(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240814BHJP
A61B 3/024 20060101ALI20240814BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/024
A61B3/12
(21)【出願番号】P 2020164190
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 倫全
(72)【発明者】
【氏名】西山 潤平
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-195944(JP,A)
【文献】特開2012-100714(JP,A)
【文献】特開2012-100713(JP,A)
【文献】特開2009-034480(JP,A)
【文献】国際公開第2012/025983(WO,A1)
【文献】特開2018-187037(JP,A)
【文献】特表2011-502015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
G01N 21/00 -21/01
G01N 21/17 -21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光により被検眼眼底に刺激点を投影して視野測定を行うための測定光学系と、被検眼眼底に照射された測定光と参照光によるOCTデータを取得するためのOCT光学系と、を備える眼底撮影装置であって、
複数の刺激点が予め設定された視野検査パターンに基づいて前記測定光学系を制御することによって各々の刺激点を被検眼眼底に投影している間に、前記OCT光学系を制御することによって被検眼眼底のOCTデータを収集する制御手段を備え
、
前記制御手段は、各々の刺激点を被検眼眼底に投影している間に測定された視野測定結果に基づいて前記OCT光学系によるOCTデータの取得位置を設定可能であることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項2】
可視光により被検眼眼底に刺激点を投影して視野測定を行うための測定光学系と、被検眼眼底に照射された測定光と参照光によるOCTデータを取得するためのOCT光学系と、を備える眼底撮影装置であって、
複数の刺激点が予め設定された視野検査パターンに基づいて前記測定光学系を制御することによって各々の刺激点を被検眼眼底に投影している間に、前記OCT光学系を制御することによって被検眼眼底のOCTデータを収集する制御手段を備え、
前記制御手段は、各々の刺激点を被検眼眼底に投影している間に収集されたOCTデータの収集結果に基づいて前記測定光学系による刺激点の位置を設定可能であることを特徴とす
る眼底撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の眼底を撮影する眼底撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼底撮影装置として、視野測定光学系と、OCT光学系とを備え、眼底の視野検査と、眼底のOCT撮影を1台で行うことができる装置が知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012―100713号公報
【文献】特開2012―100714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、視野計による視野検査は、眼科検査の中でも検査時間が長く、被検者又は検者への負担が大きい。一方、OCTによる断層撮影においても、種々の撮影条件での断層撮影、OCTアンジオ撮影等、検査時間が長くなる場合がありえる。結果として、視野検査及びOCT撮影からなる一連の眼底検査は、多くの検査時間が必要となる。
しかしながら、特許文献1、2の場合、視野検査とOCT撮影は、時間的に分離されており、上記検査時間の長期化は、依然として課題である。
【0005】
本開示は、上記問題点を鑑み、眼底に対する視野検査とOCT検査をより効率的に行うことができる眼底撮影装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1)
可視光により被検眼眼底に刺激点を投影して視野測定を行うための測定光学系と、被検眼眼底に照射された測定光と参照光によるOCTデータを取得するためのOCT光学系と、を備える眼底撮影装置であって、
複数の刺激点が予め設定された視野検査パターンに基づいて前記測定光学系を制御することによって各々の刺激点を被検眼眼底に投影している間に、前記OCT光学系を制御することによって被検眼眼底のOCTデータを収集する制御手段を備え、前記制御手段は、各々の刺激点を被検眼眼底に投影している間に測定された視野測定結果に基づいて前記OCT光学系によるOCTデータの取得位置を設定可能であることを特徴とする。
(2)
可視光により被検眼眼底に刺激点を投影して視野測定を行うための測定光学系と、被検眼眼底に照射された測定光と参照光によるOCTデータを取得するためのOCT光学系と、を備える眼底撮影装置であって、
複数の刺激点が予め設定された視野検査パターンに基づいて前記測定光学系を制御することによって各々の刺激点を被検眼眼底に投影している間に、前記OCT光学系を制御することによって被検眼眼底のOCTデータを収集する制御手段を備え、前記制御手段は、各々の刺激点を被検眼眼底に投影している間に収集されたOCTデータの収集結果に基づいて前記測定光学系による刺激点の位置を設定可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、眼底に対する視野検査とOCT検査をより効率的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態の一例について図面に基づいて説明する。
図1~
図9は本実施形態の実施例に係る図である。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立又は関連して利用されうる。
【0010】
以下、第1の実施形態に係る眼底撮影装置について説明する。眼底撮影装置は、OCT光学系と、正面撮像光学系と、を備えてもよい。
【0011】
<OCT光学系>
OCT光学系は、例えば、被検眼眼底に照射された測定光と参照光によるOCTデータを取得するためのOCT光学系であってもよく、さらに、測定光を被検眼眼底上で走査させるための走査部を備えてもよい。
【0012】
<正面撮像光学系>
正面撮像光学系は、例えば、被検眼眼底上で光を走査することにより眼底正面画像を撮像するための正面撮像光学系であってもよく、さらに、光を眼底上で走査させるための走査部(光スキャナ)備えてもよい。
【0013】
正面撮像光学系としては、例えば、眼底上でスポット光を二次元的に走査する構成であってもよいし、スリット光を一次元的に走査する構成であってもよい。また、走査部としては、例えば、走査ミラー(例えば、ガルバノミラー、レゾナントスキャナ)であってもよいし、スリットが形成されたチョッパーを回転駆動させる構成であってもよい。
【0014】
正面撮像光学系は、例えば、走査型レーザ検眼鏡(SLO:Scanning Laser Ophthalmoscope)に基づくSLO光学系であってもよく、ポイントセンサ又はラインセンサが受光素子として用いられてもよい。正面撮像光学系は、スリットスキャンタイプの眼底カメラであってもよく、二次元撮像素子が受光素子として用いられてもよい。
【0015】
正面撮像光学系によって眼底上で走査される走査光は、被検眼にとって走査光を視認しづらい波長領域であるλ=850nmよりも長波長であってもよい。これにより、例えば、正面撮像光学系200の光走査を被検眼が追従しづらくなる。結果として、被検眼の固視が安定した状態でのOCTデータを取得できるので、良好なOCTデータを取得できる。
【0016】
より好ましくは、正面撮像光学系によって被検眼眼底上で走査される走査光は、被検眼にとって不可視領域であるλ=900nmよりも長波長であってもよい。これによって、例えば、正面撮像系の光走査を被検眼が追従してしまうことを防止できるので、良好なOCTデータを取得することができる。結果として、被検眼の固視がより安定した状態でのOCTデータを取得できるので、より良好なOCTデータを取得できる。
【0017】
例えば、走査光は、OCT光学系によるOCTデータの取得中に並行して、眼底上で照射されてもよい。これによって、例えば、OCTデータの取得中に、正面撮像光学系の光走査による被検眼の追従を回避でき、良好なOCTデータを取得できる。また、走査光は、OCT光学系によるOCTデータの取得以外のタイミングにおいて、眼底上で照射されてもよい。これによって、例えば、正面撮像光学系による被検眼の追従を回避でき、被検眼の固視が安定した状態でOCTデータの取得を開始できる。
