(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ加工装置及び眼鏡レンズ加工装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B24B 9/14 20060101AFI20240814BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240814BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20240814BHJP
B24B 47/22 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
B24B9/14 K
B24B49/10
G02C13/00
B24B47/22
(21)【出願番号】P 2020112291
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】大林 裕且
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-161619(JP,A)
【文献】特開2009-066743(JP,A)
【文献】特開2013-158866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/14
B24B 49/10
G02C 13/00
B24B 47/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズの周縁を加工具によって加工する眼鏡レンズ加工装置において、
眼鏡レンズをレンズ保持軸で保持する保持手段と、
前記レンズ保持軸で眼鏡レンズを保持するときの保持圧を変更する保持圧変更手段と、
眼鏡レンズの周縁を加工するときの第1保持圧で眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって保持された状態で
、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第1外形形状を取得する第1外形形状取得手段と、
眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって前記第1保持圧で保持される前に、
前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第2外形形状を取得する第2外形形状取得手段と、
取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とを比較可能に出力する出力制御手段と、を備え、
前記第2外形形状取得手段は、前記第1保持圧よりも弱い第2保持圧で眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって保持された状態で眼鏡レンズの前記第2外形形状を取得する手段であり、
前記第1外形形状取得手段は、前記保持圧変更手段によって前記第2保持圧から前記第1保持圧に変更された状態で眼鏡レンズの前記第1外形形状を取得する手段であり、
前記出力制御手段は、
取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とに基づいて前記第1保持圧で眼鏡レンズが保持されたときの眼鏡レンズの横ズレを検出するズレ検出手段を備え、前記ズレ検出手段の検出結果を出力するか、又は、
表示手段の同一画面上に前記第1外形形状と前記第2外形形状とを表示することで、前記第1外形形状と前記第2外形形状とのズレ関係を比較可能にする、
ことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項2】
請求項1の眼鏡レンズ加工装置において、
眼鏡レンズの周縁を加工するための玉型データと、前記レンズ保持軸による眼鏡レンズの保持中心に対する玉型データの位置関係データと、を取得するデータ取得手段と、
前記ズレ検出手段の検出結果に基づいて前記位置関係データを補正する補正手段と、を備え、
補正された前記位置関係データに基づいて眼鏡レンズの周縁を前記加工具によって加工することを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項3】
請求項
2の眼鏡レンズ加工装置において、
前記レンズ保持軸に眼鏡レンズを保持させるために眼鏡レンズに固定された加工治具のカップの外形形状データを記憶する記憶手段と、
前記ズレ検出手段の検出結果、前記玉型データ及び前記記憶手段に記憶された前記カップの外形形状データに基づき、前記補正手段の補正結果に基づく眼鏡レンズの周縁加工を行うか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項4】
眼鏡レンズの周縁を加工具によって加工する眼鏡レンズ加工装置において、
眼鏡レンズをレンズ保持軸で保持する保持手段と、
眼鏡レンズの周縁を加工するときの第1保持圧で眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって保持された状態で、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第1外形形状を取得する第1外形形状取得手段と、
眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって前記第1保持圧で保持される前に、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第2外形形状を取得する第2外形形状取得手段と、
取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とを比較可能に出力する出力制御手段と、を備え、
前記第2外形形状取得手段は、前記レンズ保持軸によって保持される前の眼鏡レンズが撮像手段によって撮像され、撮像されたレンズ画像が画像処置されることによって得られた外形形状であって、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの外形形状を前記第2外形形状として取得する手段であり、
前記出力制御手段は、
取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とに基づいて前記第1保持圧で眼鏡レンズが保持されたときの眼鏡レンズの横ズレを検出するズレ検出手段を備え、前記ズレ検出手段の検出結果を出力するか、又は、
表示手段の同一画面上に前記第1外形形状と前記第2外形形状とを表示することで、前記第1外形形状と前記第2外形形状とのズレ関係を比較可能にする、
ことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項5】
レンズ保持軸で眼鏡レンズを保持するときの保持圧を変更する保持圧変更手段を有し、前記レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの周縁を加工具によって加工する眼鏡レンズ加工装置で実行される眼鏡レンズ加工装置の制御プログラムであって、
眼鏡レンズの周縁を加工するときの第1保持圧で眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって保持された状態で、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第1外形形状を取得する第1外形形状取得ステップと、
眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって前記第1保持圧で保持される前に、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第2外形形状を取得する第2外形形状取得ステップと、
取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とを比較可能に出力する出力制御ステップと、
を眼鏡レンズ加工装置の制御ユニットに実行させ、
前記第2外形形状取得ステップは、前記第1保持圧よりも弱い第2保持圧で眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって保持された状態で眼鏡レンズの前記第2外形形状を取得するステップであり、
前記第1外形形状取得ステップは、前記保持圧変更手段によって前記第2保持圧から前記第1保持圧に変更された状態で眼鏡レンズの前記第1外形形状を取得する手段であり、
前記出力制御ステップは、
取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とに基づいて前記第1保持圧で眼鏡レンズが保持されたときの眼鏡レンズの横ズレを検出し、その検出結果を出力するか、又は、
表示手段の同一画面上に前記第1外形形状と前記第2外形形状とを表示することで、前記第1外形形状と前記第2外形形状とのズレ関係を比較可能にするステップである、
ことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置の制御プログラム。
【請求項6】
レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの周縁を加工具によって加工する眼鏡レンズ加工装置で実行される眼鏡レンズ加工装置の制御プログラムであって、
眼鏡レンズの周縁を加工するときの第1保持圧で眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって保持された状態で
