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特許7537198光学装置、プロジェクターおよび撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】光学装置、プロジェクターおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20240814BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240814BHJP
   G03B 19/02 20210101ALI20240814BHJP
   G03B 13/32 20210101ALI20240814BHJP
   G02B 17/08 20060101ALI20240814BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20240814BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20240814BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G03B17/02
G03B19/02
G03B13/32
G02B17/08
G03B21/14 D
H04N23/55
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020154421
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048543
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】守国 栄時
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-229738(JP,A)
【文献】特開2011-002602(JP,A)
【文献】特開2010-266577(JP,A)
【文献】特開2011-013469(JP,A)
【文献】特開2011-053663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
H04N 5/222-5/257
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
H04N 23/90-23/959
G03B 17/02
G03B 17/22
G03B 19/00-19/16
G03B 3/00-3/12
G03B 13/30-13/36
G03B 21/53
G03B 21/00-21/10
G03B 21/12-21/13
G03B 21/134-21/30
G03B 33/00-33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を有する第1光学系と、
レンズを有し、前記第1光学系の縮小側に配置された第2光学系と、
前記光学素子を保持する第1保持部材と、
前記レンズを保持する第2保持部材と、
前記第1保持部材を前記光学素子の光軸に沿った光軸方向に移動させる移動機構と、を
備え、
前記光学素子は、反射面を有し、
前記第1保持部材は、前記第2光学系の拡大側に配置され前記光学素子を保持する第1
保持部と、前記第1保持部から前記第2光学系の側に延びる第1接続部と、を有し、
前記移動機構は、
前記第2光学系の径方向外側に配置され、前記第1接続部を前記光軸方向に移動させる
搬送機構と、
前記第1保持部の径方向外側に配置され、前記第1保持部材を前記光軸方向に案内する
案内機構と、を有し、
前記案内機構は、前記光軸を中心とした前記第1保持部材の回転を規制し、
前記反射面は、凹曲面であり、
前記光学素子は、第1透過面と、前記第1透過面の前記縮小側に配置された前記反射面
と、前記反射面の前記縮小側に配置された第2透過面と、を有することを特徴とする光学
装置。
【請求項2】
前記搬送機構は、前記光軸を中心に回転可能なカム部材と、前記カム部材に設けられた
第1カム部と、を有し、
前記第1接続部は、前記第1カム部をスライドすることを特徴とする請求項1に記載の
光学装置。
【請求項3】
前記光軸と直交する方向から見た場合に前記第2保持部と重なる固定部材を備え、
前記カム部材は、前記固定部材に回転可能に支持されていることを特徴とする請求項2
に記載の光学装置。
【請求項4】
前記固定部材には、前記第1接続部を前記光軸方向に案内する案内部が設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第2保持部材は、
前記レンズの径方向外側に配置され、前記レンズを保持する第2保持部と、
前記第2保持部から前記光軸方向に延び、かつ、前記レンズの前記径方向外側に延びる
第2接続部と、を有し、
