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特許7537214液体吐出装置、液体吐出装置のメンテナンス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出装置のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240814BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/01 401
B41J2/165 207
B41J2/165 211
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020165282
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057170
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 翠
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-044337(JP,A)
【文献】特開2019-064115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0137553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保湿剤及び水分を含有する液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルが開口する閉空間を形成可能なキャップと、
前記液体吐出ヘッドを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記液体中の水分量から前記保湿剤により吸湿される水分量を除いた有効水分量を算出
する算出部と、
前記液体を前記ノズルから前記キャップ内に強制的に排出させる排出制御部と、
を有し、
前記算出部は、前記キャップ内の前記液体の前記有効水分量であるキャップ内有効水分
量を、前記ノズルから前記キャップ内に排出された前記液体の量に基づいて算出し、
前記排出制御部は、前記キャップ内有効水分量が予め設定した初期有効水分量よりも少
なくなった場合に、前記キャップ内有効水分量と前記初期有効水分量との差に1よりも大
きい所定の係数をかけた量を前記有効水分量として含む量の前記液体を排出させることを
特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記所定の係数は、前記キャップ内有効水分量に応じて設定される第1係数及び第2係
数を含み、
前記キャップ内有効水分量が少ない場合に設定される前記第1係数は、前記キャップ内
有効水分量が多い場合に設定される前記第2係数より大きいことを特徴とする請求項1に
記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記排出制御部は、前記液体吐出ヘッドから前記液体を吐出させることで、前記ノズル
から前記キャップ内に前記液体を強制的に排出させることを特徴とする請求項1又は請求
項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記閉空間を介して前記ノズルから前記液体を吸引させる吸引機構を更に備え、
前記算出部は、前記吸引機構が前記ノズルから前記液体を吸引させた場合、吸引前の前
記キャップ内の前記液体の量と、吸引前の前記キャップ内の前記液体に含まれる前記有効
水分量と、吸引に伴って前記ノズルから排出される前記液体の量と、前記ノズルから排出
される前記液体に含まれる前記有効水分量と、を含む複数のパラメーターに基づいて、吸
引後の前記キャップ内有効水分量を算出することを特徴とする請求項1~請求項3のうち
何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドは、液体収容体に収容される前記液体を吐出し、
前記制御部は、前記吸引機構に吸引動作を実行させる吸引制御部を更に有し、
前記吸引制御部は、
前記キャップ内に排出された前記保湿剤の量である保湿剤量が所定量を超え、前記液体
収容体に収容される前記液体の量が所定の閾値以上の場合には、第1吸引量の液体を吸引
させる第1吸引動作を前記吸引機構に実行させ、
前記保湿剤量が前記所定量を超え、前記液体収容体に収容される前記液体の量が前記所
定の閾値より少ない場合には、前記第1吸引量よりも少ない第2吸引量の液体を吸引させ
る第2吸引動作を前記吸引機構に複数回実行させることを特徴とする請求項4に記載の液
体吐出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記キャップが開放されている開放時間を、前記キャップが開放される毎に計測する開
放時間計測部と、
前記キャップが閉塞されて前記閉空間を形成する閉塞時間を、前記キャップが閉塞され
る毎に計測する閉塞時間計測部と、
前記開放時間の累積である開放累積時間を計測する累積時間計測部と、
を更に有し、
