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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20240814BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240814BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240814BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20240814BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240814BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C08L65/00
C08L79/08
C08K3/013
C08L71/00 Z
C08J5/18 CEZ
H05K1/03 610N
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020115504
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013142
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 恒太
(72)【発明者】
【氏名】川合 賢司
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-083735(JP,A)
【文献】特開2009-161725(JP,A)
【文献】特開2005-054119(JP,A)
【文献】特開2018-090728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08J 5/18
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ベンゾシクロブテン樹脂、
(B)マレイミド化合物、
(C)無機充填材
を含み、
(B)成分が、
(B1)下記式(B1-1)で表される化合物、及び
(B2)マレイミドの窒素原子と直接結合している芳香族環を有するマレイミド化合物であって、ビフェニル骨格を有し分子量が500以上であるマレイミド化合物、
から選択される1種以上である、樹脂組成物。
【化1】
(式(B1-1)中、
は、置換基を有していてもよい炭素原子数5以上の脂肪族基を表し、
は、単結合又は2価の連結基を表し、
nB1は0~20の整数を表す。A が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、L が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【請求項2】
(A)ベンゾシクロブテン樹脂、
(B)マレイミド化合物、
(C)無機充填材
(D)フェニレンエーテル骨格を含む硬化性樹脂
を含み、
(B)成分が、
(B1)マレイミドの窒素原子と直接結合している炭素原子数5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び
(B2)マレイミドの窒素原子と直接結合している芳香族環を有するマレイミド化合物であって、分子量が500以上であるマレイミド化合物、
から選択される1種以上である、樹脂組成物。
【請求項3】
(B1)成分が、下記式(B1-1)で表される化合物を含む、請求項に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式(B1-1)中、
は、置換基を有していてもよい炭素原子数5以上の脂肪族基を表し、
は、単結合又は2価の連結基を表し、
nB1は0~20の整数を表す。Aが複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、Lが複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【請求項4】
(B2)成分が、下記式(B2-1)で表される化合物を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(B2-1)中、
環Arは、置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
は、単結合又は2価の連結基を表し、
nB2は、1~100の整数を表す。複数ある環Arは同一でも相異なってもよく、Lが複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【請求項5】
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、30質量%以上かつ80質量%以下である、請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上かつ50質量%以下である、請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(A)成分が2つ以上のベンゾシクロブテン基を有し、数平均分子量(Mn)が2000以下である、請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(D)フェニレンエーテル骨格を含む硬化性樹脂をさらに含む、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(D)成分が、下記式(D-1)で表される化合物を含む、請求項2又は8に記載の樹脂組成物。
【化4】
(式(D-1)中、
Xは、ラジカル重合性不飽和基を有する1価の基を表し、
は、2価の連結基を表し、
D11及びRD12は、それぞれ独立に、置換基を表し、
nD11及びnD12は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し、
nD1及びnD2は、少なくとも一方が1以上の整数であることを条件として、それぞれ独立に、0~300の整数を表す。複数あるXは同一でも相異なってもよく、RD11が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、RD12が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【請求項10】
(D)成分のMnが2500以下である、請求項2、8及び9の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
(A)成分がシロキサン骨格を有する、請求項1~10の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上かつ30質量%以下である、請求項1~11の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上かつ40質量%以下である、請求項2、8~10の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
(A)成分が、下記式(A-2)で表される化合物を含む、請求項1~13の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【化5】
(式(A-2)中、
は、不飽和結合を有する2価の脂肪族基を表し、
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、又はアリール基を表し、
A1は、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、
A2は、アルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、
nA1は、0~2の整数を表し、
nA2は、0~3の整数を表し、
nA4は、1~10の整数を表す。R、R、RA1及びRA2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。複数あるRは同一でも相異なってもよく、複数あるRは同一でも相異なってもよく、RA1が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、RA2が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
【請求項15】
(A)成分が、下記式で表される化合物を含む、請求項1~14の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【化6】
【請求項16】
(B2)成分がビフェニル骨格を有する、請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
硬化物の誘電率の値が3.0以下である、請求項1~16の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
硬化物の誘電正接の値が0.0030以下である、請求項1~17の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
硬化物の25℃~80℃の範囲における線熱膨張率が40ppm/℃以下である、請求項1~18の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
プリント配線板の絶縁層用である、請求項1~19の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
プリント配線板の層間絶縁層用である、請求項1~20の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項22】
支持体と、該支持体上に設けられた請求項1~21の何れか1項に記載の樹脂組成物の層とを含む、樹脂シート。
【請求項23】
請求項1~21の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項24】
請求項1~21の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物を用いて得られる、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。このような絶縁層に用いられるプリント配線板の絶縁材料として、例えば、特許文献1に開示される樹脂組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-220270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今の高速伝送化に伴い、絶縁材料の更なる低誘電正接化、低誘電率化が求められている。斯かる誘電特性の改善にあたり、絶縁材料に用いる硬化性樹脂として、極性の低い反応性官能基であるベンゾシクロブテン基を有する樹脂(以下、単に「ベンゾシクロブテン樹脂」という。)が期待されている。しかし、斯かるベンゾシクロブテン樹脂を用いて硬化物(絶縁層)を形成したところ、導体層との密着性に劣る場合があり、また、得られる硬化物は機械的強度に劣る場合があることを本発明者らは見出した。
【0005】
本発明の課題は、優れた誘電特性を呈すると共に、導体層との密着性及び機械的強度が良好である硬化物をもたらす樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ベンゾシクロブテン樹脂と特定構造のマレイミド化合物を併用し、かつ、無機充填材を組み合わせて使用することにより、誘電正接や誘電率を低く維持したまま、導体層との密着性及び機械的強度が良好である硬化物をもたらすことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)ベンゾシクロブテン樹脂、
(B)マレイミド化合物、
(C)無機充填材
を含み、
(B)成分が、
(B1)マレイミドの窒素原子と直接結合している炭素原子数5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び
(B2)マレイミドの窒素原子と直接結合している芳香族環を有するマレイミド化合物であって、分子量が500以上であるマレイミド化合物、
から選択される1種以上である、樹脂組成物。
[2] (B1)成分が、下記式(B1-1)で表される化合物を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(B1-1)中、
は、置換基を有していてもよい炭素原子数5以上の脂肪族基を表し、
は、単結合又は2価の連結基を表し、
nB1は0~20の整数を表す。Aが複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、Lが複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
[3] (B2)成分が、下記式(B2-1)で表される化合物を含む、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式(B2-1)中、
環Arは、置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
は、単結合又は2価の連結基を表し、
nB2は、1~100の整数を表す。複数ある環Arは同一でも相異なってもよく、Lが複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
[4] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、30質量%以上かつ80質量%以下である、[1]~[3]の何れかに記載の樹脂組成物。
[5] (A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上かつ50質量%以下である、[1]~[4]の何れかに記載の樹脂組成物。
[6] (A)成分が2つ以上のベンゾシクロブテン基を有し、数平均分子量(Mn)が2000以下である、[1]~[5]の何れかに記載の樹脂組成物。
[7] (D)フェニレンエーテル骨格を含む硬化性樹脂をさらに含む、[1]~[6]の何れかに記載の樹脂組成物。
[8] (D)成分が、下記式(D-1)で表される化合物を含む、[7]に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(D-1)中、