前記移動機構は、前記カム部材に設けられた第2カム部を有し、
前記第2接続部は、前記第2カム部をスライドし、
前記案内部は、前記第2接続部を前記光軸方向に案内することを特徴とする請求項4に
記載の光学装置。
【請求項6】
前記カム部材には、前記カム部材の径方向外側に突出する操作部が設けられていること
を特徴とする請求項2から5のうちのいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項7】
前記搬送機構は、前記カム部材を回転させる操作機構を有し、
前記操作機構は、前記光軸方向において前記第1光学系に対して前記第2光学系とは反
対側に配置された回転部材と、前記回転部材の回転を前記カム部材に伝達する回転伝達機
構と、を有することを特徴とする請求項2から5のうちのいずれか一項に記載の光学装置
【請求項8】
前記第2光学系は、前記光軸方向から見た場合に、前記光学素子の内側に位置し、
前記搬送機構は、前記光軸方向から見た場合に、前記光学素子と重なることを特徴とす
る請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項9】
前記光学素子は、前記第2光学系の側を向く第1面と、前記第1面とは反対側を向く第
2面と、前記第2面に設けられた反射コーティング層と、を有し、
前記第2面は、凸形状を有し、
前記第1透過面および前記第2透過面は、前記第1面に設けられ、
前記反射面は、前記反射コーティング層であり、前記第2面の表面形状が転写されてい
ることを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項10】
前記第1透過面、前記反射面、および前記第2透過面のうち少なくとも1つは、非球面
形状を有することを特徴とする請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項11】
光学素子を有する第1光学系と、
レンズを有し、前記第1光学系の縮小側に配置された第2光学系と、
前記光学素子を保持する第1保持部材と、
前記レンズを保持する第2保持部材と、
前記第1保持部材を前記光学素子の光軸に沿った光軸方向に移動させる移動機構と、を
備え、
前記光学素子は、反射面を有し、
前記第1保持部材は、前記第2光学系の拡大側に配置され前記光学素子を保持する第1
保持部と、前記第1保持部から前記第2光学系の側に延びる第1接続部と、を有し、
前記移動機構は、
前記第2光学系の径方向外側に配置され、前記第1接続部を前記光軸方向に移動させる
搬送機構と、
前記第1保持部の径方向外側に配置され、前記第1保持部材を前記光軸方向に案内する
案内機構と、を有し、
前記案内機構は、前記光軸を中心とした前記第1保持部材の回転を規制し、
前記搬送機構は、前記光軸を中心に回転可能なカム部材と、前記カム部材に設けられた
第1カム部と、前記第1接続部に配置されている第1ピンと、を有し、前記第1接続部は
、前記第1カム部をスライドし、
前記第2保持部材は、前記レンズの径方向外側に配置され、前記レンズを保持する第2
保持部と、前記第2保持部から前記光軸方向に延び、かつ、前記レンズの前記径方向外側
に延びる第2接続部と、を有し、前記移動機構は、前記カム部材に設けられた第2カム部
と前記第2接続部に配置されている第2ピンと、を有し、前記第2接続部は、前記第2カ
ム部をスライドし、
前記光軸と直交する方向から見た場合に前記第2保持部材と重なる固定部材を備え、前
記カム部材は、前記固定部材に回転可能に支持され、
前記固定部材には、前記第1ピンおよび前記第2ピンが挿入され、前記第1接続部およ
び前記第2接続部を前記光軸方向に案内する案内部が設けられていることを特徴とする光
学装置。
【請求項12】
前記反射面は、凸曲面であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項13】
前記光軸と直交する方向から見た場合に、前記第1保持部材と前記第2保持部材とが重
なっていることを特徴とする請求項1から12のうちのいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項14】
光源と、
前記光源から出射された光を変調する光変調素子と、
前記光変調素子により変調された光を投写する、請求項1から13のうちのいずれか一
項に記載の光学装置と、を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項15】
請求項1から13のうちのいずれか一項に記載の光学装置と、
