(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】物理量センサー、電子機器および移動体
(51)【国際特許分類】
G01P 15/08 20060101AFI20240814BHJP
G01P 15/125 20060101ALI20240814BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G01P15/08 101B
G01P15/08 102D
G01P15/125 Z
H01L29/84 Z
(21)【出願番号】P 2020079501
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 悟
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/075761(WO,A1)
【文献】特開2017-067540(JP,A)
【文献】特開2011-017693(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016348(WO,A1)
【文献】特開2019-066294(JP,A)
【文献】特開2013-040856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/00 ~ 15/18
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する3つの方向を第1方向、第2方向および第3方向としたとき、
基板と、
前記基板と空隙を隔てて前記第3方向に対向し、前記基板に対して前記第2方向に沿う揺動軸まわりに揺動する可動体と、
前記可動体と対向して配置される検出電極と
、を有し、
前記基板は、前記揺動軸から近い側から順に配置される第1領域から第m領域(ただし、mは2以上の整数)を有し、
前記第1領域から前記第m領域は、それぞれ、空隙を隔てて前記可動体と対向し、
前記第1領域から第n領域(ただし、nは2以上の整数、かつ、n≦m)にまたがって前記検出電極が配置され、
前記第2方向からの断面視で、
前記検出電極の前記第1領域から前記第n領域の各領域上の前記揺動軸から遠い側の端部のうちの2つを結ぶ仮想直線のうち前記第1方向とのなす角が最も小さい第1仮想直線と、
前記可動体が前記揺動軸まわりに最大変位した状態での、前記可動体の前記基板側の主面に沿う第2仮想直線と、
前記第n領域の前記端部と接し、前記第2仮想直線と平行な第3仮想直線と、を設定したとき、
前記第1領域の前記端部と交わり前記第3方向に延在する第1法線と、前記第n領域の前記端部と交わり前記第3方向に延在する第2法線との間の領域において、前記第1仮想直線と前記第2仮想直線とが交差せず、
各前記端部のうち、前記第n領域の前記端部以外は、前記第2仮想直線と前記第3仮想直線との間に位置していることを特徴とする物理量センサー。
【請求項2】
前記第2方向からの断面視で、
前記揺動軸と交わり前記第3方向に延在する第3法線と、前記可動体の端部と交わり前記第3方向に延在する第4法線との間の領域において、前記第1仮想直線と前記第2仮想直線とが交差しない請求項1に記載の物理量センサー。
【請求項3】
前記可動体は、前記揺動軸に対して対称的に配置される第1検出部および第2検出部を有し、
前記検出電極は、前記第1検出部と重なる第1検出電極と、前記第2検出部と重なる第2検出電極と、を有し、
前記第1検出電極と前記第2検出電極とが前記揺動軸に対して対称的に配置されている請求項1または2に記載の物理量センサー。
【請求項4】
前記基板から突出し、前記可動体と接触することにより、または、前記可動体から突出し、前記基板と接触することにより、前記可動体の前記揺動軸まわりの揺動を規制する突起を有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の物理量センサー。
【請求項5】
前記最大変位の状態は、前記可動体が前記突起と接触した状態または前記基板が前記突起と接触した状態である請求項
4に記載の物理量センサー。
【請求項6】
前記基板の前記検出電極が配置されていない領域であって前記可動体と対向している部分に配置され、前記可動体と同電位であるダミー電極を有する請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の物理量センサー。
【請求項7】
前記第1領域から前記第n領域の順で、前記可動体との離間距離が大きくなる請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の物理量センサー。
【請求項8】
前記第n領域上の前記検出電極と前記可動体との離間距離は、前記可動体の端部の前記第3方向への最大変位量よりも小さい請求項1ないし
7のいずれか1項に記載の物理量センサー。
【請求項9】
前記検出電極と前記可動体との離間距離は、3.5μm以下である請求項1ないし
8のいずれか1項に記載の物理量センサー。
【請求項10】
前記検出電極と前記可動体との離間距離は、2.5μm以下である請求項1ないし
8のいずれか1項に記載の物理量センサー。
【請求項11】
請求項1ないし
10のいずれか1項に記載の物理量センサーと、
前記物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項1ないし
10のいずれか1項に記載の物理量センサーと、
前記物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路と、を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサー、電子機器および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載された加速度センサーは、基板と、基板のZ軸方向プラス側に位置し、基板に対して揺動軸まわりに回動するセンサー部と、基板に配置され、センサー部との間に生じる静電容量を検出する検出電極と、を有する。このような加速度センサーでは、Z軸方向の加速度が加わると、センサー部が揺動軸まわりにシーソー揺動し、それに伴ってセンサー部と検出電極との間の間隔が変化し、前記静電容量が変化する。そのため、このような加速度センサーは、静電容量の変化に基づいて加速度を検出することができる。
【0003】
また、特許文献1に記載された加速度センサーは、基板のセンサー部と対向する面に形成され、センサー部との接触を避ける逃げ部として機能する凹部を有する。また、この凹部は、底面に検出電極が配置された第1凹部と、第1凹部よりも揺動軸から遠位側に位置し、第1凹部よりも深い第2凹部と、を有する。このように、凹部を多段化することにより、センサー部と基板との接触を抑制しつつセンサー部と検出電極との離間距離を短くし、加速度センサーの高感度化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成であっても、第1凹部と第2凹部との境界部に位置する角部において、センサー部と基板とが接触するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の物理量センサーは、互いに直交する3つの方向を第1方向、第2方向および第3方向としたとき、
基板と、
前記基板と空隙を隔てて前記第3方向に対向し、前記基板に対して前記第2方向に沿う揺動軸まわりに揺動する可動体と、
前記可動体と対向して配置される検出電極と、を有し、
前記基板は、前記揺動軸から近い側から順に配置される第1領域から第m領域(ただし、mは2以上の整数)を有し、
前記第1領域から前記第m領域は、それぞれ、空隙を隔てて前記可動体と対向し、
前記第1領域から第n領域(ただし、nは2以上の整数、かつ、n≦m)にまたがって前記検出電極が配置され、
前記第2方向からの断面視で、
前記検出電極の前記第1領域から前記第n領域の各領域上の前記揺動軸から遠い側の端部のうちの2つを結ぶ仮想直線のうち前記第1方向とのなす角が最も小さい第1仮想直線と、
前記可動体が前記揺動軸まわりに最大変位した状態での、前記可動体の前記基板側の主面に沿う第2仮想直線と、を設定したとき、
