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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/689 20180101AFI20240814BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20240814BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20240814BHJP
   F21S 41/32 20180101ALI20240814BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20240814BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240814BHJP
【FI】
F21S41/689
F21S41/25
F21S41/148
F21S41/32
F21W102:13
F21Y115:10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020129294
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026029
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 俊也
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-017360(JP,A)
【文献】特開2018-049730(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0066823(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
F21W 102/13
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射した光を前方に向けて投影する投影レンズと、
前方へ投影される投影光の配光を切り換えるシェードユニットと、を備え、
前記シェードユニットは、第1配光パターンを形成させる第1位置と第2配光パターンを形成させる第2位置との間で回転軸を中心として回転されるシェードと、前記シェードの位置を切り換えるために駆動される駆動部と、前記駆動部の駆動力を前記シェードに伝達する伝達レバーと、を有し、
前記シェードは、前記伝達レバーの先端の接触端部が宛がわれる平坦な動力伝達面を有し、
前記接触端部は、湾曲された接触箇所を有し、前記接触箇所を前記動力伝達面に宛がっており、
前記駆動部は、前記シェードが前記第1位置であるときの前記伝達レバーに伝達する駆動力が最も小さくなるとともに、前記シェードが前記第2位置であるときの前記伝達レバーに伝達する駆動力が最も大きくなり、
前記伝達レバーは、前記シェードを前記第1位置とするときに前記接触端部と前記回転軸との間隔を最も大きくするとともに、前記シェードを前記第2位置とするときに前記接触端部と前記回転軸との間隔を最も小さくするように、前記接触端部を変位させることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記接触端部は、前記回転軸側の端部が切り欠かれて切欠平面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記動力伝達面は、前記回転軸に向けて伸びていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記接触端部は、半径が、自らの中心軸と前記回転軸の軸線との間隔の3分の1以上の寸法とされていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、シェードの位置を切り換えることによって、配光パターンを切り換えるものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。