(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】造形システム、造形物の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41M 5/36 20060101AFI20240814BHJP
B41M 3/06 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B41M5/36
B41M3/06 C
B41M3/06 F
(21)【出願番号】P 2020153649
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】岩本 健士
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-124896(JP,A)
【文献】特開2018-144449(JP,A)
【文献】特開2014-081582(JP,A)
【文献】特開2015-205403(JP,A)
【文献】特開2018-086809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
B41M 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を照射して成形シートの熱膨張層を加熱することにより、前記熱膨張層を膨張させる膨張装置と、
加熱された温度によって色調が変化する検温用シート
を前記膨張装置による前記検温用シートの加熱後に撮像することで前記検温用シートにおける色調の変化状態を温度分布画像データとして取得する撮像手段と、
前記撮像手段により取得された温度分布
画像データに基づいて、前記熱膨張層を
前記膨張装置で加熱する温度を補正する補正手段と、を備える、
造形システム。
【請求項2】
前記成形シートに、前記電磁波を熱に変換する熱変換層を形成する印刷装置を備え、
前記膨張装置は、前記熱変換層を形成された前記成形シートに前記電磁波を照射して、前記熱膨張層を加熱することにより、前記熱膨張層を膨張させる、
請求項1に記載の造形システム。
【請求項3】
前記補正手段は、前記熱変換層の濃淡を補正することにより、前記熱膨張層を加熱する温度を補正する、
請求項2に記載の造形システム。
【請求項4】
前記補正手段は、前記電磁波の強度を調整することにより、前記熱膨張層を加熱する温度を補正する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の造形システム。
【請求項5】
前記検温用シートの大きさは、前記成形シートの大きさと同じに設定されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の造形システム。
【請求項6】
膨張装置により電磁波を照射して成形シートの熱膨張層を加熱することにより、前記熱膨張層を膨張させる膨張工程と、
前記膨張工程に先立って、加熱された温度によって色調が変化する検温用シートを前記膨張装置による前記検温用シートの加熱後に撮像することで前記検温用シートにおける色調の変化状態を温度分布画像データとして取得する撮像工程と、
前記撮像工程で取得された温度分布画像データに基づいて、前記熱膨張層を前記膨張装置で加熱する温度を補正する補正工程と、を含む、
造形物の製造方法。
【請求項7】
電磁波を照射して成形シートの熱膨張層を加熱することにより、前記熱膨張層を膨張させる膨張装置を備えた造形システムのコンピュータを、
加熱された温度によって色調が変化する検温用シートを前記膨張装置による前記検温用シートの加熱後に所定の撮像手段により撮像させることで前記検温用シートにおける色調の変化状態を温度分布画像データとして取得する取得手段、
前記取得手段により取得された温度分布画像データに基づいて、前記熱膨張層を前記膨張装置で加熱する温度を補正する補正手段、として機能させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形システム、造形物の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光吸収特性に優れた画像を形成された熱膨張性シートに光を照射して、熱膨張性シートの被覆層を加熱することにより、立体画像を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、搬送ベルトに載せられた熱膨張性シートに光源ランプからの光を照射する光照射装置を用いて、立体画像を形成している。特許文献1の光照射装置では、熱膨張性シートの反り、撓み等により、熱膨張性シートの被覆層を加熱する温度にムラが生じるおそれがある。熱膨張性シートの被覆層を加熱する温度にムラが生じると、立体画像を構成する凹凸(造形物の凹凸)にもムラが生じる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、熱膨張層を加熱する温度のムラを抑制できる造形システム、造形物の製造方法及びプログラム提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る造形システムは、
電磁波を照射して成形シートの熱膨張層を加熱することにより、前記熱膨張層を膨張させる膨張装置と、
加熱された温度によって色調が変化する検温用シートを前記膨張装置による前記検温用シートの加熱後に撮像することで前記検温用シートにおける色調の変化状態を温度分布画像データとして取得する撮像手段と、
前記撮像手段により取得された温度分布画像データに基づいて、前記熱膨張層を前記膨張装置で加熱する温度を補正する補正手段と、を備える。
【0007】
本発明の第2の観点に係る造形物の製造方法は、
膨張装置により電磁波を照射して成形シートの熱膨張層を加熱することにより、前記熱膨張層を膨張させる膨張工程と、
前記膨張工程に先立って、加熱された温度によって色調が変化する検温用シートを前記膨張装置による前記検温用シートの加熱後に撮像することで前記検温用シートにおける色調の変化状態を温度分布画像データとして取得する撮像工程と、
前記撮像工程で取得された温度分布画像データに基づいて、前記熱膨張層を前記膨張装置で加熱する温度を補正する補正工程と、を含む。
【0009】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、
電磁波を照射して成形シートの熱膨張層を加熱することにより、前記熱膨張層を膨張させる膨張装置を備えた造形システムのコンピュータを、
加熱された温度によって色調が変化する検温用シートを前記膨張装置による前記検温用シートの加熱後に所定の撮像手段により撮像させることで前記検温用シートにおける色調の変化状態を温度分布画像データとして取得する取得手段、
前記取得手段により取得された温度分布画像データに基づいて、前記熱膨張層を前記膨張装置で加熱する温度を補正する補正手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱膨張層を加熱する温度のムラを抑制できる造形システム、造形物の製造方法及びプログラム提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係る成形シートの断面を示す模式図である。
【
図2】実施形態1に係る造形物を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す造形物をA-A線で矢視した断面図である。
【
図4】実施形態1に係る造形システムの構成を示す図である。
【