前記第1領域の前記端部と交わり前記第3方向に延在する第1法線と、前記第n領域の前記端部と交わり前記第3方向に延在する第2法線との間の領域において、前記第1仮想直線と前記第2仮想直線とが交差しない。
【0007】
本発明の電子機器は、上述の物理量センサーと、
前記物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路と、を有する。
【0008】
本発明の移動体は、上述の物理量センサーと、
前記物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。
【
図4】凹部の底面に配置された電極を示す平面図である。
【
図7】
図1に示す物理量センサーの変形例を示す断面図である。
【
図8】
図1に示す物理量センサーの変形例を示す断面図である。
【
図9】
図1に示す物理量センサーの変形例を示す断面図である。
【
図10】
図1に示す物理量センサーの変形例を示す断面図である。
【
図11】
図1に示す物理量センサーの変形例を示す断面図である。
【
図12】
図1に示す物理量センサーの変形例を示す断面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。
【
図15】
図14に示す物理量センサーの変形例を示す断面図である。
【
図16】
図14に示す物理量センサーの変形例を示す断面図である。
【
図17】
図14に示す物理量センサーの変形例を示す断面図である。
【
図18】第4実施形態に係る電子機器としてのスマートフォンを示す平面図である。
【
図19】第5実施形態に係る電子機器としての慣性計測装置を示す分解斜視図である。
【
図20】
図19に示す慣性計測装置が有する基板の斜視図である。
【
図21】第6実施形態に係る電子機器としての移動体測位装置の全体システムを示すブロック図である。
【
図23】第7実施形態に係る移動体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の物理量センサー、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。
図2は、
図1中のA-A線断面図である。
図3は、
図1中のB-B線断面図である。
図4は、凹部の底面に配置された電極を示す平面図である。
図5は、第1検出電極を示す部分拡大断面図である。
図6は、第2検出電極を示す部分拡大断面図である。
図7ないし
図12は、それぞれ、
図1に示す物理量センサーの変形例を示す断面図である。なお、
図7ないし
図12は、それぞれ、
図1中のA-A線断面に相当する。
【0012】
なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸およびZ軸とし、X軸に沿う方向を第1方向としてのX軸方向、Y軸に沿う方向を第2方向としてのY軸方向、Z軸に沿う方向を第3方向としてのZ軸方向とも言う。また、各軸の矢印方向先端側を「プラス側」とも言い、反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z軸方向プラス側を「上」とも言い、Z軸方向マイナス側を「下」とも言う。また、Z軸方向からの平面視を、単に「平面視」とも言う。さらには、本願明細書において、「直交」とは、90°で交わっている場合の他、90°と同視できる程度に90°から若干傾いた角度、例えば、80°~100°程度で交わっている場合も含む。具体的には、X軸がYZ平面の法線方向に対して-10°~+10°程度傾いている場合、Y軸がXZ平面の法線方向に対して-10°~+10°程度傾いている場合、Z軸がXY平面の法線方向に対して-10°~+10°程度傾いている場合についても「直交」に含まれるものとする。また、検出対象であるZ軸方向の加速度Azが加わっていない状態を自然状態とも言う。
【0013】
図1に示す物理量センサー1は、Z軸方向の加速度Azを測定可能な加速度センサーである。物理量センサー1は、基板2と、基板2上に配置された素子部3と、素子部3を覆うように基板2に接合された蓋体4と、を有する。
【0014】
図1に示すように、基板2は、板状をなし、その上面に開口する凹部21を有する。また、平面視で、凹部21は、素子部3よりも大きく、素子部3を内包している。また、基板2は、上面に開放する溝部25、26、27を有する。また、基板2は、凹部21の底面に設けられ、素子部3側に突出したマウント部22を有する。そして、マウント部22の上面に素子部3が接合されている。
【0015】
基板2としては、例えば、アルカリ金属イオン(Na+等の可動イオン)を含むガラス材料、例えばパイレックスガラス(登録商標)、テンパックスガラス(登録商標)のような硼珪酸ガラスで構成されたガラス基板を用いることができる。ただし、基板2としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板やセラミックス基板を用いてもよい。
【0016】
また、
図1に示すように、基板2は、電極8を有する。電極8は、凹部21の底面に配置された検出電極80およびダミー電極83を有する。また、検出電極80は、第1検出電極81および第2検出電極82を有する。また、基板2は、溝部25、26、27に配置された配線75、76、77を有する。また、配線75、76、77の一端部は、蓋体4の外側に露出しており、外部装置との電気的な接続を行う電極パッドPとして機能する。また、配線75は、素子部3およびダミー電極83に電気的に接続され、配線76は、第1検出電極81と電気的に接続され、配線77は、第2検出電極82と電気的に接続されている。
【0017】
図2に示すように、蓋体4は、下面に開口する凹部41を有する。また、蓋体4は、凹部41内に素子部3を収納するようにして、基板2の上面に接合されている。これにより、蓋体4および基板2の間に素子部3を収納する収納空間Sが形成される。収納空間Sは、気密空間である。また、収納空間Sには、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが封入され、使用温度、例えば-40℃~120℃程度でほぼ大気圧である。ただし、収納空間Sの雰囲気としては、特に限定されず、例えば、減圧状態であってもよいし、加圧状態であってもよい。
【0018】
蓋体4は、例えば、シリコン基板から形成されている。ただし、蓋体4は、特に限定されず、例えば、ガラス基板やセラミックス基板から形成されていてもよい。また、基板2と蓋体4との接合方法としては、特に限定されず、基板2や蓋体4の材料によって適宜選択すればよい。例えば、陽極接合、プラズマ照射によって活性化させた接合面同士を接合させる活性化接合、ガラスフリット等の接合材による接合、基板2の上面および蓋体4の下面に成膜した金属膜同士を接合する拡散接合等を用いることができる。本実施形態では、低融点ガラスであるガラスフリット40を介して基板2と蓋体4とが接合されている。
【0019】
図1に示すように、素子部3は、陽極接合によってマウント部22に接合された固定部31と、固定部31に対して変位可能な板状の可動体32と、固定部31と可動体32とを接続する支持梁33と、を有する。物理量センサー1に加速度Azが作用すると、可動体32が支持梁33を揺動軸Jとして、支持梁33を捩り変形させながら揺動軸Jまわりにシーソー揺動する。このような素子部3は、例えば、不純物がドープされた導電性のシリコン基板をドライエッチング等の加工技術を用いてパターニングすることにより形成されている。ただし、素子部3の材料や形成方法としては、特に限定されない。
【0020】
可動体32は、平面視で、X軸方向に沿った長手形状をなし、本実施形態では、X軸方向を長辺とする長方形状をなす。また、可動体32は、揺動軸Jに対してX軸方向マイナス側に位置する第1質量部321と、揺動軸Jに対してX軸方向プラス側に位置する第2質量部322と、第1質量部321と第2質量部322との間に位置し、これらを連結する連結部323と、を有する。そして、可動体32は、連結部323において支持梁33と接続されている。
【0021】
