(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】転写装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240814BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G03G15/16 101
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2020120203
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇井 洋之
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢一
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200323(JP,A)
【文献】特開2010-139955(JP,A)
【文献】特開2016-148708(JP,A)
【文献】特開2002-268495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成される記録媒体の種類に応じて、像担持体の回転方向において前記像担持体と転写ローラーとの当接位置を変更する当接位置変更部と、
前記当接位置変更部と独立して動作可能であり、前記像担持体を押圧する押圧部材の押圧力を変更することによって、前記像担持体と前記転写ローラーとの当接圧を変更する当接圧変更部と、
を備え
、
前記押圧部材は、第1の押圧部材と第2の押圧部材と、を有し、
前記当接圧変更部は、前記記録媒体の種類が凹凸紙である場合、前記第1の押圧部材で前記像担持体を押圧し、前記記録媒体の種類が凹凸紙以外である場合、前記第1の押圧部材および前記第2の押圧部材で前記像担持体を押圧するとともに、前記転写ローラーの軸を保持し、前記像担持体の軸方向における両側に対向する可動側板を備え、
前記可動側板は、前記第2の押圧部材の押圧を解除する押圧解除部を備える、
転写装置。
【請求項2】
前記当接位置変更部は、カムの回転角度に応じて前記可動側板を移動させることにより、前記転写ローラーの位置を変更する、
請求項
1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記当接位置変更部は、前記可動側板の移動に応じて、当該可動側板を前記像担持体から離間させる、
請求項2に記載の転写装置。
【請求項4】
前記可動側板および前記押圧解除部は、互いに独立的に移動する、
請求項
1から3の何れか一項に記載の転写装置。
【請求項5】
前記可動側板は、黒色画像以外の色の画像を転写する前記転写ローラーの軸を保持し、
前記当接位置変更部は、モノクロ印刷の実行時に、前記可動側板を前記像担持体から離間させる、
請求項
1から
4の何れか一項に記載の転写装置。
【請求項6】
前記当接圧変更部は、前記記録媒体の種類が凹凸紙である場合、前記押圧解除部を移動させて前記第2の押圧部材の前記押圧を解除することによって、黒色画像を転写する前記転写ローラー以外の前記転写ローラーの前記当接圧を変更する、
請求項
1から4の何れか一項に記載の転写装置。
【請求項7】
前記可動側板および前記押圧解除部は、同じ駆動源によって移動させられる、
請求項
1から4、6の何れか一項に記載の転写装置。
【請求項8】
前記可動側板を移動させる第1カムと、前記第1カムと同じ軸に設けられ前記押圧解除部を移動させる第2カムと、を有し、
前記第1カムおよび前記第2カムの回転角度に応じて前記可動側板および前記押圧解除部が互いに独立的に移動する、
請求項
1から4の何れか一項に記載の転写装置。
【請求項9】
前記記録媒体の種類が凹凸紙である場合、前記記録媒体の種類が凹凸紙以外である場合に比べて、前記黒色画像を転写する前記転写ローラーの前記当接圧を小さくする、
請求項
6に記載の転写装置。
【請求項10】
回転角度に応じて黒色画像を転写する前記転写ローラーを押圧する部材の押圧力を変更させるための第3カムを備える、
請求項
8に記載の転写装置。
【請求項11】
前記第3カムは、前記第1カムおよび前記第2カムと同じ軸に設けられている、
請求項
10に記載の転写装置。
【請求項12】
前記記録媒体の種類が凹凸紙以外である場合、前記押圧解除部が移動しないまま前記可動側板が移動し、
前記記録媒体の種類が凹凸紙である場合、前記可動側板と前記押圧解除部と前記黒色画像を転写する前記転写ローラーを押圧する部材とが移動することにより、前記黒色画像以外の色の画像を転写する前記転写ローラーの前記当接位置および前記当接圧を変更し、かつ、前記黒色画像を転写する前記転写ローラーの前記当接圧を変更する、
請求項
11に記載の転写装置。
【請求項13】
前記記録媒体の種類が凹凸紙である場合、前記第1カムにより前記可動側板を移動させて前記当接位置の変更を完了させた後、前記第2カムにより前記押圧解除部を移動させて前記当接圧の変更を完了させ、続いて前記第3カムにより前記黒色画像を転写する前記転写ローラーの前記当接圧を変更する、
請求項
12に記載の転写装置。
【請求項14】
前記当接圧変更部は、前記第2の押圧部材の抜けを規制する第2規制部材を押圧することで、前記第2の押圧部材による押圧力を前記転写ローラーに伝達させないようにする、
請求項
1に記載の転写装置。
【請求項15】
前記当接圧変更部は、さらに、前記第1の押圧部材の抜けを規制する第1規制部材を押圧することで、前記第1の押圧部材による押圧力を前記転写ローラーに伝達させないようにする、
請求項
14に記載の転写装置。
【請求項16】
請求項1から
15のいずれか一項に記載の転写装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体(像担持体)に形成したトナー像を中間転写ベルト(像担持体かつ中間転写体)に一次転写して、中間転写ベルト上のトナー像を用紙に二次転写する中間転写方式の画像形成装置が普及している。
【0003】
この画像形成装置においては、中間転写ベルトを介して対向して配置される感光体と一次転写ローラーの間の放電が原因で、画像不良が発生する場合がある。例えば、放電により電荷を失ったトナーが転写されないことによる白斑点(白プチ)や、放電により電荷の極性が逆転したトナーが下流の一次転写部で回収されることによる波状の色ムラ(さざ波)などの画像不良である。
【0004】
こうした画像不良を抑制するため、通常、画像形成装置では、一次転写ローラーを感光体に対して中間転写ベルトの移動方向の下流側になるようにずらして配置している。かかる配置において、
図1Aに示すように、一次転写ローラー422は所定の押圧力により中間転写ベルト421を押圧しているため、中間転写ベルト421が感光体ドラム413に巻き掛けられ、一次転写ニップ部N1が形成される。
【0005】
ところで、近年、このような画像形成装置において、エンボス紙やラフ紙などの表面に凹凸形状を有する用紙(凹凸紙)に画像を形成したいという要望がある。しかしながら、凹凸紙は、二次転写時にその凹部にトナーが到達しにくく、通常の用紙に比べて二次転写性が悪化することが知られている。
【0006】
そこで、凹凸紙に画像形成する場合に、通常よりも一次転写ローラーの中間転写ベルトに対する押圧力を弱くすることで、中間転写ベルト上のトナーをベルトから剥がれやすくさせ、凹凸紙の凹部での二次転写性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一次転写ローラーの押圧力を弱くすると、上述したような、一次転写ローラーが感光体に対して中間転写ベルトの移動方向の下流側になるようにずらした配置では、
図1Bに示すように、中間転写ベルト421のテンションにより一次転写ローラー422が押し返されて一次転写ニップ部N1が形成されず、一次転写性が著しく落ちるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、中間転写方式の画像形成装置において、用紙の種類に関わらず、転写性を良好に保つことが可能な転写装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る転写装置は、
画像が形成される記録媒体の種類に応じて、像担持体の回転方向において前記像担持体と転写ローラーとの当接位置を変更する当接位置変更部と、
前記当接位置変更部と独立して動作可能であり、前記像担持体を押圧する押圧部材の押圧力を変更することによって、前記像担持体と前記転写ローラーとの当接圧を変更する当接圧変更部と、
を備え、
前記押圧部材は、第1の押圧部材と第2の押圧部材と、を有し、
前記当接圧変更部は、前記記録媒体の種類が凹凸紙である場合、前記第1の押圧部材で前記像担持体を押圧し、前記記録媒体の種類が凹凸紙以外である場合、前記第1の押圧部材および前記第2の押圧部材で前記像担持体を押圧するとともに、前記転写ローラーの軸を保持し、前記像担持体の軸方向における両側に対向する可動側板を備え、