Xは、ラジカル重合性不飽和基を有する1価の基を表し、
は、2価の連結基を表し、
D11及びRD12は、それぞれ独立に、置換基を表し、
nD11及びnD12は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し、
nD1及びnD2は、少なくとも一方が1以上の整数であることを条件として、それぞれ独立に、0~300の整数を表す。複数あるXは同一でも相異なってもよく、RD11が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、RD12が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
[9] (D)成分のMnが2500以下である、[7]又は[8]に記載の樹脂組成物。
[10] (A)成分がシロキサン骨格を有する、[1]~[9]の何れかに記載の樹脂組成物。
[11] (B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上かつ30質量%以下である、[1]~[10]の何れかに記載の樹脂組成物。
[12] (D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上かつ40質量%以下である、[7]~[11]の何れかに記載の樹脂組成物。
[13] (A)成分が、下記式(A-2)で表される化合物を含む、[1]~[12]の何れかに記載の樹脂組成物。
【化4】
(式(A-2)中、
は、不飽和結合を有する2価の脂肪族基を表し、
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、又はアリール基を表し、
A1は、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、
A2は、アルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、
nA1は、0~2の整数を表し、
nA2は、0~3の整数を表し、
nA4は、1~10の整数を表す。R、R、RA1及びRA2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。複数あるRは同一でも相異なってもよく、複数あるRは同一でも相異なってもよく、RA1が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、RA2が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。)
[14] (A)成分が、下記式で表される化合物を含む、[1]~[13]の何れかに記載の樹脂組成物。
【化5】
[15] (B2)成分がビフェニル骨格を有する、[1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物。
[16] 硬化物の誘電率の値が3.0以下である、[1]~[15]の何れかに記載の樹脂組成物。
[17] 硬化物の誘電正接の値が0.0030以下である、[1]~[16]の何れかに記載の樹脂組成物。
[18] 硬化物の25℃~80℃の範囲における線熱膨張率が40ppm/℃以下である、[1]~[17]の何れかに記載の樹脂組成物。
[19] プリント配線板の絶縁層用である、[1]~[18]の何れかに記載の樹脂組成物。
[20] プリント配線板の層間絶縁層用である、[1]~[19]の何れかに記載の樹脂組成物。
[21] 支持体と、該支持体上に設けられた[1]~[20]の何れかに記載の樹脂組成物の層とを含む、樹脂シート。
[22] [1]~[20]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む、プリント配線板。
[23] [1]~[20]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた誘電特性を呈すると共に、導体層との密着性及び機械的強度が良好である硬化物をもたらす樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<用語の説明>
本明細書において、化合物又は基についていう「置換基を有していてもよい」という用語は、該化合物又は基の水素原子が置換基で置換されていない場合、及び、該化合物又は基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されている場合の双方を意味する。
【0010】
本明細書において、「置換基」という用語は、特に説明のない限り、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、1価の複素環基、アルキリデン基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基及びオキソ基を意味する。
【0011】
置換基として用いられるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0012】
置換基として用いられるアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~14、さらに好ましくは1~12、さらにより好ましくは1~6、特に好ましくは1~3である。該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基が挙げられる。
【0013】
置換基として用いられるシクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。該シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0014】
置換基として用いられるアルコキシ基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~6である。該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、及びデシルオキシ基が挙げられる。
【0015】
置換基として用いられるシクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。該シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0016】
置換基として用いられるアリール基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を1個除いた基である。置換基として用いられるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。該アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基が挙げられる。
【0017】
置換基として用いられるアリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、さらに好ましくは6~14、さらにより好ましくは6~10である。置換基として用いられるアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、及び2-ナフチルオキシ基が挙げられる。
【0018】
置換基として用いられるアリールアルキル基の炭素原子数は、好ましくは7~25、より好ましくは7~19、さらに好ましくは7~15、さらにより好ましくは7~11である。該アリールアルキル基としては、例えば、フェニル-C~C12アルキル基、ナフチル-C~C12アルキル基、及びアントラセニル-C~C12アルキル基が挙げられる。
【0019】
置換基として用いられるアリールアルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは7~25、より好ましくは7~19、さらに好ましくは7~15、さらにより好ましくは7~11である。該アリールアルコキシ基としては、例えば、フェニル-C~C12アルコキシ基、及びナフチル-C~C12アルコキシ基が挙げられる。
【0020】
置換基として用いられる1価の複素環基とは、複素環式化合物の複素環から水素原子1個を除いた基をいう。該1価の複素環基の炭素原子数は、好ましくは3~21、より好ましくは3~15、さらに好ましくは3~9である。該1価の複素環基には、1価の芳香族複素環基(ヘテロアリール基)も含まれる。該1価の複素環としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フラニル基、フリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、及びイソキノリル基が挙げられる。
【0021】
置換基として用いられるアルキリデン基とは、アルカンの同一の炭素原子から水素原子を2個除いた基をいう。該アルキリデン基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~14、さらに好ましくは1~12、さらにより好ましくは1~6、特に好ましくは1~3である。該アルキリデン基としては、例えば、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、sec-ブチリデン基、イソブチリデン基、tert-ブチリデン基、ペンチリデン基、ヘキシリデン基、ヘプチリデン基、オクチリデン基、ノニリデン基、及びデシリデン基が挙げられる。
【0022】
置換基として用いられるアシル基は、式:-C(=O)-Rで表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基)をいう。Rで表されるアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。Rで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基が挙げられる。該アシル基の炭素原子数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~13、さらに好ましくは2~7である。該アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、及びベンゾイル基が挙げられる。
【0023】
置換基として用いられるアシルオキシ基は、式:-O-C(=O)-Rで表される基(式中、Rはアルキル基又はアリール基)をいう。Rで表されるアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。Rで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基が挙げられる。該アシルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~13、さらに好ましくは2~7である。該アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0024】
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0025】
本明細書において、「芳香族環」という用語は、環上のπ電子系に含まれる電子数が4n+2個(nは自然数)であるヒュッケル則に従う環を意味し、単環式の芳香族環、及び2個以上の単環式の芳香族環が縮合した縮合芳香族環を含む。芳香族環は、炭素環又は複素環であり得る。芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の単環式の芳香族環;ナフタレン環、アントラセン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、インダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、アクリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環等の2個以上の単環式の芳香族環が縮合した縮合環;インダン環、フルオレン環、テトラリン環等の1個以上の単環式の芳香族環に1個以上の単環式の非芳香族環が縮合した縮合環等が挙げられる。
【0026】
本明細書において、「非芳香族環」という用語は、芳香族環以外の環を意味し、単環式の非芳香族環、及び2個以上の単環式の非芳香族環が縮合した縮合非芳香族環を含む。非芳香族環は、炭素環又は複素環であり得る。非芳香族環は、飽和環であっても、不飽和環であってもよい。非芳香族環としては、例えば、シクロアルカン環;シクロアルケン環;ピロリジン環、テトラヒドロフラン環、ジオキサン環、テトラヒドロピラン環等の単環式の非芳香族複素環(好ましくは3~10員);ノルボルナン環、デカリン環、アダマンタン環、テトラヒドロジシクロペンタジエン環等の二環式以上の縮合非芳香族炭素環(好ましくは8~15員)等が挙げられる。
【0027】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0028】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)ベンゾシクロブテン樹脂、(B)マレイミド化合物、及び(C)無機充填材を含み、
(B)成分が、
(B1)マレイミドの窒素原子と直接結合している炭素原子数5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び
(B2)マレイミドの窒素原子と直接結合している芳香族環を有するマレイミド化合物であって、分子量が500以上であるマレイミド化合物、
から選択される1種以上であることを特徴とする。
【0029】
ベンゾシクロブテン樹脂は、加熱により異性体ジエン(オルトキノジメタン)を生じ、このジエンがDiels-Alder型の環化付加反応を起こすことにより硬化し得る。硬化反応により水酸基等の極性の大きな官能基が生じないことから、ベンゾシクロブテン樹脂は、誘電特性に優れた硬化物をもたらすことが期待される。しかしながら、斯かるベンゾシクロブテン樹脂を用いて硬化物(絶縁層)を形成したところ、導体層との密着性に劣る場合があり、また、得られる硬化物は機械的強度に劣る場合があることを本発明者らは見出した。ベンゾシクロブテン樹脂の上記反応に関しては、高温を要することに加え、酸素存在下ではその反応性が乏しいことから、熱履歴や所期の架橋性が得られにくいことなどが影響しているものと推察される。
【0030】