前記光学装置における縮小側共役面に配置された撮像素子と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置、プロジェクターおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成部が形成した投写画像を、投写光学系により拡大して投写するプロジェクターは特許文献1に記載されている。同文献の投写光学系は、縮小側から拡大側に向かって順に第1光学系と、第2光学系と、からなる。第1光学系は、複数枚のレンズを備える屈折光学系である。第2光学系は、ミラーからなる。ミラーは第1光学系を構成する各レンズと比較して、外径寸法が大きい。同文献では、プロジェクターの投写距離を変更する際に、第1光学系を構成する複数前のレンズのうちの一部のレンズと、第2光学系とを光軸方向に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-116688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、屈性光学系に対して反射面を備える光学素子を移動させることが記載されている。しかし、反射面を備える光学素子を光軸方向に移動させる機構について、具体的な記載はない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の光学装置は、光学素子を有する第1光学系と、
レンズを有し、前記第1光学系の縮小側に配置された第2光学系と、前記光学素子を保持
する第1保持部材と、前記レンズを保持する第2保持部材と、前記第1保持部材を前記光
学素子の光軸に沿った光軸方向に移動させる移動機構と、を備える。前記光学素子は、反
射面を有する。前記第1保持部材は、前記第2光学系の拡大側に配置され前記光学素子を
保持する第1保持部と、前記第1保持部から前記第2光学系の側に延びる第1接続部と、
を有する。前記移動機構は、前記第2光学系の径方向外側に配置され、前記第1接続部を
前記光軸方向に移動させる搬送機構と、前記第1保持部の径方向外側に配置され、前記第
1保持部材を前記光軸方向に案内する案内機構と、を有する。前記案内機構は、前記光軸
を中心とした前記第1保持部材の回転を規制する。
また、本発明の光学装置は、光学素子を有する第1光学系と、レンズを有し、前記第1
光学系の縮小側に配置された第2光学系と、前記光学素子を保持する第1保持部材と、前
記レンズを保持する第2保持部材と、前記第1保持部材を前記光学素子の光軸に沿った光
軸方向に移動させる移動機構と、を備え、前記光学素子は、反射面を有し、前記第1保持
部材は、前記第2光学系の拡大側に配置され前記光学素子を保持する第1保持部と、前記
第1保持部から前記第2光学系の側に延びる第1接続部と、を有し、前記移動機構は、前
記第2光学系の径方向外側に配置され、前記第1接続部を前記光軸方向に移動させる搬送
機構と、前記第1保持部の径方向外側に配置され、前記第1保持部材を前記光軸方向に案
内する案内機構と、を有し、前記案内機構は、前記光軸を中心とした前記第1保持部材の
回転を規制し、前記反射面は、凹曲面であり、前記光学素子は、第1透過面と、前記第1
透過面の前記縮小側に配置された前記反射面と、前記反射面の前記縮小側に配置された第
2透過面と、を有することを特徴とする。
また、本発明の光学装置は、光学素子を有する第1光学系と、レンズを有し、前記第1
光学系の縮小側に配置された第2光学系と、前記光学素子を保持する第1保持部材と、前
記レンズを保持する第2保持部材と、前記第1保持部材を前記光学素子の光軸に沿った光
軸方向に移動させる移動機構と、を備え、前記光学素子は、反射面を有し、前記第1保持
部材は、前記第2光学系の拡大側に配置され前記光学素子を保持する第1保持部と、前記
第1保持部から前記第2光学系の側に延びる第1接続部と、を有し、前記移動機構は、前
記第2光学系の径方向外側に配置され、前記第1接続部を前記光軸方向に移動させる搬送
機構と、前記第1保持部の径方向外側に配置され、前記第1保持部材を前記光軸方向に案
内する案内機構と、を有し、前記案内機構は、前記光軸を中心とした前記第1保持部材の
回転を規制し、前記搬送機構は、前記光軸を中心に回転可能なカム部材と、前記カム部材
に設けられた第1カム部と、前記第1接続部に配置されている第1ピンと、を有し、前記
第1接続部は、前記第1カム部をスライドし、前記第2保持部材は、前記レンズの径方向
外側に配置され、前記レンズを保持する第2保持部と、前記第2保持部から前記光軸方向
に延び、かつ、前記レンズの前記径方向外側に延びる第2接続部と、を有し、前記移動機
構は、前記カム部材に設けられた第2カム部と前記第2接続部に配置されている第2ピン
と、を有し、前記第2接続部は、前記第2カム部をスライドし、前記光軸と直交する方向
から見た場合に前記第2保持部材と重なる固定部材を備え、前記カム部材は、前記固定部
材に回転可能に支持され、前記固定部材には、前記第1ピンおよび前記第2ピンが挿入さ
れ、前記第1接続部および前記第2接続部を前記光軸方向に案内する案内部が設けられて
いることを特徴とする。
【0006】
