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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】表示体
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/324 20140101AFI20240814BHJP
   B42D 25/342 20140101ALI20240814BHJP
   B42D 25/351 20140101ALI20240814BHJP
【FI】
B42D25/324
B42D25/342
B42D25/351
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020162927
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055476
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 雅美
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521528(JP,A)
【文献】特開2003-94866(JP,A)
【文献】国際公開第2019/63961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/00-25/485
G09F 19/12-19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の着色部を含み、白色光で照明した場合に前記1以上の着色部に対応した透過光画像を表示する画像表示層と、
第1及び第2主面を有する透明材料層を含み、前記第1主面は、幅方向へ交互に配列した第1及び第2帯状部から各々がなる1以上の領域を含んだマスク層であって、前記第2帯状部にはレリーフ構造が設けられ、前記1以上の領域の少なくとも1つに対応した部分は、前記透過光画像のうち前記第2帯状部に対応した部分を隠蔽するマスク層と
を備えた表示体。
【請求項2】
前記第1主面は前記画像表示層から離間している請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記第1主面から前記画像表示層までの距離は、50μm乃至2mmの範囲内にある請求項2に記載の表示体。
【請求項4】
前記第1帯状部のピッチP1は50乃至500μmの範囲内にある請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体。
【請求項5】
前記第1帯状部の幅W1と前記第2帯状部の幅W2との比W1/W2は1/4乃至2の範囲内にある請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【請求項6】
前記透過光画像が前記マスク層によって部分的に隠蔽されてなる部分隠蔽画像は、前記表示体を前記第1及び第2帯状部の長さ方向に平行な軸の周りで傾けることにより、色及び形状の少なくとも一方が変化する請求項1乃至5の何れか1項に記載の表示体。
【請求項7】
前記透過光画像は前記マスク層によって部分的に隠蔽されることによりモアレを生じる請求項1乃至6の何れか1項に記載の表示体。
【請求項8】
前記第1主面を被覆した反射層を更に備えた請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項9】
前記反射層は金属層を含み、前記金属層のうち前記1以上の領域の前記少なくとも1つに対応した部分には、前記第1帯状部の位置で前記第1帯状部の長さ方向に沿って各々が開口した複数のスリットが設けられた請求項8に記載の表示体。
【請求項10】
前記1以上の領域の少なくとも1つにおいて、前記レリーフ構造は散乱構造である請求項1乃至9の何れか1項に記載の表示体。
【請求項11】
前記1以上の領域の少なくとも1つにおいて、前記レリーフ構造は、幅方向に配列した複数の溝からなる異方性散乱構造である請求項1乃至9の何れか1項に記載の表示体。
【請求項12】
前記1以上の領域は、前記レリーフ構造が前記異方性散乱構造であり、前記複数の溝の長さ方向が互いに異なり、前記第1及び第2帯状部の配列方向が互いに等しい2以上の領域を含んだ請求項11に記載の表示体。
【請求項13】
前記第1主面を被覆した反射層を更に備え、
前記1以上の領域は、前記第2帯状部の各々に前記レリーフ構造として散乱構造が設けられた第1及び第2散乱領域を含み、
前記第1主面は、各々が平坦な第1及び第2平坦領域を更に含み、
前記反射層は金属層を含み、
前記金属層のうち前記第1散乱領域に対応した第1部分には、各々が前記第1帯状部の位置で前記第1帯状部の長さ方向に沿って開口した複数の第1スリットが設けられ、
前記金属層のうち前記第2散乱領域に対応した第2部分には、開口が設けられていないか、又は、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットとは長さ方向が異なる複数のスリットが設けられており、
前記金属層のうち前記第1平坦領域に対応した第3部分には、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットと長さ方向が等しい複数の第2スリットが設けられ、
前記金属層のうち前記第2平坦領域に対応した第4部分には、開口が設けられていないか、又は、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットとは長さ方向が異なる複数のスリットが設けられている請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項14】
前記第1主面を被覆した反射層を更に備え、
前記1以上の領域は、前記第2帯状部の各々に前記レリーフ構造として幅方向に配列した複数の溝からなる異方性散乱構造が設けられた第1乃至第4散乱領域を含み、
前記第1主面は、各々が平坦な第1及び第2平坦領域を更に含み、
前記反射層は金属層を含み、
前記金属層のうち前記第1散乱領域に対応した第1部分には、各々が前記第1帯状部の位置で前記第1帯状部の長さ方向に沿って開口した複数の第1スリットが設けられ、
前記金属層のうち前記第2散乱領域に対応した第2部分には、開口が設けられていないか、又は、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットとは長さ方向が異なる複数のスリットが設けられており、
前記金属層のうち前記第1平坦領域に対応した第3部分には、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットと長さ方向が等しい複数の第2スリットが設けられ、
前記金属層のうち前記第2平坦領域に対応した第4部分には、開口が設けられていないか、又は、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットとは長さ方向が異なる複数のスリットが設けられており、
前記金属層のうち前記第3散乱領域に対応した第5部分には、各々が前記第1帯状部の位置で前記第1帯状部の長さ方向に沿って開口した複数の第3スリットが設けられ、
前記金属層のうち前記第4散乱領域に対応した第6部分には、開口が設けられていないか、又は、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットとは長さ方向が異なる複数のスリットが設けられており、
前記第1及び第2散乱領域は、前記複数の溝の前記幅方向が互いに等しく、
前記第3及び第4散乱領域は、前記複数の溝の前記幅方向が互いに等しく且つ前記第1及び第2散乱領域とは前記複数の溝の前記幅方向が異なっている請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
社員証、運転免許証、及び学生証などの識別(ID)カードには、背景の模様などの固定情報と、氏名、カード固有番号及び有効期限などの個別情報とが記録されている。このようなIDカードは、例えば、施設内で又はその入退場時に、個人を識別するのに使用される。IDカードには、偽造や変造がなされないように、特殊インキを使用した特殊印刷及び顔写真又はホログラムの貼着といった対策が講じられている。
【0003】
しかしながら、最近におけるカラー複写機の普及や高機能化した写真製版装置の出現に伴い、偽造や変造の技術は高度化している。それ故、偽造や変造による犯罪の危険性は高まっている。
【0004】
また、IDカードに通常の状態では判別できない不可視情報を記録しておき、そのIDカードの真偽判断の際には読み取り装置や判別具を使って不可視情報を判別する方法もある。この不可視情報は通常の状態では判別できないため、この技術は、より効果的な偽造防止対策となり得る。
【0005】
不可視情報を可視化する方法としては、例えば、IDカードに細線又は網点パターンを予め印刷しておき、このパターンと干渉するような判別フィルムやレンチキュラを重ね合わせてモアレを生じさせる方法がある。このモアレの有無や形状によって、IDカードの正当性を判別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-40190号公報
【文献】特開2002-279480号公報
【文献】国際公開第2009/139396号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、特殊な画像表示が可能な表示技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、1以上の着色部を含み、白色光で照明した場合に前記1以上の着色部に対応した透過光画像を表示する画像表示層と、第1及び第2主面を有する透明材料層を含み、前記第1主面は、幅方向へ交互に配列した第1及び第2帯状部から各々がなる1以上の領域を含んだマスク層であって、前記第2帯状部にはレリーフ構造が設けられ、前記1以上の領域の少なくとも1つに対応した部分は、前記透過光画像のうち前記第2帯状部に対応した部分を隠蔽するマスク層とを備えた表示体が提供される。
【0009】
レリーフ構造は、第2帯状部に光を照射した場合に、反射光の少なくとも一部の反射角を正反射角からずらす。レリーフ構造は、例えば、等方的な光散乱性を示す散乱構造、光散乱異方性を示す異方性散乱構造、又は、ブレーズド回折格子のように正反射角とは異なる角度で強い反射光を射出する光偏向構造である。レリーフ構造は、第2帯状部に、平坦な第1帯状部とは異なる反射特性及び透過特性を付与する。
【0010】
それ故、この表示体を、例えば、黒色面の上に、画像表示層が黒色面とマスク層との間に位置するように置き、マスク層側から表示体を白色光で照明して、正反射光が視認されない条件下で観察した場合(以下、この観察条件を第1観察条件という)、観察者は、レリーフ構造が射出する光、例えば散乱光を反射光として視認し得る。即ち、この場合、表示体は、上記1以上の領域に対応した画像を表示する。
【0011】
また、この表示体は、マスク層側又は画像表示層側から表示体を白色光で照明して透過光を観察した場合(以下、この観察条件を第2観察条件という)、透過光画像がマスク層によって部分的に隠蔽されてなる部分隠蔽画像を表示する。
【0012】
そして、表示体を、例えば、白色面の上に、マスク層が白色面と画像表示層との間に位置するように置き、画像表示層側から表示体を白色光で照明した場合(以下、この観察条件を第3観察条件という)、観察者は、上記の透過光画像に対応した反射光画像を視認し得る。即ち、この場合、表示体は、上記1以上の着色部に対応した画像を表示する。
【0013】
このように、上記の表示体は、観察条件に応じて様々な画像を表示し得る。即ち、この表示体は、特殊な画像表示が可能である。
【0014】
本発明の他の側面によると、前記第1主面は前記画像表示層から離間した上記側面に係る表示体が提供される。
【0015】
第1主面が画像表示層から離間していると、第2観察条件下で観察角度を変化させた場合に、透過光画像のうちマスク層が隠蔽する部分の位置が変化する。従って、例えば、上記表示体が第2観察条件下で表示する画像を、観察角度に応じて変化させることができる。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、前記第1主面から前記画像表示層までの距離は、50μm乃至2mmの範囲内にある上記側面に係る表示体が提供される。この距離を短くすると、表示体が折れ易くなる。この距離を長くすると、表示体が厚くなる。一般的な装置で高い印刷精度を達成するうえでは、この距離は、100μm乃至2mmの範囲内にあることが好ましく、150μm乃至1mmの範囲内にあることがより好ましい。
【0017】
また、上記の距離が長いと、第2観察条件下で観察角度を変化させた場合に、前記透過光画像のうちマスク層が隠蔽する部分の位置が大きく変化する。従って、例えば、上記表示体が第2観察条件下で表示する画像を、観察角度に応じて大きく変化させることができる。但し、上記の距離を過剰に長くすると、観察者は画像のちらつきを感じるようになる。観察者に画像のちらつきを感じさせることなく、観察角度に応じた画像の変化を大きくするうえでは、この距離は、100μm乃至800μmの範囲内にあることが好ましい。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、前記第1帯状部のピッチP1は50乃至500μmの範囲内にある上記側面の何れかに係る表示体が提供される。印刷等によって形成する着色部の寸法や第1主面から画像表示層までの距離を考慮すると、ピッチP1を上記範囲内とした構造は、例えば、上記のように第2観察条件下において画像を変化させるのに適している。