【0018】
上記において、走査光を視認しづらい波長領域(好ましくは不可視領域)とする場合、正面撮像光学系に用いられる光源として、λ=850nm(好ましくは、λ=900nm)よりも長い波長帯域に中心波長を持つ光を出射する光源が用いられてもよい。これによって、走査光により正面画像を得る際、波長効率が高い中心波長を活用できるので、走査光を被検眼が追従する可能性を低減しつつ、効率的なイメージングが可能となる。この場合、さらに、光源からの出射光の波長帯域の下限が、850nmよりも長い波長であってもよいし、850nmよりも短波長の光が光路中でカットされてもよい。これによって、中心波長以外の光によって走査光を追従してしまう可能性も低減できる。なお、正面撮像光学系の光源の波長帯域は、例えば、半値幅に基づいて規定できる。
【0019】
走査光を視認しづらい波長領域(好ましくは不可視領域)とする構成としては、上記構成に限定されず、例えば、中心波長がλ=850nm(好ましくは、λ=900nm)よりも短波長であって、出射波長の上限としてλ=850nmよりも長波長の波長領域を含む光を出射する光源が用いられ、λ=850nmよりも短波長の光が、カットフィルタ等によって光路中でカットされることで、λ=850nmよりも長波長の光が眼底に走査される構成であってもよい。
【0020】
上記のようなOCT光学系と正面撮像光学系を備える眼底撮影装置において、さらに、OCT光学系に用いられる光源は、λ=1000nm~1100nmの間に中心波長を持つ測定光を出射する光源であってもよい。これにより、例えば、眼底上での走査光が上記波長特性であることに加え、眼底に照射される測定光が不可視領域であるので、OCTデータを得る際の被検眼の追従をより適切に回避することができる。
【0021】
以下、第2の実施形態に係る眼底撮影装置について説明する。第2の実施形態に係る眼底撮影装置は、視野測定光学系と、OCT光学系と、を備えてもよい。さらに、眼底撮影装置は、視野測定光学系及びOCT光学系を制御する制御部を備えてもよい。なお、上記第1の実施形態と共通する部分については、特段の説明を省略する。
【0022】
<視野測定光学系>
視野測定光学系(以下、測定光学系)は、例えば、可視光により被検眼眼底に刺激点を投影して視野測定を行うための測定光学系であってもよく、被検眼眼底を刺激するための可視光源を備えてもよい。
【0023】
視野測定光学系としては、視野測定用の検査視標(刺激視標)を投影する視標投影光学系を備えてもよい。この場合、ディスプレイの表示制御を介して、検査視標が眼底の刺激点として投影されてもよいし、可視光源からの光を光スキャナで制御されることで、検査視標が眼底の刺激点として投影されてもよい。もちろん、これに限定されず、複数の可視光源が二次元的に配列され、可視光源の点灯位置が制御されることで、検査視標が眼底の刺激点として投影されてもよい。この場合、視標投影光学系は、視野計測の際の被検眼の固視目標となる固視標が投影されてもよい。
【0024】
<OCT光学系>
OCT光学系に用いられる光源は、例えば、被検眼にとって不可視領域である波長領域に中心波長を持つ測定光を出射する光源(例えば、λ=1000nm~1100nmの間に中心波長を持つ測定光を出射する光源)であってもよい。これによって、例えば、視野検査中にOCTデータを収集しても、OCT光学系の測定光を被検眼が追従してしまうのを防止できるので、良好な視野検査結果を得ることができる。
【0025】
<視野検査中でのOCTデータの取得>
例えば、制御部は、複数の刺激点が予め設定された視野検査パターンに基づいて測定光学系を制御してもよい。さらに、制御部は、各々の刺激点を被検眼眼底に投影している間に、OCT光学系を制御することによって被検眼眼底のOCTデータを収集するようにしてもよい。
【0026】
これによって、例えば、視野検査中にOCTデータが収集されるので、視野検査及びOCT撮影からなる一連の眼底検査を短時間で済ませることが可能となり、検者又は被検者の負担が軽減される。他の側面としては、比較的時間を要するOCT撮影が、視野検査中に行われることで、検者又は被検者の負担が軽減される。
【0027】
収集されるOCTデータとしては、例えば、種々の撮影条件にて取得されるOCTデータである種々のOCTデータであってもよく、視野検査中のOCT撮影によって、種々のOCTデータを、撮影時間を考慮せずに確実に取得できる。この場合、種々のOCTデータとしては、例えば、走査パターンが互いに異なる複数のOCTデータ、走査ラインが異なる複数のOCTデータ(例えば、ラスタースキャンによって得られる3次元OCTデータ)、撮影モードが互いに異なる複数のOCTデータ、の少なくともいずれかが挙げられる。また、収集されるOCTデータとしては、例えば、単一の撮影条件で取得されるOCTデータであってもよく、視野検査中のOCT撮影によって、単一の撮影条件でも撮影時間を要するOCTデータを、撮影時間を考慮せずに確実に取得できる。この場合、撮影時間を要するOCTデータとしては、同一位置での複数のOCTデータ(例えば、加算平均画像の基となるデータ)、時間的に異なる同一位置での複数のOCTデータ(例えば、OCTモーションコントラストデータ(OCTアンジオデータ)の基となるデータ、OCTドップラーデータ等)、広範囲かつ高密度のOCTデータ、の少なくともいずれかが挙げられる。
【0028】
OCTデータを収集する場合、例えば、制御部は、視野測定の開始前に予め設定された撮影制御パターンに応じてOCTデータを収集してもよいし、視野測定中に任意に撮影制御パターンを設定することでOCTデータを収集してもよい。もちろん、これらの収集手法が複合されてもよく、例えば、予め設定された撮影制御パターンによる収集と、視野計測中に設定された撮影パターンによる収集とが、前後に分かれて実施されてもよい。この場合、撮影制御パターンは、単一又は複数の撮影条件から構成される撮影制御パターンであってもよい。
【0029】
<視野測定結果を用いたOCTの取得位置の設定>
視野測定中において任意に撮影制御パターンを設定する場合、制御部は、各々の刺激点を被検眼眼底に投影している間に測定された視野測定結果に基づいて、OCT光学系によるOCTデータの取得位置を設定可能であってもよい。これにより、例えば、視野測定結果によってOCTデータの取得位置が設定されることで、視野検査中のOCTデータ取得をより効果的に行うことができる。
【0030】
この場合、制御部は、視野測定結果に応じてOCTデータの取得位置を自動的に設定してもよい(例えば、視野測定結果における眼底上の異常部位を検出して、OCTデータの取得位置として設定する)。また、これに限定されず、制御部は、視野測定結果を表示部に表示すると共に、OCTデータの取得位置を設定するための検者からの操作指示を受け付けることによって、視野測定結果に基づいてOCTデータの取得位置を設定してもよい。この場合、視野測定結果としては、視野測定結果が直接利用されてもよいし、視野測定結果を解析した解析結果が利用されてもよい。
【0031】
<OCTデータを用いた視野測定位置の設定>
制御部は、各々の刺激点を被検眼眼底に投影している間に収集されたOCTデータに基づいて、測定光学系によって投影される刺激点の位置を設定可能であってもよい。これにより、例えば、視野検査中に得られたOCTデータの収集結果に基づいて視野測定の位置が設定されることで、視野検査自体の検査時間を短縮することができる。
【0032】
この場合、制御部は、OCTデータの収集結果に応じて自動的に刺激点の位置を設定してもよい(例えば、OCTデータにおける眼底上の異常部位を検出して、刺激点の位置として設定する)。また、これに限定されず、制御部は、OCTデータの収集結果を表示部に表示すると共に、刺激点の位置を設定するための検者からの操作指示を受け付けることによって、OCTデータに基づいて刺激点の位置を設定してもよい。この場合、OCTデータの収集結果としては、種々のOCTデータが直接利用されてもよいし、種々のOCTデータを解析した解析結果が利用されてもよい。
【0033】
なお、刺激点の位置の設定に限定されず、制御部は、OCTデータの収集結果に基づいて測定光学系による刺激点の輝度を段階的に変更するようにしてもよい。例えば、異常部位における疾患の程度に応じて輝度を段階的に変更してもよく、疾患度合が重度の場合、輝度を暗くし、疾患度合が軽度の場合、輝度を明るくするようにしてもよい。疾患の程度と輝度との関係は、予め実験・シミュレーションにより求めることが可能である。例えば、眼底の厚みに応じて輝度が段階的に変更されてもよい。例えば、特定の網膜層が薄い場合、輝度を低くし、特定の網膜層が厚い場合、輝度を高くしてもよい。
【0034】