次に、本発明のプロジェクターは、光源と、前記光源から出射された光を変調する光変調素子と、前記光変調素子により変調された光を投写する上記の光学装置と、を備える。
【0007】
また、本発明の撮像装置は、上記の光学装置と、前記光学装置における縮小側共役面に配置された撮像素子と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の光学装置を備えるプロジェクターの説明図である。
図2】実施例1の光学装置の光学系および鏡筒の説明図である。
図3】実施例1の光学装置の斜視図である。
図4】変形例の光学装置の光線図である。
図5】実施例2の光学装置の光学系および鏡筒の説明図である。
図6】実施例3の光学装置の光学系および鏡筒の説明図である。
図7】本発明の光学装置を備える撮像装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態に係る光学装置、プロジェクターおよび撮像装置を説明する。
【0010】
(プロジェクター)
図1は、プロジェクター1の説明図である。図1に示すように、プロジェクター1は、光学装置3と、画像形成部11と、を備える。光学装置3は、鏡筒10と、鏡筒10に収容された光学系20と、を備える。画像形成部11は、光学系の縮小側共役面Pに投写画像を形成する。画像形成部11は、光源12と、光源12からの光線を変調させる光変調素子13と、を備える。光変調素子13は、投写画像を形成するための画像信号に基づいて光源12からの光線を変調させて、縮小側共役面Pに投写画像を形成する。本例において、光変調素子13は、液晶パネルである。すなわち、プロジェクター1は、光源12と、光源12から出射された光を変調する光変調素子13と、光変調素子13により変調された光を投写する光学装置3を、を備える。
【0011】
光学系20は、拡大側から縮小側に向かって順に、第1光学系21と、第2光学系22と、を備える。第1光学系21は反射面32を備えており、光変調素子13から第2光学系22を経由して第1光学系21に入射する光線O1を、第2光学系22の側に折り返す。ここで、投写光学系の拡大側共役面Sには、スクリーンが配置されている。反射面32により折り返された光線O2は、スクリーンに到達し、スクリーンに拡大像を形成する。
【0012】
以下の説明では、便宜上、互いに直交する3軸をX軸、Y軸、およびZ軸とする。Z軸方向は、第1光学系21の第1光軸Nに沿った方向である。Z軸方向において、第1光学系21が位置する側を第1方向Z1、第2光学系22が位置する側を第2方向とする。また第1光軸に対してスクリーンが位置する側を上方、その反対側を下方とする。
【0013】
(実施例1の光学装置)
図2は、光学系および鏡筒の説明図である。図2では、鏡筒10は、光学素子およびレンズを移動させる移動機構の要部のみを示す。図3は、光学装置の斜視図である。
【0014】
(光学系)
図2に示すように、第1光学系21は、1枚の光学素子23を含む。第2光学系22は、複数枚のレンズを備える。第2光学系22は、第1光学系21の縮小側に配置されている。第1光学系21の第1光軸Nと、第2光学系の第2光軸Mとは一致する。
【0015】
光学素子23は、第2光学系22の側を向く第1面35と、第1面35とは反対側を向く第2面36とを備えるレンズ26と、レンズ26の第2面36に設けられた反射コーティング層と、を備える。レンズ26は、ガラス製または樹脂製である。本例では、レンズ26は、樹脂製である。レンズ26の第1面35および第2面36は凸形状を備える。第1光学系21の第1光軸Nは、レンズ26の光軸である。
【0016】
第1面35の光軸の上方Y1の領域は、スクリーンに向かって光線が出射される第1透過面31である。第2面36の光軸の下方Y2の領域には、反射面32が設けられている。反射面32は、反射コーティング層である。反射面32には、第2面36の表面形状が転写されている。第1面35の光軸の下方Y2の領域は、第2光学系22からの光線が入射する第2透過面33である。すなわち、反射面32は、第1透過面31の縮小側に配置され、第2透過面33は、反射面32の縮小側に配置される。第1透過面31、反射面32、および第2透過面33のうち少なくとも1つは、非球面形状を備える。
【0017】
第2光学系22は、拡大側から縮小側に向かって順に、レンズL1~レンズL14を備える。レンズL1~レンズL14の外径寸法は、第1光学系の外径寸法と比べて小さい。レンズL1およびレンズL2は、第2光学系22の第2光軸Mの上方Y1に位置する部分が切り欠かれている。これにより、レンズL1およびレンズL2は、その外周面の上端に、平坦部分を備える。ここで、第2光学系22は、第1光軸N方向から見た場合に、光学素子23の内側に位置する。
【0018】
(光学系の光路)