【0019】
ピッチP1は、100乃至350μmの範囲内にあることが好ましい。この構成は、安定した印刷を行ううえで有利であり、また、表示体が表示する画像にジャギーを生じ難い。ピッチP1は、150乃至300μmの範囲内にあることがより好ましい。この構成によると、特に優れた外観を達成できる。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、前記第1帯状部の幅W1と前記第2帯状部の幅W2との比W1/W2は1/4乃至2/1の範囲内にある上記側面の何れかに係る表示体が提供される。比W1/W2は、1/4乃至1/1の範囲内にあることが好ましく、1/2乃至3/4の範囲内にあることがより好ましい。
【0021】
比W1/W2を大きくすると、第1観察条件下において、レリーフ構造に由来する画像だけでなく、透過光画像に対応した反射光画像も見えるようになる可能性がある。比W1/W2を小さくすると、第1観察条件下において、透過光画像に対応した反射光画像を見え難くすることができる。
【0022】
本発明の更に他の側面によると、前記透過光画像が前記マスク層によって部分的に隠蔽されてなる部分隠蔽画像は、前記表示体を前記第1及び第2帯状部の長さ方向に平行な軸の周りで傾けることにより、色及び形状の少なくとも一方が変化する上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0023】
第2観察条件下で表示体の傾き角を変化させると、透過光画像のうちマスク層によって隠蔽される部分の位置が変化する。それ故、例えば、第2観察条件下で傾き角を第1角度とした場合に表示体が部分隠蔽画像として第1部分隠蔽画像を表示し、第2観察条件下で傾き角を第1角度とは異なる第2角度とした場合に表示体が部分隠蔽画像として第1部分隠蔽画像とは異なる第2部分隠蔽画像を表示するように、画像表示層を構成することができる。従って、更に特殊な画像表示が可能である。
【0024】
本発明の更に他の側面によると、前記透過光画像は前記マスク層によって部分的に隠蔽されることによりモアレを生じる上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0025】
画像表示層が含む1以上の着色部は、周期的に配列したパターンを含むことができる。例えば、これらパターンが、幅方向に配列した帯状パターンであり、それらの長さ方向及び幅方向がそれぞれ第1又は第2帯状部の長さ方向及び幅方向と等しく、それら帯状パターンの配列の周期が第1又は第2帯状部の配列の周期からずれている場合、透過光画像はマスク層によって部分的に隠蔽されることによりモアレを生じ得る。或いは、上記帯状パターンの配列方向が、第1又は第2帯状部の配列方向に対して傾いている場合も、透過光画像はマスク層によって部分的に隠蔽されることによりモアレを生じ得る。
【0026】
本発明の更に他の側面によると、前記第1主面を被覆した反射層を更に備えた上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
反射層を設けると、レリーフ構造による光学効果、例えば、光散乱又は光偏向の効率が高まる。それ故、例えば、第1観察条件において、レリーフ構造に由来する画像の視認性が高まる。また、反射層を設けると、第2観察条件において、マスク層が透過光画像のうち第2帯状部に対応した部分を隠蔽する効果が高まる。
【0027】
本発明の更に他の側面によると、前記反射層は金属層を含み、前記金属層のうち前記1以上の領域の前記少なくとも1つに対応した部分には、前記第1帯状部の位置で前記第1帯状部の長さ方向に沿って各々が開口した複数のスリットが設けられた上記側面に係る表示体が提供される。
【0028】
金属層を含んだ反射層を設けた場合、金属層を含んでいない反射層を設けた場合と比較して、レリーフ構造による光学効果、例えば、光散乱又は光偏向の効率を更に高めることができる。それ故、例えば、第1観察条件において、レリーフ構造に由来する画像の視認性が更に高まる。また、第2観察条件において、マスク層が透過光画像のうち第2帯状部に対応した部分を隠蔽する効果が更に高まる。
【0029】
本発明の更に他の側面によると、前記1以上の領域の少なくとも1つにおいて、前記レリーフ構造は散乱構造である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0030】
レリーフ構造が散乱構造である場合、第1観察条件において、レリーフ構造に由来する画像を広い角度範囲で明るく表示することが容易である。第1観察条件において、レリーフ構造に由来する画像を明るくすると、透過光画像に対応した反射光画像は見え難くなる。
【0031】
本発明の更に他の側面によると、前記1以上の領域の少なくとも1つにおいて、前記レリーフ構造は、幅方向に配列した複数の溝からなる異方性散乱構造である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0032】
上記の通り、異方性散乱構造は、幅方向に配列した複数の溝からなる。これら溝は、例えば、中心線間距離及び幅の少なくとも一方がランダムである。それ故、異方性散乱構造は、溝の長さ方向に対して垂直な方向においてより高い光散乱性を示し、溝の配列方向に対して垂直な方向においてより低い光散乱性を示す。従って、レリーフ構造として異方性散乱構造が設けられた領域は、例えば、第1観察条件において、表示体をその厚さ方向に平行な軸の周りで回転させることにより、明るさが変化する。
【0033】
本発明の更に他の側面によると、前記1以上の領域は、前記レリーフ構造が前記異方性散乱構造であり、前記複数の溝の長さ方向が互いに異なり、前記第1及び第2帯状部の配列方向が互いに等しい2以上の領域を含んだ上記側面に係る表示体が提供される。
【0034】
上記2以上の領域は、第1及び第2帯状部の配列方向が互いに等しいので、第2観察条件において、互いから区別することは困難である。また、上記2以上の領域は、異方性散乱構造を構成する溝の長さ方向が互いに異なるので、第1観察条件において、表示体をその厚さ方向に平行な軸の周りで回転させた場合に、明るく見える回転角が異なる。従って、例えば、第1観察条件において、表示体をその厚さ方向に平行な軸の周りで回転させることにより、レリーフ構造に由来する画像の形状が変化する。
【0035】
本発明の更に他の側面によると、前記第1主面を被覆した反射層を更に備え、前記1以上の領域は、前記第2帯状部の各々に前記レリーフ構造として散乱構造が設けられた第1及び第2散乱領域を含み、前記第1主面は、各々が平坦な第1及び第2平坦領域を更に含み、前記反射層は金属層を含み、前記金属層のうち前記第1散乱領域に対応した第1部分には、各々が前記第1帯状部の位置で前記第1帯状部の長さ方向に沿って開口した複数の第1スリットが設けられ、前記金属層のうち前記第2散乱領域に対応した第2部分には、開口が設けられていないか、又は、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットとは長さ方向が異なる複数のスリットが設けられており、前記金属層のうち前記第1平坦領域に対応した第3部分には、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットと長さ方向が等しい複数の第2スリットが設けられ、前記金属層のうち前記第2平坦領域に対応した第4部分には、開口が設けられていないか、又は、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットとは長さ方向が異なる複数のスリットが設けられている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0036】
第1観察条件においては、この表示体のうち、第1及び第2散乱領域の組み合わせに対応した部分は、散乱光を射出するため明るく見える。他方、第1及び第2平坦領域の組み合わせに対応した部分は、散乱光を射出しないため、正反射光が視認されない条件のもとでは暗く見える。
【0037】
第2観察条件においては、この表示体のうち、第1散乱領域と第1平坦領域との組み合わせに対応した部分は、第2散乱領域と第2平坦領域との組み合わせに対応した部分とは異なる色に見える。例えば、第2観察条件においては、この表示体のうち、第1散乱領域と第1平坦領域との組み合わせに対応した部分は明るく見え、第2散乱領域と第2平坦領域との組み合わせに対応した部分は暗く見える。
このように、この表示体は、より複雑な画像表示が可能である。
【0038】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記第1主面を被覆した反射層を更に備え、前記1以上の領域は、前記第2帯状部の各々に前記レリーフ構造として幅方向に配列した複数の溝からなる異方性散乱構造が設けられた第1乃至第4散乱領域を含み、前記第1主面は、各々が平坦な第1及び第2平坦領域を更に含み、前記反射層は金属層を含み、前記金属層のうち前記第1散乱領域に対応した第1部分には、各々が前記第1帯状部の位置で前記第1帯状部の長さ方向に沿って開口した複数の第1スリットが設けられ、前記金属層のうち前記第2散乱領域に対応した第2部分には、開口が設けられていないか、又は、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットとは長さ方向が異なる複数のスリットが設けられており、前記金属層のうち前記第1平坦領域に対応した第3部分には、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットと長さ方向が等しい複数の第2スリットが設けられ、前記金属層のうち前記第2平坦領域に対応した第4部分には、開口が設けられていないか、又は、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットとは長さ方向が異なる複数のスリットが設けられており、前記金属層のうち前記第3散乱領域に対応した第5部分には、各々が前記第1帯状部の位置で前記第1帯状部の長さ方向に沿って開口した複数の第3スリットが設けられ、前記金属層のうち前記第4散乱領域に対応した第6部分には、開口が設けられていないか、又は、幅方向に配列し、前記複数の第1スリットとは長さ方向が異なる複数のスリットが設けられており、前記第1及び第2散乱領域は、前記複数の溝の前記幅方向が互いに等しく、前記第3及び第4散乱領域は、前記複数の溝の前記幅方向が互いに等しく且つ前記第1及び第2散乱領域とは前記複数の溝の前記幅方向が異なっている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0039】
第1観察条件においては、例えば、第3及び第4散乱領域における溝の幅方向に対して垂直であり且つ第3及び第4散乱領域における溝の長さ方向に対して傾いた方向を観察方向とした場合、この表示体のうち、第1及び第2散乱領域の組み合わせに対応した部分は、強い散乱光を射出するため明るく見える。他方、この表示体のうち、第3及び第4散乱領域の組み合わせに対応した部分は、散乱光を射出しないか又は弱い散乱光を射出するため暗く見える。そして、第1及び第2平坦領域の組み合わせに対応した部分は、散乱光を射出しないため、正反射光が視認されない条件のもとでは暗く見える。
【0040】
また、第1観察条件においては、例えば、第1及び第2散乱領域における溝の幅方向に対して垂直であり且つ第1及び第2散乱領域における溝の長さ方向に対して傾いた方向を観察方向とした場合、この表示体のうち、第3及び第4散乱領域の組み合わせに対応した部分は、強い散乱光を射出するため明るく見える。他方、この表示体のうち、第1及び第2散乱領域の組み合わせに対応した部分は、散乱光を射出しないか又は弱い散乱光を射出するため暗く見える。そして、第1及び第2平坦領域の組み合わせに対応した部分は、散乱光を射出しないため、正反射光が視認されない条件のもとでは暗く見える。
【0041】
第2観察条件においては、この表示体のうち、第1及び第3散乱領域と第1平坦領域との組み合わせに対応した部分は、第2及び第4散乱領域と第2平坦領域との組み合わせに対応した部分とは異なる色に見える。例えば、第2観察条件においては、この表示体のうち、第1及び第3散乱領域と第1平坦領域との組み合わせに対応した部分は明るく見え、第2及び第4散乱領域と第2平坦領域との組み合わせに対応した部分は暗く見える。
このように、この表示体も、より複雑な画像表示が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の第1実施形態に係る表示体が含んでいるマスク層を概略的に示す平面図。
図2図1に示すマスク層のII-II線に沿った断面図。
図3図1に示すマスク層のIII-III線に沿った断面図。
図4図1に示すマスク層のIV-IV線に沿った断面図。
図5図1に示すマスク層のV-V線に沿った断面図。
図6】本発明の第1実施形態に係る表示体の図2に対応した断面を概略的に示す図。
