(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】設備点検システムおよび設備点検方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240814BHJP
G05D 1/46 20240101ALI20240814BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240814BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G05B23/02 301U
G05D1/46
B64C39/02
B64D47/08
(21)【出願番号】P 2020140684
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】古川 修
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/138942(WO,A1)
【文献】特開2018-074757(JP,A)
【文献】特開2019-045163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G05D 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象の送電設備を点検する設備点検システムであって、
空中で飛行しながら前記送電設備を撮像する飛行体と、
前記送電設備に設けられ、所定の設備関連情報を測定するセンサと、
前記送電設備を管理する管理センタと、
を有し、
前記センサは、事故電流が前記送電設備に流れた場合に、前記事故電流を検出し、接点の状態に関する情報を保存する閃絡センサと、前記送電設備の傾斜を測定する傾斜センサとのうち、少なくともいずれか1つを含み、
前記飛行体は、
前記送電設備を撮像する撮像部と、
前記センサに向けて電力を非接触で供給する送電部と、
供給した前記電力によって駆動された前記センサからの前記設備関連情報を収集する受信部と、
前記撮像部により前記送電設備を撮像した画像と、前記受信部により前記センサから収集した前記設備関連情報とを、前記管理センタに向けて無線通信により送信する伝送部と、
を有し、
前記管理センタは、前記送電設備の前記画像と前記設備関連情報とを関連付けて集約する
設備点検システム。
【請求項2】
前記管理センタは、前記送電設備の前記画像と前記設備関連情報との相互の関係に基づいて、前記送電設備の異常を判定する
請求項1に記載の設備点検システム。
【請求項3】
前記管理センタは、
前記飛行体により前記センサからの前記設備関連情報を収集させる処理と、
前記設備関連情報に基づいて前記送電設備に異常があるか否かを判定する処理と、
前記送電設備に異常があると判定した場合に、前記送電設備に異常があるとされた位置を指定し、当該指定位置を前記飛行体により撮像させる処理と、
前記飛行体により前記送電設備を撮像した画像と、前記飛行体により収集した前記設備関連情報と、を関連付けて集約する処理と、
を行うよう、前記飛行体を制御する
請求項
1に記載の設備点検システム。
【請求項4】
前記管理センタは、
前記飛行体により前記設備関連情報を収集させる処理では、前記飛行体の前記撮像部による撮像を行わないか、或いは、前記撮像部により撮像した画像の記録を行わないよう、前記飛行体を制御する
請求項3に記載の設備点検システム。
【請求項5】
前記送電設備に設けられ、前記センサから前記飛行体への前記設備関連情報の送信と、前記飛行体から前記センサへの前記電力の供給とを中継する中継装置をさらに有する
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の設備点検システム。
【請求項6】
点検対象の送電設備を点検する設備点検方法であって、
飛行体を空中で飛行させながら前記送電設備を撮像する工程と、
前記送電設備に設けられたセンサ
であって、事故電流が前記送電設備に流れた場合に、前記事故電流を検出し、接点の状態に関する情報を保存する閃絡センサと、前記送電設備の傾斜を測定する傾斜センサとのうち、少なくともいずれか1つを含む前記センサに向けて
、前記飛行体から電力を非接触で供給して前記センサを駆動することにより、当該センサにより所定の設備関連情報を測定する工程と、
供給した前記電力によって駆動された前記センサからの前記設備関連情報を前記飛行体により収集する工程と、
前記飛行体により前記送電設備を撮像した画像と、前記飛行体により前記センサから収集した前記設備関連情報とを、前記飛行体から、前記送電設備を管理する管理センタに向けて無線通信により送信する工程と、
前記送電設備の前記画像と前記設備関連情報とを関連付けて前記管理センタに集約する工程と、
を有する
設備点検方法。
【請求項7】
点検対象の送電設備を点検する設備点検方法であって、
飛行体を空中で前記送電設備に向けて飛行させる工程と、
前記送電設備に設けられたセンサ
であって、事故電流が前記送電設備に流れた場合に、前記事故電流を検出し、接点の状態に関する情報を保存する閃絡センサと、前記送電設備の傾斜を測定する傾斜センサとのうち、少なくともいずれか1つを含む前記センサに向けて
、前記飛行体から電力を非接触で供給して前記センサを駆動することにより、当該センサにより所定の設備関連情報を測定する工程と、
供給した前記電力によって駆動された前記センサからの前記設備関連情報を前記飛行体により収集する工程と、
前記飛行体から、前記送電設備を管理する管理センタに向けて、前記設備関連情報を無線通信により送信する工程と、
前記設備関連情報に基づいて前記送電設備に異常があるか否かを判定する工程と、
前記送電設備に異常があると判定した場合に、前記送電設備に異常があるとされた位置を指定し、当該指定位置を前記飛行体により撮像させる工程と、
前記飛行体が前記送電設備を撮像した画像と、前記飛行体が収集した前記設備関連情報と、を関連付けて前記管理センタに集約する工程と、
を有する
設備点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備点検システム、飛行体、中継装置および設備点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の設備にセンサを設置し、該設備の点検を行うことがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、飛行体を利用して設備点検システムの保守を軽減することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
点検対象の設備を点検する設備点検システムであって、
空中で飛行しながら前記設備を撮像する飛行体と、
前記設備に設けられ、所定の設備関連情報を測定するセンサと、
を有し、
前記飛行体は、前記センサからの前記設備関連情報を収集する
設備点検システムが提供される。
【0006】
本開示の他の態様によれば、
上述の態様に記載の設備点検システムが有する
飛行体が提供される。
【0007】
本開示の更に他の態様によれば、
上述の態様に記載の設備点検システムが有する
中継装置が提供される。
【0008】