第1質量部321は、第1検出部321Aで構成されている。一方、第2質量部322は、第1質量部321よりもX軸方向に長く、加速度Azが加わったときの回転モーメントすなわちトルクが第1質量部321よりも大きい。この回転モーメントの差によって前述したシーソー揺動が可能となる。このような第2質量部322は、第2質量部322の基端部であって、平面視で揺動軸Jに対して第1検出部321Aと対称な部分である第2検出部322Aと、第2質量部322の先端部であって、揺動軸Jに対して第1検出部321Aと非対称な部分であるトルク発生部322Bと、を有する。
【0022】
また、可動体32は、第1検出部321Aと第2検出部322Aとの間に位置する開口324を有する。そして、開口324内に固定部31および支持梁33が配置されている。また、支持梁33は、Y軸方向に沿って延在し、揺動軸Jを形成している。ただし、固定部31や支持梁33の配置は、特に限定されず、例えば、可動体32の外側に配置されていてもよい。
【0023】
また、可動体32には複数の微細な貫通孔30が形成されている。貫通孔30によって、可動体32と基板2との間に生じるダンピングを低減したり、ダンピングの度合いを調整したりできる。また、第2質量部322の第2検出部322Aとトルク発生部322Bとの境界にはY軸方向に延在する貫通孔325が形成されている。貫通孔325を形成することにより、凹部21と可動体32との間に生じる後述する「意図しない静電引力」を低減することができる。
【0024】
ここで、凹部21に配置された電極8の説明に戻る。
図1に示すように、第1検出電極81は、平面視で、第1検出部321Aと重なって配置されている。また、第2検出電極82は、平面視で、第2検出部322Aと重なって配置されている。また、第1検出電極81の第1検出部321Aと重なる部分と、第2検出電極82の第2検出部322Aと重なる部分とは、揺動軸J、より具体的には揺動軸Jと交わるY-Z平面に対して対称的に配置されている。
【0025】
また、ダミー電極83は、凹部21の底面のうち、第1検出電極81および第2検出電極82が配置されていない領域のほぼ全域に広がって配置されている。具体的には、ダミー電極83は、第2検出電極82のX軸方向プラス側に位置し、平面視でトルク発生部322Bと重なって配置された部分と、第1検出電極81のX軸方向マイナス側に配置された部分と、を有する。ダミー電極83を設けることにより、基板2中のアルカリ金属イオンの移動に伴う凹部21の底面の帯電を抑制することができる。そのため、凹部21の底面と可動体32との間に、可動体32の誤作動、特に検出対象である加速度Az以外の外力による変位に繋がるような意図しない静電引力が生じるのを効果的に抑制することができる。よって、加速度Azの検出精度が高い物理量センサー1となる。
【0026】
物理量センサー1の駆動時には、所定の駆動電圧が素子部3に印加され、第1検出電極81および第2検出電極82は、それぞれ、QVアンプ(電荷電圧変換回路)に接続される。これにより、
図2に示すように、第1検出電極81と第1検出部321Aとの間に静電容量Caが形成され、第2検出電極82と第2質量部322の第2検出部322Aとの間に静電容量Cbが形成される。物理量センサー1に加速度Azが加わると、第1、第2質量部321、322の回転モーメントの異なりから、可動体32が支持梁33を捩り変形させながら揺動軸Jを中心にしてシーソー揺動する。このような可動体32の揺動により、第1検出部321Aと第1検出電極81のギャップおよび第2質量部322と第2検出電極82のギャップがそれぞれ逆相で変化し、これに応じて静電容量Ca、Cbが逆相で変化する。そのため、静電容量Ca、Cbの変化量に基づいて加速度Azを検出することができる。
【0027】
特に、本実施形態では、前述したように、第1検出部321Aと第2検出部322Aとが揺動軸Jに対して対称であり、さらに、第1検出電極81の第1検出部321Aと重なる部分と第2検出電極82の第2検出部322Aと重なる部分とが揺動軸Jに対して対称である。そのため、加速度Azが加わっていない自然状態において静電容量Ca、Cbが等しい。その結果、自然状態が出力ゼロとなる「ゼロ点」となり、ゼロ点を自然状態に合わせるゼロ点補正が不要となる。したがって、物理量センサー1の装置構成が簡単となる。また、シーソー揺動時の静電容量Ca、Cbの変化量が同じなため、逆相で変化する静電容量Ca、Cbの差動演算に基づいて加速度Azを精度よく検出することができる。
【0028】
また、
図1、
図3および
図4に示すように、物理量センサー1は、凹部21の底面から可動体32側に向けて突出した突起6を有する。突起6は、可動体32に過度な揺動が生じた際に可動体32と接触することにより、可動体32のそれ以上の揺動を規制するストッパーとして機能する。突起6を設けることにより、可動体32の過度な揺動が規制され、素子部3の破壊、損傷を効果的に抑制することができる。また、互いに電位が異なる可動体32と第1、第2検出電極81、82との過度な接近または広面積での接触を抑制することもできる。そのため、可動体32と第1、第2検出電極81、82との間に生じる静電引力によって可動体32が第1検出電極81または第2検出電極82に引き付けられたまま戻らなくなる所謂「スティッキング」の発生を抑制することができる。なお、本実施形態では、突起6は、基板2と一体形成されているが、これに限定されず、基板2と別体で形成されていてもよい。
【0029】
突起6は、平面視で、第1検出部321Aと重なる突起61と、第2検出部322Aと重なる突起62と、を有する。このうち、突起61が可動体32の第1検出電極81側への過度な揺動を規制し、突起62が可動体32の第2検出電極82側への過度な揺動を抑制する。また、突起61、62は、それぞれ、Y軸方向に並んで一対設けられている。
【0030】
また、
図3および
図4に示すように、各突起61、62は、可動体32と同電位のダミー電極83で覆われている。そのため、各突起61、62は、可動体32と同電位である。これにより、基板2中のアルカリ金属イオンの移動に伴う各突起61、62の表面の帯電を抑制することができる。そのため、突起61、62と可動体32との間に前述した「意図しない静電引力」が生じるのを効果的に抑制することができる。よって、加速度Azの検出精度が高い物理量センサー1となる。
【0031】
なお、本実施形態では、
図4に示すように、第1検出電極81に、その外縁から各突起61まで伸びる一対の切り欠き811を形成し、各切り欠き811内にダミー電極83を延伸させることによりダミー電極83で突起61を覆っている。同様に、第2検出電極82に、その外縁から各突起62まで伸びる一対の切り欠き821を形成し、各切り欠き821内にダミー電極83を延伸させることによりダミー電極83で突起62を覆っている。これにより、比較的簡単な構成で、突起61、62をダミー電極83で覆うことができる。ただし、突起61、62をダミー電極83で覆う方法は、特に限定されない。
【0032】
なお、突起6の構成は、特に限定されない。例えば、突起61、62の数は、それぞれ、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、突起61は、第1検出電極81に覆われていてもよいし、電極に覆われずに剥き出しになっていてもよい。同様に、突起62は、第2検出電極82に覆われていてもよいし、電極に覆われずに剥き出しになっていてもよい。また、突起61、62は、それぞれ、可動体32の下面320から基板2側に向けて突出していてもよい。
【0033】
また、突起6は、省略してもよい。突起6を省略した場合は、例えば、第1質量部321の先端が第3凹部213上のダミー電極83と接触することにより、それ以上の可動体32の第1検出電極81側への揺動が規制され、第2質量部322の先端が第4凹部214上のダミー電極83と接触することにより、それ以上の可動体32の第2検出電極82側への揺動が規制されるようにすることができる。
【0034】
以上、物理量センサー1の構成について簡単に説明した。次に、凹部21について詳細に説明する。
図2および