図7】本発明の第1実施形態に係る表示体の図3に対応した断面を概略的に示す図。
図8】本発明の第1実施形態に係る表示体の図4に対応した断面を概略的に示す図。
図9】本発明の第1実施形態に係る表示体の図5に対応した断面を概略的に示す図。
図10】第1観察条件を概略的に示す図。
図11図6乃至図9に示す表示体が第1観察条件において表示する画像の一例を示す図。
図12】第2観察条件を概略的に示す図。
図13図6乃至図9に示す表示体が第2観察条件において表示する画像の一例を示す図。
図14】第2観察条件において表示体を傾ける様子を概略的に示す図。
図15】本発明の第2実施形態に係る表示体が含んでいるマスク層を概略的に示す平面図。
図16図15に示すマスク層の第1及び第2散乱領域において異方性散乱構造として採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
図17図15に示すマスク層の第3及び第4散乱領域において異方性散乱構造として採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
図18図12に示す状態から表示体を90°回転させた様子を概略的に示す図。
図19】本発明の第2実施形態に係る表示体が図18に示す観察条件において表示する画像の一例を示す図。
図20】マスク層に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
図21】画像保持体に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
図22図20のマスク層と図21の画像表示層とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の一例を概略的に示す平面図。
図23】マスク層に採用可能な構造の他の例を概略的に示す平面図。
図24】画像保持体に採用可能な構造の他の例を概略的に示す平面図。
図25図23のマスク層と図24の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の一例を概略的に示す平面図。
図26】マスク層に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図。
図27】画像保持体に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図。
図28図26のマスク層と図27の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の一例を概略的に示す平面図。
図29】マスク層に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図。
図30】画像保持体に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図。
図31図29のマスク層と図30の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の一例を概略的に示す平面図。
図32図29のマスク層と図30の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の他の例を概略的に示す平面図。
図33図29のマスク層と図30の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の更に他の例を概略的に示す平面図。
図34図29のマスク層と図30の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の更に他の例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る表示体が含んでいるマスク層を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示すマスク層のII-II線に沿った断面図である。図3は、図1に示すマスク層のIII-III線に沿った断面図である。図4は、図1に示すマスク層のIV-IV線に沿った断面図である。図5は、図1に示すマスク層のV-V線に沿った断面図である。
【0045】
また、図6は、本発明の第1実施形態に係る表示体の図2に対応した断面を概略的に示す図である。図7は、本発明の第1実施形態に係る表示体の図3に対応した断面を概略的に示す図である。図8は、本発明の第1実施形態に係る表示体の図4に対応した断面を概略的に示す図である。図9は、本発明の第1実施形態に係る表示体の図5に対応した断面を概略的に示す図である。
【0046】
なお、各図において、X方向は、後述する第1主面に平行な方向、即ち、表示体の表示面に平行な方向である。また、Y方向は、第1主面に平行であり且つX方向に対して垂直な方向、即ち、表示面に平行な方向であり且つX方向に対して垂直な方向である。そして、Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直な方向、即ち、表示体又はマスク層の厚さ方向である。
【0047】
図6乃至図9に示す表示体1は、マスク層10と画像保持体20と接着層30とを含んでいる。
【0048】
マスク層10は、図2乃至図9に示すように、透明材料層11と反射層12とを含んでいる。
【0049】
透明材料層11は、可視域の光に対して透明である。透明材料層11は、好ましくは、無色透明である。
【0050】
透明材料層11は、シート又はフィルムとすることができる。透明材料層11は、ポリマーシート又はポリマーフィルムとすることができる。透明材料層11は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0051】
透明材料層11の材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、及びポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリプロピレン等の光硬化性樹脂;アクリルニトリルスチレン共重合体樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びアルキド樹脂等の熱硬化性樹脂;並びに、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、及びポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0052】
透明材料層11は、図2乃至図5に示すように、第1主面S1と第2主面S2とを有している。第1主面S1には、後述するように、レリーフ構造RSが設けられている。第2主面S2は、例えば、平坦面である。
【0053】
第1主面S1は、図6乃至図9に示す画像保持体20から離間している。第1主面S1は、図1乃至図5に示すように、第1散乱領域SR1と第2散乱領域SR2と第1平坦領域FR1と第2平坦領域FR2とを含んでいる。
【0054】
第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2の各々は、図2及び図3に示すように、幅方向へ交互に配列した第1帯状部BP1及び第2帯状部BP2からなる。ここでは、第1帯状部BP1及び第2帯状部BP2の長さ方向はX方向である。また、ここでは、第1帯状部BP1及び第2帯状部BP2の幅方向はY方向である。
【0055】
第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2の各々において、第1帯状部BP1の各々は、その長さ方向に沿って幅が一定である。また、第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2の各々において、第1帯状部BP1は、幅が互いに等しく、第2帯状部BP2を間に挟んで一定のピッチで幅方向に配列している。第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2は、第1帯状部BP1の幅が等しく、第1帯状部BP1の配列のピッチも等しい。第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2の各々において、第1帯状部BP1は平坦面である。
【0056】
第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2の各々において、第2帯状部BP2の各々は、その長さ方向に沿って幅が一定である。また、第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2の各々において、第2帯状部BP2は、幅が互いに等しく、第1帯状部BP1を間に挟んで一定のピッチで幅方向に配列している。第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2は、第2帯状部BP2の幅が等しく、第2帯状部BP2の配列のピッチも等しい。
【0057】
第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2の各々において、第2帯状部BP2にはレリーフ構造RSが設けられている。ここでは、レリーフ構造RSは、等方的な光散乱を生じる散乱構造である。そのような散乱構造は、一例によれば、ランダムに配置された複数の凸部及び/又は凹部からなる。
【0058】
図1に示すように、第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2は、隣接していてもよい。また、ここでは、第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2の組み合わせは、横方向に連なった3つのハートの形状を有している。第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2の組み合わせは、連続した外形を有することができる。
【0059】
第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2は、図4及び図5に示すように、平坦面である。図1のように、第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2の組み合わせは、第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2の組み合わせと隣接していてもよい。具体的には、第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2の組み合わせは、第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2の組み合わせを取り囲んでいてもよい。
【0060】
第1散乱領域SR1及び第1平坦領域FR1の組み合わせは、正方形状を有している。つまり、第1散乱領域SR1と第1平坦領域FR1との外形は、正方形状である。第1散乱領域SR1と第1平坦領域FR1との外形は、正方形状に限らず、幾何学的形状、標識とすることができる。第2散乱領域SR2及び第2平坦領域FR2の組み合わせは、正方形状の開口を有している。第2散乱領域SR2及び第2平坦領域FR2の組み合わせは、正方形状に限らず、幾何学的形状、標識とすることができる。
【0061】
図2乃至図5に示すように、反射層12は、第1主面S1を被覆している。
反射層12は、例えば、無機誘電体層、金属層、又はそれらの組み合わせである。
【0062】
反射層12は、好ましくは金属層を含む。反射層12は、遮光性の金属層とできる。金属層の厚みは、20nm以上、70nm以下とすることができる。この厚みであれば、遮光性の金属層とすることができる。
【0063】
金属層の材料としては、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金又は銅を使用することができる。金属層は、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。言い換えれば、金属層は、物理堆積により形成できる。また、後述する第1スリットSL1及び第2スリットSL2は、エッチングによって形成することができる。
【0064】
反射層12は、図1乃至図9に示すように、第1部分P1と第2部分P2と第3部分P3と第4部分P4とを含んでいる。第1部分P1、第2部分P2、第3部分P3及び第4部分P4は、それぞれ、反射層12のうち、第1散乱領域SR1、第2散乱領域SR2、第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2に対応した部分である。
【0065】
第1部分P1は、図2及び図6に示すように、第1散乱領域SR1を被覆している。第1部分P1には、複数の第1スリットSL1が設けられている。第1スリットSL1の各々は、第1帯状部BP1の位置で、第1帯状部BP1の長さ方向に沿って開口している。
【0066】
第2部分P2は、図3及び図7に示すように、第2散乱領域SR2を被覆している。第2部分P2には、開口は設けられていない。即ち、第2部分P2は、第2散乱領域SR2の全体を被覆している。
【0067】