、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第1外形形状を取得する第1外形形状取得ステップと、
眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって前記第1保持圧で保持される前に、
前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第2外形形状を取得する第2外形形状取得ステップと、
取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とを比較可能に出力する出力制御ステップと、
を眼鏡レンズ加工装置の制御ユニットに実行させ
、
前記第2外形形状取得ステップは、前記レンズ保持軸によって保持される前の眼鏡レンズが撮像手段によって撮像され、撮像されたレンズ画像が画像処置されることによって得られた外形形状であって、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの外形形状を前記第2外形形状として取得するステップであり、
前記出力制御ステップは、
取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とに基づいて前記第1保持圧で眼鏡レンズが保持されたときの眼鏡レンズの横ズレを検出し、その検出結果を出力するか、又は、
表示手段の同一画面上に前記第1外形形状と前記第2外形形状とを表示することで、前記第1外形形状と前記第2外形形状とのズレ関係を比較可能にするステップである、
ことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズの周辺を加工する眼鏡レンズ加工装置及び眼鏡レンズ加工装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズ加工装置では、例えば、2つのレンズチャック軸に眼鏡レンズが保持され、レンズチャック軸の回転によりレンズも回転され、砥石等の加工具にレンズが押し当てられることにより、眼鏡レンズの周縁が加工される。眼鏡レンズをレンズチャック軸に保持させるときには、治具であるカップがレンズ表面に固定され、眼鏡レンズ加工装置が持つ一方のレンズチャック軸のカップホルダにカップを介して眼鏡レンズが装着され、もう一方のレンズチャック軸のレンズ押え部材により、眼鏡レンズが所定のチャック圧で保持される。
【0003】
近年では、水や油などが付着しにくい撥水物質がレンズ表面にコーティングされた撥水レンズが多く使用されるようになってきた。この撥水レンズはレンズ表面が滑りやすい。この滑りやすい眼鏡レンズの場合、レンズ加工用に設定されたチャック圧で2つのレンズチャック軸にレンズが保持されたときに、カップの取り付けが滑り、チャック軸の保持中心に対して眼鏡レンズが横滑りし、「横ズレ」(いわゆるPDズレ)が発生することがある。
【0004】
この対応として、滑りやすいレンズを加工する時は、通常よりも弱くしたチャック圧で眼鏡レンズをチャック軸で保持させる制御方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術においては、操作者が予め滑りやすいレンズの加工モードを選択しておく必要があった。このため、操作者が、被加工レンズが滑りやすい眼鏡レンズであることに気付かずにレンズを周縁加工してしまうと、レンズが滑り、レンズを良好に加工することができない問題があった。
【0007】
本開示は、上記従来技術の問題点に鑑み、被加工レンズが滑りやすい眼鏡レンズである場合にも、眼鏡レンズの加工を良好に行うことができる眼鏡レンズ加工装置及び眼鏡レンズ加工装置の制御プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 眼鏡レンズの周縁を加工具によって加工する眼鏡レンズ加工装置において、眼鏡レンズをレンズ保持軸で保持する保持手段と、前記レンズ保持軸で眼鏡レンズを保持するときの保持圧を変更する保持圧変更手段と、眼鏡レンズの周縁を加工するときの第1保持圧で眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって保持された状態で、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第1外形形状を取得する第1外形形状取得手段と、眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって前記第1保持圧で保持される前に、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第2外形形状を取得する第2外形形状取得手段と、取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とを比較可能に出力する出力制御手段と、を備え、前記第2外形形状取得手段は、前記第1保持圧よりも弱い第2保持圧で眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって保持された状態で眼鏡レンズの前記第2外形形状を取得する手段であり、前記第1外形形状取得手段は、前記保持圧変更手段によって前記第2保持圧から前記第1保持圧に変更された状態で眼鏡レンズの前記第1外形形状を取得する手段であり、前記出力制御手段は、取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とに基づいて前記第1保持圧で眼鏡レンズが保持されたときの眼鏡レンズの横ズレを検出するズレ検出手段を備え、前記ズレ検出手段の検出結果を出力するか、又は、表示手段の同一画面上に前記第1外形形状と前記第2外形形状とを表示することで、前記第1外形形状と前記第2外形形状とのズレ関係を比較可能にする、ことを特徴とする。
(2) 眼鏡レンズの周縁を加工具によって加工する眼鏡レンズ加工装置において、眼鏡レンズをレンズ保持軸で保持する保持手段と、眼鏡レンズの周縁を加工するときの第1保持圧で眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって保持された状態で、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第1外形形状を取得する第1外形形状取得手段と、眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって前記第1保持圧で保持される前に、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第2外形形状を取得する第2外形形状取得手段と、取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とを比較可能に出力する出力制御手段と、を備え、前記第2外形形状取得手段は、前記レンズ保持軸によって保持される前の眼鏡レンズが撮像手段によって撮像され、撮像されたレンズ画像が画像処置されることによって得られた外形形状であって、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの外形形状を前記第2外形形状として取得する手段であり、前記出力制御手段は、取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とに基づいて前記第1保持圧で眼鏡レンズが保持されたときの眼鏡レンズの横ズレを検出するズレ検出手段を備え、前記ズレ検出手段の検出結果を出力するか、又は、表示手段の同一画面上に前記第1外形形状と前記第2外形形状とを表示することで、前記第1外形形状と前記第2外形形状とのズレ関係を比較可能にする、ことを特徴とする。
(3) レンズ保持軸で眼鏡レンズを保持するときの保持圧を変更する保持圧変更手段を有し、前記レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの周縁を加工具によって加工する眼鏡レンズ加工装置で実行される眼鏡レンズ加工装置の制御プログラムであって、眼鏡レンズの周縁を加工するときの第1保持圧で眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって保持された状態で、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第1外形形状を取得する第1外形形状取得ステップと、眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって前記第1保持圧で保持される前に、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第2外形形状を取得する第2外形形状取得ステップと、取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とを比較可能に出力する出力制御ステップと、を眼鏡レンズ加工装置の制御ユニットに実行させ、前記第2外形形状取得ステップは、前記第1保持圧よりも弱い第2保持圧で眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって保持された状態で眼鏡レンズの前記第2外形形状を取得するステップであり、前記第1外形形状取得ステップは、前記保持圧変更手段によって前記第2保持圧から前記第1保持圧に変更された状態で眼鏡レンズの前記第1外形形状を取得する手段であり、前記出力制御ステップは、取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とに基づいて前記第1保持圧で眼鏡レンズが保持されたときの眼鏡レンズの横ズレを検出し、その検出結果を出力するか、又は、表示手段の同一画面上に前記第1外形形状と前記第2外形形状とを表示することで、前記第1外形形状と前記第2外形形状とのズレ関係を比較可能にするステップである、ことを特徴とする。