画像形成部11の光変調素子13は、縮小側共役面P上において、第2光軸Mに対して上方Y1にオフセットされた位置に配置されている。光変調素子13からの光線は、第2光軸Mの上方Y1から第2光学系22に入射する。第2光学系22から出射される光線は、第2光軸Mの下方Y2を通過して、第1光学系21に入射する。従って、第2光学系22からの光線は、光学素子23の第2透過面33に入射する。第2透過面33から光学素子に入射した光線は、反射面32により反射され、第1光軸Nの上方Y1に位置する第1透過面31から出射される。第1透過面31から出射された光線は、第1光軸Nの上方Y1に位置するスクリーンに向かう。
【0019】
(鏡筒)
図2および図3に示すように、鏡筒10は、光学素子23を保持する第1保持部材4と、レンズL1を保持する第2保持部材5と、レンズL2を保持する第3保持部材6と、レンズL3からレンズL14を外周側から囲む円筒形状の固定部材7と、を備える。また、鏡筒10は、第1保持部材4、第2保持部材5、第3保持部材6を第1光軸N方向に移動させる移動機構8、を有する。
【0020】
第1保持部材4は、第2光学系22の拡大側で光学素子23を保持する第1保持部41と、第1保持部41から第2光学系22の側に延びる第1接続部46と、を備える。第1保持部41は、光学素子23を外周側から囲む円筒部42と、円筒部42の第1方向Z1の開口を塞ぐ円形板43とを備える。第1接続部46は、円筒部42の下側部分から第2方向Z2に向かって第1光軸N方向に延びるテーパー部47と、テーパー部47の第2方向Z2に位置する第1筒部48と、第1筒部48から径方向外側に突出する第1ピン49(カムフォロワー部)と、を備える。テーパー部47は、第1筒部48の下側部分に接続されている。円筒部42と第1筒部48とは同軸である。第1筒部48の外径寸法は、円筒部42の外径寸法よりも小さい。
【0021】
第2保持部材5は、レンズL1を外周側から囲む第2保持部51と、第2保持部51から第2方向Z2に延びる第2接続部52と、を備える。第2保持部51は、レンズL1の輪郭形状に沿った枠状の部分である。第2接続部52は、第2筒部53と、第2筒部53の第2方向Z2の端部分から径方向外側に突出する第2ピン54(カムフォロワー部)と、を備える。すなわち、第2接続部52は、第2保持部51から光軸方向に沿って延び、かつ、レンズL1の径方向外側に延びている。第2筒部53の上側部分は、第2方向Z2に向かって段階的に外径寸法が大きくなる。
【0022】
第3保持部材6は、レンズL2を外周側から囲む第3保持部61と、第3保持部61から第2方向Z2に延びる第3接続部62と、を備える。第3保持部61は、レンズL2の輪郭形状に沿った枠状の部分である。第3接続部62は、第3筒部63と、第3筒部63の第2方向Z2の端部分から径方向外側に突出する第3ピン64(カムフォロワー部)と、を備える。第3筒部63の上側部分は、第2方向Z2に向かって段階的に外径寸法が大きくなる。
【0023】
ここで、第3保持部材6の第3筒部63の第2方向Z2の端部分、第2保持部材5の第2筒部53の第2方向Z2の端部分、および第1保持部材4の第1筒部48の第2方向Z2の端部分は、軸線と直交する方向から見た場合に、重なる。また、第3保持部材6の第3筒部63、第2保持部材5の第2筒部53、および第1保持部材4の第1筒部48は、内周側から外周側に向かってこの順に配置されている。
【0024】
固定部材7は、第1方向Z1の端部分が、第1保持部材4の第1筒部48、第2保持部材5の第2筒部53、第3保持部材6の第3筒部63の外周側に位置する。固定部材7は、第1筒部48、第2筒部53、および第3筒部63の外周側に位置する部分に、第1光軸N方向に直線状に延びる案内溝71(案内部)を備える。案内溝71には、第1ピン49、第2ピン54、および第3ピン64が挿入されている。第1ピン49、第2ピン54、および第3ピン64は、拡大側から縮小側に向かってこの順に位置する。第1ピン49、第2ピン54、および第3ピン64の間には、それぞれ隙間がある。
【0025】
移動機構8は、第2光学系22の径方向外側で第1接続部46、第2接続部52および第3接続部62を第1光軸N方向に移動させる搬送機構81を備える。また、移動機構8は、第1保持部41の径方向外側で第1保持部材4を第1光軸N方向に案内する案内機構87を備える。
【0026】
搬送機構81は、固定部材7の第1方向Z1の端部分に回転可能に支持されたカム部材82と、カム部材82に設けられた第1カム部83、第2カム部84、第3カム部85を備える。第1カム部83には、案内溝71を貫通した第1ピン49が挿入される。第2カム部84には、案内溝71を貫通した第2ピン54が挿入される。第3カム部85には、案内溝71を貫通した第3ピン64が挿入される。第1カム部83、第2カム部84、および第3カム部85のそれぞれは、第1光軸N方向に向かって周方向に傾斜する螺旋溝である。ここで、搬送機構81は、第1光軸N方向から見た場合に、光学素子23と重なる。また、カム部材82には、径方向外側に突出した操作レバー86(操作部)が設けられている。操作レバー86は、光学装置3を収容するプロジェクター1の不図示のケース部から突出するように設けられている。