この車両用灯具は、シェードを回転可能に設け、そのシェードを駆動機構からの駆動力により、光源からの光の一部を遮蔽する位置と、光源からの光を遮蔽しない位置と、で切り換えることにより、配光パターンを切り換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許2011-258485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の車両用灯具は、シェードと駆動機構とを連結ロッドで連結することで、駆動機構の駆動力をシェードにおける回転力としてシェードに伝達している。その連結ロッドは、端部をシェードの連結穴に挿入しており、その端部がシェードの回転中心を中心とする円に沿って移動される。このため、上記の車両用灯具は、駆動機構の駆動力をシェードの回転力として伝達する態様が略一定のものとなり、シェードを効率良く変位させる観点から改良の余地がある。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、駆動機構からの駆動力によりシェードを効率良く変位させることのできる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両用灯具は、光源と、前記光源から出射した光を前方に向けて投影する投影レンズと、前方へ投影される投影光の配光を切り換えるシェードユニットと、を備え、前記シェードユニットは、第1配光パターンを形成させる第1位置と第2配光パターンを形成させる第2位置との間で回転軸を中心として回転されるシェードと、前記シェードの位置を切り換えるために駆動される駆動部と、前記駆動部の駆動力を前記シェードに伝達する伝達レバーと、を有し、前記シェードは、前記伝達レバーの先端の接触端部が宛がわれる平坦な動力伝達面を有し、前記接触端部は、湾曲された接触箇所を有し、前記接触箇所を前記動力伝達面に宛がっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の車両用灯具によれば、駆動機構からの駆動力によりシェードを効率良く変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示に係る一実施形態としての車両用灯具を示す説明図である。
図2】車両用灯具におけるシェードユニットを示す斜視図である。
図3】シェードユニットの各構成を分解して示す斜視図である。
図4】シェードユニットのシェードを後方から見た様子を示す斜視図である。
図5】シェードユニットの伝達レバーを示す説明図であり、(a)に前方から見た様子を示し、(b)に(a)に示す矢印方向から見た様子を示す。
図6】駆動力が伝達される様子の説明のために、シェードユニットを前方から見た様子を示す説明図である。
図7】シェードユニットにおいて、伝達レバーがソレノイドとシェードの動力伝達面とを架け渡す様子を示す説明図である。
図8】シェードがロービーム位置とされた際のシェードの動力伝達面と伝達レバーの接触端部の接触箇所との位置関係を示す説明図であり、接触箇所を含みつつ回転軸に直交する断面で示す。
図9】シェードがロービーム位置からハイビーム位置へ移行する際のシェードの伝達面と伝達レバーの接触端部の接触箇所との位置関係を示す説明図であり、接触箇所を含みつつ回転軸に直交する断面で示す。
図10】シェードがハイビーム位置とされた際のシェードの伝達面と伝達レバーの接触端部の接触箇所との位置関係を示す説明図であり、接触箇所を含みつつ回転軸に直交する断面で示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る車両用灯具の一例としての車両用灯具10の実施例1について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は、車両用灯具10の構成の理解を容易とすべく各構成を簡易な断面で示し、図8から図10は、シェードユニット16の動作の理解を容易とすべく各構成を簡易な断面で示している。
【実施例1】
【0010】
本開示に係る車両用灯具の一実施形態に係る実施例1の車両用灯具10を、図1から図10を用いて説明する。実施例1の車両用灯具10は、自動車等の車両の前照灯として用いられる。その前照灯は、車両の前部の左右両側にそれぞれ搭載され、開放された前端がアウターレンズで覆われたランプハウジングにより形成される灯室に車両用灯具10が設けられて構成される。車両用灯具10は、上下方向用光軸調整機構や左右方向用光軸調整機構を介して灯室に設けられ、車両の前方を適宜照射する。
【0011】