(4) レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの周縁を加工具によって加工する眼鏡レンズ加工装置で実行される眼鏡レンズ加工装置の制御プログラムであって、眼鏡レンズの周縁を加工するときの第1保持圧で眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって保持された状態で、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第1外形形状を取得する第1外形形状取得ステップと、眼鏡レンズが前記レンズ保持軸によって前記第1保持圧で保持される前に、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの第2外形形状を取得する第2外形形状取得ステップと、取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とを比較可能に出力する出力制御ステップと、を眼鏡レンズ加工装置の制御ユニットに実行させ、前記第2外形形状取得ステップは、前記レンズ保持軸によって保持される前の眼鏡レンズが撮像手段によって撮像され、撮像されたレンズ画像が画像処置されることによって得られた外形形状であって、前記レンズ保持軸の保持中心に対する眼鏡レンズの外形形状を前記第2外形形状として取得するステップであり、前記出力制御ステップは、取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とに基づいて前記第1保持圧で眼鏡レンズが保持されたときの眼鏡レンズの横ズレを検出し、その検出結果を出力するか、又は、表示手段の同一画面上に前記第1外形形状と前記第2外形形状とを表示することで、前記第1外形形状と前記第2外形形状とのズレ関係を比較可能にするステップである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、被加工レンズが滑りやすい眼鏡レンズである場合にも、眼鏡レンズの加工を良好に行うことができる。また、レンズに横ズレを検知するための特別な処理を施さなくとも、眼鏡レンズの加工を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】レンズ外形検知ユニットの概略構成図である。
【
図5】レンズ外形検知ユニットによるレンズ外形の測定の説明図である。
【
図6】眼鏡レンズ加工装置の制御ブロック図である。
【
図8】レイアウトデータを入力するための画面例である。
【
図11】横ズレを補正して加工する装置動作のフローチャートである。
【
図12】補正に基づいてレンズを加工可能か判定する方法を示した図である。
【
図14】横ズレ補正してソフト加工を行う装置動作のフローチャートである。
【
図15】操作者がレンズのズレを判定する場合の装置動作のフローチャートである。
【
図16】操作者がレンズのズレを判定するための画面例である。
【
図17】ブロッキング装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[概要]
以下、本開示に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~16は実施形態に係る眼鏡レンズ加工装置及び眼鏡レンズ加工装置の制御プログラムの構成について説明する図である。
【0012】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズ(以下、レンズLE)を保持するために構成されたレンズ保持手段(例えば、レンズ保持ユニット100)を備える。例えば、レンズ保持手段は、レンズLEを保持するために構成されたレンズ保持軸(例えば、レンズチャック軸102)を備える。例えば、レンズ保持軸は、レンズLEを挟持するための一対の第1保持軸(例えば、左チャック軸102L)と第2保持軸(例えば、右チャック軸102R)とを備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズLEを回転するためのレンズの回転手段(例えば、モータ120)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズLEの周縁を加工するための加工具(例えば、加工具168)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズ保持手段に保持されたレンズLEと加工具との位置関係を相対的に変化させる移動手段(例えば、移動ユニット300)を備える。
【0013】
本開示において、保持圧は、レンズLEをレンズ保持軸で保持(挟持)する時にかけられる圧力を示す用語として使用する。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズの周縁を加工するときの第1保持圧でレンズ保持軸によって保持されたレンズLEの第1外形形状を取得するための第1外形形状取得手段(例えば、レンズ外形検知ユニット500)を備える。例えば、第1外形形状取得手段はレンズ保持軸による保持中心に対するレンズLEの第1外形形状を取得する手段である。
【0014】
なお、例えば、第1保持圧は、レンズLEの研削加工時に適するように設定された本チャック圧である。例えば、第1保持圧は、レンズLEをレンズ保持軸で保持したときに眼鏡レンズ及びレンズ表面のコーティングに破損が生じない圧力で、且つ、レンズ表面が滑りにくいレンズLE(通常のコーティングのレンズ)を加工具で周縁加工するときにズレを生じさせない圧力に設定されている。
【0015】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズがレンズ保持軸によって第1保持圧で保持される前に、眼鏡レンズの第2外形形状を取得するための第2外形形状取得手段(例えば、レンズ外形検知ユニット500、データ取得ユニット11)を備える。例えば、第2外形形状取得手段はレンズ保持軸による保持中心に対するレンズLEの第2外形形状を取得する手段である。
【0016】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、取得された第1外形形状と第2外形形状とを比較可能に出力する出力制御手段(例えば、制御ユニット50、ディスプレイ600)を備える。例えば、出力制御手段は、取得された第1外形形状と第2外形形状とに基づいて第1保持圧でレンズLEが保持されときのレンズLEの横ズレを検出するズレ検出手段(例えば、制御ユニット50)を備え、ズレ検出手段の検出結果を出力する。例えば、ズレ検出手段は、レンズ保持軸による保持中心に対する第1外形形状と第2外形形状とを比較し、その比較結果に基づいてレンズLEの横ズレを検出する。また、例えば、出力制御手段は、表示手段(例えば、ディスプレイ600)に第1外形形状と第2外形形状のズレ関係を比較可能に表示する手段であってもよい。
【0017】
これにより、被加工レンズが滑りやすい眼鏡レンズである場合にも、操作者がレンズのズレに気付かずに、不適切なレンズが製作されてしまうことを軽減でき、レンズLEの加工を良好に行えるようになる。また、レンズLE(例えば、レンズ保持軸によって第1保持圧で保持される前のレンズLE)に横ズレを検知するための特別な処理を施さなくても、レンズLEの加工を良好に行えるようになる。
【0018】
なお、本形態における「横ズレ」とは、レンズLEがチャック中心に対してレンズLEの径方向(レンズ保持軸の軸方向に直行する方向)にズレてしまう、いわゆる「PDズレ」を示す用語として使用する。
【0019】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズ保持軸で眼鏡レンズを保持するときの保持圧を変更する保持圧変更手段(例えば、レンズチャック機構70)を備える。例えば、第2外形形状取得手段は、第1保持圧よりも弱い第2保持圧でレンズLEがレンズ保持軸によって保持された状態でレンズLEの第2外形形状を取得する手段である。例えば、第2保持圧は、操作者がレンズLEを手で持って第1保持軸と第2保持軸の間にレンズLEを保持させる際に、操作者が指を誤って挟んでも指が損傷されない程度の圧力に設定された仮チャック圧である。また、例えば、第2保持圧は、レンズ加工前に第1保持軸と第2保持軸とでレンズLEを保持させたときに、滑りやすいレンズLEであっても横ズレが生じない圧力に設定された圧力である。また、例えば、第1外形形状取得手段は、保持圧変更手段によって第2保持圧から第1保持圧に変更された状態でレンズLEの第1外形形状を取得する手段である。これにより、レンズLEの第2外形形状も、第1外形形状と同様に、操作者が手間をかけることなく取得される。
【0020】
また、例えば、第2外形形状取得手段が取得するレンズLEの第2外形形状は、レンズ保持軸によって保持される前のレンズLEが撮像手段(例えば、撮像ユニット702)によって撮像され、撮像されたレンズ画像が画像処置されることによって得られた外形形状であって、固定治具であるカップの取り付け中心に対するレンズLEの外形形状であってもよい。
【0021】
例えば、出力制御手段は、ズレ検出手段の検出結果を操作者に報知する報知手段(例えば、ディスプレイ600)を備える。例えば、報知手段は検出結果を表示する表示手段(例えば、ディスプレイ600)である。報知手段により、操作者はレンズの滑りが発生したことを認知できる。また、例えば、表示手段は、レンズの横ズレ量を表示しても良い。これにより、操作者がレンズLEの軸打ち(カップの取り付け)をやり直す際に、レンズLEの表面に取り付けるカップの滑り止め保護シールを選択する指標となる。