第3部分P3は、図4及び図8に示すように、第1平坦領域FR1を被覆している。第3部分P3には、複数の第2スリットSL2が設けられている。第2スリットSL2の長さ方向及び幅方向は、それぞれ、第1スリットSL1と長さ方向及び幅方向と等しい。
【0068】
ここでは、第2スリットSL2は、第1スリットSL1と幅が等しい。第2スリットSL2の配列のピッチは、第1スリットSL1の配列のピッチと等しい。そして、第2スリットSL2のそれらの配列方向における位置は、第1スリットSL1のそれらの配列方向における位置と等しい。
【0069】
第4部分P4は、図5及び図9に示すように、第2平坦領域FR2を被覆している。第4部分P4には、開口は設けられていない。即ち、第4部分P4は、第2平坦領域FR2の全体を被覆している。
【0070】
このマスク層10のうち、第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2に対応した部分は、光散乱性を有している。他方、マスク層10のうち、第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2に対応した部分は、光散乱性を有していない。
【0071】
また、このマスク層10のうち、第1散乱領域SR1及び第1平坦領域FR1に対応した部分は、それぞれ、第1スリットSL1及び第2スリットSL2の位置で光透過性であり、他の位置で遮光性である。他方、マスク層10のうち、第2散乱領域SR2及び第2平坦領域FR2に対応した部分は、それらの全体に亘って遮光性である。
【0072】
図6乃至図9に示すように、画像保持体20は、反射層12と向き合っている。画像保持体20とマスク層10とは、画像保持体20が第2主面と向き合うように配置してもよい。但し、画像保持体20とマスク層10とを、画像保持体20が反射層12と向き合うように配置した場合、透明材料層11は、レリーフ構造RSや反射層12を損傷から保護する保護層としての役割を果たし得る。
【0073】
画像保持体20は、透明基材21と画像表示層22と保護層23とを含んでいる。
透明基材21は、可視域の光に対して透明である。透明基材21は、好ましくは、無色透明である。
【0074】
透明基材21は、シート及びフィルムなどの軟質基材、又は、カードなどの硬質基材とすることができる。透明基材21は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0075】
透明基材21の材質は、ガラスなどの無機物、又は、ポリマーなどの有機物とすることができる。ポリマーなどの有機物としては、透明材料層11について例示した材料を使用することができる。
【0076】
画像表示層22は、透明基材21の一方の主面上に設けられている。画像表示層22は、透明基材21を間に挟んで反射層12と向き合っている。このような配置は、第1主面S1から画像表示層22までの距離を大きくするのに適している。
【0077】
画像表示層22は、1以上の着色部22Pを含んでいる。ここでは、画像表示層22は、複数の着色部22Pからなる。これら着色部22Pの各々は、仮想的な二次元格子の格子点上に位置している。
【0078】
一例によれば、1以上の着色部22Pは遮光性である。他の例によれば、1以上の着色部22Pの各々は、可視域内の或る波長域においてより高い透過率を示し、可視域内の他の波長域においてより低い透過率を示す。この場合、1以上の着色部22Pは、透過スペクトルが異なる2以上の着色部であってもよい。ここでは、一例として、着色部22Pは黒色であるとする。
【0079】
画像表示層22は、白色光で照明した場合に、1以上の着色部22Pに対応した透過光画像を表示する。この透過光画像は、着色部22Pの位置でより暗く、他の位置でより明るい画像である。上記の仮想的な二次元格子における格子点の配列と、第1スリットSL1の配列及び第2スリットSL2の配列とは、透過光画像がマスク層10によって部分的に隠蔽されることによりモアレを生じるように設計されている。
【0080】
着色部22Pを含んだ画像表示層22は、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2以上の組み合わせによって形成する。着色部22Pを含んだ画像表示層22は、微細オフセット印刷によって形成してもよい。このようにして得られる画像表示層22の着色部22Pは、一例によれば、染料及び顔料の少なくとも一方を含む。これら着色部22Pは、バインダ樹脂等の他の成分を更に含むことができる。
【0081】
画像表示層22は、透明基材21上に形成することができる。或いは、画像表示層22は、支持体上に保護層23及び画像表示層22が順次設けられた転写箔を準備し、保護層23及び画像表示層22を含む積層体を支持体から透明基材21上へ転写することにより、透明基材21上に設けることができる。
【0082】
透明基材21の上記主面には、追加の画像表示層を設けてもよい。一例によれば、追加の画像表示層は、染料及び顔料の少なくとも一方を含む。この画像表示層は、バインダ樹脂等の他の成分を更に含むことができる。このような画像表示層は、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2以上の組み合わせによって形成することができる。或いは、追加の画像表示層は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザービームで描画することにより形成することができる。或いは、追加の画像表示層は、これら方法の組み合わせを利用して形成することができる。
【0083】
保護層23は、透明基材21の上記主面と画像表示層22とを被覆している。保護層23は、画像表示層22を損傷から保護する。
【0084】
保護層23は、可視域の光に対して透明である。保護層23は、好ましくは、無色透明である。保護層23の材料は、ポリマーとすることができる。保護層23は、透明基材21及び画像表示層22の上にポリマーコート層を形成すること、又は、透明基材21及び画像表示層22にポリマーフィルム若しくはポリマーシートを貼り付けることにより設けることができる。
【0085】
接着層30は、マスク層10と画像保持体20との間に介在している。接着層30は、マスク層10と画像保持体20とを、反射層12と透明基材21とが向き合うように貼り合わせている。接着層30は、可視域の光に対して透明である。接着層30は、好ましくは、無色透明である。接着層30は、接着剤からなる単層構造を有していてもよく、接着剤からなる層とアンカーコート剤からなる層とを含んだ多層構造を有していてもよい。
【0086】
この表示体1は、以下に説明するように、第1乃至第3観察条件下で異なる画像を表示する。
【0087】
図10は、第1観察条件を概略的に示す図である。図11は、図6乃至図9に示す表示体が第1観察条件において表示する画像の一例を示す図である。
【0088】
第1観察条件では、表示体1を、図示しない黒色面の上に、画像表示層22が黒色面とマスク層10との間に位置するように置く。即ち、表示体1を、黒色面の上に、画像保持体20が黒色面とマスク層10との間に位置するように置く。この状態で、図10に示すように、光源LSが放射する白色光を照明光ILとして用いて、マスク層10側から表示体1を照明する。観察者OBは、レリーフ構造RSが射出する散乱光を反射光RLとして視認する。なお、ここでは、照明方向及び観察方向は、観察者OBが正反射光を視認しないように調整している。
【0089】
上記の条件下では、表示体1のうち、第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2に対応した部分は、散乱光を射出する。従って、これら部分は明るく見える。例えば、これら部分は白色に見える。
【0090】
なお、第1部分P1には第1スリットSL1が設けられているのに対し、第2部分P2は開口していない。但し、ここでは、第1スリットSL1を通過した照明光ILは、黒色面又は着色部22Pによって吸収される。それ故、第1スリットSL1に入射した照明光ILは、表示に寄与しない。他方、表示体1の第2散乱領域SR2に対応した部分では、反射層12の第1帯状部BP1に対応した部分が、照明光ILを正反射する。上記の通り、ここでは、照明方向及び観察方向は、観察者OBが正反射光を視認しないように調整しているので、この正反射光も表示に寄与しない。従って、図11に示すように、表示体1のうち第1散乱領域SR1に対応した部分と、表示体1のうち第2散乱領域SR2に対応した部分とは、ほぼ同じ明るさに見える。
【0091】
また、上記の条件下では、表示体1のうち、第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2に対応した部分は、正反射光を射出する。上記の通り、ここでは、照明方向及び観察方向は、観察者OBが正反射光を視認しないように調整している。従って、これら部分は暗く見える。例えば、これら部分は黒色に見える。
【0092】
なお、第4部分P4は開口していないのに対し、第3部分P3には第2スリットSL2が設けられている。但し、ここでは、第2スリットSL2を通過した照明光ILは、黒色面又は着色部22Pによって吸収される。黒色面及び着色部22Pによる照明光ILの吸収が不十分である場合には、図11に示すように、表示体1のうち第1平坦領域FR1に対応した部分は、表示体1のうち第2平坦領域FR2に対応した部分と比較して、より明るく見える。他方、黒色面及び着色部22Pによる照明光ILの吸収が十分である場合には、表示体1のうち第1平坦領域FR1に対応した部分と、表示体1のうち第2平坦領域FR2に対応した部分とは、ほぼ同じ明るさに見える。
【0093】
図12は、第2観察条件を概略的に示す図である。図13は、図6乃至図9に示す表示体が第2観察条件において表示する画像の一例を示す図である。図14は、第2観察条件において表示体を傾ける様子を概略的に示す図である。
【0094】
第2観察条件では、マスク層10側又は画像表示層22側から表示体1を白色光で照明する。例えば、図12に示すように、光源LSが放射する白色光を照明光ILとして用いて、画像保持体20側から表示体1を照明する。観察者OBは、透過光TLを観察する。
【0095】
第1部分P1及び第3部分P3には、それぞれ、第1スリットSL1及び第2スリットSL2が設けられている。それ故、表示体1のうち第1部分P1及び第3部分P3に対応した部分は、透過光画像がマスク層10によって部分的に隠蔽されてなる画像を表示する。
【0096】
また、表示体1のうち第2部分P2及び第4部分P4に対応した部分は、遮光性である。従って、上記の条件下では、これら部分は、図13に示すように暗く見える。例えば、これら部分は黒色に見える。
【0097】
このように、表示体1は、第2観察条件下で、透過光画像がマスク層10によって部分的に隠蔽されてなる部分隠蔽画像を表示する。この部分隠蔽画像には、例えば、モアレを生じ得る。図13では、モアレパターンを生じた部分隠蔽画像を、星形パターンを含んだ図形で表している。
【0098】
以上の通り、表示体1が第2観察条件下で表示する部分隠蔽画像は、表示体1が第1観察条件下で表示する画像とは異なる。そして、表示体1が第2観察条件下で表示する部分隠蔽画像は、表示体1を傾けることにより、モアレパターンの形状や位置の変化を生じる。即ち、図14に示すように、第2観察条件下で、表示体1をX方向に平行な軸の周りで僅かに回転させると、透過光画像のうちマスク層10によって隠蔽される部分の位置が変化する。その結果、モアレパターンの形状や位置が変化する。
【0099】
第3観察条件では、表示体1を、白色面の上に、マスク層10が白色面と画像表示層22との間に位置するように置く。この状態で、画像表示層22側から表示体1を照明する。ここでは、この照明光として、白色拡散光を使用することとする。そして、観察者は、反射光画像を視認する。ここでは、照明方向及び観察方向は、観察者が正反射光を視認するように調整する。
【0100】
この観察条件下では、照明光は、着色部22Pに対応した部分では着色部22Pによって吸収され、その他の部分では、白色面によって反射されるか又は反射層12によって反射若しくは散乱される。それ故、表示体1のうち着色部22Pに対応した部分は暗く見え、その他の部分は明るく見える。従って、観察者は、上記の透過光画像に対応した反射光画像を視認し得る。
【0101】
以上の通り、表示体1が第3観察条件下で表示する部分隠蔽画像は、表示体1が第1又は第2観察条件下で表示する画像とは異なる。
【0102】
このように、上記の表示体1は、第1乃至第3観察条件下で異なる画像を表示する。即ち、この表示体1は、特殊な画像表示が可能である。
【0103】
また、上記の表示体1が第2観察条件下で表示する部分隠蔽画像は、この表示体1が第1及び第3観察条件下で表示する画像とは異なっている。そして、第1及び第3観察条件が反射光を観察する条件であるのに対し、第2観察条件は透過光を観察する条件である。即ち、第2観察条件は特殊な観察条件である。従って、部分隠蔽画像は、潜像としての役割を果たし得る。
【0104】
そして、この表示体1が第2観察条件下で表示する画像は、表示体1を傾けることにより、モアレパターンの形状や位置の変化を生じ得る。
【0105】
<第2実施形態>
