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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ウエハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20240814BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20240814BHJP
   B28D 7/04 20060101ALI20240814BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B24B27/06 D
B28D5/04 C
B28D7/04
H01L21/304 611W
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020158543
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052269
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】境谷 省吾
(72)【発明者】
【氏名】高尾 義雄
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-286008(JP,A)
【文献】特開2019-089164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B28D 5/04
B28D 7/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークと支持部材との間に前記ワークの外周面に沿って変形した補助部材を配置した状態で、前記ワークを前記支持部材に固定する工程と、
ワイヤーソーを用いて前記ワークを切断する工程とを備え、
前記ワークを前記支持部材に固定する工程においては、前記ワークと前記補助部材とは第1接着剤で固定され、かつ前記支持部材と前記補助部材とは第2接着剤で固定され、
前記補助部材は、硬化性樹脂を有し、
硬化前における前記補助部材の粘度は、硬化前における前記第1接着剤および前記第2接着剤の各々の粘度よりも高い、ウエハの製造方法。
【請求項2】
前記ワイヤーソーの移動方向に平行な断面における前記ワークの真円度は、50μm以上である、請求項1に記載のウエハの製造方法。
【請求項3】
前記補助部材は、フィラー部材を有している、請求項1または請求項2に記載のウエハの製造方法。
【請求項4】
前記硬化性樹脂は、エポキシ系樹脂、シリコーンゴム系樹脂およびアクリル樹脂のいずれかを含む、請求項3に記載のウエハの製造方法。
【請求項5】
前記フィラー部材は、カーボン粉末およびセラミック粉末のいずれかを含む、請求項3または請求項4に記載のウエハの製造方法。
【請求項6】
前記ワークは、単結晶半導体である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のウエハの製造方法。
【請求項7】
前記単結晶半導体は、単結晶炭化珪素である、請求項6に記載のウエハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平5-96461号公報(特許文献1)には、マルチワイヤーソーによる被切断物の切断方法が記載されている。当該切断方法においては、被切断物がL字型断面を有するダミー部材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-96461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、リードタイムを短縮しつつ、ワークを支持部材に安定して固定することができるウエハの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係るウエハの製造方法は以下の工程を備えている。ワークと支持部材との間に補助部材を配置した状態で、ワークが支持部材に固定される。ワイヤーソーを用いてワークが切断される。ワークを支持部材に固定する工程においては、ワークと補助部材とは第1接着剤で固定され、かつ支持部材と補助部材とは第2接着剤で固定される。硬化前における補助部材の粘度は、硬化前における第1接着剤および第2接着剤の各々の粘度よりも高い。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、リードタイムを短縮しつつ、ワークを支持部材に安定して固定することができるウエハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、ワークの構成を示す上面模式図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面模式図である。