前記可動側板は、前記第2の押圧部材の押圧を解除する押圧解除部を備える。
【0011】
本発明に係る画像形成装置は、上記の転写装置を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、中間転写方式の画像形成装置において、用紙の種類に関わらず、転写性を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、中間転写方式の画像形成装置における従来の問題点を説明する図である。
【
図2】本実施の形態における画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図3】本実施の形態の画像形成装置における主要な機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4Aは本実施の形態における第1のニップ位置及びニップ圧を説明する図、
図4Bは
図4Aの状態からニップ圧を弱くした場合の問題点を説明する図、
図4Cは本実施の形態における第2のニップ位置及びニップ圧を説明する図である。
【
図5】本実施の形態における中間転写ユニットの全体概要を説明するための斜視図である。
【
図6】
図5中の左側に位置する側板等の構成を説明するための一部切り欠き図である。
【
図7】本実施の形態における当接圧変更部の構成を透視的に示す図である。
【
図8】当接圧変更部の動作等を説明するための斜視図である。
【
図9】複数のカム等の回転位置を説明する図であり、
図9Aは離間モードまたはモノクロモード時の状態を説明する図、
図9Bは通常圧着時の状態を示す図、
図9Cは凹凸紙の印刷モード時の状態を示す図である。
【
図10】
図10Aおよび
図10Bは、黒色(K)用の一次転写ローラーのニップ圧を調整する機構について説明する図である。
【
図11】3つのカムの回転位置と当接圧等の関係を説明するための遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図3は、本実施の形態における画像形成装置1の制御系の主要部を示す。
【0016】
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙(記録媒体)に二次転写することにより、トナー像を形成する。
【0017】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0018】
図3に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60および制御部100等を備える。
【0019】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0020】
本実施の形態において、制御部100は、後述する中間転写ユニット42とともに、本発明の「転写装置」を構成する。また、制御部100は、後述する可動側板430等の機構とともに、本発明の「当接位置変更部」を構成する。
【0021】
ここで、「当接位置変更部」は、画像が形成される用紙(記録媒体)の種類に応じて、中間転写ベルト421(像担持体)の回転方向において中間転写ベルト421と一次転写ローラー422との当接位置を変更する機能(適宜、
図4A~
図4Cを参照)であり、その詳細については後述する。
【0022】
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙にトナー像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0023】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0024】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0025】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0026】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0027】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、記憶部72内の階調補正データ(階調補正テーブルLUT)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0028】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0029】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。
図2では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0030】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
【0031】
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0032】
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度(線速度)で回転させる。
【0033】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0034】
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0035】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるクリーニング部材としてのドラムクリーニングブレード(以下、単にクリーニングブレードと称する)等を有する。ドラムクリーニング装置415は、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーをクリーニングブレードによって除去する。
【0036】
中間転写ユニット42は、像担持体としての中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0037】
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0038】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される(
図1Aで上述した一次転写ニップ部N1を参照)。
【0039】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0040】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0041】
その後、用紙が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙の裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙に静電的に転写される。トナー像が転写された用紙は定着部60に向けて搬送される。
【0042】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用してもよい。
【0043】
定着部60は、用紙の定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙の裏面(定着面の反対の面)側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙を狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0044】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙を定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙にトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。また、定着器Fには、エアを吹き付けることにより、定着面側部材から用紙Sを分離させるエア分離ユニット60Dが配置されている。
【0045】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量(剛度)やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー、用紙の両面に画像形成するための両面搬送経路等を有する。
【0046】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0047】
ところで、このような中間転写方式の画像形成装置1において、用紙Sとして表面に凹凸形状を有する粗い紙(エンボス紙やラフ紙など、以下は総称して「凹凸紙」という)に画像を形成したいという要望がある。一方、凹凸紙は、二次転写時にその凹部にトナーが到達しにくく、通常紙に比べて二次転写性が悪化する場合が多い。