【0022】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、ズレ検出手段によってレンズLEの横ズレが検出された時に、その後のレンズLEの周縁加工を停止する停止手段(例えば、制御ユニット50)を備える。これにより、レンズLEの滑りが発生したまま周縁加工をすることを防ぐことができ、良好に周縁が加工されていないレンズを製作してしまうことを軽減できる。
【0023】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズLEを加工するための玉型データと、レンズ保持軸によるレンズLEの保持中心に対する玉型データの位置関係を取得するためのデータ取得手段(例えば、データ取得ユニット11)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、出力制御手段によって出力されたズレ検出手段の検出結果に基づき、データ取得手段によって取得された位置関係データを補正する補正手段(例えば、制御ユニット50)を備える。この場合、例えば、出力制御手段が取得された前記第1外形形状と前記第2外形形状とを比較可能に出力するとは、補正手段にズレ検出手段の検出結果を出力する手段として機能することである。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、補正された位置関係データに基づいて眼鏡レンズの周辺を加工具によって加工するように制御する加工制御手段(例えば、制御ユニット50)を備える。これにより、レンズLEの横ズレが発生した場合にも、レンズLEの加工を良好に行うことができる。
【0024】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズを保持軸に保持させるためにレンズLEに固定された加工治具のカップ(例えば、カップ60)の外形形状データを記憶するための記憶手段(例えば、メモリ51)を備える。そして、例えば、眼鏡レンズ加工装置は、ズレ検出手段の検出結果と、取得された玉型データと、カップの外形形状と、に基づき、補正手段の補正結果に基づく眼鏡レンズの周縁加工を行うか否かを判定する判定手段(例えば、制御ユニット50)を備える。これにより、レンズLEのズレを補正したために加工治具と加工具が干渉することで起こる、眼鏡レンズ加工装置の故障を防ぐことが出来る。
【0025】
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズ表面が滑りにくいレンズLEの周縁を加工するための第1加工モードと、レンズ表面が滑りやすいレンズLEの周縁を加工するための第2加工モードと、を切換えるモード切換え手段(例えば、モード選択スイッチ604、制御ユニット50)を備える。例えば、第1加工モードは、撥水物質がレンズ表面にコーティングされていない通常のレンズLEの場合に適用されるモードである。例えば、第2加工モードは、撥水物質がレンズ表面にコーティングされた滑りやすいレンズLEについて、粗加工の際にレンズの回転ズレ(いわゆる「軸ズレ」)を抑制するように加工を行うソフト加工が適用されるモードである。例えば、モード切換え手段(例えば、制御ユニット50)は、ズレ検出手段によって横ズレが検出された時は自動的に第2加工モードに切換えるように構成されていてもよい。レンズLEの横ズレが発生した場合は、回転ズレも発生しやすいレンズLEであるが、これにより横ズレを抑えた加工モードが必要であるかを操作者が判断して加工モードを切換えることなく、適切に加工を行える。また、例えば、モード切換え手段(例えば、モード選択スイッチ604)は、操作者が選択することで第1加工モードと、第2加工モードとを切換えるように構成されていても良い。
【0026】
なお、本開示においては、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、上記実施形態の機能を行う制御プログラム(ソフトウェア)をネットワーク又は各種記憶媒体等を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置の制御ユニット(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。
【0027】
例えば、眼鏡レンズ加工装置の制御ユニットで実行される眼鏡レンズ加工装置の制御プログラムは、第1保持圧で保持したレンズLEの第1外形形状を取得するための第1外形形状を取得する第1外形形状取得ステップを備える。例えば、制御プログラムは、レンズLEがレンズ保持軸によって第1保持圧で保持される前に、第2外形形状を取得するための第2外形形状取得ステップを備える。例えば、制御プログラムは、取得された第1外形形状と第2外形形状とを比較可能に出力する出力制御ステップを備える。
【0028】
[実施例]
本開示の典型的な実施例の一つについて、図面を参照して説明する。
図1は実施例に係る眼鏡レンズ加工装置1における加工機構部の構成を説明する図である。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は、レンズ保持ユニット100を備える。レンズ保持ユニット100は、レンズLEを保持する保持手段の例である。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は、レンズ外形形状検知ユニット500を備える。レンズ外形形状検知ユニット500はレンズLEの外形形状情報を取得するための手段の一例である。例えば、眼鏡レンズ加工装置1はレンズ形状測定ユニット200を備える。レンズ形状測定ユニット200は、レンズLEの屈折面の形状やレンズLEの厚み等の情報を取得する手段の一例である。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は、レンズLEの周縁を加工する加工具ユニット150を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は移動手段の例である移動ユニット300を備える。移動ユニット300は、レンズLEと加工具ユニット150が持つ加工具168との相対的な位置関係を変更する(調整する)ために構成されている。また、移動ユニット300は、レンズ形状測定ユニットが備える測定子200とレンズLEとの相対的な位置関係を変更するために使用される。
【0029】
<レンズ保持ユニット>
例えば、レンズ保持ユニット100は、レンズ保持手段の一例であるレンズチャック機構70を備える。例えば、レンズ保持ユニット100は、レンズ保持軸の例であるレンズチャック軸102を備える。また、レンズ保持ユニット100は、キャリッジ101を備える。レンズチャック軸102は、レンズLEを挟持(保持)して回転させる為に構成されている。レンズチャック軸102は左チャック軸102Lと、右チャック軸102Rと、を備える。左チャック軸102Lと、右チャック軸102Rとは、同軸上に保持されている。キャリッジ101のレンズチャック軸102(及びチャック軸に保持されるレンズLE)は、レンズ回転手段の例であるモータ120によって回転される。
【0030】
なお、実施例ではレンズチャック軸102の軸方向をX方向とし、レンズチャック軸102と後述する加工具回転軸161との軸間距離を変動させる方向をY方向とする。
【0031】
図2は、実施例におけるレンズチャック機構70の概略図である。キャリッジ101の左腕101Lに左チャック軸102Lが回転可能に保持され、キャリッジ101の右腕101Rに右チャック軸102Rが回転可能に保持されている。操作者は被加工レンズLEの前面に固定治具であるカップ60を、粘着テープを介して軸打ちして固定し、このカップ60の基部を左チャック軸102Lが端部に有するカップ受け103に装着する。
【0032】
右チャック軸102Rの後方には、キャリッジ101の右腕101Rの内部で送りネジ113が回転可能に保持されている。DCモータ110はキャリッジ101の右腕101RをX方向に移動させるための駆動源である。DCモータ110の回転はプーリ111aと、プーリ111bと、ベルト112と、を介して送りネジ113に伝達される。送りネジ113のネジ部には送りナット114が配置されている。送りナット114はネジガイド117に形成されたキー溝118によって回転せず、送りネジ113の回転により軸方向に移動可能となっている。ネジガイド117は、右腕101Rと一体的に結合されている。また、送りネジ113の先端には、右チャック軸102Rを回転自在に連結するカップリング119が取り付けられている。これにより右チャック軸102Rは回転自在でかつ送りナット114によって軸方向に移動される。また、右チャック軸102Rの外周にはギヤ115が配置されている。ギヤ115は、モータ120の回転が回転伝達機構(図示を略す)を介して伝達される。ギヤ115は、右チャック軸102Rと一体的に回転可能に右腕101Rに取り付けられており、且つ、右チャック軸102RがX方向に移動可能なように取り付け機構が構成されている。例えば、右チャック軸102RにはX方向に延びるキー溝が形成され、ギヤ115には右チャック軸102Rのキー溝に対応するキーが形成されている。
【0033】
右チャック軸102Rの先端にはレンズ押さえ104が取り付けられている。右チャック軸102RはDCモータ110から提供される駆動力によって先端方向へ移動され、カップ受け103にカップ60を介して装着された被加工レンズLEが、レンズ押さえ104で押圧される。以上のように、右チャック軸102Rと左チャック軸102Lがレンズを挟持する。
