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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】読取装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
H04N1/04 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020137828
(22)【出願日】2020-08-18
(65)【公開番号】P2022034166
(43)【公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107216
【弁理士】
【氏名又は名称】伊與田 幸穂
(72)【発明者】
【氏名】山田 健二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝春
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-135920(JP,A)
【文献】特開2012-054758(JP,A)
【文献】特開2009-111564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光源と、
第2光源と、
白基準板と、
前記白基準板に対して副走査方向に離れて設けられ、前記白基準板とは異なる素材からなる部材と、
前記第1光源と前記第2光源のいずれか一方に照射されることで前記副走査方向のいずれか一方向の読取りを行い当該第1光源と当該第2光源の他方に照射されることで当該副走査方向の他方の読取りを行う場合の当該第1光源により照射された前記白基準板の読み値である第1値と、当該第1光源により照射された前記部材の読み値である第2値と、当該第2光源により照射された前記部材の読み値である第3値と、により当該第2光源の光量を調整する調整手段と、
を備え
前記部材は、読取装置の筐体又は当該筐体に貼付されたシート部材である、
読取装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記第1値を用いて調整された前記第1光源による前記第2値を基に前記第2光源の光量を調整する、ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記第3値が前記第2値に合うように前記第2光源の光量を調整する、ことを特徴とする請求項2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記第3値が前記第2値を基に算出された値に合うように前記第2光源の光量を調整する、ことを特徴とする請求項2に記載の読取装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記第2値に予め定められた数値を乗じた値に前記第3値が合うように前記第2光源の光量を調整し、
前記予め定められた数値は、複数の数値の中からユーザにより選択されたものである、ことを特徴とする請求項2に記載の読取装置。
【請求項6】
前記調整手段は、読み取る媒体の副走査方向の長さに応じて前記第3値または、前記第2光源により照射された前記白基準板の読み値である第4値を用いて前記第2光源の光量を調整する、ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項7】
前記副走査方向の長さが予め定められた長さよりも大きい場合、
前記調整手段は、前記第3値が前記第2値に合うように前記第2光源の光量を調整する、ことを特徴とする請求項6に記載の読取装置。
【請求項8】
前記副走査方向の長さが予め定められた長さ以下である場合、
前記調整手段は、前記第4値を用いて前記第2光源の光量を調整する、ことを特徴とする請求項6に記載の読取装置。
【請求項9】
前記部材は、前記第1光源及び前記第2光源の光を拡散する面を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項10】
前記部材は、光が拡散する表面加工が施されている、ことを特徴とする請求項9に記載の読取装置。
【請求項11】
前記部材は、光拡散シート部材が貼付されている、ことを特徴とする請求項9に記載の読取装置。
【請求項12】