本開示の更に他の態様によれば、
点検対象の設備を点検する設備点検方法であって、
飛行体を空中で飛行させながら前記設備を撮像する工程と、
前記設備に設けられたセンサにより所定の設備関連情報を測定する工程と、
前記センサからの前記設備関連情報を前記飛行体により収集する工程と、
を有する
設備点検方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、飛行体を利用して設備点検システムの保守を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る設備点検システムを示す概略構成図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るセンサの一例としての閃絡センサを示す概略構成図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るセンサの一例としての傾斜センサを示す概略構成図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る設備点検システムを示すブロック図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る飛行体を示すブロック図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る中継装置を示すブロック図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る設備点検方法を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の一実施形態の変形例に係る設備点検方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
<発明者の得た知見>
まず、発明者の得た知見について説明する。
【0012】
従来では、例えば特許文献1などのように、点検対象となる鉄塔などの設備に設けられたセンサにより測定した情報を、該設備から遠くに配置されたホスト端末(以下でいう管理センタ)で無線通信によって取得していた。センサに電力を供給する電源としては、特段の長距離送電手段を用いることを避けるため、例えば、蓄電池や太陽電池が用いられることが多かった。
【0013】
しかしながら、従来の上述のような構成では、定期的な電源のメンテナンス(例えば電池交換など)が必要となっていた。電源のメンテナンスのため、遠隔地にある設備に作業員が出向き、電池交換などのメンテナンス作業を行わなければならなかった。このため、システム全体としての維持コストが増大していた。
【0014】
一方で、近年では、設備の点検において、いわゆるドローンなどの飛行体を用い、設備およびその周辺状況を撮像することが試みられている。飛行体が撮像した画像を管理サーバやクラウドサーバを使って、画像診断により設備の異常や周辺状況の変化の有無を検出することが試みられている。また、GPS(Global Positioning System)などによって得られる自身の位置情報に基づいて、飛行体を自律航行させる試みも行われている。
【0015】
そこで、本発明者は、鋭意検討の結果、上述の飛行体を用いることで、設備点検システムの保守を軽減することができる構成および方法を見出した。
【0016】
本開示は、発明者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0017】
<本開示の実施態様>
次に、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0018】
[1]本開示の一態様に係る設備点検システムは、
点検対象の設備を点検する設備点検システムであって、
空中で飛行しながら前記設備を撮像する飛行体と、
前記設備に設けられ、所定の設備関連情報を測定するセンサと、
を有し、
前記飛行体は、前記センサからの前記設備関連情報を収集する。
この構成によれば、設備点検システムの保守を軽減することができる。
【0019】
[2]上記[1]に記載の設備点検システムにおいて、
前記飛行体は、前記センサに対して電力を供給し、供給した前記電力によって駆動された前記センサから前記設備関連情報を収集する。
この構成によれば、センサの電源に係るメンテナンス作業を減らすことができる。
【0020】
[3]上記[2]に記載の設備点検システムにおいて、
前記飛行体は、前記センサに対して非接触で電力を供給する。
この構成によれば、飛行体からの電力供給に係る容易性と安定性とを両立することが可能となる。
【0021】
[4]上記[2]又は[3]に記載の設備点検システムにおいて、
前記設備に設けられ、前記センサから前記飛行体への前記設備関連情報の送信と、前記飛行体から前記センサへの前記電力の供給とを中継する中継装置をさらに有する。
この構成によれば、設備における任意の最適位置に、センサを配置することができる。
【0022】
[5]上記[1]から[4]のいずれか1つに記載の設備点検システムにおいて、
前記飛行体は、前記センサから収集した前記設備関連情報を外部に送信する。
この構成によれば、設備関連情報の収集および伝送を飛行体により安定的に行うことができる。
【0023】
[6]本開示の他の態様に係る飛行体は、
上記[1]から[5]のいずれか1つに記載の設備点検システムが有する。
この構成によれば、設備点検システムの保守を軽減することができる。
【0024】
[7]本開示の他の態様に係る飛行体は、
上記[4]に記載の設備点検システムが有する。
この構成によれば、設備点検システムの保守を軽減することができる。
【0025】
[8]本開示の他の態様に係る設備点検方法は、
点検対象の設備を点検する設備点検方法であって、
飛行体を空中で飛行させながら前記設備を撮像する工程と、
前記設備に設けられたセンサにより所定の設備関連情報を測定する工程と、
前記センサからの前記設備関連情報を前記飛行体により収集する工程と、
を有する。
この構成によれば、設備点検システムの保守を軽減することができる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0027】
<本開示の一実施形態>
(1)設備点検システム
本開示の一実施形態に係る設備点検システム10の概略について、
図1~
図6を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る設備点検システムを示す概略構成図である。
図2は、本実施形態に係るセンサの一例としての閃絡センサを示す概略構成図である。
図3は、本実施形態に係るセンサの一例としての変位センサを示す概略構成図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の設備点検システム10は、例えば、飛行体100を用い、点検対象の設備90を点検するよう構成されている。具体的には、設備点検システム10は、例えば、飛行体100と、センサ200と、中継装置300と、管理センタ400と、を有している。
【0029】
(設備)