<視野測定中における光刺激前後のOCT計測>
制御部は、測定光学系、又は測定光学系とは異なる光刺激部を制御することによって被検眼眼底に光刺激を行うと共に、OCT光学系を制御することによって光刺激前後でのOCTデータの変化を検出してもよい。これにより、例えば、視野計測中における光刺激前後のOCTデータの変化が得られるので、視野測定結果に加えて、刺激前後の網膜の構造又は機能的変化をより詳細に確認できる。
【0035】
なお、測定光学系とは異なる光刺激部を用いる場合、例えば、外部固視灯、眼底撮影用の可視光源等が用いられてもよい。この場合、制御部は、光刺激部の発光タイミングに合わせて、OCT光学系によるOCTデータの取得を行ってもよい。
【0036】
例えば、制御部は、光刺激前後のOCTデータを取得し、得られたOCTデータの時間変化を検出してもよい。また、光刺激前後の他、制御部は、光刺激中のOCTデータを取得してもよい。
【0037】
<視野測定位置を含むOCTデータの取得>
制御部は、各刺激点でのOCTデータが取得されるように、刺激点の位置に応じてOCTデータの取得位置を変更してもよい。これにより、例えば、各刺激点に対応するOCTデータをスムーズに取得できる。
【0038】
この場合、例えば、制御部は、刺激点の位置に応じてOCTデータの取得位置を変更すると共に、各刺激点による光刺激前後のOCTデータを取得し、得られたOCTデータの変化を検出してもよい。これにより、例えば、各刺激点に対応する光刺激前後のOCTデータの変化をスムーズに取得できる。
【0039】
<実施例>
以下、第1の実施形態に係る実施例について図面に基づいて説明する。
【0040】
図1、
図2は、それぞれ本実施例に係る光学系を示す図である。本実施例に係る眼底撮影装置は、対物レンズ25と、OCT光学系100と、正面撮像光学系200と、を主に備える。なお、眼底撮影装置は、さらに、被検眼を固視させるための固視標を呈示する固視光学系を備える構成であってもよい。固視光学系は、正面撮像光学系200の一部として設けられてもよいし、別途設けられてもよい。
【0041】
対物レンズ25は、例えば、被検眼の眼前に配置されてもよく、一枚又は複数枚のレンズによって構成されてもよい。この場合、対物レンズ25は、OCT光学系100と正面撮像光学系200との間で共用されてもよい。
【0042】
<OCT光学系>
OCT光学系100は、例えば、対物レンズ25を介して被検眼眼底のOCTデータを光干渉の技術を用いて取得するために設けられてもよい。
【0043】
より詳細には、OCT光学系100は、光源102と、検出器120と、走査部108と、を主に備える。光源102から出射された光は、分割器によって測定光と参照光に分割される。測定光は、測定光路を通って眼底Efに導かれた後、測定光路を介して検出器120に導かれる。参照光は、参照光路を通って検出器120に導かれる。検出器120は、被検眼眼底に照射された測定光と、参照光との干渉状態を検出する。
【0044】
OCT光学系は、例えば、Spectral-domain OCT(SD-OCT)、Swept-source OCT(SS-OCT)などのフーリエドメインOCTであってもよいし、Time-domain OCT(TD-OCT)であってもよい。
【0045】
走査部(光スキャナ)108は、測定光路に配置され、測定光を被検眼眼底上で走査する。走査部108は、測定光を被検眼E上で繰り返し走査してもよい。
【0046】
眼底撮影装置は、走査部108の各走査位置での検出器120からの検出信号に基づいてOCTデータを得ることができる。
【0047】
本実施例において、OCT光学系100の光源102(測定光源)としては、λ=1000nm~1100nmの間に中心波長を持つ光を出射する光源が用いられてもよい。この場合、例えば、光源102は、波長掃引光源(SS-OCT光源)であってもよい。なお、中心波長に対するバンド幅としては、中心波長に対して±30~60nmの波長帯域を持つ光源が用いられてもよく、例えば、光源102から発せられる光の波長帯域の下限は、λ=1000nmよりも短くてもよい。
【0048】
この場合、OCT光学系100によって眼底上で走査される光は、被検眼にとって不可視領域となる、OCT光学系100の光走査を被検眼が追従しづらくなる。したがって、被検眼の固視を安定した状態でのOCTデータを取得できるので、結果として、良好なOCTデータを取得できる。
【0049】
<正面撮像光学系>
正面撮像光学系200は、例えば、対物レンズ25を介して被検眼眼底の正面画像を得るために設けられてもよい。この場合、正面撮像光学系200は、被検眼眼底上で光を走査することにより眼底正面画像を撮像する走査型撮像光学系(例えば、SLO光学系)であってもよい。
【0050】
正面撮像光学系200は、光源(例えば、レーザ光源)202と、受光素子220と、走査部208と、を主に備える。この場合、正面撮像光学系200は、光源202からの光を眼底に投光し、光源202からの光による眼底反射光を受光素子220により受光する。
【0051】
走査部208は、正面撮像光学系200の光路中(例えば、瞳孔共役位置)に配置され、光源202からの光を眼底上で二次元的に走査するために用いられる。走査部208は、例えば、2つの光スキャナの組合せからなり、一方の光スキャナによって主走査方向での光走査が行われ、他方の光スキャナによって副走査方向での光走査が行われる。
【0052】
眼底撮影装置は、走査部208の各走査位置での受光素子220からの検出信号に基づいて眼底正面画像を得ることができる。
【0053】
正面撮像光学系200は、例えば、被検眼の眼底を正面方向から観察するための眼底観察光学系として用いられてもよい。検者は、眼底正面画像を見ながら、眼底上のOCTデータの取得位置を設定できる。また、眼底正面画像に基づいて眼底の位置ずれを検出し、検出結果に基づいてOCT光学系100を制御することにより、眼底上のOCTデータの取得位置を補正するようにしてもよい(いわゆるトラッキング)。
【0054】
本実施例において、正面撮像光学系200の光源202としては、λ=850nmよりも長く、OCT光学系100の測定光(例えば、λ=990nm~1100nm)よりも短い波長帯域に中心波長を持つ光を出射する光源が用いられてもよい。なお、中心波長に対するバンド幅としては、レーザ特性を持つように、中心波長に対して±10nmの波長帯域を持つ光源が用いられてもよい。もちろん、さらに広帯域の光源が用いられてもよい。
【0055】
この場合、正面撮像光学系200によって眼底上で走査される走査光は、被検眼にとって走査光を視認しづらい波長領域であるλ=850nmよりも長波長となるので、正面撮像光学系200の光走査を被検眼が追従しづらくなる。したがって、被検眼の固視が安定した状態でのOCTデータを取得できるので、結果として、良好なOCTデータを取得できる。
【0056】
<第1の波長分離部材>
なお、OCT光学系100における測定光の光路と、正面撮像光学系200における走査光の光路とを分割するために波長分離を行う第1の波長分離部材300(例えば、ダイクロイックミラー)が設けられてもよい。例えば、第1の波長分離部材300は、OCT光学系100に用いられる測定光を反射し、正面撮像光学系200に用いられる走査光を透過してもよい(
図1参照)。また、これに限定されず、第1の波長分離部材300は、OCT光学系100に用いられる測定光を透過し、正面撮像光学系200に用いられる走査光を反射してもよい(
図2参照)。
【0057】
本実施例において、第1の波長分離部材300は、例えば、被検眼にとって走査光を視認しづらい波長領域であって、正面撮像光学系200による走査光の波長帯域よりも長く、OCT光学系100の測定光の波長帯域よりも短い波長帯域にカットオン波長が設定され、正面撮像光学系200によって走査される走査光であってλ=850nmよりも長い波長帯域の光と、OCT光学系100の測定光とを分割する波長選択特性を有してもよい。
【0058】
なお、上記構成において、より好ましくは、光源202としては、λ=900nmよりも長く、OCT光学系100の測定光(例えば、λ=990nm~1100nm)よりも短い波長帯域に中心波長を持つ光を出射する光源が用いられてもよい。
【0059】
この場合、正面撮像光学系200によって眼底上で走査される走査光は、被検眼にとって不可視領域であるλ=900nmよりも長波長となるので、正面撮像光学系200の光走査を被検眼が追従してしまうことを防止できる。したがって、正面撮像光学系200による眼底観察に並行してOCTデータが取得される場合(例えば、トラッキング制御)、又は、OCTデータの取得前の段階での正面撮像光学系200を用いた測定光の位置決め又は撮影タイミングの決定の際、被検眼の固視がより安定した状態となり、結果として、より良好なOCTデータを取得できる。なお、前述したように、OCT光学系100によって眼底上で走査される走査光も含めて不可視領域の光が用いられることで、OCTデータを得る際の固視をより安定させることできる。
