(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】籾摺装置及び籾摺制御システム
(51)【国際特許分類】
B02B 3/04 20060101AFI20240814BHJP
B02B 7/00 20060101ALI20240814BHJP
G01N 21/85 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B02B3/04 102
B02B7/00 101Z
B02B7/00 C
G01N21/85 A
(21)【出願番号】P 2020068525
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019176740
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】是田 稔
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-051149(JP,A)
【文献】特開2018-020293(JP,A)
【文献】特開平02-019747(JP,A)
【文献】特開2000-042433(JP,A)
【文献】特開2018-060357(JP,A)
【文献】特開2011-180805(JP,A)
【文献】特開2010-042326(JP,A)
【文献】特開昭57-172249(JP,A)
【文献】特開昭57-192866(JP,A)
【文献】特開平07-248298(JP,A)
【文献】特開平11-337495(JP,A)
【文献】中国実用新案第205362009(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第104941926(CN,A)
【文献】特開平07-016478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 1/00 - 7/02
B07C 1/00 - 99/00
G01N 21/84 - 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱ぷロールによって籾摺りが行われる籾摺機と、前記籾摺機から排出される摺落米を検査可能な摺落米判別機と、前記摺落米判別機における前記摺落米の検査結果に応じて前記籾摺機を制御可能な籾摺制御部と、を有し、
前記籾摺制御部は、前記摺落米の検査結果に応じて、前記籾摺機における前記脱ぷロールの回転速度を変更させる回転速度変更手段を備え
、
前記摺落米判別機は、
前記摺落米を整列させて流下させる流下樋と、
前記流下樋から吐出される前記摺落米に光を照射する発光源と、
前記発光源から光を照射された前記摺落米から、反射光及び透過光を受光することが可能なカメラ手段と、を有し、
前記発光源は、
前記摺落米の前記カメラ手段側に設けられて該摺落米に赤色成分の光を照射可能な第1の照明手段と、
前記摺落米の前記カメラ手段から離れる側に設けられて該摺落米に緑色成分の光を照射可能な第2の照明手段と、が備えられている
ことを特徴とする籾摺装置。
【請求項2】
前記脱ぷロールは、所定の回転速度で回転する主脱ぷロールと、該主脱ぷロールよりも低速で回転する副脱ぷロールとから成り、
前記回転速度変更手段は、前記副脱ぷロールの回転速度を主脱ぷロールの回転速度よりも高速で回転するように回転速度を変更させる
請求項1に記載の籾摺装置。
【請求項3】
前記摺落米の検査項目には少なくとも脱ぷ率が含まれ、
前記籾摺制御部は、前記脱ぷ率が所定値未満となった場合に、前記回転速度変更手段によって前記脱ぷロールの回転速度を変更させる
請求項1又は請求項2に記載の籾摺装置。
【請求項4】
前記摺落米の検査項目には少なくとも砕米率が含まれ、
前記籾摺制御部は、前記砕米率の増加率が所定値以上となった場合に、前記回転速度変更手段によって前記脱ぷロールの回転速度を変更させる
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の籾摺装置。
【請求項5】
前記カメラ手段の受光結果として、
前記緑色成分の光の受光量が所定の緑色成分閾値よりも高い場合は吐出される前記摺落米が玄米であると判別され、
前記緑色成分の光の受光量が前記所定の緑色成分閾値よりも低く、且つ、赤色成分の光の受光量が所定の赤色成分閾値よりも高い場合は吐出される前記摺落米が籾であると判別される
請求項
4に記載の籾摺装置。
【請求項6】
前記発光源は、さらに、前記カメラ手段と前記摺落米とを結ぶ延長線上の位置に設けられて該摺落米のバックグラウンドに青色成分の光を照射可能な第3の照明手段を備え、
前記カメラ手段の前記受光結果として、前記青色成分の光の受光量が所定の範囲を外れた場合は前記流下樋から吐出されたものが前記摺落米ではない異物であると判別される
請求項4又は請求項5に記載の籾摺装置。
【請求項7】
前記カメラ手段は、前記反射光及び前記透過光の受光に加えて、前記摺落米の映像を撮影可能である
請求項
4乃至請求項6に記載の籾摺装置。
【請求項8】
前記流下樋は、少なくとも前記摺落米に光を照射される前記カメラ手段の観察領域まで延設され、前記発光源からの光を透過可能である
請求項
4乃至請求項7のいずれかに記載の籾摺装置。
【請求項9】
脱ぷロールによって籾摺りが行われる籾摺装置と、前記籾摺装置から排出される摺落米の品質を判定可能な摺落米判定手段と、前記摺落米判定手段における前記摺落米の判定結果に応じて前記籾摺装置を制御可能な籾摺制御部と、を有する籾摺装置と、
前記籾摺装置と有線又は無線によって接続されるとともに、前記摺落米の判定結果を受信して表示出力することが可能なモニタリング装置と、を有し、
前記摺落米判別手段は、
前記摺落米を整列させて流下させる流下樋と、
前記流下樋から吐出される前記摺落米に光を照射する発光源と、
前記発光源から光を照射された前記摺落米から、反射光及び透過光を受光することが可能なカメラ手段と、を有し、
前記発光源は、
前記摺落米の前記カメラ手段側に設けられて該摺落米に赤色成分の光を照射可能な第1の照明手段と、
前記摺落米の前記カメラ手段から離れる側に設けられて該摺落米に緑色成分の光を照射可能な第2の照明手段と、を備え、
前記モニタリング装置に表示出力される前記摺落米の判定結果に応じて、前記籾摺装置における前記脱ぷロールの回転速度を変更することが可能である
ことを特徴とする籾摺制御システム。
【請求項10】
前記籾摺装置は、該籾摺装置における異常を検知可能な異常検知手段を備え、
前記モニタリング装置は、前記異常検知手段からの検知情報に基づいて複数種類の異常を判定することが可能な異常判定手段と、該異常判定手段による判定結果を表示出力可能な異常表示手段と、を備えている
請求項9に記載の籾摺制御システム。
【請求項11】
前記モニタリング装置は、前記異常判定手段による判定結果に対応して、優先度に応じたチェック内容を表示出力可能な異常対処指示表示手段を備えている
請求項10に記載の籾摺制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺落米の品質状態に応じて籾摺機を制御可能な籾摺装置及び籾摺制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主副各ロールの周速度差により籾摺りを行う形式の籾摺り機にあっては、主副各ロールの摩耗に偏りが生じるため、通常、手作業で主副各ロールのゴムロールの入れ替え作業を行っていた。この作業は煩わしいものであり、手作業でのゴムロールの入れ替え作業を省略する種々の方法が提案されていた。
【0003】
例えば、特許文献1~3に開示された方法では、主軸、副軸のそれぞれに変速モータを直結してそれぞれを独立して一定時間おきに、主軸、副軸を切り換えるものである。
【0004】
また、特許文献4、5に開示された方法は、主副各ロールの回転軸にそれぞれ大小のプーリを互い違いに遊嵌し、各回転軸における大小のプーリの中間部には、クラッチを回転軸方向に前後に摺動自在に嵌合して、高速・低速の切換がワンタッチで行えるものである。
【0005】
さらに、特許文献6に開示された方法は、クラッチを回転軸方向に前後に摺動させる構造ではなく、ベルトクラッチ機構やアイドラプーリを使用して主副各ロールの回転数を切り換えるものであり、耐久性に優れるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公昭62-29064号公報
【文献】特開平3-137945号公報