前記算出部は、前記開放時間計測部による計測結果と、前記閉塞時間計測部による計測
結果と、前記累積時間計測部による計測結果と、に基づいて前記キャップ内有効水分量を
算出することを特徴とする請求項1~請求項5のうち何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記液体吐出ヘッドによる直前の吐出が終了した時から経過した経過時
間を計測する経過時間計測部を更に有し、
前記算出部は、前記経過時間に基づいて前記キャップ内から前記キャップ外に透過した
水分の累積である累積水分透過量を算出し、算出した前記累積水分透過量に基づいて前記
キャップ内有効水分量を算出することを特徴とする請求項1~請求項6のうち何れか一項
に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
保湿剤及び水分を含有する液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドと、
前記ノズルが開口する閉空間を形成可能なキャップと、
を備える液体吐出装置のメンテナンス方法であって、
前記キャップ内の前記液体中の水分量から前記保湿剤により吸湿される水分量を除いた
キャップ内有効水分量を、前記ノズルから前記キャップ内に排出された前記液体の量に基
づいて算出し、
前記キャップ内有効水分量が、予め設定した初期有効水分量よりも少なくなった場合に
、前記キャップ内有効水分量と前記初期有効水分量との差に1よりも大きい所定の係数を
かけた量を、前記液体中の水分量から前記保湿剤により吸湿される水分量を除いた有効水
分量として含む量の前記液体を、前記ノズルから前記キャップ内に強制的に排出させるこ
とを特徴とする液体吐出装置のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出装置のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、液体吐出ヘッドの一例である記録ヘッドから液体の一例であるインクを吐出して印刷を行う液体吐出装置の一例であるプリンターがある。プリンターは、ノズルをキャッピングするキャップを備える。
【0003】
インクは、ノズル内での粘度の上昇を抑制するために保湿剤を含有する。しかし、保湿剤は、インク中の水分が蒸発すると周囲の水分を吸収する。そのため、インクが付着したキャップでノズルをキャッピングすると、保湿剤は、ノズル内のインクから水分を奪い取ってしまう。特許文献1のプリンターは、インクをキャップに補充することで、蒸発した水分をインクにより補っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-44337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のプリンターは、液体が含む水分量から保湿剤によって吸湿される水分量を除いたキャップ内有効水分量が初期値に戻るようにインクを補充する。しかし、キャプ内有効水分量が初期値に戻るようにインクを補充しても、ノズル内のインクは、想定よりも粘度の上昇が進んでしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する液体吐出装置は、保湿剤及び水分を含有する液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドと、前記ノズルが開口する閉空間を形成可能なキャップと、前記液体吐出ヘッドを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体中の水分量から前記保湿剤により吸湿される水分量を除いた有効水分量を算出する算出部と、前記液体を前記ノズルから前記キャップ内に強制的に排出させる排出制御部と、を有し、前記算出部は、前記キャップ内の前記液体の前記有効水分量であるキャップ内有効水分量を、前記ノズルから前記キャップ内に排出された前記液体の量に基づいて算出し、前記排出制御部は、前記キャップ内有効水分量が予め設定した初期有効水分量よりも少なくなった場合に、前記キャップ内有効水分量と前記初期有効水分量との差に1よりも大きい所定の係数をかけた量を前記有効水分量として含む量の前記液体を排出させる。
【0007】
上記課題を解決する液体吐出装置のメンテナンス方法は、保湿剤及び水分を含有する液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドと、前記ノズルが開口する閉空間を形成可能なキャップと、を備える液体吐出装置のメンテナンス方法であって、前記キャップ内の前記液体中の水分量から前記保湿剤により吸湿される水分量を除いたキャップ内有効水分量を、前記ノズルから前記キャップ内に排出された前記液体の量に基づいて算出し、前記キャップ内有効水分量が、予め設定した初期有効水分量よりも少なくなった場合に、前記キャップ内有効水分量と前記初期有効水分量との差に1よりも大きい所定の係数をかけた量を、前記液体中の水分量から前記保湿剤により吸湿される水分量を除いた有効水分量として含む量の前記液体を、前記ノズルから前記キャップ内に強制的に排出させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】液体吐出装置の一実施形態の模式図。
