IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宇部興産機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-空気浮上式コンベア装置 図1
  • 特許-空気浮上式コンベア装置 図2
  • 特許-空気浮上式コンベア装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】空気浮上式コンベア装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/60 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B65G15/60
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020156081
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022049836
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】末永 匡史
(72)【発明者】
【氏名】汐重 啓
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-338058(JP,A)
【文献】特開平10-152213(JP,A)
【文献】特開平11-263418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/00 - 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動プーリと従動プーリとの間にベルトを無端状に掛け回して円筒管内に配置し、前記円筒管内で前記ベルトを浮上させる浮上用空気を前記ベルトの裏面から供給する浮上用空気供給部と、前記ベルトのコンベア投入口の搬送物の搬送量を測定する搬送物計量部を備えた空気浮上式コンベア装置において、
前記円筒管内のベルト表面に排気用空気を供給する排気用空気供給部と、
前記円筒管内の湿度を測定する管内湿度測定部と、
前記円筒管の外気の湿度を測定する外気湿度測定部と、
前記搬送物計量部と前記管内湿度測定部及び前記外気湿度測定部による前記搬送量と前記円筒管内の湿度と前記外気の湿度の実測データと、データベースに蓄積した搬送量、外気の湿度、円筒管内の湿度、外気及び搬送物の湿度の測定値に基づく乾燥時間、外気及び搬送物の湿度の測定値に基づく排気用空気供給量のうち前記搬送量と前記円筒管内の湿度と前記外気の湿度の過去の実績データ照合して類似のコンディションとなる前記実績データを読み出して前記排気用空気供給部の乾燥時間が短くなる最適条件の前記排気用空気供給部の乾燥時間及び排気用空気供給量を決定する制御部を備えたことを特徴とする空気浮上式コンベア装置。
【請求項2】
請求項1に記載された空気浮上式コンベア装置であって、
前記制御部は、前記搬送物の搬送停止後に前記浮上用空気供給部及び前記排気用空気供給部を継続運転して前記円筒管内を換気することを特徴とする空気浮上式コンベア装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された空気浮上式コンベア装置であって、
前記浮上用空気供給部及び前記排気用空気供給部は、加熱空気、工場の排熱、不活性ガスのいずれかを用いたことを特徴とする空気浮上式コンベア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭、石灰石、穀物、木質バイオマスなどのばら物を安定供給することができる空気浮上式コンベア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭、石灰石、穀物、木質バイオマスなどのばら物をサイロなどの貯蔵タンクに連続搬送する際にベルトコンベアを用いている。
このベルトコンベアには、ベルトを空気で浮上させて搬送する空気浮上式コンベアがあり、ローラタイプと比べて、低騒音、省動力運転が可能であり、完全密閉構造のため発塵の心配がないなどのメリットから多く導入されている。
近年、清掃の省力化という観点からリターン側でベルトを反転させる反転装置を備えた空気浮上式コンベアも採用されている。