図3に示すように、凹部21は、複数の凹部、本実施形態では4つの凹部から形成された多段形状となっている。具体的には、凹部21は、最も浅い第1凹部211と、第1凹部211のX軸方向両側に位置し、第1凹部211よりも深い第2凹部212と、第2凹部212のX軸方向両側に位置し、第2凹部212よりも深い第3凹部213と、第3凹部213のX軸方向プラス側に位置し、第3凹部213よりも深い第4凹部214と、を有する。つまり、凹部21の底面は、揺動軸Jから遠位なほど深く、可動体32との離間距離も大きい段差面となっている。
【0035】
次に、第1検出電極81の構成について詳細に説明する。
図5に示すように、基板2は、揺動軸Jに対してX軸方向マイナス側において、第1凹部211の底面で構成された第1領域Q11と、第2凹部212の底面で構成された第2領域Q12と、第3凹部213の底面で構成された第m領域としての第3領域Q13と、を有する。そして、これら第1領域Q11、第2領域Q12および第n領域としての第3領域Q13上に第1検出電極81が配置されている。ただし、m、nは共に2以上の整数であり、n≦mである。ここではn=3、m=3である。
【0036】
第1領域Q11から第3領域Q13は、揺動軸Jに近い側から順に配置され、それぞれ、空隙を隔てて可動体32と対向している。また、第1領域Q11から第3領域Q13の順で、可動体32との離間距離D1が大きくなっている。これにより、可動体32との接触を抑制しつつ、第1検出電極81を全体的に可動体32側に寄せて配置することができる。そのため、可動体32と第1検出電極81との平均離間距離を小さくし、静電容量Caを大きくすることができる。その結果、物理量センサー1の加速度Azの検出感度を高めることができる。
【0037】
また、Y軸方向からの断面視で、第1検出電極81の第1領域Q11、第2領域Q12および第3領域Q13の各領域上の揺動軸Jから遠い側の端部のうちの2つを結ぶ仮想直線のうちX軸とのなす角θxが最も小さいものを第1仮想直線L11とする。つまり、第1領域Q11上の第1検出電極81のX軸方向マイナス側の端部Eq11と、第2領域Q12上の第1検出電極81のX軸方向マイナス側の端部Eq12と、第3領域Q13上の第1検出電極81のX軸方向マイナス側の端部Eq13と、から選択される2つを結ぶ仮想直線のうちX軸とのなす角θxが最も小さいものを第1仮想直線L11とする。図示の構成では、端部Eq11、Eq12に接する仮想直線が第1仮想直線L11となる。ただし、これに限定されず、端部Eq11、Eq13に接する仮想直線が第1仮想直線L11となってもよいし、端部Eq12、Eq13に接する仮想直線が第1仮想直線L11となってもよい。
【0038】
また、Y軸方向からの断面視で、可動体32が揺動軸Jまわりに第1検出電極81側に最大変位した状態での、可動体32の下面320に沿う仮想直線を第2仮想直線L12とする。なお、前記「最大変位した状態」は、可動体32が突起61と接触し、それ以上の第1検出電極81側への揺動が規制された状態を言う。
【0039】
また、端部Eq11~Eq13のうち最も揺動軸Jから近位な端部Eq11と交わりZ軸方向に延在する法線を第1法線HL11とし、最も揺動軸Jから遠位な端部Eq13と交わりZ軸方向に延在する法線を第2法線HL12とし、第1法線HL11と第2法線HL12との間の領域を領域R11とする。そして、物理量センサー1は、Y軸方向からの断面視で、領域R11において第1仮想直線L11と第2仮想直線L12とが交差しない。これにより、可動体32のスティッキングを抑制しつつ、第1検出電極81を全体的に可動体32側に寄せて配置することができる。そのため、可動体32と第1検出電極81との平均離間距離を小さくし、静電容量Caを大きくすることができる。その結果、物理量センサー1の加速度Azの検出感度を高めることができる。
【0040】
特に、本実施形態では、Y軸方向からの断面視で、揺動軸Jと交わりZ軸方向に延在する第3法線HLJと、可動体32のX軸方向マイナス側の端部と交わりZ軸方向に延在する第4法線HL14との間の領域R12においても、第1仮想直線L11と第2仮想直線L12とが交差しない。これにより、第1法線HL11と第2法線HL12とのなす角がより小さくなり、上述した効果がより顕著となる。つまり、可動体32のスティッキングを抑制しつつ、第1検出電極81を全体的に可動体32側にさらに寄せて配置することができる。そのため、物理量センサー1の加速度Azの検出感度をさらに高めることができる。
【0041】
また、Y軸方向からの断面視で、端部Eq11~Eq13のうち揺動軸Jから最も遠位な端部Eq13と接し、第2仮想直線L12と平行な第3仮想直線L13を設定したとき、他の全ての端部Eq11、Eq12は、第2仮想直線L12と第3仮想直線L13との間に位置する。これにより、各端部Eq11~Eq13と可動体32との接触を抑制しつつ、第1検出電極81を全体的に可動体32側にさらに寄せて配置することができる。そのため、物理量センサー1の加速度Azの検出感度をさらに高めることができる。ただし、これに限定されず、端部Eq11、Eq12のうちの少なくとも1つが、第3仮想直線L13よりも下側に位置していてもよい。
【0042】
また、第1検出部321Aと第1検出電極81との離間距離D11は、3.5μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましい。これにより、離間距離D1が十分に小さくなる。そのため、静電容量Caが十分に大きくなり、物理量センサー1の加速度Azの検出感度を十分に高めることができる。なお、ここで言う離間距離D11は、第1検出部321Aと重なる部分における、第1検出部321Aと第1検出電極81との最大離間距離を意味する。
【0043】
以上、第1検出電極81について説明した。次に、第2検出電極82の構成について説明する。第2検出電極82の構成は、第1検出電極81と同様である。基板2は、揺動軸Jに対してX軸方向プラス側において、第1凹部211の底面で構成された第1領域Q21と、第2凹部212の底面で構成された第2領域Q22と、第3凹部213の底面で構成された第3領域Q23と、第4凹部214の底面で構成された第m領域としての第4領域Q24と、を有する。そして、これら第1領域Q21、第2領域Q22、第3領域Q23および第n領域としての第4領域Q24上に第2検出電極82が配置されている。ただし、m、nは共に2以上の整数であり、n≦mである。ここではn=4、m=4である。
【0044】
また、第1領域Q21から第4領域Q24は、揺動軸Jに近い側から順に配置され、それぞれ、空隙を隔てて可動体32と対向している。また、第1領域Q21から第4領域Q24の順で、可動体32との離間距離D2が大きくなっている。これにより、可動体32との接触を抑制しつつ、第2検出電極82を全体的に可動体32側に寄せて配置することができる。そのため、可動体32と第2検出電極82との平均離間距離を小さくし、静電容量Cbを大きくすることができる。その結果、物理量センサー1の加速度Azの検出感度を高めることができる。
【0045】
また、Y軸方向からの断面視で、第2検出電極82の第1領域Q21、第2領域Q22、第3領域Q23および第4領域Q24の各領域上の揺動軸Jから遠い側の端部のうちの2つを結ぶ仮想直線のうちX軸とのなす角θxが最も小さいものを第1仮想直線L21とする。つまり、第1領域Q21上の第2検出電極82のX軸方向プラス側の端部Eq21と、第2領域Q22上の第2検出電極82のX軸方向プラス側の端部Eq22と、第3領域Q23上の第2検出電極82のX軸方向プラス側の端部Eq23と、第4領域Q24上の第2検出電極82のX軸方向プラス側の端部Eq24と、から選択される2つを結ぶ仮想直線のうちX軸とのなす角θxが最も小さいものを第1仮想直線L21とする。図示の構成では、端部Eq21、Eq22に接する仮想直線が第1仮想直線L21となる。ただし、これに限定されず、例えば、端部Eq21、Eq23に接する仮想直線が第1仮想直線L21となってもよいし、端部Eq22、Eq23に接する仮想直線が第1仮想直線L21となってもよい。
【0046】
