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特許7537185シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラント及び包装材料、シリコン材料の輸送用包装体、並びにシリコン材料の梱包体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラント及び包装材料、シリコン材料の輸送用包装体、並びにシリコン材料の梱包体
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/30 20060101AFI20240814BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20240814BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240814BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B65D85/30 500
B65D65/02 E
B32B9/00 A
B32B27/32 E
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020148836
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043524
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】中島 宏佳
(72)【発明者】
【氏名】甕 克行
(72)【発明者】
【氏名】溝尻 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一志
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-096851(JP,A)
【文献】特開2019-089605(JP,A)
【文献】特開2013-136405(JP,A)
【文献】特開2005-281541(JP,A)
【文献】米国特許第05709065(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-85/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントであって、
前記シーラントは、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有し、
前記第1面の算術平均粗さRaが0.06μm以上で0.09μm以下であり、かつ前記第1面のクルトシスRkuが7よりも大きく11以下である、
シーラント。
【請求項2】
シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントであって、
前記シーラントは、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有し、
前記第1面の算術平均粗さRaが0.06μm以上で0.07μm未満であり、かつ前記第1面のクルトシスRkuが11以下である、
シーラント。
【請求項3】
シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントであって、
前記シーラントは、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有し、
前記第1面の算術平均粗さRaが0.06μm以上で0.07μm未満であり、かつ前記第1面のクルトシスRkuが7よりも大きく11以下である、
シーラント。
【請求項4】
前記シーラントは、前記第1面を含む第1部分を有し、前記第1面を含む第1層、及び第2層を有する積層体であり、
前記第1部分は、前記第1層であり、
前記第1部分は、スリップ剤が添加されてない、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシーラント。
【請求項5】
前記シーラントは、前記第1面を含む第1部分を有し、前記第1面を含む第1層、及び第2層を有する積層体であり、
前記第1部分は、前記第1層であり、
前記第1部分は、扁平の粒子を含む、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシーラント。
【請求項6】
前記シーラントは、前記第1面を含む第1部分を有し、前記第1面を含む第1層、及び第2層を有する積層体であり、
前記第1部分は、前記第1層であり、
前記第1部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシーラント。
【請求項7】
前記第1部分は、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、又はポリプロピレン(PP)をさらに含む、
請求項6に記載のシーラント。
【請求項8】
前記シーラントは、前記第1部分よりも前記第2面側に位置する第2部分をさらに有し、前記第1層、及び第2層を有する積層体であり、
前記第2部分は、前記第2層である、
請求項4から請求項7のいずれか一項に記載のシーラント。
【請求項9】
前記第2部分は、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む、
請求項8に記載のシーラント。
【請求項10】
前記第2部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)をさらに含む、
請求項9に記載のシーラント。
【請求項11】
前記シーラントは、前記第2部分よりも前記第2面側に位置し、前記第2面を含む第3部分をさらに有し、前記第1層、前記第2層及び前記第2面を含む第3層がこの順に積層された積層体であり、
前記第3部分は、前記第3層である、
請求項8から請求項10のいずれか一項に記載のシーラント。
【請求項12】
前記第3部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む、
請求項11に記載のシーラント。
【請求項13】
基材と、前記基材の一方の面側に設けられた、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のシーラントとを備える、包装材料。
【請求項14】
前記基材の前記シーラントとは反対の面側に設けられた、ガスバリア層をさらに有する、
請求項13に記載の包装材料。
【請求項15】
前記ガスバリア層が、アルミニウム酸化物又はケイ素酸化物を含む、
請求項14に記載の包装材料。
【請求項16】
請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の包装材料により構成された、
シリコン材料の輸送用包装体。
【請求項17】
請求項16に記載のシリコン材料の輸送用包装体と、