第1光源を副走査方向の一方向に移動させて媒体を読み取るとともに、第2光源を副走査方向の他方向に移動させて当該媒体を読み取る読取装置と、
前記読取装置の前記第1光源及び前記第2光源により読み取った画像情報を用いて画像を形成する画像形成手段と
を備え、
前記読取装置は、
白基準板と、
前記白基準板に対して前記副走査方向に離れて設けられ、前記白基準板とは異なる素材からなる部材と、
前記第1光源により照射された前記白基準板の読み値である第1値と、当該第1光源により照射された前記部材の読み値である第2値と、前記第2光源により照射された前記部材の読み値である第3値と、により当該第2光源の光量を調整する調整手段と、を備え
前記部材は、前記読取装置の筐体又は当該筐体に貼付されたシート部材である、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、拡散反射光の参照光を反射する第1の参照面と、正反射光を含む参照光を反射する第2の参照面と、原稿からの拡散反射光を読み取るための第1の光を原稿及び第1の参照面に照射し原稿からの正反射光を含む反射光を読み取るための第2の光を原稿及び第2の参照面に照射する照射手段と、原稿からの拡散反射光及び正反射光を含む反射光並びにこれらの参照光を受光する受光手段とを備える読取装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-135920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、複数の光源を持ち、往路と復路で異なる光源により読み取りを行う構成では、往路及び復路のそれぞれで輝度調整が必要になり、往路用の校正板と復路用の校正板を備える場合には組立作業が複雑になり、組立作業性が低下する。
本発明の目的は、白基準板を複数備える場合に比べて、組立作業性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、第1光源と、第2光源と、白基準板と、前記白基準板に対して副走査方向に離れて設けられ、前記白基準板とは異なる素材からなる部材と、前記第1光源と前記第2光源のいずれか一方に照射されることで前記副走査方向のいずれか一方向の読取りを行い当該第1光源と当該第2光源の他方に照射されることで当該副走査方向の他方の読取りを行う場合の当該第1光源により照射された前記白基準板の読み値である第1値と、当該第1光源により照射された前記部材の読み値である第2値と、当該第2光源により照射された前記部材の読み値である第3値と、により当該第2光源の光量を調整する調整手段と、を備え、前記部材は、読取装置の筐体又は当該筐体に貼付されたシート部材である、読取装置である。
請求項2に記載の発明は、前記調整手段は、前記第1値を用いて調整された前記第1光源による前記第2値を基に前記第2光源の光量を調整する、ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置である。
請求項3に記載の発明は、前記調整手段は、前記第3値が前記第2値に合うように前記第2光源の光量を調整する、ことを特徴とする請求項2に記載の読取装置である。
請求項4に記載の発明は、前記調整手段は、前記第3値が前記第2値を基に算出された値に合うように前記第2光源の光量を調整する、ことを特徴とする請求項2に記載の読取装置である。
請求項5に記載の発明は、前記調整手段は、前記第2値に予め定められた数値を乗じた値に前記第3値が合うように前記第2光源の光量を調整し、前記予め定められた数値は、複数の数値の中からユーザにより選択されたものである、ことを特徴とする請求項2に記載の読取装置である。
請求項6に記載の発明は、前記調整手段は、読み取る媒体の副走査方向の長さに応じて前記第3値または、前記第2光源により照射された前記白基準板の読み値である第4値を用いて前記第2光源の光量を調整する、ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置である。
請求項7に記載の発明は、前記副走査方向の長さが予め定められた長さよりも大きい場合、前記調整手段は、前記第3値が前記第2値に合うように前記第2光源の光量を調整する、ことを特徴とする請求項6に記載の読取装置である。
請求項8に記載の発明は、前記副走査方向の長さが予め定められた長さ以下である場合、前記調整手段は、前記第4値を用いて前記第2光源の光量を調整する、ことを特徴とする請求項6に記載の読取装置である。