図5】実施形態1に係る制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態1に係る検温用シートの断面を示す模式図である。
【
図7】実施形態1に係る温度分布データの測定方法を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態1に係る制御ユニットのハードウェアの構成を示す図である。
【
図9】実施形態1に係る膨張装置を示す模式図である。
【
図10】実施形態1に係る造形物の製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態1に係る熱変換層を形成された成形シートの断面を示す模式図である。
【
図12】実施形態2に係る造形物の製造方法を示すフローチャートである。
【
図13】実施形態3に係る膨張装置を示す模式図である。
【
図14】実施形態3に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【
図15】変形例に係る検温用シートの断面を示す模式図である。
【
図16】変形例に係る検温用シートの断面を示す模式図である。
【
図17】変形例に係る膨張装置を示す模式図である。
【
図18】変形例に係る造形システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る造形システムについて、図面を参照して説明する。
【0014】
<実施形態1>
本実施形態では、造形システム1は、熱膨張する成形シート10から造形物50を製造する。造形物50は、加飾シート、壁紙等として使用される。本明細書において、「造形物」は所定の面に凹凸を造型(形成)されているシートであり、凹凸は、幾何学形状、文字、模様、装飾等を構成する。ここで、「装飾」とは、視覚及び/又は触覚を通じて美感を想起させるものである。「造形(又は造型)」は、形のあるものを作り出すことを意味し、装飾を加える加飾、装飾を形成する造飾のような概念をも含む。また、本実施形態の造形物は、所定の面に凹凸を有する立体物であるが、いわゆる3Dプリンタにより製造された立体物と区別するため、本実施形態の造形物を2.5次元(2.5D)オブジェクト又は疑似三次元(Pseudo-3D)オブジェクトとも呼ぶ。本実施形態の造形物を製造する技術は、2.5D印刷技術又はPseudo-3D印刷技術とも呼べる。
【0015】
(成形シート)
まず、
図1を参照して、成形シート10を説明する。成形シート10は、加熱されることにより膨張する。成形シート10が膨張することによって、造形物50が形成される。
【0016】
成形シート10は、
図1に示すように、基材12と基材12の第1主面12aの上に形成された熱膨張層20とを備える。本実施形態では、熱膨張層20は第1主面12aの全面に形成されている。
【0017】
成形シート10の基材12は、熱膨張層20を形成される第1主面12aと、第1主面12aと反対側の第2主面12bとを有する。基材12は熱膨張層20を支持する。基材12は、例えば、シート状(例えばA4用紙サイズ)に形成される。基材12を構成する材料は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)等の熱可塑性樹脂である。基材12を構成する材料の種類と基材12の厚さは、造形物50の用途に応じて選択される。
【0018】
成形シート10の熱膨張層20は、基材12の第1主面12aの上に形成される。熱膨張層20は、図示しないバインダと、バインダ中に分散された図示しない熱膨張材料とを含む。バインダは、酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の任意の熱可塑性樹脂である。熱膨張材料は、所定の温度(例えば80℃~120℃)以上に加熱されることにより、加熱される熱量(具体的には、加熱温度、加熱時間等)に応じた大きさに膨張する。熱膨張材料は、例えば、熱膨張性マイクロカプセルである。
【0019】
熱膨張性マイクロカプセルは、プロパン、ブタン、その他の低沸点物質から構成された発泡剤を、熱可塑性樹脂製の殻の内に包み込んだマイクロカプセルである。熱膨張性マイクロカプセルの殻は、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、これらの共重合体等の熱可塑性樹脂から形成される。熱膨張性マイクロカプセルは、所定の温度(膨張開始温度)以上に加熱されると、殻が軟化すると共に発泡剤が気化し、発泡剤が気化した圧力により、殻がバルーン状に膨張する。熱膨張性マイクロカプセルは、膨張前の粒径の5倍程度まで膨張する。膨張前の熱膨張性マイクロカプセルの平均粒径は、例えば、5μm~50μmである。
【0020】
成形シート10の熱膨張層20は、熱膨張材料の膨張により膨張し、基材12と反対側の面20aに後述する凹凸60を形成される。
(造形物)
【0021】
次に、
図2、
図3を参照して、造形物50を説明する。造形物50は成形シート10から形成される。造形物50は、
図2、
図3に示すように、基材12と、基材12の第1主面12aの上に形成され、基材12と反対側に凹凸60を有する熱膨張層20と、凹凸60に対応するパターンで形成された熱変換層70とを備える。
【0022】
造形物50は、シート状の造形物であり、表面に凹凸60を有している。造形物50の基材12の構成は成形シート10の基材12と同様であるので、ここでは、造形物50の熱膨張層20と熱変換層70について、説明する。
【0023】
造形物50の熱膨張層20は、成形シート10の熱膨張層20の一部が膨張した層である。造形物50の熱膨張層20は、図示しない、バインダと熱膨張材料(膨張前の熱膨張材料)と膨張済みの熱膨張材料とを含んでいる。造形物50の熱膨張層20のバインダは、成形シート10の熱膨張層20のバインダと同様である。造形物50の熱膨張層20の熱膨張材料(膨張前の熱膨張材料)も、成形シート10の熱膨張層20の熱膨張材料と同様である。膨張済みの熱膨張材料は、熱膨張材料が所定の温度以上に加熱されて膨張した、熱膨張材料である。造形物50の熱膨張層20の凹凸60は、成形シート10の熱膨張層20の熱膨張材料が膨張することにより形成される凸部62による凹凸である。凹凸60は、膨張済みの熱膨張材料を含む凸部62と、膨張前の熱膨張材料を含む凹部64とから構成されている。
【0024】
造形物50の熱変換層70は、基材12の第2主面12bの上に、熱膨張層20の凹凸60に対応したパターンで形成される。熱変換層70は、照射された電磁波を熱に変換し、変換された熱を放出する。成形シート10の熱膨張層20の熱膨張材料は、熱変換層70から放出された熱により、加熱される。加熱された熱膨張材料は、加熱温度、加熱時間等に応じた大きさに膨張する。これにより、膨張済みの熱膨張材料が形成され、熱膨張層20が膨張する。熱膨張材料が加熱される温度は、熱変換層70の濃淡(後述する熱変換材料の濃度)と、熱変換層70に照射される電磁波の単位面積と単位時間当たりのエネルギー量(すなわち、電磁波の強度)とにより制御できる。したがって、凹凸60の凸部62の高さは、熱変換層70の濃淡と電磁波の強度とにより制御できる。
【0025】
熱変換層70は、吸収した電磁波を熱に変換する熱変換材料から構成される。熱変換材料は、カーボンブラック、六ホウ化金属化合物、酸化タングステン系化合物等である。例えば、カーボンブラックは、可視光、赤外光等を吸収して熱に変換する。また、六ホウ化金属化合物と酸化タングステン系化合物は、近赤外光を吸収して熱に変換する。六ホウ化金属化合物と酸化タングステン系化合物の中では、近赤外光領域で吸収率が高く、かつ可視光領域の透過率が高いことから、六ホウ化ランタン(LaB6)とセシウム酸化タングステンが好ましい。なお、熱変換層70を構成する熱変換材料が基材12、熱膨張層20等に吸収されることにより、熱変換層70は明確な境界を有する層構造を有しない場合もある。本明細書では、理解を容易にするために、熱変換層70を明確な境界を有する層として図示している。