前記シリコン材料の輸送用包装体内に収容されたシリコン材料と
を備える、シリコン材料の梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラント及び包装材料、シリコン材料の輸送用包装体、並びにシリコン材料の梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品等の製造に用いられるシリコンウェハや、シリコンウェハの原材料として用いられるポリシリコン等のシリコン材料に対しては、高いクリーン度(清浄度)が要求される。例えば、シリコンウェハの輸送に際しては、シリコンウェハはクリーンに洗浄された樹脂ケースに格納され、シリコンウェハが格納された樹脂ケースは、シリコンウェハに関する情報が記載されたラベルが貼り付けられた後で、樹脂ケースごとにクリーンな包装体に包装され、密封される。このような包装体として、例えば、特許文献1には、最外層フィルムを含む基材層と最内層のシーラント層との少なくとも2層以上の積層体からなる電子部品等包装用の無塵包装袋であって、前記最外層フィルムの表面が、該表面どうしの静摩擦係数(μs)0.40以下、動摩擦係数(μk)0.35以下、かつ表面粗さ(Ra)0.10~0.40μmの粗面に形成されると共に、前記基材層の内部又は最内面に、少なくとも1層以上の帯電防止剤を含む接着剤層又は接着プライマー層が設けられてなる自動包装適性に優れた無塵包装袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-136405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコン材料の輸送用包装体を構成する包装材料のシーラントは、良好な滑り性を有することが求められる。例えば、シーラントどうしの滑り性が悪いと、包装体を開口することが困難となる問題がある。例えば、シーラントと樹脂ケースとの滑り性が悪いと、樹脂ケースの包装体への出し入れが困難となる問題がある。
【0005】
シリコン材料の輸送用包装体を構成する包装材料のシーラントは、良好な透明性を有することも求められる。透明性が悪いシーラントに対しては、例えば、樹脂ケースに貼り付けられたラベルの情報あるいはシリコンウェハや樹脂ケース、ポリシリコン等の状態を包装体が未開封の状態では確認することが困難となる問題や、シーラントに存在する異物の確認が困難となる問題がある。
【0006】
しかし、滑り性と透明性はトレードオフの関係となる場合があり、しかも、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントは、基本的な要求特性として高いクリーン度が求められる。シリコン材料の輸送用包装体に用いることができる程度の高いクリーン度を有しつつ、良好な滑り性と良好な透明性を有するシーラントを得ることは容易ではない。
【0007】
本開示は、シリコン材料の輸送用包装体に用いられ、滑り性、透明性、及びクリーン性が良好なシーラント、並びにそのシーラントが用いられた、包装材料、シリコン材料の輸送用包装体、及びシリコン材料の梱包体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するために、本開示の一実施形態は、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントであって、前記シーラントは、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有し、前記第1面の算術平均粗さRaが0.06μm以上で0.09μm以下であり、かつ前記第1面のクルトシスRkuが7よりも大きく11以下である、シーラントを提供する。
【0009】
本開示の一実施形態は、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントであって、前記シーラントは、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有し、前記第1面の算術平均粗さRaが0.06μm以上で0.07μm未満であり、かつ前記第1面のクルトシスRkuが11以下である、シーラントを提供する。
【0010】
本開示の一実施形態は、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントであって、前記シーラントは、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有し、前記第1面の算術平均粗さRaが0.06μm以上で0.07μm未満であり、かつ前記第1面のクルトシスRkuが7よりも大きく11以下である、シーラントを提供する。
【0011】
本開示の一実施形態は、基材と、前記基材の一方の面側に設けられた前述のシーラントとを備える、包装材料を提供する。本開示の一実施形態は、前述の包装材料により構成された、シリコン材料の輸送用包装体を提供する。本開示の一実施形態は、前述のシリコン材料の輸送用包装体と、前記シリコン材料の輸送用包装体内に収容されたシリコン材料とを備える、シリコン材料の梱包体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、シリコン材料の輸送用包装体に用いられ、滑り性、透明性、及びクリーン性が良好なシーラント、並びに、そのシーラントが用いられた、包装材料、シリコン材料の輸送用包装体、及びシリコン材料の梱包体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、本開示の一実施形態に係るシーラントの一態様の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
図1B図1Bは、本開示の一実施形態に係るシーラントの一態様の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
図2図2は、本開示の一実施形態に係るシーラントの他の態様の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
図3図3は、本開示の一実施形態における包装材料の一態様の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
図4図4は、本開示の一実施形態における包装材料の他の態様の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
図5図5は、本開示の一実施形態における包装材料を製造可能な製造装置の一例の構成を概略的に示す模式図である。
図6図6は、本開示の一実施形態におけるシリコン材料の輸送用包装体の概略構成を示す斜視図である。
図7図7は、本開示の一実施形態におけるシリコン材料の梱包体の概略構成を示す斜視図である。