実施例1の車両用灯具10は、図1に示すように、光源11とヒートシンク部材12とリフレクタ部材13と投影レンズ14とレンズホルダ15とシェードユニット16とを備え、プロジェクタタイプの前照灯ユニットを構成する。以下の説明では、車両用灯具10において、リフレクタ部材13や投影レンズ14の光軸に沿う方向を光軸方向(投影レンズ14側を前側とする)とし、車両に搭載された状態での鉛直方向を上下方向とし、光軸方向および上下方向に直交する方向を幅方向とする。
【0012】
光源11は、発光ダイオードである発光素子11aが基板11bに搭載されている。その基板11bは、ヒートシンク部材12の台座部12aに配置されかつその上から給電ホルダ17が取り付けられ、給電ホルダ17に設けられた端子に基板11bの端子が接続されて台座部12aに固定される。これにより、光源11は、点灯制御回路から電力が給電ホルダ17を介して発光素子11aに供給されて適宜点灯される。
【0013】
ヒートシンク部材12は、台座部12aに設けられた光源11で発生する熱を外部に逃がす放熱部材であり、複数の放熱フィンから外部に放熱する。このヒートシンク部材12は、ランプハウジングに固定される。ヒートシンク部材12では、冷却効率を高めるために適宜冷却ファンユニットが設けられる。
【0014】
リフレクタ部材13は、光源11から出射された光を反射面13aで投影レンズ14側へと反射する。反射面13aは、光源11(その中心位置)を第1焦点とし、後述するロービーム位置PLとされたシェード21の上縁の近傍を第2焦点とする楕円を基本とした自由曲面とされている。リフレクタ部材13は、光源11に対して位置決めされて、ヒートシンク部材12に固定される。
【0015】
投影レンズ14は、リフレクタ部材13(その反射面13a)で反射された光を車両の前方へ投影し、それらと協働して所定の配光パターンを形成する。この投影レンズ14は、レンズホルダ15に支持されることで、光源11やリフレクタ部材13に対して位置決めされる。
【0016】
シェードユニット16は、シェード21を、第1位置としてのロービーム位置PL(図8等参照)と第2位置としてのハイビーム位置PH(図10等参照)との間で変位可能としており、その位置に応じて投影レンズ14によって投影される投影光の配光を切り換える。シェードユニット16は、シェード21をロービーム位置PLとすると第1配光パターンとしてのロービーム配光パターン(すれ違い配光パターン)を形成させ、シェード21をハイビーム位置PHとすると第2配光パターンとしてのハイビーム配光パターン(走行配光パターン)を形成させる。このシェードユニット16は、図2図3に示すように、シェード21に加えて、ブラケット板22と遮光部材23とソレノイド24とリンク機構25とを有する。
【0017】
ブラケット板22は、板状部材が適宜折り曲げられて形成され、平板部22aと垂下部22bと起立部22cとを有する。平板部22aは、平坦な板状とされ、ソレノイド24の上方を覆いつつシェードユニット16のヒートシンク部材12への取り付け箇所を構成する。平板部22aでは、中央近傍に、ソレノイド24の位置決めおよび取り付けのための3つの取付スリット22dが設けられている。また、平板部22aでは、中央左側(図2を正面視して右手前側)に、リンク機構25(その後述する伝達レバー45)を通す連結開口22eが設けられている。さらに、平板部22aでは、左右両端で対を為して、ヒートシンク部材12への位置決めのためのガイド穴22fと取り付けのためのネジ用穴22gとが設けられている。加えて、平板部22aでは、各ガイド穴22fおよび各ネジ用穴22gよりも内側の左右両端で対を為して、遮光部材23の取り付けのための取付ボス22hが設けられている。
【0018】
垂下部22bは、平板部22aの前側の縁部から垂れ下がる板状とされ、ソレノイド24の前方を覆うことができ、複数の開口が設けられている。起立部22cは、平板部22aの後側の縁部から立ち上がる板状とされ、左右両端の上縁部に軸受部22iが設けられる。その各軸受部22iは、起立部22cの上縁部が適宜切り欠かれて形成され、回転軸26を支持する状態で適宜曲げ加工されることで、回転軸26を起立部22c(ブラケット板22)に固定する。また、起立部22cでは、中央近傍の上端から突出する受部22kが設けられている。受部22kは、突出端の中央が凹むものとされている。さらに、起立部22cでは、中央左側(図2を正面視して右手前側)で連結開口22eの近傍を貫通する取付穴22mが設けられている。
【0019】