【0034】
また、レンズLEの保持圧(以下、チャック圧)はDCモータ110に流れる電流を制御ユニット50(
図6参照)が検出することで調節される。レンズ押さえ104がレンズLEに接触すると、DCモータ110に負荷がかかり、DCモータ110に電流が流れる。レンズLEにレンズ押さえ104が接触した状態でさらにDCモータ110が駆動してチャック圧が増加すると、DCモータ110に流れる電流は増加する。制御ユニット50はDCモータに流れる電流の大きさを検知することで、レンズLEにかかるチャック圧の大きさを検知する。これにより、制御ユニット50はDCモータ110の駆動を制御し、チャック圧を任意の大きさに調節することが出来る。本実施例において、あらかじめ仮チャック圧(例えば、20kg/cm
2)及び本チャック圧(例えば、70kg/cm
2)が設定されており、制御ユニット50がDCモータ110の駆動を制御することで、仮チャック圧でレンズLEを保持する仮チャック状態と、本チャック圧でレンズLEを保持する本チャック状態とを変更することができるとする。
【0035】
なお、制御ユニット50がDCモータ110の電流の大きさを検知してチャック圧を変更する手段は、保持圧変更手段の一例であり、他の機構によってチャック圧を検知し、制御することで代用できる。例えば、右チャック軸102Rに圧力センサを取り付けることで、チャック圧を検出してもよい。この場合、圧力センサは制御ユニット50に接続されており、制御ユニット50は圧力センサの入力を受け、任意のチャック圧になるよう右チャック軸102Rの駆動を制御する。
【0036】
<加工具ユニット>
例えば、加工具ユニット150は、加工具回転軸161を回転するための加工具回転手段の例であるモータ160を備える。加工具回転軸161は、レンズチャック軸102と平行な位置関係で、本体ベース170に回転可能に保持されている。加工具回転軸161にレンズLEの周縁を加工するための加工具168が取り付けられている。例えば、加工具168は、ヤゲン加工具の例である仕上げ加工具164を備える。仕上げ加工具164は、レンズLEの周縁にヤゲンを形成するためのヤゲン加工用のV溝を備える。仕上げ加工具164は、平仕上げ加工用の平仕上げ面を備えていても良い。また、加工具168は粗加工具166を備えていても良い。また、加工具168は、鏡面仕上げ加工具165を含んでいても良い。また、加工具168は、高カーブレンズ用の前ヤゲン加工砥石162と後ヤゲン加工具163と、を含んでいても良い。例えば、加工具168は、砥石が使用されているが、カッターであっても良い。
【0037】
<移動ユニット>
移動ユニット300は、レンズチャック軸102に保持されたレンズLEと加工具168との相対的な位置を変える(調整する)ために構成されている。例えば、移動ユニット300は、レンズチャック軸102と加工具回転軸161との軸間距離を変動させる第1移動ユニット310と、レンズチャック軸102の軸方向にレンズLEを移動させる第2移動ユニット330と、を備える。
【0038】
第1移動ユニット310は、キャリッジ101(レンズチャック軸102)をX方向に移動するためのモータ315を備える。キャリッジ101はシャフト313、314に沿ってX方向に移動可能に移動式301に保持されている。モータ315の回転により移動支基301がX方向に移動される。これにより、移動支基301に搭載されたキャリッジ101及びレンズチャック軸102(レンズLE)がX方向に移動される。モータ315にはキャリッジ101のX方向の位置を検知する検知器316が取り付けられている。なお、第1移動ユニット310の構成は、加工具回転軸161をX方向に移動させることでもよい。
【0039】
第2移動ユニット330は、キャリッジ101(レンズチャック軸102)をY方向に移動するためのモータ335を備える。キャリッジ101はシャフト333、334に沿ってY方向に移動可能に移動支基301に保持されている。モータ335の回転はY方向に延びるボールねじ337に伝達され、ボールねじ337の回転によりキャリッジ101(レンズチャック軸102とレンズLE)はY方向に移動される。モータ335には、レンズチャック軸102のY方向の位置を検知する検知器336が取り付けられている。なお、実施例では第2移動ユニット330はレンズチャック軸102をY方向に移動する機構であるが、加工具回転軸161をY方向に移動させる構成でもよい。すなわち、第2移動ユニット330はレンズチャック軸102と加工具回転軸161との軸間の距離を相対的に変化させる構成であれば良い。加工具ユニット150及び移動ユニット300は、レンズの粗加工及び仕上げ加工のために使用される。
【0040】
<レンズ形状測定ユニット>
レンズ形状測定ユニット200は、
図1において、キャリッジ101の上方に配置されている。レンズ形状測定ユニット200は、レンズLEの前屈折面(レンズ前面)の形状と、後屈折面(レンズ後面)の形状と、を取得するために使用される。例えば、レンズ形状測定ユニット200は、レンズLEの前屈折面の形状を測定するための測定ユニット200Fと、レンズLEの後屈折面の形状を測定するための測定ユニット200Rと、を備える。
【0041】
図3は、レンズ前面の位置(玉型上のレンズ前面側のコバ位置)を測定する測定ユニット200Fの概略構成図である。測定ユニット200Fは、レンズチャック軸102(102L、102R)の軸方向(X方向)における測定子206Fの位置を検知する検知手段の例である検知器213Fを備える。測定子206Fはアーム204Fの先端に取り付けられている。アーム204Fは、X方向に移動可能に、取付支基201Fに保持されている。アーム204Fは、ラック211F,ピニオン212F、ギヤ214Fなどを介してモータ216Fに接続されている。モータ216の駆動によってアーム204FがX方向に移動され、測定子206FがレンズLEの前屈折面に押し当てられる。ピニオン212Fは、検知器213F(例えば、エンコーダ)の回転軸に取り付けられている。X方向に移動される測定子206Fの位置が検知器213によって検知される。
【0042】
例えば、レンズLEの後屈折面の形状を測定するための測定ユニット200Rの構成は、測定ユニット200Fと左右対称であるので、その説明は省略する。測定ユニット200Rは、後屈折面に接触される測定子206Rと、測定子206RをX方向に移動させるモータ216Rと、測定子206RのX方向における位置を検知する検知器213Rと、を備える。測定されたレンズ形状データは制御ユニット50に取得され、またメモリ51(
図6参照)に保存される。
【0043】
<レンズ外形検知ユニット>
レンズ外形検知ユニット500は、
図1において、レンズ形状測定ユニット200Rの後方に配置されている。レンズ外形検知ユニット500は外形形状取得手段の例であり、レンズチャック軸102で保持されたレンズLEの外形を測定する。測定されたレンズLEの外形データは制御ユニット50に取得され、また、メモリ51に保存される。
【0044】
図4は、レンズ外形検知ユニット500の概略構成図である。レンズ外形検知ユニット500は、レンズLEの外縁に接触される円柱状の測定子520を備える。測定子520はアーム501を介して回転軸502と接続されている。測定子520の中心軸520a及び回転軸502の中心軸502aは、チャック軸102L、102R(X方向)に平行な位置関係に配置されている。回転軸502は、中心軸502aを中心に回転可能に保持部503に保持されている。保持部503は
図1のブロック2に固定されている。また、回転軸502に扇状のギヤ505が固定され、ギヤ505はモータ510に回転される。モータ510の回転軸には、ギヤ505とかみ合うピニオンギヤ512が取り付けられている。また、モータ510の回転軸には検知器としてのエンコーダ511が取り付けられている。
【0045】
レンズ外形検知ユニット500は、眼鏡レンズLEの周縁加工に際して、未加工のレンズLEの外形が玉型に対して足りているか否かを検知するために使用される。また、本実施例においては、レンズ外形検知ユニット500は、レンズの横ズレを検知する手段としても使用される。本実施例において、「横ズレ」とは、レンズのチャック位置がチャック軸102R、102Lの軸方向に直行する方向(レンズLEの径方向)に偏位する位置ズレのことを指すものとして使用する。
【0046】
図5はレンズ外形検知ユニットによるレンズ外形の測定の説明図である。
図5のように、チャック軸102L、102Rが所定の測定位置(回転軸502を中心にして回転される測定子520の中心軸520aの移動軌跡530上)に移動される。モータ510によってアーム501が加工装置1のX軸及びY軸に直行する方向(Z軸方向)に回転されることにより、退避位置に置かれていた測定子520がレンズLE側に移動され、測定子520がレンズLEの周縁に接触される。また、モータ510によって測定子520に所定の測定圧がかけられる。そして、チャック軸102L、102Rが一回転されることによりレンズLEも1回転される。レンズLEは所定の微小角度毎に回転され、この時の測定子520の移動がエンコーダ511によって検知される。これにより、レンズチャック軸102のチャック中心に対するレンズLEの外形が計測される。
【0047】
