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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21V 29/15 20150101AFI20240814BHJP
   F21S 45/47 20180101ALI20240814BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20240814BHJP
   F21S 41/689 20180101ALI20240814BHJP
   F21S 41/47 20180101ALI20240814BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20240814BHJP
   F21V 29/70 20150101ALI20240814BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20240814BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240814BHJP
【FI】
F21V29/15
F21S45/47
F21S41/148
F21S41/689
F21S41/47
F21V29/503
F21V29/70
F21W102:13
F21Y115:10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020130194
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026630
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】野末 洋和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英治
(72)【発明者】
【氏名】安部 俊也
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-010689(JP,A)
【文献】特開2014-007048(JP,A)
【文献】特開2016-197511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 29/15
F21S 45/47
F21S 41/148
F21S 41/689
F21S 41/47
F21V 29/503
F21V 29/70
F21W 102/13
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源が出射した光を車両前方に向けて投影する投影レンズと、
前記光源と前記投影レンズとの間に配置され、前記光源が出射した光の配光を切り換える配光切換ユニットと、
前記光源及び前記配光切換ユニットが取り付けられるヒートシンク部材と、を備え、
前記配光切換ユニットは、前記ヒートシンク部材に固定されるブラケットと、駆動することで前記配光を切り換える駆動部と、前記駆動部を保持すると共に前記ブラケットに組み付けられるヨークと、を有し、
前記ヨークは、前記ブラケットへの組付状態で前記ブラケットに接するセット面を備え、
前記ブラケットには、前記セット面の外周縁に沿った一部に平面視で重複する貫通孔が形成され
前記セット面は、前記貫通孔に平面視で重複する第1領域と、前記ブラケットに平面視で重複する第2領域と、を有し、
前記第1領域の前記ヨークの厚み方向の第1長さは、前記第2領域の前記ヨークの厚み方向の第2長さよりも長い
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用灯具において、
前記貫通孔は、前記ヒートシンク部材への前記ブラケットの固定箇所と、前記ブラケットへの前記ヨークの組み付け箇所との間に形成されている
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された車両用灯具において、
前記ブラケットは、前記ヨークの組み付け位置を規定する位置決め部を有し、
前記貫通孔は、前記位置決め部とは異なる位置に形成されている
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された車両用灯具において、
前記ヨークは、前記ブラケットに前記ヨークを組み付けた状態で、前記ブラケットとの間に隙間を生じさせる凹部が形成されている