また、Y軸方向からの断面視で、可動体32が揺動軸Jまわりに第2検出電極82側に最大変位した状態での、可動体32の下面320に沿う仮想直線を第2仮想直線L22とする。なお、前記「最大変位した状態」は、可動体32が突起62と接触し、それ以上の第2検出電極82側への揺動が規制された状態を言う。
【0047】
また、端部Eq21~Eq24のうち最も揺動軸Jから近位な端部Eq21と交わりZ軸方向に延在する法線を第1法線HL21とし、最も揺動軸Jから遠位な端部Eq24と交わりZ軸方向に延在する法線を第2法線HL22とし、第1法線HL21と第2法線HL22との間の領域を領域R21とする。そして、物理量センサー1は、Y軸方向からの断面視で、領域R21において第1仮想直線L21と第2仮想直線L22とが交差しない。これにより、可動体32のスティッキングを抑制しつつ、第2検出電極82を全体的に可動体32側に寄せて配置することができる。そのため、可動体32と第2検出電極82との平均離間距離を小さくし、静電容量Cbを大きくすることができる。その結果、物理量センサー1の加速度Azの検出感度を高めることができる。
【0048】
特に、本実施形態では、Y軸方向からの断面視で、揺動軸Jと交わりZ軸方向に延在する第3法線HLJと、可動体32のX軸方向プラス側の端部と交わりZ軸方向に延在する第4法線HL24との間の領域R22においても、第1仮想直線L21と第2仮想直線L22とが交差しない。これにより、第1仮想直線L21と第2仮想直線L22とのなす角がより小さくなり、上述した効果がより顕著となる。つまり、可動体32のスティッキングを抑制しつつ、第2検出電極82を全体的に可動体32側にさらに寄せて配置することができる。そのため、物理量センサー1の加速度Azの検出感度をさらに高めることができる。
【0049】
また、Y軸方向からの断面視で、端部Eq21~Eq24のうち揺動軸Jから最も遠位な端部Eq24と接し、第2仮想直線L22と平行な第3仮想直線L23を設定したとき、他の全ての端部Eq21、Eq22、Eq23は、第2仮想直線L22と第3仮想直線L23との間に位置する。これにより、各端部Eq21~Eq24と可動体32との接触を抑制しつつ、第2検出電極82を全体的に可動体32側にさらに寄せて配置することができる。そのため、物理量センサー1の加速度Azの検出感度をさらに高めることができる。ただし、これに限定されず、端部Eq21、Eq22、Eq23のうちの少なくとも1つが、第3仮想直線L23よりも下側に位置していてもよい。
【0050】
また、第2検出部322Aと第2検出電極82との離間距離D21は、3.5μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましい。これにより、離間距離D21が十分に小さくなる。そのため、静電容量Cbが十分に大きくなり、物理量センサー1の加速度Azの検出感度を十分に高めることができる。なお、ここで言う離間距離D21は、第2検出部322Aと重なる部分における、第2検出部322Aと第2検出電極82との最大離間距離を意味する。
【0051】
以上、物理量センサー1について説明した。このような物理量センサー1は、前述したように、互いに直交する3つの方向を第1方向であるX軸方向、第2方向であるY軸方向および第3方向であるZ軸方向としたとき、基板2と、基板2と空隙を隔ててZ軸方向に対向し、基板2に対してY軸方向に沿う揺動軸Jまわりに揺動する可動体32と、可動体と対向して配置される検出電極80としての第1検出電極81と、を有する。また、基板2は、揺動軸Jから近い側から順に配置される第1領域Q11から第m領域(ただし、mは2以上の整数)としての第3領域Q13を有し、第1領域Q11から第3領域Q13は、それぞれ、空隙を隔てて可動体32と対向し、第1領域Q11から第n領域(ただし、nは2以上の整数、かつ、n≦m)としての第3領域Q13にまたがって第1検出電極81が配置されている。そして、Y軸方向からの断面視で、第1検出電極81の第1領域Q11から第3領域Q13の各領域上の揺動軸Jから遠い側の端部Eq11~Eq13のうちの2つを結ぶ仮想直線のうちX軸方向とのなす角θxが最も小さい第1仮想直線L11と、可動体32が揺動軸Jまわりに最大変位した状態での、可動体32の基板2側の主面である下面320に沿う第2仮想直線L12と、を設定したとき、第1領域Q11の端部Eq11と交わりZ軸方向に延在する第1法線HL11と、第3領域Q13の端部Eq13と交わりZ軸方向に延在する第2法線HL12との間の領域R11において、第1仮想直線L11と第2仮想直線L12とが交差しない。
【0052】
これにより、可動体32のスティッキングを抑制しつつ、第1検出電極81を全体的に可動体32側に寄せて配置することができる。そのため、可動体32と第1検出電極81との平均離間距離を小さくし、静電容量Caを大きくすることができる。その結果、物理量センサー1の加速度Azの検出感度を高めることができる。
【0053】
また、物理量センサー1は、前述したように、可動体と対向して配置される検出電極80としての第2検出電極82と、を有する。また、基板2は、揺動軸Jから近い側から順に配置される第1領域Q21から第m領域(ただし、mは2以上の整数)としての第4領域Q24を有し、第1領域Q21から第4領域Q24は、それぞれ、空隙を隔てて可動体32と対向し、第1領域Q21から第n領域(ただし、nは2以上の整数、かつ、n≦m)としての第4領域Q24にまたがって第2検出電極82が配置されている。そして、Y軸方向からの断面視で、第2検出電極82の第1領域Q21から第4領域Q24の各領域上の揺動軸Jから遠い側の端部Eq21~Eq24のうちの2つを結ぶ仮想直線のうちX軸方向とのなす角θxが最も小さい第1仮想直線L21と、可動体32が揺動軸Jまわりに最大変位した状態での、可動体32の基板2側の主面である下面320に沿う第2仮想直線L22と、を設定したとき、第1領域Q21の端部Eq21と交わりZ軸方向に延在する第1法線HL21と、第4領域Q14の端部Eq24と交わりZ軸方向に延在する第2法線HL22との間の領域R21において、第1仮想直線L21と第2仮想直線L22とが交差しない。
【0054】
これにより、可動体32のスティッキングを抑制しつつ、第2検出電極82を全体的に可動体32側に寄せて配置することができる。そのため、可動体32と第2検出電極82との平均離間距離を小さくし、静電容量Cbを大きくすることができる。その結果、物理量センサー1の加速度Azの検出感度を高めることができる。
【0055】
また、前述したように、Y軸方向からの断面視で、揺動軸Jと交わりZ軸方向に延在する第3法線HLJと、可動体32の第1検出電極81側の端部と交わりZ軸方向に延在する第4法線HL14との間の領域R12において、第1仮想直線L11と第2仮想直線L12とが交差しない。これにより、第1仮想直線L11と第2仮想直線L12とのなす角がより小さくなり、第1検出電極81を全体的に可動体32側にさらに寄せて配置することができる。そのため、物理量センサー1の加速度Azの検出感度をさらに高めることができる。
【0056】
また、前述したように、Y軸方向からの断面視で、揺動軸Jと交わりZ軸方向に延在する第3法線HLJと、可動体32の第2検出電極82側の端部と交わりZ軸方向に延在する第4法線HL24との間の領域R22において、第1仮想直線L21と第2仮想直線L22とが交差しない。これにより、第1仮想直線L21と第2仮想直線L22とのなす角がより小さくなり、第2検出電極82を全体的に可動体32側にさらに寄せて配置することができる。そのため、物理量センサー1の加速度Azの検出感度をさらに高めることができる。
【0057】
また、前述したように、可動体32は、揺動軸Jに対して対称的に配置される第1検出部321Aおよび第2検出部322Aを有し、検出電極80は、第1検出部321Aと重なる第1検出電極81と、第2検出部322Aと重なる第2検出電極82と、を有する。そして、第1検出電極81と第2検出電極82とが揺動軸Jに対して対称的に配置されている。そのため、加速度Azが加わっていない自然状態において静電容量Ca、Cbを等しくすることができる。その結果、自然状態が出力ゼロとなる「ゼロ点」となり、ゼロ点を自然状態に合わせるゼロ点補正が不要となる。したがって、物理量センサー1の装置構成が簡単なものとなる。また、逆相で変化する静電容量Ca、Cbの差動演算に基づいて加速度Azを検出することができ、加速度Azの検出感度を高めることができる。