【文献】特開2001-38230号公報
【文献】特開平3-106452号公報
【文献】特開2006-312151号公報
【文献】特開2009-72765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1~6に開示された従来の籾摺り機は、摺落米の品質状況に関係なく、一定時間が経過することによって主軸・副軸のロールの回転数を切り換えるものであったため、脱ぷ率を含む摺落米の品質を、最も良好な状態で継続的に維持することができなかった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み、摺落米の品質状態に応じて適切な籾摺機の制御が可能な籾摺装置及び籾摺制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に係る発明は、脱ぷロールによって籾摺りが行われる籾摺機と、前記籾摺機から排出される摺落米を検査可能な摺落米判別機と、前記摺落米判別機における前記摺落米の検査結果に応じて前記籾摺機を制御可能な籾摺制御部と、を有し、前記籾摺制御部は、前記摺落米の検査結果に応じて、前記籾摺機における前記脱ぷロールの回転速度を変更させる回転速度変更手段を備えることを特徴とする籾摺装置である。
【0010】
本願請求項2に係る発明は、前記脱ぷロールは、所定の回転速度で回転する主脱ぷロールと、該主脱ぷロールよりも低速で回転する副脱ぷロールとから成り、前記回転速度変更手段は、前記副脱ぷロールの回転速度を主脱ぷロールの回転速度よりも高速で回転するように回転速度を変更させる請求項1に記載の籾摺装置である。
【0011】
本願請求項3に係る発明は、前記摺落米の検査項目には少なくとも脱ぷ率が含まれ、前記籾摺制御部は、前記脱ぷ率が所定値未満となった場合に、前記回転速度変更手段によって前記脱ぷロールの回転速度を変更させる請求項1又は請求項2に記載の籾摺装置である。
【0012】
本願請求項4に係る発明は、前記摺落米の検査項目には少なくとも砕米率が含まれ、前記籾摺制御部は、前記砕米率の増加率が所定値以上となった場合に、前記回転速度変更手段によって前記脱ぷロールの回転速度を変更させる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の籾摺装置である。
【0013】
本願請求項5に係る発明は、前記摺落米判別機は、前記摺落米を整列させて流下させる流下樋と、前記流下樋から吐出される前記摺落米に光を照射する発光源と、前記発光源から光を照射された前記摺落米から、反射光及び透過光を受光することが可能なカメラ手段と、を有し、前記発光源は、前記摺落米の前記カメラ手段側に設けられて該摺落米に赤色成分の光を照射可能な第1の照明手段と、前記摺落米の前記カメラ手段から離れる側に設けられて該摺落米に緑色成分の光を照射可能な第2の照明手段と、が備えられている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の籾摺装置である。
【0014】
本願請求項6に係る発明は、前記カメラ手段の受光結果として、前記緑色成分の光の受光量が所定の緑色成分閾値よりも高い場合は吐出される前記摺落米が玄米であると判別され、前記緑色成分の光の受光量が前記所定の緑色成分閾値よりも低く、且つ、赤色成分の光の受光量が所定の赤色成分閾値よりも高い場合は吐出される前記摺落米が籾であると判別される請求項5に記載の籾摺装置である。
【0015】
本願請求項7に係る発明は、前記発光源は、さらに、前記カメラ手段と前記摺落米とを結ぶ延長線上の位置に設けられて該摺落米のバックグラウンドに青色成分の光を照射可能な第3の照明手段を備え、前記カメラ手段の前記受光結果として、前記青色成分の光の受光量が所定の範囲を外れた場合は前記流下樋から吐出されたものが前記摺落米ではない異物であると判別される請求項5又は請求項6に記載の籾摺装置である。
【0016】
本願請求項8に係る発明は、前記カメラ手段は、前記反射光及び前記透過光の受光に加えて、前記摺落米の映像を撮影可能である請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の籾摺装置である。
【0017】
本願請求項9に係る発明は、前記流下樋は、少なくとも前記摺落米に光を照射される前記カメラ手段の観察領域まで延設され、前記発光源からの光を透過可能である請求項5乃至請求項8のいずれかに記載の籾摺装置である。
【0018】
本願請求項10に係る発明は、脱ぷロールによって籾摺りが行われる籾摺装置と、前記籾摺装置から排出される摺落米の品質を判定可能な摺落米判定手段と、前記摺落米判定手段における前記摺落米の判定結果に応じて前記籾摺装置を制御可能な籾摺制御部と、を有する籾摺装置と、前記籾摺装置と有線又は無線によって接続されるとともに、前記摺落米の判定結果を受信して表示出力することが可能なモニタリング装置と、を有し、前記モニタリング装置に表示出力される前記摺落米の判定結果に応じて、前記籾摺装置における前記脱ぷロールの回転速度を変更することが可能であることを特徴とする籾摺制御システムである。
【0019】
本願請求項11に係る発明は、前記籾摺装置は、該籾摺装置における異常を検知可能な異常検知手段を備え、前記モニタリング装置は、前記異常検知手段からの検知情報に基づいて複数種類の異常を判定することが可能な異常判定手段と、該異常判定手段による判定結果を表示出力可能な異常表示手段と、を備えている請求項10に記載の籾摺制御システムである。
【0020】
本願請求項12に係る発明は、前記モニタリング装置は、前記異常判定手段による判定結果に対応して、優先度に応じたチェック内容を表示出力可能な異常対処指示表示手段を備えている請求項11に記載の籾摺制御システムである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、籾摺機から排出される摺落米を常に摺落米判別機によって検査し、摺落米の検査結果に応じて脱ぷロールの回転速度を適切に変更するので、摺落米の品質を良好な状態で安定して維持することが可能となる。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、脱ぷロールを所定の回転速度で回転する主脱ぷロールと、該主脱ぷロールよりも低速で回転する副脱ぷロールとから構成し、摺落米判別機による摺落米の検査結果に応じて、副脱ぷロールの回転速度を主脱ぷロールの回転速度よりも高速で回転するように回転速度を変更するので、供給された穀物に対して、適切な主脱ぷロールと副脱ぷロールとの周速度差を作用させることが可能となり、継続的に良好で安定した脱ぷ率を確保することが可能となる。
【0023】
請求項3に係る発明によれば、摺落米判別機における摺落米の検査項目として、少なくとも脱ぷ率を含むように構成し、脱ぷ率が所定値未満となった場合に脱ぷロールの回転速度を変更させるので、継続的に良好で安定した脱ぷ率を確保することが可能となる。
【0024】
請求項4に係る発明によれば、摺落米判別機における摺落米の検査項目として、少なくとも砕米率を含むように構成し、砕米率の増加率が所定値以上となった場合に脱ぷロールの回転速度を変更させるので、継続的に砕米率の低減を図ることが可能となる。
【0025】
請求項5に係る発明によれば、本発明の検証実験において得られた、籾は玄米に比べて緑色成分の光の透過性が悪く、赤色成分の光の反射性が高いという知見に基づいて、籾及び玄米の混合する摺落米に赤色成分の光を照射可能な第1の照明手段と、緑色成分の光を照射可能な第2の照明手段とを設置し、それぞれの反射光及び透過光をカメラ手段で受光するようにしている。これにより、従来に比べて大幅に籾及び玄米の判別精度を向上させることが可能となり、籾摺機に対する制御を適切なタイミングで実行することが可能となる。
【0026】
請求項6に係る発明によれば、カメラ手段の受光結果として、緑色成分の光の受光量が所定の緑色成分閾値よりも高い場合は吐出される摺落米が玄米であると判別され、緑色成分の光の受光量が上記所定の緑色成分閾値よりも低く、且つ、赤色成分の光の受光量が所定の赤色成分閾値よりも高い場合は流下樋から吐出された摺落米が籾であると判別されるため、複雑な判別処理を行うことなく、速やかに摺落米の種類を判別することが可能である。
【0027】
請求項7に係る発明によれば、カメラ手段と摺落米とを結ぶ延長線上の位置に、バックグラウンドに対して青色成分の光を照射可能な第3の照明手段を備えたことにより、青色成分の光の受光量が所定の範囲を外れた場合には、摺落米以外の異物が流下樋から吐出されたことを速やかに判別することが可能となる。