ことを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、光源と投影レンズとの間に配置したシェードの位置を切り換えることによって、配光パターンを切り換える配光切替ユニットを有するものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。この配光切替ユニットは、シェードを回転可能に設け、そのシェードをソレノイド(駆動部)からの駆動力により、光源からの光の一部を遮蔽する位置と、光源からの光を遮蔽しない位置とで、切り換えることにより、配光パターンを切り換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-49730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の車両用灯具は、シェード及びソレノイドをブラケットに取り付け、このブラケットを、光源が取り付けられたヒートシンクに固定している。そのため、ソレノイド通電時に発生する熱がブラケットを介してヒートシンクに伝わり、ヒートシンクの放熱性能を阻害し、光源に熱による影響が生じるという問題があった。また、ソレノイドに通電したときに生じた熱が周囲に発散することで、投影レンズに対しても熱による影響を与えるおそれもあった。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、配光切替ユニットの駆動部への通電時に生じる熱による影響を抑制することができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両用灯具は、光源と、前記光源が出射した光を所定方向に投影する投影レンズと、前記光源と前記投影レンズとの間に配置され、前記光源が出射した光の配光を切り換える配光切換ユニットと、前記光源及び前記配光切換ユニットが取り付けられるヒートシンク部材と、を備えている。ここで、前記配光切換ユニットは、前記ヒートシンク部材に固定されるブラケットと、駆動することで前記配光を切り換える駆動部と、前記駆動部を保持すると共に前記ブラケットに組み付けられたヨークと、を有している。そして、このヨークは、前記ブラケットへの組付状態で前記ブラケットに接するセット面を備え、前記ブラケットには、前記セット面の外周縁に沿った一部に平面視で重複する貫通孔が形成されている。さらに、前記セット面は、前記貫通孔に平面視で重複する第1領域と、前記ブラケットに平面視で重複する第2領域と、を有し、前記第1領域の前記ヨークの厚み方向の第1長さは、前記第2領域の前記ヨークの厚み方向の第2長さよりも長いことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の車両用灯具によれば、配光切替ユニットの駆動部への通電時に生じる熱による影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の車両用灯具の構成を概略的な断面で示す説明図である。
図2】実施例1の車両用灯具の要部を示す分解斜視図である。
図3】実施例1の車両用灯具の要部を示す平面図である。
図4図3のA-Aで破断したときの端面図である。
図5図4のB部の拡大図である。
図6】実施例1の車両用灯具のソレノイドの変形例を示す斜視図である。
図7A図6に示すソレノイドを適用した配光切換ユニットを示す斜視図である。
図7B図7Aに示す配光切換ユニットの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る車両用灯具の一例としての車両用灯具100の実施例1について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は、車両用灯具100の構成の理解を容易とすべく各構成を簡易な断面で示している。
【0010】
(実施例1)
実施例1の車両用灯具100は、自動車等の車両の前照灯として用いられる。その前照灯は、車両の前部の左右両側にそれぞれ搭載され、開放された前端がアウターレンズで覆われたランプハウジングにより形成される灯室に車両用灯具100が設けられて構成される。車両用灯具100は、上下方向用光軸調整機構や左右方向用光軸調整機構を介して灯室に設けられ、車両の前方を適宜照射する。
【0011】
実施例1の車両用灯具100は、図1に示すように、光源110と、ヒートシンク部材120と、リフレクタ部材130と、シェードユニット140(配光切換ユニット)と、投影レンズ150と、レンズホルダ160と、を備え、プロジェクタタイプの前照灯ユニットを構成する。以下の説明では、車両用灯具100において、リフレクタ部材130や投影レンズ150の光軸に沿う方向を光軸方向(投影レンズ150側を車両前側とする)とし、車両に搭載された状態での鉛直方向を上下方向とし、光軸方向及び上下方向に直交する方向を幅方向とする。
【0012】
光源110は、図2に示すように、基板111に発光ダイオードである発光素子112を搭載されている。光源110は、基板111がヒートシンク部材120に形成された台座部121に配置され、その上から給電ホルダ(不図示)が取り付けられる。さらに、この光源110では、給電ホルダに設けられた端子に基板111の端子が接続されて台座部121に固定される。これにより、光源110は、点灯制御回路から給電ホルダを介して発光素子112に電力が供給されて適宜点灯される。