請求項9に記載の発明は、前記部材は、前記第1光源及び前記第2光源の光を拡散する面を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置である。
請求項10に記載の発明は、前記部材は、光が拡散する表面加工が施されている、ことを特徴とする請求項9に記載の読取装置である。
請求項11に記載の発明は、前記部材は、光拡散シート部材が貼付されている、ことを特徴とする請求項9に記載の読取装置である。
請求項12に記載の発明は、第1光源を副走査方向の一方向に移動させて媒体を読み取るとともに、第2光源を副走査方向の他方向に移動させて当該媒体を読み取る読取装置と、前記読取装置の前記第1光源及び前記第2光源により読み取った画像情報を用いて画像を形成する画像形成手段とを備え、前記読取装置は、白基準板と、前記白基準板に対して前記副走査方向に離れて設けられ、前記白基準板とは異なる素材からなる部材と、前記第1光源により照射された前記白基準板の読み値である第1値と、当該第1光源により照射された前記部材の読み値である第2値と、前記第2光源により照射された前記部材の読み値である第3値と、により当該第2光源の光量を調整する調整手段と、を備え、前記部材は、前記読取装置の筐体又は当該筐体に貼付されたシート部材である、画像形成装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1によれば、白基準板を複数備える場合に比べて、組立作業性の向上を図ることができる。
請求項2によれば、第2光源の光量調整に部材の読み値を用いない場合に比べて、白色基準板の数を減らすことができる。
請求項3によれば、第2光源の光量調整に部材の読み値を用いない場合に比べて、白色基準板の数を減らすことができる。
請求項4によれば、第2値そのものにより第2光源の光量調整する場合に比べて、読み取り内容の使用目的に応じた調整を行うことができる。
請求項5によれば、ユーザによる数値の選択操作が許容されない場合に比べて、ユーザの要望に応じた読み取りを行うことができる。
請求項6によれば、読み取る媒体の副走査方向の長さに応じて読み取り制御を変更しない場合に比べて、画像読み取りを行わない時間を短くすることができる。
請求項7によれば、読み取る媒体の副走査方向の長さに応じて読み取り制御を変更しない場合に比べて、画像読み取りを行わない時間を短くすることができる。
請求項8によれば、読み取る媒体の副走査方向の長さに応じて読み取り制御を変更しない場合に比べて、画像読み取りを行わない時間を短くすることができる。
請求項9によれば、光を拡散する面を有しない場合に比べて、読み値を検出する領域への入光を均一化することができる。
請求項10によれば、光が拡散する表面加工を施していない場合に比べて、読み値を検出する領域への入光を均一化することができる。
請求項11によれば、光拡散防止シート部材を用いない場合に比べて、製造コストを抑制することができる。
請求項12によれば、白基準板を複数備える場合に比べて、組立作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態に係る読取装置の構成を示す図である。
図2】キャリッジの構成を示す図であり、(a)は拡散反射光源が発光する場合、(b)は正反射光源が発光する場合を示す。
図3】読取装置のブロック図である。
図4】読み取り動作の処理手順を示すフローチャートである。
図5】別の読み取り動作の処理手順を示すフローチャートである。
図6】本実施の形態に係る画像形成装置の構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る読取装置100の構成を示す図である。
同図に示すように、読取装置100は、原稿Dを光学的に読み取り、その読取結果を表す画像情報を生成するものである。読取装置100は、プラテンガラス110と、原稿ガイド120と、キャリッジ130と、ミラー140、150、結像レンズ160、センサ170と、白基準板180と、部材190とを備える。
なお、本実施の形態に係る読取装置100は、原稿を搬送する原稿送り装置を備えていないが、原稿送り装置を備える構成も考えられる。
【0009】
プラテンガラス110は、読み取り対象である原稿Dを支持する透明のガラス板である。なお、本実施の形態における板状部材は、ガラス板に限らず、例えばアクリル板などであってもよい。