【0028】
請求項8に係る発明によれば、反射光及び透過光の受光に加えて、摺落米の映像を撮影可能なカメラ手段を適用することで、映像を画像解析するなどして、砕米や胴割れ米の判別も可能となる。
【0029】
請求項9に係る発明によれば、流下樋をカメラ手段の観察領域まで延設するとともに、ガラス等の透明な素材で形成することにより、従来のような流下樋下端から摺落米を吐出させる場合に比べて、摺落米の粒に空気抵抗が生じにくく、粒の姿勢が安定するので、摺落米の判別精度を向上させることが可能となる。
【0030】
請求項10に係る発明によれば、籾摺装置と、当該籾摺装置と有線又は無線によって接続されるとともに、摺落米の判定結果を受信して表示出力することが可能なモニタリング装置によって、モニタリング装置に表示出力される摺落米の判定結果に応じて、籾摺機における脱ぷロールの回転速度を変更することが可能となる。このような構成によって、籾摺装置を常に適切に制御することが可能となり、適切に摺落米の品質管理を行うことが可能となる。
【0031】
請求項11に係る発明によれば、さらに、籾摺装置に異常を検知可能な異常検知手段を備え、モニタリング装置に異常判定の結果を表示出力できるように構成したので、籾摺装置における異常の発生を早期に把握して、異常に対する処置を適切に行うことが可能となる。
【0032】
請求項12に係る発明によれば、さらに、異常判定手段による判定結果に対応して、優先度に応じた具体的なチェック内容をモニタリング装置に表示出力するように構成したので、異常な状態を早期に調整・修理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の籾摺装置における籾摺機の一実施形態を示す側面図である。
【
図2】籾摺機における脱ぷロール駆動装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】第1駆動系統のベルトクラッチ機構の詳細構造を示す分解斜視図である。
【
図4】第1駆動系統及び第2駆動系統の各作動状態を表す概略図であって、(a)はロールが新品のとき、(b)はロールが摩耗したときの概略図である。
【
図5】支杆部材を回動させるチェーン・スプロケット伝達機構を示す概略側面図である。
【
図6】
図5の矢視A方向から見たときのチェーンとスプロケットとの連繋を示す概略説明図である。
【
図7】本発明の籾摺装置における摺落米判別機の一実施形態を示す概略断面図である。
【
図8】摺落米判別機における摺落米の判別態様を示す概略側面図である。
【
図9】籾及び玄米の光の反射率と光の波長との関係を示すグラフ(a)と、光の透過率と光の波長との関係を示すグラフ(b)である。
【
図10】本発明の籾摺装置において籾と玄米とを判別する判別方法の一実施形態を説明するフローである。
【
図11】本発明の籾摺装置における実験結果を示す表である。
【
図12】本発明の籾摺装置における制御態様の実施例を説明する図である。
【
図13】摺落米判別機における摺落米の判別態様の別実施形態を示す概略側面図である。
【
図14】本発明の別実施例における、モニタリング制御システムの概要を示す図である。
【
図15】本発明の別実施例における、モニタリング制御PCの表示態様の例を示す図である。
【
図16】本発明の別実施例における、故障予知の種類と対応プロセスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の籾摺装置は、主に籾摺機1と摺落米判別機70とから構成されており、以下に本実施形態について図面を参照して説明する。
【0035】
(籾摺機)
図1は籾摺機1の脱ぷロール駆動装置の全体を示す側面図であり、
図2は当該脱ぷロール駆動装置の斜視図である。
図1及び
図2において、籾摺機1は、機枠2内下部のロール軸5に回転可能に軸支された主脱ぷロール3と、ロール軸6に回転可能にかつ主脱ぷロール3と遠近調節可能に軸支された副脱ぷロール4とを互いに内方向に、かつ異速回転するように配置されている。
【0036】
機枠2中央部には後述する駆動モータ7が、機枠2の側面には駆動モータ8が各々設けられている。一方、前記一方のロール軸5の軸方向の外側寄りに第1大径プーリ9を、前記他方のロール軸6の軸方向の外側寄りに第1小径プーリ10を各々軸着し、第1大径プーリ9と、第1小径プーリ10と、駆動モータ7の駆動プーリ11と、前記機枠2下部に設けた第1アイドラプーリ12と、を無端ベルト13で連結して第1駆動系統に形成する。
【0037】
そして、該第1駆動系統用の無端ベルト13は、第1大径プーリ9及び第1小径プーリ10が互いに内向きに回転するように、第1大径プーリ9にはベルトの背面にて掛け回されるとともに第1小径プーリ10にはベルトの腹面にてタスキ掛けに掛け回され、
図1においては、無端ベルト13が反時計回りに回転するように形成される。
【0038】
さらに、この第1駆動系統内の第1大径プーリ9には、ロール軸5を中心として第1大径プーリ9の外周上に回動軌跡を描くように回動する略V字状の支杆部材16が配設され、該支杆部材16の回動操作により、前記無端ベルト13の第1大径プーリ9への動力を入切するベルトクラッチ機構15が形成される。符号14a,14bは前記支杆部材16の先端に取り付けられた一対のテンションクラッチプーリである。なお、
図1及び
図2に示すベルトクラッチ機構15の実線の位置は、動力入(無端ベルト13を第1大径プーリ9に巻回させる位置)の状態である。
【0039】
前記第1駆動系統の第1アイドラプーリ12は、エアシリンダ17の可動軸の伸縮により支点12bを中心にして一点鎖線の位置(符号12a)まで回動できる構成であり、前記第1駆動系統のベルトクラッチ機構15は、
図3に示すロータリアクチュエータ30aによりロール軸5を中心にして一点鎖線の位置(動力切の状態(無端ベルト13の大径プーリ9への巻回を回避させる位置))まで回動できる構成となっている。
【0040】
前記ロール軸5及びロール軸6において、前記第1大径プーリ9に近接した軸方向の内側に第2小径プーリ19を、前記第1小径プーリ10に近接した軸方向の内側に第2大径プーリ20を各々軸着し、第2小径プーリ19と、第2大径プーリ20と、駆動モータ8の駆動プーリ21と、前記機枠2下部に設けた第2アイドラプーリ22及び第3アイドラプーリ23と、を無端ベルト24で連結して第2駆動系統に形成する。
【0041】
そして、上記第2駆動系統用の無端ベルト24は、第2小径プーリ19及び第2大径プーリ20が互いに内向きに回転するように、第2小径プーリ19にはベルトの腹面にて掛け回されるとともに第2大径プーリ20にはベルトの背面にてタスキ掛けに掛け回され、
図1においては、無端ベルト24が時計回りに回転するように形成される。
【0042】
さらに、この第2駆動系統内の第2大径プーリ20には、ロール軸6を中心として第2大径プーリ20外周上に回動軌跡を描くように回動する略V字状の支杆部材27が配設され、該支杆部材27の回動操作により、前記無端ベルト24の第2大径プーリ20への動力を入切するベルトクラッチ機構26が形成される。符号25a,25bは前記支杆部材27の先端に取り付けられた一対のテンションクラッチプーリである。なお、
図1及び
図2に示すベルトクラッチ機構26の実線の位置は、動力切の状態である。
【0043】
前記第2駆動系統の第2アイドラプーリ22は、エアシリンダ28の可動軸の伸縮により支点22bを中心にして一点鎖線の位置(符号22a)まで回動できる構成であり、前記第3アイドラプーリ23は、エアシリンダ29の可動軸の伸縮により支点を中心にして一点鎖線の位置(符号23a)まで回動できる構成であり、第2駆動系統のベルトクラッチ機構26は、エアシリンダ(図示せず)又は
図3に示すロータリアクチュエータ30bによりロール軸6を中心にして一点鎖線の位置(動力入の状態)まで回動できる構成となっている。
【0044】
図3は、上記第1駆動系統のベルトクラッチ機構15の詳細構造を示す斜視図である。主脱ぷロール3のロール軸5に第1小径プーリ10及び第1大径プーリ9が軸着され、該第1大径プーリ9のボス部端面間9a,9aを挟むように、略V字状の支杆部材16が設けられる。前記第1大径プーリ9の外径は約220mmであり、第1小径プーリ10の外径は約160mmである。
【0045】