【0013】
ヒートシンク部材120は、台座部121に取り付けられた光源110で発生する熱を外部に逃がす放熱部材であり、下部に形成された複数の放熱フィン122から放熱する。このヒートシンク部材120は、ランプハウジングに固定される。さらに、ヒートシンク部材120には、冷却効果を高めるために適宜冷却ファンユニットが設けられる。
【0014】
また、このヒートシンク部材120の上面120aは、図2に示すように、光源110及びリフレクタ部材130が取り付けられる第1取付領域120bと、シェードユニット140が取り付けられる第2取付領域120cと、を有している。ここで、第1取付領域120bと第2取付領域120cは、光軸方向に沿って並んでおり、第2取付領域120cは、上面120aに設けられた凹部に位置している。
【0015】
そして、第1取付領域120bには、光源110が配置される台座部121と、第1ネジ穴123と、一対の第1ガイド突起124と、が形成されている。そして、第1ネジ穴123には、リフレクタ部材130を固定するネジ部材が捩じ込まれる。また、一対の第1ガイド突起124は、リフレクタ部材130に形成された不図示のガイド穴に挿入される。
【0016】
また、第2取付領域120cには、一対の第2ネジ穴125と、一対の第2ガイド突起126と、凹所127と、が形成されている。そして、一対の第2ネジ穴125には、シェードユニット140のブラケット141を固定するネジ部材Nが捩じ込まれる。また、一対の第2ガイド突起126は、ブラケット141に形成されたガイド穴141eに挿入される。さらに、凹所127には、シェードユニット140のソレノイド143が配置される。すなわち、シェードユニット140は、ガイド穴141eに第2ガイド突起126が挿入され、ネジ部材Nが第2ネジ穴125に捩じ込まれることで、ヒートシンク部材120に位置決めされて固定される。
【0017】
さらに、このヒートシンク部材120は、幅方向の両側部に形成された一対の固定片120dを有している。各固定片120dは、上下方向に延びており、上端部及び下端部には、それぞれネジ穴120eが形成されている。ヒートシンク部材120は、固定片120d(そのネジ穴120e)を介してランプハウジングに固定される。
【0018】
リフレクタ部材130は、図1に示すように、車両前方に向いた反射面131を有し、光源110から出射された光をこの反射面131で投影レンズ150側に反射する。このリフレクタ部材130は、図1に示すように、ヒートシンク部材120に取り付けられて、光源110の上方を覆う。このとき、ガイド穴に第1ガイド突起124が挿入され、第1ネジ穴123にリフレクタ部材130の固定用のネジ部材が捩じ込まれることで、リフレクタ部材130は、ヒートシンク部材120に位置決めされて固定される。
【0019】
投影レンズ150は、リフレクタ部材130の反射面131で反射された光を車両の前方へ投影し、リフレクタ部材130と協働して所定の配光パターンを形成する。この投影レンズ150は、レンズホルダ160に支持される。また、レンズホルダ160は、図1では図示していないが、リフレクタ部材130に固定される。これにより、投影レンズ150は、光源110やリフレクタ部材130に対して位置決めされる。
【0020】
シェードユニット140は、光源110と投影レンズ150との間に配置され、光源110が出射した光の一部を適宜遮ることで、投影レンズ150によって投影される投影光の配光を、ハイビーム配光パターン(走行配光パターン)又は、ロービーム配光パターン(すれ違い配光パターン)に切り換える。このシェードユニット140は、図1に示すように、ブラケット141と、シェード142と、ソレノイド143と、リンク機構147と、を備えている。
【0021】
ブラケット141は、金属製の板部材が適宜折り曲げられて形成され、シェード142を支持すると共にソレノイド143が組み付けられた状態で、ヒートシンク部材120に固定される。このブラケット141は、図2に示すように、平板部141aと、起立部141bと、垂下部141cと、を有している。
【0022】
平板部141aは、平坦な板状とされ、ヒートシンク部材120に固定されると共に、下側にソレノイド143が組み付けられる。この平板部141aには、一対のネジ用穴141dと、一対のガイド穴141eと、リンク用穴141fと、一対のカシメ片用穴141gと、位置決め片用穴141hと、複数の肉抜き穴と、が形成されている。
【0023】
一対のネジ用穴141dには、ブラケット141をヒートシンク部材120に固定するネジ部材Nがそれぞれ差し込まれる。一対のガイド穴141eには、ヒートシンク部材120へのブラケット141の取付時に、第2ガイド突起126が挿入される。リンク用穴141fからは、ソレノイド143に連結されたリンク機構147が突出する。