【0027】
案内機構87は、第1保持部材4の第1光軸N回りの回転を規制する。案内機構87は、例えば、ガイドレールなどで構成される。この場合、案内機構87は、円筒部42から径方向外側に突出した凸部と、凸部が移動可能に係合する溝部とを備える。溝部は、第1光軸N方向に延在する。凸部が溝部を第1光軸N方向に移動することにより、案内機構87は、第1保持部41を第1光軸N方向に案内する。
【0028】
(動作)
カム部材82の回転に応じて、第1接続部46の第1ピン49は、第1カム部83をスライドする。また、第2接続部52の第2ピン54は、第2カム部84をスライドする。第3接続部62の第3ピン64は、第3カム部85をスライドする。また、第1ピン49、第2ピン54、および第3ピン64は、案内溝71によって第1光軸N方向に案内される。従って、カム部材82を回転させると、第1ピン49は第1光軸N方向に移動する。これにより、第1保持部材4が第1光軸N方向に移動するので、光学素子23が第1光軸N方向に移動する。また、カム部材82を回転させると、第2ピン54は第1光軸N方向に移動する。これにより、第2保持部材5が第1光軸N方向に移動するので、レンズL1が第1光軸N方向に移動する。同様に、カム部材82を回転させると、第3ピン64は第1光軸N方向に移動する。これにより、第3保持部材6が第1光軸N方向に移動するので、レンズL2が第1光軸N方向に移動する。
【0029】
(作用効果)
本例の光学装置3は、反射面32を有する光学素子23を有し第1光学系21と、レンズL1を有し、第1光学系21の縮小側に配置された第2光学系22と、光学素子23を保持する第1保持部材4と、レンズL1を保持する第2保持部材5と、第1保持部材4を光学素子23の第1光軸Nに沿った第1光軸N方向に移動させる移動機構8と、を備える。第1保持部材4は、第2光学系22の拡大側に配置された光学素子23を保持する第1保持部41と、第1保持部41から第2光学系22の側に延びる第1接続部46と、を有する。移動機構8は、第2保持部材5の径方向外側に配置され第1接続部46を第1光軸N方向に移動させる搬送機構81と、第1保持部材4の径方向外側に配置され第1保持部材4を第1光軸N方向に案内する案内機構87と、を有する。案内機構87は、第1光軸Nを中心とした第1保持部材4の回転を規制する。
【0030】
本例の光学装置3では、反射面32を有する光学素子23は第1保持部材4に保持されている。第1保持部材4は、光学素子23を保持する第1保持部41と、第1保持部41から第2光学系22の側に延びる第1接続部46を備える。移動機構8は、第1接続部46を第1光軸N方向に移動させことにより、光学素子23を第1光軸N方向に移動させる。ここで、移動機構8は、光学素子23を保持する第1保持部41の径方向外側で第1保持部材4を第1光軸N方向に案内する案内機構87を有する。従って、第1保持部材4に保持された光学素子23を、第1光軸Nに沿って、精度よく移動させることができる。また、案内機構87は、第1保持部材4の第1光軸N回りの回転を規制する。従って、光学素子23を第1光軸Nに沿って移動させたときに、光学素子23が回転しない。よって、光学素子23を第1光軸Nに沿って移動させたときに、反射面32に偏芯が発生することを防止或いは抑制できる。また、搬送機構81は、第2保持部材5の径方向外側に位置する。従って、光学素子23を保持する第1保持部材4の径方向外側に案内機構87および搬送機構81の双方を設ける場合と比較して、第1光学系21を径方向でコンパクトにすることができる。
【0031】
本例において、搬送機構81は、第1光軸Nを中心に回転可能なカム部材82と、カム部材82に設けられた第1カム部83と、を有し、第1接続部46は、第1カム部83をスライドするものとすることができる。このようにすれば、搬送機構81を構成することが容易である。
【0032】
本例において、光学装置3は、第1光軸Nと直交する方向から見た場合に第2保持部材5と重なる固定部材7を備え、カム部材82は、固定部材7に回転可能に支持されるものとすることができる。このようにすれば、カム部材82を、第2保持部材5の径方向外側で回転可能に配置できる。従って、搬送機構81を第2保持部材5の径方向外側に設けることができる。
【0033】
本例において、固定部材7には、第1接続部46を第1光軸N方向に案内する案内溝71が設けられているものとすることができる。このようにすれば、案内機構87により第1保持部41の第1光軸N方向への移動を案内し、案内溝71により第1接続部46の第1光軸N方向への移動を案内することができる。従って、第1保持部材4を第1光軸N方向へ移動させることが容易となる。
【0034】