【0010】
原稿ガイド120は、原稿Dの位置決めをするために設けられた部材である。原稿ガイド120は、原稿Dと接するように設けられた辺部を主走査方向に有し、使用者がこの辺部に沿うように原稿Dを置く。
【0011】
キャリッジ130は、原稿Dを読み取るときに副走査方向Yに移動するように構成されている。キャリッジ130は、図1に示す原点位置で待機する。キャリッジ130は、拡散反射光源131、正反射光源132及びミラー133を内部に備える。拡散反射光源131は第1光源の一例であり、正反射光源132は第2光源の一例である。
拡散反射光源131は、原稿Dからの拡散反射光を読み取るための光を照射する。正反射光源132は、原稿Dからの正反射光を含む反射光を読み取るための光を照射する。
ミラー133は、原稿Dからの拡散反射光及び正反射光を含む反射光をミラー140(図1参照)に向けて反射させる部材である。
【0012】
ミラー140、150は、原稿Dからの拡散反射光及び正反射光を含む反射光の経路を変更させ、結像レンズ160及びセンサ170が設けられている位置に導く。
なお、本実施の形態ではミラー140、150をプラテンガラス110に対して移動させずに固定設置するが、これに限られず、プラテンガラス110に対して移動するキャリッジ(不図示)にミラー140、150を備える構成を採用しても良い。かかる構成を採用すると、原稿Dを読み取るときのキャリッジ130の副走査方向Yへの移動速度を低く設定することが可能になる。
【0013】
結像レンズ160は、ミラー150からの拡散反射光及び正反射光を決められた位置に結像させる。
【0014】
センサ170は、結像レンズ160により決められた位置に結像された拡散反射光及び正反射光を含む反射光を受け、受けた光に応じた画像信号を生成する。画像信号は、例えば、光の強度に応じて0~255のいずれかの値をとる8ビットの信号である。センサ170は、CCD(Charge Coupled Device)リニアイメージセンサ等の受光素子列を備え、受光した光をその強弱を表す信号に変換する。なお、センサ170は、カラーフィルタ等を備え、原稿Dの色を表す画像信号を生成してもよい。
なお、読取装置100は、画像信号を色情報又は光沢情報として外部装置に出力することができる。読取装置100は、光沢情報を読み取ったときのモードを識別する識別情報を色情報や光沢情報と対応付けて出力してもよい。
【0015】
白基準板180は、原稿ガイド120に覆われるようにして設けられている。白基準板180は、拡散反射光の参照光を得るために設けられた基準面を有する。参照光とは、シェーディング補正において基準となる光のことをいう。基準面は、例えば、主走査方向に拡散反射光源131や正反射光源132と同程度の幅を有する表面として設けられる。白基準板180の基準面としては、例えば、完全拡散反射面に近似した反射特性を有する、いわゆる標準白色面が用いられる。
【0016】
部材190は、白基準板180とは異なる素材からなるものであり、本実施の形態では、読取装置100の筐体を構成するプラスチック部材である。部材190は、白基準板180に対して副走査方向Yに離れて設けられており、本実施の形態では、副走査方向Yの後端側に位置する。このため、部材190は、白基準板180ほどの色の管理はされておらず、それ単体で輝度調整に使うには一般的に不向きな部材である。部材190のキャリッジ130と対向する面すなわち読み取り面191は、ユーザが視認できない裏側の面である。部材190は、白基準板180とは異なる素材からなる部材の一例であり、読み取り面191は、光を拡散する面の一例である。
本実施の形態では、同一光源で白基準板180と部材190をそれぞれ読み取り、白基準板180の読み値をもとに部材190の色を明らかにすることで、部材190の読み値を使って復路側の高度な輝度調整を可能にする。詳細は後述する。
【0017】
図2は、キャリッジ130の構成を示す図であり、(a)は拡散反射光源131が発光する場合、(b)は正反射光源132が発光する場合を示す。
同図の(a)及び(b)に示すように、キャリッジ130は、拡散反射光源131、正反射光源132及びミラー133を備えている。
拡散反射光源131は、原稿Dからの拡散反射光を得るための拡散反射光源であり、原稿Dの法線方向に対して入射角45度で原稿Dに入射するように設けられている。
【0018】