【0060】
この場合、第1の波長分離部材300は、例えば、被検眼にとって不可視領域である波長領域であって、正面撮像光学系200による走査光の波長帯域よりも長く、OCT光学系100の測定光の波長帯域よりも短い波長帯域にカットオン波長が設定され、正面撮像光学系200によって走査される走査光であってλ=900nmよりも長い波長帯域の光と、OCT光学系100の測定光とを分割する波長選択特性を有してもよい。
【0061】
<前眼部観察光学系>
追加的には、本実施例に係る眼底撮影装置において、例えば、被検眼の前眼部を観察するための前眼部観察光学系400が設けられてもよい。この場合、前眼部観察光学系400は、前眼部正面光源402と、撮像素子404とを主に備えてもよい。前眼部観察光学系400は、対物レンズ25を介して、前眼部照明光源402によって照明された被検眼前眼部の反射光を撮像素子404(例えば、二次元撮像素子)に導く。撮像素子404は、例えば、前眼部と共役な位置に配置されてもよい。
【0062】
眼底撮影装置は、撮像素子404からの撮像信号に基づいて前眼部正面画像を得ることができる。前眼部照明光源402としては、例えば、λ=930nm~950nmの波長帯域に中心波長を持つ光源が用いられてもよい。また、これに限定されず、前眼部照明光源402としては、λ=930nm~950nmから外れた波長帯域に中心波長を持つ光源であって、λ=930nm~950nmの波長帯域を少なくとも含む光を発する光源が用いられてもよい。なお、本実施例では、前眼部観察光学系400は、λ=930nm~950nmの波長帯域を少なくとも含む反射光を撮像素子404に導く。
【0063】
<第1の波長分離部材>
眼底撮影装置において、前眼部観察光学系400が設けられた場合、例えば、第1の波長分離部材300は、OCT光学系100における測定光の光路と、正面撮像光学系200における走査光の光路とを分割すると共に、OCT光学系100と正面撮像光学系200のいずれかの光路に対して前眼部観察光学系400の光路を分割するために波長分離を行ってもよい。
【0064】
第1の波長分離部材300は、OCT光学系100に用いられる測定光と前眼部照明光源402による前眼部反射光を反射し、正面撮像光学系200に用いられる走査光を透過してもよい(
図1参照)。この場合、第1の波長分離部材300は、例えば、被検眼にとって走査光を視認しづらい波長領域であって、正面撮像光学系200による走査光の波長帯域よりも長く、OCT光学系100の測定光の波長帯域と前眼部照明光源402による前眼部反射光の波長帯域(λ=930nm~950nmの波長帯域)よりも短い波長帯域にカットオン波長が設定され、正面撮像光学系200によって走査される走査光であってλ=850nm(好ましくは、λ=900nm)よりも長い波長帯域の光と、OCT光学系100の測定光及び前眼部照明光源402による前眼部反射光を分割する波長選択特性を有してもよい。
【0065】
また、これに限定されず、第1の波長分離部材300は、OCT光学系100に用いられる測定光を透過し、正面撮像光学系200に用いられる走査光と前眼部照明光源402による前眼部反射光を反射してもよい(
図2参照)。この場合、第1の波長分離部材300は、例えば、被検眼にとって走査光を視認しづらい波長領域であって、正面撮像光学系200による走査光の波長帯域と前眼部照明光源402による前眼部反射光の波長帯域(λ=930nm~950nmの波長帯域)よりも長く、OCT光学系100の測定光の波長帯域よりも短い波長帯域にカットオン波長が設定され、正面撮像光学系200によって走査される走査光であってλ=850nm(好ましくは、λ=900nm)よりも長い波長帯域の光及び前眼部照明光源402による前眼部反射光と、OCT光学系100の測定光を分割する波長選択特性を有してもよい。
【0066】
<第2の波長分離部材>
眼底撮影装置において、前眼部観察光学系400が設けられた場合、第1の波長分離部材によって分割されたOCT光学系100と正面撮像光学系200のいずれかの光路に対し、前眼部観察光学系400の光路を分割するために波長分離を行う第2の波長分離部材350が設けられてもよい。この場合、例えば、第2の波長分離部材350は、OCT光学系100の光路と、前眼部観察光学系400の光路とを分割するために波長分離を行ってもよい(
図1参照)。もしくは、第2の波長分離部材350は、正面撮像光学系200の光路と、前眼部観察光学系400の光路とを分割するために波長分離を行ってもよい。
【0067】
例えば、第2の波長分離部材300は、第1の波長分離部材によって分割されたOCT光学系100と正面撮像光学系200のいずれか一方に用いられる光を透過し、前眼部照明光源402による前眼部反射光を反射する波長特性を有してもよい。例えば、第2の波長分離部材300は、第1の波長分離部材によって分割されたOCT光学系100と正面撮像光学系200のいずれか一方に用いられる光を反射し、前眼部照明光源402による前眼部反射光を透過する波長特性を有してもよい。
【0068】
OCT光学系100に対して前眼部観察光学系400の光路を分割する場合(
図1参照)、第2の波長分離部材350は、例えば、前眼部照明光源402による前眼部反射光の波長帯域(λ=930nm~950nmの波長帯域)よりも長く、OCT光学系100の測定光の波長帯域よりも短い波長帯域にカットオン波長が設定され、前眼部照明光源402による前眼部反射光の波長帯域の光と、OCT光学系100の測定光とを分割する波長選択特性を有してもよい。
【0069】
正面撮像光学系200に対して前眼部観察光学系400の光路を分割する場合(
図2参照)、第2の波長分離部材350は、例えば、前眼部照明光源402による前眼部反射光の波長帯域(λ=930nm~950nmの波長帯域)よりも短く、正面撮像光学系200の走査光の波長帯域よりも長い波長帯域にカットオン波長が設定され、前眼部照明光源402による前眼部反射光の波長帯域の光と、正面撮像光学系400の走査光とを分割する波長選択特性を有してもよい。
【0070】
<広角化対応>
なお、正面撮像光学系200の光源202として、λ=900nmよりも長く、OCT光学系100の測定光(例えば、λ=990nm~1100nm)よりも短い波長帯域に中心波長を持つ光を出射する光源が用いられる場合、900nm~1000nmの間において、正面撮像光学系200の走査光と、前眼部反射光と、OCT光学系100の測定光とを分離できるように、第1の波長分離部材300と第2の波長分離部材350のカットオン波長を設定する必要がある。
【0071】
近年、OCT光学系100及び正面撮像光学系200においては、撮影画角(走査画角)の広角化が進んでいる。撮影画角が広角化される場合、第1の波長分離部材300と第2の波長分離部材350に対するOCT光学系100(又は正面撮像光学系200)の入射角範囲が拡大する。この場合、波長分離部材に対する入射角が大きくなると、OCT光学系100(又は正面撮像光学系200)に用いられる光は、第1の波長分離部材300と第2の波長分離部材350によって光路が分割される際、透過率・反射率特性が短波長側にスライドしていく。すなわち、OCT光学系100の測定光と前眼部反射光とを分離するためのカットオン波長、又は、SLO光学系200の走査光と前眼部反射光とを分離するためのカットオン波長が短波長側にシフトしていく。また、波長分離部材に対する入射角が小さくなると、透過率・反射率特性は、長波長側にシフトしていく。
【0072】
この場合、カットオン波長の短波長側、長波長側へのスライドを考慮して、正面撮像光学系200の光源202として、λ=900nmよりも長く、かつ、λ=910nmよりも短い波長帯域(不可視領域における短波長領域)に中心波長を持つ光を出射する光源とすることで、前眼部観察光学系400とのカットオン波長が短波長側にシフトしても、正面撮像光学系200の走査光の光量損失を抑制しやすくなる。これによって、例えば、広画角の眼底正面画像を確実に得ることができ、また前眼部反射光に基づいて生成される前眼部画像内での光量ムラが低減される。
【0073】
また、前眼部観察光学系400において、被検眼前眼部の反射光として、λ=930nm~950nmの波長帯域を少なくとも含む反射光を用いることで、OCT光学系100とのカットオン波長が短波長側にシフトしても、OCT光学系100の測定光の光量損失を抑制しやすくなる。これによって、例えば、広帯域の測定光を用いて解像度の高い広画角のOCTデータを得ることができ、また前眼部反射光に基づいて生成される前眼部画像内での光量ムラが低減される。
【0074】