また上記支杆部材16は、その基端部16aがベアリング35を介しロール軸5に対して回動自在に枢着され、該基端部16aからは第1大径プーリ9外周方向に延びる略V字状のアーム部16bが形成され、該アーム部16b,16b間は、その内角(α)を約60°となしている。そして、支杆部材16の先端部16c,16cには、それぞれ回転自在なテンションクラッチプーリ14a,14bが取り付けられる。これにより、外径が約220mmといった第1大径プーリ9であっても、ベルトクラッチ機構15が動力切(
図1の一点鎖線)の状態にあるとき、無端ベルト13の第1大径プーリ9への巻付きを確実に防止し、動力の「入」「切」動作が確実に行われる。
【0046】
さらに、支杆部材16はマウント34を介してロータリアクチュエータ30が取り付けられる構成となっており、空気配管31から供給される空気圧によってロータリアクチュエータ30内のベーン(羽根)が摺動することにより、ロール軸5を中心に支杆部材16が円周方向に回動される構成である。このロータリアクチュエータ30にあっては、例えば、株式会社コガネイ社製の型式RAK300等の市販されているものを使用することができる。
【0047】
第2駆動系統のベルトクラッチ機構26においても、支杆部材27の取り付け方向が異なるだけであり、構成としては
図3と同様である。なお、
図1及び
図2に示す符号32は、機枠2上部に設けた穀物を供給するための供給口であり、該供給口32の直下に穀物の流量を調整可能とした振動フィーダや、一対の主脱ぷロール3、副脱ぷロール4の間に穀物を供給するシュートが機枠2内に内装されている。
【0048】
符号33は機枠2側部に設けられた空圧制御装置であって、コンプレッサー(図示せず)などの空気供給源から供給される高圧空気を、各エアシリンダ17,28,29及びロータリアクチュエータ30等へ送給するために、電磁弁、ロジックリレー、ブレーカ及び端子台など(いずれも図示せず)が内装されている。また、符号18は、設定された脱ぷ率となるようロール間隙を調節するロール間隙調節手段である。
【0049】
以下、
図4を参照して本発明の脱ぷロール駆動装置の動作手順を説明する。
【0050】
主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4に新品のゴムロールが装着されている場合、まず、第1駆動系統により脱ぷ作業を始動させるべく、ベルトクラッチ機構15の位置調節及び第1アイドラプーリ12による無端ベルト13の緊張操作が行われる。
【0051】
すなわち、ベルトクラッチ機構15は、無端ベルト13の第1大径プーリ9への動力を「入」状態とすべく、ロータリアクチュエータ30aが制御され、ベルトクラッチ機構15のテンションクラッチプーリ14a,14bが
図4(a)の実線の位置となるように回動調節される。次いで、エアシリンダ17の可動軸が伸張されて第1アイドラプーリ12が
図4(a)の実線の位置に移動され、無端ベルト13の緊張操作が行われる。一方、ベルトクラッチ機構26は作動させず、無端ベルト24の第2大径プーリ20への動力を「切」状態のまま維持する。
【0052】
この状態で、籾摺機1に電源を入れ、第1の駆動モータ7の駆動を開始すると(駆動モータ8は停止)、駆動モータ7の駆動力は第1駆動系統の無端ベルト13を介して第1大径プーリ9及び第1小径プーリ10へと伝達されて、主脱ぷロール3は高速回転するとともに、副脱ぷロール4は低速回転し、且つ、互いに内向きに回転される。そして、供給口32から供給された穀物は、主脱ぷロール3と副脱ぷロール4との周速度差とその押圧力とにより脱ぷ作用を受ける。
【0053】
こうして、第1駆動系統を駆動状態にして脱ぷ作業を継続していくと、主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4は漸次摩耗する。高速回転する主脱ぷロール3は、低速回転する副脱ぷロール4に比べて、籾との累積接触面積が多いので早期に摩耗することとなる。その結果、主脱ぷロール3の外径が小さくなり、主脱ぷロール3と副脱ぷロール4との周速度差は減少する。周速度差が減少すると、供給口32から供給された穀物は当該周速度差による脱ぷ作用を受け難くなり、摺落米の脱ぷ率や米粒の品質に影響を与えることから、本実施形態では後述する籾摺制御部(図示せず)による制御によって、第1駆動系統から第2駆動系統に駆動手段を切り換えることが可能となっている。
【0054】
上記した籾摺制御部による制御によって第1駆動系統から第2駆動系統に駆動手段を切り換える場合、まず、第1の駆動モータ7の駆動を停止させ、次いで、エアシリンダ17の操作により第1アイドラプーリの位置を上方に回動させて無端ベルト13を弛緩させるとともに、ベルトクラッチ機構15を、無端ベルト13の第1大径プーリ9への動力を「切」状態とすべく、ロータリアクチュエータ30aを制御し、ベルトクラッチ機構15のテンションクラッチプーリ14a,14bが
図4(b)の破線の位置となるように回動調節される(反時計回りに約175°回動される)。
【0055】
さらに、第2駆動系統を始動させるべく、ベルトクラッチ機構26の位置調節及び第2アイドラプーリ22及び第3アイドラプーリ23による無端ベルト24の緊張操作が行われる。すなわち、ベルトクラッチ機構26は、無端ベルト24の第2大径プーリ20への動力を「入」状態とすべく、ロータリアクチュエータ30bが制御され、ベルトクラッチ機構26のテンションクラッチプーリ25a,25bが
図4(b)の実線の位置となるように回動調節される(反時計回りに約175°回動される)。次いで、エアシリンダ28,29の可動軸が伸張されて第2アイドラプーリ22及び第3アイドラプーリ23が
図4(b)の実線の位置に移動され、無端ベルト24の緊張操作が行われる。
【0056】
この状態で、第2の駆動モータ8の駆動を開始すると(駆動モータ7は停止)、駆動モータ8の駆動力は第2駆動系統の無端ベルト24を介して第2大径プーリ20及び第2小径プーリ19へと伝達されて、上述とは逆に副脱ぷロール4は高速回転するとともに、主脱ぷロール3は低速回転し、且つ、互いに内向きに回転されて脱ぷ作用を受ける。
【0057】
以上のように、モータ、ベルトクラッチ機構及びアイドラプーリの切り替え操作を繰り返すことにより、脱ぷ作業を継続して行うことになる。
【0058】
そして、本実施形態においては、従来のような脱ぷロールの回転軸方向に前後に摺動する構成のクラッチを使用していないので、回転軸の熱膨張等の変形に対しても容易に高速側を低速側に、低速側を高速側に交互に切り替え変更することが可能であり、また、回転軸方向に摺動する「摺動コマ」といった微細な部品を使用していないため、ベルトクラッチ機構及びアイドラプーリの切り替え操作を繰り返し何度も行ったとしても耐久性に優れている。また、従来のように脱ぷロールの回転軸に駆動モータを直結するといった構成ではないので、多大な回転駆動力を要すこともない。
【0059】
次に、前記支杆部材16,27を回動させるアクチュエータの別実施形態について
図5及び
図6を参照して説明する。
【0060】
図5は支杆部材16,27を回動させるチェーン・スプロケット伝達機構を示す概略側面図であり、
図6は
図5の矢視A方向から見たときのチェーンとスプロケットとの連繋を示す概略説明図である。
【0061】
図5及び
図6において、第1駆動系統のベルトクラッチ機構15の支杆部材16には、その基端部16aに第1スプロケット50をボルト・ナット等(図示せず)で固定するとともに、第2駆動系統のベルトクラッチ機構26の支杆部材27には、その基端部27aに第2スプロケット51をボルト・ナット等(図示せず)で固定している。
【0062】
そして、第1スプロケット50の下方には、機枠2に枢着した回転軸52に回転自在に中継用ダブルスプロケット53を取り付ける一方、第2スプロケット51の下方には、機枠2に枢着した回転軸54に回転自在に同期用ダブルスプロケット55を取り付けている。また、機枠2には前記ダブルスプロケット53,55に対応するように適当な箇所に複数のテンション用スプロケット56,57を設けている。
【0063】
前記第1スプロケット50、第2スプロケット51及び中継用ダブルスプロケット53は、径が116mm、その歯数が27であり、一方で、前記同期用ダブルスプロケット55は、径が226mm、その歯数が54であり、速度比を1:2となしている。すなわち、同期用ダブルスプロケット55を回転角で90°回動させると、第1スプロケット50,第2スプロケット51及び中継用ダブルスプロケット53は回転角で180°回動されることになる。
【0064】