【0058】
基板2から突出し、可動体32と接触することにより、可動体32の揺動軸Jまわりの揺動を規制する突起6を有する。これにより、可動体32の過度な揺動を規制することができる。また、互いに電位が異なる可動体32と第1、第2検出電極81、82との過度な接近または広面積での接触を抑制することができる。そのため、可動体32のスティッキングを効果的に抑制することができる。
【0059】
また、前述したように、前記「最大変位の状態」は、可動体32が突起6と接触した状態である。これにより、可動体32のスティッキングを効果的に抑制することができる。
【0060】
また、前述したように、突起6は、可動体32と同電位である。これにより、突起6と可動体32との間に可動体32の誤作動、特に、検出対象である加速度Az以外の外力による変位に繋がるような意図しない静電引力が生じるのを効果的に抑制することができる。よって、加速度Azの検出精度が高い物理量センサー1となる。
【0061】
また、前述したように、物理量センサー1は、基板2の検出電極80が配置されていない領域であって可動体32と対向している部分に配置され、可動体32と同電位であるダミー電極83を有する。これにより、基板2と可動体32との間に、可動体32の誤作動、特に検出対象である加速度Az以外の外力による変位に繋がるような意図しない静電引力が生じるのを効果的に抑制することができる。よって、加速度Azの検出精度が高い物理量センサー1となる。
【0062】
また、前述したように、第1領域Q11から第3領域Q13の順で、可動体32との離間距離が大きくなる。これにより、可動体32との接触を抑制しつつ、第1検出電極81を全体的に可動体32側に寄せて配置することができる。同様に、第1領域Q21から第4領域Q24の順で、可動体32との離間距離が大きくなる。これにより、可動体32との接触を抑制しつつ、第2検出電極82を全体的に可動体32側に寄せて配置することができる。
【0063】
また、前述したように、検出電極80と可動体32との離間距離D11、D21は、3.5μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましい。これにより、検出電極80と可動体32との離間距離を十分に小さくすることができる。そのため、物理量センサー1の加速度Azの検出感度を十分に高めることができる。
【0064】
なお、物理量センサー1の構成、特に、凹部21および検出電極80の構成は、特に限定されない。例えば、
図7に示すように、第1検出電極81が第1領域Q11、第2領域Q12および第3領域Q13にまたがって配置され、第2検出電極82が第1領域Q21、第2領域Q22および第3領域Q23にまたがって配置された構成であってもよい。この構成では、第3領域Q13および第4領域Q24がそれぞれ第m領域となり、第3領域Q13、Q23がそれぞれ第n領域となる。
【0065】
また、例えば、
図8に示すように、第1検出電極81が第1領域Q11および第2領域Q12にまたがって配置され、第2検出電極82が第1領域Q21および第2領域Q22にまたがって配置された構成であってもよい。この構成では、第3領域Q13および第4領域Q24がそれぞれ第m領域となり、第2領域Q12、Q22がそれぞれ第n領域となる。
【0066】
なお、
図8の構成においては、第2領域Q22上の第1、第2検出電極81、82と可動体32との離間距離D0(=D11、D21)は、第2質量部322の先端EのZ軸方向への最大変位量Δhよりも小さい。つまり、D0<Δhである。これにより、第1、第2検出電極81、82を全体的に可動体32側に寄せて配置することができる。そのため、可動体32と第1、第2検出電極81、82との平均離間距離を小さくし、静電容量Ca、Cbを大きくすることができる。
【0067】
また、例えば、
図9に示すように、凹部21が第1凹部211、第2凹部212および第3凹部213で構成され、第1検出電極81が第1領域Q11、第2領域Q12および第3領域Q13にまたがって配置され、第2検出電極82が第1領域Q21、第2領域Q22および第3領域Q23にまたがって配置された構成であってもよい。なお、この構成では、第3領域Q13、Q23がそれぞれ第m領域となり、第n領域ともなる。
【0068】
また、例えば、
図10に示すように、凹部21が第1凹部211、第2凹部212および第3凹部213で構成され、第1検出電極81が第1領域Q11および第2領域Q12にまたがって配置され、第2検出電極82が第1領域Q21および第2領域Q22にまたがって配置された構成であってもよい。なお、この構成では、第3領域Q13、Q23がそれぞれ第m領域となり、第2領域Q12、Q22がそれぞれ第n領域となる。
【0069】
また、例えば、
図11に示すように、凹部21を第4凹部214で構成し、凹部21の底面に基板2とは別部材で構成された多段形状の台座5を設け、この上に第1検出電極81および第2検出電極82を配置してもよい。台座5の構成材料としては、特に限定されず、ガラス材料、樹脂材料等の各種絶縁材料を用いることができる。また、第1検出電極81および第2検出電極82の絶縁状態を確保することができれば、各種金属材料を用いることもできる。本実施形態では、台座5は、絶縁層51の積層体で構成されている。また、台座5を第1、第2検出電極81、82と一体形成してもよい。つまり、
図12に示すように、凹部21を第4凹部214で構成し、第1検出電極81および第2検出電極82をそれぞれ段差形状としてもよい。
【0070】
<第2実施形態>
図13は、本発明の第2実施形態に係る物理量センサーを示す平面図である。
【0071】
本実施形態に係る物理量センサー1は、主に、突起6の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の物理量センサー1と同様である。なお、以下の説明では、第2実施形態の物理量センサー1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図13では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0072】
図13に示すように、本実施形態の物理量センサー1では、一対の突起61は、それぞれ、第1質量部321の先端からX軸方向マイナス側に向けて突出している。一方、一対の突起62は、それぞれ、第2質量部322の先端からX軸方向プラス側に向けて突出している。このような構成では、突起61が第3凹部213上のダミー電極83と接触することにより、可動体32のそれ以上の第1検出電極81側への揺動が規制され、最大変位の状態となる。また、突起62が第4凹部214上のダミー電極83と接触することにより、可動体32のそれ以上の第2検出電極82側への揺動が規制され、最大変位の状態となる。
【0073】
以上のように、本実施形態の物理量センサー1では、可動体32から突出し、基板2と接触することにより、可動体32の揺動軸Jまわりの揺動を規制する突起6を有する。これにより、可動体32の過度な揺動を規制することができる。また、可動体32のスティッキングを効果的に抑制することができる。特に、前述の第1実施形態のように第1、第2検出電極81、82に切り欠き811、821を形成しなくてよくなる分、第1、第2検出電極81、82の面積を大きくすることができる。また、前述したように、前記「最大変位の状態」は、基板2が突起6と接触した状態である。これにより、可動体32のスティッキングを効果的に抑制することができる。
【0074】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0075】
<第3実施形態>
図14は、本発明の第3実施形態に係る物理量センサーを示す断面図である。
図15ないし
図17は、それぞれ、
図14に示す物理量センサーの変形例を示す断面図である。
【0076】