遮光部材23は、板状部材が適宜折り曲げられて形成され、平板部23aと起立部23bとを有する。平板部23aは、平坦な板状とされ、ブラケット板22の平板部22aに宛がわれることで少なくとも平板部22aの連結開口22eを覆う。平板部23aでは、左右両端で対を為して、ブラケット板22への取り付けのための取付穴23cが設けられている。起立部23bは、平板部23aにおける中央左側(図2を正面視して右手前側)の後側の縁部から立ち上がる板状とされ、幅方向で連結開口22eと重なる位置に設けられている。実施例1の遮光部材23は、投影レンズ14を経た太陽光の熱に起因する変形を防ぐことのできる耐熱性を有するものとされている。遮光部材23は、各取付穴23cに平板部23aの取付ボス22hが通されて、その状態で各取付ボス22hの先端が潰されることで、平板部23aすなわちブラケット板22に固定される。
【0020】
シェード21は、光源11から出射された光の一部を遮光してロービーム配光パターンのカットオフラインを形成する。このシェード21は、回転軸26を中心として回転可能にブラケット板22に設けられる。シェード21は、実施例1では、図4に示すように、板状のシェード本体部31に、薄板状の補助シェード部32が取り付けられて構成される。そのシェード本体部31と補助シェード部32とは、実施例1では、金属材料から形成された金属プレートであり、良好な耐摩耗性や耐食性を有する。
【0021】
シェード21は、シェード本体部31と補助シェード部32とのそれぞれの上縁が略同じ高さ位置となるように並列される。そのシェード本体部31と補助シェード部32とは、それぞれの上縁がカットオフラインを形成すべく高さの異なる2つの水平エッジが傾斜エッジで繋ぎ合わされた形状とされる。実施例1では、シェード本体部31は、平坦な薄板状とされ、補助シェード部32は、平坦な薄板部材が適宜折り曲げられ、シェード本体部31と補助シェード部32との間に所定の間隔が設けられている。シェード21は、ロービーム位置PL(図8等参照)とされると、シェード本体部31および補助シェード部32の上縁(各エッジ)がリフレクタ部材13および投影レンズ14の焦点位置またはその近傍に位置するように配置される。
【0022】
そのシェード本体部31は、両側に一対の軸受片33が設けられ、図3等に示すように、それぞれに形成された軸穴33aに回転軸26が回転可能に挿入される。これにより、シェード本体部31すなわちシェード21は、回転軸26を介してブラケット板22に対して回転可能とされる。その回転軸26には、ネジリコイルバネ34が設けられる。ネジリコイルバネ34は、一端がブラケット板22の起立部22cの受部22kの凹みに嵌められ、他端がシェード21のシェード本体部31の小孔31aに通される。ネジリコイルバネ34は、ブラケット板22に対して回転可能とされたシェード本体部31に、先端側が投影レンズ14に接近する方向への回転力を付与する。
【0023】
また、シェード本体部31は、図4に示すように、一対の第1位置決め片35と第2位置決め片36と伝達片37とを有する。第1位置決め片35は、各軸受片33の下方に左右で対を為して設けられる。第2位置決め片36は、各軸受片33の上部に左右で対を為して設けられる。伝達片37は、シェード本体部31の幅方向の中央の下端部が部分的に重なるように折り返されて形成されている。伝達片37は、シェード本体部31における後方側において、上方に向かうに連れてシェード本体部31から離れるようにシェード本体部31に対して傾斜された板状とされており、下側の面が平坦な動力伝達面38とされている。その動力伝達面38は、両軸受片33の軸穴33aよりも投影レンズ14側に位置される。動力伝達面38(伝達片37)は、シェード21がブラケット板22に取り付けられた状態において回転軸26(その中心)に向けて伸びるものとされている(図7等参照)。伝達片37は、シェード本体部31(シェード21)の幅方向の中央に設けられ、リンク機構25の後述する伝達レバー45の接触端部48が動力伝達面38に宛がわれることで、ソレノイド24の動作をシェード本体部31すなわちシェード21に伝達する。この伝達片37は、下方に変位されるとシェード21を起こす(ロービーム位置PLに近付く)回転姿勢(図8参照)とし、上方に変位されるとシェード21を寝かせる(ハイビーム位置PHに近付く)回転姿勢(図10参照)とする。なお、伝達片37は、シェード本体部31が部分的に切り欠かれた箇所が折り曲げられて形成されていてもよく、シェード本体部31とは別体で設けられていてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0024】