空気浮上式コンベアは、回転自在に配置された駆動プーリと従動プーリとの間にベルトを無端状に掛け回し、上下2つの円筒管内にキャリア側とリターン側を別々に配置してベルトコンベアを構成している。このような構成により、アンローダ設備などからキャリア側のベルト上に受け入れた搬送物は、コンベアの排出部に向けて搬送されてホッパを介してサイロなどの貯蔵タンクへ受け入れ、又は後段の搬送装置へ受け渡される。
【0003】
このような空気浮上式コンベアは、コンベア投入口から受け入れる搬送物の量が変動すると、搬送物を空気で浮上させる構造のために負荷が過大になるとベルトとトラフ(あるいは円筒管の内壁)が接触してしまい搬送抵抗が大きくなり、破損や負荷増大による機器停止などの不都合が生じる。また搬送物の量がばらつくと局所的に負荷が大きくなりトラフと接触してしまう。通常の空気浮上式コンベアの場合、コンベア機長の複数個所に浮上用空気を供給している構成である。供給される空気量と圧力は機長全体でほぼ同じであり、局所的に負荷が増減すると、そのアンバランス負荷が搬送によって移動するため、機長全体に渡って最適な浮上隙間を得る浮上空気を供給することが困難になる。
このため機長の搬送方向に所定間隔を開けて浮上空気の圧力を検出し、測定した圧力値から載荷重量を求めてコンベア前後の軌道や搬送速度を制御するなどの措置を講じている(例えば特許文献1に開示有り)。
【0004】
しかしながら、実機においては載荷量だけではなく、搬送物の物性についても制御対照に加える必要がある。石炭や木質バイオマスなどの搬送物の場合、その水分(含水又は付着水)によって、重量だけではなく付着性、換言すると搬送物どうしの付着や流動性、ベルト面の付着も安定した搬送に影響を与える。
特にベルトとトラフ(又は円筒間の内面)の間の水分は、載荷量が増えて空気浮上寸法が狭くなると、粘性抵抗によって駆動力が増大する原因となる。また管内の搬送物の粉体に水分が付着固化してベルトとトラフの間で滑り抵抗が生じてトラフの摩滅の原因となる。
また水分の多い搬送物の場合、凍結の問題がある。寒冷地において管内の水分がベルトとトラフの隙間で結露し、あるいは運転停止中にベルトなどに付着した水分が凍りつき起動や搬送不能になるといった不具合が生じて操業停止を招くおそれがある。
特に石炭や木質バイオマス原料のように水分を含む搬送物は、ベルト搬送運動によって管内温度が外気に比べて高くなるので、保持する水分が蒸気となり冬季には結露し凍結するトラブルが発生し易い。
【0005】
このため、凍結したベルト表面に蒸気スプレーを吹き付け、または回転ブラシによって結氷を除去する技術がある(特許文献2)。
またトラフ内のベルトと内周面の間に供給されるベルト浮上用の空気を利用して、空気の圧縮の際の発熱で結氷を融解し、空気の圧力で強制的にベルトを浮上させる技術がある(特許文献3)。
しかしながら、トラフ内のベルトと内周面の隙間(約1mm)で凍結した場合、凍結を除去することは困難である。また搬送物の水分が多く、結氷が厚い場合には浮上用空気を用いて凍結を除去することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-186154号公報
【文献】特開昭62-147614号公報
【文献】特開平8-268522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、石炭、石灰石、穀物、木質バイオマスなどのばら物を外部環境(水分)や負荷変動(搬送量)に即時対応しながら安定供給することができる空気浮上式コンベア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、駆動プーリと従動プーリとの間にベルトを無端状に掛け回して円筒管内に配置し、前記円筒管内で前記ベルトを浮上させる浮上用空気を前記ベルトの裏面から供給する浮上用空気供給部と、前記ベルトのコンベア投入口の搬送物の搬送量を測定する搬送物計量部を備えた空気浮上式コンベア装置において、
前記円筒管内のベルト表面に排気用空気を供給する排気用空気供給部と、
前記円筒管内の湿度を測定する管内湿度測定部と、
前記円筒管の外気の湿度を測定する外気湿度測定部と、