【0048】
そこで、凹凸紙に画像形成する場合に、一次転写ローラー422の中間転写ベルト421に対する押圧力を通常よりも弱くすることで、中間転写ベルト421上のトナーを中間転写ベルト421から剥がれやすくさせ、凹凸紙の凹部での二次転写性を向上させる技術が提案されている。
【0049】
ここで、
図4Aは、通常の用紙Sに画像を形成する場合における一次転写ニップ部N1の位置および押圧状態をやや誇張して示している。
図4Aに示すように、上述した白プチやさざ波などの画像不良の発生を出来るだけ防止する観点から、各々の一次転写ローラー422は、対応する感光体ドラム413に対して中間転写ベルト421の移動方向の下流側になるようにずらして配置される。
【0050】
また、
図4A中、各々の一次転写ローラー422が押圧部材(この例ではコイルばね)により押圧される押圧力(ニップ圧または当接圧)を黒矢印で示している。
図4Aに示す設定例では、各々の一次転写ローラー422は、一次転写ニップ部N1を保持できるだけの十分な押圧力(ニップ圧)で押圧されている。一次転写ニップ部N1をこのような設定とした場合、通常紙に対するトナー像の一次転写性および二次転写性の両方を確保することができる。
【0051】
一方、
図4Aに示すような一次転写ニップ部N1の設定状態では、中間転写ベルト421に一次転写されたトナー像の付着力が強くなる、言い換えるとトナー像が中間転写ベルト421から剥がれにくくなる。このため、画像形成される用紙Sが凹凸紙である場合、二次転写ニップ(すなわち中間転写ベルト421と二次転写ローラー424とのニップ)での凹凸紙(記録媒体)への二次転写性が悪くなる。
【0052】
かかる問題に対処するため、
図4Bに示すように、一次転写ローラー422の中間転写ベルト421に対する押圧力(当接圧)を通常よりも弱く設定することが考えられる。なお、
図4B中、各々の一次転写ローラー422がコイルばねにより付勢(押圧)される押圧力(
図4Aの設定例よりも弱い当接圧)をドット入り矢印で示しており、後述する
図4C中の矢印も同様である。
【0053】
図4Bに示すような設定とした場合、
図4Aで上述した設定と比較して、中間転写ベルト421に一次転写されたトナー像の付着力が弱くなるので、中間転写ベルト421上のトナーが中間転写ベルト421から剥がれやすくなる。
【0054】
しかしながら、このように一次転写ローラー422の押圧力を弱くすると、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に対して中間転写ベルト421の移動方向の下流側になるようにずらした配置では、
図1B及び
図4Bに示すように、中間転写ベルト421のテンションにより一次転写ローラー422が押し返されて一次転写ニップ部N1が形成されなくなる。この場合、中間転写ベルト421から凹凸紙への二次転写性は確保できても、感光体ドラム413から中間転写ベルト421への一次転写性が著しく落ちるという問題が発生する。
【0055】
この問題を解決するためには、
図4Cに示すように、一次転写ローラー422の中間転写ベルト421に対する押圧力を弱くし、かつ、一次転写ニップ部N1すなわち中間転写ベルト421を介した感光体ドラム413との密着性を維持するために、各々の一次転写ローラー422の位置を上昇させる必要がある。
【0056】
かくして、本発明者らが実験した結果、
図4Cに示すような一次転写ニップ部N1の設定状態によれば、凹凸紙に対しては、一次転写性及び二次転写性の両方を確保することができ、かつ、上述した白プチやさざ波が目立たないように印刷できることが分かった。反面、
図4Cに示すような一次転写ニップ部N1の設定状態は、通常紙に対しては、白プチやさざ波などの画像不良が目立ってしまうことが改めて確認された。
【0057】
さらに、本発明者らが種々の実験を行った結果、凹凸紙に対して一次転写性及び二次転写性の両方を確保することができるニップ位置(一次転写ローラー422の上下方向における位置)は、ある程度の幅(範囲)があることも確認された。
【0058】
具体的には、
図4Cに示す例では、感光体ドラム413の図示しない軸(回転中心)に対し、一次転写ローラー422の図示しない軸(回転中心)が水平に並ぶ位置関係となっている。一方、凹凸紙に対して一次転写性及び二次転写性の両方を確保することができるニップ位置(言い換えると一次転写ローラー422の回転中心位置)は、
図4Cに示す位置よりも多少低い位置(または多少高い位置)でもよいことが確認された。
【0059】
次に、本発明者らは、ニップ位置を変更するための具体的構成すなわち、各々の一次転写ローラー422を、通常紙に画像形成を行うための第1のニップ位置(
図4Aに参照される通常位置または初期位置)と、凹凸紙に画像形成を行うための第2のニップ位置(
図4Cに参照される上方位置)と、の間で往復移動できる移動機構の構成を、種々の観点から検討した。かかる移動機構は、本発明における「当接位置変更部」の機械的な構成に対応する。
【0060】
具体的には、本発明者らは、「当接位置変更部」として、複数の一次転写ローラー422の軸を保持する部材を可動側板に取り付けて、一対の可動側板を略上下方向に往復移動させる構成を案出した。かかる構成によれば、複数の一次転写ローラー422のニップ位置を一度に切り替えることができる。
【0061】
また、本発明者らは、上記の「当接位置変更部」の構成を基盤としつつ、一次転写ニップ部N1のニップ位置の変更(一次転写ローラー422の上下移動)に連動してニップ圧(すなわち一次転写ローラー422を押圧する押圧力)を変更する機構について設計および検討した。
【0062】
しかしながら、上記のようにニップ位置の変更とニップ圧の変更とを連動させる機構とした場合、言い換えると、像担持体(この例では感光体ドラム413および中間転写ベルト421)と一次転写ローラー422との当接位置に応じてニップ圧(当接圧)を変更する構成の場合、以下のような問題があることが分かった。
【0063】
すなわち、ニップ位置とニップ圧(像担持体と一次転写ローラー422との当接圧)とを連動させる機構を採用した場合、両者が一体不可分的に変化することから、ニップ位置とニップ圧(押圧力)の各々を個別に微調整することが難しくなり、実際のメンテナンス時に柔軟な調整をし難いことが分かった。
【0064】
加えて、上述のような一対の可動側板の位置移動に従ってニップ圧(当接圧)の強さを変える機構を実現しようとすると、以下のような問題があることが分かった。
【0065】
すなわち、一対の可動側板の位置(ニップ位置)に応じてニップ圧(当接圧)を変更する機構は、複雑な機構になりやすく、かかる機構をできるだけ簡素な構成で実現しようとすると、可動側板の移動量が大きくなり、転写装置全体の大型化を招く問題がある。
【0066】
さらに、カラー印刷時に使用される黒色以外のカラー色(この例ではYMC三色)用の一次転写ローラー422の位置および押圧力調整用の機構と、モノクロ印刷時に使用される黒色(K)用の一次転写ローラー422の位置および押圧力調整用の機構と、は別個に設けることが望ましいと考えられる。
【0067】
一方、上述の機構をYMC三色用と黒色(K)用とで別個に設けた場合、かかる機構をYMC三色用と黒色(K)用とで別個に分けて構成することになる。また、YMCの三色用および黒色(K)用の2種の機構を別々に駆動させるためには、普通に考えれば、独立した2つの駆動源(モーター等)が必要となる。しかしながら、2つの駆動源を使用する場合、装置の大型化、重量増加、消費電力の増大化等を招く。
【0068】
本発明者らは、上述のような種々の問題に対処すべく鋭意検討を重ねた結果、以下のような構成を案出するに至った。
【0069】
本実施の形態では、感光体ドラム413に対する一次転写ローラー422の押圧力(当接圧)を変更する部品と、感光体ドラム413に対する一次転写ローラー422の当接位置を変更する部品とを別々に備え、単一の駆動源(モーター)からの駆動力伝達により、各々の部品が別個独立的に動作する構成とする。
【0070】
ここで、駆動力伝達の機構の一具体例としては、同一の軸(カム軸)上に複数のカムを並べるように設け、駆動源の駆動力をカム軸に伝達して複数のカムを一度に回転させる。そして、各々のカムによって対応する部品を押圧する(例えば押し上げる)ことにより、感光体ドラム413に対する一次転写ローラー422の押圧力(当接圧)を変更する部品と、感光体ドラム413に対する一次転写ローラー422の当接位置を変更する部品と、を別個に(例えばカム軸が一周する間の異なる角度(位相)ないしタイミングで)移動させる。
【0071】
このように、感光体ドラム413に対する一次転写ローラー422の当接位置の変更と、感光体ドラム413に対する一次転写ローラー422の押圧力(当接圧)の変更と、を互いに異なる部品の移動を通じて独立的に行う構成とすることにより、上記の当接位置の微調整と押圧力の微調整を別個に且つ容易に行うことができる。