ソレノイド24は、図2図3に示すように、シェード21を変位させるべく動作する駆動部であり、コイル41と、それを内蔵するヨーク42と、そこから進退されるプランジャ43と、コネクタ44と、を有する。ソレノイド24は、コネクタ44を介してコイル41への通電が可能とされており、非通電時にはネジリコイルバネ34の回転力によりプランジャ43が進出され、通電されるとネジリコイルバネ34の回転力に抗してプランジャ43をコイル41側へと後退させる。そのプランジャ43では、先端部に伝達溝43aが設けられている。このソレノイド24は、ヨーク42の上端に設けられた3つの突辺部42aがブラケット板22の平板部22aの3つの取付スリット22dに個別に挿入されることで、ブラケット板22に対して位置決めされ、その状態で各突辺部42aの先端が適宜潰されることでブラケット板22に固定される。
【0025】
リンク機構25は、ソレノイド24の動作をシェード21に伝達するもので、伝達レバー45を有する。伝達レバー45は、樹脂材料から形成され、図5に示すように、レバー本体部46と、レバー本体部46の一端でプランジャ43に接続される接続端部47と、レバー本体部46の他端でシェード21の動力伝達面38に宛がわれる接触端部48と、を有する。
【0026】
レバー本体部46は、L字状に伸びており、適宜リブが設けられて強度が確保されている。レバー本体部46では、L字状に屈曲する箇所を貫通して取付穴46aが設けられている。レバー本体部46は、取付穴46aを通したピン部材49が、ブラケット板22の起立部22cの取付穴22m(図3参照)に取り付けられることで、ブラケット板22(起立部22c)に対して回転可能とされる。
【0027】
接続端部47は、レバー本体部46の一端から、光軸方向の前側へ向けて突出されている。接続端部47は、ソレノイド24のプランジャ43の伝達溝43aに嵌められることで、プランジャ43に接続される(図6図7参照)。
【0028】
接触端部48は、レバー本体部46の他端において、レバー本体部46よりも大きな径寸法とされている。接触端部48は、レバー本体部46における他端側の軸線方向の外側から見て(図5(a)の矢印方向)、端面の形状が円形の両側端を平面(48b、48c)で切り欠いた形状とされている(図5(b)参照)。すなわち、接触端部48は、レバー本体部46よりも大きな径寸法とされた円柱形状とされるとともに、その両端が平面状に切り欠かれたものとされている。
【0029】
この接触端部48は、上側の湾曲面48aと、その下側に連続する一対の切欠平面48b、48cと、を有する。湾曲面48aは、シェード21の回転軸26に直交する面に沿う断面で円弧状に湾曲された面とされており、シェード21のシェード本体部31の動力伝達面38と上下方向で対向する位置関係とされる(図7参照)。接触端部48では、湾曲面48aが設けられることで、他端側の軸線方向の外側の縁部が湾曲面48aに沿って円弧状に湾曲されている。その縁部は、接触端部48において、シェード本体部31の伝達片37の動力伝達面38に接触する接触箇所48dとなる。両切欠平面48b、48cは、平坦面とされており、後側の切欠平面48cがシェード21の回転軸26と対向し得る位置関係とされる(図10等参照)。
【0030】
ここで、図7に示すように、接触端部48の中心軸(レバー本体部46における他端側の軸線)と各切欠平面48b、48cとの距離を、接触端部48における半径rとする。また、切欠平面48cと回転軸26とが対向した状態、すなわち接触端部48と回転軸26とが同じ高さ位置とされた状態において、接触端部48の中心軸と、回転軸26の軸線と、の距離を間隔Dとする。接触端部48の半径rは、後述する接触端部48の変位に応じて接触箇所48dにおける動力伝達面38との接触点を変位させることによる効果を得ることができる寸法を下限とし、伝達レバー45の寸法公差を考慮した上で接触端部48と回転軸26との接触を防止できる寸法を上限とする。実施例1の接触端部48では、半径rを、間隔Dのおよそ半分以下であって3分の1以上の寸法としている。
【0031】