【0024】
さらに、一対のカシメ片用穴141gは、いずれも幅方向に延びる矩形の貫通孔であり、ソレノイド143をブラケット141に組み付けた際、それぞれヨーク144に形成されたカシメ片145aが挿入される。また、位置決め片用穴141hは光軸方向に延びる矩形の貫通孔であり、ソレノイド143をブラケット141に組み付けた際、ヨーク144に形成された位置決め片145bが挿入される。
【0025】
ここで、ソレノイド143は、カシメ片145aがカシメ片用穴141gに挿入され、位置決め片145bが位置決め片用穴141hに挿入されることで、ブラケット141に組み付けるときの位置決めがなされる。そのため、カシメ片用穴141g及び位置決め片用穴141hが、ブラケット141に形成されたソレノイド143の組み付け位置を規定する位置決め部に相当する。
【0026】
起立部141bは、平板部141aの後端縁から立ち上がった板状とされ、シェード142を回転可能に支持する。この起立部141bは、幅方向両端の上縁部の一部が曲げ加工されて一対の軸受部141kが形成されると共に、幅方向の中間部にバネ受部141mが形成されている。
【0027】
垂下部141cは、平板部141aの前端縁から垂れ下がった板状とされ、凹所127に配置されたソレノイド143の前側を覆い、シェードユニット140の組付時等にソレノイド143を保護する。この垂下部141cには、複数の開口141nが形成されている。
【0028】
シェード142は、配光の切り換えのために変位(起倒)され、起立状態で光源110から出射された光の一部を遮光してロービーム配光パターンのカットオフラインを形成する。このシェード142は、図1に示すように、シェード板142aと、回転軸142bと、を有している。回転軸142bは、シェード板142aに形成された軸穴に通されて、ブラケット141の起立部141bに形成された軸受部141kに両端が支持される。さらに、この回転軸142bには、一端がブラケット141の起立部141bに形成されたバネ受部141mに取り付けられ、他端がシェード板142aに取り付けられたネジリコイルバネ(不図示)が巻き付けられる。このネジリコイルバネは、シェード板142aに対して立ち上がる方向の回転力を付与する。
【0029】
リンク機構147(図1参照)は、ソレノイド143の動作をシェード142に伝達する。このリンク機構147は、一端がソレノイド143の後述するプランジャ143bに取り付けられ、ブラケット141の平板部141aに形成されたリンク用穴141fから突出して、先端がシェード板142aに当接する。リンク機構147は、プランジャ143bが移動することでリンク用穴141fからの突出量が変化し、シェード板142aを適宜押圧する。
【0030】
ソレノイド143は、配光の切り換え時に駆動してシェード142を変位(起倒)させる駆動部である円筒状のコイル143aと、コイル143aの一端から突出して軸方向に進退移動するプランジャ143bと、コイル143aを保持するヨーク144と、コネクタ143cと、を有している。ソレノイド143では、コネクタ143cを介してコイル143aへの通電が可能とされており、非通電時にはネジリコイルバネの回転力によりプランジャ143bが進出され、通電されるとネジリコイルバネの回転力に抗してプランジャ143bをコイル143a側へと後退させる。そのプランジャ143bでは、先端部にリンク機構147が接続される。また、コイル143aは、給電されることで発熱する。
【0031】
ヨーク144は、ブラケット141に固定される金属筐体であり、コイル143aの周囲を全周にわたって囲む矩形の枠形状を呈している。このヨーク144は、ここでは、ブラケット141に対向する上面と、下方に臨む下面とが開放している。また、ヨーク144の一つの側面(図2では手前に向いた面)には、プランジャ143bが突出する貫通孔144aが形成されている。
【0032】
そして、このヨーク144のブラケット141に対向する端面は、コイル143aの周囲を取り囲み、且つ、ヨーク144をブラケット141へ組み付けた時に、このブラケット141に対向するセット面145となる。このセット面145には、幅方向に延びる一対のカシメ片145aと、光軸方向に延びる一つの位置決め片145bと、が突出形成されている。
【0033】
ここで、一対のカシメ片145aは、それぞれブラケット141の平板部141aの厚みよりも高さが大きく、カシメ片用穴141gに挿入した際、先端部がカシメ片用穴141gから突出する。ヨーク144は、カシメ片用穴141gから突出した一対のカシメ片145aの先端部が各々カシメられることで、ブラケット141に組み付けられる。また、位置決め片145bは、ブラケット141の平板部141aの厚みと同程度の高さに設定され、位置決め片用穴141hに挿入した際、先端部が位置決め片用穴141hから突出することはない。そのため、ブラケット141にシェード142等を取り付ける際、位置決め片145bと干渉することはない。