この場合、第1の波長分離部材300及び第2の波長分離部材350は、被検眼前眼部の反射光として、λ=930nm~950nmの波長帯域を少なくとも含む反射光を撮像素子404に導くように波長特性が設定されてもよい。
【0075】
図1の光学配置の場合、例えば、第2の波長分離部材350において、λ=950nmよりも長い波長帯域(例えば、λ=960nmをカットオン波長として設定する)であって、OCT光学系100の測定光の波長帯域よりも短い波長帯域をカットオン波長に設定(
図3参照)することによって、前眼部観察光学系400を設けつつ、OCT光学系100の広角化に対応できる。さらに、光路分割に伴う正面撮像光学系200に用いられる光の光量損失を補うために、第1の波長分離部材300において、λ=930nmよりも短い波長帯域(例えば、λ=925nmをカットオン波長として設定する)であって、正面撮像光学系200の走査光の波長帯域よりも長い波長帯域をカットオン波長に設定する(
図4参照)ことによって、前眼部観察光学系400を設けつつ、正面撮像光学系200の広角化に対応できる(例えば、画角50度以上の撮影画角を確保できる)。
【0076】
また、
図2の光学配置の場合、例えば、第1の波長分離部材300において、λ=950nmよりも長い波長帯域であって、OCT光学系100の測定光の波長帯域よりも短い波長帯域をカットオン波長に設定することによって、前眼部観察光学系400を設けつつ、OCT光学系100の広角化に対応できる。さらに、第2の波長分離部材350において、λ=930nmよりも短い波長帯域であって、正面撮像光学系200の走査光の波長帯域よりも長い波長帯域をカットオン波長に設定することによって、前眼部観察光学系400を設けつつ、正面撮像光学系200の広角化に対応できる。
【0077】
<可視光を用いた光学系の追加>
なお、眼底撮影装置において、正面撮像光学系200として、被検眼にとって走査光を視認しづらい波長帯域の光を用いたことによって、可視光の波長領域が広帯域に確保できる)。
【0078】
そこで、本実施例に係る眼底撮影装置としては、例えば、可視光により眼底の撮影又は眼底の測定を行う可視光学系500が追加的に設けられてもよい(例えば、
図5、
図6参照。この場合、可視光学系500は、正面撮像光学系200に用いられる光よりも短波長側に中心波長を持つ可視光を発する可視光源を備えてもよい。この場合、可視光学系500は、例えば、眼底撮影又は眼底刺激を行うために用いられてもよい。また、可視光学系500として、例えば、被検眼を固視させるための固視標(固視灯を含む)を呈示する固光学系が設けられてもよい。
【0079】
可視光学系500としては、例えば、可視光にて眼底を撮影するための撮影光学系であってもよい。撮影光学系としては、例えば、眼底カメラ方式の光学系であってもよいし、SLO方式の光学系であってもよい。このような可視光学系を備える眼底撮影装置において、正面撮像光学系200は、例えば、正面撮像光学系200によって撮像された眼底正面画像(眼底観察画像)による撮影位置、撮影タイミングの設定等に用いることができる。この場合、例えば、正面撮像光学系の走査光が、走査光を視認しづらい波長領域(好ましくは不可視領域)であることによって、例えば、走査光によって被検眼が追従しづらくなり、良好な可視眼底画像を取得できる。より詳細には、走査型の正面撮像光学系200によって得られた鮮明な正面画像を用いて眼底を観察できるため、撮影タイミング、撮影位置の確認等を正確に行うことができると共に、走査型の正面撮像光学系200の走査光が視認しづらく、被検眼が走査光を追従しづらくなり、可視光による眼底撮影を確実に行うことが可能となる。
【0080】
可視光学系500としては、可視光により眼底に刺激点を投影して視野測定を行うための測定光学系であってもよい。このような可視光学系を備える眼底撮影装置において、正面撮像光学系は、例えば、正面撮像光学系によって撮像された眼底正面画像上での刺激位置の設定、正面撮像光学系によって撮像された眼底正面画像に基づく刺激点の位置補正(トラッキング)等に用いることができる。この場合、正面撮像光学系の走査光が、走査光を視認しづらい波長領域(好ましくは不可視領域)であることによって、例えば、走査光によって被検眼が追従しづらくなり、良好な視野データを取得できる。より詳細には、走査型の正面撮像光学系200によって得られた鮮明な正面画像を用いて視野の測定点を設定できるため、測定点の設定を正確に行うことができると共に、走査光が視認しづらく、被検眼が走査光を追従しづらくなり、視野測定を確実に行うことが可能となる。
【0081】
眼底撮影装置において、可視光学系500が設けられた場合、正面撮像光学系200に設けられた走査部208と被検眼との間に設けられ、正面撮像光学系200及び可視光学系500の光路と、OCT光学系100の光路とを分割するための波長分離を行う第3の波長分離部材380が設けられてもよい。
【0082】
図5は、
図1の光学配置の眼底撮影装置において可視光学系500を設けた場合の一例であり、第3の波長分離部材380は、第1の波長分離部材300の透過方向であって、第1の波長分離部材300よりも上流(光源側)に配置され、可視光学系500の光路と、正面撮像光学系200の光路とを分割するようにしてもよい。
【0083】
図6は、
図2の光学配置の眼底撮影装置において可視光学系500を設けた場合の一例であり、第3の波長分離部材380は、第2の波長分離部材350の透過方向であって、第2の波長分離部材350よりも上流(光源側)に配置され、可視光学系50の光路と、正面撮像光学系200の光路とを分割するようにしてもよい。
【0084】
図5、
図6に示すような光学配置によれば、各波長分離部材300、350、380は、バンドバスとならずに対応できるため、効率的な製造が可能となる。
【0085】
<変容例>
なお、上記実施例においては、OCT光学系100と、正面撮像光学系200と、を備える眼底撮影装置において、正面撮像光学系200の走査光として被検眼に視認しづらい波長領域(好ましくは不可視領域)を用いる場合を示したが、これに限定されない。
【0086】
例えば、可視光学系500と、正面撮像光学系200と、を備える眼底撮影装置において、正面撮像光学系200の走査光として被検眼に視認しづらい波長領域(好ましくは不可視領域)を用いるようにしてもよい。これによって、例えば、走査光によって被検眼が追従しづらくなり、可視光による撮影又は測定等を確実に行うことができる。
【0087】
<第2の実施形態に係る実施例>
以下、第2の実施形態に係る実施例について図面に基づいて説明する。なお、本実施例に係る光学系としては、例えば、
図5又は
図6で例示した構成を用いることができる。
図7は、本実施例に係る制御系の一例を示すブロック図である。なお、第1の実施形態に係る実施例と同一の番号を付したものについては、特段の説明がない限り、同一の機能・構成を備えるものとする。
【0088】
本実施例に係る眼底撮影装置の場合、可視光学系500として、可視光により眼底に刺激点を投影して視野測定を行うための測定光学系が用いられる。以下、可視光学系500につき、測定光学系500として説明する。すなわち、眼底撮影装置は、例えば、測定光学系500と、OCT光学系100と、正面撮像光学系200と、図示無き前眼部観察光学系と、を備え、各光学系は、制御部70と接続されている。また、制御部70には、被検者からの応答信号を受け付ける応答受付部72、表示部74、記憶部76等が接続されている。応答受付部72は、被検者によって操作されてもよい。
【0089】
<測定光学系500>
測定光学系500は、被検眼の視野内に刺激視標を投影する視標投影光学系を備える。測定光学系500は、例えば、ディスプレイ、ディスプレイからの光を眼底に導く導光光学系を備える。制御部70は、測定光学系500を制御して、刺激視標を被検眼に投影(呈示)すると共に、各刺激点での応答受付部72からの応答信号を取得し、各刺激点で取得された応答結果に基づいて被検眼の視野を測定する。
【0090】
この場合、制御部70は、予め設定された視野検査パターンに基づいて測定光学系500を制御してもよい。視野検査パターンは、所定の検査条件から構成されてもよく、検査条件として、例えば、視野測定範囲、各刺激点の位置、各刺激点における初期基準輝度、刺激点の投影順序、等が予め設定されてもよい。制御部70は、設定された視野検査パターンに沿って視野測定を行う。なお、被検者からの応答信号に基づいて視野検査パターンが変更されてもよい(例えば、時短アルゴリズムの活用)。視野検査パターンとしては、単一又は複数の視野検査パターンがテンプレートとして予め準備された構成であってもよいし、視野測定の開始前に任意の視野検査パターンが作成されてもよい。なお、視野検査パターンとしては、静的視野測定を目的とする検査条件から構成されてもよいし、動的視野測定を目的とする検査条件から構成されてもよい。