本例において、第2保持部材5は、レンズL1の径方向外側に配置されレンズL1を保持する第2保持部51と、第2保持部51から第1光軸N方向に沿って延び、かつ、レンズL1の径方向外側に延びる第2接続部52と、を有する。移動機構8は、カム部材82に設けられた第2カム部84を備える。第2接続部52は、第2カム部84をスライドし、案内溝71は、第2接続部52を第1光軸N方向に案内するものとすることができる。このようにすれば、カム部材82を第1光軸N回りに回転させたときに、第2保持部材5を第1光軸N方向に移動させることができる。従って、投写距離を変更する際にカム部材82を回転させれば、第1光学系21の光学素子23と、第2光学系22のレンズL1との双方を、一度に移動させることができる。
【0035】
本例において、カム部材82には、カム部材82の径方向外側に突出する操作レバー86が設けられているものとすることができる。従って、本例の光学装置3を組み込んだケースから操作レバー86を突出するように構成すれば、操作レバー86を操作することによって容易にカム部材82を回転させることができる。
【0036】
本例において、第2光学系22は、第1光軸N方向から見た場合に、光学素子23の内側に位置し、搬送機構81は、光軸方向から見た場合に、光学素子23と重なるものとすることができる。このようにすれば、光学装置が径方向で大型化することを抑制できる。
【0037】
本例において、反射面32は、凹曲面であるものとすることができる。第1光学系21が凹曲面からなる反射面32を備えれば、第1光学系21および第2光学系22からなる光学系20の倍率を高めることが容易となる。
【0038】
本例において、光学素子23は、第1透過面31と、第1透過面31の縮小側に配置された反射面32と、反射面32の縮小側に配置された第2透過面33を有するものとすることができる。このようにすれば、第1透過面31および第2透過面33において光学素子23を通過する光線を屈折させることが可能となる。従って、第1光学系21および第2光学系22からなる光学系20の倍率を高めることが、より、容易となる。従って、例えば、光学系20を所定の倍率とする場合に、光学素子23が第1透過面31、反射面32、および第2透過面33を備えれば、光学素子23が反射面32のみを備える場合と比較して、光学素子23を径方向で小さくすることができる。よって、光学装置3が径方向で大型化することを抑制できる。
【0039】
本例において、光学素子23は、第2光学系22の側を向く第1面35と、第1面35とは反対側を向く第2面36と、第2面36に設けられた反射コーティング層と、を有する。第1面35は、凸形状を備え、第1透過面31、および第2透過面33は、第1面35に設けられる。反射面32は、反射コーティング層であり、第2面36の表面形状が転写されているものとすることができる。このようにすれば、一つの光学素子23に、第1透過面31、反射面32、および第2透過面33を備えることができる。
【0040】
本例において、第1透過面31、反射面32、および第2透過面33のうち少なくとも1つは、非球面形状を有することができる。光学素子23は、第1光軸N方向に移動する際に、案内機構87により光軸回りの回転が規制されている。従って、第1透過面31、反射面32、および第2透過面33を軸線回りの回転対称の形状とする必要がなく、これらの面に非球面形状を採用して、第1面35および第2面36を自由曲面とすることができる。ここで、第1透過面31、反射面32、または第2透過面33を非球面形状とすれば、これらが球面である場合と比較して、収差の発生を抑制することが容易となる。
【0041】
また、本例のプロジェクター1では、投写距離を変更したときに、光学装置3の光学素子23、レンズL1、レンズL2、をそれぞれ第1光軸N方向に移動させて、焦点を合わせることができる。
【0042】
(変形例)
図4は、変形例の光学装置3の説明図である。変形例の光学装置3は、上記の光学装置3と搬送機構81の構成が相違するが、他の構成は同一である。よって、変形例の光学装置の説明では、上記の光学装置と対応する構成に同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0043】
図4に示すように、本例の光学装置3では、搬送機構81は、カム部材82を回転させるための操作機構91を備える。操作機構91は、第1光軸N方向で第1光学系21の第2光学系22とは反対側に配置された回転部材92と、回転部材92の回転をカム部材82に伝達する回転伝達機構93と、を備える。回転部材92は、不図示の取付プレートに回転可能に支持されている。回転伝達機構93は、軸部94と、軸部94の両端に設けられたギヤ部95,96を備える。ギヤ部95は、回転部材92の外周面に形成されたギヤ部97と噛み合っている。ギヤ部96は、カム部材82の外周面に形成されたギヤ部98と噛み合っている。よって、回転部材92を回転させることによって、カム部材82を回転させることができる。このようにすれば、第1光学系21を第1光軸N方向に移動させる操作を、第1光学系21の第2光学系22とは反対側に配置した回転部材92により行うことができる。