これに対し、ベンゾシクロブテン樹脂と特定構造のマレイミド化合物を併用し、かつ、無機充填材を組み合わせて使用する本発明の樹脂組成物によれば、低誘電正接や低誘電率といったベンゾシクロブテン樹脂を使用することによる優れた誘電特性の利点はそのままに、導体層との密着性及び機械的強度も良好である硬化物をもたらすことができる。さらには、ベンゾシクロブテン樹脂と、特定構造のマレイミド化合物と無機充填材とを組み合わせて使用する本発明の樹脂組成物によれば、熱特性も改善されることを本発明者らは見出した。このように、本発明は、ベンゾシクロブテン樹脂が本来的に有する優れた誘電特性という利点はそのままに、導体層との密着性や機械的強度をはじめ、熱特性も良好な硬化物を実現するものであり、昨今の高速伝送化の要求に著しく寄与するものである。
【0031】
-(A)ベンゾシクロブテン樹脂-
本発明の樹脂組成物は、(A)成分として、ベンゾシクロブテン樹脂を含む。これにより、誘電特性に優れる硬化物(絶縁層)をもたらすことができる。
【0032】
(A)成分は、加熱により異性体ジエンを生じ得るベンゾシクロブテン基を含有する限り、構造は特に限定されない。後述する(B)成分及び(C)成分との組み合わせにおいて、導体層との密着性及び機械的強度が良好な硬化物をもたらす観点から、(A)成分は、1分子中に、2つ以上のベンゾシクロブテン基を有することが好ましい。
【0033】
一実施形態において、(A)成分は、下記式(A-1)で表される化合物を含む。
【0034】
【化6】
【0035】
式(A-1)中、
は、不飽和結合を有する2価の脂肪族基を表し、
Lは、単結合又は2価の連結基を表し、
A1は、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、
A2は、アルキル基、トリアルキルシリル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、
nA1は、0~2の整数を表し、
nA2は、0~3の整数を表し、
nA3は、0又は1を表す。R、RA1及びRA2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。複数あるRは同一でも相異なってもよく、RA1が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、RA2が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0036】
で表される2価の基は、不飽和結合を好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個、さらに好ましくは1個有する。不飽和結合は、二重結合でも三重結合でもよいが、二重結合であることが好ましい。Rで表される2価の基は、好ましくはアルケニレン基又はアルキニレン基である。Rで表される2価の基の炭素原子数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~6又は2~4である。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
【0037】
Lで表される2価の連結基としては、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び珪素原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の基であれば特に限定されず、例えば、後述する式(B1-3)中のA12として記載した2価の基や、シロキサン骨格であってよい。中でも、Lは、シロキサン骨格であることが好ましい。したがって一実施形態において、(A)成分はシロキサン骨格を有する。
【0038】
A1で表されるアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、1~4又は1~3である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。RA1で表されるハロゲン原子としては、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0039】
A2で表されるアルキル基及びアルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、1~4又は1~3である。RA2で表されるトリアルキルシリル基におけるアルキル部分の炭素原子数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。また、RA2で表されるハロゲン原子としては、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0040】
後述する(B)成分及び(C)成分との組み合わせにおいて、導体層との密着性が良好な硬化物をもたらす観点から、式(A-1)において、nA3は1であることが好ましく、Lはシロキサン骨格であることが好ましい。
【0041】
好適な一実施形態において、(A)成分は、下記式(A-2)で表される化合物を含む。
【0042】
【化7】
【0043】
式(A-2)中、
、RA1、RA2、nA1及びnA2は式(A-1)にて説明したとおりであり、
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、又はアリール基を表し、
nA4は、1~10の整数を表す。Rは置換基を有していてもよい。複数あるRは同一でも相異なってもよい。
【0044】
で表されるアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、1~4又は1~3である。Rで表されるシクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3~10、より好ましくは4~6である。Rで表されるアリールアルキル基の炭素原子数は、好ましくは7~20、より好ましくは7~15又は7~12である。アリールアルキル基におけるアリール部分は、フェニル基であることが好ましい。Rで表されるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6~14、より好ましくは6~10である。アリール基としてはフェニル基が好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
【0045】
、RA1、RA2、nA1及びnA2は式(A-1)にて説明したとおりであるが、中でも、Rが炭素原子数2~4のアルケニレン基、nA1及びnA2が0であることが好ましい。
【0046】
特に好適な一実施形態において、(A)成分は、下記式(A-3)で表される化合物を含む。
【0047】
【化8】
【0048】
式(A-3)中、R及びnA4は式(A-2)にて説明したとおりである。
【0049】
(A)成分は、例えば米国特許第4812588号明細書、米国特許第5138081号明細書等に記載された手順に従って調製することができる。また、(A)成分としては市販品を用いてよく、例えば、式(A-3)で表される化合物として、ダウケミカル社製のCYCLOTENEシリーズがあり、「CYCLOTENE3022」は下記式で表される構造を有する。
【0050】
【化9】
【0051】
先述のとおり、ベンゾシクロブテン基は異性体ジエンを生じ、Diels-Alder型の環化付加反応を起こす。よって、(A)成分は、上記の式(A-1)乃至(A-3)などで表される化合物(モノマー)のほか、斯かる化合物が付加反応して生じたダイマーやポリマーを含んでいてもよい。
【0052】
(A)成分は、後述する(B)成分及び(C)成分との組み合わせにおいて本発明の効果を奏する限り、その重量平均分子量(Mw)や数平均分子量(Mn)は特に限定されない。一実施形態において、Mnが、2000以下であることが好ましく、1800以下であることがより好ましく、1600以下、1500以下、1400以下、1200以下又は1000以下であることがさらに好ましい。一実施形態において、Mwも上記好適範囲にある。該分子量の下限は特に限定されず、例えば、250以上、300以上、350以上などとし得る。(A)成分のMwやMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0053】
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、誘電特性に優れる硬化物を実現する観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上又は7質量%以上である。(A)成分の含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、35質量%以下又は30質量%以下である。したがって、好適な一実施形態において、(A)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上かつ50質量%以下である。
【0054】
-(B)マレイミド化合物-
本発明の樹脂組成物は、(B)成分として、マレイミド化合物を含み、該(B)成分が特定の構造を有するマレイミド化合物、詳細には、
(B1)マレイミドの窒素原子と直接結合している炭素原子数5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、及び
(B2)マレイミドの窒素原子と直接結合している芳香族環を有するマレイミド化合物であって、分子量が500以上であるマレイミド化合物、
から選択される1種以上であることを特徴とする。なお、(B2)成分は、マレイミドの窒素原子と直接結合している芳香族環に加えてビフェニル骨格を有する場合、分子量によらず所期の効果を奏する。したがって、本発明の樹脂組成物は、(B)成分として、(B2)マレイミドの窒素原子と直接結合している芳香族環を有し且つビフェニル骨格を有するマレイミド化合物を用いてよい。
【0055】
ここで、用語「直接」とは、(B1)成分にあっては、マレイミドの窒素原子と炭素原子数5以上の脂肪族基との間に他の基がないことをいい、(B2)成分にあっては、マレイミドの窒素原子と芳香族環との間に他の基がないことをいう。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、上記(A)成分に加えて、斯かる特定構造の(B)成分を組み合わせて使用することにより、(A)成分が本来的に有する優れた誘電特性という利点はそのままに、導体層との密着性や機械的強度をはじめ、熱特性も良好な硬化物を実現するに至ったものである。
【0057】
(B)成分は、(B1)成分であるか、(B2)成分であるかの別を問わず、1分子中に2つ以上のマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)を有することが好ましい。
【0058】
<(B1)成分>
(B1)成分は、マレイミドの窒素原子と直接結合している炭素原子数5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物である。斯かるマレイミド化合物は、例えば、脂肪族アミン化合物(ダイマー酸骨格を有するジアミン化合物など)と、マレイン酸無水物と、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物とを含む成分をイミド化反応させることにより得ることができる。
【0059】
一実施形態において、(B1)成分は、下記式(B1-1)で表される化合物を含む。
【0060】
【化10】
【0061】
式(B1-1)中、
は、置換基を有していてもよい炭素原子数5以上の脂肪族基を表し、
は、単結合又は2価の連結基を表し、
nB1は0~20の整数を表す。Aが複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、Lが複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0062】
で表される脂肪族基の炭素原子数は、5以上であり、好ましくは10以上、15以上又は20以上である。該炭素原子数の上限は特に限定されないが、例えば、100以下、80以下、60以下又は50以下などとし得る。なお、該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
【0063】
一実施形態において、Aは、下記式(B1-2)で表される2価の基である。
【0064】
【化11】
【0065】
式(B1-2)中、
11は、単結合、アルキレン基又はアルケニレン基(好ましくはアルキレン基又はアルケニレン基)を表し、
環Zは、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる基を有していてもよい非芳香族環(好ましくはアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基を有していてもよいシクロアルカン環又はシクロアルケン環)を表し、
nB11は、0~3の整数(好ましくは0又は1、より好ましくは1)を表し、
*は、結合部位を示す。A11や環Zは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。A11が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、環Zが複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0066】
で表される2価の連結基としては、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる2個以上(例えば2~3000個、2~1000個、2~100個、2~50個)の骨格原子からなる2価の有機基(好ましくは2価の環(例えば芳香族環又は非芳香族環)含有有機基)が挙げられ、中でも、下記式(B1-3)で表される2価の基が好ましい。
【0067】
【化12】
【0068】
式(B1-3)中、
12は、単結合、又は炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の基を表し、
B1及びRB2は、それぞれ独立に、置換基を表し、
nB12は、0又は1を表し、
nB13及びnB14は、それぞれ独立に、0~3の整数(好ましくは0又は1)を表し、