図15は、本発明の第2実施形態に係る表示体が含んでいるマスク層を概略的に示す平面図である。図16は、図15に示すマスク層の第1及び第2散乱領域において異方性散乱構造として採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。図17は、図15に示すマスク層の第3及び第4散乱領域において異方性散乱構造として採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
【0106】
第2実施形態に係る表示体は、以下の構成を採用したこと以外は、第1実施形態に係る表示体1と同様である。
【0107】
即ち、透明材料層11の第1主面S1は、第3散乱領域SR3と第4散乱領域SR4とを更に含んでいる。第3散乱領域SR3及び第4散乱領域SR4には、レリーフ構造が設けられている。
【0108】
第1散乱領域SR1、第2散乱領域SR2、第3散乱領域SR3及び第4散乱領域SR4に設けられているレリーフ構造は、等方的な光散乱を生じる散乱構造ではなく、光散乱異方性を示す異方性散乱構造である。
【0109】
第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2には、レリーフ構造として、図16に示す第1異方性散乱構造RS1が設けられている。第1異方性散乱構造RS1は、幅方向に配列した複数の第1溝G1からなる。ここでは、第1溝G1は、長さ方向がX方向と等しく、幅方向がY方向と等しい。これら第1溝G1は、中心線間距離及び幅の少なくとも一方がランダムである。第1異方性散乱構造RS1は、第1溝G1の長さ方向に対して垂直な方向に強い散乱光を射出し、第1溝G1の長さ方向に対して平行であり且つ第1主面S1に対して傾いた方向には散乱光を射出しないか又は弱い散乱光を射出する。
【0110】
第3散乱領域SR3及び第4散乱領域SR4には、レリーフ構造として、図17に示す第2異方性散乱構造RS2が設けられている。第2異方性散乱構造RS2は、幅方向に配列した複数の第2溝G2からなる。ここでは、第2溝G2は、長さ方向がY方向と等しく、幅方向がX方向と等しい。これら第2溝G2は、中心線間距離及び幅の少なくとも一方がランダムである。第2異方性散乱構造RS2は、第2溝G2の長さ方向に対して垂直な方向に強い散乱光を射出し、第2溝G2の長さ方向に対して平行であり且つ第1主面S1に対して傾いた方向には散乱光を射出しないか又は弱い散乱光を射出する。
【0111】
反射層12は、第1部分P1、第2部分P2、第3部分P3及び第4部分P4に加え、第5部分P5及び第6部分P6を更に含んでいる。第5部分P5及び第6部分P6は、それぞれ、反射層12のうち第3散乱領域SR3及び第4散乱領域SR4に対応した部分である。
【0112】
第5部分P5は、第3散乱領域SR3を被覆している。第5部分P5には、図示しない複数の第3スリットが設けられている。第3スリットは、第1スリットSL1及び第2スリットSL2と、長さ方向、配列方向、幅及びピッチが等しい。
【0113】
第6部分P6は、第4散乱領域SR4を被覆している。第6部分P6には、開口は設けられていない。
【0114】
この表示体は、以下に説明する画像を表示する。
図18は、図12に示す状態から表示体を90°回転させた様子を概略的に示す図である。図19は、本発明の第2実施形態に係る表示体が図18に示す観察条件において表示する画像の一例を示す図である。
【0115】
第2実施形態に係る表示体を図10に示す第1観察条件下で観察した場合、即ち、X方向に対して垂直であり且つ表示面に対して傾いた方向を観察方向とした場合、表示体1のうち第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2に対応した部分は、強い散乱光を射出するため明るく見える。他方、表示体1のうち第3散乱領域SR3及び第4散乱領域SR4に対応した部分は、散乱光を射出しないか又は弱い散乱光を射出するため暗く見える。そして、表示体1のうち第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2に対応した部分は、散乱光を射出しないため、正反射光が視認されない条件のもとでは暗く見える。従って、この観察条件下では、表示体1は、図11を参照しながら説明した画像を表示する。
【0116】
図18に示すように、図10に示す観察条件において表示体1をZ方向に平行な軸の周りで90°回転させると、表示体1のうち第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2に対応した部分は、散乱光を射出しないか又は弱い散乱光を射出するため暗く見える。他方、表示体1のうち第3散乱領域SR3及び第4散乱領域SR4に対応した部分は、強い散乱光を射出するため明るく見える。そして、表示体1のうち第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2に対応した部分は、散乱光を射出しないため、正反射光が視認されない条件のもとでは暗く見える。従って、この観察条件下では、表示体1は、例えば、図19に示す画像を表示する。
【0117】
第2実施形態に係る表示体1を第2観察条件下で観察した場合、この表示体1は、第1実施形態に係る表示体1が第2観察条件下で観察した場合に表示するのと同様の画像を表示する。
【0118】
そして、第2実施形態に係る表示体1を第3観察条件下で観察した場合、この表示体1は、第1実施形態に係る表示体1が第3観察条件下で観察した場合に表示するのと同様の画像を表示する。
【0119】
このように、第2実施形態に係る表示体1も、第1乃至第3観察条件下で異なる画像を表示する。即ち、この表示体1は、特殊な画像表示が可能である。また、第2実施形態に係る表示体1が第2観察条件下で表示する部分隠蔽画像も、潜像としての役割を果たし得る。そして、第2実施形態に係る表示体1が第2観察条件下で表示する画像も、表示体1を傾けることにより、モアレパターンの形状や位置の変化を生じ得る。
【0120】
更に、第2実施形態に係る表示体1が第1観察条件下で表示する画像は、表示体1をその厚さ方向に平行な軸の周りで回転させることにより変化する。
即ち、この表示体1は、特殊且つ複雑な画像表示が可能である。
【0121】
<第1変形例>
第1変形例について、図20乃至図22を参照しながら説明する。
【0122】
図20は、マスク層に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。図21は、画像保持体に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。図22は、図20のマスク層と図21の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の一例を概略的に示す平面図である。
【0123】
第1変形例に係る表示体1は、マスク層10及び画像保持体20にそれぞれ図20及び図21に示す構造を採用すること以外は、第1実施形態に係る表示体1と同様である。
【0124】
図20のマスク層10は、第1主面S1が第2散乱領域SR2、第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2を含んでおらず、反射層12が第2部分P2、第3部分P3及び第4部分P4を含んでいないこと以外は、第1実施形態に係る表示体1のマスク層10と同様である。
【0125】
即ち、図20のマスク層10では、X方向に各々が伸びた第1帯状部BP1及び第2帯状部BP2が、第1主面S1の全体に亘ってY方向へ交互に配列している。第2帯状部BP2には、レリーフ構造RSとして、等方的な光散乱を生じる散乱構造が設けられている。
【0126】
金属層である反射層12は、第1主面S1を被覆している。反射層12は、第1帯状部BP1の位置で開口している。即ち、反射層12には、第1帯状部BP1の位置に、X方向に各々が伸びた第1スリットSL1が設けられている。
【0127】
図21の画像保持体20は、画像表示層22が第1画像表示層22Aと第2画像表示層22Bと第3画像表示層22Cとを含んでいること以外は、第1実施形態に係る表示体1の画像保持体20と同様である。
【0128】
第1画像表示層22Aは、複数の着色部22Pからなる。各着色部22Pは、湾曲した線状である。これら着色部22Pは、幅がほぼ等しい。着色部22Pは、略一定の距離を隔てて幅方向に配列している。ここでは、着色部22Pは黒色であるとする。
【0129】
第2画像表示層22B及び第3画像表示層22Cの各々は、ベタ印刷層である。ここでは、第2画像表示層22B及び第3画像表示層22Cは、可視光透過性を有し、可視域における透過スペクトルが異なる層であるとする。
【0130】
第1変形例に係る表示体1は、第1観察条件下では、その全体が明るく見える。例えば、全体が白色に見える。
【0131】
第2観察条件下では、この表示体1は、図22に示す部分隠蔽画像を表示する。この部分隠蔽画像では、第1画像表示層22Aに対応した位置にモアレを生じている。図14を参照しながら説明したように、第2観察条件において表示体1を傾けると、モアレパターンの形状や位置の変化を生じ得る。
【0132】
第3観察条件下では、この表示体1は、図21に示す第1画像表示層22A、第2画像表示層22B及び第3画像表示層22Cに対応した画像を表示する。
【0133】
このように、第1変形例に係る表示体1も、第1乃至第3観察条件下で異なる画像を表示する。即ち、この表示体1は、特殊な画像表示が可能である。この表示体1が第2観察条件下で表示する部分隠蔽画像も、潜像としての役割を果たし得る。そして、この表示体1が第2観察条件下で表示する画像も、表示体1を傾けることにより、モアレパターンの形状や位置の変化を生じ得る。
【0134】
また、上記の通り、この表示体1が第1画像表示層22Aの位置に表示する画像は、第2観察条件下ではモアレを含み、第3観察条件下ではモアレを含まない。これに対し、表示体1が第2画像表示層22B及び第3画像表示層22Cの位置に表示する画像は、第2観察条件下と第3観察条件下とでほぼ等しい。即ち、第2画像表示層22B及び第3画像表示層22Cは、第1画像表示層22Aの位置において生じる上記の画像の変化を際立たせる。
【0135】
<第2変形例>
第2変形例について、図23乃至図25を参照しながら説明する。
【0136】
図23は、マスク層に採用可能な構造の他の例を概略的に示す平面図である。図24は、画像保持体に採用可能な構造の他の例を概略的に示す平面図である。図25は、図23のマスク層と図24の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の一例を概略的に示す平面図である。
【0137】
第2変形例に係る表示体1は、マスク層10及び画像保持体20にそれぞれ図23及び図24に示す構造を採用すること以外は、第1実施形態に係る表示体1と同様である。
【0138】
図23のマスク層10は、第1主面S1が第2散乱領域SR2、第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2を含んでおらず、反射層12が第2部分P2、第3部分P3及び第4部分P4を含んでいないこと以外は、第1実施形態に係る表示体1のマスク層10と同様である。
【0139】
即ち、図23のマスク層10では、X方向に各々が伸びた第1帯状部BP1及び第2帯状部BP2が、第1主面S1の全体に亘ってY方向へ交互に配列している。第2帯状部BP2には、レリーフ構造RSとして、等方的な光散乱を生じる散乱構造が設けられている。
【0140】
金属層である反射層12は、第1主面S1を被覆している。反射層12は、第1帯状部BP1の位置で開口している。即ち、反射層12には、第1帯状部BP1の位置に、X方向に各々が伸びたスリットSLが設けられている。スリットSLの幅及びピッチは互いに等しい。
【0141】
図24の画像保持体20は、第1表示領域PR1と第2表示領域PR2とを含んでいる。第1表示領域PR1及び第2表示領域PR2の各々は、複数のセルCを含んでいる。これらセルCは、スリットSLの長さ方向と幅方向とに配列している。即ち、セルCは、仮想的な二次元格子、ここでは正方格子又は矩形格子を構成している。スリットSLの幅方向におけるセルCの配列のピッチは、スリットSLの配列のピッチと等しい。
【0142】
着色部22Pは、セルC内に配置されている。即ち、着色部22Pの各々は、仮想的な二次元格子の格子点上に位置している。
【0143】
より詳細には、第1表示領域PR1では、着色部22Pは、X方向に並んだセルCから各々がなる行のうち、2n-1行目(nは自然数)のセルC内には配置されていない。第1表示領域PR1では、着色部22Pの各々は、X方向に並んだセルCから各々がなる行のうち、2n行目のセルC内に位置している。
【0144】
他方、第2表示領域PR2では、着色部22Pは、X方向に並んだセルCから各々がなる行のうち、2n行目のセルC内には配置されていない。第2表示領域PR2では、着色部22Pの各々は、X方向に並んだセルCから各々がなる行のうち、2n-1行目のセルC内に位置している。
【0145】
以上の点を除けば、図21の画像保持体20は、第1実施形態に係る表示体1の画像保持体20と同様である。
【0146】