【0072】
また、上記のような構成とすることにより、当接位置および押圧力(当接圧)の切り替えを行う機構が専有する空間(スペース)を縮小させることができ、転写装置(ユニット)ひいては画像形成装置1の装置本体の小型化を図ることできる。
【0073】
次に、
図5以下を参照して、上述した構成のより具体的な内容を説明する。
【0074】
図5は、本実施の形態における画像形成装置1の中間転写ユニット42の主要部を抽出して示す斜視図である。なお、理解を容易にするため、
図5では、中間転写ベルト421の図示を省略している。また、
図5中の右側が装置の奥側(
図2の紙面奥側)を示し、
図5中の左側が装置の手前側(
図2の紙面手前側)を示す。本実施の形態において、上述した制御部100および中間転写ユニット42は、本発明の「転写装置」に対応する。
【0075】
図5を参照すると、本実施の形態の中間転写ユニット42は、画像形成装置1の前奥方向の両側に配置される一対の固定側板400の各々の内側に、可動側板430が移動可能に組み付けられている。
【0076】
ここで、固定側板400,400は、中間転写ベルト421の幅方向のサイズよりも若干広い間隔で略平行に配置されている。なお、固定側板400同士を連結して、かかる平行状態を維持(固定)するため、固定側板400,400の内面には、複数の長尺状の連結部材(図示せず)が、一次転写ローラー422等と平行に設けられている。
【0077】
かかる固定側板400,400は、中間転写ユニット42全体を画像形成装置1の装置本体に対して着脱可能に固定する役割、中間転写ベルト421を回転可能に保持する役割、可動側板430を移動可能に保持する役割等を担う。
【0078】
固定側板400は、中間転写ベルト421を回転可能に保持するために、中間転写ベルト421を回転可能に支持する複数の支持ローラー423を回転可能に保持する(適宜、
図2を参照)。
【0079】
また、可動側板430を移動可能に保持するために、固定側板400の内面には、複数(この例では2個)の固定軸400aが立設(固定)されている(適宜、
図6を参照)。そして、固定側板400の各々の固定軸400aに可動側板430側の対応する溝部430aが組み付けられることにより、可動側板430が略上下方向に往復移動できるようになっている。
【0080】
一方、可動側板430には、黒色(K)以外の3種のカラー色(すなわちY,M,およびC)のトナー像(カラー画像)を担持する各々の感光体ドラム413に対向位置する3つの一次転写ローラー422(Y),422(M),および422(C)が回転可能に保持される。
【0081】
図5および
図6に示すように、本実施の形態では、軽量化および装置全体の小型化を図るため、可動側板430の奥行き(
図6中の左右方向の幅)は、固定側板400の奥行きの約半分に抑えられている。
【0082】
また、可動側板430の剛性を確保するために、可動側板430の奥行き方向における両端部および下端部は、可動側板430の内面側に屈曲したフランジ状をなしている。
【0083】
さらに、可動側板430の内面には、複数(この例では2個)の固定軸400bが立設(固定)されている。そして、これら固定軸400bに、押圧解除部450の対応するガイド溝450aが組み付けられることにより、押圧解除部450が略上下方向に往復移動できるようになっている。すなわち、可動側板430は、その内面に押圧解除部450を上下移動可能に備える。
【0084】
ここで、押圧解除部450は、像坦持体(この例では感光体ドラム413および中間転写ベルト421)に対する一次転写ローラー422の当接圧を変更する(後述するコイルばね442による押圧を解除する)役割を担う略棒状の外形を有する部材である。押圧解除部450の構成および動作等の詳細については後述する。
【0085】
さらにまた、可動側板430の内面における押圧解除部450の下方には、固定軸403aが立設(固定)され、かかる固定軸403aに、押圧解除部450を押し上げるための押し上げ部材403が回転可能に組み付けられている。
【0086】
なお、
図6では、固定軸403aおよび後述するカム軸401に対して、これら各軸(403a、401)に設けられた部材の抜け防止等の機能を有する板状の蓋材401aが取り付けられた状態を示している。一方、各軸(403a、401)に設けられた部材の状態を見やすくするため、後述する
図9A~
図9Cでは蓋材401aを取り外した状態として説明する。
【0087】
概して、本実施の形態では、一対の固定側板400,400に対向する可動側板430,430の位置を変える(可動側板430,430を略上下方向に移動させる)ことで、可動側板430側で保持されている一次転写ローラー422(Y),422(M),および422(C)と、対向する感光体ドラム413との当接位置(ニップ位置)が変わる。
【0088】
より詳細には、可動側板430の内面には、
図7で後述するブロック状の基材440Aが固定されており、かかる基材440Aによって、対応する一次転写ローラー422(Y),422(M),および422(C)の軸が、回転可能かつ中間転写ベルト421等を押圧する方向に付勢されるように保持されている。
【0089】
したがって、固定側板400に対する可動側板430の位置が変わる場合、基材440Aに保持されている一次転写ローラー422(Y),422(M),および422(C)の軸の位置が変わる(
図4Aおよび
図4Cを参照)。
【0090】
なお、固定側板400に対する可動側板430の位置が変わる場合、可動側板430に立設された固定軸400bの位置も変わる。
【0091】
これに対して、押圧解除部450は、後述する押し上げ部材403の先端側で押圧された場合(押し上げられる場合)に、可動側板430の位置に関わりなく移動する。したがって、本実施の形態では、固定側板400に対して、可動側板430と押圧解除部材450とが互いに独立して移動できるようになっている。
【0092】
なお、押圧解除部450は、可動側板430の固定軸400bによって押圧解除部450のガイド溝450aの上端または下端が押圧された場合も移動する。この限りにおいて、押圧解除部450は、可動側板430の移動に従って移動する。
【0093】
図6を参照してより詳しく説明すると、可動側板430には、かかる可動側板430の移動をガイドするガイド部材430-1が、上下方向に沿って複数(この例では2つ)配置され、可動側板430に固定されている。そして、可動側板430およびガイド部材430-1には、同一形状かつ上下および斜め方向に屈曲した形状の溝部430aが形成されている(
図8も参照)。
【0094】
また、上述のように、固定側板400の内面には複数(この例では2つ)の固定軸400aが固定されている。各々の固定軸400aは、上述した溝部430aの水平幅と略同等の太さを有し、固定側板400の内面から直交方向に伸びるように立設されている。
【0095】
かくして、可動側板430およびガイド部材430-1の溝部430aが対応する固定側板400の固定軸400aに組み付けられることにより、一対の可動側板430ひいては一次転写ローラー422(Y),422(M),および422(C)は、溝部430aに規定された形状に従った方向に移動可能な状態となる。
【0096】
このように、本実施の形態では、固定側板400の固定軸400a、可動側板430、およびガイド部材430-1は、本発明における「当接位置変更部」の一部をなす。そして、本実施の形態では、可動側板430の移動に応じて、可動側板430ひいては一次転写ローラー422(Y),422(M),および422(C)を、対応する一次転写ローラー422および中間転写ベルト421(像担持体)から離間させる構成を備える。
【0097】
なお、固定側板400に対して可動側板430が略上下方向に移動する場合、可動側板430に固定されている部材、例えば上述した固定軸400bおよび押圧解除部450を押し上げるための押し上げ部材403の軸部分も一体的に移動する。
【0098】
より具体的には、固定側板400に対して可動側板430が最も下の位置にある場合、言い換えると固定側板400の固定軸400aが溝部430aの最上位置に来た場合、一対の可動側板430ひいては一次転写ローラー422(Y),422(M),および422(C)は、対向する感光体ドラム413(Y)~(C)から離間してニップが解除された状態になる(適宜、
図4Bを参照)。
【0099】
かかる離間状態(ニップ解除状態)への移行は、制御部100の制御に基づき、モノクロ印刷時すなわち黒色(K)トナーのみで画像形成する場合、あるいはメンテナンスが行われる場合に実行され得る。なお、この離間状態は、
図9Aに示す状態から、自重で可動側板430および可動側板430に取り付けられた各部材が
図9A中の右斜め下方向に移動した状態が該当する。
【0100】
言い換えると、