前記搬送物計量部と前記管内湿度測定部及び前記外気湿度測定部による前記搬送量と前記円筒管内の湿度と前記外気の湿度の実測データと、データベースに蓄積した搬送量、外気の湿度、円筒管内の湿度、外気及び搬送物の湿度の測定値に基づく乾燥時間、外気及び搬送物の湿度の測定値に基づく排気用空気供給量のうち前記搬送量と前記円筒管内の湿度と前記外気の湿度の過去の実績データ照合して類似のコンディションとなる前記実績データを読み出して前記排気用空気供給部の乾燥時間が短くなる最適条件の前記排気用空気供給部の乾燥時間及び排気用空気供給量を決定する制御部を備えたことを特徴とする空気浮上式コンベア装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、浮上用空気と共に円筒管内の湿気を排気用空気によって円筒管の外部に排気できるため、トラフ内の水分滞留と結露を防止できる。また類似の気象条件及び内部水蒸気量を予測して、空気供給量を可変することで計測した搬送量に見合った浮上用空気を供給でき省エネルギー化を実現できる。また予測水蒸気量が多い場合、排気空気量を増やす制御を行い、円筒管内が結露し難い空気浮上式コンベア装置を実現できる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記制御部は、前記搬送物の搬送停止後に前記浮上用空気供給部及び前記排気用空気供給部を継続運転して前記円筒管内を換気することを特徴とする空気浮上式コンベア装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、コンベア搬送後の円筒管内の湿気を排除することができる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は第2の手段において、前記浮上用空気供給部及び前記排気用空気供給部は、加熱空気、工場の排熱、不活性ガスのいずれかを用いたことを特徴とする空気浮上式コンベア装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、排気用空気の湿度を考慮することなく排気用空気による乾燥時間及び排気用空気量を算出できる。また工場の排熱を利用した場合には稼働コストの省エネルギー化を実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、炭、石灰石、穀物、木質バイオマスなどのばら物を外部環境(水分)や負荷変動(搬送量)に即時対応しながら安定供給することができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の空気浮上式コンベア装置の構成概略図である。
図2】キャリア側ベルトの断面図である。
図3】本発明の空気浮上式コンベア装置の運転方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の空気浮上式コンベア装置の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0014】
[空気浮上式コンベア装置10]
図1は、本発明の空気浮上式コンベア装置の構成概略図である。図2はキャリア側ベルトの断面図である。
本発明の空気浮上式コンベア装置10は、駆動プーリ11と従動プーリ12との間にベルト13を無端状に掛け回して円筒管14内に配置し、前記円筒管14内で前記ベルト13を浮上させる浮上用空気を前記ベルト13の裏面から供給する浮上用空気供給部15と、前記ベルト13のコンベア投入口の搬送物の搬送量を測定する搬送物計量部20を備えた空気浮上式コンベア装置10において、前記円筒管14内の前記ベルト13表面に排気用空気を供給する排気用空気供給部30と、前記円筒管14内の湿度を測定する管内湿度測定部40と、前記円筒管14の外気の湿度を測定する外気湿度測定部50と、前記管内湿度測定部40及び前記外気湿度測定部50の測定値から発生する水蒸気量を予測し、過去の実績データと実測データと照合して前記実績データから最適条件(例えば、乾燥時間が短くなる実績データなど)の前記排気用空気供給部30の乾燥時間及び排気用空気供給量を決定する制御部60を備えている。
【0015】
空気浮上式コンベア装置10は、通常、搬送量に基づいて浮上用空気供給部15の給気ファン15aの回転数及び電動弁15bの開度の制御を以下のように行っている。上流コンベアの搬送物計量部20により搬送量を検出する。あらかじめ浮上風量(m3/min)と搬送量(t/h)の関係から供給風量特性カーブを求めている。また給気ファン15aの回転数(rpm)と浮上風量(m3/min)の関係から特性カーブを求めている。また電動弁15bの開度(%)と浮上風量(m3/min)の関係から特性カーブを求めている。搬送量と浮上風量の関係から給気ファン15aの回転数及び電動弁15bの開度を算出する。前回の測定値からの差分を算出して搬送量が増えた場合、差分の風量を増やす。一方、搬送量が減った場合、10%を上限として風量を減らす制御を行う。給気ファン15aの回転数及び電動弁15bの開度を変更する。また搬送中は円筒管14内に設置した圧力発信器16で浮上空気の圧力を測定する。給気風量からの理論圧力と比較する。異常圧力か否か判定する。異常圧力の場合、給気ファン15aの回転数及び電動弁15bの開度を変更する。この制御を搬送物が継続するまで繰り返す。