図8図8は、本開示の一実施形態におけるシリコン材料の梱包体の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本明細書に添付した図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりしている場合がある。本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
【0015】
〔シーラント〕
本実施形態のシーラントは、シリコン材料の輸送用包装体に用いられ、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有し、前記第1面の算術平均粗さRa及び前記第1面のクルトシスRkuが所定の範囲である。本実施形態に係るシーラントは、滑り性、透明性、及びクリーン性が良好である。
【0016】
前記シーラントは、前記第1面を含む第1部分を有していてもよく、前記第1部分は、スリップ剤が実質的に添加されていなくてもよい。第1面の算術平均粗さRa及びクルトシスRkuの調整が容易になる。
【0017】
前記シーラントは、前記第1面を含む第1部分を有していてもよく、前記第1部分は、扁平の粒子を含んでいてもよい。第1面の算術平均粗さRa及びクルトシスRkuの調整が容易になる。
【0018】
前記シーラントは、前記第1面を含む第1部分を有していてもよく、前記第1部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含んでいてもよい。シーラントの低分子成分の揮発を抑制できる。さらに、前記第1部分は、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、又はポリプロピレン(PP)をさらに含んでいてもよい。例えば、第1面の算術平均粗さRa及びクルトシスRkuの調整が容易になる。また、前記シーラントは、前記第1部分よりも前記第2面側に位置する第2部分をさらに有していてもよい。第1面の算術平均粗さRa及びクルトシスRkuの調整が容易になる。さらに、前記第2部分は、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を含んでいてもよい。シーラントの低分子成分の揮発を抑制できる。さらに、前記第2部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)をさらに含んでいてもよい。第1面の算術平均粗さRa及びクルトシスRkuの調整が容易になる。また、前記シーラントは、前記第2部分よりも前記第2面側に位置し、前記第2面を含む第3部分をさらに有していてもよい。シーラントの厚み方向のバランスが良好になり、カールの発生を抑制できる。さらに、前記第3部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含んでいてもよい。シーラントの低分子成分の揮発を抑制できる。
【0019】
前記シーラントは、前記第1面を含む第1層、及び第2層を有する積層体であってもよく、前記第1部分は、前記第1層であってもよい。第1面の算術平均粗さRa及びクルトシスRkuの調整が容易になる。また、前記シーラントは、前記第1面を含む第1層、及び第2層を有する積層体であってもよく、前記第1部分は、前記第1層であってもよく、前記第2部分は、前記第2層であてもよい。第1面の算術平均粗さRa及びクルトシスRkuの調整が容易になる。また、前記シーラントは、前記第1面を含む第1層、第2層、及び第3層がこの順に積層された積層体であってもよく、前記第1部分は、前記第1層であってもよく、前記第2部分は、前記第2層であってもよく、前記第3部分は、前記第3層であってもよい。第1面の算術平均粗さRa及びクルトシスRkuの調整が容易になる。
【0020】
前記シーラントは、1つの層のみからなる単層体であってもよく、前記第1部分は、前記1つの層の一方の面を含む部分であってもよく、前記第2部分は、前記1つの層の前記第1部分よりも他方の面側に位置する部分であってもよい。
【0021】
図1A及び図2に示すように、本実施形態に係るシーラント10は、一例として、シリコン材料を輸送する際に用いられる包装体に用いられるものであって、第1面11A及びそれに対向する第2面11Bを有し、ヒートシール可能なシーラント基材11を備える。シーラント基材11は、第1面11Aを含む第1部分と、第1部分よりも第2面11B側に位置する第2部分と、第2面11Bを含む第3部分とを有する。シーラント基材11は、第1面11A側に位置し、第1面11Aを含む第1層111と、第2面11B側に位置し、第2面11Bを含む第3層113と、第1層111及び第3層113の間に挟まれている中間層(第2層)112とを有する3層の積層体であってもよいし(図1A参照)、第1面11A側に位置し、第1面11Aを含む第1層111と、第2面11B側に位置し、第2面11Bを含む第2層112とを有する2層の積層体であってもよいし(図1B参照)、第1面11A及び第2面11Bを有する単層体であってもよい(図2参照)。後述の通り、2以上の層の積層体の方が、シーラントの表面形状の調整が単層体よりも選択肢が多いため、好ましい。シーラント基材11が3層の積層体(図1A参照)である場合において、例えば、第1部分が第1層111であればよく、第2部分が第2層112であればよく、第3部分が第3層113であればよい。また、シーラント基材11が2層の積層体(図1B参照)である場合において、例えば、第1部分が第1層111であればよく、第2部分が第2層112であればよい。
【0022】
本実施形態に係るシーラント10の第1面11Aの算術平均粗さRaは0.04μm以上で0.10μm以下でありかつクルトシスRkuは20以下である。第1面11Aの算術平均粗さRaが所定の範囲であることで、シーラント10の第1面11Aどうしの滑り性や、第1面11Aとシリコンウェハを格納する樹脂ケースとの間の良好な滑り性を得ることができる。さらに、第1面11Aの算術平均粗さRaが所定の範囲であることで、シーラント10の良好な透明性を確保することができる。それにより、シーラント10を含む包装材料20(図3及び図4参照)から作製されるシリコン材料の輸送用包装体40(図6参照)にシリコン材料が包装されたときに、シリコン材料の輸送用包装体40内部の視認性がシーラント10によって悪化するのを防止することができる。また、シリコン材料の輸送用包装体40におけるシーラント10の第1面11Aに異物が付着しているか否かを容易に確認することができる。また、第1面11AのクルトシスRkuが所定の範囲であることで、シーラント10の良好なクリーン性を確保することができる。
【0023】
一般に、シリコンウェハを格納する樹脂ケースは、自動梱包機を用いてシリコン材料の輸送用包装体に自動的に包装される。この自動梱包機においては、包装体を自動で開口して樹脂ケースが収納されるが、開口前の包装体はシーラントの表面どうしを当接させるようにして積み上げられている。自動梱包機を用いた包装がスムーズに行われるために、包装体を自動で容易に開口可能であることが求められる。そのためには、包装体を構成する包装材料のシーラントどうしの滑り性が良好であることが求められる。また、包装体の開口から樹脂ケースを入れたり開封した包装体から樹脂ケースを取り出したりすることを容易にするために、樹脂ケースとシーラントとの滑り性が良好であることが求められる。
