支持せずに両端部位置を支持することが可能となる。これにより、2組の支持ローラ23,24間において、ロール紙R2と接触して支持する支持位置に、上下方向において多少ズレが生じていても、ロール紙R2をその軸方向Dの中央部分で支持するよりも回転軸Rxの傾きが小さくなる。このため、ロール紙R2から巻き解かれた用紙Pの斜行を抑制することが可能となる。したがって、軸方向Dの長さの異なる複数種類のロール紙R1,R2のそれぞれについて、当該ロール紙R1,R2から巻き解かれた用紙Pの斜行を抑制することが可能となる。
【0035】
また、4組の支持ローラ対21~24を構成する各支持ローラ21a~24aが、個別に軸部21a2~24a2を有する個別ローラから構成されている。これにより、各支持ローラ21a~24aが軸方向Dの長さが比較的短い個別ローラからなるため、製造コストを低くすることが可能となる。
【0036】
第1変形例として、
図6に示すように、ロール紙R1の軸方向Dの両端部を支持する2組の支持ローラ対21,22と、2組の支持ローラ対21,22の内側に配置されロール紙R2の軸方向Dの両端部を支持する2組の支持ローラ対23,24とが、共通の2つの軸部125を有していてもよい。つまり、4組の支持ローラ対21~24を構成するローラ本体21a1~24a1は、水平方向Cにおいて、ロール紙R1,R2の下端を挟む両側のそれぞれに配置されたもの同士が共通の軸部125に回転可能に挿通されている。そして、ローラ本体21a1~24a1は軸部125を介して支持台13に個別に回転可能に支持されている。本変形例のローラ本体21a1~24a1は、本発明の「ローラ」に該当し、本変形例の軸部125が、本発明の「軸部」に該当する。
【0037】
図6に示すように、2組の支持ローラ対21,22を構成するローラ本体21a1,22a1同士は共に直径が同じ大きさである。2組の支持ローラ対23,24を構成するローラ本体23a1,24a1同士も共に直径が同じ大きさである。そして、ローラ本体21a1,22a1の直径は、ローラ本体23a1,24a1の直径よりも大きい。これにより、2組の支持ローラ対23,24の上端が2組の支持ローラ対21,22よりも下方に配置される。
【0038】
このような第1変形例においても、2組の支持ローラ対21,22がロール紙R1の軸方向Dの両端部を支持し、2組の支持ローラ対23,24がロール紙R2の軸方向Dの両端部を支持する。このため、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、4組の支持ローラ対21~24が共通の軸部125を有することで、それぞれのローラ本体21a1~24a1を設置しやすくなる。
【0039】
第2変形例として、
図7に示すように、給紙カセット201が、トレイ11と、トレイ11上に配置された支持部212と、一対のサイドガイド214a,214bとを有していてもよい。なお、上述の実施形態と同様なものに関しては、同符号で示し説明を省略する。
【0040】
支持部212は、
図7に示すように、2つの支持台213a,213bと、2組の支持ローラ対221,222とを有している。これら支持台213a,213bは、軸方向Dに沿って互いに離隔しつつ並んで配置されている。支持台213aは、トレイ11に移動不可能に設けられている。支持台213bは、軸方向Dに沿って移動可能にトレイ11に設けられている。各支持台213a,213bは、直方体形状を有しており、上面には上方に開口した2つの凹部213a1,213b1が形成されている。各凹部213a1,213b1は、後述のローラ本体221a1,222a1の下側半部を収容可能なサイズに形成されている。
【0041】
2組の支持ローラ対221,222は、
図7に示すように、水平方向Cにおいて、ロール紙R1,R2の下端を挟む位置にそれぞれ配置された2つの支持ローラ221a,222aによって構成されている。各支持ローラ221a,222aは、円筒状のローラ本体221a1,222a1と、ローラ本体221a1,222a1に挿通された軸部221a2,222a2とを有している。軸部221a2,222a2は、ローラ本体221a1,222a1に一体的に固定されている。各支持ローラ221a,222aは、
図7(a)に示すように、ローラ本体221a1,222a1の下側半部が凹部213a1,213b1に配置された状態で、軸部221a2,222a2を介して支持台213に回転可能に支持されている。本変形例における2組の支持ローラ対221,222が、本発明の「2組の支持ローラ対」に該当する。また、本変形例における支持ローラ対222が、本発明の「一方の支持ローラ対」に該当する。
【0042】
一対のサイドガイド214a,214bは、
図7に示すように、支持部212に支持されている。より詳細には、サイドガイド214aは、板状部材からなり、支持台213aの左側端部に立設して設けられている。サイドガイド214bは、板状部材からなり、支持台213bの右側端部に立設して設けられている。サイドガイド214aは、ロール紙R1,R2の左端面をガイドするものである。サイドガイド214bは、ロール紙R1,R2の右端面をガイドするものである。本変形例における一対のサイドガイド214a,214bが、本発明の「一対のサイドガイド」に該当する。また、本変形例におけるサイドガイド214bが、本発明の「一方のサイドガイド」に該当する。
【0043】
給紙カセット201内にロール紙R1を収容する際は、支持部213bを