本実施形態に係る物理量センサー1は、主に、突起6の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の物理量センサー1と同様である。なお、以下の説明では、第2実施形態の物理量センサー1に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図14ないし
図17では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0077】
図14に示すように、本実施形態の物理量センサー1では、第2質量部322からトルク発生部322Bが省略されている。つまり、可動体32は、揺動軸Jに対してX軸方向マイナス側に位置する第1検出部321Aと、X軸方向プラス側に位置する第2検出部322Aと、を有する。そして、第1検出部321Aおよび第2検出部322Aは、平面視で、揺動軸Jに対して対称的に配置されている。
【0078】
また、第1検出部321Aには、上面に開口する有底の凹部3210が形成されている。この凹部3210によって第1検出部321Aの質量が減少し、第1検出部321Aが第2検出部322Aよりも軽くなる。これにより、第1検出部321Aと第2検出部322Aとの間に回転モーメントの差が生じ、可動体32のシーソー揺動が可能となる。特に、本実施形態では、凹部3210は、第1検出部321Aの先端側に偏って配置され、第1検出部321Aの先端側半分程度に広がっている。これにより、第1検出部321Aの機械的強度を保ちつつ、第1検出部321Aの回転モーメントを効果的に減少させることができる。
【0079】
また、
図14に示すように、凹部21は、第1凹部211、第2凹部212および第3凹部213で構成されており、揺動軸Jに対して対称的に配置されている。そして、揺動軸Jに対してX軸方向マイナス側では、第1検出電極81が第1領域Q11、第2領域Q12および第3領域Q13にまたがって配置され、揺動軸Jに対してX軸方向プラス側では、第2検出電極82が第1領域Q21、第2領域Q22および第3領域Q23にまたがって配置されている。なお、この構成では、第3領域Q13、Q23がそれぞれ第m領域となり、第n領域ともなる。
【0080】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0081】
なお、物理量センサー1としては、特に限定されない。例えば、
図15に示すように、第1検出電極81が第1領域Q11および第2領域Q12にまたがって配置され、第2検出電極82が第1領域Q21および第2領域Q22にまたがって配置された構成であってもよい。この構成では、第3領域Q13、Q23がそれぞれ第m領域となり、第2領域Q12、Q22がそれぞれ第n領域となる。また、例えば、
図16に示すように、凹部3210が第1検出部321Aの全域に広がって形成されていてもよい。これにより、第1検出部321Aの回転モーメントをより低減することができる。また、
図17に示すように、前述した第1実施形態の物理量センサー1に凹部3210を追加してもよい。これにより、第1検出部321Aの回転モーメントをより低減することができる。
【0082】
<第4実施形態>
図18は、第4実施形態に係る電子機器としてのスマートフォンを示す平面図である。
【0083】
図18に示すスマートフォン1200は、本発明の電子機器を適用したものである。スマートフォン1200には、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1210と、が内蔵されている。物理量センサー1によって検出された検出データは、制御回路1210に送信され、制御回路1210は、受信した検出データからスマートフォン1200の姿勢や挙動を認識して、表示部1208に表示されている表示画像を変化させたり、警告音や効果音を鳴らしたり、振動モーターを駆動して本体を振動させることができる。
【0084】
このような電子機器としてのスマートフォン1200は、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1210と、を有する。そのため、前述した物理量センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0085】
なお、本発明の電子機器は、前述したスマートフォン1200の他にも、例えば、パーソナルコンピューター、デジタルスチールカメラ、タブレット端末、時計、スマートウォッチ、インクジェットプリンター、テレビ、スマートグラス、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ドライブレコーダー、ページャ、電子手帳、電子辞書、電子翻訳機、電卓、電子ゲーム機器、玩具、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器、魚群探知機、各種測定機器、移動体端末基地局用機器、車両、鉄道車輌、航空機、ヘリコプター、船舶等の各種計器類、フライトシミュレーター、ネットワークサーバー等に適用することができる。
【0086】
<第5実施形態>
図19は、第5実施形態に係る電子機器としての慣性計測装置を示す分解斜視図である。
図20は、
図19に示す慣性計測装置が有する基板の斜視図である。
【0087】
図19に示す電子機器としての慣性計測装置2000(IMU:Inertial Measurement Unit)は、自動車や、ロボットなどの被装着装置の姿勢や、挙動を検出する慣性計測装置である。慣性計測装置2000は、3軸加速度センサーおよび3軸角速度センサーを備えた6軸モーションセンサーとして機能する。
【0088】
慣性計測装置2000は、平面形状が略正方形の直方体である。また、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に固定部としてのネジ穴2110が形成されている。この2ヶ所のネジ穴2110に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測装置2000を固定することができる。なお、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンや、デジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
【0089】
慣性計測装置2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300と、を有し、アウターケース2100の内部に、接合部材2200を介在させて、センサーモジュール2300を挿入した構成となっている。アウターケース2100の外形は、前述した慣性計測装置2000の全体形状と同様に、平面形状が略正方形の直方体であり、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、それぞれネジ穴2110が形成されている。また、アウターケース2100は、箱状であり、その内部にセンサーモジュール2300が収納されている。
【0090】
センサーモジュール2300は、インナーケース2310と、基板2320と、を有する。インナーケース2310は、基板2320を支持する部材であり、アウターケース2100の内部に収まる形状となっている。また、インナーケース2310には、基板2320との接触を防止するための凹部2311や後述するコネクター2330を露出させるための開口2312が形成されている。このようなインナーケース2310は、接合部材2200によってアウターケース2100に接合されている。また、インナーケース2310の下面は接着剤によって基板2320が接合されている。
【0091】
図20に示すように、基板2320の上面には、コネクター2330、Z軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340z、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサー2350などが実装されている。また、基板2320の側面には、X軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340xおよびY軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340yが実装されている。そして、例えば、加速度センサー2350として、本発明の物理量センサーを用いることができる。