本実施形態において点検対象となる設備90は、例えば、送電設備である。送電設備としての設備90は、例えば、複数の鉄塔920と、電線910と、を有している。複数の鉄塔920は、例えば、所定の間隔で設けられている。電線910は、例えば、複数の鉄塔920の間に架線されている。電線910は、例えば、いわゆる架空送電線として構成されている。なお、複数の鉄塔920の頂部同士の間には、架空地線(不図示)が架線されている。
【0030】
(飛行体)
飛行体100は、空中を飛行するよう構成されている。本実施形態の飛行体100は、例えば、無人で自律飛行可能に構成されている。具体的には、飛行体100は、いわゆるドローンとして構成されている。
【0031】
自律飛行については、例えば、既存の公知技術によって、または標準化される規格に準拠して行われる。飛行体100は、例えば、予め定められた航路、またはGPSなどによって得られる自身の位置情報などに基づいて自律飛行するよう構成されていてもよいし、後述する管理センタ400の指示(信号)に基づいて自律飛行するよう構成されていてもよい。
【0032】
また、飛行体100は、例えば、空中で飛行しながら設備90を撮像するよう構成されている。これにより、飛行体100が撮像した画像に基づいて、設備90の異常や周辺状況の変化の有無などを確認することができる。具体的には、本実施形態のように設備90が送電設備である場合には、飛行体100が撮像した画像は、電線910の素線切れの検出、自然災害(地震、台風など)の被害状況の把握、鉄塔建設時の進捗状況の確認などに用いられる。なお、飛行体100が撮像する画像は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。
【0033】
一方で、本実施形態の飛行体100は、撮像機能を有する後述の撮像部120以外に、設備関連情報を測定するセンサを有していない。本実施形態では、飛行体100は、例えば、設備90に設けられたセンサ200から設備関連情報を取得するよう構成されている。
【0034】
また、本実施形態の飛行体100は、例えば、中継装置300を介してセンサ200に対して電力を供給し、供給した電力によって駆動されたセンサ200から設備関連情報を収集するよう構成されている。
【0035】
さらに、本実施形態の飛行体100は、例えば、センサ200から収集した設備関連情報を外部に送信するよう構成されている。具体的には、飛行体100は、例えば、飛行体100が撮像した画像と、飛行体100がセンサ200から収集した設備関連情報とを、後述する管理センタ400に送信するよう構成されている。
【0036】
なお、飛行体100の詳細については、後述する。
【0037】
(センサ)
センサ200は、設備90に設けられている。センサ200は、例えば、所定の設備関連情報を測定するよう構成されている。ここでいう「設備関連情報」とは、設備90およびその周辺状況に関連した情報のことを意味し、例えば、設備90自体の物理情報並びに特性情報、設備90周辺の環境情報などのことである。
【0038】
センサ200は、例えば、複数設けられている。具体的には、センサ200は、例えば、鉄塔920毎に設けられている。なお、1つの鉄塔920に対して、複数種のセンサ200が設けられていてもよい。
【0039】
本実施形態のセンサ200は、設備関連情報を測定するものであれば、特に制限されるものではない。しかしながら、本実施形態のセンサ200は、消費電力を低減させる観点から、設備関連情報を常時、連続的または周期的に測定するよう構成されているよりは、むしろ所定のトリガーを受けた際に設備関連情報を一時的(例えば瞬時、もしくは数秒~数分程度)に測定するよう構成されていることが好ましい。
【0040】
具体的には、
図2に示すように、少なくとも1つのセンサ200は、例えば、閃絡センサ220として構成されている。閃絡センサ220は、例えば、検出部222と、接点管理部224と、を有している。例えば、落雷などに起因した事故電流(雷撃電流)が鉄塔920(または架空地線(不図示))に流れた場合、検出部222が事故電流を検出し、接点管理部224の接点をONに切り替える。接点管理部224は、接点の状態を保存する。このようにして得られた接点の状態に関する情報を以下では「接点情報」という。
【0041】
または、
図3に示すように、少なくとも1つのセンサ200は、例えば、傾斜センサ240として構成されている。傾斜センサ240は、例えば、鉄塔920の頂部付近などに設けられ、鉄塔920の傾斜(変位)を測定するよう構成されている。具体的な傾斜センサ240としては、例えば、歪ケージ方式や差動トランス方式の傾斜計などがあげられる。傾斜センサで求められた鉄塔920が傾斜角に関する情報を以下では「鉄塔920の傾斜角情報」という。
【0042】
本実施形態では、例えば、飛行体100からセンサ200に電力が供給されるため、センサ200自体は、電力を蓄える電源部を有していない。なお、上述のセンサ200自体の測定に必要な消費電力は、例えば、10W以下である。
【0043】
(中継装置)
中継装置300は、設備90に設けられている。中継装置300は、例えば、センサ200から飛行体100への設備関連情報の送信と、飛行体100からセンサ200への電力の供給とを中継するよう構成されている。
【0044】
中継装置300は、例えば、鉄塔920の頂部付近に設けられていることが好ましい。これにより、中継装置300から飛行体100への情報送信と、飛行体100から中継装置300への受電と、を安定的に行うことができる。
【0045】
中継装置300は、例えば、複数設けられている。具体的には、中継装置300は、例えば、センサ200が設けられた鉄塔920毎に設けられている。
【0046】
なお、中継装置300の詳細については、後述する。
【0047】
(管理センタ)
管理センタ(管理サーバ)400は、例えば、設備90から遠方に離れた位置に設けられている。具体的には、管理センタ400は、例えば、送電設備としての設備90への送電を管理する電力会社などである。
【0048】
管理センタ400は、例えば、飛行体100が撮像した画像と、飛行体100が収集した設備関連情報と、を集約するよう構成されている。これにより、管理センタ400では、飛行体100が撮像した画像と、飛行体100が収集した設備関連情報とを関連付けて画像データを保存する。画像はAIによる画像診断処理などを行い異常の有無を検出する。設備関連情報は所定の基準値の超過を判別して異常の有無を検出する。これにより、画像診断だけでは判明できない設備の異常を検知する等、設備90およびその周辺の状況を精度よく把握することができる。
【0049】
管理センタ400は、例えば、飛行体100へ指示(信号)を送信するよう構成されている。
【0050】
飛行体100と管理センタ400との情報または信号の伝送方法としては、例えば、後述する飛行体100の伝送部160による無線通信が挙げられる。
【0051】
(2)飛行体
次に、
図4および
図5を用い、本実施形態の飛行体100について説明する。
図4は、本実施形態に係る設備点検システムを示すブロック図である。
図5は、本実施形態に係る飛行体を示すブロック図である。
【0052】
図4および
図5に示すように、本実施形態の飛行体100は、例えば、飛行部110と、撮像部120と、電源部130と、送電部140と、受信部150と、伝送部160と、制御部170と、を有している。