【0024】
一方で、シリコン材料の輸送用包装体を構成する包装材料や、その最内層に位置するシーラントは、良好な透明性を有しているのが望ましい。例えば、シリコンウェハを格納した樹脂ケースには、シリコンウェハに関する情報が記載されたラベルが貼付されていることがある。包装材料やシーラントが良好な透明性を有していれば、梱包体を未開封の状態でラベルの情報を目視や読取装置で確認することができる。また、輸送中におけるシリコンウェハや樹脂ケースの破損や変色等を梱包体が未開封の状態で確認することもできる。特に、シリコン材料の梱包体は、シリコンウェハのクリーン度(清浄度)を維持するためにクリーンルーム内において開封される。クリーンルーム内の照明の関係上、包装材料やシーラントの透明性が高くないと、未開封の梱包体の内部が見えにくいという問題がある。そのため、シリコン材料の輸送用包装体を構成する包装材料は、クリーンルーム内でラベルの情報やシリコンウェハや樹脂ケースの状態が包装材料越しに目視や読取装置で認識可能な程度の透明性を有することが好ましい。また、例えば、シリコン材料の輸送用包装体におけるシーラント表面は、シリコンウェハを格納する樹脂ケースやポリシリコンに直接に接触するため、シーラント表面に異物が付着していると、包装体に包装されたシリコンウェハやポリシリコンに異物が付着してしまうおそれがある。異物が付着している包装体やシーラントは、シリコンウェハの輸送用としては不適格であるとして使用前に排除することが望まれる。包装材料やシーラントが異物を視認可能な程度に透明性を有していることで、包装体に樹脂ケースを包装する前に、異物の存在を確認することができ、シリコンウェハやポリシリコンの汚染を未然に防止することができる。異物は、包装体、包装材料若しくはその中間材料、又はシーラントを目視することや検査装置を使用することで確認できる。シーラントの両面の確認が同時にできるので、シーラントは、シーラントに存在する異物がシーラント越しに目視又は検査装置で認識可能な程度の透明性を有することが好ましい。
【0025】
しかし、本発明者らは、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントとして、シリコン材料の輸送用包装体に対して要求される滑り性及び透明性のいずれも良好なシーラントを得ることは容易ではないことに気付いた。その理由は、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントは、その前提として高いクリーン度を確保することが要求されるため、原材料、製造の機械、条件若しくはプロセス、又はフィルム構成等における制約が多いためである。例えば、滑り性の調整に一般的に用いられるスリップ剤は、それ自体が異物になるおそれがあるので、使用が制限される。例えば、フィルムの表面形状の調整に一般的に用いられる印刷ロールの使用は、異物が転写するおそれがあるので、好ましくない。あるいは、滑り性や透明性に影響を与え得る因子として、例えば、原材料として用いる樹脂の種類や量、シーラントの積層構造や厚さなどが考えられるが、これらの因子は、まず、クリーンなシーラントを得る観点で選択され、次に、選択された条件下で許容される範囲内で滑り性や透明性を高めることが要求される。しかも、後述のように、滑り性と透明性はトレードオフの関係になる場合がある。そこで、本発明者らは、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントではシーラントの表面形状が重要であることに気付き、シリコン材料の輸送用包装体に対して要求される滑り性、透明性、及びクリーン性の観点では表面形状の指標として算術平均粗さRa及びクルトシスRkuに着目すべきことに気付き、そして、算術平均粗さRaが0.04μm以上で0.10μm以下でありかつクルトシスRkuが20以下である場合に、シリコン材料の輸送用包装体に対して要求される滑り性、透明性、及びクリーン性のいずれも良好なシーラントが得られることに気付くことによって、本発明を完成させた。
【0026】
算術平均粗さRaは、表面の凹凸状態の平均値を示すパラメータである。シーラント表面の算術平均粗さRaが相対的に大きければ、シーラント表面どうしやシーラント表面と樹脂ケース表面との接触面積を小さくすることができるため、シーラントどうしの滑り性や樹脂ケースとシーラントとの滑り性を良好にすることができると考えられる。一方で、算術平均粗さRaが相対的に大きいと、シーラント表面にて光の拡散が生じやすくなるため、シーラントの透明性が低下してしまう。
【0027】
また、クルトシスRkuは、表面の高さヒストグラム(分布度数曲線)の尖り度合いを示すパラメータであり、クルトシスRkuが相対的に大きい値であるほど、物体表面の凹凸が先鋭であるということができる。算術平均粗さRaと同様に、シーラント表面のクルトシスRkuが相対的に大きければ、シーラント表面どうしやシーラント表面と樹脂ケース表面との接触面積を小さくすることができるため、シーラントどうしの滑り性や樹脂ケースとシーラントとの滑り性を良好にすることができると考えられる。一方で、クルトシスRkuが相対的に大きいと、物体表面の先鋭な凹凸(代表的なケースは、スリップ剤に由来する凹凸)が剥離しやすくなるので、シーラントのクリーン性が低下してしまう。
【0028】
本発明では、クルトシスRkuが所定の範囲であることで、シーラントから剥離して発生する異物(代表的なケースは、スリップ剤に由来する異物)が抑制されるので、シーラントのクリーン性を低下させないようにすることができると推察される。一方で、クルトシスRkuを所定の範囲とするための制限された条件の下で、算術平均粗さRaが所定の範囲であることで、シーラント表面の滑り性を確保しつつ、シーラントの透明性も低下させないようにすることができると推察される。本実施形態においては、第1面11Aの算術平均粗さRaが0.04μm~0.10μmであり、かつシーラント10の第1面11AのクルトシスRkuが20以下であることで、シーラント10の良好な透明性を確保することができるとともに、シーラント10の第1面11Aどうしの滑り性や、第1面11Aとシリコンウェハを格納する樹脂ケースとの間の滑り性も得ることができ、シリコン材料の輸送用包装体に対して要求されるクリーン性を得ることができる。シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントでは、スリップ剤や印刷ロールの使用に制約があるため、スリップ剤や印刷ロールの低減された使用や実質的な不使用であっても良好な滑り性を得ることができる本実施形態のシーラントは、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントとして特に適しているものである。