【0044】
(実施例2の光学装置)
図5は、実施例2の光学装置3の光学系20および鏡筒10の説明図である。実施例2の光学装置3は、第1光学系21の光学素子23として、凹面鏡27を備える。ここで、実施例2の光学装置3は、第1光学系21の光学素子23を除き、上記の光学装置3と同一の構成を備える。従って、対応する構成には、同一の符号を付して、その説明を省略する。また、図5において、第2光学系22のレンズ構成の一部を省略する。
【0045】
第1光学系21の第1光軸Nは、凹面鏡27の光軸である。凹面鏡27の光軸は、凹面鏡27の中心を通過する。凹面鏡27において、第2光学系22からの光線をスクリーンに向かって反射する反射面37は、第1光軸Nの下側の領域に設けられている。反射面37は、非球面形状を備える。本例においても、実施例1の光学装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
(実施例3の光学装置)
図6は、実施例3の光学装置3の光学系20および鏡筒10の説明図である。実施例3の光学装置3では、第1光学系21の光学素子23が、第2光学系22の側に向かって凸曲面である凸面鏡28を備える。ここで、変形例2の光学装置は、第1光学系21の光学素子23を除き、上記の光学装置3と同一の構成を備える。従って、対応する構成には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0047】
光学素子23は、第1光軸Nに対して回転対称の形状を備える。従って、光学素子23の光軸は、凸面鏡28の中心を通過する。凸面鏡28において、第2光学系22からの光線をスクリーンに向かって反射する反射面38は、第1光軸Nの上側の領域に設けられている。本例においても、実施例1の光学装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
(撮像装置)
ここで、上記の光学装置3は、撮像装置2の光学装置3として用いることができる。図7は、本例の光学装置3を備える撮像装置2の説明図である。撮像装置2は、光学系20を備える光学装置3と、光学系20の縮小側共役面Pに配置された撮像素子15と、を備える。この場合、拡大側共役面Sからの光線Q1は、光学素子23の第1面35において第1光軸Nの上方Y1に位置する第2透過面33に入射する。第2透過面33に入射した光線は第1光軸Nの下方Y2に位置する反射面32によって折り返される。反射面32により折り返された光線Q2は、第1光軸Nの下方に位置する第1透過面31から出射されて、第1光学系21に向かう。第1光学系21に入射した光線は、縮小側共役面Pに配置された撮像素子15上で結像する。上記の光学装置3を撮像装置2に用いた場合でも、上記の光学装置3をプロジェクター1に用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
また、上述の実施例および変形例の光学装置の第2光学系22において、レンズL1およびレンズL2の2つのレンズが、第1光軸Nに沿って移動可能とする構成としたが、これに限られない。例えば、1枚のレンズが第1光軸Nに沿って移動可能とする構成としてもよいし、3枚以上のレンズが第1光軸Nに沿って移動可能とする構成としてもよい。さらに、複数のレンズが、第1光軸Nに沿って同じ方向に移動する構成としてもよいし、異なる方向に移動する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…プロジェクター、2…撮像装置、3…光学装置、4…第1保持部材、5…第2保持部材、6…第3保持部材、7…固定部材、8…移動機構、10…鏡筒、11…画像形成部、12…光源、13…光変調素子、15…撮像素子、20…光学系、21…第1光学系、22…第2光学系、23…光学素子、26…レンズ、27…凹面鏡、28…凸面鏡、31…第1透過面、32…反射面、33…第2透過面、35…第1面、36…第2面、37…反射面、38…反射面、41…第1保持部、42…円筒部、43…円形板、46…第1接続部、47…テーパー部、48…第1筒部、49…第1ピン、51…第2保持部、52…第2接続部、53…第2筒部、54…第2ピン、61…第3保持部、62…第3接続部、63…第3筒部、64…第3ピン、71…案内溝、81…搬送機構、82…カム部材、83…第1カム部、84…第2カム部、85…第3カム部、86…操作レバー、87…案内機構、91…操作機構、92…回転部材、93…回転伝達機構、94…軸部、95,96,97,98…ギヤ部、L1~L14…レンズ、N…第1光軸、M…第2光軸、O1~O2…光線、Q1~Q2…光線、P…縮小側共役面、S…拡大側共役面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7