なお、外形検知ユニット500はレンズの外形を検知する検知手段の一例であり、他の検知機構でも代用できる。例えば、レンズチャック軸102をY方向に移動させる第2移動ユニット330と、加工具168、等を利用してレンズLEの外形形状を測定しても良い。制御ユニット50は、第1移動ユニット310及び第2移動ユニット330の駆動を制御し、レンズLEを粗加工166上に位置させた後、レンズLEの周縁が研削されない弱い圧力で粗加工具166に当接させるようにレンズLEをY方向に移動させる。次いで、制御ユニット50は、モータ120を駆動させ、レンズLEを粗加工具166に弱い圧力で当接させた状態のまま、レンズLEを1回転させる。このとき、検知器336から出力される検知信号に基づき、レンズLE(レンズチャック軸102)の回転角ごとにチャック中心に対してレンズLEが粗加工具166に当接した距離を求める。これにより、レンズLEの外形形状は取得される。
【0048】
<電気系概略構成>
図6は、実施例の眼鏡レンズ加工機1における電気系の概略構成ブロック図である。例えば、制御ユニット50に、
図1~
図4に示した各ユニットの電気系構成要素(モータ等)が接続されている。例えば、制御ユニット50は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等により構成される。制御ユニット50は装置全体の制御を司るために構成されている。また、制御ユニット50は、レンズLEの周縁を加工するための加工データ等を求める演算ユニットの例として構成されている。また、制御ユニット50はレンズLEの横ズレの補正等の演算を行う演算ユニットを兼ねる。
【0049】
例えば、眼鏡レンズ加工装置1はデータ取得ユニット11を備える。例えば、データ取得ユニット11はディスプレイ600を備える。例えば、データ取得ユニット11はデータを入力する入力ユニット602を備える。例えば、ディスプレイ600はタッチパネルの機能を備え、データ入力ユニット602を含むように構成されていてもよい。入力ユニット602はキーボード等の入力デバイスが含まれていてもよい。また、例えば、ディスプレイ600はレンズの横ズレの検知結果を出力する出力手段を兼ねる。
【0050】
データ取得ユニット11によって取得されたデータは、メモリ51に保存される。また、メモリ51には制御ユニット50によって取得されたデータ、加工制御プログラム等も保存される。また、メモリ51には後述するカップ60の外形形状データCuRが記憶されている。
【0051】
データ取得ユニット11は、周知の眼鏡枠形状測定装置20に接続されていてもよい。例えば、眼鏡枠形状測定装置20によって眼鏡フレームの左右リムの玉型及び眼鏡フレームのフレームカーブ等が測定される。眼鏡枠形状測定装置20で得らえた玉型データは、データ取得ユニット11によって取得される。また、玉型データは、メモリ51に予め記憶されていたものが呼び出されることで、データ取得ユニット11によって取得されてもよい。
【0052】
また、例えば、制御ユニット50には加工装置1のスイッチパネル10が接続されている。スイッチパネル10には、レンズチャック軸102によるレンズLEの保持と解放を行うためのチャックスイッチ10aが配置されている。また、スイッチパネル10には、レンズLEがレンズチャック軸102に保持された後、加工装置1の動作を開始させるためのスイッチ10b、加工装置1の動作を停止するためのスイッチ10cが配置されている。
【0053】
また、ディスプレイ600には、レンズ表面が滑りにくいレンズLEの周縁を粗加工する時に使用する通常加工モード(第1加工モード)と、レンズ表面が滑りやすいレンズLEの周縁を粗加工する時に適用するソフト加工モード(第2加工モード)と、を切換えるモード切換え手段の例であるモード選択スイッチ604が表示される。
【0054】
<装置の動作>
以上のような構成を備える眼鏡レンズ加工装置1の動作を説明する(
図7の装置動作のフローチャートを参照)。
【0055】
操作者は、レンズLE加工前の準備として、周知のブロッキング装置(例えば、特開2007-275998号公報参照)を使用して、レンズLEの表面に粘着テープを介してカップ60を取り付けておく。なお、レンズLEへのカップ60の取り付けに際しては、例えば、レンズLEの光心(光学中心)にカップ60を取り付ける方法と、玉型の枠心(玉型の幾何中心又はボクシング中心)を基準にカップ60を取り付ける方法と、がある。以下の説明では、玉型の枠心を基準にカップ60が取り付けられた例を説明する。
【0056】
初めに、情報取得処理工程(S1)としてデータ取得ユニット11によってレンズLEを加工するための目標形状となる玉型データTD1(T1rn、T1θn)(n=1,2,3,・・・,N)が取得される。例えば、眼鏡枠形状測定装置30によって眼鏡フレームのリム又はデモレンズの形状が測定され、玉型データがデータ取得ユニット11に入力される。例えば、玉型TD1のT1θnは玉型TD1の幾何中心(又はボクシング中心、以下、同じ)を基準とした玉型の動径角データである。本実施例において、玉型の幾何中心にブロッキングを行っているため、玉型TD1の幾何中心はレンズチャック軸102によるレンズLEの保持中心となる。T1rnは玉型TD1の幾何中心を基準とする動径長データである。
【0057】
玉型データが取得されたら、操作者はレンズLEの周縁を加工するための加工条件として、玉型とレンズLEの光学中心との位置関係を定めるためのレイアウトデータを入力(設定)する(S2)。
【0058】
図8は、レイアウトデータを入力するためにディスプレイ600に表示された画面610の例である。画面610には右レンズの右玉型TD1の図形TGRと、左レンズの左玉型TGLが表示されている。
図8において、TCRは右玉型のTD1の幾何中心を示し、OCLは左レンズの光学中心を示す。OCRは右レンズの光学中心を示し、OCLは左レンズの光学中心を示す。レイアウトデータとして、左右の玉型の幾何中心間距離FPDと、眼鏡装用者の瞳孔間距離PDと、幾何中心(TCR、TCL)に対するレンズの光学中心の高さデータCHと、が入力される。レイアウトデータの入力により、玉型とレンズLEの光学中心との位置関係データがデータ取得ユニット11によって取得される。
【0059】
その他の加工条件として、操作者は、レンズLEの材質(プラスチック、ポリカーボネイト等)、眼鏡フレームのタイプ(メタル、セル、リムレス、等)、レンズLEの加工タイプ(ヤゲン加工、平加工、溝堀加工等)、鏡面加工の有無、面取り加工の有無、等をディスプレイ600の所定の画面で入力する。
【0060】
必要なデータ入力ができたら、操作者はカップ60の基部をチャック軸102Lの端部にあるカップ受け103に装着する。その後、操作者がスイッチパネルのスイッチ10aを押すと、制御ユニット50によってDCモータ110が駆動され、レンズLEがレンズチャック軸102に保持される。すなわち、チャック軸102R端部のレンズ押さえ104と、チャック軸102Lの端部のカップ受け103とでレンズLEを保持して仮チャック圧をかけることで、仮チャックが行われる(S3)。
【0061】
レンズLEの仮チャックが完了すると、制御ユニット50によってレンズ外形検知ユニット500が駆動され、仮チャック状態でのレンズLEの外形形状が測定される(S4)。これにより、仮チャック時のレンズLEのチャック中心に対するレンズLEの外形形状KLEのデータ(KRn、Kθn)(n=1,2,3,・・・,N)が制御ユニット50によって取得される。Kθnは動径角データであり、KRnは動径長データである。
【0062】
次いで、本チャックが行われる(S5)。制御部50はDCモータ110の駆動を制御することで、レンズLEを保持するためにレンズチャック軸102がかけているレンズチャック圧を、あらかじめ設定された本チャック圧まで増加させる。この時、レンズ表面が滑りやすいレンズLEの場合、「横ズレ」が発生する可能性がある。
【0063】
ここで、横ズレについて説明する。レンズ表面が滑りやすいレンズの光学中心以外にチャック中心をとっている場合、チャック圧が増加する時に「横ズレ」が発生する。例えば、
図9に示すように、レンズLEが凹レンズであり、チャック中心が枠心チャックの場合、右チャック軸102RがレンズLE側に移動され、右チャック軸102Rの先端に取り付けたレンズ押さえ104がレンズLEの後面に接触される。この時、レンズ押さえ104にレンズ後面のカーブに均等に当たらずレンズ後面のカーブに対して偏った力がレンズLEに加えられることになる。レンズLEの表面が滑りやすく、また、チャック圧が強い場合、このチャック圧を受けたレンズLEはチャック軸方向に対して直交する方向に滑ることになる。本開示において、「横ズレ」とはレンズチャック軸102のチャック中心に対して、レンズLEがレンズチャック軸102の軸方向(レンズLEの径方向)に偏位してしまう、いわゆる「PDズレ」のことを言う。
【0064】
レンズチャック圧が本チャック圧まで増加すると、再度、レンズLEの外形形状測定が行われる(S6)。例えば、制御ユニット50が外形検知ユニット500を前述のように動作させることで、本チャック時のレンズLEのチャック中心に対するレンズLEの外形形状HLEデータ(HRn、Hθn)(n=1,2,3,・・・,N)が制御ユニット50によって取得される。Hθnは動径角データであり、HRnは動径長データである。
【0065】
次に、制御ユニット50は、仮チャック状態で取得したレンズLEの外形形状KLEと、本チャック状態で取得したレンズLEの外形形状HLEのデータと、の比較に基づいて本チャックでレンズLEがチャックされた時のレンズLEの横ズレを検出する(S7)。
【0066】
図10は、レンズLEの横ズレを検出する方法の例を説明する図である。
図10において、実線で描かれた円形状のKLEはチャック中心CCを基準にした仮チャック時におけるレンズLEの外形形状データとして示されており、二点鎖線で描かれたHLEはチャック中心CCを基準にした本チャック時におけるレンズLEの外形形状データとして示されている。ここで、レンズ外形検知ユニット500によって得られたレンズLEの外形形状の極座標データが、チャック中心CCを原点としたxy座標データに変換されて横ズレが検出されるものとする。なお、