【0053】
飛行部110は、例えば、空中で飛行する少なくとも揚力を生じさせるよう構成されている。飛行部110は、例えば、さらに水平方向の推進力を生じさせるよう構成されていることが好ましい。具体的には、飛行部110は、例えば、複数の回転翼(符号不図示)と、回転翼を駆動させるモータ(符号不図示)と、を有している。
【0054】
撮像部120は、例えば、点検対象の設備90を撮像するよう構成されている。
【0055】
電源部130は、例えば、飛行体100の各部の動作に必要な電力を蓄えるよう構成されている。電源部130は、例えば、充電式の電池として構成され、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などである。電源部130が蓄える電力としては、例えば、飛行部110の駆動に必要な電力と、センサ200に供給するための電力と、などが挙げられる。なお、電源部130から供給される電流は、例えば、直流(DC)である。
【0056】
送電部140は、例えば、電源部130から中継装置300を介してセンサ200に向けて電力を供給するよう構成されている。
【0057】
本実施形態の送電部140は、例えば、(中継装置300を介して)センサ200に対して非接触(無線)で電力を供給するよう構成されている。これにより、飛行体100が空中に位置した状態で、飛行体100からセンサ200に対して電力を供給することができる。
【0058】
具体的な送電部140による無線給電の方式としては、特に限定されるものではないが、例えば、電磁誘導、磁気共鳴、マイクロ波などのうちいずれかを用いた方式が挙げられる。
【0059】
受信部150は、例えば、設備90に設けられたセンサ200から所定の設備関連情報を受信し、該設備関連情報を収集するよう構成されている。本実施形態の受信部150は、例えば、無線通信により、センサ200から中継装置300を介して所定の情報を受信するよう構成されている。
【0060】
具体的な受信部150による無線通信の方式としては、特に限定されるものではないが、例えば、近距離無線方式、すなわち、狭域(Bluetooth(登録商標)等)もしくは準広域(WiSUN(Wireless Smart Utility Network)等の準LPWA(Low-Power Wide-Area Network))などの標準的な通信規格が挙げられる。飛行体100の電源容量を考慮して、できる限り低電力の方式が望ましい。
【0061】
伝送部160は、例えば、管理センタ400と自身との間で所定の情報または信号を伝送するよう構成されている。具体的には、伝送部160は、例えば、上述のように、撮像部120が撮像した画像と、受信部150が収集した設備関連情報とを管理センタ400に向けて送信するよう構成されている。また、伝送部160は、例えば、上述のように、飛行制御信号を管理センタ400から受信するよう構成されている。
【0062】
本実施形態では、伝送部160は、例えば、無線通信により、管理センタ400と自身との間で所定の情報または信号を伝送するよう構成されている。
【0063】
具体的な無線通信の方式としては、特に限定されるものではないが、例えば、LPWA(LoRaWAN(Low-Power Wide-Area Network)、ELTRES(登録商標)等)、モバイル通信(4G-LTE(Long Term Evolution)、5G)などの標準的な通信規格が挙げられる。飛行体100の電源容量を考慮して、できる限り低電力の方式が望ましい。
【0064】
制御部170は、例えば、飛行体100の各部を制御するよう構成されている。
【0065】
具体的には、制御部170は、コンピュータとして構成され、例えば、CPU(Central Processing Unit)171と、RAM(Random Access Memory)176と、記憶装置177と、I/Oポート178と、を有している。RAM176、記憶装置177、およびI/Oポート178は、CPU171とデータ交換可能に構成されている。I/Oポート178は、例えば、飛行体100の各部に接続されている。
【0066】
記憶装置177は、例えば、飛行体制御プログラム、撮像部120が設備90を撮像した画像、およびセンサ200から中継装置300並びに受信部150を介して収集した設備関連情報などを記憶するよう構成されている。記憶装置177は、例えば、HDD(Hard disk drive)またはSSD(Solid State Drive)などである。
【0067】
RAM176は、CPU171によって記憶装置177から読み出されるプログラムや情報等が一時的に保持されるよう構成されている。
【0068】
CPU171は、記憶装置177に格納された所定のプログラムを実行することで、例えば、飛行制御部172、撮像制御部173、情報収集部174、および電力制御部175として機能するように構成されている。
【0069】
飛行制御部172は、例えば、空中で飛行する少なくとも揚力を生じさせるよう飛行部110を制御するよう構成されている。
撮像制御部173は、例えば、設備90を撮像するよう撮像部120を制御するよう構成されている。
情報収集部174は、例えば、設備90に設けられたセンサ200から中継装置300および受信部150を介して所定の設備関連情報を受信し、該設備関連情報を収集するよう構成されている。
電力制御部175は、例えば、電力を貯蓄する電源部130から中継装置300を介してセンサ200に対して電力を供給するよう構成されている。
【0070】
上述の制御部170の各部による設備点検方法については、詳細を後述する。
【0071】
上述の制御部170の各部を実現するための所定プログラムは、例えば、制御部170が構成するコンピュータにインストールして用いられる。プログラムは、例えば、そのインストールに先立ち、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されるものであってもよい。或いは、プログラムは、例えば、受信部150または伝送部160を通じて当該コンピュータへ提供されるものであってもよい。
【0072】
(3)中継装置
次に、
図4および
図6を用い、本実施形態の中継装置300について説明する。
図6は、本実施形態に係る中継装置を示すブロック図である。
【0073】
図4および
図6に示すように、本実施形態の中継装置300は、例えば、受電部310と、DC/DC変換部320と、電圧出力部330と、入出力部340と、送信部350と、制御部370と、を有している。
【0074】
受電部310は、例えば、飛行体100からセンサ200への電力の供給を中継するよう構成されている。なお、受電部310は、例えば、飛行体100から供給された電力を中継装置300の各部に供給してもよい。
【0075】
本実施形態の受電部310は、例えば、飛行体100からの電力を非接触(無線)で中継するよう構成されている。受電部310による無線給電の方式は、飛行体100の送電部140による無線給電の方式と同様の方式に設定されている。
【0076】
DC/DC変換部320は、受電部310が中継した電力の電圧を、センサ200への供給に適した電圧に変換するよう構成されている。