図7中実線で示す位置に配置させる。より詳細には、ロール紙R1の左端面をサイドガイド214aに当接した状態で、ロール紙R1の右端面をサイドガイド214bに当接してガイド可能な位置に、支持部213bを配置させる。この状態でロール紙R1を2組の支持ローラ対221,222上に配置させる。これにより、2組の支持ローラ対221,222が、ロール紙R1の中央部分を支持せずに両端部位置を下方から支持する。これにより、2組の支持ローラ対221,222間において、ロール紙R1と接触して支持する支持位置に、上下方向において多少ズレが生じていても、ロール紙R1をその軸方向Dの中央部分で支持するよりも回転軸Rxの傾きが小さくなる。このため、ロール紙R1から巻き解かれた用紙Pの斜行を抑制することが可能となる。
【0044】
また、給紙カセット201内にロール紙R2を収容する際は、支持部213bを
図7中二点鎖線で示す位置に配置させる。つまり、ロール紙R1を収容するときよりも、支持部213bを
図7中左方に移動させて、左端面がサイドガイド214aに当接したロール紙R2の右端面にサイドガイド214bを当接させる。この状態でロール紙R2を2組の支持ローラ対221,222上に配置させる。これにより、2組の支持ローラ対221,222が、ロール紙R2の中央部分を支持せずに両端部位置を下方から支持する。これにより、2組の支持ローラ対221,222間において、ロール紙R2と接触して支持する支持位置に、上下方向において多少ズレが生じていても、ロール紙R2をその軸方向Dの中央部分で支持するよりも回転軸Rxの傾きが小さくなる。このため、ロール紙R2から巻き解かれた用紙Pの斜行を抑制することが可能となる。
【0045】
また、本変形例の給紙カセット201によると、2組の支持ローラ対221,222がロール紙R1,R2の下側部分の外周面と接触してロール紙R1,R2を支持する構成となる。このため、ロール紙R1,R2の位置を調整する作業が不要となり、ロール紙R1,R2の交換作業が容易となる。
【0046】
また、2組の支持ローラ対221,222のうち、支持ローラ対222が軸方向Dに沿って移動可能に構成されている。これにより、ロール紙R1よりも長さの短い別のロール紙R2が収容される際に、当該ロール紙R2の長さに合わせて支持ローラ対222(支持台213b)を移動させて、2組の支持ローラ対221,222でロール紙R2の両端部位置を支持することが可能となる。このため、ロール紙R2から巻き解かれた用紙Pの斜行も抑制することが可能となる。したがって、軸方向Dの長さの異なる複数種類のロール紙R1,R2のそれぞれについて、当該ロール紙R1,R2から巻き解かれた用紙Pの斜行を抑制することが可能となる。
【0047】
また、一対のサイドガイド214a,214bを有していることで、支持部212に支持されたロール紙R1,R2が軸方向Dに振れるのを抑制することが可能となる。また、サイドガイド214bとともに支持ローラ対222が移動可能に構成されている。これにより、ロール紙R1よりも長さの短いロール紙R2が収容される際に、一対のサイドガイド214a,214bでロール紙R2の両端面をガイドさせるように、当該ロール紙R2の長さに合わせて一方のサイドガイド214bを移動させるだけで、2組の支持ローラ対221,222でロール紙R2の両端部位置を支持することが可能となる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態及び第1変形例においては、給紙カセット1に4組の支持ローラ対21~24が設けられていたが、2組の支持ローラ対23,24の内側にさらに2組以上の支持ローラ対が設けられていてもよい。この場合、内側に位置する支持ローラ対ほど、その上端が下方に位置するように構成されていればよい。また、上述の実施形態及び第1変形例においては、2組の支持ローラ対21,22及び2組の支持ローラ対23,24のいずれかが設けられていてもよい。これにおいても、ロール紙の両端部を支持することが可能になるため、上述と同様の効果を得ることができる。
【0049】
また、上述の実施形態及び第1変形例においても、ロール紙の両端面をガイド可能な一対のサイドガイドが設けられていてもよい。このときの一対のサイドガイドは、少なくとも一方が軸方向Dに沿って移動可能に構成されていてもよい。
【0050】
上述の第2変形例においては、支持台213bだけが移動可能に構成されていたが、支持台213aも軸方向Dに沿って移動可能に構成されていてもよい。この場合、一方の支持台を軸方向Dの一方に移動させると他方の支持台が軸方向Dの他方に移動し、一方の支持台を軸方向Dの他方に移動させると他方の支持台が軸方向Dの一方に移動するように構成されていることが望ましい。こうすることで、2組の支持ローラ対221,222及び一対のサイドガイド214a,214bも軸方向Dに沿って同様に移動可能となる。なお、一対のサイドガイド214a,214bは軸方向Dに沿って移動不可能に構成されていてもよい。
【0051】
また、上述の実施形態及び第1変形例における2組の支持ローラ対21,22及び2組の支持ローラ対23,24のいずれか一方の2組の支持ローラ対のうちの少なくとも一方の支持ローラ対が軸方向Dに沿って移動可能に構成されていてもよい。例えば、2組の支持ローラ対23,24のうちの一方の支持ローラ対が軸方向Dに移動可能に構成されることで、ロール紙R2よりも軸方向Rの長さの短いロール紙が収容されても、当該ロール紙の軸方向Dの両端部位置を2組の支持ローラ対23,24で支持することが可能となる。
【0052】
また、ロール紙R1,R2は、芯部材Rcを有さない芯なしのものであってもよい。本発明は、ロール紙を収容可能な媒体カセット全般に適用され得る。
【符号の説明】
【0053】
1 給紙カセット(媒体カセット)
11 トレイ
12,212 支持部
21a~24a 支持ローラ(個別ローラ)
21,22 支持ローラ対
21a1~24a1 ローラ本体
23,24 支持ローラ対(内側支持ローラ対)
125 軸部
214a,214b サイドガイド
221,222 支持ローラ対
P 用紙(連続媒体)
R1,R2 ロール紙(ロール媒体)
Rx 回転軸