図3図3は、ワークの真円度を測定する状態を示す正面模式図である。
図4図4は、本実施形態に係るウエハの製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図5図5は、補助部材の構成を示す断面模式図である。
図6図6は、補助部材をワークの外周面に押し当てた状態を示す一部断面模式図である。
図7図7は、ワークを支持部材に固定する状態を示す一部断面模式図である。
図8図8は、ワークが支持部材に固定された状態を示す一部断面模式図である。
図9図9は、ワイヤーソーを用いてワークを切断する工程を示す一部断面模式図である。
図10図10は、ワイヤーソーを用いてワークを切断する工程を示す上面模式図である。
図11図11は、ワイヤーソーを用いてワークを切断する工程後の状態を示す上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の概要]
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。
【0009】
(1)本開示に係るウエハ60の製造方法は以下の工程を備えている。ワーク10と支持部材40との間に補助部材20を配置した状態で、ワーク10が支持部材40に固定される。ワイヤーソー50を用いてワーク10が切断される。ワーク10を支持部材40に固定する工程においては、ワーク10と補助部材20とは第1接着剤31で固定され、かつ支持部材40と補助部材20とは第2接着剤32で固定される。硬化前における補助部材20の粘度は、硬化前における第1接着剤31および第2接着剤32の各々の粘度よりも高い。
【0010】
(2)上記(1)に係るウエハ60の製造方法において、ワイヤーソー50の移動方向に平行な断面におけるワーク10の真円度は、50μm以上であってもよい。
【0011】
(3)上記(1)または(2)に係るウエハ60の製造方法において、補助部材20は、硬化性樹脂21と、フィラー部材22とを有していてもよい。
【0012】
(4)上記(3)に係るウエハ60の製造方法において、硬化性樹脂21は、エポキシ系樹脂、シリコーンゴム系樹脂およびアクリル樹脂のいずれかを含んでいてもよい。
【0013】
(5)上記(3)または(4)に係るウエハ60の製造方法において、フィラー部材22は、カーボン粉末およびセラミック粉末のいずれかを含んでいてもよい。
【0014】
(6)上記(1)から(5)のいずれかに係るウエハ60の製造方法において、ワーク10は、単結晶半導体であってもよい。
【0015】
(7)上記(6)に係るウエハ60の製造方法において、単結晶半導体は、単結晶炭化珪素であってもよい。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて本開示の実施形態(以降、本実施形態とも称する)の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0017】
次に、本実施形態に係るウエハ60の製造方法について説明する。
図1は、ワーク10の構成を示す上面模式図である。図1に示されるように、本実施形態に係るワーク10は、第1主面1と、第2主面2と、外周面3とを主に有している。第2主面2は、第1主面1と反対側にある。第1主面1は、たとえば平面である。外周面3は、第1主面1および第2主面2の各々に連なっている。本実施形態に係るワーク10は、略円柱形状のインゴットである。第1主面1および第2主面の各々は、たとえば平面状である。
【0018】
本実施形態に係るワーク10は、たとえば単結晶半導体である。単結晶半導体は、たとえば単結晶シリコンであってもよいし、単結晶炭化珪素であってもよい。単結晶半導体が単結晶炭化珪素である場合、単結晶炭化珪素のポリタイプは、たとえば4Hであってもよい。第1主面1に対して垂直な方向において、ワーク10の厚み(第1厚みT1)は、たとえば20mm以上である。第1厚みT1の下限は、特に限定されないが、たとえば30mm以上であってもよいし、40mm以上であってもよい。第1厚みT1の上限は、特に限定されないが、たとえば100mm以下であってもよい。
【0019】
図2は、図1のII-II線に沿った断面模式図である。一般的には、ワーク10の外周面3に対して成形加工が行われる。この場合、第1主面1に対して垂直な方向に見て、ワーク10は、略円形である。一方、本実施形態に係るワーク10の外周面3に対しては、成形加工が行われていない。そのため、第1主面1に対して垂直な方向から見て、ワーク10の外周面3は波打つように形成されている。ワーク10の最大径Wは、たとえば100mmである。最大径Wの下限は、特に限定されないが、たとえば150mm以上であってもよい。最大径Wの上限は、特に限定されないが、たとえば200mm以下であってもよいし、300mm以下であってもよい。なお、断面視におけるワーク10の最大径Wは、外周面3の任意の2点間の距離の最大値である。