*は、結合部位を示す。RB1が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、RB2が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0069】
なお、nB12が0であるとき、式(B1-3)で表される2価の基は、下記式(B1-4)で表される構造を有する2価の基を示す。式中、RB1、nB13及び*は、式(B1-3)にて説明したとおりである。
【0070】
【化13】
【0071】
式(B1-3)中、nB12が1である実施形態において、A12で表される2価の基としては、下記式(B1-5)で表される2価の基が好ましい。
【0072】
【化14】
【0073】
式(B1-5)中、
は、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を表し、
環Zは、置換基を有していてもよい非芳香族環、又は置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
nB15は、0~5の整数(好ましくは0~3)を表し、
*は、結合部位を示す。Yや環Zは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。Yが複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、環Zが複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0074】
12で表される2価の基の具体例としては、特に限定されるものではないが、-CH-、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CHCH-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、及び-SO-に加えて、下記で表される2価の有機基を挙げることができる。
【化15】
【0075】
(B1)成分の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは150~50000、より好ましくは300~20000であり、より詳細には、式(B1-1)中のnB1が1以上の整数である態様では、好ましくは500~50000、より好ましくは1000~20000であり、nB1が0である態様では、好ましくは150~5000、より好ましくは300~1000である。(B1)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0076】
また、(B1)成分について、マレイミド基の官能基当量は、好ましくは50~20000g/eq.、より好ましくは100~20000g/eq.であり、より詳細には、式(B1-1)中のnB1が1以上の整数である態様では、好ましくは300g/eq.~20000g/eq.、より好ましくは500g/eq.~10000g/eq.であり、nB1が0である態様では、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.さらに好ましくは200g/eq.~600g/eq.、特に好ましくは300g/eq.~400g/eq.である。
【0077】
(A)成分及び後述する(C)成分との組み合わせにおいて、導体層との密着性や機械的強度に一際優れる硬化物を実現する観点から、(B1)成分は、下記式(B1-6)で表される構造、下記式(B1-7)で表される構造、又は下記式(B1-8)で表される構造の何れかを有するマレイミド化合物を含むことが好ましい。
【0078】
【化16】
【0079】
式(B1-6)中、A11及び環Zは、先に説明したとおりであり、A11-環Z-A11の1ブロック当たりの炭素原子数は好ましくは20~100(より好ましくは30~60又は30~50)であり、いわゆるダイマー酸骨格(C36骨格)であることが特に好ましい。nB16は1~10の整数を表す。
【0080】
【化17】
【0081】
式(B1-7)中、A11、Y、環Z、環Z及びnB15は、先に説明したとおりであり、A11-環Z-A11の1ブロック当たりの炭素原子数は好ましくは20~100(より好ましくは30~60又は30~50)であり、いわゆるダイマー酸骨格(C36骨格)であることが特に好ましい。また、nB15+1個のY1とnB15個の環Z2からなるブロックは、先に説明した2価の基A12に対応するが、中でも、酸素原子を含む2価の基であることが好ましい。nB17は1~10の整数を表す。
【0082】
【化18】
【0083】
式(B1-8)中、A11及び環Zは、先に説明したとおりであり、A11-環Z-A11の1ブロック当たりの炭素原子数は好ましくは20~100(より好ましくは30~60又は30~50)であり、いわゆるダイマー酸骨格(C36骨格)であることが特に好ましい。nB11は0~10の整数を表す。
【0084】
式(B1-6)で表される構造を有するマレイミド化合物の市販品としては、例えば、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-3000J」、「BMI-5000」等が挙げられる。式(B1-7)で表される構造を有するマレイミド化合物の市販品としては、例えば、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-1400」、「BMI-1500」、「BMI-1700」等が挙げられる。式(B1-8)で表される構造を有するマレイミド化合物の市販品としては、例えば、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-689」等が挙げられる。
【0085】
<(B2)成分>
(B2)成分は、マレイミドの窒素原子と直接結合している芳香族環を有するマレイミド化合物であって、分子量が500以上であるマレイミド化合物である。斯かるマレイミド化合物は、例えば、芳香族アミン化合物(芳香族ジアミン化合物など)と、マレイン酸無水物とを含む成分をイミド化反応させることにより得ることができる。
【0086】
一実施形態において、(B2)成分は、下記式(B2-1)で表される化合物を含む。
【0087】
【化19】
【0088】
式(B2-1)中、
環Arは、置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
は、単結合又は2価の連結基を表し、
nB2は、1~100の整数を表す。複数ある環Arは同一でも相異なってもよく、Lが複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0089】
環Arで表される芳香族環としては、炭素環及び複素環の何れであってもよいが、炭素環がより好ましい。環Arで表される芳香族環の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは5~14又は6~10である。該炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。
【0090】
で表される2価の連結基としては、炭素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の基であれば特に限定されず、例えば、先述の式(B1-3)中のA12として記載した2価の基が挙げられる。
【0091】
中でも、(A)成分及び後述する(C)成分との組み合わせにおいて、導体層との密着性や機械的強度に一際優れた硬化物を実現する観点から、環Ar1は、置換基を有していてもよい炭素原子数6~10の芳香族炭素環(より好ましくは置換基を有していてもよいベンゼン環で)あることが好ましく、また、Lは(L2が複数ある場合、少なくとも1つのLは)、ビフェニル骨格を有する2価の基であることが好ましい。したがって一実施形態において、(B2)成分はビフェニル骨格を有する。
【0092】
なお、(B2)成分において、マレイミドの窒素原子と芳香族環は直接結合している。マレイミドと芳香族環の結合位置は、芳香族環と結合しているLを基準として、任意の位置であってよい。例えば、芳香族環がベンゼン環である場合、マレイミドと該ベンゼン環の結合位置は、該ベンゼン環と結合しているLを基準として、オルト位、メタ位、及びパラ位のいずれであってもよいが、パラ位に結合していることが本発明の効果をより享受し得る観点から好ましい。
【0093】
好適な一実施形態において、(B2)成分は、下記式(B2-2)で表される化合物を含む。
【0094】
【化20】
【0095】
式(B2-2)中、
B3、RB4、RB5及びRB6は、それぞれ独立に、置換基を表し、
nB21は1~100の整数を表し、
nB22及びnB23は、それぞれ独立に、1~10の整数を表し、
nB24及びnB25は、それぞれ独立に、0~3の整数を表し、
nB26及びnB27は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。RB3が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、これは、RB4、RB5及びRB6についても同様である。
【0096】
nB21は、好ましくは1~50、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~5である。
【0097】
nB22及びnB23は、それぞれ独立に、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1又は2である。
【0098】
nB24及びnB25は、それぞれ独立に、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1である。nB24、nB25が1以上である場合、RB3及びRB4で表される置換基は、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0099】
nB26及びnB27は、それぞれ独立に、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1である。nB26、nB27が1以上である場合、RB5及びRB6で表される置換基は、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0100】
中でも、nB26及びnB27は0であることが好ましい。したがって好適な一実施形態において、(B2)成分は、下記式(B2-3)で表される化合物を含む。
【0101】
【化21】
【0102】
式(B2-3)中、RB3、RB4、nB21、nB22、nB23、nB24及びnB25は、式(B2-2)にて説明したとおりである。
【0103】
(B2)成分の分子量は、分子量分布を有する場合、重量平均分子量(Mw)にて、500以上であり、好ましくは550以上である。該Mwの上限は、特に限定されないが、好ましくは5000以下、より好ましくは2500以下である。(B2)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0104】
また、(B2)成分について、マレイミド基の官能基当量は、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.さらに好ましくは150g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは200g/eq.~300g/eq.である。
【0105】
(A)成分及び後述する(C)成分との組み合わせにおいて、導体層との密着性や機械的強度に一際優れる硬化物を実現する観点から、(B2)成分は、下記式(B2-4)で表される構造を有するマレイミド化合物を含むことが好ましい。
【0106】
【化22】
【0107】
式(B2-4)中、nB21は、先に説明したとおりである。
【0108】
式(B2-4)で表される構造を有するマレイミド化合物の市販品としては、例えば、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」等が挙げられる。(B2)成分としてはまた、式(2-1)で表される化合物として、大和化成社製の「BMI-4000」、ケイアイ化成社製の「BMI-80」等を使用してもよい。
【0109】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分が本来的に有する優れた誘電特性という利点はそのままに、導体層との密着性や機械的強度をはじめ、熱特性も良好な硬化物を実現する観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上又は5質量%以上である。(B)成分の含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下又は20質量%以下である。したがって、好適な一実施形態において、(B)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上かつ30質量%以下である。
【0110】
本発明の効果をより顕著に享受し得る観点から、(A)成分に対する(B)成分の配合量比、すなわち(B)成分/(A)成分の質量比は、不揮発成分換算で、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.8以上又は1以上である。該質量比の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、10以下、8以下、6以下又は5以下などとし得る。
【0111】
-(C)無機充填材-
本発明の樹脂組成物は、(C)成分として、無機充填材を含む。
【0112】
本発明の樹脂組成物は、上記(A)成分、(B)成分に加えて、斯かる(C)成分を組み合わせて使用することにより、(A)成分が本来的に有する優れた誘電特性という利点はそのままに、導体層との密着性や機械的強度をはじめ、熱特性も良好な硬化物を実現するに至ったものである。
【0113】
(C)成分の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(C)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
(C)成分の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」などが挙げられる。
【0115】