【0026】
(造形システム)
次に、成形シート10から造形物50を製造する造形システム1を説明する。造形システム1は、
図4に示すように、制御ユニット100と印刷装置200と膨張装置300とを備える。印刷装置200は成形シート10に熱変換層70を形成する。膨張装置300は、熱変換層70を形成された成形シート10に電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱することにより、熱膨張層20を膨張させて凸部62(すなわち凹凸60)を形成する。
【0027】
制御ユニット100は、印刷装置200と膨張装置300とを制御する。制御ユニット100は、
図5に示すように、制御部110と記憶部121と通信部122と記録媒体駆動部123と操作部124と表示部125とを備える。
【0028】
制御ユニット100の制御部110は、制御手段として機能する。制御部110は、制御ユニット100の各部を制御すると共に、印刷装置200と膨張装置300の動作を制御する。また、制御部110は、膨張装置300により加熱された検温用シート80の温度分布を表す温度分布データに基づいて、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度を補正する。本実施形態では、制御部110は、熱変換層70の濃淡を補正することにより、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度を補正する。
【0029】
制御部110は、凹凸データと温度分布データとを取得する取得部112と、凹凸データから熱変換層70の濃淡を表す濃淡データを生成する濃淡データ生成部114と、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度を補正する補正部116とを有する。取得部112と濃淡データ生成部114と補正部116は、それぞれ、取得手段と濃淡データ生成手段と補正手段として機能する。
【0030】
制御部110の取得部112は、凹凸データと温度分布データとを記憶部121から取得する。凹凸データは、造形物50の凹凸を表し、成形シート10における位置と凸部62の高さ(すなわち、隆起させる高さ)とを関連付けたデータである。凹凸データは、ユーザによって、記憶部121に予め記憶されている。凹凸データは、造形物50のCAD(Computer-Aided Design)データから生成できる。温度分布データは、膨張装置300により加熱された検温用シート80の温度分布を表し、検温用シート80における位置と加熱された温度とを関連付けたデータである。温度分布データは、予め測定され、記憶部121に予め記憶されている。
【0031】
ここで、
図6、
図7を参照して、検温用シート80を用いた温度分布データの測定について説明する。検温用シート80は、例えば、色調が加熱された温度に応じて変化するシートである。検温用シート80は、
図6に示すように、支持体82と示温層84とを備える。支持体82は、示温層84を支持する。支持体82は、紙、フィルム等から、成形シート10と同じ大きさのシート状に形成されている。示温層84は、支持体82の第1主面82aの全面に形成されている。示温層84は、色調が加熱された温度に応じて変化する示温材料を含む。示温層84は、例えば、示温インクを支持体82の第1主面82aに塗布することにより形成される。
【0032】
温度分布データは、膨張装置300を用いて、検温用シート80を加熱することにより測定される。
図7は、温度分布データの測定方法を示すフローチャートである。具体的には、まず、後述する造形物50の製造方法の照射工程(ステップS40)と同様に、膨張装置300を用いて、検温用シート80に予め設定されている強度を有する電磁波を照射して、検温用シート80を加熱する(ステップS11)。これにより、検温用シート80の示温層84の色調が、加熱された温度に応じて変化する。次に、加熱された検温用シート80を、撮像素子(例えば、CCD:Charge Coupled Device)を備えた撮像装置により撮像して、加熱された検温用シート80の画像を得る(ステップS12)。加熱された検温用シート80の画像に画像解析処理を施すことにより、検温用シート80における位置と加熱された温度とを関連付けた温度分布データが得られる(ステップS13)。温度分布データの測定は、例えば、膨張装置300が組み立てられた直後に、膨張装置300毎に測定される。これにより、膨張装置300のそれぞれに対応した補正を行うことができる。なお、撮像装置は、撮像手段として機能する。
【0033】
図6に戻り、取得部112は取得した凹凸データを濃淡データ生成部114に出力する。また、取得部112は取得した温度分布データを補正部116に出力する。
【0034】
制御部110の濃淡データ生成部114は、凹凸データから熱変換層70の濃淡を表す濃淡データを生成し、生成された濃淡データを補正部116に出力する。濃淡データは、熱変換層70に照射される電磁波の予め設定されている強度に対応し、成形シート10における位置と熱変換層70の濃淡とを関連付けたデータである。例えば、濃淡データ生成部114は、予め設定されている強度を有する電磁波を熱変換層70に照射した際の、凸部62の高さと熱変換層70の濃淡とを関連付けた高さデータを参照して、凹凸データから濃淡データを生成する。高さデータは、予め測定され、記憶部121に予め記憶されている。
【0035】
制御部110の補正部116は、熱変換層70の濃淡を補正することにより、熱膨張層20を加熱する温度を補正する。すなわち、補正部116は、温度分布データに基づいて濃淡データを補正し、補正された濃淡データを生成する。例えば、補正部116は、熱膨張層20を加熱する温度と熱変換層70の濃淡とを関連付けた第1加熱温度データを参照して、温度分布データの加熱された温度が温度分布の平均値よりも低い位置における熱変換層70の濃淡を濃くする。また、補正部116は、第1加熱温度データを参照して、温度分布データの加熱された温度が温度分布の平均値よりも高い位置における熱変換層70の濃淡を淡くする。第1加熱温度データは、予め測定され、記憶部121に予め記憶されている。
制御部110は、補正された濃淡データに基づいて、印刷装置200の動作を制御する。
【0036】
本実施形態では、制御部110の補正部116が、加熱された検温用シートの温度分布を表す温度分布データに基づいて、熱変換層70の濃淡を表す濃淡データを補正する。したがって、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度のムラを抑制できる。
【0037】
制御ユニット100の記憶部121は、印刷装置200と膨張装置300の制御に用いられる、データとプログラムとを記憶する。制御ユニット100の通信部122は、印刷装置200と膨張装置300と通信する。
【0038】
制御ユニット100の記録媒体駆動部123は、可搬型の記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出す。可搬型の記録媒体とは、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、USB(Universal Serial Bus)規格のコネクタが備えられているフラッシュメモリ等である。