【0020】
図3は、ワーク10の真円度を測定する状態を示す正面模式図である。ワーク10の真円度は、ワーク10の外周面3を4等分して外周面3の2点間距離を測定し、最大距離から最小距離を差し引いた値の半分として算出される。具体的には、図3に示されるように、第1主面1に対して垂直な方向に見て、0°の位置と、180°の位置とにマイクロメータの測定端子7が配置される。2つの測定端子7の各々は、ワーク10の外周面3に押し当てられる。2つの測定端子7間の距離Dが測定される。この場合の距離は、第1距離とされる。次に、第1主面1に対して垂直な方向に見て、45°の位置と、225°の位置とにマイクロメータの測定端子7が配置される。2つの測定端子7の各々は、ワーク10の外周面3に押し当てられる。2つの測定端子7間の距離が測定される。この場合の距離は、第2距離とされる。
【0021】
同様に、第1主面1に対して垂直な方向に見て、90°の位置と、270°の位置とにマイクロメータの測定端子7が配置される。2つの測定端子7の各々は、ワーク10の外周面3に押し当てられる。2つの測定端子7間の距離が測定される。この場合の距離は、第3距離とされる。次に、第1主面1に対して垂直な方向に見て、135°の位置と、315°の位置とにマイクロメータの測定端子7が配置される。2つの測定端子7の各々は、ワーク10の外周面3に押し当てられる。2つの測定端子7間の距離が測定される。この場合の距離は、第4距離とされる。
【0022】
第1距離、第2距離、第3距離および第4距離において、最大距離および最小距離が求められる。最大距離から最小距離を差し引いた値の半分が真円度である。第1主面1に対して垂直な方向に見て、本実施形態に係るワーク10の真円度は、50μm以上である。本実施形態に係るワーク10の真円度の下限は、特に限定されないが、たとえば100μm以上であってもよいし、200μm以上であってもよい。本実施形態に係るワーク10の真円度の上限は、特に限定されないが、たとえば900μm以下であってもよいし、500μm以下であってもよい。
【0023】
図4は、本実施形態に係るウエハ60の製造方法を概略的に示すフローチャートである。図4に示されるように、本実施形態に係るウエハ60の製造方法は、ワーク10を支持部材40に固定する工程(S10)と、ワイヤーソー50を用いてワーク10を切断する工程(S20)とを主に有している。
【0024】
まず、ワーク10を支持部材40に固定する工程(S10)が実施される。具体的には、補助部材20が準備される。ワーク10の材質は、ウエハ60の材質と同じである。ワーク10として、たとえば単結晶炭化珪素が準備される。
【0025】
図5は、補助部材20の構成を示す断面模式図である。図5に示されるように、補助部材20は、たとえば、硬化性樹脂21と、フィラー部材22とを有している。硬化性樹脂21は、たとえばエポキシ系樹脂である。硬化性樹脂21は、シリコーンゴム系樹脂であってもよいし、アクリル樹脂であってもよい。硬化性樹脂21は、熱硬化性樹脂であってもよいし、光硬化性樹脂であってもよい。
【0026】
フィラー部材22は、たとえば、カーボン粉末である。フィラー部材22は、セラミック粉末であってもよいし、ガラス粉末であってもよい。硬化性樹脂21とフィラー部材22との質量比率は、たとえば2:3である。フィラー部材22の質量は、硬化性樹脂21の質量よりも大きくてもよい。フィラー部材22の質量は、たとえば、硬化性樹脂21の質量の1倍以上2倍以下である。フィラー部材22は、硬化性樹脂21において分散している。
【0027】
図5に示されるように、補充部材は、第3主面23と、第4主面24とを有している。第4主面24は、第3主面23の反対側の面である。第3主面23および第4主面24の各々は、たとえば硬化性樹脂21により構成されている。フィラー部材22の一部は、第3主面23および第4主面24の各々に露出していてもよい。フィラー部材22の大部分は、第3主面23と第4主面24との間に位置している。第3主面23および第4主面24の各々は、たとえば硬化性樹脂21とフィラー部材22とにより構成されていてもよい。
【0028】
図6は、補助部材20をワーク10の外周面3に押し当てた状態を示す一部断面模式図である。図6に示されるように、補充部材の第3主面23がワーク10の外周面3の一部に接するように、補助部材20がワーク10の外周面3に押し当てられる。上述の通り、第3主面23に垂直な方向に見て、ワーク10の外周面3には凹凸がある。補助部材20は、粘土状(固体状)である。補助部材20に力を加えることにより、補助部材20が変形する。補助部材20をワーク10の外周面3に押し当てることにより、補助部材20の第3主面23は、ワーク10の外周面3の形状に沿って変形する。補助部材20の第3主面23は、ワーク10の外周面3によって型取りされる。
【0029】