(C)成分の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、2μm以下、1μm以下又は0.7μm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上、0.1μm以上又は0.2μm以上である。(C)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0116】
(C)成分の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.5m/g以上、さらに好ましくは1m/g以上、3m/g以上又は5m/g以上である。該比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m/g以下、より好ましくは80m/g以下、さらに好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。(C)成分の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0117】
(C)成分は、適切な表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理されることにより、(C)成分の耐湿性及び分散性を高めることができる。表面処理剤としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、イソシアヌレート系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、酸無水物系シランカップリング剤等のシランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の非シランカップリング-アルコキシシラン化合物;シラザン化合物等が挙げられる。表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0119】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、好ましくは0.2~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。
【0120】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。(C)成分の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0121】
樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、(A)成分が本来的に有する優れた誘電特性という利点はそのままに、導体層との密着性や機械的強度をはじめ、熱特性も良好な硬化物を実現する観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上又は40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上又は50質量%以上である。(C)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。したがって、好適な一実施形態において、(C)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、30質量%以上かつ80質量%以下である。
【0122】
本発明の効果をより顕著に享受し得る観点から、(A)成分に対する(C)成分の配合量比、すなわち(C)成分/(A)成分の質量比は、不揮発成分換算で、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上又は2以上、さらに好ましくは2.5以上、3以上、3.5以上、4以上、4.5以上又は5以上である。該質量比の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、50以下、40以下又は30以下などとし得る。
【0123】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を組み合わせて含む本発明の樹脂組成物は、(A)成分が本来的に有する優れた誘電特性という利点はそのままに、導体層との密着性や機械的強度をはじめ、機械特性や熱特性も良好な硬化物を実現することができる。(A)成分に、(B)成分のみ、あるいは、(C)成分のみを組み合わせても、上記効果は得られず(比較例参照)、(A)成分に、(B)成分と(C)成分を組み合わせて配合した場合に特異的に効果が得られることを確認している。
【0124】
-(D)フェニレンエーテル骨格を含む硬化性樹脂-
本発明の樹脂組成物は、(D)成分として、フェニレンエーテル骨格を含む硬化性樹脂をさらに含んでもよい。(D)成分をさらに含むことにより、本発明の効果をより顕著に享受可能である。
【0125】
(D)成分は、フェニレンエーテル骨格を含み、さらに硬化反応に寄与するラジカル重合性不飽和基を含むことが好ましい。ラジカル重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フマロイル基、マレオイル基が挙げられる。(D)成分は、2つ以上のラジカル重合性不飽和基を有することが好ましい。
【0126】
一実施形態において、(D)成分は、下記式(D-1)で表される化合物を含む。
【0127】
【化23】
【0128】
式(D-1)中、
Xは、ラジカル重合性不飽和基を有する1価の基を表し、
は、2価の連結基を表し、
D11及びRD12は、それぞれ独立に、置換基を表し、
nD11及びnD12は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し、
nD1及びnD2は、少なくとも一方が1以上の整数であることを条件として、それぞれ独立に、0~300の整数を表す。複数あるXは同一でも相異なってもよく、RD11が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよく、RD12が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0129】
Xで表される1価の基は、ラジカル重合性不飽和基を有する限り特に限定されないが、(A)成分乃至(C)成分と組み合わせて配合した際に本発明の効果をより享受し得る観点から、下記式(D-2)で表される1価の基であることが好ましい。
【0130】
【化24】
【0131】
式(D-2)中、
D1、RD2及びRD3は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、
D4は、アルキレン基を表し、
D13は、置換基を表し、
nD3及びnD4は、それぞれ独立に、0又は1を表し、
nD13は、0~4の整数を表し、
*は結合部位を示す。RD1、RD2、RD3及びRD4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。RD13が複数ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0132】
D1、RD2及びRD3で表されるアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6又は1~4、さらに好ましくは1又は2である。該炭素原子数に、置換基の炭素原子数は含まれない。中でも、RD1は、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、RD2及びRD3は、水素原子であることが好ましい。
【0133】
D4で表されるアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3である。該炭素原子数に、置換基の炭素原子数は含まれない。
【0134】
nD13は、好ましくは0~2、より好ましくは0又は1である。nD13が1以上の整数である場合、RD13で表される置換基としては、アルキル基が好ましい。
【0135】
D1が水素原子である場合、nD3は0が好ましい。また、RD1がアルキル基である場合、nD3は1が好ましい。
【0136】
また、nD3が0である場合、nD4は1が好ましく、nD3が1である場合、nD4は0が好ましい。
【0137】
式(D-1)において、Lで表される2価の連結基としては、炭素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の基であれば特に限定されず、例えば、先述の式(B1-3)中のA12として記載した2価の基が挙げられる。
【0138】
式(D-1)において、nD11及びnD12は、それぞれ独立に、好ましくは1~4、より好ましくは2又は3、さらに好ましくは2である。nD11及びnD12が1以上の整数である場合、RD11及びRD12で表される置換基としては、アルキル基が好ましい。
【0139】
式(D-1)において、nD1及びnD2は、それぞれ独立に、好ましくは1以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下又は10以下である。
【0140】
(D)成分は、(A)乃至(C)成分との組み合わせにおいて本発明の効果を奏する限り、その重量平均分子量(Mw)や数平均分子量(Mn)は特に限定されない。一実施形態において、Mnが、2500以下であることが好ましく、2200以下であることがより好ましく、2000以下又は1900以下であることがさらに好ましい。一実施形態において、Mwも上記好適範囲にある。該分子量の下限は特に限定されず、例えば、500以上、700以上などとし得る。(D)成分のMwやMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0141】
(D)成分の好ましい例としては、下記式(D-3)で表される化合物が挙げられる。
【0142】
【化25】
【0143】
式(D-3)中、RD4、RD11、RD12、L、nD1及びnD2は、先に説明したとおりである。
【0144】
中でも、Lが、下記式(D-4)で表される2価の基であることが好ましい。
【0145】
【化26】
【0146】
式(D-4)中、
D14及びRD15は、それぞれ独立に、アルキル基又はフェニル基を表し、
nD14及びnD15は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し、
*は結合部位を示す。
【0147】
D14及びRD15で表されるアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1又は2である。RD14及びRD15は、アルキル基であることが好ましい。
【0148】
nD14及びnD15は、それぞれ独立に、好ましくは1~4、より好ましくは2又は3である。
【0149】
式(D-3)で表される化合物としては、例えば、下記式(D-5)で表される化合物が挙げられる。式中、nD1及びnD2は、先に説明したとおりである。式(D-5)で表される化合物の市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製の「OPE-2St」等が挙げられる。
【0150】
【化27】
【0151】
(D)成分の別の好ましい例としては、下記式(D-6)で表される化合物が挙げられる。
【0152】
【化28】
【0153】
式(D-6)中、RD2、RD11、RD12、RD13、L、nD1及びnD2は、先に説明したとおりである。
【0154】
中でも、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-CO-、-CS-、-SO-、-SO-からなる群から選択されることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましく、イソプロピリデン基(-C(CH-)であることがさらに好ましい。
【0155】
式(D-6)で表される化合物としては、例えば、下記式(D-7)で表される化合物が挙げられる。式中、nD1及びnD2は、先に説明したとおりである。式(D-7)で表される化合物の市販品としては、例えば、SABIC社製の「NORYL SA9000」等が挙げられる。
【0156】
【化29】
【0157】
本発明の樹脂組成物が(D)成分を含む場合、樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上又は5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上又は10質量%以上である。(D)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。したがって、好適な一実施形態において、(D)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上かつ40質量%以下である。
【0158】
本発明の効果をより顕著に享受し得る観点から、(A)成分に対する(D)成分の配合量比、すなわち(D)成分/(A)成分の質量比は、不揮発成分換算で、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、0.3以上又は0.5以上、さらに好ましくは0.7以上、0.8以上、0.9以上、1以上、1.2以上、1.4以上又は1.5以上である。該質量比の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、10以下、8以下、6以下又は5以下などとし得る。
【0159】
-(E)高分子量成分-
本発明の樹脂組成物は、(E)成分として、高分子量成分をさらに含んでもよい。
【0160】
(E)成分の重量平均分子量(Mw)は、誘電特性により一層優れる硬化物を得る観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは8000以上、さらに好ましくは10000以上である。該Mwの上限は、特に限定されないが、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、さらに好ましくは50000以下である。(E)成分のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0161】