図10におけるx軸及びy軸は説明の便宜上で用いる座標軸であり、
図1で示した加工装置1のX軸及びY軸とは異なる。
【0067】
例えば、制御ユニット50は仮チャック時のレンズ外形形状KLEを参照し、x軸方向の座標の最大値KXmaxとy軸方向の座標の最大値KYmaxを求める。次いで、制御ユニット50は、本チャック時のレンズ外形形状HLEを参照し、x軸方向の座標の最大値HXmaxとy軸方向の座標の最大値HYmaxを求める。次いで、制御ユニット50は、本チャック時のx軸方向の座標の最大値HXmaxから仮チャック時のx軸方向の座標の最大値KXmaxを減じることで、x軸方向のズレ量Δxを求める。同様に、制御ユニット50は、本チャック時のy軸方向の座標の最大値HYmaxから仮チャック時のy軸方向の座標の最大値KYmaxを減じることで、y軸方向のズレ量Δyを求めることができる。よって、レンズLEが、仮チャック状態から本チャック状態に移行する際にズレた方向及び距離(以下、横ズレの成分とする)は、(Δx,Δy)で表される。このようにして、本チャック時の加圧によるレンズの横ズレの方向と、その距離を求めることができる。
【0068】
なお、横ズレの方向と距離の導出には、x軸方向及びy軸方向の最大値ではなく、x軸方向及びy軸方向の最小値を用いても良い。また、レンズの外形情報から適当な基準点を求め、仮チャック時と本チャック時でその基準点の位置を比較することで、レンズの横ズレの方向と距離を導出することも可能である。例えば、レンズの幾何中心の座標(x,y)は、(x軸方向の最大値を取る点とx軸方向の最小値を取る点の中点,y軸方向の最大値を取る点とy軸方向の最小値を取る点の中点)で表される。よって、外形形状情報からレンズの幾何中心の座標は求められるので、仮チャック時における外形形状KLEの幾何中心KKCの座標と、本チャック時における外形形状HLEの幾何中心HKCの座標と、を比較することで、レンズの横ズレの成分(Δx,Δy)を求めることができる。
【0069】
レンズの横ズレの距離が求められると、制御ユニット50は予め設定された許容範囲と比較する(S8)。例えば、許容範囲は眼鏡処方におけるPDズレの許容範囲(例えば、0.5mm)とされる。横ズレの距離が許容範囲以内である場合、横ズレの対応は必要ないと判定され、通常の加工動作の工程が行われる。(S9)。一方、横ズレの距離が許容範囲を超えていた場合、その後のレンズLEの周縁加工が停止される(S101)。
【0070】
まず、横ズレの距離が許容範囲内である場合について説明する。横ズレの距離が許容範囲内である場合、加工装置1はレンズ形状測定(S9)を行う。前述のようにレンズ前面測定ユニット200F及びレンズ後面測定ユニット200Rが駆動され、情報取得処理(S1)で入力された玉型の形状に対応した位置におけるレンズLEの前屈折面及び後屈折面の位置が計測される。そして、例えば、加工条件としてヤゲン加工が設定されている場合、レンズLEの前屈折面及び後屈折面の位置情報からレンズLEのコバ厚が求められ、コバ厚に対するヤゲン位置が所定のヤゲン設定方法に基づいて設定される(例えば、コバ厚を所定の比率で分割する位置にヤゲン頂点を配置する等)。なお、ヤゲン設定方法は本開示と関連が薄く、周知の技術を使用することが出来るため、説明を省略する(例えば、特開2010-179397号公報参照)。計測されたレンズ形状がメモリ51に保存されると、レンズ加工ステップ(S10)に移行する。
【0071】
レンズ加工ステップ(S10)では、まず、粗加工が行われる。モータ120によってレンズチャック軸102が回転されることによりレンズLEも回転する。玉型データに基づいて移動ユニット300によりY軸方向の動作が制御され、レンズLEと加工具168の粗加工具166とが接近し、レンズLEが粗加工具166に押し当てられることによって、レンズの周縁が粗加工される。次いで、例えば、ヤゲン加工が設定されている場合、仕上げ加工のヤゲン設定情報に基づいて移動ユニット300の駆動が制御され、仕上げ加工具164によりレンズLEの周縁がヤゲン加工される。なお、粗加工及び仕上げ加工の動作は、本開示とは関連が薄く、周知の技術を使用することができるため、詳細な説明を省略する。
【0072】
次いで、ステップS8でレンズの横ズレの距離が許容範囲を超えていた場合について説明する。レンズの横ズレの距離が許容範囲を超えていた場合、その後のレンズの周縁加工が停止される(S101)。その後、操作者にレンズLEに横ズレが発生している旨が報知される(S102)。例えば、報知手段の一例として、ディスプレイ600にレンズが許容範囲を超えてズレていることが表示される。レンズLEの横ズレが操作者に報知されることで、操作者はレンズに滑りが発生したことを認知でき、滑りやすいレンズへの対応をとることができる。
【0073】
レンズLEの横ズレが発生していた場合、操作者はレンズチャック軸102からレンズLEを取り外し、滑り止めの保護シールをレンズ表面に貼り付ける等の滑りやすいレンズへの対応を行った上で、再度カップ60を取り付ける。このとき、ディスプレイ600にはレンズLEの横ズレの成分(ズレ量)が表示されても良い。レンズのズレ量が操作者に報知されることにより、操作者がレンズLEにカップ60のブロッキングをやり直す場合に、カップ60が滑らないように通常の滑り止めの保護シールを貼るか、通常の保護シールより滑りにくい強力な保護シールを貼るか、選択するための指標となる。操作者が適切な滑り止めのシールを貼った上で再度ブロッキングを行い、レンズ加工を実行することで、横ズレをすることなく加工されたレンズが得られる。よって、不良レンズを加工してしまうことを防ぐことが出来る。
【0074】
図7のフローでは、ステップS8でレンズのズレが許容範囲を超えていた場合、その後のレンズ加工は停止されるものとしたが、ステップS7で検出されたズレ情報に基づいてレンズのズレを補正した加工をしても良い。この場合の動作を、
図11の動作フローチャート図に基づいて説明する。
【0075】
ステップS8でレンズLEの横ズレの距離が許容範囲を超えていた場合、制御ユニット50は、メモリ51に記憶されているカップ60の外形形状データCuRと、情報取得処理工程(S1)で得られた玉型データTD1とを用いて、補正したデータに基づいた加工が可能か判定を行う(S201)。これにより、補正後加工を行う際にカップ60と加工具168が干渉し、故障の原因となることを回避することができる。
【0076】
以下に、補正したデータに基づいた加工が可能か判定する方法の例を説明する。
図12は加工可能か判定する方法の例を示した図である。まず、制御ユニット50はレンズの横ズレを検出した工程(S7)と同様に、チャック中心CCを原点としたxy軸を取る。なお、玉型データTD1は極座標データからxy座標データに変換されるものとする。
【0077】
制御ユニット50は、原点からレンズの横ズレの成分(Δx,Δy)だけ移動した点にカップ60の外形形状データCuRの中心CuCを取り、カップ60の外形形状データCuRのxy座標位置を求める。求められたカップ60の外形形状データCuR(例えば、1,000ポイント)のxy座標位置が玉型データTD1(例えば、1,000ポイント)のxy座標位置の領域外にあるか否か判定する。すなわち、カップ60の外形形状データCuRのxy座標位置が玉型データTD1のxy座標位置の領域より1点でも外側に外れていれば、加工不可と判定される。
【0078】
カップ60の外形形状データCuRが、玉型データTD1からの領域外に有る場合、レンズLEを加工する際、加工具168とカップ60が干渉するため、加工を行うことができない。加工が不可能と判定された場合、制御ユニット50は加工装置1の動作を停止させる(S202)。その後、操作者に加工が不可能と判定された旨が報知される(S203)。例えば、報知手段の一例として、ディスプレイ600に加工が不可能と判断された旨が表示される。この報知により、操作者はレンズLEに滑りが発生したことを認知でき、滑りやすいレンズへの対応をとることができる。
【0079】
次いで、加工が可能と判定された場合を説明する。カップ60の外形形状データCuRが玉型データTD1の領域内にある場合は、レンズLEの加工が可能と判定される。制御ユニット50は、ズレ検出(S7)で求めた、本チャック時のレンズ外形形状HLEと仮チャック時のレンズ外形形状KLEとのズレ成分(Δx,Δy)に基づき、ステップS1で取得されたチャック中心に対する玉型データTD1の位置関係データを補正する(S204)。
【0080】
図13はレンズLEの横ズレ補正の例を説明する図である。例えば、制御ユニット50は、仮チャック時のチャック中心KCCに対する玉型データTD1(T1rn、T1θn)(n=1,2,3,・・・,N)を、ズレ検出の成分(Δx,Δy)に基づき、本チャック時のチャック中心HCCを基準にした位置関係データに補正する。なお、このときのデータTD1は、補正前のチャック中心に対する玉型データの位置関係データとなる。例えば、制御ユニット50は、極座標の玉型データTD1を一旦直交座標のデータに変換し、チャック中心KCCがズレ検出の成分(Δx,Δy)だけ偏位したものとし、新たなチャック中心HCCを基準にした補正後の位置関係データとなる玉型データTD2(T2rn、T2θn)(n=1,2,3,・・・,N)を再計算して得る。
【0081】
次いで、補正後の玉型データ(補正された位置関係データ)TD2に基づき、ステップS9と同様にレンズ形状測定が行われ(S205)、続いて、ステップS10と同様に粗加工及び仕上げ加工が行われる(S206)。これにより、発生した横ズレを考慮した眼鏡レンズの周縁加工を自動で行うことが可能となり、操作者がレンズの横ズレに気付かなくても、レンズLEの加工を良好に行える。