【0091】
<OCT光学系100>
制御部70は、予め設定された撮影制御パターンに基づいてOCT光学系100を制御する。撮影制御パターンを構成する撮影条件として、例えば、走査範囲(例えば、眼底上の走査幅、走査画角)、走査位置(例えば、黄斑、乳頭、眼底周辺)、走査パターン(例えば、一つの走査ラインからなるラインスキャン、複数の走査ラインからなるマルチスキャン、サークルスキャン、ラスタースキャン等)、撮影モード(例えば、通常撮影、加算平均撮影、広角撮影、OCTアンジオ撮影、OCTドップラ撮影等)、等が予め設定される。この場合、撮影制御パターンは、単一又は複数の撮影条件から構成されてもよい。複数の撮影条件から構成される撮影制御パターンとしては、例えば、第1の撮影条件にてOCTデータを取得するための第1の撮影制御ステップと、第1の撮影条件とは異なる第2の撮影条件にてOCTデータを取得するための第2の撮影制御ステップと、を行うための制御パターンであってもよい。この場合、撮影制御パターンは、多数の撮影条件(少なくとも3つ以上)にてOCTデータを取得するための制御パターンであってもよい。
【0092】
この場合、長時間を要する視野測定中にOCT撮影を行うことを想定した撮影制御パターンが設定されてもよく、例えば、撮影制御パターンを実施した際のOCT撮影が長くなる制御パターンであってもよい。例えば、OCTアンジオ撮影を高密度かつ広範囲に行ったり、加算枚数が多数である加算平均撮影を高密度かつ広範囲に行ったり、複数のラスタースキャンからなるOCTパノラマ撮影を高密度かつ広範囲に行ったり、あらゆる走査パターンでの撮影を行う、等、が考えられる。つまり、走査密度の高密度化、走査範囲の広範囲化、多数の走査パターンによる撮影、二次元領域で複数回の走査を要するOCTアンジオ撮影・OCTドップラ撮影等は、OCT撮影の長時間化を招く要因であるが、長時間を要する視野検査と並行して進めることによって、これらのOCT撮影に係る時間を実質的に相殺することができる(詳しくは、後述する)。なお、視野測定中のOCTデータの収集は、長時間を有するOCT撮影時間の実質的な短縮に特に有利であるが、比較的短時間で行われるOCT撮影(例えば、1回のOCTデータの取得のみ)であっても、本実施例の適用は可能である。
【0093】
<動作説明>
以下、上記のような構成を備える眼底撮影装置において、視野検査中にOCTデータを収集する場合の動作について説明する。なお、静的視野を測定する場合を例示する。
【0094】
視野検査及びOCT撮影を開始する前段階において、検者は、視野検査パターンと、撮影制御パターンと、を予め設定する。例えば、視野検査パターンと撮影制御パターンはそれぞれ、複数のパターンが初期設定として用意されており、複数のパターンの少なくとも一つが選択される。もちろん、初期設定のパターンに限定されず、視野の検査条件、又はOCTの撮影条件が詳細に設定されてもよい。
【0095】
被検眼に対する装置のアライメントが完了されると、制御部70は、指標を移動させず、眼Eをある位置に固視させる。視野測定は、所定のトリガ信号に基づいて自動又は手動により開始され、制御部70は、予め設定された視野検査パターンに基づいて眼底上の複数の刺激点に向けてスポット光を順次照射することにより、刺激点毎に応答結果を得ていく。例えば、制御部70は、被検眼の視野内の特定点に視標を固定して呈示すると共に他点に視標を呈示し、その視認応答により視野の広い範囲にわたる視標の明度識別閾値(視感度閾値)を求める。
【0096】
本実施例において、制御部70は、前述のように各々の刺激点が眼底に投影されている間、予め設定された撮影制御パターンに基づいてOCT光学系100を制御することによって、被検眼眼底のOCTデータを収集する。
【0097】
OCTデータの収集は、所定のトリガ信号に基づいて自動又は手動にて開始され、制御部70は、予め設定された撮影制御パターンに基づいてOCTデータを収集する。OCTデータの収集タイミングは、視野検査の開始と同時であってもよいし、別のタイミングであってもよい。OCTデータを収集する場合、被検眼に対するアライメントの他、フォーカス調整、光路長調整、偏光調整などが必要となるため(いわゆるオプティマイズ)、これらの制御が完了した後に、OCTデータの収集を開始してもよい。
【0098】
収集されるOCTデータは、取得完了と共に、表示部74に表示される。さらに、制御部70は、収集されたOCTデータは、随時記憶部76に記憶されていく。
【0099】
図8は、本実施例に係る装置の表示画面の一例を示す図である。例えば、制御部70は、視野検査用の表示領域600(以下、視野表示領域600)と、OCT検査用の表示領域650(以下、OCT表示領域650)とを、表示部74の同一画面上に表示してもよい。
【0100】
視野表示領域600には、例えば、視野測定チャート610と、正面画像観察画面620と、が表示される。視野測定チャート610には、例えば、刺激点の投影位置を示すグラフィックが表示される。この場合、視野測定中において、刺激点の現在位置を示す指標612が少なくとも表示される。なお、検査前段階において、視野測定チャート610には、予め設定された視野検査パターンに対応する各刺激点の位置が表示されてもよい。
【0101】
正面画像観察画面620には、例えば、前眼部観察光学系によって撮像された前眼部正面像、又は正面撮像光学系によって撮像された眼底正面像が動画でライブ表示され、視野測定中の被検眼の状態をリアルタイムで観察可能であってもよい。なお、眼底正面像が表示される場合、視野測定チャート610が眼底正面像に重畳して表示されてもよい。
【0102】
視野測定が開始された後、制御部70は、各々の刺激点が眼底投影されている間、視野測定チャート610において現在の刺激点の位置に対応する指標を表示する。つまり、刺激点の位置変更に応じて、視野測定チャート610上の指標の位置を変更していく。この場合、指標の表示形態としては、設定された各刺激点が表示された状態において、投影中の刺激点が強調表示されてもよい。
【0103】
OCT表示領域650には、例えば、撮影条件表示画面660と、OCT画像表示画面670と、正面画像観察画面680と、が表示される。撮影条件表示画面660には、例えば、OCT光学系100によりOCTデータを取得する際の撮影条件が表示される。この場合、OCTのデータ取得中において、OCTデータの現在の撮影条件が表示される。なお、データ取得前段階において、撮影条件表示画面660には、前述のように予め設定された撮影制御パターンに対応する撮影条件が表示されてもよい。この場合、複数の撮影条件がリストで表示されてもよい。
【0104】
OCT画像表示画面670には、例えば、OCT光学系100によって取得されるOCTデータが動画でライブ表示されてもよい。また、正面画像観察画面680には、例えば、正面撮像光学系200によって取得される眼底正面画像が動画でライブ表示されてもよい。
【0105】
OCT撮影が開始された後、制御部70は、撮影条件表示画面660において、現在の撮影条件を表示する。この場合、撮影条件の変更に応じて、撮影条件の表示が更新されてもよい。この場合、撮影条件の表示形態としては、複数の撮影条件のリストが表示された状態において、データ取得中の撮影条件が強調表示されてもよい。また、制御部70は、OCT画像表示画面670と正面画像観察画面680において、OCTデータと眼底正面画像をリアルタイムで表示する。
【0106】
上記表示画面によれば、例えば、視野測定中にOCTデータが取得される際、予め設定された視野検査パターンに基づいて行われる視野検査の状況と、予め設定された撮影制御パターンに基づいて行われるOCT検査の状況との両方を同時に把握することができる。
【0107】
ここで、所定のレリーズ信号が自動又は手動により入力されると、制御部70は、OCTデータ(又は眼底正面画像)を静止画として取得して記憶部76に記憶すると共に、取得された静止画を表示部74に表示する。この場合、取得されたOCTデータ(又は眼底正面画像)が撮影失敗の場合に対応すべく、再撮影を実行するためのスイッチが配置されてもよい。
【0108】
視野表示領域600には、例えば、視野検査結果に基づく解析結果630(例えば、視野解析マップ)が表示されてもよい。視野解析マップとしては、例えば、各刺激点での視感度を二次元的に示すマップが表示されてもよい。この場合、視野測定中であっても、既に取得された視野検査結果に基づく解析結果が表示されてもよい。
【0109】