【0034】
そして、ブラケット141の平板部141aには、遮熱用穴141j(貫通孔)が形成されている。この遮熱用穴141jは、光軸方向に延びる貫通孔であり、ネジ用穴141dとカシメ片用穴141gとの間であって、セット面145の外周縁に沿った一部に平面視で重複する位置に形成されている。
【0035】
ここで、ネジ用穴141dは、ヒートシンク部材120へのブラケット141の固定箇所である。また、カシメ片用穴141gは、ブラケット141へのソレノイド143の組み付け箇所である。そのため、遮熱用穴141jは、ヒートシンク部材120へのブラケット141の固定箇所と、ブラケット141へのソレノイド143の組み付け箇所との間に形成されていることになる。
【0036】
また、「セット面145の外周縁に沿った一部」とは、セット面145の外周縁に沿って延びると共に、この外周縁からセット面145の内周縁に向かうヨーク144の厚み方向における所定の範囲である。ここで、「所定の範囲」は、ヨーク144の厚み寸法よりも小さく、遮熱用穴141jは、セット面145の内周縁には重複しない。そして、「平面視で」とは、車両用灯具100を上方から鉛直方向に沿って見下ろしたときの視線方向で見た状態を意味する。すなわち、図3に示す状態であり、この図3では、遮熱用穴141jが重複する「ヨーク144のセット面145の外周縁に沿った一部」を、ドッドを付して示す。
【0037】
さらに、この遮熱用穴141jは、ソレノイド143のブラケット141への組み付け位置を規定する位置決め部であるカシメ片用穴141g及び位置決め片用穴141hとは異なる位置(重複しない位置)に形成されている。このため、遮熱用穴141jは、カシメ片145a及び位置決め片145bには重複しない。
【0038】
また、セット面145の外周縁に沿った一部に遮熱用穴141jが平面視で重複することで、セット面145は、図5に示すように、遮熱用穴141jに平面視で重複する第1領域146aと、ブラケット141に平面視で重複する第2領域146bと、を有することになる。そして、第1領域146aのヨーク厚み方向の第1長さL1は、第2領域146bのヨーク厚み方向の第2長さL2よりも長くなっている。なお、「ヨーク厚み方向の長さ」とは、ヨーク144の板厚に沿った長さである。すなわち、第1長さL1は、ヨーク144の外周縁から遮熱用穴141jの開口縁までの長さとなり、第2長さL2は、ヨーク144の内周縁から遮熱用穴141jの開口縁までの長さとなる。
【0039】
以下、実施例1の車両用灯具100の作用を説明する。
【0040】
実施例1の車両用灯具100では、ソレノイド143のコイル143aに通電し、コイル143aを駆動してプランジャ143bを進退移動させることでリンク機構147を動かす。そして、シェード142を回転させて、光源110が出射した光の配光を切り換える。ここで、コイル143aは通電されることで発熱する。この熱は、コイル143aを保持するヨーク144に伝わり、ヨーク144からカシメ固定されたブラケット141に伝達される。
【0041】
ブラケット141は、ヒートシンク部材120に固定されているが、ヒートシンク部材120は光源110が発生する熱を外部に逃がす放熱部材である。そのため、コイル143aで発生した熱がヨーク144からブラケット141を介してヒートシンク部材120へ伝わると、ヒートシンク部材120の放熱性能が低下する。その結果、光源110の熱を十分に逃がすことが難しくなり、光源110に熱による影響が生じるおそれがある。
【0042】
さらに、コイル143aから発生した熱によって、コイル143aの周囲の雰囲気温度は上昇する。一方、実施例1の車両用灯具100では、このコイル143aを有するシェードユニット140が、光源110と投影レンズ150との間に配置されている。
【0043】
そのため、ブラケット141とヨーク144との間から、コイル143aの熱によって暖まった空気が漏れ出て発散すると、リフレクタ部材130や投影レンズ150等のシェードユニット140の周囲に配置された部材に対しても熱による影響が生じる可能性がある。
【0044】
これに対し、実施例1の車両用灯具100では、光源110と投影レンズ150との間に配置されたシェードユニット140が、光源110が取り付けられたヒートシンク部材120に固定されるブラケット141と、駆動することで配光を切り換えるコイル143aと、コイル143aを保持すると共にブラケット141に組み付けられるヨーク144と、を有している。そして、このヨーク144は、ブラケット141への組付状態でブラケット141に接するセット面145を備え、ブラケット141には、セット面145の外周縁に沿った一部に平面視で重複する遮熱用穴141jが形成されている。