次に、支持部材40が準備される。支持部材40は、たとえばカーボン製である。図6に示されるように、支持部材40は、支持面41と、底面42とを有している。底面42は、支持面41の反対側にある面である。支持面41は、たとえば円筒面の一部である。支持面41は、底面42に向かって凹んでいる。底面42は、たとえば平面である。
【0030】
補助部材20の第4主面24は、支持部材40の支持面41に対向して配置される。補助部材20の第4主面24は、支持部材40の支持面41に押し当てられてもよい。この場合、補助部材20の第4主面24は、支持部材40の支持面41の形状に沿って変形する。なお、補助部材20の第4主面24に第2接着剤32(図7参照)が配置される前に、補助部材20の第4主面24は、支持部材40の支持面41に押し当てられなくてもよい。
【0031】
図7は、ワーク10を支持部材40に固定する状態を示す一部断面模式図である。まず、補助部材20がワーク10の外周面3から取り外される。補助部材20がワーク10の外周面3から取り外された後においても、補助部材20の第3主面23はワーク10の外周面3の形状に沿って変形した状態を維持している。次に、補助部材20の第3主面23に第1接着剤31が配置される。補助部材20の第4主面24に第2接着剤32が配置される。補助部材20は、第1接着剤31と第2接着剤32とにより挟まれている。第1接着剤31および第2接着剤32の各々は、たとえば熱硬化性樹脂である。硬化前の第1接着剤31および第2接着剤32の各々は、たとえば液体状である。具体的には、第1接着剤31および第2接着剤32の各々として、たとえば、日化精工株式会社製のエポキシ接着剤(QボンドまたはWボンド)が使用される。
【0032】
硬化前における補助部材20の粘度は、硬化前における第1接着剤31および第2接着剤32の各々の粘度よりも高い。硬化前における補助部材20の粘度とは、たとえば、フィラー部材22が硬化性樹脂21において分散させられた直後の補助部材20の粘度である。第1接着剤31および第2接着剤32の各々が1液型の場合、硬化前における第1接着剤31および第2接着剤32の各々の粘度とは、たとえば第1接着剤31および第2接着剤32の各々を容器から出した直後の粘度である。第1接着剤31および第2接着剤32の各々が主剤と硬化剤とを混ぜて使用する2液混合型の場合、硬化前における第1接着剤31および第2接着剤32の各々の粘度は、主剤の粘度とする。
【0033】
次に、粘度の測定方法について説明する。
補助部材20、第1接着剤31および第2接着剤32の各々の粘度の測定は、たとえば、東機産業株式会社製の粘度計(TVB-10H)を使用する。粘度の測定は、たとえば室温(300K)で実施される。
【0034】
図8は、ワーク10が支持部材40に固定された状態を示す一部断面模式図である。図8に示されるように、ワーク10と補助部材20とは第1接着剤31で固定される。第1接着剤31は、ワーク10の外周面3および補助部材20の第3主面23の各々に接している。第1接着剤31は、ワーク10の外周面3と補助部材20の第3主面23との間に位置している。第3主面23は、外周面3に対向している。
【0035】
図8に示されるように、支持部材40と補助部材20とは第2接着剤32で固定されている。第2接着剤32は、支持部材40の支持面41および補助部材20の第4主面24の各々に接している。第2接着剤32は、支持部材40の支持面41と補助部材20の第4主面24との間に位置している。第4主面24は、支持面41に対向している。以上のように、ワーク10と支持部材40との間に補助部材20を配置した状態で、ワーク10が支持部材40に固定される。
【0036】
補助部材20の硬化性樹脂21は、たとえば室温(300K)で3時間後、硬化性樹脂21の最高強度の90%に達する。一方、第1接着剤31および第2接着剤32の各々は、たとえば室温で10時間経過後、第1接着剤31および第2接着剤32の各々の最高強度の90%に達する。つまり、第1接着剤31および第2接着剤32の各々が室温で最高強度の90%に達するまでの時間は、硬化性樹脂21が室温で最高強度の90%に達するまでの時間よりも長くてもよい。
【0037】
次に、ワイヤーソー50を用いてワーク10を切断する工程(S20)が実施される。補助部材20の硬化性樹脂21、第1接着剤31および第2接着剤32の各々が実質的に硬化した後、ワイヤーソー50を用いてワーク10が切断される。図9は、ワイヤーソー50を用いてワーク10を切断する工程を示す一部断面模式図である。図9に示されるように、ワイヤーソー50は、ワイヤーソー50の延在方向に沿って前後方向Aに往復移動しながら、鉛直方向Bに移動する。
【0038】
ワイヤーソー50は、ワーク10の上方から支持部材40に向かって移動する。これにより、ワーク10がワイヤーソー50により切断される。ワイヤーソー50は、ワーク10とともに、第1接着剤31、補助部材20、第2接着剤32および支持部材40の各々も切断する。ワイヤーソー50は、ワーク10を切断した後、第1接着剤31、補助部材20、第2接着剤32および支持部材40を切断する。