図9Aは、各部の状態を誇張して示したものであり、後述するカム402-1~402-3等の位置を見やすくするために、可動側板430および可動側板430に組付けられた部材があたかも人手で上方に引き上げられたような状態となっている。また、
図9Aは、実際の離間状態における固定側板400に対する可動側板430等の水平方向への離間位置を明示するために、可動側板430等が固定側板400から図中の右側に退避した状態を示している(
図9Bまたは
図9Cも参照)。
【0101】
一方、固定側板400に対して可動側板430がある程度上の位置にある場合、言い換えると固定側板400の固定軸400aが溝部430aの傾斜部分よりも下の位置に来た場合、一対の可動側板430ひいては一次転写ローラー422(Y),422(M),および422(C)は、対向する像担持体(一次転写ローラー422(Y)~(C)および中間転写ベルト421)を押圧する状態になる(
図9Bおよび
図4Aを参照)。
【0102】
一方、
図5に示す例では、黒色(K)のトナー像(モノクロ画像)を担持する感光体ドラム413に対向位置する一次転写ローラー422(K)は、固定側板400の内面に固定されたブロック状の基材440A(
図7を参照)に取り付けられている。
【0103】
言い換えると、この例では、K(黒色)の画像の一次転写ニップ部N1を形成する一次転写ローラー422(K)を回転可能に保持する基材440Aは、可動側板430にではなく、固定側板400に固定されている。これに対して、YMC(3色)の各々の画像の一次転写ニップ部N1を形成する一次転写ローラー422(Y)~422(C)を回転可能に保持する基材440Aは、上述のように可動側板430に固定されている。
【0104】
このため、本実施の形態では、一次転写ローラー422(Y)、422(M)、422(C)は、可動側板430の移動動作に伴って一体的に移動して、
図4Aに示す通常用紙用の当接位置、
図4Bに示す当接解除状態、
図4Cに示す凹凸紙用の当接位置、さらには
図4Cに示す位置よりもさらに上方の位置である離間位置、の各位置に移動することができる。
【0105】
このように、本実施の形態では、YMCの3色用の感光体ドラム413に対向する各々(3つ)の一次転写ローラー422を、固定側板400に対して一度に(一括的に)移動させるために、一次転写ローラー422の軸を保持する基材440Aを、一まとまりの部材である可動側板430,430に固定させ、かかる一対の可動側板430,430を対向する固定側板400,400ひいては中間転写ユニット42に対して移動可能に構成する。
【0106】
かかる構成は、通常紙用に画像形成を行う
図4Aに示す第1のニップ位置(通常位置または初期位置)と、凹凸紙用に画像形成を行う
図4Cに示す第2のニップ位置(上方位置)と、の間で移動させる移動機構(当接位置変更部)の基盤となる。
【0107】
さらに、黒色(K)のトナー像のモノクロ印刷を行う場合、YMCの有色トナーは使用されないことから、制御部100は、モノクロ印刷の実行の際に、Y、M、Cの感光体ドラム413に対向する各々(3つ)の一次転写ローラー422を退避させる処理を行う。
【0108】
なお、本実施の形態では、感光体ドラム413(K)の軸(回転中心)に対する一次転写ローラー422(K)の軸(回転中心)の位置は、
図4Aに示す位置よりも高く、かつ、
図4Cで上述した位置よりも低い位置に設定されている。
【0109】
概して、感光体ドラム413(K)に関しては、基材440Aに対するローラー軸の位置(略水平方向に沿った位置)を変更することで、通常用紙用のニップ位置(当接位置)およびニップ圧、凹凸用紙用のニップ位置(当接位置)およびニップ圧、さらには当接解除位置(ニップ解除状態)の間の変更(切り替え)が行われる。
【0110】
次に、カラー画像用の一次転写ローラー422(Y)~422(C)を一括的に移動させる移動機構(当接位置変更部)の更なる詳細について説明する。
【0111】
図5中に点線で示すように、中間転写ユニット42の装置前側における固定側板400の外面には、可動側板430および後述する種々の部品を移動させるための単一の駆動源としてのモーター80が設けられている(適宜、
図3を参照)。
【0112】
かかるモーター80は、各々の一次転写ローラー422(Y)、422(M)、422(C)が保持された一対の可動側板430を上下方向に移動させてニップ位置(像担持体との当接位置)を変更するための駆動力を供給する。
【0113】
また、モーター80は、押圧解除部450を移動させて各々の一次転写ローラー422(Y)、422(M)、422(C)が保持された基材440A内の後述するばね441、442による押圧力(ニップ圧)を切り替えるための駆動力を供給する。
【0114】
加えて、モーター80は、最下段の感光体ドラム413に担持されたK(黒色)のトナー像を中間転写ベルト421上に一次転写する一次転写ローラー422(K)の当接圧(ニップ圧)等を切り替えるための駆動力を供給する。
【0115】
このように、単一のモーター80によって、可動側板430および押圧解除部450を含む種々の部品を移動させるようにした本実施の形態によれば、中間転写ユニット42ひいては画像形成装置1全体の軽量化および小型化を図ることができる。
【0116】
ここで、
図6は、可動側板430を略上下方向に移動させる機構(当接位置変更部)を説明するための図であり、凹凸用紙以外の用紙S(記録媒体)にカラー画像を形成するための通常ないしデフォルトの状態(適宜、
図9Bを参照)を示している。
【0117】
図5および
図6に示すように、固定側板400における可動側板430よりも下方側の領域には、一次転写ローラー422(Y,M,C,K)と平行かつ回転可能に軸支されたカム軸401を備える。このカム軸401は、上述したモーター80の駆動力が図示しないギアを通じて伝達されることで回転する。
【0118】
そして、カム軸401には、
図9等で後述する3組(3対)のカム402(402-1~402-3)が備えられている。
【0119】
概して、本実施の形態では、これらのうちの一組のカム(第1カム)は、一対の可動側板430を上方向に押し上げて、各々の一次転写ローラー422(Y)、422(M)、422(C)のニップ位置(像担持体との当接位置)を変更する役割を担う。
【0120】
また、他の一組のカム(第2カム)は、一対の押圧解除部450を移動(上昇)させて各々の一次転写ローラー422(Y)、422(M)、422(C)の押圧力(ニップ圧)を変更する役割を担う。
【0121】
さらに他の一組のカム(第3カム)は、黒色(K)のトナー像を中間転写ベルト421上に一次転写する一次転写ローラー422(K)を移動させて、そのニップ位置およびニップ圧を変更する役割を担う。
【0122】
このように、同軸上に複数のカムを設けて各々のカムが対応する部品を移動させる構成を備えた本実施の形態によれば、中間転写ユニット42ひいては画像形成装置1全体の小型化および軽量化を図ることができる。
【0123】
次に、
図7等を参照して、一次転写ローラー422の当接圧を変更する当接圧変更部440の構成について説明する。
図7は、黒色(K)用の一次転写ローラー422を保持する基材440A等の構成を示しているが、他の色の一次転写ローラー422を保持する構成も同様の構成を備えている。
【0124】
一方、
図8は、シアン色(C)用の一次転写ローラー422を保持する基材440Aを示している。なお、
図8では、内部構成の理解を容易にするため、固定側板400や後述する内側軸受け443およびコイルばね441を取り外し、可動側板430、一次転写ローラー422(C)を保持する基材440A、および押圧解除部450を抽出して示している。
【0125】
基材440Aは、可動側板430に固定される側とは反対側の領域が凹状に窪んでおり(適宜、
図8を参照)、かかる凹状の部位に内側軸受け443と、外側軸受け444と、が各々移動可能に配置されている。
【0126】
上記のうち、内側軸受け443は、一次転写ローラー422の軸の根元側を回転可能に保持する役割を担っており、
図7に示すように、円弧状に湾曲する軸保持面を備える。
【0127】
また、内側軸受け443は、
図7に参照されるように、上端側および下端側に各々凹状に伸びる溝部443aを備えており、これら溝部443aが基材440Aの内部側に突起するように伸びるレール(適宜、
図8を参照)に係合することにより、移動可能に組み付けられている。
【0128】
ここで、
図7に示すように、基材440A内には2つのコイルばね441および442が配置されている。そして、内側軸受け443は、上述した軸保持面とは反対側の面が基材440A内の内側に配置されたコイルばね441で押圧されることによって、
図7中の左方向に付勢される。
【0129】
ここで、コイルばね441は、後述するコイルばね442によりも径が大きく、付勢力が強いばねであり、本発明の「第1の押圧部材」に対応する。また、内側軸受け443は、コイルばね441に押圧されるとともに、コイルばね441の抜けを規制ないし防止する「第1規制部材」としての役割を有する。