【0039】
制御ユニット100の操作部124は、ユーザから操作を受け付ける。ユーザは、操作部124を操作することによって、制御ユニット100に指令を入力できる。
【0040】
制御ユニット100の表示部125は、データ、印刷装置200と膨張装置300の状態を表す情報等を表示する。
【0041】
図8は、制御ユニット100のハードウェアの構成を示す。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)131とRAM(Random Access Memory)132から構成される。制御部110の機能は、CPU131が記憶部121に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部121は、ROM(Read Only Memory)133とハードディスク134とを備える。通信部122は通信インタフェース135である。記録媒体駆動部123は、例えば光学ディスクドライブ136である。操作部124は、例えば、タッチパネル137、キーボード、マウスである。表示部125は、例えば、液晶ディスプレイ138である。CPU131と各部は、バス139を介して接続する。
【0042】
図4に戻り、印刷装置200は制御ユニット100により制御される。印刷装置200は、制御ユニット100の制御部110により生成された、補正された濃淡データに基づいて、基材12の第2主面12bの上に熱変換層70を印刷する。これにより、補正された濃淡データに基づく熱変換層70が、基材12の第2主面12bの上に形成される。印刷装置200は、例えば、熱膨張材料を含むインクを使用するインクジェットプリンタである。なお、印刷装置200は、図示しない、CPUから構成される制御部とROMとRAMから構成される記憶部とを備えている。
【0043】
膨張装置300は、制御ユニット100により制御される。膨張装置300は、熱変換層70を形成された成形シート10に電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。これにより、成形シート10の熱膨張層20が膨張して、凹凸60が形成される。また、温度分布データの測定では、膨張装置300は、検温用シート80に電磁波を照射して、検温用シート80を加熱する。
【0044】
膨張装置300は、
図9に示すように、筐体内に、供給ローラ301a、301bと、供給ガイド302a、302b、搬送ローラ303a、303b、304a、304bと、排出ガイド305a、305bと、照射部310とを備える。また、膨張装置300は、図示しない、CPUから構成される制御部とROMとRAMから構成される記憶部とを備えている。なお、理解を容易にするため、本明細書では、
図9における膨張装置300の長手右方向(紙面の右方向)を+X軸方向、上方向(紙面の上方向)を+Z軸方向、+X軸方向と+Z軸方向に垂直な方向(紙面の手前方向)を+Y軸方向として説明する。
【0045】
供給ローラ301aと供給ローラ301bは対を形成し、熱変換層70を形成された成形シート10を挟持する。供給ローラ301a、301bは、回転して、熱変換層70を形成された成形シート10を筐体内に供給する。
供給ガイド302a、302bは、供給ローラ301a、301bと搬送ローラ303a、303bとの間で、熱変換層70を形成された成形シート10の供給をガイドする。
【0046】
搬送ローラ303aと搬送ローラ303bは対を形成し、熱変換層70を形成された成形シート10を挟持する。また、搬送ローラ304aと搬送ローラ304bは対を形成し、熱変換層70を形成された成形シート10を挟持する。搬送ローラ303a、303b、304a、304bは、回転して、熱変換層70を形成された成形シート10を-X側から+X軸方向に搬送する。搬送ローラ303a、303b、304a、304bは、熱変換層70を形成された成形シート10を搬送する搬送手段として機能する。
排出ガイド305a、305bは、製造された造形物50の排出をガイドする。
【0047】
本実施形態では、熱変換層70を形成された成形シート10が、搬送ローラ303a、303bと搬送ローラ304a、304bとの間に配置された、図示しない搬送ガイドに導かれて、-X側から+X軸方向に搬送される。また、熱変換層70を形成された成形シート10は、熱膨張層20を-Z軸方向に向け、基材12の第2主面12bを+Z軸方向に向けて搬送される。膨張装置300は、熱変換層70を形成された成形シート10を搬送しつつ、熱変換層70を形成された成形シート10に電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。
【0048】
照射部310は、熱変換層70を形成された成形シート10に電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。これにより、成形シート10の熱膨張層20が膨張して、凸部62(凹凸60)が形成される。本実施形態では、照射部310は、熱変換層70を形成された成形シート10の搬送経路よりも+Z側に配置される。照射部310は、+Z側、すなわち基材12の第2主面12b側から、熱変換層70を形成された成形シート10に、予め設定されている強度を有する電磁波を照射する。照射部310は、照射手段として機能する。
【0049】
照射部310は、例えば、カバー311とランプ312と反射板313とファン314とを備える。カバー311は、ランプ312と反射板313とファン314とを収納する。ランプ312は、例えば、ハロゲンランプから構成される。ランプ312は、成形シート10に、近赤外領域(波長750nm~1400nm)、可視光領域(波長380nm~750nm)、中赤外領域(波長1400nm~4000nm)等の電磁波を照射する。反射板313は、ランプ312から照射された電磁波を成形シート10に向けて反射する反射板である。ファン314は、カバー311内に空気を送り込み、ランプ312と反射板313とを冷却する。
【0050】
(造形物の製造方法)
次に、
図10、
図11を参照して、造形物50の製造方法を説明する。本実施形態では、シート状の成形シート10から、造形物50を製造する。
【0051】
図10は、造形物50の製造方法を示すフローチャートである。造形物50の製造方法は、成形シート10と造形物50の凹凸60を表す凹凸データとを準備する準備工程(ステップS20)と、凹凸データから熱変換層70の濃淡を表す濃淡データを生成する濃淡データ生成工程(ステップS22)と、加熱された検温用シート80の温度分布を表す温度分布データに基づいて濃淡データを補正する補正工程(ステップS24)と、補正工程(ステップS24)において補正された濃淡データに基づいて、熱変換層70を成形シート10に形成する形成工程(ステップS30)と、熱変換層70を形成された成形シート10に電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する照射工程(ステップS40)と、を含む。
【0052】
準備工程(ステップS10)では、成形シート10と、造形物50の凹凸60を表す凹凸データとを準備する。成形シート10は、例えば、基材12の第1主面12aに、バインダと熱膨張材料とを混合した塗布液をスクリーン印刷し、印刷された塗布液を乾燥することにより製造される。凹凸データは造形物50のCADデータから生成される。凹凸データは制御ユニット100の記憶部121に記憶される。
【0053】