【0039】
図10は、ワイヤーソー50を用いてワーク10を切断する工程を示す上面模式図である。図10に示されるように、ワイヤーソー50は、ワーク10の第1主面1から第2主面2に向かう方向において、間隔をあけて配置されている。ワイヤーソー50の延在方向は、たとえば第1主面1または第2主面2に平行である。
【0040】
次に、切断されたワーク10が、第1接着剤31、補助部材20、第2接着剤32および支持部材40の各々と共に、剥離液に浸漬される。第1接着剤31および第2接着剤32の各々は、剥離液によって分解される。これにより、ワイヤーソー50によって切断されたワーク10が、支持部材40から取り外される。
【0041】
第1接着剤31および第2接着剤32の各々の厚みが厚すぎると、剥離液によって第1接着剤31および第2接着剤32の各々を剥離するための時間が長くなる。そのため、第1接着剤31および第2接着剤32の各々の厚みはある程度薄い方が望ましい。具体的には、第1接着剤31および第2接着剤32の各々の厚みは、補助部材20の厚みよりも薄い。なお、第1接着剤31、第2接着剤32および補助部材20の各々の厚みは、第1主面に対して垂直な方向に見て、鉛直方向の厚みの平均値とする。
【0042】
図11は、ワイヤーソー50を用いてワーク10を切断する工程後の状態を示す上面模式図である。図11に示されるように、ワーク10がワイヤーソー50によって切断されることにより、複数のウエハ60が得られる。複数のウエハ60の各々の最大径Wは、たとえば100mm以上である。ウエハ60の最大径Wは、ワーク10の最大径Wと同じである(図2参照)。複数のウエハ60の各々の厚み(第2厚みT2)は、たとえば350μm以上500μm以下である。
【0043】
次に、本実施形態に係るウエハ60の製造方法の作用効果について説明する。
一般的に、ワイヤーソー50を用いてワーク10を切断する前、ワーク10は支持部材40に固定される。成形加工を行った後のワーク10の外周面3の断面は、実質的に真円である。支持部材40の支持面41の断面は、円弧状である。そのため、ワーク10を支持部材40に固定する際、ワーク10の外周面3の形状と支持部材40の支持面41の形状とが一致する。従って、ワーク10は支持部材40に安定して固定される。
【0044】
一方、成形加工を行っていないワーク10は、外周面3の断面が真円ではない。この場合、ワーク10を支持部材40に固定する際、ワーク10の外周面3の形状と支持部材40の支持面41の形状とは一致しない。そのため、ワーク10の外周面3と支持部材40の支持面41との間に隙間が形成される。別の観点から言えば、ワーク10の外周面3と支持部材40の支持面41とは点接触となる。従って、成形加工を行った後のワーク10を支持部材40に固定する場合と比較して、成形加工を行っていないワーク10を支持部材40に固定する場合は、ワーク10の外周面3と支持部材40の支持面41との接触面積が小さくなる。結果として、ワーク10を支持部材40にしっかりと安定して固定することができない。
【0045】
本実施形態に係るウエハ60の製造方法によれば、ワーク10と支持部材40との間に補助部材20を配置した状態で、ワーク10が支持部材40に固定される。ワーク10を支持部材40に固定する工程においては、ワーク10と補助部材20とは第1接着剤31で固定され、かつ支持部材40と補助部材20とは第2接着剤32で固定される。硬化前における補助部材20の粘度は、硬化前における第1接着剤31および第2接着剤32の各々の粘度よりも高い。そのため、補助部材20は、ワーク10の外周面3および支持部材40の支持面41の各々の形状に沿って変形する。従って、ワーク10の外周面3と支持部材40の支持面41との間に隙間が形成されることを抑制することができる。結果として、ワーク10を支持部材40に安定して固定することができる。
【0046】
またワーク10の外周面3に対して成型加工を行う必要がない。そのため、ワーク10の外周面3に対して成型加工を行う場合と比較して、ワーク10の外周面3に対して成型加工を行わない場合は、ウエハ60の製造工程のリードタイムを短縮することができる。結果として、結晶評価用のウエハ60においては、評価のリードタイムを短縮することができる。
【0047】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1 第1主面
2 第2主面
3 外周面
7 測定端子
10 ワーク
20 補助部材
21 硬化性樹脂
22 フィラー部材
23 第3主面
24 第4主面
31 第1接着剤
32 第2接着剤
40 支持部材
41 支持面
42 底面
50 ワイヤーソー
60 ウエハ
A 前後方向
B 鉛直方向
D 距離
T1 第1厚み
T2 第2厚み
W 最大径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11