シェードユニット16では、伝達レバー45が、ブラケット板22の平板部22aの連結開口22eに通された状態でブラケット板22の起立部22cの取付穴22mに回転可能に取り付けられる。そのブラケット板22には、平板部22aの下側にソレノイド24が固定され、そのプランジャ43の伝達溝43aに伝達レバー45の接続端部47が嵌められる。また、ブラケット板22には、平板部22aの上側に遮光部材23が取り付けられ、回転軸26にネジリコイルバネ34が設けられるとともに、その回転軸26がシェード本体部31の両軸穴33aに通されて起立部22cの両軸受部22iで支持されている。
【0032】
シェードユニット16では、この状態において、伝達レバー45の接触端部48の湾曲面48aの接触箇所48dが、シェード本体部31の伝達片37の動力伝達面38に宛がわれている(図7等参照)。その伝達レバー45は、プランジャ43が進退されると、接続端部47が回転軸26を中心とする円筒の接線方向(実施例1では略上下方向)に沿うように略直線上に移動され、回転軸26との間隔が変化する(図7から図10参照)。また、シェードユニット16では、この状態において、連結開口22eが遮光部材23の平板部23aで覆われているとともに、伝達レバー45の光軸方向前側(投影レンズ14側)に遮光部材23の起立部23bが位置されている。このシェードユニット16は、ブラケット板22の両ガイド穴22fにヒートシンク部材12のガイド突起が通されることで、投影レンズ14やリフレクタ部材13や光源11やの位置関係を決められた状態で組み付けられる。
【0033】
次に、車両用灯具10において、シェードユニット16による配光パターンの切り換え動作について説明する。シェードユニット16は、ソレノイド24のコイル41が非通電時でネジリコイルバネ34の回転力によりプランジャ43が進出されていると、図8に示すように、シェード21が起きて、両第1位置決め片35がブラケット板22に当たる。すると、シェード21は、投影レンズ14に至る光の一部を遮光する回転姿勢、すなわちロービーム位置PLとなる。
【0034】
シェードユニット16は、ソレノイド24のコイル41が通電されると、ネジリコイルバネ34の回転力に抗してプランジャ43が後退され(図6の矢印A1参照)、その先端の伝達溝43aに固定された接続端部47が変位することでリンク機構25の伝達レバー45が回転する(図6の矢印A2参照)。すると、伝達レバー45の接触端部48が上方に変位し、その接触箇所48dが宛がわれた動力伝達面38が上方に押し上げられることで、図9に示すように、シェード21が回転軸26を中心に回転(以下では、回転軸26回りに回転ともいう)して寝かせられる。すなわち、伝達レバー45は、ソレノイド24の駆動力を、シェード21の回転軸26回りの回転力として伝達している。その後、プランジャ43が最も後退されると、図10に示すように、シェード21がさらに寝かせられ、第2位置決め片36がブラケット板22に当たる。すると、シェード21は、投影レンズ14に至る光を遮光しない回転姿勢、すなわちハイビーム位置PHとなる。
【0035】
車両用灯具10は、電力が供給されて光源11から出射された光を、リフレクタ部材13で前方へ反射し、投影レンズ14により前方へ投影する(図2参照)。そして、車両用灯具10は、シェードユニット16によりシェード21をハイビーム位置PH(図10参照)とすると、前方へ投影する投影光でハイビーム配光パターンを形成する。また、車両用灯具10は、シェードユニット16によりシェード21をロービーム位置PL(図8参照)とすると、リフレクタ部材13で反射された光の一部を遮蔽して、前方へ投影する投影光でカットオフラインを有するロービーム配光パターンを形成する。
【0036】
ここで、従来の車両用灯具の技術の課題について説明する。従来の車両用灯具は、シェードと駆動機構(本願のソレノイド24に相当)とを連結ロッド(本願の伝達レバー45に相当)で連結するとともに、その連結ロッドの端部をシェードに設けた連結片の連結穴に挿入している。このため、連結ロッドの端部は、シェードの回転軸を中心とする円に沿って(円周方向に)移動される連結穴と略等しい軌道を描くので、回転軸との間隔が略一定となる。これにより、伝達レバー45は、ソレノイド24の駆動力に対してシェード21に伝達する回転力の態様、すなわち駆動力の大きさと回転力の大きさとの関係を、略一定のものとしている。ここで、シェードは、連結ロッドの端部が挿入される連結穴を回転軸に近付けるほど、端部(連結穴)の小さな変位量であっても傾きが大きく変化されるが、同じ駆動力であっても作用する回転力が小さくなる。このため、従来の車両用灯具は、シェードの変化量と必要となる回転力とをバランスをとって、連結穴の位置(回転軸との間隔)を設定することで、大型化を抑制しつつシェードを変位させている。