正反射光源132は、原稿Dからの正反射光を含む反射光を得るためのものであり、反射光の経路Lを遮ることがない位置に設けられる。正反射光源132が照射する光の入射角度は、5度~10度程度であるが、正反射光源132自体が経路Lを遮らない範囲において、0度に近いほど望ましい。したがって、正反射光源132は、管径が小さいほど好ましい。
【0019】
正反射光源132の好適なものは、例えば蛍光ランプであり、より詳細には、希ガス蛍光ランプ(キセノン蛍光ランプ等)である。また、正反射光源132は、開口部を形成しやすい外部電極タイプのものであるとよい。
【0020】
なお、正反射光源132は、白色のLED(Light Emitting Diode)を主走査方向に複数配列したものであってもよい。この場合、LEDは、主走査方向についての輝度が不均等にならないように、密に設けたり、あるいは光を主走査方向(図2の垂直方向)に拡散させる拡散板や導光部材を設けたりして、照射される光の角度を制限する。本実施の形態では、照射する光の角度が小さくなるカバー132aを備えている。
【0021】
ミラー133は、反射光の進行方向を約90度変えるように(すなわち、ミラー133の法線方向に対して約45度で入射するように)設けられている。拡散反射光源131または正反射光源132からの光のうちの主たるもの(以下「主光線」という。)Lは、原稿Dの法線方向に対して45度の角度をなすようになされている。
【0022】
読取装置100は、原稿Dの法線方向に対して主光線が45度の角度をなして入射するように光線束を照射し、この法線方向(すなわち、法線方向に対して0度の角度)に反射した反射光を読み取るように構成されたものである。この構成は、JIS Z8722等に規定されている「照明及び受光の幾何学的条件」に則したものであり、画像信号の繰返し性及び反復性を保証するためになされた構成である。なお、同様の規定は、ISO(International Organization for Standardization)規格等にも存在する。
【0023】
ここで、キャリッジ130の拡散反射光源131及び正反射光源132は、選択的に発光可能である。このため、拡散反射光源131を点灯させ正反射光源132を消灯させた状態でキャリッジ130を副走査方向Yのいずれか一方に移動させる状態と、正反射光源132を点灯させ拡散反射光源131を消灯させた状態でキャリッジ130を副走査方向Yの他方に移動させる状態と、を実現できる。
より詳細には、本実施の形態は、図2(a)に示すように、副走査方向Yの方向Y1に移動させる際に、拡散反射光源131のみ点灯させて原稿Dを読み取り、また、同図(b)に示すように、副走査方向Yの方向Y2に移動させる際に、正反射光源132のみ点灯させて原稿Dを読み取る。
キャリッジ130を副走査方向Yに1往復させることで、原稿Dについて拡散反射光源131による拡散反射光の往路読み取りと正反射光源132による正反射光の復路読み取りを行うことができる。
【0024】
原稿Dとして、金属光沢に類似した光沢を有するものや鏡面光沢度の高い用紙に類似した光沢を有するものでは、拡散反射光の読み取りと、光沢情報を取得するための正反射光の読み取りとを行う必要がある。そのような2回の読み取りを1往復で済ませることで、2往復する場合に比べて読み取り時間を短くすることができる。
ここにいう原稿Dとしては、上述のものに限定されず、紙、布、金属、樹脂、ゴムなどが一例に挙げられる。入射角が互いに異なる複数の光源131、132を備えることで、被読み取り面が立体的な場合にも対応可能である。
【0025】
読取装置100は、拡散反射光源131を点灯させて得られた原稿Dの画像信号に、正反射光源132を点灯させて得られた参照光に基づいた画像処理を実行し、これを色情報として出力する。また、読取装置100は、正反射光源132を点灯させて得られた原稿Dの画像信号に、正反射光源132を点灯させて得られた参照光に基づいた画像処理と、先に出力された色情報との差分に基づく光沢成分抽出処理を実行し、これを光沢情報として出力する。
【0026】
図3は、読取装置100のブロック図である。
同図に示すように、読取装置100が備えるCPU101は、読み取り時の制御を行う読み取り制御部210と、予め定められた算出を行う算出部220と、各種のデータ等を格納する格納部230と、読み取られた画像について画像処理を行う画像処理部240と、を備える。CPU101は、調整手段の一例である。