第1表示領域PR1内の着色部22Pは、色が互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。同様に、第2表示領域PR2内の着色部22Pは、色が互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。また、第1表示領域PR1内の着色部22Pと、第2表示領域PR2内の着色部22Pとは、色が互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。ここでは、一例として、第1表示領域PR1及び第2表示領域PR2内の着色部22Pは黒色であるとする。
【0147】
また、第1表示領域PR1では、着色部22Pは、2n行目のセルCの全てに配置されていてもよく、2n行目のセルCの一部にのみ配置されていてもよい。他方、第2表示領域PR2では、着色部22Pは、2n-1行目のセルCの全てに配置されていてもよく、2n-1行目のセルCの一部にのみ配置されていてもよい。ここでは、一例として、着色部22Pは、第1表示領域PR1では2n行目のセルCの全てに配置されており、第2表示領域PR2では2n-1行目のセルCの全てに配置されているとする。
【0148】
第2変形例に係る表示体1は、第1観察条件下では、第1表示領域PR1に対応した部分及び第2表示領域PR2に対応した部分の双方が明るく見える。例えば、第1表示領域PR1に対応した部分及び第2表示領域PR2に対応した部分の双方が白色に見える。
【0149】
第2観察条件下では、例えば、マスク層10は、図25に示すように、第1表示領域PR1内の着色部22Pを隠蔽することなしに、第2表示領域PR2内の着色部22Pを隠蔽する。その結果、第1表示領域PR1に対応した部分が暗く、第2表示領域PR2に対応した部分が明るい部分隠蔽画像が表示される。例えば、表示体1のうち、第1表示領域PR1に対応した部分は黒色に見え、第2表示領域PR2に対応した部分は白色に見える。
【0150】
そして、図14を参照しながら説明したように、第2観察条件において表示体1を傾けると、第1表示領域PR1内の着色部22Pのうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積が増加し、第2表示領域PR2内の着色部22Pのうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積が減少する。その結果、例えば、第1表示領域PR1に対応した部分が明るく、第2表示領域PR2に対応した部分が暗い部分隠蔽画像が表示される。例えば、表示体1のうち、第1表示領域PR1に対応した部分は白色に見え、第2表示領域PR2に対応した部分は黒色に見える。
【0151】
第3観察条件下では、この表示体1は、第1表示領域PR1に対応した部分及び第2表示領域PR2に対応した部分の双方が暗く見える。例えば、第1表示領域PR1に対応した部分及び第2表示領域PR2に対応した部分の双方が黒色に見える。
【0152】
このように、第2変形例に係る表示体1も、第1乃至第3観察条件下で異なる画像を表示する。即ち、この表示体1は、特殊な画像表示が可能である。また、この表示体1が第2観察条件下で表示する部分隠蔽画像も、潜像としての役割を果たし得る。
【0153】
更に、上記の通り、この表示体1が第2観察条件下で表示する部分隠蔽画像は、表示体1を傾けることにより、第1表示領域PR1に対応した部分及び第2表示領域PR2に対応した部分の各々において独特な色の変化を生じる。
【0154】
<第3変形例>
第3変形例について、図26乃至図28を参照しながら説明する。
【0155】
図26は、マスク層に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図である。図27は、画像保持体に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図である。図28は、図26のマスク層と図27の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の一例を概略的に示す平面図である。
【0156】
第3変形例に係る表示体1は、マスク層10及び画像保持体20にそれぞれ図26及び図27に示す構造を採用すること以外は、第1実施形態に係る表示体1と同様である。
【0157】
図26のマスク層10は、第1主面S1が第2散乱領域SR2、第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2を含んでおらず、反射層12が第2部分P2、第3部分P3及び第4部分P4を含んでいないこと以外は、第1実施形態に係る表示体1のマスク層10とほぼ同様である。
【0158】
即ち、図26のマスク層10では、X方向に各々が伸びた第1帯状部BP1及び第2帯状部BP2が、第1主面S1の全体に亘ってY方向へ交互に配列している。第2帯状部BP2の幅は、第1帯状部BP1の2倍である。第2帯状部BP2には、レリーフ構造RSとして、等方的な光散乱を生じる散乱構造が設けられている。
【0159】
金属層である反射層12は、第1主面S1を被覆している。反射層12は、第1帯状部BP1の位置で開口している。即ち、反射層12には、第1帯状部BP1の位置に、X方向に各々が伸びたスリットSLが設けられている。スリットSLのピッチは、スリットSLの幅の3倍である。
【0160】
図27の画像保持体20は、第1表示領域PR1と第2表示領域PR2とを含んでいる。第1表示領域PR1及び第2表示領域PR2の各々は、複数のセルCを含んでいる。これらセルCは、スリットSLの長さ方向と幅方向とに配列している。即ち、セルCは、仮想的な二次元格子、ここでは正方格子又は矩形格子を構成している。スリットSLの幅方向におけるセルCの配列のピッチは、スリットSLの配列のピッチの1/3である。
【0161】
画像表示層22は、着色部22Pとして、第1着色部22P1、第2着色部22P2及び第3着色部22P3を含んでいる。第1着色部22P1、第2着色部22P2及び第3着色部22P3は、可視光透過性を有し、可視域における透過スペクトルが異なる。ここでは、一例として、白色光で照明した場合に、第1着色部22P1はシアン色光を透過させ、第2着色部22P2はイエロー色光を透過させ、第3着色部22P3はマゼンタ色光を透過させるとする。
【0162】
第1着色部22P1、第2着色部22P2及び第3着色部22P3は、セルC内に配置されている。即ち、第1着色部22P1、第2着色部22P2及び第3着色部22P3の各々は、仮想的な二次元格子の格子点上に位置している。
【0163】
より詳細には、第1表示領域PR1では、X方向に並んだセルCから各々がなる行のうち、3n-1行目(nは自然数)のセルCは第1着色部22P1用のセルであり、3n行目のセルCは第2着色部22P2用のセルであり、3n+1行目のセルCは第3着色部22P3用のセルである。即ち、第1表示領域PR1では、第1着色部22P1の各々は、X方向に並んだセルCから各々がなる行のうち、3n行目及び3n+1行目のセルC内には位置しておらず、3n-1行目のセルC内に位置している。また、第1表示領域PR1では、第2着色部22P2の各々は、X方向に並んだセルCから各々がなる行のうち、3n-1行目及び3n+1行目のセルC内には位置しておらず、3n行目のセルC内に位置している。そして、第1表示領域PR1では、第3着色部22P3の各々は、X方向に並んだセルCから各々がなる行のうち、3n-1行目及び3n行目のセルC内には位置しておらず、3n+1行目のセルC内に位置している。
【0164】
他方、第2表示領域PR2では、X方向に並んだセルCから各々がなる行のうち、3n-2行目のセルCは第1着色部22P1用のセルであり、3n-1行目のセルCは第2着色部22P2用のセルであり、3n行目のセルCは第3着色部22P3用のセルである。即ち、第2表示領域PR2では、第1着色部22P1の各々は、X方向に並んだセルCから各々がなる行のうち、3n-1行目及び3n行目のセルC内には位置しておらず、3n-2行目のセルC内に位置している。また、第2表示領域PR2では、第2着色部22P2の各々は、X方向に並んだセルCから各々がなる行のうち、3n-2行目及び3n行目のセルC内には位置しておらず、3n-1行目のセルC内に位置している。そして、第2表示領域PR2では、第3着色部22P3の各々は、X方向に並んだセルCから各々がなる行のうち、3n-2行目及び3n-1行目のセルC内には位置しておらず、3n行目のセルC内に位置している。
【0165】
以上の点を除けば、図21の画像保持体20は、第1実施形態に係る表示体1の画像保持体20と同様である。
【0166】
第1表示領域PR1では、第1着色部22P1は、3n-1行目のセルCの全てに配置されていてもよく、3n-1行目のセルCの一部にのみ配置されていてもよい。第1表示領域PR1では、第2着色部22P2は、3n行目のセルCの全てに配置されていてもよく、3n行目のセルCの一部にのみ配置されていてもよい。そして、第1表示領域PR1では、第3着色部22P3は、3n+1行目のセルCの全てに配置されていてもよく、3n+1行目のセルCの一部にのみ配置されていてもよい。
【0167】
同様に、第2表示領域PR2では、第1着色部22P1は、3n-2行目のセルCの全てに配置されていてもよく、3n-2行目のセルCの一部にのみ配置されていてもよい。第2表示領域PR2では、第2着色部22P2は、3n-1行目のセルCの全てに配置されていてもよく、3n-1行目のセルCの一部にのみ配置されていてもよい。そして、第2表示領域PR2では、第3着色部22P3は、3n行目のセルCの全てに配置されていてもよく、3n行目のセルCの一部にのみ配置されていてもよい。
【0168】
ここでは、一例として、第1着色部22P1、第2着色部22P2及び第3着色部22P3は、以下のように配置されていることとする。即ち、第1着色部22P1は、第1表示領域PR1では3n-1行目のセルCの全てに配置されており、第2表示領域PR2では3n-2行目のセルCの全てに配置されているとする。第2着色部22P2は、第1表示領域PR1では3n行目のセルCの全てに配置されており、第2表示領域PR2では3n-1行目のセルCの全てに配置されているとする。第3着色部22P3は、第1表示領域PR1では3n+1行目のセルCの全てに配置されており、第2表示領域PR2では3n行目のセルCの全てに配置されているとする。
【0169】
第3変形例に係る表示体1は、第1観察条件下では、第1表示領域PR1に対応した部分及び第2表示領域PR2に対応した部分の双方が明るく見える。例えば、第1表示領域PR1に対応した部分及び第2表示領域PR2に対応した部分の双方が白色に見える。
【0170】
なお、上記の通り、スリットSLのピッチは、スリットSLの幅の3倍である。即ち、反射層12のうち隣り合ったスリットSLによって挟まれた部分の幅は、スリットSLの幅よりも大きい。それ故、レリーフ構造RSの面積を大きくすることができる。第1観察条件下で表示される画像のうちレリーフ構造RSに対応した部分を、より明るくすることができる。
【0171】
第2観察条件下では、例えば、マスク層10は、図25に示すように、第1表示領域PR1内の第1着色部22P1及び第2表示領域PR2内の第2着色部22P2を隠蔽することなしに、第1表示領域PR1内の第2着色部22P2及び第3着色部22P3並びに第2表示領域PR2内の第1着色部22P1及び第3着色部22P3を隠蔽する。その結果、第1表示領域PR1に対応した部分と、第2表示領域PR2に対応した部分とで色が異なる部分隠蔽画像が表示される。例えば、表示体1のうち、第1表示領域PR1に対応した部分はシアン色に見え、第2表示領域PR2に対応した部分はイエロー色に見える。
【0172】
図14を参照しながら説明したように、第2観察条件において表示体1を傾けると、例えば、第1表示領域PR1内の第2着色部22P2のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積と、第2表示領域PR2内の第3着色部22P3のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積とが増加し、第1表示領域PR1内の第1着色部22P1のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積と、第2表示領域PR2内の第2着色部22P2のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積とが減少する。その結果、例えば、第1表示領域PR1に対応した部分はイエロー色に見え、第2表示領域PR2に対応した部分はマゼンタ色に見える。
【0173】
第2観察条件において表示体1を更に傾けると、例えば、第1表示領域PR1内の第3着色部22P3のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積と、第2表示領域PR2内の第1着色部22P1のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積とが増加し、第1表示領域PR1内の第2着色部22P2のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積と、第2表示領域PR2内の第1着色部22P1のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積とが減少する。その結果、例えば、第1表示領域PR1に対応した部分はマゼンタ色に見え、第2表示領域PR2に対応した部分はシアン色に見える。