【0037】
ところで、駆動機構(ソレノイド24)は、駆動軸(本願のプランジャ43に相当)を進退させる駆動力が一定ではなく、駆動軸が最も進出された状態から後退し始めるときが最も小さな駆動力となり、駆動軸を後退させるに連れて大きな駆動力となる。このため、従来の車両用灯具は、駆動機構における駆動力の変化に合わせてシェードへの回転力も変化させてしまい、シェードを効率良く変位させる観点から改良の余地がある。
【0038】
これに対し、本開示の車両用灯具10は、シェードユニット16において、伝達レバー45の接触端部48において円弧状に湾曲させた接触箇所48dを、シェード21の伝達片37の平坦な面とした動力伝達面38に宛がっている。このため、シェードユニット16は、プランジャ43が最も進出された状態から後退させるとき、図8に示すように、接触箇所48dにおける前側の切欠平面48b側の端部近傍を動力伝達面38に宛がうことができ、その接触点と回転軸26(その中心)との間隔d1を大きくできる。これにより、シェードユニット16は、プランジャ43を後退させる駆動力が小さい時点では、間隔d1を大きくすることにより、駆動力に対してシェード21に作用させる回転力を大きくすることができ、小さな駆動力を補助してシェード21を円滑に回転させることができる。また、シェードユニット16は、プランジャ43を後退させるに連れて、図9図10に示すように、接触箇所48dにおける動力伝達面38との接触点を後側の切欠平面48b側へと変位させることができ、その接触点と回転軸26との間隔(d2、d3参照)を徐々に小さくできる。これにより、シェードユニット16は、プランジャ43を後退させる駆動力が大きくなるのに合わせて、接触点と回転軸26との十分な間隔による駆動力の補助の作用を弱めていくとともに、接触点すなわち接触端部48の変位量に対するシェード21の傾きの変化量を増やしていくことができる。すなわち、シェードユニット16は、ソレノイド24の駆動力の変化に合わせて、その駆動力をシェード21の回転力として伝達する態様を変化させることができる。これらのことから、車両用灯具10は、接触端部48の略直線上での変位に伴って、その接触箇所48dと動力伝達面38との接触点から回転軸26までの間隔を、ソレノイド24における駆動力が大きくなるに連れて小さくすることができ、シェード21を効率良く変位させることができる。
【0039】
特に、車両用灯具10は、シェードユニット16において、接触端部48の半径rを、その自らの中心軸と回転軸26の軸線との間隔Dの3分の1以上の寸法としている。このため、シェードユニット16は、接触端部48の変位に応じて接触箇所48dにおける動力伝達面38との接触点を変位させることによる上記の効果を、より適切に得ることができる。すなわち、シェードユニット16は、ソレノイド24の駆動力の変化により適切に合わせて、ソレノイド24の駆動力をシェード21の回転力として伝達する態様を変化させることができる。加えて、シェードユニット16は、接触端部48の回転軸26側の端部を切り欠いて切欠平面48cを設けている。このため、シェードユニット16は、接触端部48の中心軸と回転軸26の軸線とを近付けて配置しても、接触端部48と回転軸26とが接触することを防止でき、接触端部48の変位量に対するシェード21の傾きの変化量をより大きくできる。
【0040】
また、車両用灯具10は、シェードユニット16において、伝達レバー45を樹脂材料から形成している。このため、シェードユニット16は、伝達レバー45の接触端部48を大きな寸法としつつ接触箇所48dや切欠平面48cを容易に設けることができる。加えて、シェードユニット16は、伝達レバー45が通されるブラケット板22の平板部22aの連結開口22eを覆って遮光部材23を取り付けている。その遮光部材23は、平板部23aで連結開口22eを覆うとともに、伝達レバー45の光軸方向前側に起立部23bを位置させている。このため、シェードユニット16は、投影レンズ14を経た太陽光が伝達レバー45の周辺を照らした場合であっても、その太陽光を遮光部材23で遮ることができ、太陽光の熱に起因して伝達レバー45が変形することを防止できる。