濃淡データ生成工程(ステップS22)では、まず、制御部110の取得部112が、凹凸データを記憶部121から取得し、凹凸データを制御部110の濃淡データ生成部114に出力する。次に、濃淡データ生成部114は、凹凸データから、熱変換層70に照射される電磁波の予め設定されている強度に対応した、熱変換層70の濃淡を表す濃淡データを生成する。そして、濃淡データ生成部114は、濃淡データを制御部110の補正部116に出力する。
【0054】
補正工程(ステップS24)では、まず、制御部110の取得部112が、膨張装置300により加熱された検温用シート80の温度分布を表す温度分布データを記憶部121から取得し、温度分布データを制御部110の補正部116に出力する。温度分布データは、記憶部121に予め記憶されている。次に、補正部116は、温度分布データに基づいて濃淡データを補正し、補正された濃淡データを生成する。
【0055】
形成工程(ステップS30)では、印刷装置200によって、補正された濃淡データに基づいて、成形シート10の基材12の第2主面12bの上に熱変換層70を印刷する。これにより、
図11に示すように、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度を補正された熱変換層70が、基材12の第2主面12bの上に形成される。
【0056】
図10に戻り、照射工程(ステップS40)では、膨張装置300によって、熱変換層70を形成された成形シート10に予め設定されている強度を有する電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。これにより、熱膨張層20が膨張して、凹凸60が形成される。以上により、造形物50を製造できる。
【0057】
以上のように、制御部110の補正部116は、予め測定された検温用シート80の温度分布データに基づいて、熱変換層70の濃淡を表す濃淡データを補正する。印刷装置200は、補正された濃淡データに基づいて熱変換層70を基材12の第2主面12bに形成する。膨張装置300は、熱変換層70を形成された成形シート10に、予め設定されている強度を有する電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。したがって、造形システム1は、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度のムラを抑制できる。
【0058】
また、本実施形態の造形物50の製造方法では、予め測定された検温用シート80の温度分布データに基づいて熱変換層70の濃淡を表す濃淡データを補正し、補正された濃淡データに基づいて熱変換層70を基材12の第2主面12bに形成する。そして、熱変換層70を形成された成形シート10に、予め設定されている強度を有する電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。したがって、本実施形態の造形物50の製造方法は、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度のムラを抑制でき、さらに凹凸60もムラを抑制できる。
【0059】
<実施形態2>
実施形態1では、制御ユニット100の制御部110が、熱変換層70の濃淡を補正することにより、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度を補正する。制御ユニット100の制御部110は、熱変換層70を形成された成形シート10に照射する電磁波の強度を調整することにより、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度を補正してもよい。
【0060】
本実施形態の成形シート10と造形物50は、実施形態1の成形シート10と造形物50と同様であるので、造形システム1を説明する。本実施形態の造形システム1は、実施形態1の造形システム1と同様に、制御ユニット100と印刷装置200と膨張装置300とを備える。
【0061】
本実施形態の制御ユニット100は、実施形態1の制御ユニット100と同様に、印刷装置200と膨張装置300とを制御する。本実施形態の制御ユニット100は、実施形態1の制御ユニット100と同様に、制御部110と記憶部121と通信部122と記録媒体駆動部123と操作部124と表示部125とを備える。記憶部121と通信部122と記録媒体駆動部123と操作部124と表示部125の構成は、実施形態1と同様である。
【0062】
本実施形態の制御部110は、実施形態1の制御部110と同様に、制御ユニット100の各部を制御すると共に印刷装置200と膨張装置300の動作を制御する。また、本実施形態の制御部110は、熱変換層70を形成された成形シート10に照射する電磁波の強度を調整することにより、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度を補正する。本実施形態の制御部110は、実施形態1と同様に、取得部112と濃淡データ生成部114と補正部116とを有する。本実施形態では、取得部112と濃淡データ生成部114の構成は実施形態1と同様であるので、本実施形態の補正部116について説明する。
【0063】
本実施形態の補正部116は、温度分布データに基づいて、熱変換層70を形成された成形シート10に照射する電磁波の強度を調整する。具体的には、本実施形態の補正部116は、温度分布データに基づいて、成形シート10における位置と電磁波の強度とを関連付けた照射強度データを生成する。照射強度データは、熱変換層70を形成された成形シート10に照射する電磁波の強度を表す。例えば、本実施形態の補正部116は、第2加熱温度データを参照して、温度分布データの加熱された温度が温度分布の平均値よりも低い位置における電磁波の強度を、予め設定されている強度よりも強くする。また、本実施形態の補正部116は、第2加熱温度データを参照して、温度分布データの加熱された温度が温度分布の平均値よりも高い位置における電磁波の強度を、予め設定されている強度よりも弱くする。第2加熱温度データは、熱膨張層20を加熱する温度と熱変換層70の濃淡と電磁波の強度とを関連付けたデータである。第2加熱温度データは、予め測定され、記憶部121に予め記憶されている。
制御部110は、生成された照射強度データに基づいて、膨張装置300の動作を制御する。
【0064】
本実施形態では、制御部110が、加熱された検温用シート80の温度分布を表す温度分布データに基づいて、熱変換層70を形成された成形シート10に照射する電磁波の強度を調整する。したがって、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度のムラを抑制できる。
【0065】
本実施形態の印刷装置200は、実施形態1の印刷装置200と同様に、制御ユニット100により制御される。本実施形態の印刷装置200は、制御ユニット100の制御部110により生成された濃淡データに基づいて、基材12の第2主面12bの上に熱変換層70を印刷する。これにより、濃淡データに基づく熱変換層70が、基材12の第2主面12bの上に形成される。本実施形態の印刷装置200のその他の構成は、実施形態1の印刷装置200と同様である。
【0066】
本実施形態の膨張装置300は、実施形態1の膨張装置300と同様に、制御ユニット100により制御される。本実施形態の膨張装置300は、制御ユニット100の制御部110により生成された照射強度データに基づいて熱変換層70を形成された成形シート10に電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。これにより、熱膨張層20が膨張して、凹凸60が形成される。