【0045】
これにより、セット面145の一部が遮熱用穴141jを介して露出するため、セット面145の全面がブラケット141に接することがなくなる。そのため、例えば、セット面145の全面とブラケット141とが接触する場合と比べて、セット面145とブラケット141との接触面積を低減することができ、ヨーク144からブラケット141への熱の伝わりを抑制することができる。
【0046】
また、遮熱用穴141jをブラケット141に形成したことによって、ヨーク144からヒートシンク部材120へ直線的に伝わる熱の伝達経路の一部を遮断することができる。そのため、熱の伝達経路は、遮熱用穴141jを迂回するために直線的に熱が伝わる場合よりも長くなり、ヨーク144からヒートシンク部材120へと熱を伝わりにくくできる。
【0047】
さらに、遮熱用穴141jが重複するのは、セット面145の外周縁に沿った一部である。そのため、セット面145の内周縁からヨーク144の厚み方向の所定の範囲は、ヨーク144の全周にわたってブラケット141に接することができる。これにより、セット面145とブラケット141との間に隙間が生じず、コイル143aの熱によって暖まった空気が、ブラケット141とヨーク144との間から漏れ出ることを防止できる。
【0048】
この結果、ヒートシンク部材120の放熱性能の低下を抑え、コイル143aに通電することで生じる熱による光源110への影響を防止できる。また、コイル143aの熱によって昇温した空気の発散を抑え、投影レンズ150等のシェードユニット140の周囲に配置された部材への熱による影響の発生を抑制することができる。
【0049】
しかも、ヒートシンク部材120の放熱性能の低下を抑制することで、ヒートシンク部材120の大型化が不要となり、車両用灯具100の大型化を抑えることができる。
【0050】
また、この実施例1の車両用灯具100では、遮熱用穴141jが、ヒートシンク部材120へのブラケット141の固定箇所(ネジ用穴141d)と、ブラケット141へのヨーク144の組み付け箇所(カシメ片用穴141g)との間に形成されている。これにより、ヨーク144の組み付け箇所から、ブラケット141の固定箇所に向かって直線的に延びる熱の伝達経路の途中に遮熱用穴141jが位置し、直線的な熱の伝達経路を遮断できる。このため、ヒートシンク部材120に伝わる熱をさらに抑えることができる。
【0051】
さらに、実施例1の車両用灯具100では、セット面145が、遮熱用穴141jに平面視で重複する第1領域146aと、ブラケット141に平面視で重複する第2領域146bと、を有している。そして、第1領域146aのヨーク厚み方向の第1長さL1は、第2領域146bのヨーク厚み方向の第2長さL2よりも長くなっている。
【0052】
これにより、セット面145は、ヨーク厚み方向の長さの半分以上が遮熱用穴141jに重複し、遮熱用穴141jを介して露出する。そのため、ヨーク144とブラケット141との非接触割合を高め、ブラケット141に対してさらに熱を伝わりにくくできる。
【0053】
さらに、実施例1の車両用灯具100では、ブラケット141は、ヨーク144の組み付け位置を規定するカシメ片用穴141g及び位置決め片用穴141h(位置決め部)を有している。そして、遮熱用穴141jは、このカシメ片用穴141g及び位置決め片用穴141hとは異なる位置に形成されている。
【0054】
そのため、遮熱用穴141jを形成したことでヨーク144の位置決めや組付状態に影響が生じることがなく、ソレノイド143をブラケット141に適切に組み付けることができる。
【0055】
本開示に係る車両用灯具の一実施例の車両用灯具100は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0056】
車両用灯具100は、配光の切り換え時に駆動するコイル143aを保持すると共に、ヒートシンク部材120に固定されるブラケット141に組み付けられるヨーク144が、ブラケット141に接するセット面145を備え、ブラケット141には、セット面145の外周縁に沿った一部に重複する遮熱用穴141jが形成されている。これにより、ヨーク144からヒートシンク部材120へと熱を伝わりにくくすると共に、コイル143aの熱によって昇温した空気の発散を抑え、コイル143aへの通電時に生じる熱による影響を抑制することができる。
【0057】
また、車両用灯具100は、遮熱用穴141jが、ヒートシンク部材120へのブラケット141の固定箇所と、ブラケット141へのヨーク144の組み付け箇所との間に形成されている。これにより、ヨーク144からヒートシンク部材120へ直線的に伝わる熱の伝達経路を遮断して、遮熱効果を高めることができる。
【0058】