【0016】
排気用空気供給部30は、浮上用空気供給部15のインバータ付き給気ファン15aの接続配管から分岐して電磁弁30aを介して円筒管14内のベルト13表面に排気用空気を供給している。円筒管14の下流側には集塵機18を設置して排気用空気供給部30から円筒管14内に供給された排気用空気を外部に排出している。集塵機18には外部へ排気する空気の湿度を測定する湿度計19を設けている。
外気湿度測定部50は、円筒管14の外部の湿度を測定している。
管内湿度測定部40は、円筒管内の湿度を測定している。
制御部60は、排気用空気供給部30、外気湿度測定部50、管内湿度測定部40、浮上用空気供給部15、集塵機18の湿度計19、搬送物計量部20と電気的に接続している(図1に示す制御部60は排気用空気供給部30、浮上用空気供給部15の接続を省略)。制御部60は、外気、円筒管内の湿度、外気及び搬送物の湿度の測定値に基づく乾燥時間及び排気用空気供給量などの過去の実績データを蓄積したデータベース62を備えている。制御部60は、管内湿度測定部40及び外気湿度測定部50の測定値から円筒管14内に発生する水蒸気量を予測する。
また制御部60は過去の実績データに基づいて排気用空気供給部30の乾燥時間及び排気用空気供給量を決定する。具体的には円筒管14の内部温度、外気、平均搬送量の過去の実績データと現時点でのデータを照合して、最適条件に近い実績データを導き出す。
【0017】
[空気浮上式コンベア装置の運転方法]
上記構成による本発明の空気浮上式コンベア装置10の運転方法について、以下説明する。図3は、本発明の空気浮上式コンベア装置の運転方法のフロー図である。
[ステップ1]:上流コンベアの搬送物計量部20により搬送物の搬送量を測定する。
[ステップ2]:外気湿度測定部50及び管内湿度計測部40により外気の湿度及び円筒管14内の湿度を測定する。
[ステップ3]:制御部60は、測定した搬送量、外気の湿度、円筒管14内の湿度の実測データからデータベース62の類似データを照合する。具体的には、制御部60のデータベース62に記録されている実績データと現時点の実測データの比較を行う。
【0018】
[ステップ4]:制御部60はデータベース62から類似のコンディションから最適条件の過去の実績データを読み出して排気用空気供給部30の乾燥時間及び排気用空気量を決定する。
[ステップ5]:搬送物の搬送中は、ステップ4の条件で排気用空気供給部30を運転する。搬送物の荷役完了した後、コンベアを停止する。
[ステップ6]:コンベアの停止後も浮上用空気供給部15及び排気用空気供給部30の運転を継続して円筒管14内を換気する。
[ステップ7]:管内湿度測定部40による円筒管14内の湿度が設定湿度よりも低下したか否か判定する。設定湿度よりも低下した場合には浮上用空気供給部15及び排気用空気供給部30の換気運転を終了する。一方、設定湿度以上の場合には浮上用空気供給部15及び排気用空気供給部30の換気運転を継続するステップ6に戻る。
【0019】
なお浮上用空気供給部15及び排気用空気供給部30は、加熱空気、不活性ガス、工場の排熱のいずれかを用いると良い。これにより排気用空気の湿度を考慮することなく排気用空気の乾燥時間及び排気用空気量を算出できる。また工場の排熱を利用した場合には稼働コストの省エネルギー化を実現できる。
このような本発明によれば、浮上用空気と共に円筒管内の湿気を排気用空気によって円筒管の外部に排気できるため、トラフ内の水分滞留と結露を防止できる。また類似の気象条件及び内部水蒸気量を予測して、空気供給量を可変することで計測した搬送量に見合った浮上用空気を供給でき省エネルギー化を実現できる。また予測水蒸気量が多い場合、排気空気量を増やす制御を行い、円筒管内が結露し難い空気浮上式コンベア装置を実現できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0020】
10 空気浮上式コンベア装置
11 駆動プーリ
12 従動プーリ
13 ベルト
14 円筒管
15 浮上用空気供給部
15a 給気ファン
16 圧力発信器
18 集塵機
19 湿度計
20 搬送物計量部
30 排気用空気供給部
30a 電磁弁
40 管内湿度測定部
50 外気湿度測定部
60 制御部
62 データベース
図1
図2
図3