【0077】
電圧出力部330は、センサ200に接続され、DC/DC変換部320によって変換された電圧をセンサ200に出力し、該センサ200を駆動するよう構成されている。
【0078】
入出力部340は、例えば、電圧出力部330から出力された電圧によって起動されたセンサ200から所定の設備関連情報を受信するよう構成されている。
【0079】
送信部350は、例えば、センサ200からの設備関連情報を飛行体100に送信するよう構成されている。送信部350による無線通信の方式は、飛行体100の受信部150による無線通信の方式と同様の方式に設定されている。
【0080】
制御部370は、例えば、中継装置300の各部を制御するよう構成されている。
【0081】
具体的には、制御部370は、コンピュータとして構成され、例えば、CPU371と、RAM376と、記憶装置377と、I/Oポート378と、を有している。RAM376、記憶装置377、およびI/Oポート378は、CPU371とデータ交換可能に構成されている。I/Oポート378は、例えば、中継装置300の各部に接続されている。
【0082】
記憶装置377は、例えば、中継装置制御プログラムを記憶するよう構成されている。なお、記憶装置377は、例えば、飛行体100の撮像部120が設備90を撮像した画像、およびセンサ200から収集した設備関連情報なども記憶するよう構成されていてもよい。記憶装置377は、例えば、HDDまたはSSDなどである。
【0083】
RAM376は、CPU371によって記憶装置377から読み出されるプログラムや情報等が一時的に保持されるよう構成されている。
【0084】
CPU371は、記憶装置377に格納された所定のプログラムを実行することで、例えば、電力中継部372、および情報中継部373として機能するように構成されている。
【0085】
電力中継部372は、例えば、飛行体100から受電部310、DC/DC変換部320および電圧出力部330を介してセンサ200への電力の供給を中継するよう構成されている。また、電力中継部372は、例えば、センサ200へ供給した電力をトリガーとして、所定の設備関連情報を測定するようセンサ200を駆動するよう構成されている。
情報中継部373は、例えば、センサ200から入出力部340および送信部350を介して飛行体100へ、センサ200が測定した設備関連情報の送信を中継するよう構成されている。
【0086】
上述の制御部370の各部による設備点検方法については、飛行体100の制御部170による方法とともに詳細を後述する。
【0087】
上述の制御部370の各部を実現するための所定プログラムは、例えば、制御部370が構成するコンピュータにインストールして用いられる。当該プログラムのインストール方法は、例えば、制御部170のプログラムのインストール方法と同様の方法を用いることができる。
【0088】
(4)設備点検方法
次に、
図1~
図7を用い、本実施形態の設備点検方法について説明する。
図7は、本実施形態に係る設備点検方法を示すフローチャートである。
【0089】
本実施形態の設備点検方法は、例えば、飛行工程S110と、中継装置接近工程S115と、中継装置接近判断工程S120と、電力供給工程S130と、測定工程S140と、情報収集工程S150と、情報集約工程S160と、点検終了判断工程S190と、を有している。以下、飛行体100の各部の動作、および中継装置300の各部の動作は、それぞれ、制御部170および制御部370により制御される。
【0090】
(S110:飛行工程)
飛行体100は、点検対象の設備90を通る所定の航路に沿って自律飛行する。なお、このとき、飛行体100は、上述のように、例えば、予め定められた航路、またはGPSなどによって得られる自身の位置情報などに基づいて自律飛行してもよいし、管理センタ400の指示(信号)に基づいて自律飛行してもよい。
【0091】
このとき、本実施形態では、飛行体100を空中で飛行させながら、撮像部120により設備90を撮像する。撮像部120が設備90を撮像したら、当該撮像した画像を記憶装置177に記憶させる。
【0092】
なお、飛行体100の伝送部160により、撮像部120が撮像したリアルタイム画像(例えば動画)を、順次、管理センタ400に向けて送信してもよい。
【0093】
(S115:中継装置接近工程)
飛行体100が点検対象の鉄塔920に到着したら、飛行体100は、点検対象の鉄塔920の中継装置300に接近する。
【0094】
中継装置300への接近方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法を採用することができる。まず、飛行体100が点検対象の鉄塔920に到着したときに、飛行体100は、GPSなどによる自身の現在位置情報を含めて、中継装置300への接近要求を管理センタ400に送信する。管理センタ400が上記接近要求を受信すると、管理センタ400は、飛行体100が点検対象の鉄塔920の上空に位置しているかを判断する。飛行体100が点検対象の鉄塔920の上空に位置していると判断した場合には、管理センタ400は、点検対象の鉄塔920の中継装置300への接近を飛行体100に指示する。飛行体100は、それに基づいて、中継装置300への接近を開始する。飛行体100は、撮像部120が撮像した画像、およびGPSなどによる自身の位置情報などの少なくともいずれかに基づいて、中継装置300に接近する。なお、飛行体100がレーザを有している場合には、飛行体100は、レーザによる飛行体100と中継装置300との離隔距離の測定結果に基づいて、中継装置300に接近してもよい。
【0095】
(S120:中継装置接近判断工程)
その後、飛行体100は、上記情報のいずれかに基づいて、飛行体100と中継装置300との離隔距離が許容距離以内か否かを判断する。
【0096】
飛行体100が許容距離以内に中継装置300に接近していないと判断した場合には(S120でNo)、中継装置接近工程S115を継続する。
【0097】
(S130:電力供給工程)
飛行体100が許容距離以内に中継装置300に接近したと判断した場合には(S120でYes)、飛行体100は、センサ200に対して電力を供給し、供給した電力によって駆動されたセンサ200から設備関連情報を収集する。
【0098】
具体的には、飛行体100の送電部140により、電源部130からの電力を中継装置300の受電部310に非接触で供給する。中継装置300が飛行体100からの電力供給を受けたら、中継装置300では、受電部310、DC/DC変換部320および電圧出力部330を介してセンサ200への電力の供給を中継する。
【0099】
(S140:測定工程)
次に、中継装置300は、上述のようにセンサ200への電力の供給を中継することで、センサ200へ供給した電力をトリガーとして、センサ200を駆動する。センサ200は、中継装置300を経由して供給された電力によって、所定の設備関連情報を測定する。
【0100】
具体的には、センサ200が閃絡センサ220として構成されている場合には、中継装置300を介して閃絡センサ220に印加した電圧により、中継装置300は、落雷などに起因した事故電流の発生状況に相当する接点情報を、閃絡センサ220の接点管理部224から入出力部340を介して取得する。接点情報を取得後、中継装置300は、閃絡センサ220の接点管理部224にリセット信号を送り、接点の状態をOFFに戻す(リセットする)。