【0174】
第3観察条件下では、この表示体1は、第1表示領域PR1に対応した部分及び第2表示領域PR2に対応した部分は同じ色に見える。例えば、シアン、イエロー及びマゼンタ色の減法混色を生じて、第1表示領域PR1に対応した部分及び第2表示領域PR2に対応した部分の双方が黒色に見える。
【0175】
このように、第3変形例に係る表示体1も、第1乃至第3観察条件下で異なる画像を表示する。即ち、この表示体1は、特殊な画像表示が可能である。また、この表示体1が第2観察条件下で表示する部分隠蔽画像も、潜像としての役割を果たし得る。
【0176】
更に、上記の通り、この表示体1が第2観察条件下で表示する部分隠蔽画像は、表示体1を傾けることにより、第1表示領域PR1に対応した部分及び第2表示領域PR2に対応した部分の各々において独特な色の変化を生じる。
【0177】
<第4変形例>
第3変形例では、スリットSLの幅方向におけるセルCの配列のピッチを、スリットSLの配列のピッチの1/3としている。即ち、第3変形例では、スリットSLの配列のピッチを、スリットSLの幅方向におけるセルCの配列のピッチの3倍としている。第4変形例は、スリットSLの配列のピッチを、スリットSLの幅方向におけるセルCの配列のピッチの3倍からずらすこと以外は、第3変形例と同様である。
【0178】
例えば、スリットSLの配列のピッチを、スリットSLの幅方向におけるセルCの配列のピッチの3m倍(mは自然数)からずらした場合、第1表示領域PR1及び第2表示領域PR2の各々について、スリットSLに対する、第1着色部22P1、第2着色部22P2及び第3着色部22P3の相対的な位置は、スリットSLの配列方向に変化する。それ故、この構造を採用した場合、第2観察条件において表示される部分隠蔽画像は、第1表示領域PR1に対応した部分と第2表示領域PR2に対応した部分との各々において、色がスリットSLの配列方向に変化するものとなる。即ち、上記の構造を採用した場合、第2観察条件において表示される部分隠蔽画像は、第1表示領域PR1に対応した部分と第2表示領域PR2に対応した部分との各々に、レインボー縞が出現する。
【0179】
スリットSLの配列のピッチPP1と、スリットSLの幅方向におけるセルCの配列のピッチPP2とは、以下の不等式(1)又は(2)に示す関係を満足することが好ましい。
【0180】
0%<(PP1-3×PP2)/(3×PP2)<25% …(1)
0%<(3×PP2-PP1)/(3×PP2)<25% …(2)
ピッチPP2の3倍からのピッチPP1のズレ量を大きくすると、レインボー縞における縞のピッチが小さくなる。それ故、第2観察条件において表示される部分隠蔽画像を観察した場合に、第1表示領域PR1に対応した部分と第2表示領域PR2に対応した部分とを互いから区別することが困難になる。
【0181】
<第5変形例>
第5変形例について、図29乃至図34を参照しながら説明する。
【0182】
図29は、マスク層に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図である。図30は、画像保持体に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図である。図31は、図29のマスク層と図30の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の一例を概略的に示す平面図である。図32は、図29のマスク層と図30の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の他の例を概略的に示す平面図である。図33は、図29のマスク層と図30の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の更に他の例を概略的に示す平面図である。図34は、図29のマスク層と図30の画像保持体とを備えた表示体が第2観察条件下で画像を表示している様子の更に他の例を概略的に示す平面図である。
【0183】
第5変形例に係る表示体1は、マスク層10及び画像保持体20にそれぞれ図29及び図30に示す構造を採用すること以外は、第1実施形態に係る表示体1と同様である。
【0184】
図29のマスク層10は、第1主面S1が第2散乱領域SR2、第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2を含んでおらず、反射層12が第2部分P2、第3部分P3及び第4部分P4を含んでいないこと以外は、第1実施形態に係る表示体1のマスク層10とほぼ同様である。
【0185】
即ち、図29のマスク層10では、X方向に各々が伸びた第1帯状部BP1及び第2帯状部BP2が、第1主面S1の全体に亘ってY方向へ交互に配列している。第2帯状部BP2の幅は、第1帯状部BP1の3倍である。第2帯状部BP2には、レリーフ構造RSとして、等方的な光散乱を生じる散乱構造が設けられている。
【0186】
金属層である反射層12は、第1主面S1を被覆している。反射層12は、第1帯状部BP1の位置で開口している。即ち、反射層12には、第1帯状部BP1の位置に、X方向に各々が伸びたスリットSLが設けられている。スリットSLのピッチは、スリットSLの幅の4倍である。
【0187】
図30の画像保持体20は、第1表示領域PR1と第2表示領域PR2とを含んでいる。第1表示領域PR1及び第2表示領域PR2の各々は、複数のセルCを含んでいる。これらセルCは、スリットSLの長さ方向と幅方向とに配列している。即ち、セルCは、仮想的な二次元格子、ここでは正方格子又は矩形格子を構成している。スリットSLの幅方向におけるセルCの配列のピッチは、スリットSLの配列のピッチの1/4である。
【0188】
セルCは、第1サブ領域SBR1、第2サブ領域SBR2、第3サブ領域SBR3及び第4サブ領域SBR4から各々がなる複数の帯状領域BRを構成している。帯状領域BRは、スリットSLの長さ方向に各々が伸びた形状を有しており、スリットSLの幅方向に配列している。
【0189】
各帯状領域BRにおいて、第1サブ領域SBR1、第2サブ領域SBR2、第3サブ領域SBR3及び第4サブ領域SBR4は、スリットSLの長さ方向に各々が伸びた形状を有している。各帯状領域BRにおいて、第1サブ領域SBR1、第2サブ領域SBR2、第3サブ領域SBR3及び第4サブ領域SBR4は、スリットSLの幅方向へ、この順に配列している。第1サブ領域SBR1、第2サブ領域SBR2、第3サブ領域SBR3及び第4サブ領域SBR4の各々は、スリットSLの長さ方向へ一列に配列したセルCからなる。
【0190】
着色部22Pは、セルC内に配置されている。即ち、着色部22Pの各々は、仮想的な二次元格子の格子点上に位置している。ここでは、一例として、着色部22Pは黒色であるとする。
【0191】
各帯状領域BRにおいて、第1サブ領域SBR1を構成している複数のセルCの一部には着色部22Pが配置されており、残りのセルCには着色部22Pは配置されていない。1以上の帯状領域BRは、複数のセルCの何れにも着色部22Pが配置されていない第1サブ領域SBR1を含んでいてもよく、複数のセルCの全てに着色部22Pが配置された第1サブ領域SBR1を含んでいてもよい。
【0192】
各帯状領域BRにおいて、第2サブ領域SBR2内での着色部22Pの配置は、その帯状領域BRが含んでいる第1サブ領域SBR1内での着色部22Pの配置とは僅かに異なっている。1以上の帯状領域BRでは、第2サブ領域SBR2内での着色部22Pの配置は、その帯状領域BRが含んでいる第1サブ領域SBR1内での着色部22Pの配置と等しくてもよい。
【0193】
各帯状領域BRにおいて、第3サブ領域SBR3内での着色部22Pの配置は、その帯状領域BRが含んでいる第2サブ領域SBR2内での着色部22Pの配置とは僅かに異なっている。1以上の帯状領域BRでは、第3サブ領域SBR3内での着色部22Pの配置は、その帯状領域BRが含んでいる第2サブ領域SBR2内での着色部22Pの配置と等しくてもよい。
【0194】
各帯状領域BRにおいて、第4サブ領域SBR4内での着色部22Pの配置は、その帯状領域BRが含んでいる第3サブ領域SBR3内での着色部22Pの配置とは僅かに異なっている。1以上の帯状領域BRでは、第4サブ領域SBR4内での着色部22Pの配置は、その帯状領域BRが含んでいる第3サブ領域SBR3内での着色部22Pの配置と等しくてもよい。
【0195】
以上の点を除けば、図21の画像保持体20は、第1実施形態に係る表示体1の画像保持体20と同様である。
【0196】
第5変形例に係る表示体1は、第1観察条件下では、その全体が明るく見える。例えば、表示体1の全体が白色に見える。
【0197】
第2観察条件下では、例えば、マスク層10は、図31に示すように、各帯状領域BRの第1サブ領域SBR1を隠蔽することなしに、各帯状領域BRの第2サブ領域SBR2、第3サブ領域SBR3及び第4サブ領域SBR4を隠蔽する。その結果、第1サブ領域SBR1何に配置された着色部22Pの配列に対応した黒色パターンを含む第1部分隠蔽画像が表示される。
【0198】
図14を参照しながら説明したように、第2観察条件において表示体1を傾けると、各帯状領域BR内の第1サブ領域SBR1のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積が増加し、各帯状領域BR内の第2サブ領域SBR2のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積が減少する。例えば、図32に示すように、マスク層10は、各帯状領域BRの第2サブ領域SBR2を隠蔽することなしに、各帯状領域BRの第1サブ領域SBR1、第3サブ領域SBR3及び第4サブ領域SBR4を隠蔽する。その結果、第2サブ領域SBR2何に配置された着色部22Pの配列に対応した黒色パターンを含む第2部分隠蔽画像が表示される。
【0199】
第2観察条件において表示体1を更に傾けると、各帯状領域BR内の第2サブ領域SBR2のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積が増加し、各帯状領域BR内の第3サブ領域SBR3のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積が減少する。例えば、図33に示すように、マスク層10は、各帯状領域BRの第3サブ領域SBR3を隠蔽することなしに、各帯状領域BRの第1サブ領域SBR1、第2サブ領域SBR2及び第4サブ領域SBR4を隠蔽する。その結果、第3サブ領域SBR3何に配置された着色部22Pの配列に対応した黒色パターンを含む第3部分隠蔽画像が表示される。
【0200】
第2観察条件において表示体1を更に傾けると、各帯状領域BR内の第3サブ領域SBR3のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積が増加し、各帯状領域BR内の第4サブ領域SBR4のうちマスク層10によって隠蔽される部分の面積が減少する。例えば、図34に示すように、マスク層10は、各帯状領域BRの第4サブ領域SBR4を隠蔽することなしに、各帯状領域BRの第1サブ領域SBR1、第2サブ領域SBR2及び第3サブ領域SBR3を隠蔽する。その結果、第4サブ領域SBR4何に配置された着色部22Pの配列に対応した黒色パターンを含む第4部分隠蔽画像が表示される。
【0201】
上記の通り、各帯状領域BRの第2サブ領域SBR2内での着色部22Pの配置は、その帯状領域BRが含んでいる第1サブ領域SBR1内での着色部22Pの配置とは僅かに異なっているか、又は、場合によっては等しい。また、各帯状領域BRの第3サブ領域SBR3内での着色部22Pの配置は、その帯状領域BRが含んでいる第2サブ領域SBR2内での着色部22Pの配置とは僅かに異なっているか、又は、場合によっては等しい。そして、各帯状領域BRの第4サブ領域SBR4内での着色部22Pの配置は、その帯状領域BRが含んでいる第3サブ領域SBR3内での着色部22Pの配置とは僅かに異なっているか、又は、場合によっては等しい。それ故、第2観察条件下で表示体1の傾き角を変化させることによって順次表示される第1乃至第4部分隠蔽画像を観察する観察者には、分隠蔽画像において黒色パターンの位置及び/又は形状が連続的に変化するように見える。
【0202】
第3観察条件下では、この表示体1は、画像表示層22に対応した部分は暗く見え、他の部分は明るく見える。例えば、画像表示層22に対応した部分は黒色に見え、他の部分は白色に見える。
【0203】
このように、第5変形例に係る表示体1も、第1乃至第3観察条件下で異なる画像を表示する。即ち、この表示体1は、特殊な画像表示が可能である。また、この表示体1が第2観察条件下で表示する部分隠蔽画像も、潜像としての役割を果たし得る。
【0204】
更に、上記の通り、この表示体1が第2観察条件下で表示する部分隠蔽画像は、表示体1を傾けることにより、パターン位置及び/又は形状の変化を生じる。即ち、この表示体1は、例えば、第2観察条件下で動画を表示することが可能である。
【0205】
<他の変形例>
上記の実施形態及び変形例において説明した技術の2以上は、互いに組み合わせることができる。
【0206】