(E)成分としては、例えばフェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、(E)成分としては、誘電特性に優れる硬化物を得る観点から、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリカーボネート樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0162】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
【0163】
フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
【0164】
ポリイミド樹脂は、イミド構造を有する樹脂を用いることができる。ポリイミド樹脂は、一般に、ジアミン化合物と酸無水物とのイミド化反応により得ることができる。ポリイミド樹脂は市販品を用いてよく、例えば、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。
【0165】
ポリカーボネート樹脂は、カーボネート構造を有する樹脂である。このような樹脂としては、反応基を持たないカーボネート樹脂、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂、エポキシ基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ここで反応基とは、ヒドロキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、ウレタン基、及びエポキシ基等他の成分と反応し得る官能基のことをいう。
【0166】
ポリカーボネート樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、「FPC2136」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
【0167】
本発明の樹脂組成物が(E)成分を含む場合、樹脂組成物中の(E)成分の含有量は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、0.3質量%以上又は0.5質量%以上である。(E)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0168】
-(F)重合開始剤-
本発明の樹脂組成物は、(F)成分として、重合開始剤をさらに含んでもよい。
【0169】
(F)成分としては、例えば、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートt-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物が挙げられる。
【0170】
(F)成分の市販品としては、例えば、日油社製の「パーブチルC」、「パーブチルA」、「パーブチルP」、「パーブチルL」、「パーブチルO」、「パーブチルND」、「パーブチルZ」、「パーヘキシルD」、「パークミルP」、「パークミルD」等が挙げられる。
【0171】
本発明の樹脂組成物が(F)成分を含む場合、(F)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0172】
-その他成分-
本発明の樹脂組成物は、さらに、エポキシ樹脂、及びエポキシ樹脂硬化剤を含んでもよい。
【0173】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0174】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とがある。本発明の樹脂組成物は、液状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでもよい。
【0175】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0176】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0177】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0178】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。エポキシ樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0179】
本発明の樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、1質量%以上又は1.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下又は3質量%以下である。
【0180】
エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0181】
エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0182】
本発明の樹脂組成物は、さらに任意の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等の硬化促進剤;ゴム粒子等の有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0183】
本発明の樹脂組成物は、上述した不揮発成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0184】
本発明の樹脂組成物は、例えば、任意の調製容器に(A)成分、(B)成分、(C)成分、また、必要に応じて(D)成分、(E)成分、(F)成分、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、その他の添加剤や有機溶剤を、任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合することによって、製造することができる。また、各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、加えて混合する過程において又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置又は振盪装置を用いて撹拌又は振盪し、均一に分散させてもよい。また、撹拌又は振盪と同時に、真空下等の低圧条件下で脱泡を行ってもよい。
【0185】
先述のとおり、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を組み合わせて含む本発明の樹脂組成物は、(A)成分が本来的に有する優れた誘電特性という利点はそのままに、導体層との密着性をはじめ、機械特性や熱特性も良好な硬化物を実現する。
【0186】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、誘電率(Dk)が低いという特徴を呈する。例えば、後述する<誘電特性の評価>欄に記載のように5.8GHz、23℃で測定した場合、本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電率(Dk)は、好ましくは3.0以下又は2.9以下となり得る。
【0187】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、誘電正接(Df)が低いという特徴を呈する。例えば、後述する<誘電特性の評価>欄に記載のように5.8GHz、23℃で測定した場合、本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電正接(Df)は、好ましくは0.0030以下、0.0029以下、0.0028以下又は0.0027以下となり得る。
【0188】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、導体層との密着性が良好であるという特徴を呈する。例えば、後述する<導体密着性の評価>欄に記載の方法で測定した導体密着強度は、好ましくは0.50kgf/cm以上、0.55kgf/cm以上、又は0.60kgf/cm以上となり得る。
【0189】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、熱特性に優れるという特徴を呈する。例えば、後述する<熱特性(線熱膨張率:CTE)の評価>欄に記載の方法で測定した25℃~80℃の範囲における線熱膨張率は、好ましくは40ppm/℃以下、38ppm/℃以下、36ppm/℃以下又は35ppm/℃以下となり得る。
【0190】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、機械的強度に優れるという特徴を呈する。例えば、後述する<機械特性(最大点応力及び破断伸び)の評価>欄に記載の方法で測定した最大点応力は、好ましくは90MPa以上、95MPa以上、100MPa以上、105MPa以上又は110MPa以上となり得る。また、破断伸びは、好ましくは1.4%以上、1.5%以上又は1.6%以上となり得る。
【0191】
本発明の樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物、特に、絶縁層を形成するための樹脂組成物として好適に使用することができる。具体的には、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶層間縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物は、部品埋め込み性の良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、その上に導体層(再配線層を含む)が設けられる絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はさらに、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途で広範囲に使用できる。
【0192】
[樹脂シート]
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、工業的には一般に、該樹脂組成物を含有するシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
【0193】
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
【0194】
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物の層(以下、単に「樹脂組成物層」という。)とを含んでなり、樹脂組成物層が本発明の樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【0195】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0196】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0197】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0198】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0199】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0200】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0201】
支持体としてはまた、薄い金属箔に剥離が可能な支持基材を張り合わせた支持基材付き金属箔を用いてよい。一実施形態において、支持基材付き金属箔は、支持基材と、該支持基材上に設けられた剥離層と、該剥離層上に設けられた金属箔とを含む。支持体として支持基材付き金属箔を用いる場合、樹脂組成物層は、金属箔上に設けられる。
【0202】
支持基材付き金属箔において、支持基材の材質は、特に限定されないが、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、銅合金箔等が挙げられる。支持基材として、銅箔を用いる場合、電解銅箔、圧延銅箔であってよい。また、剥離層は、支持基材から金属箔を剥離できれば特に限定されず、例えば、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pからなる群から選択される元素の合金層;有機被膜等が挙げられる。
【0203】
支持基材付き金属箔において、金属箔の材質としては、例えば、銅箔、銅合金箔が好ましい。
【0204】
支持基材付き金属箔において、支持基材の厚さは、特に限定されないが、10μm~150μmの範囲が好ましく、10μm~100μmの範囲がより好ましい。また、金属箔の厚さは、例えば、0.1μm~10μmの範囲としてよい。
【0205】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0206】
樹脂シートは、例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0207】
有機溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した有機溶剤と同様のものが挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0208】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物又は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0209】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0210】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0211】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されない。通常、10μm以上である。
【0212】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0213】
プリプレグの厚さは、上述の樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
【0214】