【0130】
一方、外側軸受け444は、一次転写ローラー422の軸の先端側を補助的に押圧する役割を担っており、
図7および
図8に示すように、円弧状に突起する外面と、かかる外面に連続し一次転写ローラー422の軸の先端に当接する軸押圧部445(
図8を参照)と、を備える。
【0131】
また、外側軸受け444は、
図7に参照されるように、上端側および下端側に溝部444aを備えており、基材440Aの内部に突起するように形成されるレールに係合することにより、移動可能に組み付けられている。そして、外側軸受け444は、上述した軸保持面と反対側の面が、基材440A内に配置されたコイルばね442の押圧力によって、
図7中の左方向に付勢されている(
図8も参照)。
【0132】
この例では、コイルばね442は、上述したコイルばね441よりも径が小さく、付勢力が弱いばねであり、本発明の「第2の押圧部材」に対応する。また、外側軸受け444は、コイルばね442に押圧されるとともに、コイルばね442の抜けを規制ないし防止する「第2規制部材」としての役割を有する。
【0133】
概して、基材440Aに組み付けられた一次転写ローラー422は、通常は、コイルばね441および442という2つの押圧部材の力(ばね力)によって
図7および
図8中の左方向に付勢され、感光体ドラム413および中間転写ベルト421(像担持体)との間で1次転写ニップを形成する。
【0134】
そして、本実施の形態では、外側軸受け444が
図7および
図8中の右方向に押圧されることにより、軸押圧部445から一次転写ローラー422の軸の先端側に加えられるコイルばね442(第2の押圧部材)の押圧力が解除され、この結果、1次転写ニップのニップ圧(当接圧)が減少する。
【0135】
すなわち、本実施の形態では、一次転写ローラー422の軸を押圧する押圧部材(コイルばね441,442)の数を切り替えて押圧力(ばね力)を変更することによって、1次転写ニップのニップ圧(当接圧)を、凹凸用紙以外の印刷用の通常状態と、凹凸用紙の印刷用の弱い状態とに、切り替える。
【0136】
次に、外側軸受け444を
図7および
図8中の右方向に押圧する(外側軸受け444を強制的に移動させる)ための構成について説明する。
【0137】
図8を参照すると、基材440Aは、可動側板430の内面に固定されている。一方、押圧解除部材450は、上述のように、上下方向に伸びるガイド溝450aの形状に従って、可動側板430に対して上下方向に移動可能に組み付けられている。すなわち、押圧解除部450は、可動側板430の内面の側部(
図8中における左側で手前側に屈曲する側端面)に沿った上下方向に移動可能に設けられている。
【0138】
より具体的には、押圧解除部450は、複数の部材からなり上下方向に伸びる略棒状の部材であり、一次転写ローラー422(Y,M,C)を保持する各々の基材440Aに対応する位置に、テーパー状に突起する押圧部450bを備えている(
図6も参照)。
【0139】
そして、
図8に示す状態から押圧解除部450が徐々に上方に押し上げられた場合、押圧解除部450における押圧部450bの傾斜部分が外側軸受け444に当接し、外側軸受け444が
図8中の右方向にいわば強制的に移動させられる(適宜、
図9Cを参照)。かかる外側軸受け444の移動量は、対向する押圧部450bの厚み(突起量)が最大となったところで最大になる。
【0140】
一方、外側軸受け444が
図8中の右方向に移動した状態から押圧解除部450を上方に押し上げる力を解除した場合、押圧解除部450が自重で下方に下がり、この結果、外側軸受け444は、コイルばね442の押圧力により
図8に示す状態に戻る。
【0141】
かくして、本実施の形態によれば、押圧解除部450が可動側板430に対する上下方向に移動することによって、押圧部材(コイルばね441,442)押圧力(ばね力)を変更し、一次転写ローラー422(Y),422(M),および422(C)における一次転写ニップのニップ圧(当接圧)を切り替えることができる。
【0142】
次に、
図9A~
図9Cを参照して、上述したカム軸401上に配置された3つのカムの構成および動作について説明する。
【0143】
図9A~
図9Cに示すように、固定側板400に回転可能に軸支されたカム軸401には、3組(3対)のカム402-1、402-2、402-3が備えられている。
【0144】
上記のうち、最も外側に位置するカム402-1は、上述した可動側板430における下端のフランジ部に対向位置し、可動側板430を上方に押し上げる役割を担う。すなわち、カム402-1の本体部分で可動側板430が上方に押し上げられた場合(
図9B等を参照)、3つの一次転写ローラー422(Y,M,C)が上昇し、各々のニップ位置が変更する。
【0145】
かくして、上記のカム402-1は、可動側板430を移動させる役割を担うものであり、本発明の「第1カム」に対応するため、以下は第1カム402-1と称する。
【0146】
また、上記のうち、最も内側に位置するカム402-2は、可動側板430に取り付けられた押し上げ部材403に対向位置し、押し上げ部材403を介して押圧解除部450を上方に押し上げる役割を担う(
図9Cを参照)。
【0147】
上記のカム402-2は、押圧解除部450を移動させる役割を担うものであり、本発明の「第2カム」に対応するため、以下は第2カム402-2と称する。
【0148】
押し上げ部材403は、その回転中心となる軸403aが可動側板430に設けられており、押し上げ部材403先端側は、上述した押圧解除部450の下端面に対向している。
【0149】
本実施の形態では、第2カム402-2の本体部分によって押し上げ部材403の先端側および押圧解除部450が上方に押し上げられた場合(
図8を参照)、押圧解除部450の各々の押圧部450bは、外側軸受け444に当接した後、外側軸受け444をコイルばね442の押圧力に抗する方向(
図8中の右側)に移動させる。
【0150】
この動作により、外側軸受け444の軸押圧部445は、対応する一次転写ローラー422の軸の先端側から離間する(待避する)ことにより、一次転写ローラー422の軸に対するコイルばね442(第2押圧部材)の押圧力を伝達させないようにする。
【0151】
この結果、一次転写ローラー422を押圧する部材はコイルばね441(第1押圧部材)だけとなり、一次転写ニップのニップ圧(当接圧)が低くなる。かくして、上述した一連の動作により、トナー像を凹凸紙に転写させるのに好適なニップ圧(当接圧)への変更(切り替え)が完了する。
【0152】
なお、メンテナンス時に一次転写ニップの当接圧または当接位置を微調整する必要が生じた場合、例えば以下のような作業を行えばよい。
【0153】
一次転写ニップの当接圧の微調整を行う場合、現在使用中の第2カム402-2を、半径あるいはカム形状の異なるものに交換する。概して、第2カム402-2の半径を小さくした場合、押し上げ部材403の先端側および押圧解除部450の上方への押し上げ量が少なくなる。この場合、凹凸紙に印刷するモード(
図9C参照)において、ばね442(第2押圧部材)による押圧力を若干残すことで、一次転写ニップのニップ圧(当接圧)をそれまでよりも若干高めにすることができる。
【0154】
一方、上記とは逆に、より半径が大きい第2カム402-2に変更(交換)した場合、凹凸紙に印刷するモード(
図9C参照)において、ばね442(第2押圧部材)による押圧力ひいては一次転写ニップのニップ圧(当接圧)を一層小さくすることもできる。
【0155】
したがって、例えば耐久により、凹凸紙に印刷するモード(
図9C参照)における一時転写ニップのニップ圧が、全体的にやや不足またはやや過剰であるような場合、ニップ位置の変更を伴わずにニップ圧だけを微調整することができる。
【0156】
さらには、形状の異なる第2カム402-2に変更(交換)することにより、トナー像を凹凸紙に転写させるのに好適なニップ圧(当接圧)への変更(切り替え)が完了するタイミング(角度)を修正ないし微調整することもできる。
【0157】
一方、一次転写ニップの当接位置の微調整を行う場合、現在使用中の第1カム402-1を半径が異なるものに交換する。概して、第1カム402-1の半径を小さくした場合には可動側板430の上昇量が小さくなり、逆に大きくした場合には上昇量が大きくなる。
【0158】
したがって、例えば耐久により、凹凸紙に印刷するモード(
図9C参照)における一時転写ニップの形成位置が、基準位置(
図4C参照)から全体的に上または下に若干ずれているような場合、ニップ圧の変更を伴わずにニップ位置だけを微調整することができる。
【0159】
また、形状の異なる第1カム402-1に変更(交換)することにより、トナー像を凹凸紙に転写させるのに好適なニップ位置への変更(切り替え)が完了するタイミング(角度)を修正ないし微調整することもできる。
【0160】