【0029】
本実施形態において、シーラント10の第1面11Aの算術平均粗さRa及びクルトシスRkuは、例えば、白色干渉式光学顕微鏡(Zygo社製,製品名:NewView6300型)を用いて、下記条件にて測定し、3点平均値にて算出することができる。
[測定条件]
・測定モード:単視野
・観察視野:0.216mm□
・対物レンズ:50倍
・Zoomレンズ:1倍
Z軸走査距離(Scan Length):5μm(3秒)
・測定画素数(Camera Mode):496px×196px(75Hz)
【0030】
第1面11Aの算術平均粗さRaは、0.04μm以上であってもよく、0.05μm以上であってもよく、0.06μm以上であってもよく、また、0.10μm未満であってもよく、0.09μm以下であってもよく、0.07μm未満であってもよい。第1面11Aの算術平均粗さRaは、0.06μm以上で0.09μm以下であってもよく、0.06μm以上で0.07μm未満であってもよい。第1面11AのクルトシスRkuは、3以上であってもよく、5以上であってもよく、7よりも大きくてもよく、また、20以下であってもよく、15以下であってもよく、11以下であってもよい。
【0031】
本実施形態のシーラント10の厚みT10は、シーラント10を含む包装材料により構成されるシリコン材料の輸送用包装体の所望の厚さや所望のヒートシール強度等に応じて適宜設定され得るものであるが、例えば、30μm~60μm程度であればよい。
【0032】
図1A及び図1Bに示す態様において、第1面11A側に位置する第1層111は、例えば、スリップ剤が実質的に添加されていない低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」と記載する場合がある。)を主成分として含む層である。第1層111がLDPEを主成分として含むことによって、後述の通り、シーラントの低分子成分の揮発を抑制することができる。第1層111をスリップ剤が実質的に添加されていない層とすることで、スリップ剤に起因する表面の凹凸が生じないので、シーラント10の第1面11Aの算術平均粗さRa及びクルトシスRkuを所定の範囲とすることが容易となる。スリップ剤としては、例えば、炭酸カルシウム又はタルクなどの粒子や、シリコーン樹脂又は四級アンモニウム塩化合物などの界面活性剤が挙げられるが、スリップ剤の使用を低減したり実質的に使用しなかったりすることによって、スリップ剤の形状や大きさに起因する凹凸やLDPE等の第1層の他の成分との親和性に起因する凹凸がシーラントの表面に生じるおそれを抑制することができる。本実施形態において「スリップ剤が実質的に添加されていない」とは、スリップ剤としてシーラントの表面の滑り性を実際に向上させる成分がシーラントの表面の滑り性に実際に影響を与える目的でシーラントの表面の滑り性に実際に影響を与える量を超えて添加されていないことを意味する。なお、本実施形態で、第1面11Aの算術平均粗さRa及びクルトシスRkuを所定の範囲とすることができる限りにおいて、第1層111を構成する材料は、スリップ剤が実質的に添加されていないものに限定されるものではない。例えば、扁平な粒子や大きさが小さい粒子を用いたり、あるいは界面活性剤の種類や量を調整して所望の凹凸を生じさせたりすることによって、シーラント10の第1面11Aの算術平均粗さRa及びクルトシスRkuを所定の範囲としてもよい。
【0033】
図1A及び図1Bに示す態様において、第1層111のLDPEの含有量は、樹脂成分の総量に対して50質量%以上で100質量%以下である。第1層111は、密度や分子量分布等が異なる複数の種類のLDPEを含んでいてもよい。第1層111は、LDPEに加えて、例えば、リニア低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」と記載する場合がある。)、高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」と記載する場合がある。)、ポリプロピレン(以下、「PP」と記載する場合がある。)などのヒートシール性がある樹脂を樹脂成分の総量に対して0質量%以上で50質量%以上の含有量で含んでいてもよい。親和性が異なる複数の種類の樹脂を組み合わせて表面に生じる凹凸を調整することによって、シーラント10の第1面11Aの算術平均粗さRa及びクルトシスRkuを所定の範囲に調整することができる。なお、図1A及び図1Bに示す態様では、第1層111がLDPEを主成分として含む場合を示したが、これに限定されない。本実施形態で、第1層111は、例えば、LLDPE、HDPE、PPなどのヒートシール性がある樹脂を樹脂成分の総量に対して50質量%を上回る量で含んでいてもよく、また、LDPEを含んでいなくてもよい。
【0034】
図1Aに示す態様において、第2面11B側に位置する第3層113も、第1層111と同様に、例えば、スリップ剤が実質的に添加されていないLDPEを主成分として含む層である。ただし、本実施形態で、第3層113は、スリップ剤が実質的に添加されていないLDPEを主成分として含む層に限定されないことも、第1層111と同様である。
【0035】
図1Aに示す態様において、第1層111と第3層113との間に挟まれている中間層(第2層)112は、例えば、LLDPEを含む層である。図1Bに示す態様における第2面11Bを含む第2層112も同様である。シリコン材料の輸送用包装体の最内層に位置するシーラント10に由来する揮発成分(シーラント10由来のアウトガス成分)が内容物であるシリコンウェハやポリシリコンなどのシリコン材料に付着してしまうと、シリコンウェハを用いて製造される半導体装置において欠陥を生じさせてしまうおそれがある。そのため、シーラント10に由来する揮発成分は、可能な限り少ないのが望ましい。シーラント10に由来する揮発成分を低減させるためには、シーラント10の厚みT10を薄くするのが望ましい。この点、LLDPEは、LDPEに比べ、伸縮性が高く、折り曲げに対する耐性が高いため、シーラント10としてLLDPEを用いることで、シーラント10の厚みT10を相対的に薄くすることができる。また、包装体40に樹脂ケース51を収容した後、包装体40から脱気して梱包されるため、包装体40を構成する包装材料に含まれるシーラント10には、良好な追従性が求められる。この点においても、LLDPEが用いられることで、シーラント10の追従性が良好になる。しかし、LLDPEは、重合時の圧力がLDPEのそれよりも低いために、LDPEに比べて低分子成分が発生し、揮発しやすい。図1Aに示す態様においては、LLDPEを含む中間層(第2層)112が、LDPEを主成分とする第1層111及び第3層113により挟まれている。そのため、図1Aに示す態様のシーラント10によれば、厚みT10を相対的に薄くすることができ、またLLDPEから低分子成分が揮発するのを防止することができる。図1Bに示す態様のシーラント10においては、当該シーラント10を用いた包装材料20においてLLDPEを含む第2層112が基材21に当接する(図3及び図4参照)。そのため、当該包装材料20から製造されるシリコン材料の輸送用包装体40(図6参照)にシリコンウェハやポリシリコン等のシリコン材料が包装されたときに、シーラント10の第1面11Aを含む第1層111がシリコン材料側に位置することになるため、シリコン材料の輸送用包装体40内に向かってLLDPEから低分子成分が揮発するのを防止することができる。