【0027】
読み取り制御部210は、読取装置100の各部の動作を調整する機能を有する。読み取り制御部210は、センサ170による受光の条件、すなわち、センサ170がどのように受光するかを調整する手段として機能する。読み取り制御部210による調整の対象は、拡散反射光源131や正反射光源132の照射タイミング、キャリッジ130の副走査方向への移動、センサ170の露光時間(CCDであれば、電荷の蓄積時間)などである。
【0028】
算出部220は、読み取り制御部210や画像処理部240の制御処理に必要な算出を行う。詳細は後述する。
格納部230は、算出部220で用いるデータ等を格納し、また、算出部220の算出結果を格納する。
【0029】
画像処理部240は、参照光を用いて画像信号に画像処理を実行する。本実施形態においては、画像処理部240により画像処理が実行された画像信号のことを「色情報」又は「光沢情報」という。画像処理部240が実行する画像処理には、シェーディング補正が含まれる。シェーディング補正は、拡散反射光源131及び正反射光源132や光学系に起因する光量のムラ(ばらつき)やリニアイメージセンサの各受光素子間の感度ムラの影響を抑制するための処理であり、周知の手法を用いてよい。例えば、画像処理部240は、拡散反射光源131又は正反射光源132の照射により生じる参照光を表す画像信号に主走査方向についてのムラがある場合に、そのムラをなくす方向に原稿Dを表す画像信号に補正を施す。このとき、画像処理部240は、拡散反射光源131の照射により得られた参照光を、色情報を得る方の画像信号に適用し、正反射光源132の照射により得られた参照光を、光沢情報を含む反射光を得る方の画像信号に適用する。
【0030】
本実施形態の読取装置100の構成は、以上のとおりである。本実施形態の読取装置100は、この構成のもと、原稿Dの読み取りを行う。読取装置100は、拡散反射光源131を点灯させた状態で白基準板180に光を照射し、キャリッジ130を副走査方向Yに移動させて原稿Dに光を照射した後に部材190に照射する。次いで、正反射光源132を点灯させた状態で部材190に照射し、キャリッジ130を副走査方向Yに移動させて原稿Dに光を照射する。読取装置100は、拡散反射光源131又は正反射光源132のいずれかを選択的に点灯させて原稿Dの読み取りを行う。なお、拡散反射光源131及び正反射光源132の点灯の順序は、この例に限定されない。
【0031】
図4は、読み取り動作の処理手順を示すフローチャートである。
同図に示す処理例では、原点位置(図1参照)にあるキャリッジ130において、拡散反射光源131(図2(a)参照)を点灯し正反射光源132を消灯する状態にし、拡散反射光の参照光すなわち白基準板180の読み値ないしレベルW1(以下、「レベルW1」という)を読み取る(ステップ101)。読み取ったレベルW1は、格納部230に格納される。
画像処理部240は、レベルW1から画像の明るさを推定し、拡散反射光源131点灯時の白目標値A1に合うようにゲイン調整値を設定する(ステップ102)。ゲイン調整値の設定後に、拡散反射光源131による原稿Dの読み取りを開始し、キャリッジ130が方向Y1(図2(a)参照)に移動することでセンサ170により往路読み取りが行われ(ステップ103)、一面の画像データ(拡散反射画像データ)を取得する。
【0032】
副走査方向Yにおける部材190の対向位置にて拡散反射光源131で部材190を読み取り(ステップ104)、その読み値である部材190のレベルM1を取得する。取得したレベルM1は、格納部230に格納される。
算出部220は、取得した部材190のレベルM1を白基準板180のレベルW1と比較することで、補正係数を得る。さらに、算出部220は、正反射光源132点灯時の白目標値A2に上述の補正係数を乗じて、白目標値B2を算出する。
【0033】
次に、拡散反射光源131を消灯し、正反射光源132を点灯し、部材190を読み取り(ステップ105)、その読み値である部材190のレベルM2を取得する。そして、レベルM2が上述の白目標値B2に合うように、ゲイン調整値を設定する(ステップ106)。
後端側から方向Y2(図2(b)参照)に移動することで復路読み取りを行い(ステップ107)、一面の画像データ(正反射画像データ)を取得する。その後、キャリッジ130が原点位置に戻り(ステップ108)、一連の処理を終了する。