このように、本実施の形態では、一次転写ニップのニップ位置を変更する機構(当接位置変更部)と、一次転写ニップのニップ圧(当接圧)を変更する機構(当接圧変更部)とを、互いに独立的な機構として構成した。かかる構成を備える本実施の形態によれば、一次転写ニップのニップ位置とニップ圧とを別個に調整することができ、また、どちらの調整作業も容易に行うことができる。
【0161】
すなわち、本実施の形態では、固定側板400に対して可動側板430を移動可能に設けるとともに、押圧解除部材450を可動側板430に設け、かつ押圧解除部材450を可動側板430と相対移動できるように構成した。
【0162】
かかる構成によれば、固定側板400に対して可動側板430が移動する際の、可動側板430に対する押圧解除部材450の移動量(相対移動量)を調整することで、可動側板430の移動態様(一次転写ローラー422の移動態様)に関わらず第2押圧ばね422の付勢力を別個に調整することができる。
【0163】
次に、
図10Aおよび
図10Bを参照して、黒色(K)用の一次転写ローラー422のニップ圧を調整する機構について説明する。
【0164】
図10Aおよび
図10Bは、
図9A~
図9Cに一部(上側の部分だけ)示す押圧ばね解除部材451の部分を抽出して示す斜視図および側面図である(適宜、
図5も参照)。以下、上述したYMC用の押圧ばね解除機構と区別するため、押圧ばね解除部材451を「黒色用押圧ばね解除部材451」と称する。
【0165】
図10Aに示す例では、黒色用押圧ばね解除部材451は、略円形の軸受け451cが部材中央に設けられており、かかる軸受け451cに軸460が挿通されることより、回転可能に軸支されている。
【0166】
また、黒色用押圧ばね解除部材451は、軸受け451cから下側に伸びる部材の先端側に、軸受けを押圧するための押圧部452を備えている。
【0167】
この押圧部452は、
図10Aおよび
図10Bに示すように、内側軸受け443の押圧面443b(
図7を参照)に対向位置する第1ばね押圧解除部452-1と、外側軸受け444の外面に対向位置する第2ばね押圧解除部452-2と、を備える。
【0168】
なお、
図10Aおよび
図10Bに示す黒色用押圧ばね解除部材451の状態(位置)は、
図4Aおよび
図9Bで上述した通常紙用の印刷モードに対応する。なお、黒色用押圧ばね解除部材451は、反対側の固定側板400にも同様に配置されている(適宜、
図5を参照)。
【0169】
かくして、
図10Aおよび
図9Bに示す通常紙用の印刷モードから凹凸紙用の印刷モードに移行する場合、制御部100の制御の下、モーター80が駆動されることにより、上述したカム軸401および3つのカム402(402-1~3)が一体的に図中の反時計方向に所定角度だけ回転する。
【0170】
かかるカム動作により、
図9Cに示すように、第1カム402-1が可動側板430を押し上げてニップ位置を変更する(上昇させる)とともに、第2カム402-2が押し上げ部材403の押し上げを通じて押圧解除部450を上昇させることで、ニップ圧を減少させる。かくして、YMCのカラー色用の一次転写ローラー422についての凹凸紙用の印刷モードへの移行(切り替え)が完了する。
【0171】
また、上記のカム動作により、
図9Cに示すように、第3カム402-3は、黒色用押圧ばね解除部材451の上部を
図9C中の左方向に押圧して移動させる。
【0172】
このとき、黒色用押圧ばね解除部材451は、
図10Aに示す軸460を中心に反時計方向に回転し、下側の押圧部452が
図10Aおよび
図10B中の右側に移動することで、以下の動作を行う。
【0173】
すなわち、黒色用押圧ばね解除部材451は、押圧部452における第2ばね押圧解除部452-2で外側軸受け444(第2押圧ばね規制部材)を押圧することにより、像担持体と黒色(K)用の一次転写ローラー422とのニップ圧(当接圧)を減少させる。
【0174】
かくして、モノクロ印刷画像(Kすなわち黒色)用の一次転写ローラー422についての凹凸紙用の印刷モードへの移行(切り替え)が完了する。
【0175】
総じて、本実施の形態における中間転写ユニット42は、凹凸紙用の印刷モードでは、YMCK(カラー画像)またはK(モノクロ画像)の両方、さらにはこれら5色を使ったフルカラーでのトナー像を印刷することができる。
【0176】
また、本実施の形態では、例えばメンテナンス時や装置の電源がオフになる場合、制御部100の制御の下、モーター80が駆動されることにより、上述したカム軸401および3つのカム402(402-1~3)が
図9Aの状態(回転角度)となるように回転する。
【0177】
このとき、黒色用押圧ばね解除部材451は、押圧部452における第2ばね押圧解除部452-2で外側軸受け444(第2押圧ばね規制部材)を押圧することにより、像担持体と黒色(K)用の一次転写ローラー422とのニップ圧(当接圧)を減少させる。
【0178】
また、黒色用押圧ばね解除部材451は、押圧部452における第1ばね押圧解除部452-1で押圧面443b(
図7を参照)を押圧して内側軸受け443ひいては黒色(K)用の一次転写ローラー422を強制的に移動させることにより、像担持体とのニップを解除させる。
【0179】
以下、カム軸401の回転に伴う各々のカム402-1~402-3および一次転写ニップの変更態様の一連の流れについて、
図11のカム曲線図および
図9A~
図9Cを参照して説明する。
【0180】
ここで、
図11は、上述したカム軸401上に並んで配置された3つのカム402-1~402-3の回転角に応じた押圧状態の一具体例を示す図である。
【0181】
図11中、縦軸は、カムの半径を示しており、縦軸の上方に行くほどカム半径ひいては対向する部材の移動量が大きくなる。
【0182】
一方、
図11中、横軸は、カム軸401の回転角を示しており、
図9Aに示す状態(0°の位置)からカム軸401が
図9(A~C)中の反時計方向に360°回転するまでの回転角を示す。
【0183】
かくして、
図9Aに示す各々のカム402-1~402-3の状態は、
図11中に「(1)HP」で示す点線矩形の回転角の範囲が対応する。
【0184】
かかるカム軸401の回転角(0°周辺)では、内側の第2カム402-2および外側の第1カム402-1は、対向する部材(すなわち押し上げ部材403および可動側板430)を押圧していない。
【0185】
この結果、可動側板430に保持されているYMC用の一次転写ローラー422は、
図9Aに示す状態から自重で溝部430aの形状に従って降下することにより、中間転写ベルト421から離間した状態となる(適宜、
図4Bおよび第2カム402-2および第1カム402-1に関する
図11中のカム角度0°におけるカム半径を参照)。
【0186】
一方、
図9Aに示す第3カム402-3は、最大径のカム半径となっており、対向する部材(黒色用押圧ばね解除部材451の上方の部位)を最大量で押圧している。
【0187】
したがって、黒色用押圧ばね解除部材451は、第2ばね押圧解除部452-2で外側軸受け444を押圧するとともに、第1ばね押圧解除部452-1で押圧面443b(
図7を参照)を押圧して内側軸受け443を強制的に移動させる。この結果、黒色(K)用の一次転写ローラー422も、中間転写ベルト421から離間した状態となる。
【0188】
次に、制御部100の制御の下、モーター80が駆動されることにより、上述したカム軸401および3つのカム402(402-1~3)が
図9Aの状態(回転角度)から反時計方向に若干回転すると、すべてのカム(402-1~3)のカム半径が最小となる(適宜、
図11中の「(2)モノクロ」の領域における各カムの半径を参照)。
【0189】
この結果、YMC用の一次転写ローラー422が中間転写ベルト421からの離間状態を維持したまま、黒色用押圧ばね解除部材451の押圧が解除されることにより、黒色用押圧ばね解除部材451の上述した押圧部452も、外側軸受け444および内側軸受け443のいずれも押圧しない状態となる。
【0190】
したがって、モノクロ(K単色)モードでは、黒色(K)用の一次転写ローラー422は、通常用紙用の当接力(押圧力)で像担持体に当接する。すなわち、黒色(K)用の一次転写ローラー422の一次転写ニップは、凹凸紙以外の用紙Sに黒色画像を印刷するためのニップ圧に設定される。
【0191】
かくしてこの例では、
図11中の「(2)モノクロ」の領域におけるカム角度50°~70°の領域(基準角度:60°)で、黒色画像のみのモノクロ印刷を安定的に実行することができる。
【0192】
続いて、制御部100の制御の下、モーター80が駆動されることにより、上述したカム軸401および3つのカム402(402-1~3)が
図11中の「(2)モノクロ」のカム角度(約60°)から「(3)カラー」のカム角度(基準角度:165°)まで反時計方向に回転する。
【0193】
上記カム角度への移行時に、
図9Bおよび
図11に参照されるように、可動側板430の底部が第1カム402-1に押し上げられることにより、カラー色(YMC)色用の一次転写ローラー422は、上述した溝部430aの形状に従って移動し、像担持体に当接して一次転写ニップを形成する。