また、車両用灯具100は、セット面145が、遮熱用穴141jに平面視で重複する第1領域146aと、ブラケット141に平面視で重複する第2領域146bと、を有している。そして、第1領域146aの第1長さL1は、第2領域146bの第2長さL2よりも長くなっている。これにより、ヨーク144とブラケット141との非接触割合を高め、ヨーク144からブラケット141への熱の伝達をさらに抑えることができる。
【0059】
また、車両用灯具100は、ブラケット141が、ヨーク144の組み付け位置を規定するカシメ片用穴141g及び位置決め片用穴141h(位置決め部)を有し、遮熱用穴141jが、このカシメ片用穴141g及び位置決め片用穴141hとは異なる位置に形成されている。これにより、遮熱用穴141jがヨーク144の位置決めに影響を与えることがなく、ソレノイド143をブラケット141に適切に組み付けることができる。
【0060】
以上、本開示の車両用灯具を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0061】
実施例1では、セット面145にカシメ片145a及び位置決め片145b以外の凹凸がなく、セット面145のうち、カシメ片145a及び位置決め片145bを除いた領域では、ヨーク144の全周にわたってブラケット141に接触している。これにより、ブラケット141とヨーク144との間からの空気の漏れを規制できるが、これに限らない。
【0062】
例えば、シェードユニット140と投影レンズ150との間に熱がこもりにくい構造であったり、投影レンズ150の耐熱性が高く、熱による影響を受けにくいものであったりする場合、ブラケット141とヨーク144との間からコイル143aの周囲の空気が漏れ出ても影響が生じない。この場合、図6に示すように、ヨーク144のブラケット141に対向する端面(セット面145)に凹部145c形成してもよい。なお、凹部145cは、セット面145の一部を上下方向に沿ってへこませることで形成される。これにより、図7A及び図7Bに示すように、ヨーク144をブラケット141に組み付けた状態で、ブラケット141とヨーク144との間に隙間Sを生じさせることができる。
【0063】
そして、この隙間Sを介して、コイル143aの周囲の空気をヨーク144内から逃がすことができる。そのため、コイル143aの周囲の空気の対流が滞ることを抑制し、コイル143aの放熱性を高めることができる。そして、コイル143aの放熱性を向上させることで、発熱によるソレノイド143の駆動力の低下を抑制でき、ソレノイド143の小型化や省電力化を図ることができる。
【0064】
さらに、凹部145c形成したことで、セット面145とブラケット141との接触面積を、実施例1の場合よりもさらに低減することができる。この結果、ヨーク144からブラケット141への熱の伝わりをさらに抑制することができる。
【0065】
また、実施例1では、ブラケット141に遮熱用穴141jを一つだけ形成した例を示したが、これに限らない。遮熱用穴141jは、複数形成してもよい。また、実施例1の遮熱用穴141jは、光軸方向に延びているが、これに限らず、幅方向に延びる貫通孔であってもよいし、延在方向が途中で屈曲して光軸方向及び幅方向にそれぞれ延びる貫通孔であってもよい。すなわち、遮熱用穴141jの数や形状は、任意に設定することができる。
【0066】
また、実施例1では、シェードユニット140が有するシェード142を回転させることで光源110からの光の一部を遮蔽し、配光を切り換える例を示したが、これに限らない。配光切替ユニットは、駆動源であるコイル143aによって例えば、光源110の出射方向を変えたり、光の反射方向を変化させたりして配光を切り換えるものであってもよい。
【0067】
さらに、実施例1では、リフレクタ部材130と投影レンズ150とで光を制御して所定の配光パターンを形成しているが、リフレクタ部材130のみで光を制御してもよく、投影レンズのみで制御してもよく、他の構成でもよく、上記した実施例1の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0068】
100 車両用灯具
110 光源
120 ヒートシンク部材
121 台座部
130 リフレクタ部材
140 シェードユニット(配光切換ユニット)
141 ブラケット
141a 平板部
141d ネジ用穴(ヒートシンク部材へのブラケットの固定箇所)
141g カシメ片用穴(ブラケットへのソレノイドの組み付け箇所、位置決め部)
141h 位置決め片用穴(位置決め部)
141j 遮熱用穴(貫通孔)
142 シェード
143 ソレノイド
143a コイル(駆動部)
143b プランジャ
144 ヨーク
145 セット面
145a カシメ片
145b 位置決め片
145c 凹部
146a 第1領域
146b 第2領域
147 リンク機構
150 投影レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B