【0082】
なお、
図11のステップS8において、レンズLEの横ズレが許容範囲を超えていた場合は、レンズLEが滑りやすいレンズであるため、回転ズレ(いわゆる「軸ズレ」)も発生する可能性がある。回転ズレとは、レンズ表面が滑りやすいレンズに対して粗加工を行う際、カップとレンズ表面の滑りによって起こる、レンズチャック軸102の回転角とレンズの回転角とのズレである。このため、レンズLEの横ズレが許容範囲を超えていた場合には、
図11のフローと同様に、一旦、装置の動作を停止した後、レンズLEが滑りやすいレンズであることをディスプレイ600等の表示で操作者に報知すると共に、回転ズレの抑制を行わずに加工を行う通常加工モードから、レンズの回転ズレ(軸ズレ)を抑制するための加工モードの例であるソフト加工モードに切換えるように、操作者に促してもよい。そして、操作者はモード選択スイッチ604によってソフト加工モードに切換える。
【0083】
ソフト加工モードに切換えられた後、スイッチ10bによって再び加工スタート信号が入力されると、ズレ補正の工程(S204)、レンズ形状測定の工程(S205)が行われた後、レンズ加工の工程(S206)における粗加工工程において、ソフト加工が行われる。
【0084】
例えば、回転ズレを抑制する粗加工のソフト加工は、特開2010-179397号公報に記載された技術が適用できる。制御ユニット50は、測定又は入力されたレンズ前面及びレンズ後面のカーブ形状に基づいてレンズの回転中心(チャック中心)からの加工距離に応じて変化するレンズの回転角毎のレンズ厚を求め、求めたレンズ厚とレンズ回転角毎のレンズ回転中心からの加工距離とに基づいてレンズチャック軸102に掛かるトルクが略一定となる切り込み量をレンズ回転角毎に求める。そして、制御ユニット50は、求めた切り込み量に従って移動ユニット300の駆動を制御し、粗加工具166によってレンズLEの周縁を粗加工する。これにより、回転ズレが抑えられた粗加工が行われる。なお、ソフト加工は上記に限られず、周知の種々の方法が適用できる。
【0085】
また、上記の説明において、レンズの回転ズレを抑制するためのソフト加工モードへの切換えは、操作者がモード選択スイッチ604によって切換えるのではなく、制御ユニット50によって自動的に切換えられてもよい。
【0086】
図14は、この場合のフローチャート図である。ステップS8において、レンズLEの横ズレが許容範囲を超えていた場合は、
図11と同様に、加工が可能か判定を行う工程(S301)が行われ、加工が不可能である場合、加工が停止され(S302)、操作者に加工が不可能である旨の報知がされる(S303)。加工が可能である場合、ズレ補正の工程(S304)と、及びレンズ形状測定の工程(S305)が行われる。その後、レンズ加工の工程では、制御ユニット50によってソフト加工モードに自動的に切換えられ、前述したソフト加工方法によって粗加工が実行される(S304)。
【0087】
以上により、横ズレの補正に加えて回転ズレ防止のソフト加工プログラムが実行されることで、操作者がレンズの横ズレに気付かなくとも、横ズレが補正され、さらに回転ズレが防止されてレンズが加工されるため、不良レンズを加工してしまうことを防ぐことができる。これによりレンズLEの加工を良好に行える。
【0088】
また、操作者がレンズLEがずれているか判定してもよい。
図15は、操作者がレンズのズレを判定する場合の装置動作のフローチャートである。例えば、先のフローチャートと同じく本チャック時のレンズLEの外形形状の工程(S6)が実行された後に、制御ユニット50は、装置の動作を一旦停止させ、ステップS4におけるレンズLEの外形形状の取得結果と、ステップS6でのレンズLEの外形形状の取得結果と、をディスプレイ600に比較可能に表示(出力)する(S401)。
【0089】
図16は、ディスプレイ600に表示される画面例である。画面610には仮チャック状態で取得されたレンズLEの外形形状KLEの図形GKLEと、本チャック状態で取得したレンズLEの外形形状HLEの図形GHLEと、が重なるように表示されている。例えば、外形形状KLEが取得されたときのチャック中心CCと、外形形状HLEのチャック中心CCと、が一致するように、図形GKLE及び図形GHLEが重畳して表示される。図形GKLE及び図形GHLEは、視覚的に区別が容易になるように、異なる色(例えば、赤と青)で表示される。また、例えば、チャック中心CCを基準にした外形形状KLEと外形形状HLEとのズレ量を視覚的に分かりやすくするために、目盛り630が表示されていてもよい。
図16の例では、目盛り630はチャック中心CCを原点にしてx軸方向とy軸方向に表示されている。この目盛り630は、図示を略す入力デバイス(タッチペン等)で、任意の方向、任意の位置に移動可能にされている。これにより、操作者は図形GKLEと図形GHLEのズレの程度を確認することができる。また、さらに、画面610に表示される図形GKLE及び図形GHLEは、目盛り630と共に拡大表示が可能にされている。これにより、操作者は微小なズレも確認可能になる。
【0090】
ステップS4における外形形状KLEと外形形状HLEの比較可能な表示は、上記に限られない。例えば、外形形状KLEと外形形状HLEは同じ位置の図形とし、それぞれのチャック中心CCの位置を示す図形が表示されてもよい。操作者は、各チャック中心の図形位置を比較することで、外形形状KLEと外形形状HLEのズレを確認することができる。
【0091】
次いで、操作者はディスプレイ600の表示を確認し、加工を続行するか、加工を停止するかを選択し、入力手段を用いて制御ユニット50に入力する(S402)。例えば、入力手段は、スイッチパネル10に備えられた加工装置1の動作を開始させるためのスイッチ10bと、加工装置1の動作を停止するためのスイッチ10cと、である。加工を停止する信号が入力された場合、制御ユニット50は加工装置1の動作を停止し、加工を終了させる(S403)。
【0092】
ステップS402で加工を続行する信号が入力された場合、前述のプログラムと同様にして、制御ユニット50により本チャック時のレンズ外形形状HLEと仮チャック時のレンズ外形形状KLEとのズレ成分(Δx,Δy)が計算され、レンズLEのズレが検出される(S404)。
【0093】
次いで、制御ユニット50は前述のプログラムと同様にして、カップの外形形状が玉型の領域外に有るかを計算することで、補正したデータに基づいて加工することが可能か判定する(S405)。加工が不可能と判定された場合、制御ユニット50は装置の動作を停止する(S406)。その後、操作者にレンズLEが補正可能な領域を超えて横ズレが発生している旨が報知される(S407)。報知手段は、例えばディスプレイ600である。
【0094】
加工が可能と判定された場合、前述のプログラムと同様にして、補正後の玉型データ(補正された位置関係データ)TD2が計算される(S408)。計算された補正後の玉型データTD2に基づき、レンズ形状測定が行われ(S409)、粗加工及び仕上げ加工が行われる(S410)。なお、レンズの加工を行う際、加工モードはソフト加工モードに切換えられても良い。
【0095】
なお、以上の実施例では、本チャック圧(第1保持圧)でレンズLEが保持される前のレンズLEの外形形状は、レンズLEの仮チャック時にレンズ外形検知ユニット500の測定によって取得されるものとしたが、これに限られない。例えば、カップ60をレンズLEの表面に取り付けるための周知のブロッキング装置(例えば、特開2008-299140号公報を参照)を使用し、眼鏡レンズ加工装置1のデータ取得ユニット11がレンズチャック軸102に保持される前のレンズLEの外形形状を取得することでもよい。この例を説明する。
【0096】
図17はブロッキング装置(カップ取り付け装置)700の機能ブロック図である。例えば、ブロッキング装置700は、カップ60をレンズLEの表面に取り付けるためのブロッキングユニット701と、レンズLEを撮像する撮像ユニット702と、レンズLEの光学特性(光学中心、乱視視軸)を検出する光学特性検出ユニット703と、レイアウトデータ等を取得するデータ入力・取得ユニット704と、各構成要素に接続された制御部750と、を備える。光学特性検出ユニット703によってレンズLEの光学中心が検出され、データ入力・取得ユニット704によって玉型データ及びレイアウトデータ(眼鏡フレームの左右リムの幾何中心間距離FPD、瞳孔間距離PD、光学中心の高さデータCH)が入力される。これにより、例えば、枠心チャックの場合、レンズLEの光学中心に対するカップ60の取り付け中心(チャック中心)の位置関係が決定される。また、撮像ユニット702によってレンズLEが撮像され、撮像されたレンズ画像が制御部750によって画像処理されることにより、カップ60の取り付け中心(チャック中心)に対するレンズLEの外形形状(
図10におけるレンズ外形形状KLE)が検知される。そして、制御部750によって検知されたレンズLEの外形形状データは、通信手段等を介してデータ取得ユニット11に入力されることで、データ取得ユニット11によって取得される。
【0097】
以上、本開示の典型的な実施例を説明したが、本開示はここに示した実施例に限られず、本開示の技術思想を同一にする範囲において種々の変容が可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 眼鏡レンズ加工装置
11 データ取得ユニット
50 制御ユニット
51 メモリ
60 カップ
70 レンズチャック機構
100 レンズ保持ユニット
102 レンズチャック軸
300 移動ユニット
500 レンズ外形検知ユニット
520 測定子
600 ディスプレイ
700 ブロッキング装置