【0036】
図1Aに示す態様における中間層(第2層)112又は図1Bに示す態様における第2層112のLLDPEの含有量は、樹脂成分の総量に対して20質量%以上で100質量%以下である。30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。中間層(第2層)112又は第2層112は、LLDPEに加えて、例えば、LDPE、HDPE、PPなどのヒートシール性がある樹脂を樹脂成分の総量に対して0質量%以上で80質量%以上の含有量で含んでいてもよい。中間層(第2層)112又は第2層112のLLDPEや、第1層111や第3層113のLDPEとの親和性が比較的高いので、中間層(第2層)112は、LLDPEに加えて、LDPEを含んでいることが好ましい。もっとも、後述の通り、LLDPEとは親和性が比較的低いHDPEやPPを添加することによって、表面の凹凸を意図的に形成させてもよい。なお、図1A及び図1Bに示す態様では、中間層(第2層)112又は第2層112がLLDPEを樹脂成分の総量に対して20質量%以上で100質量%以下を含む場合を示したが、これに限定されない。本実施形態で、中間層(第2層)112又は第2層112は、例えば、LLDPEの含有量が樹脂成分の総量に対して0質量%以上で20質量%未満であってもよく、LDPE、HDPE、PPなどのヒートシール性がある樹脂を樹脂成分の総量に対して50質量%を上回る量で含んでいてもよく、また、LDPEを含んでいなくてもよい。
【0037】
図1Aに示す態様における中間層(第2層)112又は図1Bに示す態様における第2層112の原材料や加工を調節することによって、シーラント10の第1面11Aの算術平均粗さRa及びクルトシスRkuを所定の範囲とすることができる。シーラント10の第1面11Aの表面形状は、中間層(第2層)112と第1層111との界面の凹凸や、中間層(第2層)112の原材料と第1層111の原材料との親和性によって変化するためである。例えば、中間層(第2層)112に粒子や界面活性剤などのスリップ剤を添加したり、中間層(第2層)112のスリップ剤の使用量を低減ないし無くしたり、中間層(第2層)112を印刷版で押圧して所望の表面形状を得た後に第1層111を形成したり、あるいは、第1層111の原材料に対して親和性が低い材料や親和性が高い材料を中間層(第2層)112で選択したりすることによって、シーラント10の第1面11Aの算術平均粗さRa及びクルトシスRkuを調節することができる。
【0038】
図2に示すシーラント10において、単層構造体のシーラント基材11は、LDPEとLLDPEとを含む。このシーラント基材11において、LDPEとLLDPEとの配合比が、1:1~3:2程度であればよい。このように、LDPEの配合量がLLDPEの配合量よりも多いことで、シーラント基材11の第1面11A側においてLDPEの存在量を多くすることができるとともに、LLDPEによりシーラント10の厚みT10を薄くするという効果、すなわち低分子成分が揮発するのを防止するという効果が奏される。図2に示すシーラント10の第1面11Aの算術平均粗さRa及びクルトシスRkuは、例えば、前述した図1A及び図1Bに示すシーラント10の第1層111と同様に調節することができる。なお、図2に示すシーラント10において、単層構造体のシーラント基材11は、スリップ剤が実質的に添加されていないLLDPEからなるものであってもよい。スリップ剤が実質的に添加されていないLLDPEからなることで、シーラント10の第1面11Aの算術平均粗さRa及びクルトシスRkuを所定の範囲とすることができる。
【0039】
前述した構成を有するシーラント10は、従来公知のフィルム成膜法を用いて製造され得る。例えば、図1Aに示す構成を有するシーラント10は、ダイコート法等の塗工法、インフレーション法等を用いて、第3層113、中間層(第2層)112及び第1層111を積層形成することで製造され得る。図1B及び図2に示す構成を有するシーラント10も同様に、塗工法、押出インフレーション法等を用いて製造され得る。
【0040】
〔包装材料〕
本実施形態の包装材料は、基材と、前記基材の一方の面側に設けられた、前述のシーラントとを備える。包装材料は、前記基材の前記シーラントとは反対の面側に設けられた、ガスバリア層をさらに有していてもよく、さらに、前記ガスバリア層が、アルミニウム酸化物又はケイ素酸化物を含んでいてもよい。
【0041】
図3に示すように、図3における包装材料20は、基材21の一方の面側に第2面11Bを当接させるようにしてシーラント10が積層された積層構造を有する。基材21は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、ポリイミド、シクロオレフィンコポリマー等から選択される1種の樹脂材料又は2種以上の樹脂材料の積層体により構成される。なお、図3に示す例においては、基材21が2種の樹脂材料の積層体(第1樹脂層211及び第2樹脂層212)により構成されており、第1樹脂層211がシーラント10の第2面11Bに対する接着層として機能している。この場合において、例えば、第1樹脂層211はポリエチレン(PE)により構成され、第2樹脂層212はポリエチレンテレフタレート(PET)により構成されている。
【0042】
包装材料20におけるシーラント10は、第1面11Aの算術平均粗さRaが0.04μm以上で0.10μm以下であり、かつ第1面11AのクルトシスRkuが20以下であることで、良好な滑り性と良好な透明性を有する。その結果、包装材料20から製造されるシリコン材料の輸送用包装体40(図6参照)にシリコンウェハやポリシリコンが包装されたときに、包装体40内部の視認性がシーラント10によって悪化するのを防止することができる。また、シリコン材料の輸送用包装体40におけるシーラント10の第1面11Aに異物が付着しているか否かを容易に確認することができる。
【0043】