以上のスプロケットの配置に対して、同期用ダブルスプロケット55の一方側スプロケット55aと、中継用ダブルスプロケット53の一方側スプロケット53aと、テンション用スプロケット57との間には、差動チェーン58が巻掛けられ、同期用ダブルスプロケット55の他方側スプロケット55bと、第2スプロケット51と、テンション用スプロケット56との間には、差動チェーン59が巻掛けられ、中継用ダブルスプロケット53の他方側スプロケット53bと、第1スプロケット50との間は速度比1:1の動力を伝える伝動チェーン60が巻掛けられてある。
【0065】
上記同期用ダブルスプロケット55を回動させるアクチュエータとしては、直線上において可動ロッドの伸縮が行われるロッドタイプエアシリンダ61を用いることができる。当該ロッドタイプエアシリンダ61は、シリンダ部61aが台座62を介して機枠2に固定され、可動ロッド部61bの先端部61cが枢着ピン63を介して同期用ダブルスプロケット55に枢着されている。そして、可動ロッド部61bのスライド移動に伴って同期用ダブルスプロケット55が回動可能とされている。例えば、可動ロッド部61bのストロークが約100mmであった場合、同期用ダブルスプロケット55を約90°回動させることが可能となる。
【0066】
上記チェーン・スプロケット伝達機構について、
図4,
図5及び
図6を参照してその作用を説明する。
【0067】
主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4に新品のゴムロールが装着されている場合、まず、第1駆動系統により脱ぷ作業を始動させるべく、ベルトクラッチ機構15,26の位置調節が同時に行われる。すなわち、ロッドタイプエアシリンダ61の可動ロッド部61bを伸長させると(
図5参照)、同期用ダブルスプロケット55が時計方向に約90°回動され、これに伴い、第1駆動系統では、差動チェーン58及び伝動チェーン60を介して、中継用ダブルスプロケット53、第1スプロケット50及び基端部16aが時計方向に約180°回動される。
【0068】
すると、第1大径プーリ9に無端ベルト13が巻回する位置にテンションクラッチプーリ14a,14bが移動されて第1大径プーリ9への動力が「入」状態となる。一方、第2駆動系統では、差動チェーン59を介して基端部27aが時計方向に約180°回動される。すると、第2大径プーリ20に無端ベルト24が巻回を回避する位置にテンションクラッチプーリ25a,25bが移動されて第2大径プーリ20への動力が「切」状態となる(
図4(a)、
図1の状態)。
【0069】
この状態で、籾摺機1に電源を入れ、第1の駆動モータ7の駆動を開始すると(駆動モータ8は停止)、駆動モータ7の駆動力は第1駆動系統の無端ベルト13を介して第1大径プーリ9及び第1小径プーリ10へと伝達されて、主脱ぷロール3は高速回転するとともに、副脱ぷロール4は低速回転し、且つ、互いに内向きに回転される。そして、供給口32から供給された穀物は、主脱ぷロール3と副脱ぷロール4との周速度差とその押圧力とにより脱ぷ作用を受ける。
【0070】
こうして、第1駆動系統を駆動状態にして脱ぷ作業を継続していくと、前述したのと同様に、主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4は漸次摩耗するので周速度差が減少する。当該周速度差が減少すると、供給口32から供給された穀物は当該周速度差による脱ぷ作用を受け難くなり、摺落米の脱ぷ率や米粒の品質に影響を与えることから、後述する籾摺制御部(図示せず)による制御によって、第1駆動系統から第2駆動系統に駆動手段を切り換えることが可能となっている。
【0071】
上記した籾摺制御部による制御によって、第1駆動系統から第2駆動系統に切り換える場合、まず、第1の駆動モータ7の駆動を停止させ、次いで、ロッドタイプエアシリンダ61の可動ロッド部61bを収縮させると(
図5参照)、同期用ダブルスプロケット55が反時計方向に約90°回動され、これに伴い、第1駆動系統では、差動チェーン58及び伝動チェーン60を介して、中継用ダブルスプロケット53、第1スプロケット50及び基端部16aが反時計方向に約180°回動されて、無端ベルト13の第1大径プーリ9への動力が「切」状態となり、第2駆動系統では、差動チェーン59を介して基端部27aが反時計方向に約180°回動されて、無端ベルト24の第2大径プーリ20への動力が「入」状態となる(
図5、
図4(b)の状態)。
【0072】
この状態で、第2の駆動モータ8の駆動を開始すると(駆動モータ7は停止)、駆動モータ8の駆動力は第2駆動系統の無端ベルト24を介して第2大径プーリ20及び第2小径プーリ19へと伝達されて、上述とは逆に副脱ぷロール4は高速回転するとともに、主脱ぷロール3は低速回転し、且つ、互いに内向きに回転されて脱ぷ作用を受ける。
【0073】
以上のように、モータ、ベルトクラッチ機構及びアイドラプーリの切り替え操作を繰り返すことにより、脱ぷ作業を継続して行うことになる。このようなロッドタイプエアシリンダとチェーン・スプロケット伝達機構とを採用することにより、1つのエアシリンダにより第1駆動系統及び第2駆動系統のベルトクラッチ機構を同期させることが可能となり、また、複数のロータリアクチュエータを使用する場合に比べて、同期させるための電磁弁及びロジックリレー等が不要となり、簡易な構成で、製造コストを抑えることも可能となる。
【0074】
(摺落米判別機)
続いて、籾摺装置において籾摺機1に併設される摺落米判別機70について以下に説明する。
図7には、前述した籾摺機1に併設される摺落米判別機70の概略断面図が図示されている。摺落米判別機70は、機体上部に籾摺機1から排出された摺落米を受け入れる摺落米ホッパ71を備え、振動装置72及び振動トラフ73からなる振動供給機構と、傾斜状の流下樋74から成る流下供給機構とを備えている。
【0075】
また、摺落米判別機70の機体下部には、上記流下樋74下端の摺落米の落下軌跡(
図7中の破線部r)に対向して配置された光学検査部75と、当該光学検査部75の検査結果に基づいて摺落米の玄米と籾との判別を行い、籾のみを摺落米から排除するエジェクタ部76を備えている。
【0076】
そして、上記エジェクタ部76の下方には、落下軌跡下方で玄米を集穀する玄米集穀ホッパ77と、落下軌跡から排除された籾を回収する籾回収ホッパ78とが設けられている。さらに、上記玄米集穀ホッパ77には、機外に玄米を排出する搬送機構を備えた玄米排出部79が設けられるとともに、籾回収ホッパ78には、籾を再脱ぷするために当該籾を籾摺機1に移送可能な籾排出部80が設けられている。籾排出部80としては、脱ぷロール式の籾摺機1へ籾を返還することのできる揚穀機81を設けてもよい。
【0077】
次に、
図8は摺落米判別機における摺落米の判別態様を示す概略側面図である。以下、
図8を参照して説明する。
【0078】
摺落米判別機70は、前述したように流下樋74の下方に配置した光学検査部75と、該光学検査部75の下方にエジェクタ部76を備えている。そして、上記光学検査部75には、流下樋74の下流側における摺落米の流下軌跡rに対向する一方側(前方側)に、フルカラーカメラ751(カメラ手段)が設けられて、さらに、当該フルカラーカメラ751の光軸kの流下軌跡rを挟んだ先には、バックグラウンド752が設けられている。
【0079】
また、摺落米の流下軌跡rよりもフルカラーカメラ751側には、摺落米に照明する第1の照明手段753a、753bと、摺落米の流下軌跡rよりもフルカラーカメラ751から離れる側において摺落米に照明する第2の照明手段754a、754b及び上記バックグラウンド752を照明する第3の照明手段755が光学検査部75に設けられている。なお、流下軌跡rと光軸kとの交点はフルカラーカメラ751による観察領域oとなっている。
【0080】
上記した第1の照明手段753a、753b、第2の照明手段754a、754b及び第3の照明手段755は、それぞれに単色の発光源を有しており、本実施形態では最も好適な例として、第1の照明手段753a、753bに赤色LED素子からなる光源を採用し、第2の照明手段754a、754bに緑色LED素子からなる光源を採用し、第3の照明手段755に青色LED素子からなる光源を採用している。なお、使用されるLED素子は単色のLED素子のほか、RGBLED素子を使用することも可能である。
【0081】