【0067】
本実施形態の膨張装置300は、実施形態1の膨張装置300と同様に、筐体内に、供給ローラ301a、301bと、供給ガイド302a、302b、搬送ローラ303a、303b、304a、304bと、排出ガイド305a、305bと、照射部310とを備える。また、膨張装置300は、図示しない、CPUから構成される制御部とROMとRAMから構成される記憶部とを備えている。照射部310以外の構成は、実施形態1と同様ではあるので、本実施形態の照射部310について説明する。
【0068】
本実施形態の照射部310は、熱変換層70を形成された成形シート10に電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。これにより、成形シート10の熱膨張層20が膨張して、凸部62(凹凸60)が形成される。本実施形態では、照射部310は、照射強度データに基づいて、熱変換層70の凸部62に対応する位置に調整された強度の電磁波を照射する。本実施形態の照射部310のその他の構成は、実施形態1の照射部310と同様である。
【0069】
(造形物の製造方法)
次に、
図12を参照して、本実施形態の造形物50の製造方法を説明する。本実施形態では、シート状の成形シート10から、造形物50を製造する。
【0070】
図12は、本実施形態の造形物50の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態の造形物50の製造方法は、成形シート10と造形物50の凹凸60を表す凹凸データとを準備する準備工程(ステップS20)と、凹凸データから熱変換層70の濃淡を表す濃淡データを生成する濃淡データ生成工程(ステップS22)と、加熱された検温用シート80の温度分布を表す温度分布データに基づいて、電磁波の強度を調整する補正工程(ステップS26)と、濃淡データに基づいて、熱変換層70を成形シート10に形成する形成工程(ステップS32)と、熱変換層70を形成された成形シート10に、補正工程(ステップS26)において調整された強度の電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する照射工程(ステップS42)と、を含む。本実施形態の準備工程(ステップS20)と濃淡データ生成工程(ステップS22)は、実施形態1と同様であるので、補正工程(ステップS26)と形成工程(ステップS32)と照射工程(ステップS42)について説明する。
【0071】
補正工程(ステップS26)では、まず、制御部110の取得部112が、膨張装置300により加熱された検温用シート80の温度分布を表す温度分布データを記憶部121から取得し、温度分布データを制御部110の補正部116に出力する。次に、補正部116は、温度分布データに基づいて熱変換層70に照射される電磁波の強度を調整して、熱変換層70を形成された成形シート10に照射する電磁波の強度を表す照射強度データを生成する。
【0072】
形成工程(ステップS32)では、印刷装置200によって、濃淡データに基づいて、成形シート10の基材12の第2主面12bの上に熱変換層70を印刷する。これにより、熱変換層70が基材12の第2主面12bの上に形成される。
【0073】
照射工程(ステップS42)では、膨張装置300によって、照射強度データに基づいて、熱変換層70を形成された成形シート10に調整された強度の電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。これにより、熱膨張層20が膨張して、凹凸60が形成される。以上により、本実施形態の造形物50を製造できる。
【0074】
以上のように、本実施形態の制御部110の補正部116は、予め測定された検温用シート80の温度分布データに基づいて、熱変換層70に照射される電磁波の強度を調整する。本実施形態の膨張装置300は、熱変換層70を形成された成形シート10に調整された強度の電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。したがって、本実施形態の造形システム1は、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度のムラを抑制できる。
【0075】
また、本実施形態の造形物50の製造方法では、予め測定された検温用シート80の温度分布データに基づいて、熱変換層70に照射される電磁波の強度を調整する。そして、熱変換層70を形成された成形シート10に、調整された強度の電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。したがって、本実施形態の造形物50の製造方法は、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度のムラを抑制でき、さらに凹凸60もムラを抑制できる。
【0076】
<実施形態3>
実施形態1と実施形態2では、検温用シート80の温度分布データは、膨張装置300が組み立てられた直後に、撮像装置により測定される。膨張装置300は、検温用シート80の温度分布データを測定するための撮像部320を備えてもよい。また、制御ユニット100の制御部110は、温度分布データを生成する温度分布データ生成部118を有してもよい。本実施形態では、膨張装置300と制御部110の構成が実施形態1の膨張装置300と制御部110の構成と異なる。ここでは、本実施形態の膨張装置300と制御部110について説明する。
【0077】
本実施形態の膨張装置300は、
図13に示すように、加熱された検温用シート80を撮像する撮像部320を備える。本実施形態の膨張装置300のその他の構成は、実施形態1の膨張装置300と同様である。
【0078】
膨張装置300の撮像部320は、例えば、CCDイメージセンサを備える。撮像部320は、照射部310よりも+X側に配置される。撮像部320は、照射部310により加熱された検温用シート80の画像を撮像する。照射部310は、搬送されている検温用シート80に予め設定されている強度の電磁波を照射して、検温用シート80を加熱する。
【0079】
撮像部320は、制御ユニット100の通信部122を介して、加熱された検温用シート80の画像を表す画像データを制御部110の温度分布データ生成部118に出力する。
【0080】
本実施形態の制御部110は、
図14に示すように、温度分布データを生成する温度分布データ生成部118を備える。温度分布データ生成部118は、温度分布データ生成手段として機能する。本実施形態の制御部110のその他の構成は、実施形態1の制御部110と同様である。
【0081】
温度分布データ生成部118は、画像解析処理により、加熱された検温用シート80の画像を表す画像データから、検温用シート80における位置と加熱された温度とを関連付けた温度分布データを生成する。温度分布データ生成部118は、生成された温度分布データを制御ユニット100の記憶部121に出力する。生成された温度分布データは、記憶部121に記憶される。
【0082】
本実施形態では、膨張装置300が加熱された検温用シート80の画像を撮像する撮像部320を有し、制御部110が加熱された検温用シート80の画像から温度分布データを生成する温度分布データ生成部118を有するので、造形システム1により、温度分布データを得ることができる。したがって、造形システム1は、定期的に温度分布データを更新して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度のムラを更に抑制できる。