本実施形態における包装材料20は、基材21とシーラント10との間にガスバリア層22を有していてもよい(図4参照)。ガスバリア層22を有することで、包装材料20から製造される包装体40の外部から、シリコン材料表面を汚染したりシリコン材料と反応したりするガス等が侵入するのを防止することができる。ガスバリア層22は、例えば、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物等の無機酸化物や窒化ケイ素等の無機窒化物等を樹脂層(例えばPET層等)に蒸着させた蒸着膜等であってもよい。アルミニウム酸化物やケイ素酸化物のガスバリア層は、良好な透明性を有するため、好ましい。また、ガスバリア層22は、アルミニウム等の金属を蒸着させた金属蒸着膜や、アルミニウム等の金属箔であってもよい。なお、包装材料20がこれらの金属蒸着膜や金属箔を基材21とシーラント10との間に有する場合、包装材料20の透明性は確保されないが、包装材料20から製造される包装体40にガスバリア性の他、光遮蔽性をも付与することができる。また、この態様において、シーラント10が良好な透明性を有することで、包装材料20から作製される包装体40におけるシーラント10の第1面11Aに異物が付着しているか否かを、より容易に確認することができる。
【0044】
前述した構成を有する包装材料20は、従来公知のフィルム等の作製方法により作製すればよいが、例えば、図5に示すように、第1ロール61、第2ロール62、第3ロール63及びTダイ64を有する製造装置60を用いて作製され得る。かかる製造装置において、シーラント10の第2面11Bと、第2樹脂層212との間に、第1樹脂層211を構成する樹脂材料がフィルム状にTダイ64から押し出され、第1ロール61、第2ロール62及び第3ロール63により面状圧接されて冷却されることで、包装材料20が作製される。
【0045】
〔シリコン材料の輸送用包装体〕
本実施形態のシリコン材料の輸送用包装体は、上述の包装材料により構成されている。また、本実施形態のシリコン材料の梱包体は、上述のシリコン材料の輸送用包装体と、前記シリコン材料の輸送用包装体内に収容されたシリコン材料とを備えている。
【0046】
図6に示すように、一例におけるシリコン材料の輸送用包装体40は、広げることで略方体状(略直方体状)となる包装袋であって、第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44によって構成されている。第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44は、いずれも包装材料20により構成されている。包装体40は、第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44のいずれものシーラント10の第1面11Aが最内面に位置し、基材21の他方面側が最外面に位置するように構成されている。
【0047】
包装体40において、第1側面フィルム41の2つの対向する側縁部の一方と折り込まれた第1ガゼットフィルム43の2つの対向する側縁部の一方とを重ね合わせてヒートシールにより溶着させた第1ヒートシール部HS1が形成され、第1側面フィルム41のその側縁部の他方と折り込まれた第2ガゼットフィルム44の2つの対向する側縁部の一方とを重ね合わせてヒートシールにより溶着させた第2ヒートシール部HS2が形成されている。また、第2側面フィルム42の2つの対向する側縁部の一方と折り込まれた第1ガゼットフィルム43のその側縁部の他方とを重ね合わせてヒートシールにより溶着させた第3ヒートシール部HS3が形成され、第2側面フィルム42のその側縁部の他方と折り込まれた第2ガゼットフィルム44のその側縁部の他方とを重ね合わせてヒートシールにより溶着させた第4ヒートシール部HS4が形成されている。第1側面フィルム41及び第2側面フィルム42のそれぞれの側縁部を重ね合わせてヒートシールにより溶着させた底面ヒートシール部HSBが形成され、底面ヒートシール部HSBに対向して位置する第1側面フィルム41及び第2側面フィルム42のそれぞれの側縁部は、ヒートシールされずにシリコン材料の輸送用包装体40の開口部45を形成している。
【0048】
第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44を折り込んだ包装体40が多数積み重ねられている状態で、第1側面フィルム41又は第2側面フィルム42を吸着保持して上方に持ち上げることで、開口部45を開くことができる。その開いた開口部45から、包装体40内にシリコンウェハ52を格納する樹脂ケース51(図7参照)やポリシリコン53(図8参照)を収容し、開口部45における第1側面フィルム41及び第2側面フィルム42のそれぞれの側縁部を重ね合わせてヒートシールすることで、上面ヒートシール部HSTを形成してシリコン材料の梱包体50(図7及び図8参照)を作製することができる。
【0049】
図6のシリコン材料の輸送用包装体40においては、第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44のシーラント10の第1面11Aの算術平均粗さRaが0.04μm以上で0.10μm以下であり、かつクルトシスRkuが20以下である。第1面11Aは包装体40の最内面に位置し、第1側面フィルム41又は第2側面フィルム42を吸着保持して上方に持ち上げたときに、容易に開口部45を開くことができるとともに、開いた開口部45から包装体40内に樹脂ケース51を容易に収容することができる。また、シーラント10が良好な透明性を有するため、包装体40に包装されたシリコンウェハ52や樹脂ケース51、ポリシリコン53の視認性を良好にすることができる。なお、包装材料20の基材21のシーラントとは反対面側に金属蒸着膜や金属箔が設けられている場合、包装体40の透明性は確保されないが、包装体40にガスバリア性や光遮蔽性を付与することができる。また、基材21の金属蒸着膜や金属箔とは反対面側に設けられているシーラント10において良好な透明性が確保されていることで、包装体40におけるシーラント10の第1面11Aに異物が付着しているか否かを容易に確認することができる。
【0050】
以上説明した実施形態は、本開示の理解を容易にするために記載されたものであって、本開示を限定するために記載されたものではない。したがって、前述の実施形態に開示された各要素は、本開示の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0051】
前述したシリコン材料の梱包体50は、前述したシリコン材料の輸送用包装体40を内袋とし、それと同様の構成を有する外袋をさらに有するものであってもよく、この場合において、内袋としての包装体40にシリコンウェハ52やポリシリコン53を収容し、さらに外袋に収容すればよい。この外袋の第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44のそれぞれを構成する包装材料は、図3及び図4に示す構成を有する包装材料20であってもよいし、帯電防止機能を有する樹脂フィルム(例えば、PTME-RT やエンブレムERT(製品名,ユニチカ社製)等)、ガスバリア層22、第1樹脂層211及びシーラント10をこの順で積層してなる積層体であってもよい。
【0052】