なお、取得した拡散反射画像データ及び正反射画像データは、画像処理部240により画像処理され、後述の画像形成装置10に画像情報として送られる。かかる画像情報には、原稿Dからの拡散反射光に基づく「色情報」と、原稿Dからの正反射光に基づく「光沢情報」とを含ませることができる。
【0034】
このように、往路読み取りを拡散反射光源131で行い、復路読み取りを正反射光源132で行う場合、拡散反射光源131で読み取った白基準板180のレベルW1と、拡散反射光源131で読み取った部材190のレベルM1を取得する。そして、正反射光源132で読み取った部材190のレベルM2がレベルM1に合うように正反射光源132の光量調整を行う。これにより、温度等によっても光量が変動し得る正反射光源132の校正を行っている。
【0035】
本実施の形態では、正反射光源132の校正を、レベルM2がレベルM1に合うように光量調整するが、これに限らず、レベルM2が、レベルM1に目標調整係数を乗じたレベルM1’に合うように光量を調整しても良い。目標調整係数は、1よりも大きい値例えば1.1や、1よりも小さい値例えば0.8とすることも考えられる。これにより、拡散反射光源131の光量と正反射光源132の光量とが互いに異なるように調整可能になる。
【0036】
複数の目標調整係数を備えることで光量調整可能に構成し、ユーザによる読み取り条件の変更操作を行えるようにすることが考えられる。複数の目標調整係数として予め定められている数値ないし選択肢の中からユーザが選択することで、拡散反射光源131の光量を強くしたいというユーザの要望や、正反射光源132を強くしたい乃至弱くしたいというユーザの要望に対応することが可能になる。
【0037】
上述したように、本実施の形態では、拡散反射光源131で読み取った白基準板180のレベルW1と、拡散反射光源131で読み取った部材190のレベルM1と、正反射光源132で読み取った部材190のレベルM2と、により正反射光源132の光量を調整する。
さらに説明すると、拡散反射光源131はレベルW1を用いて調整され、そのように調整された拡散反射光源131によるレベルM1を基に正反射光源132の光量を調整する。例えば、レベルM2がレベルM1に合うように正反射光源132の光量を調整しても良い。また、レベルM2がレベルM1を基に算出されたレベルM1’に合うように正反射光源132の光量を調整しても良い。具体的には、レベルM1’は、レベルM1に目標調整係数を乗じたものである。
拡散反射光源131で読み取った白基準板180のレベルW1は第1値の一例であり、拡散反射光源131で読み取った部材190のレベルM1は第2値の一例であり、正反射光源132で読み取った部材190のレベルM2は第3値の一例である。レベルM1’は、第2値を基に算出された値の一例である。
【0038】
なお、本実施の形態では、往路読み取りを拡散反射光源131で行い、復路読み取りを正反射光源132で行っているが、往路読み取りを正反射光源132で行い、復路読み取りを拡散反射光源131で行う制御も考えられる。その場合には、上述した図4及び図5を用いた説明は、「拡散反射光源131」と「正反射光源132」を入れ替えたものとなる。
【0039】
図5は、別の読み取り動作の処理手順を示すフローチャートであり、図4に示す処理例と共通する内容を含むので、共通する部分の説明を省略することがある。
図5に示す処理例では、原稿Dの副走査方向Yの長さを閾値と比較し(ステップ203)、比較結果に応じて異なる処理を行う点で、図4に示す処理例と異なる。より詳細には、原稿Dの長さが閾値以下の場合(ステップ203でNo)、正反射光源132の校正を白基準板180で行い(ステップ212、ステップ213)、正反射画像データを往路読み取りで取得する(ステップ214)。原稿Dの長さが閾値よりも大きい場合(ステップ203でYes)、正反射光源132の校正を部材190で行い(ステップ206、ステップ207)、正反射画像データを復路読み取りで取得する(ステップ208)。閾値としては、最大寸法の半分以下の値とすることが考えられる。
なお、図5のS201、S202、S204~S209は、図4のS101~S109に対応するものであり、その説明を省略することがある。
【0040】