例えば、第3乃至第5変形例では、反射層12のうち隣り合ったスリットSLによって挟まれた部分の幅を、スリットSLの幅よりも大きくしている。即ち、第3乃至第5変形例では、第2帯状部BP2の幅を第1帯状部BP1の幅よりも大きくしている。この構造は、第1及び第2実施形態並びに第1及び第2変形例においても採用可能である。
【0207】
上記の通り、反射層12のうち隣り合ったスリットSLによって挟まれた部分の幅を、スリットSLの幅よりも大きくすると、レリーフ構造の面積を大きくすることができる。それ故、第1観察条件下で表示される画像のうちレリーフ構造に対応した部分を、より明るくすることができる。
【0208】
スリットSLの幅に対する反射層12のうち隣り合ったスリットSLによって挟まれた部分の幅の比、即ち、第1帯状部BP1の幅に対する第2帯状部BP2の幅の比は、6以下であることが好ましい。この比を大きくすると、第2観察条件下での部分隠蔽画像の視認性が低下する。
【0209】
また、上記の実施形態及び変形例において説明した構造等には、様々な変更が可能である。
【0210】
例えば、第1実施形態に係る表示体1では、反射層12の第2部分P2及び第4部分P4に、第1スリットSL1及び第2スリットSL2とは長さ方向が異なり、第1スリットSL1及び第2スリットSL2と幅及びピッチが等しいスリットを設けてもよい。そのようなスリットを第2部分P2及び第4部分P4に設け、第2部分P2のうちスリットに挟まれた部分の全体にレリーフ構造RSを設けると、第2部分P2及び第4部分P4は、それぞれ、第1部分P1及び第3部分P3とほぼ等しい反射特性を有することになる。それ故、第1観察条件において、正反射光が視認されるように表示体1を傾けた場合であっても、第2部分P2に対応した部分及び第4部分P4に対応した部分は、それぞれ、第1部分P1に対応した部分及び第3部分P3に対応した部分とほぼ同じ明るさに見える。また、第2部分P2及び第4部分P4に設けるスリットは、第1スリットSL1及び第2スリットSL2とは長さ方向が異なっているので、第2観察条件において表示される部分隠蔽画像のうち、第2部分P2及び第4部分P4に対応した部分は、第1部分P1及び第3部分P3に対応した部分から区別可能である。
【0211】
同様に、第2実施形態に係る表示体1では、反射層12の第2部分P2、第4部分P4及び第6部分に、第1スリットSL1及び第2スリットSL2とは長さ方向が異なり、第1スリットSL1及び第2スリットSL2と幅及びピッチが等しいスリットを設けてもよい。そのようなスリットを第2部分P2、第4部分P4及び第6部分P6に設け、第2部分P2のうちスリットに挟まれた部分の全体に第1異方性散乱構造RS1を設け、第6部分P6のうちスリットに挟まれた部分の全体に第2異方性散乱構造RS2を設けると、第2部分P2、第4部分P4及び第6部分P6は、それぞれ、第1部分P1、第3部分P3及び第5部分P5とほぼ等しい反射特性を有することになる。それ故、第1観察条件において、正反射光が視認されるように表示体1を傾けた場合であっても、第2部分P2に対応した部分、第4部分P4に対応した部分及び第6部分P6に対応した部分は、それぞれ、第1部分P1に対応した部分、第3部分P3に対応した部分及び第5部分P5に対応した部分とほぼ同じ明るさに見える。また、第2部分P2、第4部分P4及び第6部分P6に設けるスリットは、第1スリットSL1及び第2スリットSL2とは長さ方向が異なっているので、第2観察条件において表示される部分隠蔽画像のうち、第2部分P2、第4部分P4及び第6部分P6に対応した部分は、第1部分P1、第3部分P3及び第5部分P5に対応した部分から区別可能である。
【0212】
レリーフ構造として、等方的な光散乱を生じる散乱構造又は光散乱異方性を示す異方性散乱構造を設ける代わりに、ブレーズド回折格子のように正反射角とは異なる角度で強い反射光を射出する光偏向構造を設けてもよい。
【0213】
上記の変形例では、セルC内に配置する着色部22Pの形状を矩形状又は正方形状としている。これら着色部22Pの形状は、円形状などの他の形状であってもよい。
【0214】
上記の実施形態及び変形例に係る表示体1では、画像表示層22は、染料及び顔料の少なくとも一方を含んだ印刷層である。画像表示層22は、透過型のホログラム及び/又は回折格子によって透過光画像を表示するものであってもよい。
【0215】
上記の実施形態及び変形例に係る表示体1では、第2観察条件下で、部分隠蔽画像として二次元画像を表示する設計を画像表示層22に採用している。画像表示層22には、第2観察条件下で、部分隠蔽画像として三次元画像を表示する設計を採用してもよい。そのような三次元画像の表示には、透過型のホログラム及び/又は回折格子を利用することができる。
【0216】
上記の実施形態及び変形例に係る表示体1は、接着層30を間に挟んでマスク層10と画像保持体20とを貼り合わせた構造を有している。表示体1から接着層30及び透明材料層11を省略し、透明基材21の表面、具体的には画像表示層22が設けられた面の裏面にレリーフ構造RS又は第1異方性散乱構造RS1及び第2異方性散乱構造RS2を設け、その上に反射層12を設けてもよい。
【0217】
反射層12として、金属層を設ける代わりに、透明酸化物層などの無機誘電体層を設けてもよい。或いは、反射層12は省略してもよい。透明材料層11とそのレリーフ構造が設けられた表面を被覆した層との組み合わせが、例えば、10°以上90°未満の反射角範囲の全域で明度が1を超える反射特性を有していれば、レリーフ構造は十分に高い光学効果を発揮し得る。即ち、第1観察条件においては、レリーフ構造に由来する画像が高い視認性で表示され、第2観察条件においては、透過光画像のうち第2帯状部に対応した部分がマスク層によって十分に隠蔽される。
【0218】
上記の表示体1は、例えば、社員証、運転免許証、及び学生証などの識別(ID)カードとして利用することができる。上記の表示体1は、銀行券、株券、商品券、乗車券、及び入場券などの有価証券として利用することもできる。
【実施例
【0219】
以下に説明する方法により、図15乃至図17を参照しながら説明したのと類似した構造を有するマスク層10を含んだ転写箔を製造した。
【0220】
先ず、ポリエチレンテレフタレートからなる厚さが16μmの基材上に、グラビアコーティング法を用いてアクリル系の剥離材料を塗布して、剥離層を形成した。剥離層の乾燥後の厚さは1μmであった。
【0221】
次に、剥離層上に、グラビアコーティング法を用いて2液硬化タイプのウレタン樹脂を塗布し、塗膜を乾燥させた。乾燥後の塗膜の厚さは1μmであった。この乾燥膜に、2000℃に加熱したエンボス版を押し当てることにより、第1異方性散乱構造RS1及び第2異方性散乱構造RS2を形成した。以上のようにして、表面に第1異方性散乱構造RS1及び第2異方性散乱構造RS2を有する透明材料層11を得た。
【0222】
次いで、透明材料層11上に、アルミニウムを50nmの厚さに蒸着して、金属層を形成した。この金属層を、レーザーマーカ(キーエンス社製)を用いて万線パターンへと加工して、反射層12を得た。
【0223】
ここでは、第1部分P1、第3部分P3及び第5部分P5だけでなく、第2部分P2、第4部分P4及び第6部分も万線パターンへと加工した。第1部分P1、第3部分P3及び第4部分P4では、万線パターンを構成する線の長さ方向をX方向に対して平行とした。他方、第2部分P2、第4部分P4及び第6部分P6では、万線パターンを構成する線の長さ方向をY方向に対して平行とした。何れの万線パターンも、線幅を125μmとし、線のピッチを250μmとした。
以上のようにして、基材上にマスク層10が設けられた転写箔を得た。
【0224】
上記のようにして転写箔を得る一方で、透明基材21として、ポリカーボネート樹脂の硬化物からなる厚さが1mmのカードを準備した。そして、表面温度を200℃としたゴムロールを用いたロール転写により、上記転写箔の基材からマスク層10を透明基材21の一方の主面上へと転写した。なお、透明基材21の上記主面には、接着層30を予め設けておいた。
【0225】
次に、カードプリンタを用いて、図27を参照しながら説明した画像表示層22を形成した。
【0226】
具体的には、先ず、中間転写媒体を準備した。この中間転写媒体は、ベースフィルムと、その上に順次設けられた保護層23及び受像層兼接着層とを含むものである。そして、サーマルヘッドを用いた転写により、受像層兼接着層上に、第1着色部22P1、第2着色部22P2及び第3着色部22P3を配置した。第1着色部22P1、第2着色部22P2及び第3着色部22P3の各々の径は40μmとした。セルCのY方向におけるピッチは、125/3μmとした。
【0227】
このようにして画像を記録した中間転写媒体と、マスク層10及び透明基材21を含む積層体とを、受像層兼接着層と透明基材21とが接するように重ね合わせた。そして、ヒートローラを用いて、保護層23、受像層兼接着層、第1着色部22P1、第2着色部22P2及び第3着色部22P3を含む積層体を、透明基材21上に熱転写した。
以上のようにして、表示体1を得た。
【0228】
この表示体1を、図10に示す第1観察条件下で観察した。その結果、表示体1のうち第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2に対応した部分は、強い散乱光を射出し、明るく見えた。他方、表示体1のうち第3散乱領域SR3及び第4散乱領域SR4に対応した部分は、散乱光を殆ど射出せず、暗く見えた。そして、表示体1のうち第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2に対応した部分は、散乱光を射出せず、第3散乱領域SR3及び第4散乱領域SR4に対応した部分と同じ明るさに見えた。
【0229】
次に、この表示体1を、図18に示すように、Z方向に平行な軸の周りで90°回転させたこと以外は同様の条件下で観察した。その結果、表示体1のうち第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2に対応した部分は、散乱光を殆ど射出せず、暗く見えた。他方、表示体1のうち第3散乱領域SR3及び第4散乱領域SR4に対応した部分は、強い散乱光を射出し、明るく見えた。そして、表示体1のうち第1平坦領域FR1及び第2平坦領域FR2に対応した部分は、散乱光を射出せず、第1散乱領域SR1及び第2散乱領域SR2に対応した部分と同じ明るさに見えた。
【0230】
また、この表示体1を、図14に示す第2観察条件下で観察した。
その結果、第1表示領域PR1と第1部分P1とが重なり合った部分、第1表示領域PR1と第3部分P3とが重なり合った部分、及び第1表示領域PR1と第5部分P5とが重なり合った部分は、同じ色に見えた。
【0231】
また、第2表示領域PR2と第1部分P1とが重なり合った部分、第2表示領域PR2と第3部分P3とが重なり合った部分、及び第2表示領域PR2と第5部分P5とが重なり合った部分は、同じ色に見えた。これら部分の色は、第1表示領域PR1と第1部分P1とが重なり合った部分、第1表示領域PR1と第3部分P3とが重なり合った部分、及び第1表示領域PR1と第5部分P5とが重なり合った部分の色とは異なっていた。
【0232】
そして、第1表示領域PR1と第2部分P2とが重なり合った部分、第1表示領域PR1と第4部分P4とが重なり合った部分、第1表示領域PR1と第6部分P6とが重なり合った部分、第2表示領域PR2と第2部分P2とが重なり合った部分、第2表示領域PR2と第4部分P4とが重なり合った部分、及び第2表示領域PR2と第6部分P6とが重なり合った部分は、同じ色に見えた。これら部分の色は、第1表示領域PR1と第1部分P1とが重なり合った部分、第1表示領域PR1と第3部分P3とが重なり合った部分、及び第1表示領域PR1と第5部分P5とが重なり合った部分の色、並びに、第2表示領域PR2と第1部分P1とが重なり合った部分、第2表示領域PR2と第3部分P3とが重なり合った部分、及び第2表示領域PR2と第5部分P5とが重なり合った部分の色の何れとも異なっていた。
【0233】
最後に、この表示体1を、第3観察条件下で観察した。その結果、全体が同じ色に見えた。
【符号の説明】
【0234】
1…表示体、10…マスク層、11…透明材料層、12…反射層、20…画像保持体、21…透明基材、22…画像表示層、22A…第1画像表示層、22B…第2画像表示層、22C…第3画像表示層、22P…着色部、22P1…第1着色部、22P2…第2着色部、22P3…第3着色部、23…保護層、30…接着層、BP1…第1帯状部、BP2…第2帯状部、BR…帯状領域、C…セル、FR1…第1平坦領域、FR2…第2平坦領域、G1…第1溝、G2…第2溝、IL…照明光、LS…光源、OB…観察者、P1…第1部分、P2…第2部分、P3…第3部分、P4…第4部分、P5…第5部分、P6…第6部分、PR1…第1表示領域、PR2…第2表示領域、RL…反射光、RS…レリーフ構造、RS1…第1異方性散乱構造、RS2…第2異方性散乱構造、S1…第1主面、S2…第2主面、SBR1…第1サブ領域、SBR2…第2サブ領域、SBR3…第3サブ領域、SBR4…第4サブ領域、SL…スリット、SL1…第1スリット、SL2…第2スリット、SR1…第1散乱領域、SR2…第2散乱領域、SR3…第3散乱領域、SR4…第4散乱領域、TL…透過光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34