より詳細に説明すると、第1の照明手段753a、753bから被選別物である摺落米に対して赤色成分の光を照射すると、その反射光がフルカラーカメラ751の赤色成分の受光素子で受光されるように構成され、第2の照明手段754a、754bから被選別物である摺落米に対して緑色成分の光を照射すると、その透過光がフルカラーカメラ751の緑色成分の受光素子で受光されるように構成されている。さらに、第3の照明手段755からバックグラウンド752に対して青色成分の光を照射すると、その観察領域oに被選別物が通ったか否か、また摺落米以外の異物が通ったか否かがフルカラーカメラ751の青色成分の受光量によって判別されるように構成されている。
【0082】
なお、上記した好適な実施形態は次のような理由に裏付けられたものである。すなわち、本発明の検証実験の結果に基づいて、
図9(a)には玄米と籾における光の波長と反射率の関係が、
図9(b)には光の波長と透過率の関係がグラフで示されているが、被選別物の対象である摺落米における玄米及び籾ともに、その光の透過率は緑色も赤色も大きな差はない。
【0083】
一方、光の反射率を見ると、緑色よりも赤色の方が玄米と籾における反射率の差が大きいことが判る。したがって、上記のような光学的な特性に基づいて、反射光をフルカラーカメラ751に受光させることを目的とした前記第1の照明手段753a、753bには、赤色LED素子からなる光源を採用することが好ましく、より正確に被選別物である摺落米の種類を判別することが可能となる。
【0084】
また仮に、上記第1の照明手段753a、753b、第2の照明手段754a、754b及び第3の照明手段755のそれぞれに、蛍光灯のような白色の光源を用いると、反射光と透過光との両成分が合わさった情報がフルカラーカメラ751に取り込まれてしまうため、特徴量(特徴的な受光量)が検出されにくくなって判別精度が低下するおそれがある。
【0085】
なお、本実施形態では好適な例として、第1の照明手段753a、753bを赤色、第2の照明手段754a、754bを緑色、第3の照明手段755を青色という設定を行ったが、必ずしもこれに限定するものではなく、以下の表1の組み合わせとすることも可能である。
【0086】
【0087】
次に、上記した摺落米判別機70における籾と玄米との判別方法について説明する。前述したように、第1の照明手段753a、753b、第2の照明手段754a、754b及び第3の照明手段755として、それぞれに単色の光源を用いることで、籾と玄米との判別をより正確に行うことが可能となり、さらに、籾と玄米以外の異物の判別も可能となる。
【0088】
すなわち、観察領域oに玄米が通過した場合、
図9(a)、(b)に示されるように玄米は籾に比べて光学的に透過性が良く、反射性が低いために、フルカラーカメラ751の赤色成分(反射成分)の受光素子の受光量は低く、フルカラーカメラ751の緑色成分(透過成分)の受光素子の受光量は高くなる。
【0089】
一方、観察領域oに籾が通過した場合、籾は玄米に比べて光学的に透過性が悪く、反射性が高いために、フルカラーカメラ751の赤色成分(反射成分)の受光素子の受光量は高く、フルカラーカメラ751の緑色成分(透過成分)の受光素子の受光量は低くなる。なお、フルカラーカメラ751の青色成分の受光量は、玄米、籾ともに大きさに大きな差がないため、略一定値となる。これを表2に示す。
【0090】
【0091】
図10は前述の判別方法を実行するためのフローである。ステップ1では、フルカラーカメラ751における青色成分の受光量により、摺落米が観察領域oを通過したか否かの判別が行われる。ステップ2では、フルカラーカメラ751における緑色成分の受光量が所定の緑色成分閾値より高いか又は低いかが確認され、これにより透過性の高い玄米が通過したのか、それ以外の籾や異物が通過したのかが判別される。続いて、ステップ3では、フルカラーカメラ751における赤色成分の受光量が所定の赤色成分閾値より高いか又は低いかが確認され、これにより、籾が通過したのか、それ以外の異物が通過したのかが判別される。
【0092】
なお、上記ステップ2及びステップ3では、反射成分である赤色成分の受光量と、透過成分である緑色成分の受光量との割合(例えば、「反射成分/透過成分」の値)を算出し、この値が所定の閾値より大きいものを籾と判別し、当該所定の閾値より小さいものを玄米と判別するように構成してもよい。
【0093】
以上、光学検査部75において、籾と玄米とを検査して判別する構成について説明したが、さらに本発明の光学検査部75には、
図8に示されるように撮影カメラ756(カメラ手段)が設けられており、光学検査部75の観察領域oを通過した玄米の映像を撮影し、画像解析によって砕米や未熟米、胴割れ米であるのかを検査することができるように構成されている。具体的には通過した玄米の色成分で未熟米であるか否かが判別可能であり、また色成分と併せた形状や寸法値を画像解析で取得することにより、砕米や胴割れ米の判別が可能である。
【0094】
(籾摺制御部)
続いて、本発明の籾摺装置において、前述した籾摺機1及び摺落米判別機70を制御可能な籾摺制御部について以下に説明する。なお、籾摺制御部は少なくとも籾摺機1及び摺落米判別機70を制御するために信号線で接続されており、本実施形態では図示しない設定入力手段と共に籾摺機1又は摺落米判別機70に設置されている。
【0095】
本実施形態の籾摺制御部では、光学検査部75からの出力信号が入力され、解析などを行って前述したような摺落米の品質状態の判定を行っている。そして籾摺制御部では、上記品質状態の判定結果に基づいて、籾摺機1に対し第1駆動系統から第2駆動系統に駆動手段を切り換える制御を回転速度変更手段により実行している。すなわち、主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4において、高速側を低速側に、低速側を高速側に切り替え変更するよう制御している。
【0096】
前述したように、籾摺機1に投入された籾は、主脱ぷロール3と副脱ぷロール4との周速度差とその押圧力とにより脱ぷ作用を受ける。その一方で、高速回転する主脱ぷロール3は、低速回転する副脱ぷロール4に比べて、籾との累積接触面積が多いので早期に摩耗することとなり、その結果、主脱ぷロール3の外径が小さくなる。そうなると、主脱ぷロール3と副脱ぷロール4との周速度差が減少して脱ぷ率の低下や、砕米の増加率が上昇してしまう事態を招いてしまうが、上記した籾摺制御部の制御によって、脱ぷ率の低下や、砕米の増加率の上昇など、摺落米の品質状態の改善を自動的に行うことが可能となっている。
【0097】
図11には、籾摺制御部によって主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4の回転速度の制御を行った場合の実験結果の一例が図示されており、砕米率が4.5%、6%、7%の各原料を籾摺機1に投入し、所定の経過時間における回転速度の切替え制御が、切替え前後の脱ぷ率及び砕米増加率に及ぼす影響を調査した結果が示されている。
【0098】
実験の結果から、回転速度の切替え制御の後の脱ぷ率及び砕米増加率は、砕米率4.5%の原料では脱ぷ率が2.15%向上し、砕米増加率を2.23%低下させている。また、砕米率6%の原料では脱ぷ率が0.34%向上し、砕米増加率を0.14%低下させている。さらに、砕米率7%の原料では脱ぷ率が0.66%向上し、砕米増加率を0.67%低下させるという良好な結果が得られている。
【0099】
主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4の回転速度の切替えタイミングについては、前述した籾摺制御部の設定入力手段で設定が可能であり、脱ぷ率や砕米増加率に所定の閾値を入力設定し、回転速度の切替え制御を自動的に実行させることが可能である。このような構成により、脱ぷ率を含む摺落米の品質を最も良好な状態で継続的に維持できるように、籾摺機1を常に良好な状態で制御することが可能となる。
【0100】
図12には、籾摺制御部による制御態様の一実施例が示されている。本実施形態のようなロール式の籾摺機1の場合、適正な脱ぷ率の範囲は概ね85~95%であるが、光学検査部75の検出結果に基づく脱ぷ率が85%以下であると判定された場合は、(1)ロール回転数制御として、主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4の回転速度の切替えを実行して脱ぷ率が85~95%に近づくように制御する。
【0101】