【0194】
すなわち、可動側板430は、溝部430aに規定された形状に従って、
図9B中の左上方向に上昇する。この結果、可動側板430に保持されたカラー色(YMC)用の一次転写ローラー422の一次転写ニップ部N1の位置は、
図4Aに示す通常位置に設定される。
【0195】
なお、この例では、第2カム402-2は、
図11中のカム角度が約190°以上になると対応する押し上げ部材403を押し上げるようになっているため、それまではニップ圧を減少させる動作が発生しない。
【0196】
したがって、
図11中の「(3)カラー」のカム角度(基準角度:165°)において、カラー色(YMC)用および黒色(K)用の一次転写ローラー422の一次転写ニップは、凹凸紙以外の用紙Sに黒色画像を印刷するためのニップ圧に設定される。
【0197】
さらに、制御部100の制御の下、モーター80が回転駆動されることにより、
図9Bに示す状態からカム軸401が反時計方向に回転した場合、
図9Cに示すように、内側の第2カム402-2は、対向する部材である押し上げ部材403の先端側を押し上げることにより、押圧解除部450を上昇させる。
【0198】
この結果、カラー色(YMC)用の一次転写ローラー422の一次転写ニップは、
図4Cに示すように、エンボス紙などの凹凸紙の用紙Sにカラー色(YMC)の画像を印刷するための弱めのニップ圧に設定される(適宜、
図11中に示す「(4)エンボス」の250°前後のカム角度の領域を参照)。
【0199】
またこのとき、外側の第1カム402-1は、対向する部材である可動側板430を
図9Bで上述した位置よりもさらに上方に押し上げる。
【0200】
この結果、カラー色(YMC)用の一次転写ローラー422の一次転写ニップ部N1のニップ位置(当接位置)は、
図4Cに示すように、エンボス紙などの凹凸紙の用紙Sにカラー色(YMC)の画像を印刷するための上昇した位置に設定される。
【0201】
また、第3カム402-3は、対向する部材部材(黒色用押圧ばね解除部材451の上方の部位)を押圧する(適宜、
図11中に示す「(4)エンボス」の領域のカム角度を参照)。
【0202】
この結果、黒色(K)用の一次転写ローラー422の一次転写ニップは、
図4Cに示すように、エンボス紙などの凹凸紙の用紙Sにカラー色(YMC)の画像を印刷するための弱めのニップ圧に設定される(適宜、
図11中に示す「(4)エンボス」の領域のカム角度を参照)。
【0203】
上記のように、本実施の形態では、印刷する用紙Sの種類が凹凸紙以外である場合、押圧解除部450を押し上げないままで可動側板430のみを移動させる構成を備える。一方、印刷する用紙Sの種類が凹凸紙である場合、可動側板430と押圧解除部450と黒色(K)画像用の一次転写ローラー422(K)を押圧する部材(黒色用押圧ばね解除部材451等)とが移動することにより、カラー画像を転写する一次転写ローラー422(YMC)の当接位置および当接圧を変更し、かつ、黒色(K)画像用の一次転写ローラー422(K)の当接圧を変更する。
【0204】
かかる構成とすることにより、像担持体(中間転写ベルト421および複数の一次転写ローラー422)の耐久を確保しつつ、モノクロ、カラー、さらにはYMCKのフルカラーで凹凸紙への画像形成を行うことができ、かつ画像の転写を良好に行うことができる。
【0205】
また、
図11に参照されるように、本実施の形態では、印刷する用紙Sの種類が凹凸紙である場合、第1カム402-1により可動側板430を移動させて一次転写ニップの当接位置の変更を完了させた後(カム角度:約200°)、第2カム402-2により押圧解除部450を移動させて一次転写ニップの当接圧の変更を完了させ(カム角度:約210°)、さらに第3カム402-3により黒色(K)用の一次転写ローラー422(K)の一次転写ニップの当接圧の変更を完了させる(カム角度:約240°)。
【0206】
上記のように、一次転写ニップの当接位置または当接圧の変更を完了させる回転角、言い換えると上記当接位置または当接圧の切り替えに到達するタイミングをずらすように各々のカム402-1~3を配置した本実施の形態によれば、以下のメリットがある。
【0207】
すなわち、本実施の形態では、各々のカム402-1~3の半径が最大になるタイミング、言い換えると機械的な負荷が最大になる回転角をずらすことにより、複数のカム(この例では第1カム402-1~第3カム402-3の3つ)が設けられたカム軸401を回転駆動する際の負荷を分散ないし均一化することができる。
【0208】
以上、詳細に説明したように、本実施の形態の画像形成装置1における中間転写ユニット42は、画像が形成される用紙S(記録媒体)の種類に応じて、中間転写ベルト421等(像担持体)の回転方向において中間転写ベルト421および感光体ドラム413と一次転写ローラー422との当接位置(ニップ位置)を変更する当接位置変更部と、かかる当接位置とは無関係に感光体ドラム413等を押圧する押圧部材(ばね441,442)の押圧力を変更することによって、一次転写ニップ圧(当接圧)を変更する当接圧変更部と、を備える。
【0209】
かかる構成を備える本実施の形態の中間転写ユニット42によれば、印刷される用紙Sの種類に応じて、中間転写ベルト421を介した一次転写ニップ部N1の位置の変更と、一次転写ニップ部N1のニップ圧(当接圧)の変更との動作を独立的に行うことができる。
【0210】
より具体的には、本実施の形態では、制御部100の制御の下、カム軸401を回転させることにより、カム402-1(第1カム)の作用により、複数の一次転写ローラー422の軸を保持する可動側板430が、中間転写ベルト421を回転可能に支持する固定側板400に対する通常位置から移動(上昇)し、ニップ位置が変更される(
図4A、
図4C、
図9C、および
図11中のカム角度100°~250°の範囲を参照)。
【0211】
また、かかるニップ位置が変更されるタイミングで、同じカム軸401に設けられたカム402-2(第2カム)の作用によって押圧解除部450が移動(上昇)し、一次転写ローラー422の軸を押圧する押圧部材の数を減らす(コイルばね401だけにする)ことによって、ニップ圧(当接圧)を弱くするように変更する(同図を参照)。
【0212】
かかる構成によれば、一般に転写性が低下しやすい凹凸紙に画像形成する場合であっても、当該凹凸紙への画像の転写性を良好に保つことができる。したがって、本実施の形態によれば、用紙Sの種類に関わらず、転写性すなわち中間転写ベルト421への一次転写性ひいては用紙Sへの二次転写性を良好に保つことができる。
【0213】
また、本実施の形態によれば、感光体ドラム413に対する一次転写ローラー422の当接位置の変更と、感光体ドラム413に対する一次転写ローラー422の押圧力(当接圧)の変更と、を互いに異なる部品の移動(カムの回転等)を通じて行う構成とすることにより、上記の当接位置の微調整と押圧力の微調整を別個に且つ容易に行うことができる。
【0214】
さらに、上記の構成を備えた本実施の形態によれば、当接位置および押圧力(当接圧)の切り替えに要する機構が専有する空間(スペース)を縮小させることができ、転写装置(中間転写ユニット42)ひいては画像形成装置1の装置本体の小型化を図ることできる。
【0215】
上記実施の形態および変形例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0216】
1 画像形成装置
10 画像読取部
20 操作表示部
30 画像処理部
40 画像形成部
42 中間転写ユニット(転写装置)
50 用紙搬送部
51 給紙部
52 排紙部
53 搬送経路部
60 定着部
80 モーター(駆動源、当接位置変更部)
100 制御部(転写装置、当接位置変更部)
413 感光体ドラム(像担持体)
400 固定側板
400a 固定軸(当接位置変更部)
400b 固定軸
401 カム軸
401a 蓋材
402(402-1,402-2,402-3) カム
402-1 第1カム
402-2 第2カム
402-3 第3カム
403 押し上げ部材(当接圧変更部)
403a 固定軸
421 中間転写ベルト(像担持体)
422 一次転写ローラー(転写ローラー)
430 可動側板(当接位置変更部)
430a 溝部
430-1 ガイド部材(当接位置変更部)
440 当接圧変更部
440A 基材
441 コイルばね(第1の押圧部材)
442 コイルばね(第2の押圧部材)
443 内側軸受け(第1規制部材)
443a 溝部
443b 押圧面
444 外側軸受け(第2規制部材)
444a 溝部
444b 係止部(第1規制部材)
445 軸押圧部
450 押圧解除部材
450a ガイド溝
450b 押圧部
451 黒色用押圧ばね解除部材
451a 上端部
451c 軸受け
452 押圧部
452-1 第1ばね押圧解除部
452-2 第2ばね押圧解除部
460 軸
N1 一次転写ニップ部
S 用紙(記録媒体)