本発明のシート状積層材料は、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)に好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の層間絶縁層用)により好適に使用することができる。
【0215】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を含む。
【0216】
プリント配線板は、例えば、上記の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して絶縁層を形成する工程
【0217】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0218】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスしてもよく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスしてもよい。
【0219】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0220】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0221】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0222】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。なお、支持体として、金属箔を使用した場合、支持体を剥離することなく、該金属箔を用いて導体層を形成してよい。また、支持体として、支持基材付き金属箔を使用した場合、支持基材(と剥離層)を剥離すればよい。そして、金属箔を用いて導体層を形成することができる。
【0223】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0224】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは120℃~250℃、より好ましくは150℃~240℃、さらに好ましくは180℃~230℃である。硬化時間は好ましくは5分間~240分間、より好ましくは10分間~150分間、さらに好ましくは15分間~120分間とすることができる。
【0225】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0226】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0227】
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様である。
【0228】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0229】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0230】
粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0231】
粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0232】
また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0233】
中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0234】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0235】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0236】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0237】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0238】
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0239】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0240】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0241】
あるいは、樹脂シートの支持体として、金属箔や、支持基材付き金属箔を使用した場合、該金属箔を用いて導体層を形成してよいことは先述のとおりである。
【0242】
また、本発明の樹脂組成物は、半導体チップパッケージを製造するに際して、再配線層を形成するための絶縁層を形成するための樹脂組成物(再配線層形成用の樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)としても好適に使用することができる。樹脂組成物(樹脂シート)を使用して半導体チップパッケージを製造する技術は、当分野において広く知られており、本発明の樹脂組成物や樹脂シートは、何れの方法・技術にも適用可能である。
【0243】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明の樹脂組成物層の硬化物からなる絶縁層を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板又は半導体パッケージを用いて製造することができる。
【0244】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0245】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度の指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)である。
【0246】
まず各種測定方法・評価方法について説明する。
【0247】
〔測定・評価用サンプルの調製〕
1.評価用硬化物の調製
実施例及び比較例で作製した樹脂シートから保護フィルムを剥がして、220℃にて90分間、窒素雰囲気下で加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた。その後、支持体を剥離して、樹脂組成物の硬化物からなる硬化物フィルムを得た。
【0248】
2.評価用基板の作製
(1)銅箔の下地処理
三井金属鉱山社製「3EC-III」(電解銅箔、35μm)の光沢面をメック社製メックエッチボンド「CZ-8201」に浸漬することにより、銅表面のRa値が0.5μmとなるように粗化処理を行った。次いで防錆処理(CL8300)を施し、さらに、130℃のオーブンで30分間加熱処理した。これにより、表面が低粗度の銅箔(以下、「CZ銅箔」という。)を得た。
【0249】
(2)基板の作製
実施例及び比較例で作製した樹脂シートから保護フィルムを剥がして、樹脂組成物層を露出させた。そして、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層の露出面が、内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)と接合するように、樹脂シートを当該積層板の両面にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、100℃、圧力0.74MPaで30秒間圧着することにより行った。ラミネート処理後、樹脂シートから支持体を剥離した。そして樹脂組成物層の露出面に、CZ銅箔の処理面を、上記と同条件にてラミネート処理した。ラミネート処理の後、220℃、90分間の条件で樹脂組成物層を熱硬化させて硬化物(絶縁層)を形成した。このようにして、両面にCZ銅箔が積層された評価用基板を作製した。
【0250】
<誘電特性の評価>
評価用硬化物フィルムを用いて、誘電特性を評価した。
詳細には、評価用硬化物フィルムを、幅2mm、長さ80mmに切り出し、試験片を得た。得られた試験片について、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて、誘電率(Dk値)及び誘電正接(Df値)を測定した。3本の試験片について測定を行い(n=3)、その平均値を算出した。硬化物の誘電特性は、下記評価基準に従って評価した。
【0251】
誘電特性評価基準:
○:誘電率の平均値が3.0以下、かつ、誘電正接の平均値が0.0030以下を満たす(誘電特性に優れている)
×:誘電率の平均値及び誘電正接の平均値の一方又は双方が上記基準を満たさない(誘電特性に劣る)
【0252】
<熱特性(線熱膨張率:CTE)の評価>
評価用硬化物フィルムを用いて、熱特性を評価した。
詳細には、評価用硬化物フィルムを、幅5mm、長さ15mmに切り出し、試験片を得た。得られた試験片について、熱機械分析装置(リガク社製「Thermo Plus TMA8310」)を用いて、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定し、2回目の測定における25℃から80℃までの平均線熱膨張率(ppm/℃)を算出した。3本の試験片について測定を行い(n=3)、その平均値を算出した。硬化物の熱特性は、下記評価基準に従って評価した。
【0253】
熱特性評価基準:
○:線熱膨張率の平均値が40ppm/℃以下(熱特性に優れている)
×:線熱膨張率の平均値が40ppm/℃超(熱特性に劣る)
【0254】
<機械特性(最大点応力及び破断伸び)の評価>
評価用硬化物フィルムを用いて、機械特性を評価した。
詳細には、評価用硬化物フィルムを、ダンベル状1号形に切り出し、試験片を得た。得られた試験片について、オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて引張強度測定を行い、23℃における最大点応力と破断伸びを測定した。測定は、JIS K7127に準拠して実施した。測定を5回行い(n=5)、上位3点の平均値を算出した。硬化物の機械特性は、下記評価基準に従って評価した。
【0255】
機械特性評価基準:
○:最大点応力の平均値が90MPa以上、かつ、破断伸びの平均値が1.4%以上を満たす(機械特性に優れている)
×:最大点応力の平均値及び破断伸びの平均値の一方又は双方が上記基準を満たさない(機械特性に劣る)
【0256】
<導体密着性の評価>
評価用基板を用いて、導体密着性を評価した。
詳細には、作製した評価用基板を150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの切込みをいれた。そして、銅箔の一端を剥がして後記引っ張り試験機に付属のつかみ具で掴み、室温(常温)中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mm引き剥がした時の荷重[kgf/cm]を測定した。測定には、引っ張り試験機(ティー・エス・イー社製オートコム万能試験機「AC-50C-SL」)を使用した。測定は日本工業規格JIS C6481に準拠して行った。測定の結果得られる荷重の値を、以下、「導体密着強度」という。導体密着性は、下記評価基準に従って評価した。
【0257】
導体密着性評価基準:
○:導体密着強度の値が0.50kgf/cm以上(導体密着性に優れている)
×:導体密着強度の値が0.50kgf/cm未満(導体密着性に劣る)
【0258】
<溶融粘度の測定>
実施例及び比較例で作製した樹脂シートの樹脂組成物層について、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を使用して溶融粘度を測定した。試料樹脂組成物1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定温度間隔2.5℃、振動1Hz、歪み5degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、120℃での溶融粘度を測定した。樹脂組成物の溶融粘度は、下記評価基準に従って評価した。
【0259】
溶融粘度評価基準:
○:溶融粘度の値が2500poise未満(樹脂フロー性に優れている)
×:溶融粘度の値が2500poise以上(樹脂フロー性に劣る)
【0260】
<合成例1>(ポリイミド樹脂1の合成)
環流冷却器を連結した水分定量受器、窒素導入管、及び攪拌器を備えた、500mLのセパラブルフラスコを用意した。このフラスコに、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)20.3g、γ-ブチロラクトン200g、トルエン20g、及び、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダン29.6gを加えて、窒素気流下で45℃にて2時間攪拌して反応を行った。次いで、この反応溶液を昇温し、約160℃に保持しながら、窒素気流下で縮合水をトルエンとともに共沸除去した。水分定量受器に所定量の水がたまっていること、及び、水の流出が見られなくなっていることを確認した。確認後、反応溶液を更に昇温し、200℃で1時間攪拌した。その後、冷却して、1,1,3-トリメチルインダン骨格を有するポリイミド樹脂を含むポリイミド溶液(不揮発分20質量%)を得た。得られたポリイミド樹脂は、下記式(X1)で表される繰り返し単位及び下記式(X2)で示す繰り返し単位を有していた。また、前記のポリイミド樹脂の重量平均分子量は、12,000であった。
【0261】
【化30】
【0262】
【化31】
【0263】
-実施例1-1乃至1-10、参考例1-1、比較例1-1乃至1-3-
以下、(B)成分として(B1)成分を使用した態様について、実施例及び比較例を示す。
【0264】
[実施例1-1]
(1)樹脂組成物の調製
(B)成分としてのマレイミド化合物b1-1(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-3000J」)10部、(A)成分としてのベンゾシクロブテン樹脂a(ダウケミカル社製「CYCLOTENE3022」;数平均分子量:390、不揮発成分35質量%のメシチレン溶液)28.6部(不揮発成分として10部)を、メチルエチルケトン(MEK)10部に撹拌しながら加熱溶解させた。
【0265】
なお、マレイミド化合物b1-1(「BMI-3000J」)は、下記構造式で示される化合物である。式中、nは1~10の整数である。
【0266】
【化32】