図5に示す処理例をより具体的に説明すると、拡散反射光源131で往路読み取りを行う前に、原稿Dの長さを検知する検知部から原稿Dの長さ情報を取得し、閾値よりも大きいか否かを判断する(ステップ203)。閾値よりも大きい場合(ステップ203でYes)、図4で説明した処理を行う(ステップ204~S209)。その一方で、閾値以下の場合(ステップ203でNo)、図4で説明した処理とは異なる処理を行う。
【0041】
すなわち、拡散反射光源131で往路読み取り(ステップ210)を行って拡散反射画像データを取得した後に原点位置に戻り(ステップ211)、正反射光源132を点灯して白基準板180のレベルW2を読み取る(ステップ212)。レベルW2から画像の明るさを推定し、正反射光源132点灯時の白目標値A3に合うようにゲイン調整値を設定する(ステップ213)。その後、正反射光源132による原稿Dの往路読み取りを行い(ステップ214)、正反射画像データを取得する。原点位置に戻って(ステップ209)、一連の処理を終了する。
比較的短い原稿Dについて、後端側に設けられている部材190の位置までキャリッジ130を移動して復路読み取りを行う場合よりも、往路読み取りを終えたら復路読み取りを省略して原点位置に戻り、2度目の往路読み取りを行う方が読み取り時間が短くなる。
【0042】
上述の図5に示す処理例では、原稿Dの副走査方向Yの長さが閾値よりも大きい場合、正反射光源132で読み取った部材190のレベルM2が拡散反射光源131で読み取った部材190のレベルM1に合うように、正反射光源132の光量を調整する。また、原稿Dの副走査方向Yの長さが閾値以下の場合、部材190によるレベルM1,M2を用いず、正反射光源132で読み取った白基準板180のレベルM3を用いて正反射光源132の光量を調整する。このように、原稿Dの副走査方向Yの長さに応じてレベルM1またはレベルM3を用いて正反射光源132の光量を調整する。
小さいサイズの原稿Dの場合、2往復になるものの、大きいサイズの場合の1往復よりも、画像読み取りを行わない時間を短くすることが可能になる。また、小さいサイズの原稿Dの場合に拡散反射光源131による校正と正反射光源132による校正に白基準板180による値を用いることから、画像の忠実再現性がより高まる。
正反射光源132で読み取った白基準板180のレベルM3は第4値の一例である。
【0043】
ここで、部材190の読み取り面191(図1参照)は、拡散反射光源131及び正反射光源132の光を拡散する面であることが好ましい。例えば、細かな凹凸や不規則な切り込み、掻き傷を付ける等の光を拡散する表面加工を施して読み取り面191にする場合や、拡散シート部材を部材190に貼付して読み取り面191にする場合等が考えられる。部材190がプラスチック製である場合、読み取り面191に拡散特性を持たせることで、読み値を検出するセンサ170(図1参照)への入光が均一化され、読み値の精度が向上する。この場合の拡散シート部材は、白基準板180とは異なる素材からなる部材の一例である。
なお、かかる読み取り面191は、部材190の全面に亘って設ける必要はなく、例えば主走査方向の一部分例えば中央部分に設けても良い。
【0044】
図6は、本実施の形態に係る画像形成装置10の構成を例示するブロック図である。
同図に示す画像形成装置10は、上述した実施形態に示す読取装置100と、読取装置100から出力された画像情報に応じた画像を形成する画像形成部300とを備える。画像形成部300は、非光沢画像形成部310と光沢画像形成部320とを備える。非光沢画像形成部310は、色情報に応じて、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの少なくともいずれかの記録材(トナー等)を用いて、用紙等の記録媒体に画像を形成する。光沢画像形成部320は、光沢情報に応じて、記録媒体の表面に光沢を付与する記録材(例えば、透明トナーやメタリック色のトナー)を用いて、記録媒体に画像を形成する。画像形成部300は、画像形成手段の一例である。
【符号の説明】
【0045】
10…画像形成装置、100…読取装置、101…CPU、110…プラテンガラス、120…原稿ガイド、130…キャリッジ、131…拡散反射光源、132…正反射光源、133、140、150…ミラー、160…結像レンズ、170…センサ、180…白基準板、190…部材、191…読み取り面、210…読み取り制御部、220…算出部、230…格納部、240…画像処理部、300…画像形成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6