上記のようなロール回転数制御を実行して一定時間経過しても上記した適正な脱ぷ率の範囲に収まらない場合は、(2)ロール間隙制御として、前述したロール間隙調節手段を動作させて脱ぷ率が85~95%に近づくように制御する。
【0102】
上記のようなロール間隙制御を実施して一定時間経過しても上記した適正な脱ぷ率の範囲に収まらない場合、今度は、穀物の流量が過多のおそれがあるので、(3)流量調整制御として、供給口32の直下にある穀物の流量を調整可能な振動フィーダを制御して、穀物の流量を絞る制御を行う。
【0103】
なお、上記した(1)~(3)の制御を経ても、適正な脱ぷ率の範囲85~95%に収まらない場合は異常判定を行い、警告を装置の管理者や操作者に対して報知するように制御する。
【0104】
また、
図12に※で図示されるように、上記(1)~(3)の制御に加えて、ロール間の周速度差が所定値(例えば1%)を下回った場合、ロール回転数制御として、主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4の回転速度の切替えを実行するように制御することも可能である。このような制御構成を加えることで、さらに摺落米の品質を良好に維持することが可能となる。
【0105】
(その他の実施形態)
以上、本発明の籾摺装置の一実施形態について説明したが、種々の変形が可能である。例えば、前述の実施形態では、光学検査部75に、カメラ手段として各色の受光素子を備えたフルカラーカメラ751と、撮影カメラ756とを併設したが、必ずしもこのような形態に限られるものではなく、撮影カメラ756に撮影した映像を画像処理し、赤色成分、緑色成分、青色成分それぞれの色成分を抽出するようにしてフルカラーカメラ751の設置を省くことも可能である。
【0106】
また、上記実施形態では、カメラ手段として各色の受光素子を備えたフルカラーカメラ751を設けたが、赤、緑、青それぞれに対応した単色の受光センサを設けることも当然ながら可能である。
【0107】
また、
図13は、摺落米判別機における摺落米の判別態様の別実施形態を示す概略側面図であり、流下樋15を長尺状に形成し、観察領域o付近の底面の一部にガラス等の透明材741を設けたものである。これにより、従来のような流下樋74の下端から摺落米を吐出させ、自由落下(自由飛行)状態で流下されるものと比べて、摺落米の粒に空気抵抗が生じにくく、粒の姿勢が安定するために、摺落米の判別精度を向上させることが可能となる。なお、上記した透明材741を設ける代わりに、スリット状の空間を設けるようにしてもよく、さらには、流下樋74をベルトコンベアで構成するようにしてもよい。
【0108】
また、
図12に示されるように、ロール式の籾摺機1に代えて遠心式(インペラ式)の脱ぷ機を適用することも可能である。遠心式(インペラ式)脱ぷ機の場合、適正な脱ぷ率の範囲は概ね90~95%であるが、光学検査部75の検知結果から求められた脱ぷ率が90%以下であった場合は、(1)回転数制御として、遠心式脱ぷ機の回転数を制御し、上記した適正な脱ぷ率90~95%に近づくように制御する。回転数制御を実施して一定時間経過しても上記した適正な脱ぷ率の範囲に収まらない場合は、今度は、穀物の流量が過多のおそれがあるので、(2)流量調整制御として、穀物の流量を絞る制御を行う。これら、(1)、(2)の制御を経ても、適正な脱ぷ率の範囲に収まらない場合は、異常判定を行い、警告を装置の管理者や操作者に対して報知するようにするとよい。
【0109】
(モニタリング制御システム200)
前述した実施形態の説明では、
図12のブロック図に示されるような、各籾摺装置内における籾摺制御部の制御態様について詳しく説明したが、さらに複数台の籾摺装置や、当該籾摺装置から排出された摺落米を選別する選別装置、計量器などをネットワークで結び、各種装置における処理状況を一括してモニタリングし、必要に応じて各装置を制御するようにすることも可能である。
【0110】
例えば、
図14には、複数台の籾摺装置や選別装置、計量機などをネットワークで結び、モニタリング制御PC100によって一括管理する、モニタリング制御システム200の概略図が図示されている。すなわち、当該実施例の計量機(籾)94には、計量装置のほか、原料となる籾の判別装置が備えられており、籾摺装置投入前の籾が計量され、併せて、ロット単位の重量、水分量、未熟米や胴割れ米、砕米の混入率、さらに籾の平均的な長さや厚みなどの品質データを収集することが可能となっている。
【0111】
収集された計量機(籾)94における上記品質データは、有線又は無線によってネットワークサーバ101へ送信され、モニタリング制御PC100において、
図15(1)に示されるように、圃場、品種、食味などの情報と共に籾摺装置投入前の原料情報(ロット毎)として表示させ、モニタリングすることが可能となっている。
【0112】
計量機(籾)94で計量された籾は、籾摺装置に投入され、前述の実施例と同様、籾摺機1によって籾摺り作業が行われ、摺落米判別機70のエジェクタ部76によって脱ぷ処理できていない籾が選別される。さらに、籾摺装置の排出口には、当該籾摺装置から排出された摺落米を撮影し、脱ぷ率や砕米率などを判定することが可能な脱ぷ画像処理センサ90が設けられている。当該脱ぷ画像処理センサ90によって取得された摺落米の各品質データは、有線又は無線によってネットワークサーバ101へ送信されるように構成されている。
【0113】
加えて、籾摺装置には、籾摺機1の電流値やロール圧力、主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4における各回転数及び回転差率、籾の流量、ロール軸の温度、籾摺機1における振動などを検知する複数のセンサが設けられており、籾摺装置の運転状況などの稼動データが、有線又は無線によってネットワークサーバ101へ送信されるように構成されている。このように構成されることにより、モニタリング制御PC100では、
図15(2)に示されるように、リアルタイムでロールの使用時間や処理量、電流値、ロール圧力、ロールの回転数切替時刻、主軸及び副軸の回転数及び温度、各ロール径、振動の大きさなど、籾摺装置における稼働状況が表示され、モニタリングすることが可能となっている。
【0114】
また、前述の脱ぷ画像処理センサ90によって取得された摺落米の各品質データについても、ネットワークサーバ101を介して、モニタリング制御PC100でモニタリングすることが可能であり、例えば、
図15(3)に示されるように、ロット毎の脱ぷ率や砕米率など、リアルタイムで籾摺後の品質データをモニタリングすることが可能である。なお、上記した籾摺装置の稼動データや籾摺後の品質データなどの情報に基づいて、必要に応じてモニタリング制御PC100から籾摺装置に対して稼動制御を行うことも可能となっており、例えば、主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4の回転速度や押圧力を適切に遠隔制御することで、脱ぷ率や砕米率などを改善することが可能となる。
【0115】
続いて、籾摺装置から排出された摺落米は、当該摺落米を選別して玄米を得るため、選別装置へと投入される。選別装置には、選別されながら選別装置内を流れる玄米、籾と玄米の混合米、籾の俯瞰画像を撮影し、それぞれの境目に可動仕切り板を移動させることが可能な仕切り画像処理センサ91が設置されている。さらに、選別装置内を流れる玄米、籾と玄米の混合米、籾、それぞれの層厚を計測可能な層厚センサ92を備えており、当該層厚センサ92及び上記仕切り画像処理センサ91は選別制御部へと接続されている。選別制御部で得られた稼動データや品質データは、籾摺装置の籾摺制御部へとフィードバック(図示FB)されるとともに、計量機(玄米)95へとフィードフォワード(図示FF)され、同時に、有線又は無線によってネットワークサーバ101へと稼動データや品質データが送信されるように構成されている。
【0116】
上記選別制御部からネットワークサーバ101へと送信された稼動データや品質データは、モニタリング制御PC100でモニタリングすることが可能であり、例えば、
図15(4)に示されるように、ロット毎の処理量や籾混入率などをリアルタイムで表示することが可能である。また、選別制御部から籾摺制御部へとフィードバック(図示FB)された品質データなどに基づいて、例えば、籾摺装置における主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4の回転速度や押圧力を自動的に適切な状態へと制御することも可能であり、必要に応じてモニタリング制御PC100における操作指示によって籾摺装置を遠隔制御することも可能である。