【0041】
本開示に係る車両用灯具の一実施例の車両用灯具10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0042】
車両用灯具10は、シェード21に平坦な動力伝達面38を設けるとともに接触端部48に湾曲された接触箇所48dを設け、その接触箇所48dを動力伝達面38に宛がっている。このため、車両用灯具10は、接触端部48の変位に応じて、接触箇所48dにおける動力伝達面38との接触点を変位させることができ、駆動力を補助する役割が大きい状態から、変位量に対するシェード21の傾きの変化量を大きくする役割が大きい状態へと変化させることができる。これにより、車両用灯具10は、ソレノイド24からの駆動力によりシェード21を効率良く変位させることができる。
【0043】
また、車両用灯具10は、接触端部48において、回転軸26側の端部を切り欠かいて切欠平面48cを設けている。このため、車両用灯具10は、接触端部48と回転軸26との接触を回避しつつ接触端部48の中心軸と回転軸26の軸線とを近付けて配置することができ、接触端部48の変位量に対するシェード21の傾きの変化量をより大きくできる。
【0044】
さらに、車両用灯具10は、動力伝達面38を回転軸26(その中心)に向けて伸ばしている。このため、車両用灯具10は、接触箇所48dと動力伝達面38との接触点を回転軸26の径方向に変化させることができ、その接触点と回転軸26との間隔を効率よく変化させることができる。加えて、車両用灯具10は、接触箇所48dと動力伝達面38との接触点に作用する力の動力伝達面38に直交する方向の分力を、常に回転軸26を中心とする円の接線方向とすることができ、シェード21を効率よく回転させることができる。
【0045】
車両用灯具10は、接触端部48の半径rを、自らの中心軸と回転軸26の軸線との間隔Dの3分の1以上の寸法としている。このため、車両用灯具10は、接触端部48を変位させた際、接触箇所48dにおける動力伝達面38との接触点の変位量を大きくでき、その接触点から回転軸26までの間隔の変化量を十分に大きくすることができる。これにより、車両用灯具10は、より効果的に駆動力を補助できるとともに、接触端部48の変位量に対してシェード21の傾きの変化量のより大きくでき、シェード21をより効率良く変位させることができる。
【0046】
車両用灯具10は、伝達レバー45において、ソレノイド24から駆動力が入力されてプランジャ43が後退されると、接触端部48を回転軸26に近付ける方向に変位させる。このため、車両用灯具10は、接触端部48が変位した際の、接触箇所48dと動力伝達面38との接触点から回転軸26までの間隔の変化量をより大きくでき、シェード21をより効率良く変位させることができる。
【0047】
したがって、本開示に係る車両用灯具としての実施例1の車両用灯具10は、駆動機構としてのソレノイド24からの駆動力によりシェード21を効率良く変位させることができる
【0048】
以上、本開示の車両用灯具を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0049】
なお、上記した実施例1では、ロービーム配光パターンとハイビーム配光パターンとの切り換えを可能としていたが、回転軸26を中心としてシェード21を第1位置と第2位置とで回転させることで、第1配光パターンと第2配光パターンとを形成するものであればよく、上記した実施例1の構成に限定されない。
【0050】
また、上記した実施例1では、リフレクタ部材13と投影レンズ14とで光を制御して所定の配光パターンを形成しているが、リフレクタ部材のみで制御してもよく、投影レンズのみで制御してもよく、他の構成でもよく、上記した実施例1の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0051】
10 車両用灯具 11 光源 14 投影レンズ 16 シェードユニット 21 シェード 24 (駆動部の一例としての)ソレノイド 26 回転軸 38 動力伝達面 45 伝達レバー 48 接触端部 48c 切欠平面 48d 接触箇所 D 間隔 PL (第1位置の一例としての)ロービーム位置 PH (第2位置の一例としての)ハイビーム位置 r 半径
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