OCT表示領域650には、例えば、OCTデータに基づく解析結果690(例えば、OCT解析マップ、OCT解析チャート、OCT正面画像)が表示されてもよい。OCT解析マップとしては、例えば、各位置での眼底の厚みを二次元的に示す厚みマップ、各位置での血管密度を二次元的に示す血管密度マップが表示されてもよい。解析チャートとしては、例えば、解析結果が解析領域毎に分割され、解析領域単位での統合値(例えば、平均値、最大値)が表示されたチャートであってもよい。また、OCT正面画像としては、例えば、眼底の深さ方向における少なくとも一部の輝度を二次元的に示すエンフェイスOCT画像、OCTモーションコントラストデータに基づくエンフェイスOCTアンジオ画像であってもよい。この場合、視野測定中及びOCT撮影中であっても、既に取得されたOCTデータに基づく解析結果が表示されてもよい。
【0110】
視野表示領域600には、例えば、視野測定パターンを検者が設定するための視野設定画面640が表示されてもよく、制御部70は、設定画面への操作を介して検者からの設定指示を受け付けてもよい。この場合、設定画面は、視野検査を開始する前の測定パターンの設定の他、例えば、測定中の測定パターンの変更、追加検査に用いられてもよい。
【0111】
OCT表示領域650には、撮影制御パターンを検者が設定するためのOCT設定画面695が表示されてもよく、制御部70は、設定画面への操作を介して検者からの設定指示を受け付けてもよい。この場合、設定画面は、OCTデータの取得を開始する前の撮影制御パターンの設定の他、例えば、撮影パターンの変更、追加撮影に用いられてもよい。
【0112】
上記によれば、視野測定中において視野設定画面が表示されることで、例えば、視野検査中に得られるOCTデータに基づく動画像又は解析結果を用いて、追加の視野検査、検査パターンの変更が可能となる。この場合、追加検査であれば、測定前に設定された視野検査パターンによる検査が完了された後において追加検査が実行され、パターンの変更指示があれば、検査途中で検査パターンが変更されてもよい。
【0113】
また、視野測定中においてOCT設定画面が表示されることで、例えば、視野検査の解析結果を用いて、追加のOCT撮影、撮影制御パターンの変更が可能となる。この場合、追加のOCT撮影であれば、測定前に設定された撮影制御パターンによる撮影が完了された後において追加撮影が実行され、パターンの変更指示があれば、撮影途中で撮影制御パターンが変更されてもよい。
【0114】
以上のようにして、一連の視野検査及びOCT撮影が完了すると、制御部70は、これまでに取得された視野検査結果及びOCTデータを表示部74に表示する。この場合、制御部70は、視野測定中に得られた種々のOCTデータを並べて表示部74に表示してもよいし、前述の視野又はOCTデータの解析結果を同時に表示するようにしてもよい。検者は、これらの結果を踏まえ、眼底の機能面及び構造面の両面から、被検眼の眼底疾患の有無、進行状況等を評価することができる。
【0115】
上記構成によれば、長時間を要する視野検査の時間を利用してOCTデータを収集できるので、OCT撮影に要する時間を特に考慮することなく、種々のOCTデータを多数取得できる他、比較的撮影時間が必要な撮影モードでの撮影等を余裕を持って実施できる。これによって、従来に比べ、臨床的に有用なOCTデータ、疾患研究に必要な多数のOCTデータを検者及び被検者の負担なく取得できる。
【0116】
<OCTデータの収集結果に応じた刺激点の自動設定>
OCTデータを用いて刺激点の位置を設定する場合、例えば、制御部70は、視野検査中に収集されたOCTデータを処理して眼底の異常部位に関する位置情報を取得し、取得された位置情報に基づいて刺激点の位置を設定してもよい。
【0117】
この場合、制御部70は、OCTデータを人工知能を用いて解析し、眼底上における異常部位の位置を特定してもよい。また、制御部70は、OCTデータを処理して得られた解析結果を人工知能を用いて解析し、眼底上における異常部位の位置を特定してもよい。異常部位の特定においては、疾患の確率を二次元的に示すアテンションマップがOCTデータに基づいて生成されてもよく、アテンションマップにおいて疾患の確率が高いとされた位置が、異常部位として特定されてもよい。なお、アテンションマップが表示部74に表示され、刺激点の位置、輝度の設定に用いられてもよい。もちろん、異常部位の特定において、人工知能が用いられる必要は必ずしもなく、例えば、眼底の厚み情報、血管密度情報等を用いて異常部位が特定されてもよい。
【0118】
異常部位が特定されると、例えば、制御部70は、異常部位における視野測定結果を詳細に得るために、異常部位を含む領域において所定の間隔にて刺激点の位置を設定してもよい。この場合、制御部70は、視野検査開始前に予め設定された視野検査パターンを変更し、刺激点の数を増やすようにしてもよいし、追加的に、異常部位に対する視野測定を行うようにしてもよい。
【0119】
上記のようにすれば、視野検査中に収集されたOCTデータを利用することで、結果として、OCT検査と視野検査の両方の効率化を行うことが可能となる。なお、OCTデータに基づいて刺激点を設定する場合の詳細については、例えば、本出願人による特開2012-100713号公報を参照されたい。
【0120】
なお、上記説明においては、視野検査中に収集されたOCTデータを用いて刺激点の位置を設定したが、これに限定されない。例えば、視野検査前にOCTデータが取得され、取得されたOCTデータに基づいて視野検査パターンが設定されてもよい。そして、制御部70は、OCTデータに基づく視野検査パターンを用いて各々の刺激点が眼底に投影されている間、さらに、OCTデータを収集するようにしてもよい。
【0121】
<視野測定結果に基づくOCTの撮影条件の設定>
視野測定結果を用いてOCTデータの取得位置を設定する場合、例えば、制御部70は、視野検査によって取得された測定結果データを処理して眼底の異常部位に関する位置情報を取得し、取得された位置情報に基づいてOCTデータの取得位置を設定するようにしてもよい。
【0122】
この場合、制御部70は、取得された測定結果データを、所定の判定基準を用いて判定処理することにより眼底の異常部位に関する位置情報を取得し、異常部位が撮像領域に含まれるようにOCTデータの取得位置を設定するようにしてもよい。なお、具体的な手法については、例えば、特開2012-100714号公報を参照されたい。なお、制御部70は、視野検査結果を人工知能を用いて解析し、眼底上における異常部位の位置を特定してもよい。また、制御部70は、視野検査結果を処理して得られた解析結果(例えば、視野解析マップ)を人工知能を用いて解析し、眼底上における異常部位の位置を特定してもよい。異常部位の特定においては、疾患の確率を二次元的に示すアテンションマップが視野検査結果に基づいて生成されてもよく、アテンションマップにおいて疾患の確率が高いとされた位置が、異常部位として特定されてもよい。なお、アテンションマップが表示部74に表示され、OCTの取得位置の設定に用いられてもよい。
【0123】
異常部位が特定されると、例えば、制御部70は、異常部位におけるOCTデータを詳細に得るために、異常部位を含む領域において高密度のOCTデータを取得してもよいし、異常部位を含む領域において特定の撮影モードでのOCTデータ(例えば、OCTモーションコントラストデータ)を取得してもよい。この場合、制御部70は、OCT撮影の開始前に予め設定された撮影制御パターンを構成する撮影条件を変更するようにしてもよいし、追加的に、異常部位に対するOCT撮影を行うようにしてもよい。
【0124】
上記のようにすれば、視野測定中にOCTデータを取得する際、視野測定中に既に取得された視野検査結果を利用することで、結果として、OCT撮影と視野検査の両方の効率化を行うことが可能となる。また、視野検査に応じた詳細なOCTデータが取得されるので、異常部位における機能面と構造面での評価をより詳細に行うことができる。
【0125】
<光刺激前後のOCT計測>
図9は、光刺激前後でのOCTデータの変化を検出する場合の一例を示すフローチャートである。制御部70は、各々の刺激点が眼底に投影されている間、OCT光学系100を制御することによって、刺激点による光刺激前後でのOCTデータの変化を検出してもよい。視野検査パターンが予め設定されているので、各々の刺激点の位置、刺激タイミングは、既知である。制御部70は、OCT光学系100の走査部108を制御し、第1の刺激点が眼底に投影される前に、第1の刺激点を含む眼底領域における光刺激前のOCTデータを取得する。次に、制御部70は、測定光学系500を制御し、第1の刺激点を眼底に投影する。第1の刺激点が眼底に投影された後、制御部70は、OCT光学系100の走査部108を制御し、第1の刺激点を含む眼底領域における光刺激後のOCTデータを取得する。この場合、刺激点を含むOCTデータが時間的に連続して取得されてもよく、例えば、光刺激中のOCTデータが取得されてもよい。なお、同一位置の刺激点において異なる輝度で測定が行われる場合において、刺激前後のOCTデータが再度取得されてもよく、OCTデータの変化を含めて捉えてもよい。