【0092】
また、基板2320の下面には、制御IC2360が実装されている。制御IC2360は、MCU(Micro Controller Unit)であり、慣性計測装置2000の各部を制御する。記憶部には、加速度および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラムや、検出データをデジタル化してパケットデータに組込むプログラム、付随するデータなどが記憶されている。なお、基板2320にはその他にも複数の電子部品が実装されている。
【0093】
<第6実施形態>
図21は、第6実施形態に係る電子機器としての移動体測位装置の全体システムを示すブロック図である。
図22は、
図21に示す移動体測位装置の作用を示す図である。
【0094】
図21に示す移動体測位装置3000は、移動体に装着して用い、当該移動体の測位を行うための装置である。なお、移動体としては、特に限定されず、自転車、自動車、自動二輪車、電車、飛行機、船等のいずれでもよいが、本実施形態では移動体として四輪自動車、特に農業用トラクターを用いた場合について説明する。
【0095】
移動体測位装置3000は、慣性計測装置3100(IMU)と、演算処理部3200と、GPS受信部3300と、受信アンテナ3400と、位置情報取得部3500と、位置合成部3600と、処理部3700と、通信部3800と、表示部3900と、を有する。なお、慣性計測装置3100としては、例えば、前述した慣性計測装置2000を用いることができる。
【0096】
慣性計測装置3100は、3軸の加速度センサー3110と、3軸の角速度センサー3120と、を有する。演算処理部3200は、加速度センサー3110からの加速度データおよび角速度センサー3120からの角速度データを受け、これらデータに対して慣性航法演算処理を行い、移動体の加速度および姿勢を含む慣性航法測位データを出力する。
【0097】
また、GPS受信部3300は、受信アンテナ3400でGPS衛星からの信号を受信する。また、位置情報取得部3500は、GPS受信部3300が受信した信号に基づいて、移動体測位装置3000の位置(緯度、経度、高度)、速度、方位を表すGPS測位データを出力する。このGPS測位データには、受信状態や受信時刻等を示すステータスデータも含まれている。
【0098】
位置合成部3600は、演算処理部3200から出力された慣性航法測位データおよび位置情報取得部3500から出力されたGPS測位データに基づいて、移動体の位置、具体的には移動体が地面のどの位置を走行しているかを算出する。例えば、GPS測位データに含まれている移動体の位置が同じであっても、
図22に示すように、地面の傾斜θ等の影響によって移動体の姿勢が異なっていれば、地面の異なる位置を移動体が走行していることになる。そのため、GPS測位データだけでは移動体の正確な位置を算出することができない。そこで、位置合成部3600は、慣性航法測位データを用いて、移動体が地面のどの位置を走行しているのかを算出する。
【0099】
位置合成部3600から出力された位置データは、処理部3700によって所定の処理が行われ、測位結果として表示部3900に表示される。また、位置データは、通信部3800によって外部装置に送信されるようになっていてもよい。
【0100】
<第7実施形態>
図23は、第7実施形態に係る移動体を示す斜視図である。
【0101】
図23に示す自動車1500は、本発明の移動体を適用した自動車である。この図において、自動車1500は、エンジンシステム、ブレーキシステムおよびキーレスエントリーシステムの少なくとも何れかのシステム1510を含んでいる。また、自動車1500には、物理量センサー1が内蔵されており、物理量センサー1によって車体の姿勢を検出することができる。物理量センサー1の検出信号は、制御回路1502に供給され、制御回路1502は、その信号に基づいてシステム1510を制御することができる。
【0102】
このように、移動体としての自動車1500は、物理量センサー1と、物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御回路1502と、を有する。そのため、前述した物理量センサー1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0103】
なお、物理量センサー1は、他にも、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。また、移動体としては、自動車1500に限定されず、例えば、鉄道車輌、飛行機、ヘリコプター、ロケット、人工衛星、船舶、AGV(無人搬送車)、エレベーター、エスカレーター、二足歩行ロボット、ドローン等の無人飛行機、ラジコン模型、鉄道模型、その他玩具等にも適用することができる。
【0104】
以上、本発明の物理量センサー、電子機器および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、例えば、
図17で第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせたように、前述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。また、上述した全ての実施形態から突起6を省略してもよい。
【0105】
また、前述した実施形態では、物理量センサーが加速度を検出する構成について説明したが、物理量センサーが検出する物理量としては、特に限定されず、例えば、角速度、圧力等であってもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…物理量センサー、2…基板、3…素子部、4…蓋体、5…台座、6…突起、8…電極、21…凹部、22…マウント部、25、26、27…溝部、30…貫通孔、31…固定部、32…可動体、33…支持梁、40…ガラスフリット、41…凹部、51…絶縁層、61、62…突起、75、76、77…配線、80…検出電極、81…第1検出電極、82…第2検出電極、83…ダミー電極、211…第1凹部、212…第2凹部、213…第3凹部、214…第4凹部、320…下面、321…第1質量部、321A…第1検出部、322…第2質量部、322A…第2検出部、322B…トルク発生部、323…連結部、324…開口、325…貫通孔、811、821…切り欠き、1200…スマートフォン、1208…表示部、1210…制御回路、1500…自動車、1502…制御回路、1510…システム、2000…慣性計測装置、2100…アウターケース、2110…ネジ穴、2200…接合部材、2300…センサーモジュール、2310…インナーケース、2311…凹部、2312…開口、2320…基板、2330…コネクター、2340x…角速度センサー、2340y…角速度センサー、2340z…角速度センサー、2350…加速度センサー、3000…移動体測位装置、3100…慣性計測装置、3110…加速度センサー、3120…角速度センサー、3200…演算処理部、3210…凹部、3300…GPS受信部、3400…受信アンテナ、3500…位置情報取得部、3600…位置合成部、3700…処理部、3800…通信部、3900…表示部、Az…加速度、Ca、Cb…静電容量、D0、D1、D11、D2、D21…離間距離、E…先端、Eq11、Eq12、Eq13、Eq21、Eq22、Eq23、Eq24…端部、HL11、HL21…第1法線、HL12、HL22…第2法線、HL14、HL24…第4法線、HLJ…第3法線、2360…制御IC、J…揺動軸、L11、L21…第1仮想直線、L12、L22…第2仮想直線、L13、L23…第3仮想直線、P…電極パッド、Q11、Q21…第1領域、Q12、Q22…第2領域、Q13、Q23…第3領域、Q24…第4領域、R11、R12、R21、R22…領域、S…収納空間、Δh…最大変位量、θ…傾斜、θx…角