【0267】
得られた溶液を室温にまで冷却した。その後、当該溶液に、(D)成分としての硬化性樹脂d1(三菱ガス化学社製「OPE-2St」(オリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂);数平均分子量:1200、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)29.2部(不揮発成分として19部)、(C)成分としての無機充填材c1(信越化学工業社製アミン系シランカップリング剤「KBM573」で表面処理されたアドマテックス社製の球形シリカ「SO-C2」(平均粒径:0.5μm、比表面積:5.8m/g))60部、(E)成分としての高分子量成分e1(三菱ケミカル社製「YX6954BH30」;不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液、不揮発成分の重量平均分子量:35000)3.3部(不揮発成分として1部)、(F)成分としての硬化促進剤(日油社製「パーヘキシル(登録商標)D」)0.05部を添加し、混合し、さらに、高速回転ミキサーで均一に分散した。これにより、(A)~(F)成分を含有する樹脂組成物のワニスを調製した。
【0268】
(2)樹脂シートの作製
支持体として、一方の主面をアルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」;厚み38μm、軟化点130℃、以下「離型PET」ということがある。)を用意した。
【0269】
上記(1)で調製した樹脂組成物のワニスを、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるよう、離型PETの離型処理面上にダイコーターにて均一に塗布し、90℃で3分間乾燥した。これにより、支持体と該支持体上に設けられた樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
次いで、樹脂組成物層の露出面(離型PETと接合していない面)に、保護フィルムとしてのポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)を、その粗面が樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、該樹脂組成物層上に設けられた保護フィルムとを備える樹脂シートを得た。
【0270】
[実施例1-2]
1)ベンゾシクロブテン樹脂aの配合量(不揮発成分換算)を10部から25部に変更し、2)マレイミド化合物b1-1の配合量を10部から5部に変更し、3)硬化性樹脂d1の配合量(不揮発成分換算)を19部から9部に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0271】
[実施例1-3]
1)ベンゾシクロブテン樹脂aの配合量(不揮発成分換算)を10部から20部に変更し、2)無機充填材c1の配合量を60部から40部に変更し、3)硬化性樹脂d1の配合量(不揮発成分換算)を19部から29部に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0272】
[実施例1-4]
無機充填材c1を無機充填材c2(信越化学工業社製アミン系シランカップリング剤「KBM573」で表面処理されたデンカ社製の球形シリカ「UFP-30」(平均粒径:0.3μm、比表面積30.7m/g))に変更した以外は、実施例1-3と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0273】
[実施例1-5]
マレイミド化合物b1-1をマレイミド化合物b1-2(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-1700」)に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0274】
なお、マレイミド化合物b1-2(「BMI-1700」)は、下記構造式で示される化合物である。式中、nは1~10の整数である。
【0275】
【化33】
【0276】
[実施例1-6]
マレイミド化合物b1-1をマレイミド化合物b1-3(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-1500」)に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0277】
なお、マレイミド化合物b1-3(「BMI-1500」)は、下記構造式で示される化合物である。式中、nは1~10の整数である。
【0278】
【化34】
【0279】
[実施例1-7]
マレイミド化合物b1-1をマレイミド化合物b1-4(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-689」)に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0280】
なお、マレイミド化合物b1-4(「BMI-689」)は、下記構造式で示される化合物である。
【0281】
【化35】
【0282】
[実施例1-8]
高分子量成分e1を高分子量成分e2(合成例1で合成したポリイミド樹脂1)に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0283】
[実施例1-9]
硬化性樹脂d1を硬化性樹脂d2(SABIC社製「SA9000-111」(数平均分子量1850~1950))に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0284】
[実施例1-10]
1)硬化性樹脂d1の配合量(不揮発成分換算)を19部から14部に変更し、2)エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000」、ビフェニル型エポキシ樹脂)2部、硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル系硬化剤、固形分65質量%のトルエン溶液)4.6部(不揮発成分として3部)、及び硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.03部を配合した以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0285】
[参考例1-1]
1)ベンゾシクロブテン樹脂aを配合せず、2)マレイミド化合物b1-1の配合量を10部から30部に変更し、3)硬化性樹脂d1の配合量(不揮発成分換算)を19部から9部に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0286】
[比較例1-1]
1)マレイミド化合物b1-1を配合せず、2)ベンゾシクロブテン樹脂aの配合量(不揮発成分換算)を10部から30部に変更し、3)硬化性樹脂d1の配合量(不揮発成分換算)を19部から9部に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0287】
[比較例1-2]
マレイミド化合物b1-1をマレイミド化合物b’(ケイアイ化成社「BMI-70」、ビス(3-エチル-5メチル-4-マレイミドフェニル)メタン)に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0288】
[比較例1-3]
1)無機充填材c1を配合せず、2)ベンゾシクロブテン樹脂aの配合量(不揮発成分換算)を10部から39部に変更し、3)マレイミド化合物b1-1の配合量を10部から35部に変更し、4)硬化性樹脂d1の配合量(不揮発成分換算)を19部から25部に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0289】
実施例1-1乃至1-10、参考例1-1、比較例1-1乃至1-3の結果を表1に示す。
【0290】
【表1】
【0291】
-実施例2-1乃至2-7、参考例2-1、比較例2-1乃至2-3-
以下、(B)成分として(B2)成分を使用した態様について、実施例及び比較例を示す。
【0292】
[実施例2-1]
(1)樹脂組成物の調製
(B)成分としてのマレイミド化合物b2-1(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、不揮発成分率70%のMEK/トルエン混合溶液)28.6部(不揮発成分として20部)、(A)成分としてのベンゾシクロブテン樹脂a(ダウケミカル社製「CYCLOTENE3022」;数平均分子量:390、不揮発成分35質量%のメシチレン溶液)28.6部(不揮発成分として10部)を、メチルエチルケトン(MEK)10部に撹拌しながら加熱溶解させた。
【0293】
なお、マレイミド化合物b2-1(「MIR-3000-70MT」)は、下記構造式で示される化合物である。式中、e1は1~100の整数である。
【0294】
【化36】
【0295】
得られた溶液を室温にまで冷却した。その後、当該溶液に、(D)成分としての硬化性樹脂d1(三菱ガス化学社製「OPE-2St」(オリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂);数平均分子量:1200、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)13.8部(不揮発成分として9部)、(C)成分としての無機充填材c1(信越化学工業社製アミン系シランカップリング剤「KBM573」で表面処理されたアドマテックス社製の球形シリカ「SO-C2」(平均粒径:0.5μm、比表面積:5.8m/g))60部、(E)成分としての高分子量成分e1(三菱ケミカル社製「YX6954BH30」;不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液、不揮発成分の重量平均分子量:35000)3.3部(不揮発成分として1部)、(F)成分としての硬化促進剤(日油社製「パーヘキシル(登録商標)D」)0.05部を添加し、混合し、さらに、高速回転ミキサーで均一に分散した。これにより、(A)~(F)成分を含有する樹脂組成物のワニスを調製した。
【0296】
(2)樹脂シートの作製
上記(1)で調製した樹脂組成物のワニスを用いて、実施例1-1と同様にして樹脂シートを作製した。
【0297】
[実施例2-2]
1)ベンゾシクロブテン樹脂aの配合量(不揮発成分換算)を10部から25部に変更し、2)マレイミド化合物b2-1の配合量(不揮発成分換算)を20部から10部に変更し、3)硬化性樹脂d1の配合量(不揮発成分換算)を9部から4部に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0298】
[実施例2-3]
1)ベンゾシクロブテン樹脂aの配合量(不揮発成分換算)を10部から20部に変更し、2)無機充填材c1の配合量を60部から40部に変更し、3)硬化性樹脂d1の配合量(不揮発成分換算)を9部から19部に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0299】
[実施例2-4]
無機充填材c1を無機充填材c2(信越化学工業社製アミン系シランカップリング剤「KBM573」で表面処理されたデンカ社製の球形シリカ「UFP-30」(平均粒径:0.3μm、比表面積30.7m/g))に変更した以外は、実施例2-3と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0300】
[実施例2-5]
高分子量成分e1を高分子量成分e2(合成例1で合成したポリイミド樹脂1)に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0301】
[実施例2-6]
硬化性樹脂d1を硬化性樹脂d2(SABIC社製「SA9000-111」(数平均分子量1850~1950))に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0302】
[実施例2-7]
1)マレイミド化合物b2-1の配合量(不揮発成分換算)を20部から15部に変更し、2)エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000」、ビフェニル型エポキシ樹脂)2部、硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル系硬化剤、固形分65質量%のトルエン溶液)4.6部(不揮発成分として3部)、及び硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.03部を配合した以外は、実施例2-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0303】
[参考例2-1]
1)ベンゾシクロブテン樹脂aを配合せず、2)マレイミド化合物b2-1の配合量(不揮発成分換算)を20部から30部に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0304】
[比較例2-1]
1)マレイミド化合物b2-1を配合せず、2)ベンゾシクロブテン樹脂aの配合量(不揮発成分換算)を10部から20部に変更し、3)硬化性樹脂d1の配合量(不揮発成分換算)を9部から19部に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0305】
[比較例2-2]
マレイミド化合物b2-1をマレイミド化合物b’(ケイアイ化成社「BMI-70」、ビス(3-エチル-5メチル-4-マレイミドフェニル)メタン)に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0306】
[比較例2-3]
1)無機充填材c1を配合せず、2)ベンゾシクロブテン樹脂aの配合量(不揮発成分換算)を10部から39部に変更し、3)マレイミド化合物b2-1の配合量(不揮発成分換算)を20部から35部に変更し、4)硬化性樹脂d1の配合量(不揮発成分換算)を9部から25部に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、樹脂組成物を調製し、樹脂シートを作製した。
【0307】
実施例2-1乃至2-7、参考例2-1、比較例2-1乃至2-3の結果を表2に示す。
【0308】
【表2】