【0126】
次に、第1の刺激点での視野測定が行われ、第1の刺激点での刺激前後のOCTデータが取得された後、刺激点の位置が第1の刺激点から第2の刺激点に変更される際、制御部70は、第2の刺激点が眼底に投影される前に、第2の刺激点を含む眼底領域における光刺激前のOCTデータを取得する。次に、制御部70は、第2の刺激点を眼底に投影する。第2の刺激点が眼底に投影された後、制御部70は、第2の刺激点を含む眼底領域における光刺激後のOCTデータを取得する。これにより、第2の刺激点での視野測定が行われ、第2の刺激点での刺激前後のOCTデータが取得される。
【0127】
以上のようにして、制御部70は、各々の刺激点が眼底に投影される間、各刺激点での光刺激前後のOCTデータを取得する。次に、制御部70は、各刺激点に関して、光刺激前後でのOCTデータの輝度変化を各画素に求めてもよい。輝度変化は、差分や比などを求めることによって得られる。このようにOCTデータの輝度変化を検出することで、各刺激点に関する眼底の内因性信号が抽出される。制御部70は、各刺激点での輝度変化情報を表示部に表示する。この場合、OCTデータの各画素に対応させて表示してもよいし、輝度変化の統合値(例えば、平均値、最大値等)が表示されてもよい。
【0128】
上記のような眼底の内因性信号は、光刺激による網膜反応と考えることができるので、各刺激点での内因性信号を捉えることで、各刺激点での網膜感度を他覚的に確認できる。例えば、網膜の感度が高い場合、内因性信号が大きく、網膜感度が低い場合、内因性信号が小さくなると考えられる。これにより、各刺激点での視野計測を他覚的に行うことができる。この場合、検者からの自覚的な応答結果を取得しておくことで、自覚的な応答結果と内因性信号との関係性を評価できる。また、自覚的な応答結果を取得せず、内因性信号に基づく他覚的な視野計測を行うようにしてもよい。
【0129】
なお、上記説明においては、光刺激前後でのOCTデータの輝度変化を検出したが、これに限定されない。例えば、OCTデータの変化を検出する場合、光刺激前のOCTデータと光刺激後のOCTデータをそれぞれ解析し、解析結果の変化を検出するようにしてもよい。この場合、眼底の厚みの変化を検出するようにしてもよい。これによれば、光刺激前後での眼底の構造的変化を評価できる。
【0130】
なお、光刺激前後に取得するOCTデータは、BスキャンOCTデータであってもよいし、3次元OCTデータであってもよく、BスキャンOCTデータであれば、短時間でのデータ取得が可能であり、3次元OCTデータであれば、刺激点の周辺を二次元的に含めたOCTデータの変化が得られる。この場合、刺激点の中心と周辺を含めた一定範囲のOCTデータが得られることによって、光刺激による視細胞の変化に加えて、周辺組織への影響を評価できる。
【0131】
なお、上記においては、OCTデータが、眼底での測定光の反射強度(散乱強度)を示す通常のOCT画像である場合を例示したが、OCTデータは、OCTモーションコントラストデータであってもよいし、OCTドップラーデータであってもよい。この場合、OCTモーションコントラストデータは、例えば、時間的に異なるOCTデータ間の振幅・位相等の変化量を輝度値として画像化したデータとして示される。OCTドップラーデータは、例えば、時間的に異なるOCTデータ間を比較することによって検出されたドップラーシフトに基づくデータであり、血管の血流速度の取得等に用いられる。すなわち、制御部70は、光刺激前後でのOCTモーションコントラストデータの変化(例えば、OCTモーションコントラストデータ間の輝度変化)を検出するようにしてもよいし、光刺激前後でのOCTドップラーデータの変化(例えば、OCTドップラーデータ間の変化)を検出するようにしてもよい。
【0132】
この場合、制御部70は、光刺激前において同一位置にて時間的に異なる複数のOCTデータを取得することで、光刺激前のOCTモーションコントラストデータ(又はOCTドップラーデータ)を取得できる。また、制御部70は、光刺激後において同一位置にて時間的に異なる複数のOCTデータを取得することで、光刺激後のOCTモーションコントラストデータ(又はOCTドップラーデータ)を取得できる。なお、OCTモーションコントラストデータ・OCTドップラーデータの取得手法については、本出願人による特開2016-106651号公報、特開2018-121888号公報を参照されたい。この場合、OCTドップラーデータの基礎となる眼底血管の3次元構造を得るために、OCTモーションコントラストデータが予め取得されてもよい。
【0133】
例えば、制御部70は、光刺激前後でのOCTモーションコントラストデータの輝度変化を求めてもよい。これによって、OCTモーションコントラストデータによる内因性信号を確認してもよい。また、OCTモーションコントラストデータによって画像化された血管構造の変化(例えば、血管径の変化、毛細血管数の変化)を確認してもよい。この場合、輝度の差分を求めることで、画像化される血管の増大・消失等が検出され、結果として、血管径の変化、毛細血管数の変化をとらえることも可能である。
【0134】
刺激前後のOCTモーションコントラストデータを取得する場合、制御部70は、刺激前と刺激後のそれぞれにおいて、同一位置に関して時間的に異なる3つ以上のOCTデータを取得し、OCTデータ間のタイムインターバルが異なる組毎にOCTモーションコントラストデータを生成するようにしてもよい。この場合、組によってタイムインターバルが異なるので、血流速が異なる血管をモーションコントラストとして検出できる。この場合、制御部70は、基礎となるOCTデータ間のタイムインターバルに分けて、刺激前と刺激後のOCTモーションデータ間の変化(例えば、輝度変化、血管構造の変化)を検出してもよい。なお、タイムインターバルが異なるOCTモーションコントラストデータを得る手法については、本出願人による国際公開2017-119437号公報を参照されたい。
【0135】
また、制御部70は、光刺激前のOCTモーションコントラストデータと光刺激後のOCTモーションコントラストデータをそれぞれ解析し、解析結果の変化を検出するようにしてもよい。この場合、血管密度の変化を検出するようにしてもよい。これによれば、光刺激前後での眼底血管の構造的変化を評価できる。
【0136】
また、制御部70は、光刺激前後でのOCTドップラーデータの変化(例えば、OCTドップラーデータ間の変化)を検出することによって、刺激前後での血流速の変化を検出するようにしてもよい。これにより、OCTドップラーデータによる内因性信号を確認してもよい。
【0137】
なお、上記実施例において、OCT光学系は、被検眼の高次収差を含めて補償可能な波面補償光学系を備えるOCT光学系(AO-OCT光学系)であってもよく、この場合、OCTデータを用いた評価をより細胞レベルで詳細に行うことができる。この場合、正面撮像光学系においても、波面補償光学系が設けられてもよい。
【0138】
なお、上記実施例においては、視野測定光学系とOCT光学系とを備える眼底撮影装置について説明したが、被検眼の調節力を測定するための眼屈折力測定光学系と、被検眼の前眼部水晶体のOCTデータを取得するためのOCT光学系とを備える前眼部撮影装置においても、本実施形態の適用である。この場合、前述の眼底撮影装置に対して、追加的に、眼屈折力測定光学系と、前眼部水晶体のOCTデータを取得するための構成(例えば、レンズ挿脱又はアタッチメントによる前眼部と眼底の切換機構)が設けられてもよい。この場合、調節力測定の結果と、調節時のOCTデータの変化とを検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【
図1】第1の実施例に係る眼底撮影装置の光学系を示す図である。
【
図2】第2の実施例に係る眼底撮影装置の光学系を示す図である。
【
図3】本実施例に係る第2の波長分離部材のカットオン波長の一例を示す図である。
【
図4】本実施例に係る第1の波長分離部材のカットオン波長の一例を示す図である。
【
図5】第3の実施例に係る眼底撮影装置の光学系を示す図である。
【
図6】第4の実施例に係る眼底撮影装置の光学系を示す図である。
【
図7】第2の実施形態の実施例に係る制御系の一例を示すブロック図である。
【
図8】第2の実施形態の実施例に係る装置の表示画面の一例を示す図である。
【
図9】光刺激前後でのOCTデータの変化を検出する場合の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0140】
100 OCT光学系
200 正面撮像光学系
300 第1の波長分離部材
350 第2の波長分離部材
380 第3の波長分離部材
400 前眼部観察光学系
500 可視光学系