前述した実施形態におけるシリコン材料の輸送用包装体40は、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44を有しないものであってもよい。この場合において、第1側面フィルム41及び第2側面フィルム42を、互いのシーラント10の第1面11Aを対向させるようにして3つの側縁部をヒートシールすればよい。
【実施例
【0053】
以下、実施例等を挙げて本開示をさらに詳細に説明するが、本開示は下記の実施例等により何ら限定されるものではない。
【0054】
〔実施例1〕
第1層111の構成材料としてスリップ剤が実質的に添加されていない低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LDPE,宇部丸善ポリエチレン社製,製品名:UBEポリエチレンB128)を用い、中間層(第2層)112の構成材料としてスリップ剤が実質的に添加されていない低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LDPE,宇部丸善ポリエチレン社製,製品名:UBEポリエチレンB128)及びスリップ剤が実質的に添加されていないリニア低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LLDPE,プライムポリマー社製,製品名:3500ZA)の溶融混合物(配合比=1:1(質量基準))を用い、第3層113の構成材料としてスリップ剤が実質的に添加されていない低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LDPE,宇部丸善ポリエチレン社製,製品名:UBEポリエチレンB128)を用い、多層共押出インフレーション成膜法により、図1Aに示す構成を有するシーラント10(第1層111(膜厚:8μm)、中間層(第2層)112(膜厚:24μm)、第3層113(膜厚:8μm))を作製した。
【0055】
前述のようにして作製されたシーラント10の第1層111上の算術平均粗さRa及びクルトシスRkuを、白色干渉式光学顕微鏡(Zygo社製,製品名:NewView6300型)を用いて下記条件にて測定し、3点平均値にて算出した。結果を表1に示す。
【0056】
[測定条件]
・測定モード:単視野
・観察視野:0.216mm□
・対物レンズ:50倍
・Zoomレンズ:1倍
Z軸走査距離(Scan Length):5μm(3秒)
・測定画素数(Camera Mode):496px×196px(75Hz)
【0057】
シーラント10の第1層111の動摩擦係数を、摩擦測定機(東洋精機製作所社製,製品名:摩擦測定機TR-2)を用いて測定し、シーラント10の第1層111どうしの滑り性を下記の基準に従い評価した。結果を表1に示す。
<滑り性評価基準>
〇:動摩擦係数が0.45未満である。
×:動摩擦係数が0.45以上である。
【0058】
シーラント10の写像性を、写像性測定器(スガ試験機社製,製品名:ICM-1T)を用いて測定し、シーラント10の透明性を下記の基準に従い評価した。結果を表1に示す。
<透明性評価基準>
〇:光学くし幅2mmにおいて、写像性が60%以上である。
×:光学くし幅2mmにおいて、写像性が60%未満である。
【0059】
さらに、シーラント10からの揮発成分を下記条件のGC/MSにて分析してマススペクトルを取得し、シーラント10のクリーン性を下記の基準に従い評価した。結果を表1に示す。
【0060】
<GC/MS条件>
・ガスクロマトグラフ:GCMS-QP2010(島津製作所社製)
・カラム:670-15003-03(長さ:30mm,内径:0.25mm,島津製作所社製)
・カラムオーブン温度:50℃
・注入量:1μL
・キャリアガス:He(57.1mL/分)
・気化室温度設定:300℃
・測定モード:スプリット
【0061】
<クリーン性評価基準>
〇:アルカン以外のピークであって、トルエン換算で10ppm以上のピークが検出されない。
×:アルカン以外のピークであって、トルエン換算で10ppm以上のピークが検出される。
【0062】
〔実施例2〕
スリップ剤が実質的に添加されていない低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LDPE,宇部丸善ポリエチレン社製,製品名:UBEポリエチレンB128)のペレット及びスリップ剤が実質的に添加されていないリニア低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LLDPE,プライムポリマー社製,製品名:3500ZA)のペレットを配合比7:3(質量基準)で溶融混合し、インフレーション成膜法により、図2に示す構成を有するシーラント10を作製した。
【0063】
前述のようにして作製されたシーラント10の算術平均粗さRa及びクルトシスRku、透明性、並びに滑り性を、実施例1と同様にして測定・評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0064】
〔実施例3〕
スリップ剤が実質的に添加されていないリニア低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LLDPE,タマポリ社製,製品名:NB-1)のペレットを用い、インフレーション成膜法により、図2に示す構成を有するシーラント10を作製した。
【0065】
前述のようにして作製されたシーラント10の算術平均粗さRa及びクルトシスRku、透明性、並びに滑り性を、実施例1と同様にして測定・評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0066】
〔比較例1〕
スリップ剤が実質的に添加されているリニア低密度ポリエチレン(LLDPE,三井化学東セロ社製,製品名:T.U.X. MC-S)を用いた。シーラントの算術平均粗さRa及びクルトシスRku、透明性、並びに滑り性を、実施例1と同様にして測定・評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0067】
〔比較例2〕
高密度ポリエチレン(HDPE,プライムポリマー社製,製品名:HZ3600F)のペレットを用い、インフレーション製膜にてシーラントを作製した。
【0068】
前述のようにして作製されたシーラントの算術平均粗さRa及びクルトシスRku、滑り性、透明性、並びにクリーン性を、実施例1と同様にして測定・評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示す結果より、シーラント10の第1面11Aの算術平均粗さRaが0.04~0.10μmでありかつクルトシスRkuが20以下であることで、良好な滑り性、良好な透明性、及び良好なクリーン性を有することが確認された。
【符号の説明】
【0071】
10…シーラント
11A…第1面
11B…第2面
20…包装材料
40…シリコン材料の輸送用包装体
50…シリコン材料の梱包体
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8