【0083】
<変形例>
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、造形物50はロール状の成形シート10からロール状に製造されてもよい。
【0085】
基材12を構成する材料は、熱可塑性樹脂に限らず、紙、布等であってもよい。基材12を構成する熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂に限らず、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)系樹脂、ポリイミド系樹脂等であってもよい。
【0086】
実施形態1~実施形態3では、熱変換層70は基材12の第2主面12bの上に形成されているが、熱変換層70は熱膨張層20の上に形成されてもよい。また、熱変換層70は、基材12の第2主面12bに設けられた剥離層の上に形成されてもよい。これにより、造形物50から剥離層を剥離して、造形物50から熱変換層70を除去できる。
【0087】
成形シート10と造形物50は、各層の間に他の任意の材料による層を形成されてもよい。例えば、基材12と熱膨張層20との間に、基材12と熱膨張層20とをより密着させる密着層が形成されてもよい。密着層は、例えば、表面改質剤から構成される。
【0088】
また、造形物50は、カラー画像を印刷されてもよい。例えば、造形物50は、熱膨張層20の上に、シアンとマゼンタとイエローとブラックの4色のインクから構成され、カラー画像を表すカラーインク層を形成されてもよい。
【0089】
実施形態1の検温用シート80は支持体82と示温層84とを有するが、
図15に示すように、検温用シート80は支持体82の第2主面82bの全面に熱変換層70を更に有してもよい。これにより、熱膨張層20が膨張装置300により加熱される温度に近い温度範囲で、温度分布データを測定できる。さらに、検温用シート80の熱伝導率と成形シート10の熱伝導率は等しいことが、特に好ましい。
【0090】
温度分布データは、加熱された検温用シート80の温度分布を直接的に測定する温度測定装置により測定されてもよい。温度測定装置は、例えば、赤外線カメラである。温度測定装置を用いて温度分布データを測定する場合、検温用シート80として、成形シート10の基材12に用いられるシート状の紙、熱可塑性樹脂等を用いることができる。また、
図16に示すように、基材12と熱変換層70とを有するシートを、検温用シート80として用いてもよい。
【0091】
印刷装置200は、インクジェットプリンタに限られない。例えば、印刷装置200はレーザプリンタであってもよい。また、印刷装置200は、造形物50にカラー画像を印刷してもよい。
【0092】
膨張装置300の照射部310は、電磁波としてレーザ光を照射してもよい。例えば、照射部310は、レーザ発振部、ポリゴンミラー、レンズ等を備えるレーザ照射器であってもよい。照射部310は、レーザ発振部で発振されたレーザ光をポリゴンミラーで反射させて、レーザ光を+Y方向と-Y方向に走査し、熱変換層70の凸部62に対応する位置にレーザ光を照射する。
【0093】
照射部310が電磁波を照射する方向は任意である。例えば、照射部310は、熱変換層70を形成された成形シート10の搬送経路よりも-Z側に配置されて、熱膨張層20側から電磁波を照射してもよい。
【0094】
実施形態3の膨張装置300は加熱された検温用シート80の画像を撮像する撮像部320を備えるが、膨張装置300は、
図17に示すように、撮像部320に代えて温度測定部330を備えてもよい。温度測定部330は、加熱された検温用シート80の温度分布を測定する。温度測定部330は、測定された温度分布を、検温用シート80における位置と加熱された温度とを関連付けた温度分布データとして、制御ユニット100の記憶部121に出力する。温度測定部330は、例えば、赤外線カメラである。温度測定部330は、温度測定手段として機能する。
【0095】
実施形態1の造形システム1は熱変換層70の濃淡を補正し、実施形態2の造形システム1は電磁波の強度を調整している。造形システム1は、熱変換層70の濃淡を補正すると共に、電磁波の強度を調整してもよい。
【0096】
造形システム1は、印刷装置200を備えなくともよい。例えば、熱変換層70が濃淡データに基づいて成形シート10に予め形成されている場合、造形システム1は、
図18に示すように、制御ユニット100と膨張装置300とを備えてもよい。この場合、制御ユニット100は膨張装置300を制御する。また、制御ユニット100の制御部110は、実施形態2と同様に、熱変換層70を形成された成形シート10に照射する電磁波の強度を調整することにより、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度を補正する。すなわち、制御部110の補正部116は、温度分布データに基づいて、熱変換層70を形成された成形シート10に照射する電磁波の強度を調整し、照射強度データを生成する。膨張装置300は、実施形態2と同様に、生成された照射強度データに基づいて熱変換層70を形成された成形シート10に電磁波を照射して、熱膨張層20を加熱する。本変形例では、実施形態2における造形物50の製造方法のうちの濃淡データ生成工程(ステップS22)と形成工程(ステップS32)とを除いて、造形物50を製造できる。また、準備工程(ステップS20)では、造形物50の凹凸60を表す凹凸データを準備しなくともよい。
本変形例においても、実施形態2と同様に、成形シート10(熱変換層70を形成された成形シート10)に調整された強度の電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。したがって、造形システム1は、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度のムラを抑制できる。
【0097】
また、膨張装置300が成形シート10の熱膨張層20に電磁波を照射して熱膨張層20を加熱する場合、造形システム1は、印刷装置200を備えず、制御ユニット100と膨張装置300とを備えてもよい。ここで、熱膨張層20に電磁波を照射して熱膨張層20を加熱するとは、電磁波のエネルギーを熱エネルギーに変換せず(例えば、熱変換層70を介さず)、電磁波により熱膨張層20を直接的に加熱することを指す。この場合、制御部110は、濃淡データ生成部114に代わりに、強度分布データ生成部を有する。制御部110の強度分布データ生成部は、凸部62の高さと熱膨張層20に照射する電磁波の強度とを関連付けたデータとを参照して、凹凸データから、成形シート10における位置と電磁波の強度とを関連付けた強度分布データを生成する。強度分布データは、熱膨張層20に照射する電磁波の強度を表す。制御部110の補正部116は、温度分布データに基づいて強度分布データの電磁波の強度を調整して、補正された強度分布データを生成する。膨張装置300の照射部310は、例えば、電磁波として炭酸ガスレーザ光を熱膨張層20に照射する。膨張装置300は、補正された強度分布データに基づいて、成形シート10の熱膨張層20に調整された強度の炭酸ガスレーザ光を照射して、熱膨張層20を加熱する。本変形例では、造形物50の製造方法は、実施形態2の濃淡データ生成工程(ステップS22)と形成工程(ステップS32)の代わりに、凹凸データから強度分布データを生成する強度分布データ生成工程を含む。また、照射工程(ステップS42)では、熱変換層70を形成された成形シート10に代えて、成形シート10の熱膨張層20に電磁波を照射する。