【0101】
または、センサ200が傾斜センサ240として構成されている場合には、中継装置300は、電圧出力部330から傾斜センサ240に電力を供給し、傾斜センサ240を駆動する。傾斜センサ240は、予め定められた時間(例えば1分間)で、鉄塔920の傾斜角を測定する。中継装置300は、鉄塔920の傾斜角情報を傾斜センサ240から入出力部340を介して取得する。
【0102】
中継装置300がセンサ200から上述の設備関連情報を受信したら、中継装置300では、センサ200から入出力部340および送信部350を介して飛行体100へ、設備関連情報の送信を中継する。
【0103】
(S150:情報収集工程)
測定工程S140が終了したら、センサ200からの設備関連情報を飛行体100により収集する。
【0104】
具体的には、中継装置300の送信部350により、センサ200からの設備関連情報を飛行体100の受信部150に送信する。送信部350により設備関連情報を送信したら、飛行体100の受信部150により、センサ200からの設備関連情報を受信する。受信部150により設備関連情報を受信したら、飛行体100では、制御部170の記憶装置177に設備関連情報を記憶させる。このようにして、センサ200からの設備関連情報を飛行体100により収集する。
【0105】
飛行体100がセンサ200からの設備関連情報を収集したら、飛行体100から中継装置300を介してセンサ200に向けた電力供給を停止する。これにより、センサ200が停止される。
【0106】
(S160:情報集約工程)
センサ200からの設備関連情報の収集が完了したら、飛行体100の伝送部160により、撮像部120が撮像した画像と、受信部150が収集した設備関連情報とを管理センタ400に向けて送信する。
【0107】
なお、飛行体100と管理センタ400との間における電波状況が悪い場合には、飛行体100が電波状況がよい箇所に移動した段階で、当該情報集約工程S160を行う。
【0108】
飛行体100が管理センタ400に各種情報を送信したら、管理センタ400は、飛行体100が撮像した画像(例えば、現測定の鉄塔920付近の画像)と、飛行体100が収集した設備関連情報と、を集約する。
【0109】
(S190:点検終了判断工程)
管理センタ400への情報集約が完了したら、設備点検を終了させるか否かを判断する。
【0110】
設備点検終了の判断方法としては、例えば、管理センタ400において、所定の鉄塔920に設けられたセンサ200からの設備関連情報の集約が完了したら、管理センタ400は、設備点検を終了させるか否かを判断する。すなわち、管理センタ400は、設備90を構成する他の鉄塔920からの設備関連情報の集約が完了しているかを確認し、設備点検を継続させるか否かを判断する。
【0111】
設備点検を終了させないと判断した場合には(S190でNo)、飛行工程S110以降の工程を繰り返すことで、飛行体100により、残りの鉄塔920からの設備関連情報の収集を継続させる。
【0112】
設備点検を終了させると判断した場合には(S190でYes)、飛行体100を管理センタ400まで帰還させる。
【0113】
以上により、本実施形態の設備点検工程を終了する。
【0114】
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0115】
(a)本実施形態では、飛行体100は、空中で飛行しながら設備90を撮像する一方で、センサ200からの設備関連情報を収集するよう構成されている。飛行体100がセンサ200からの設備関連情報を収集することで、センサ200の測定に必要な電力を供給する電力供給機能、および管理センタ400に設備関連情報を送信する情報伝送機能のうち少なくともいずれかの機能を、飛行体100に任せる(委託する、移管する)ことができる。言い換えれば、管理センタ400から遠方に離れた設備90に固定されるセンサ200側の機能を減らすことができる。これにより、センサ200側におけるメンテナンスを減らすことができる。
【0116】
(b)本実施形態では、上述のように、センサ200の測定のための電力供給機能が飛行体100に設けられている。すなわち、飛行体100は、中継装置300を介してセンサ200に対して電力を供給し、供給した電力によって駆動されたセンサ200から設備関連情報を収集するよう構成されている。つまり、本実施形態のセンサ200は、蓄電池や太陽電池などの電源を有していない。これにより、センサ200の電源に係るメンテナンス作業を減らすことができる(好ましくは不要とすることができる)。その結果、センサ200に係る維持コストを削減することができる。
【0117】
(c)本実施形態では、上述のように、管理センタ400への情報伝達機能が飛行体100に設けられている。すなわち、飛行体100は、センサ200から収集した設備関連情報を外部(管理センタ400)に送信するよう構成されている。これにより、自由に移動可能な飛行体100が通信環境のよい場所で管理センタ400に設備関連情報を送信することができる。その結果、設備関連情報の収集および伝送を飛行体100により安定的に行うことができる。
【0118】
(d)本実施形態では、飛行体100は、センサ200に対して非接触で電力を供給するよう構成されている。これにより、飛行体100が空中に位置した状態で、飛行体100からセンサ200に対して電力を供給することができる。電力供給の際に非接触とし、すなわち、コネクタなどの接続を不要とすることで、飛行体100からセンサ200に対して容易に電力を供給することができる。また、例えば、鉄塔920が傾斜地に設置されていたり、設備90が地盤の悪い箇所に設けられていたりする場合であっても、飛行体100から安定的に電力供給を行うことができる。その結果、飛行体100からの電力供給に係る容易性と安定性とを両立することが可能となる。
【0119】
(e)中継装置300は、センサ200から飛行体100への設備関連情報の送信と、飛行体100からセンサ200への電力の供給とを中継するよう構成されている。飛行体100とセンサ200との間で中継装置300が中継することで、設備90における任意の最適位置に、センサ200を配置することができる。また、センサ200を任意に配置しても、センサ200から飛行体100への設備関連情報の送信と、飛行体100からセンサ200への電力の供給とを安定的に行うことができる。
【0120】
(f)管理センタ400は、飛行体100が撮像した画像と、飛行体100が収集した設備関連情報と、を集約する。これにより、管理センタ400では、飛行体100が撮像した画像と、飛行体100が収集した設備関連情報とを関連付けて、設備90およびその周辺の状況を精度よく把握することができる。つまり、飛行体100が撮像した画像(静止画または動画)だけでは判明できない設備90の異常を、センサ200による設備関連情報またはこれらの相互の関係に基づいて把握および判定することができる。その結果、設備点検システム10において、高度な保守点検を実現することが可能となる。