【0117】
上記選別装置によって選別された玄米は、その後、等級判定センサ93に送られて等級が判定され、計量機(玄米)95に計量されて回収されるように構成されている。等級判定センサ93や計量機(玄米)95も有線又は無線によりネットワークに接続され、ネットワークサーバ101に各種品質データが集められる。このような構成により、モニタリング制御PC100では、籾の投入から、籾摺り、選別、等級判定、玄米の回収までの一連の品質データや各装置の稼動データ、さらに、歩留りの管理や金額収支など、ネットワークを介してモニタリング制御PC100によって一元的に管理・制御することが可能となる。
【0118】
例えば、
図15(5)に示されるように、モニタリング制御PC100に、トータルの加工量や歩留りに加え、籾の購入金額、玄米及び未熟米の販売金額、稼働時間、使用電力量、人件費などのデータを集計し、金銭的な収支をロット毎に表示することが可能である。上記したような各種情報をモニタリング制御PC100で確認できるように構成することで、籾摺装置の設定や調整・修理のほか、最終的な収支の状況を把握しながら、各種制御の最適化を図ることが可能となる。
【0119】
また、本実施例では各装置及び各センサから得られる情報に基づいて、各装置の故障を予知することも可能であり、例えば、
図15(3)の※1の脱ぷ率が90%以上であるにもかかわらず、※2の処理量が低下している場合や、※3の籾混入率が上昇している場合は異常判定が行われ、モニタリング制御PC100にアラート表示が行われて、必要なチェック、処置を講ずることが可能となっている。このように、本実施例ではネットワークサーバ101に集められる各品質データや稼動データに基づいて、故障予知が可能となっており、
図16には、回転数の異常、軸受温度の異常、異常振動、脱ぷ率の異常、砕米率上昇異常、歩留り異常の各異常検知項目に対する不具合要因のチェック構成が示されている。
【0120】
図示1)回転数異常の要因として、最初にチェック(ファーストチェック)すべき要因は、主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4の回転ベルトにおけるベルトスリップの発生有無や、主脱ぷロール3と副脱ぷロール4との周速度切替異常の発生有無が挙げられる。これらに異常がない場合は、次にチェック(セカンドチェック)すべき要因として、プーリにおける異常発生の有無が挙げられる。
【0121】
続いて、図示2)軸受温度異常の要因としては、籾摺機1への籾の投入量が過少となっていることや、各脱ぷロールの軸周りのベアリングに異常が発生している場合があり、これらを最初にチェック(ファーストチェック)する必要がある。次にチェック(セカンドチェック)すべき要因としては、主脱ぷロール3と副脱ぷロール4との周速度差率が高い場合が挙げられる。
【0122】
図示3)異常振動の要因として、最初にチェック(ファーストチェック)すべき要因は、主脱ぷロール3と副脱ぷロール4の少なくともいずれかにおける多角化や、各脱ぷロールの軸周りのベアリングにおける異常の発生有無が挙げられる。これらに異常がない場合は、次にチェック(セカンドチェック)すべき要因として、籾摺機1を固定する架台が弱くなっているか否かが挙げられる。
【0123】
図示4)脱ぷ率異常の要因として、最初にチェック(ファーストチェック)すべき要因は、主脱ぷロール3及び副脱ぷロール4の回転ベルトにおけるベルトスリップの発生有無や、主脱ぷロール3と副脱ぷロール4との周速度差率が低いか否か、各脱ぷロールにおける異常磨耗の発生有無、各脱ぷロールの交換時期の確認などが挙げられる。これらに異常がない場合は、次にチェック(セカンドチェック)すべき要因として、籾摺機1への籾の投入量過多や、籾の水分値が高い場合、未熟米の混入量が多い場合などが挙げられる。
【0124】
図示5)砕米上昇異常の要因として、最初にチェック(ファーストチェック)すべき要因は、原料の胴割れの状況や、主脱ぷロール3と副脱ぷロール4の少なくともいずれかにおける多角化やロールスジの発生の有無が挙げられる。これらに異常がない場合は、次にチェック(セカンドチェック)すべき要因として、籾摺機1への籾の投入量過多や、主脱ぷロール3と副脱ぷロール4との間に穀物を供給するシュートにおいて、そのシュートポジションが不適切である場合が挙げられる。
【0125】
図示6)歩留り異常の要因として、最初にチェック(ファーストチェック)すべき要因は、原料の胴割れの状況や、シイナ・未熟米の混入量が多いか否かが挙げられる。これらに異常がない場合は、次にチェック(セカンドチェック)すべき要因として、エジェクタ部76における異常や、当該エジェクタ部76から吐出される風量や風速の異常が挙げられる。
【0126】
以上、
図16に例示されている1)~6)の異常検知に対する対処プロセスについて説明した。このような異常検知情報は、各装置や別途設けられる各種センサから、ネットワークサーバ101へと集約された品質データや装置の稼動データに基づいて、モニタリング制御PC100にアラート表示(例えば、「異常振動検知!!」などのポップアップ表示など)するようにしてもよい。さらに、異常発生の種類に応じた上記アラート表示に加えて、異常対処指示表示(例えば、具体的なチェック項目の表示や点検・修理箇所の表示、具体的な運転制御に関わる操作指示など)をモニタリング制御PC100に表示するようにしてもよく、このようにすることで、各装置の運転管理者等は必要なチェック・点検・修理のほか、モニタリング制御PC100による遠隔操作によって、各装置を運転制御することが可能となる。
【0127】
モニタリング制御PC100及びネットワークサーバ101は、籾摺装置を含む各装置が設置されている施設内に配置し、有線又は無線で籾摺装置を含む各装置と接続することが可能であるが、籾摺装置を含む各装置とネットワークサーバ101との接続、ネットワークサーバ101とモニタリング制御PC100との接続を、公衆通信回線を介して行うことも可能であり、遠隔地から籾摺装置を含む各装置における稼動データや品質データをモニタリング制御することが可能となる。さらに、公衆通信回線として、高速で大容量の通信が可能な第5世代移動通信システム、所謂5Gを利用することも可能であり、例えば、
図14に示されるように、タブレット型通信端末100aを利用してモニタリング制御することが可能となる。
【0128】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0129】
1 籾摺機
2 機枠
3 主脱ぷロール
4 副脱ぷロール
5 ロール軸
6 ロール軸
7 駆動モータ
8 駆動モータ
9 第1大径プーリ
10 第1小径プーリ
11 駆動プーリ
12 第1アイドラプーリ
13 無端ベルト
14 テンションクラッチプーリ
15 ベルトクラッチ機構
16 支杆部材
17 エアシリンダ
18 ロール間隙調節手段
19 第2小径プーリ
20 第2大径プーリ
21 駆動プーリ
22 第2アイドラプーリ
23 第3アイドラプーリ
24 無端ベルト
25 テンションクラッチプーリ
26 ベルトクラッチ機構
27 支杆部材
28 エアシリンダ
29 エアシリンダ
30 ロータリアクチュエータ
31 空気配管
32 供給口
33 空圧制御装置
34 マウント
35 ベアリング
50 第1スプロケット
51 第2スプロケット
52 回転軸
53 中継用ダブルスプロケット
54 回転軸
55 同期用ダブルスプロケット
56 テンション用スプロケット
57 テンション用スプロケット
58 差動チェーン
59 差動チェーン
60 伝動チェーン
61 ロッドタイプエアシリンダ
62 台座
63 枢着ピン
70 摺落米判別機
71 摺落米ホッパ
72 振動装置
73 振動トラフ
74 流下樋
741 透明材
75 光学検査部
751 フルカラーカメラ(カメラ手段)
752 バックグラウンド
753a、753b 第1の照明手段
754a、754b 第2の照明手段
755 第3の照明手段
756 撮影カメラ(カメラ手段)
76 エジェクタ部
77 玄米集穀ホッパ
78 籾回収ホッパ
79 玄米排出部
80 籾排出部
81 揚穀機
90 脱ぷ画像処理センサ
91 仕切り画像処理センサ
92 層厚センサ
93 等級判定センサ
94 計量機(籾)
95 計量機(玄米)
100 モニタリング制御PC
100a タブレット型通信端末
101 ネットワークサーバ
200 モニタリング制御システム