本変形例においても、実施形態2と同様に、成形シート10(成形シート10の熱膨張層20)に調整された強度の電磁波を照射して、成形シート10の熱膨張層20を加熱する。したがって、造形システム1は、成形シート10の熱膨張層20を加熱する温度のムラを抑制できる。
【0098】
実施形態1~実施形態3と上記の変形例において、制御ユニット100は、CPUを備えており、CPUの機能によって、印刷装置200と膨張装置300、又は膨張装置300を制御している。本発明では、制御ユニット100は、CPUに代えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、制御回路等の専用ハードウェアを備えてもよい。この場合、処理のそれぞれを、個別のハードウェアにより実行してもよい。また、処理のそれぞれをまとめて、単一のハードウェアにより実行してもよい。処理の一部を専用ハードウェアにより実行し、処理の他の一部をソフトウェア又はファームウェアにより実行してもよい。また、制御ユニット100の制御部110が実現する機能は、印刷装置200の制御部又は膨張装置300の制御部により実現されてもよい。例えば、実施形態1の制御部110が実現する機能は、印刷装置200の制御部により実現されてもよい。例えば、実施形態2と実施形態3の制御部110が実現する機能は、膨張装置300の制御部により実現されてもよい。
【0099】
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた膨張装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、印刷装置と膨張装置を制御するコンピュータに、上記の実施形態と変形例で例示した印刷装置200と膨張装置300による各機能構成を実現させることもできる。すなわち、上記の実施形態で例示した印刷装置200と膨張装置300による各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することができる。
【0100】
また、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0101】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0102】
(付記1)
電磁波を照射して成形シートの熱膨張層を加熱することにより、前記熱膨張層を膨張させる膨張装置と、
前記膨張装置により加熱された検温用シートの温度分布を表す温度分布データに基づいて、前記熱膨張層を加熱する温度を補正する補正手段と、を備える、
造形システム。
【0103】
(付記2)
前記成形シートに、前記電磁波を熱に変換する熱変換層を形成する印刷装置を備え、
前記膨張装置は、前記熱変換層を形成された前記成形シートに前記電磁波を照射して、前記熱膨張層を加熱することにより、前記熱膨張層を膨張させる、
付記1に記載の造形システム。
【0104】
(付記3)
前記補正手段は、前記熱変換層の濃淡を補正することにより、前記熱膨張層を加熱する温度を補正する、
付記2に記載の造形システム。
【0105】
(付記4)
前記補正手段は、前記電磁波の強度を調整することにより、前記熱膨張層を加熱する温度を補正する、
付記1乃至3のいずれか1つに記載の造形システム。
【0106】
(付記5)
前記検温用シートは、示温材料を含む示温層を有し、
前記膨張装置は、加熱された前記検温用シートを撮像する撮像手段を備え、
前記撮像手段が撮像した前記検温用シートの画像から、前記温度分布データを生成する温度分布データ生成手段を備える、
付記1乃至4のいずれか1つに記載の造形システム。
【0107】
(付記6)
前記膨張装置は、加熱された前記検温用シートの温度分布を測定する温度測定手段を備える、
付記1乃至4のいずれか1つに記載の造形システム。
【0108】
(付記7)
造形物の凹凸を表す凹凸データから、電磁波を熱に変換する熱変換層の濃淡を表す濃淡データを生成する濃淡データ生成工程と、
加熱された検温用シートの温度分布を表す温度分布データに基づいて、前記濃淡データを補正する補正工程と、
前記補正工程において補正された前記濃淡データに基づいて、熱膨張層を備える成形シートに前記熱変換層を形成する形成工程と、
前記熱変換層を形成された前記成形シートに前記電磁波を照射して、前記熱膨張層を加熱する照射工程と、を含む、
造形物の製造方法。
【0109】
(付記8)
予め設定されている強度の電磁波を照射することにより加熱された検温用シートの、温度分布を表す温度分布データに基づいて、熱膨張層を備える成形シートに照射する前記電磁波の強度を調整する補正工程と、
前記成形シートに、前記補正工程において調整された強度の前記電磁波を照射して前記熱膨張層を加熱する照射工程と、を含む、
造形物の製造方法。
【0110】
(付記9)
造形物の凹凸を表す凹凸データから、電磁波を熱に変換する熱変換層の濃淡を表す濃淡データを生成する濃淡データ生成工程と、
前記濃淡データに基づいて、前記熱変換層を前記成形シートに形成する形成工程と、
を含み、
前記照射工程では、前記熱変換層を形成された前記成形シートに、前記補正工程において調整された強度の前記電磁波を照射して前記熱膨張層を加熱する、
付記8に記載の造形物の製造方法。
【0111】
(付記10)
前記照射工程では、前記成形シートの前記熱膨張層に、前記補正工程において調整された強度の前記電磁波を照射して前記熱膨張層を加熱する、
付記8に記載の造形物の製造方法。
【0112】
(付記11)
コンピュータを、
造形物の凹凸を表す凹凸データから、電磁波を熱に変換する熱変換層の濃淡を表す濃淡データを生成する濃淡データ生成手段、
加熱された検温用シートの温度分布を表す温度分布データに基づいて、前記濃淡データを補正する補正手段、
として機能させるためのプログラム。
【0113】
(付記12)
コンピュータを、
予め設定されている強度の電磁波を照射することにより加熱された検温用シートの、温度分布を表す温度分布データに基づいて、成形シートに照射する前記電磁波の強度を調整する補正手段、
として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0114】
1・・・造形システム、10・・・成形シート、12・・・基材、12a・・・基材の第1主面、12b・・・基材の第2主面、20・・・熱膨張層、20a・・・熱膨張層の基材と反対側の面、50・・・造形物、60・・・凹凸、62・・・凸部、64・・・凹部、70・・・熱変換層、80・・・検温用シート、82・・・支持体、82a・・・支持体の第1主面、82b・・・支持体の第2主面、84・・・示温層、100・・・制御ユニット、110・・・制御部、112・・・取得部、114・・・濃淡データ生成部、116・・・補正部、118・・・温度分布データ生成部、121・・・記憶部、122・・・通信部、123・・・記録媒体駆動部、124・・・操作部、125・・・表示部、131・・・CPU、132・・・RAM、133・・・ROM、134・・・ハードディスク、135・・・通信インタフェース、136・・・光学ディスクドライブ、137・・・タッチパネル、138・・・液晶ディスプレイ、139・・・バス、200・・・印刷装置、300・・・膨張装置、301a,301b・・・供給ローラ、302a,302b・・・供給ガイド、303a,303b,304a,304b・・・搬送ローラ、305a,305b・・・排出ガイド、310・・・照射部、311・・・カバー、312・・・ランプ、313・・・反射板、314・・・ファン、320・・・撮像部、330・・・温度測定部