【0121】
(6)本開示の一実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0122】
変形例では、設備点検方法が上述の実施形態と異なる。変形例の設備点検システム10は、上述の実施形態の設備点検システム10と同様である。
【0123】
図8を用い、変形例に係る設備点検方法について説明する。
図8は、本実施形態の変形例に係る設備点検方法を示すフローチャートである。以下、変形例の設備点検方法において、上述の実施形態の方法と異なる工程についてのみ説明する。
【0124】
(S110:飛行工程)
飛行体100は、点検対象の設備90を通る所定の航路に沿って自律飛行する。
【0125】
このとき、本変形例では、飛行体100の撮像部120による設備90の撮像を行わなくてもよい。或いは、撮像部120による設備90の撮像を行ったとしても、記憶装置177において、高解像度の画像データの記録は行わなくてもよい。
【0126】
(S162:情報伝送工程)
センサ200からの設備関連情報の収集が完了したら、飛行体100の伝送部160により、受信部150が収集した設備関連情報を管理センタ400に向けて送信する。このとき、撮像部120が撮像した画像は送信しなくてもよい。
【0127】
(S164:異常判定工程)
管理センタ400への情報伝送が完了したら、管理センタ400は、設備関連情報に基づいて、設備90に異常があるか否かを判定する。
【0128】
具体的には、センサ200が閃絡センサ220として構成されている場合には、管理センタ400は、閃絡センサ220における接点情報に基づいて、設備90の異常を判定する。例えば、閃絡センサ220における接点情報がONであるときに、管理センタ400は、当該閃絡センサ220が設けられた鉄塔920において、落雷などに起因した事故電流が発生したと判断する。
【0129】
または、センサ200が傾斜センサ240として構成されている場合には、管理センタ400は、傾斜センサ240における鉄塔920の傾斜角情報に基づいて、設備90の異常を判定する。例えば、傾斜センサ240における鉄塔920の傾斜角から傾斜変位量を求める。例えば、傾斜変位量が所定の基準値以上であるときに、管理センタ400は、当該傾斜センサ240が設けられた鉄塔920に異常があると判断する。
【0130】
設備90に異常がないと判定した場合には(S164でNo)、飛行工程S110以降の工程を繰り返すことで、飛行体100により、その他の鉄塔920からの設備関連情報の収集を継続させる。
【0131】
(S170:指定位置撮像工程)
設備90に異常があると判定した場合には(S190でYes)、設備90において異常があるとされた位置を指定し、当該指定位置を飛行体100により撮像する。
【0132】
具体的には、管理センタ400は、異常検出された設備90の撮影許可を飛行体100に指示し、飛行体100は、それに基づいて、指定された設備90まで飛行して撮像部120により異常箇所を自動的に撮影する。飛行体100の飛行を完全自律飛行から、管理センタ400からの指示による飛行に切り替えて、管理センタ400が飛行体100からリアルタイムで送られてくる画像を確認しながら撮影許可を指示し、飛行体100は、それに基づいて、異常箇所の撮影を行うこともできる。
【0133】
(S180:情報集約工程)
指定位置における飛行体100の撮像が完了したら、飛行体100の伝送部160により、撮像部120が撮像した画像を管理センタ400に向けて送信する。
【0134】
飛行体100が管理センタ400に画像を送信したら、管理センタ400は、飛行体100が撮像した指定位置の画像と、これまでの工程で飛行体100が収集した設備関連情報と、を集約する。これにより、管理センタ400では、集約した画像および設備関連情報に基づいて、設備90の異常への対策を検討することができる。
【0135】
以降の工程は上述の実施形態と同様である。
【0136】
(本変形例に係る効果)
本変形例では、設備90において異常があるとされた位置を指定し、当該指定位置を飛行体100により撮像する。
【0137】
ここで、飛行体100が所定の航路に沿って設備90全体を撮像する場合では、飛行体100が撮像した画像のデータ容量が過剰に増大してしまう可能性がある。このため、管理センタ400への画像送信が遅くなってしまう可能性がある。また、画像のデータ容量が飛行体100の記憶装置177の記憶容量を超えてしまう可能性がある。
【0138】
これに対し、変形例では、上述のように、異常があるとされた指定位置のみを飛行体100が撮像することで、飛行体100が撮像した画像のデータ容量を最小限にすることができる。これにより、管理センタ400への画像送信を早く行うことができる。また、指定位置における高解像度の画像を取得したとしても、画像のデータ容量が飛行体100の記憶装置177の記憶容量を超えてしまうことを抑制することができる。その結果、設備点検システム10の運用の効率性をさらに向上させることが可能となる。
【0139】
本変形例の具体的な適用例として、落雷などに起因した送電線事故の巡視業務があげられる。通常、送電線事故の巡視業務では、現地の設備90に急行して設備異常や事故の状況の確認を行っている。変形例を適用し、飛行体100を活用することで、現地に行かなくても巡視業務を行うことができる。
【0140】
まず、閃絡センサ220が設置されている設備90を飛行体100が回って、設備関連情報(その場合は閃絡センサ220の接点情報)を収集して管理センタ400に送信する。管理センタ400では閃絡センサ220の接点情報がONである設備90を検出して、異常検出された設備90の撮影許可を飛行体100に指示する。飛行体100は指定された設備90まで飛行して画像を撮影する。管理センタ400は、飛行体100から送られてきた画像を見て、送信設備異常もしくは事故点の状況を確認することができる。
【0141】
<本開示の他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0142】
上述の実施形態では、点検対象となる設備90が送電設備である場合について説明したが、この場合に限られない。設備90は、送電設備以外であってもよく、例えば、橋脚、山間部の道路における斜面などであってもよい。
【0143】
上述の実施形態では、飛行体100がドローンとして構成されている場合について説明したが、この場合に限られない。飛行体100は、ドローン以外であってもよく、例えば、マルチコプタ、ヘリコプタ、飛行機、飛行ロボットなどであってもよい。
【0144】
上述の実施形態では、センサ200として、閃絡センサ220および傾斜センサ240を例に挙げて説明したが、この場合に限られない。センサ200は、例えば、鉄塔920または電線910における劣化または腐食の状態を測定するよう構成されていてもよい。この場合のセンサ200としては、設備90の錆などの起因とされる塩分量を測定するセンサなどが挙げられる。
【0145】
上述の実施形態では、飛行体100の送電部140が中継装置300を介してセンサ200に対して非接触(無線)で電力を供給するよう構成されている場合について説明したが、この場合に限られない。飛行体100の送電部140は、例えば、中継装置300またはセンサ200に直接接触して、センサ200に電力を供給するよう構成されていてもよい。具体的には、飛行体100の送電部140は、所定のコネクタまたは有線により中継装置300の受電部310と直接接続し、中継装置300を介してセンサ200に対して電力を供給するよう構成されていてもよい。なお、この場合、中継装置300は、飛行体100が着地可能なステージを有していることが好ましい。
【0146】
上述の実施形態では、飛行体100の受信部150が、無線通信により、センサ200から中継装置300を介して所定の設備関連情報を受信するよう構成されている場合について説明したが、この場合に限られない。飛行体100の受信部150は、例えば、中継装置300またはセンサ200に直接接触して、センサ200からの設備関連情報を受信するよう構成されていてもよい。具体的には、飛行体100の受信部150は、所定のコネクタまたは有線により中継装置300の送信部350と直接接続し、センサ200からの設備関連情報を受信するよう構成されていてもよい。
【0147】
上述の実施形態では、飛行体100の伝送部160が、無線通信により、管理センタ400と自身との間で所定の情報または信号を伝送するよう構成されている場合について説明したが、この場合に限られない。飛行体100の伝送部160から管理センタ400に向けて設備関連情報を伝送するその他の方法としては、例えば、飛行体100が管理センタ400に帰還したときに、飛行体100の伝送部160と管理センタ400とを所定のコネクタまたは有線により接続したり、所定の外部記録メディアを用いたりすることで、飛行体100から管理センタ400に向けて設備関連情報を直接伝送してもよい。
【0148】
上述の実施形態では、飛行体100の制御部170および中継装置300の制御部370は、それぞれ、CPU、RAMおよび記憶装置を有するコンピュータとして構成されている場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、飛行体100の制御部170および中継装置300の制御部370は、それぞれ、1つの半導体チップにCPU、RAMおよび記憶装置などを搭載したいわゆるワンチップマイコンとして構成されていてもよい。
【0149】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様を付記する。
【0150】
(付記1)
点検対象の設備を点検する設備点検システムであって、
空中で飛行しながら前記設備を撮像する飛行体と、
前記設備に設けられ、所定の設備関連情報を測定するセンサと、
を有し、
前記飛行体は、前記センサからの前記設備関連情報を収集する
設備点検システム。
【0151】
(付記2)
前記飛行体は、前記センサに対して電力を供給し、供給した前記電力によって駆動された前記センサから前記設備関連情報を収集する
付記1に記載の設備点検システム。
【0152】
(付記3)
前記飛行体は、前記センサに対して非接触で電力を供給する
付記2に記載の設備点検システム。
【0153】
(付記4)
前記設備に設けられ、前記センサから前記飛行体への前記設備関連情報の送信と、前記飛行体から前記センサへの前記電力の供給とを中継する中継装置をさらに有する
付記2又は付記3に記載の設備点検システム。
【0154】
(付記5)
前記飛行体は、前記センサから収集した前記設備関連情報を外部に送信する
付記1から付記4のいずれか1つに記載の設備点検システム。
【0155】
(付記6)
前記飛行体が撮像した画像と、前記飛行体が前記センサから収集した前記設備関連情報と、を集約する管理センタをさらに有する
付記1から付記5のいずれか1つに記載の設備点検システム。
【0156】
(付記7)
付記1から付記6のいずれか1つに記載の設備点検システムが有する
飛行体。
【0157】
(付記8)
点検対象の設備の点検に用いられる飛行体であって、
空中で飛行する少なくとも揚力を生じさせる飛行部と、
前記設備を撮像する撮像部と、
前記設備に設けられたセンサから所定の設備関連情報を受信し、該設備関連情報を収集する受信部と、
を有する
飛行体。
【0158】
(付記9)
電力を蓄える電源部と、
前記電源部から前記センサに対して電力を供給する送電部と、
を有する
付記8に記載の飛行体。
【0159】
(付記10)
点検対象の設備の点検に用いられる飛行体を制御する飛行体制御プログラムであって、
空中で飛行する少なくとも揚力を生じさせるよう飛行部を制御する飛行制御部と、
前記設備を撮像するよう撮像部を制御する撮像制御部と、
前記設備に設けられたセンサから受信部を介して所定の設備関連情報を受信し、該設備関連情報を収集する情報収集部と、
としてコンピュータを機能させる
飛行体制御プログラム、およびそれを記録した記録媒体。
【0160】
(付記11)
電力を貯蓄する電源部から前記センサに向けて電力を供給する電力制御部としてコンピュータを機能させる
付記10に記載の飛行体制御プログラム、
または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0161】
(付記12)
付記4に記載の設備点検システムが有する
中継装置。
【0162】
(付記13)
点検対象の設備に設けられ、該設備の点検に用いられる中継装置であって、
前記飛行体から前記センサへの電力の供給を中継する受電部と、
前記設備に設けられたセンサから、空中で飛行する飛行体への、前記センサが測定した設備関連情報の送信を中継する送信部と、
を有する
中継装置。
【0163】
(付記14)
点検対象の設備に設けられ、該設備の点検に用いられる中継装置を制御する中継装置制御プログラムであって、
前記飛行体から前記センサへの電力の供給を中継する電力中継部と、
前記設備に設けられたセンサから、空中で飛行する飛行体へ、前記センサが測定した設備関連情報の送信を中継する情報中継部と、
としてコンピュータを機能させる
中継装置制御プログラム、
または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0164】
(付記15)
点検対象の設備を点検する設備点検方法であって、
飛行体を空中で飛行させながら前記設備を撮像する工程と、
前記設備に設けられたセンサにより所定の設備関連情報を測定する工程と、
前記センサからの前記設備関連情報を前記飛行体により収集する工程と、
を有する
設備点検方法。
【符号の説明】
【0165】
10 設備点検システム
90 設備
100 飛行体
110 飛行部
120 撮像部
130 電源部
140 送電部
150 受信部
160 伝送部
170 制御部
171 CPU
172 飛行制御部
173 撮像制御部
174 情報収集部
175 電力制御部
176 RAM
177 記憶装置
178 I/Oポート
200 センサ
220 閃絡センサ
222 コイル
224 接点管理部
240 傾斜センサ
300 中継装置
310 受電部
320 DC/DC変換部
330 電圧出力部
340 入出力部
350 送信部
370 制御部
371 CPU
372 電力中継部
373 情報中継部
376 RAM
377 記憶装置
378 I/Oポート
400 管理センタ
910 電線
920 鉄塔