図2】キャップの模式断面図。
図3】制御部のブロック図。
図4】メンテナンスルーチンを示すフローチャート。
図5】メンテナンスルーチンを示すフローチャート。
図6】蒸発量と係数との関係を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、液体吐出装置、液体吐出装置のメンテナンス方法の一実施形態を、図面を参照して説明する。液体吐出装置は、例えば、用紙などの媒体に液体の一例であるインクを吐出して印刷するインクジェット式のプリンターである。
【0010】
図面では、液体吐出装置11が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、水平面に沿う方向をX軸とY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。本実施形態では、液体の粘度が上昇することを増粘ともいう。
【0011】
図1に示すように、液体吐出装置11は、筐体12と、筐体12に支持されるガイド軸13と、ガイド軸13に沿って移動可能に設けられる印刷部14と、を備えてもよい。液体吐出装置11は、媒体15を支持する媒体支持部16と、印刷部14のメンテナンスを行うメンテナンス部17と、を備えてもよい。
【0012】
印刷部14は、媒体15にノズル19から液体を吐出することで印刷を行う液体吐出ヘッド20を備える。印刷部14は、液体吐出ヘッド20をガイド軸13に沿って移動させるキャリッジ21を備えてもよい。キャリッジ21は、液体を収容する液体収容体22を搭載した状態で移動してもよい。液体吐出ヘッド20は、液体収容体22に収容される液体を吐出する。
【0013】
メンテナンス部17は、払拭部24と、キャップ25と、吸引機構26と、廃液収容部27と、を備えてもよい。吸引機構26は、キャップ25と廃液収容部27とを繋ぐ排出路28と、排出路28の途中に設けられる排出ポンプ29と、を備えてもよい。
【0014】
キャップ25は、図1に示す離間位置と、図2に示すキャッピング位置と、の間で移動可能に設けられる。排出路28は、上流端がキャップ25に接続され、下流端が廃液収容部27に接続される。排出路28は、キャップ25の移動に伴って変形するチューブにより構成してもよい。廃液収容部27は、液体吐出ヘッド20から排出された液体を廃液として収容する。
【0015】
図2に示すように、キャップ25は、液体吐出ヘッド20に接触可能なリップ部31と、液体を吸収可能な吸収部材32と、を備えてもよい。本実施形態のキャップ25は、リップ部31が液体吐出ヘッド20に接触することで、液体吐出ヘッド20との間にノズル19が開口する閉空間33を形成する。リップ部31は、例えば弾性変形するゴムもしくはエラストマーなどにより形成すると、閉空間33の密閉性を高めることができる。吸収部材32は、閉空間33内に位置し、保持する液体により閉空間33内を保湿する。
【0016】
<液体>
液体は、保湿剤及び水分を含有する。液体は、色材等の材料を含有してもよい。保湿剤は、例えばグリセリン及びジエチレングリコールなどの多価アルコール類を用いてもよい。保湿剤は、吸湿性を有し、吸湿した水分を保持する。保湿剤は、液体の増粘を抑制し、結果としてノズル19の目詰まりを抑制することができる。
【0017】
液体に含まれる水分のうち、保湿剤により吸湿される水分を無効水分といい、無効水分の量を無効水分量という。液体に含まれる水分のうち保湿剤が保持しない水分を有効水分といい、有効水分の量を有効水分量という。液体に含まれる保湿剤の量を保湿剤量という。
【0018】
<メンテナンス>
図1に示すように、払拭部24は、液体吐出ヘッド20を払拭可能な払拭位置と、液体吐出ヘッド20に接触しない非払拭位置と、の間で移動可能に設けられる。払拭位置に位置する払拭部24は、移動する液体吐出ヘッド20に接触することで、液体吐出ヘッド20を払拭する。払拭部24が液体吐出ヘッド20を払拭するメンテナンスは、ワイピングともいう。
【0019】
図2に示すように、キャップ25が液体吐出ヘッド20との間に閉空間33を形成するメンテナンスは、キャッピングともいう。キャッピング位置に位置するキャップ25は、ホーム位置に位置する液体吐出ヘッド20をキャッピングする。キャップ25は、キャッピング位置から離間位置に移動することで閉空間33を開放する。
【0020】
吸引機構26は、閉空間33を介してノズル19から液体を吸引させる。具体的には、吸引機構26は、排出ポンプ29を駆動させて閉空間33内を減圧し、ノズル19から液体を強制的に排出させる。排出された液体は、排出路28を介して廃液収容部27に廃液として収容される。閉空間33内を減圧してノズル19から液体を強制的に排出させるメンテナンスは、吸引クリーニングともいう。
【0021】
吸引機構26は、キャップ25が離間位置に位置する状態で排出ポンプ29を駆動させ、キャップ25内の液体を排出させてもよい。閉空間33が開放された状態でキャップ25内の液体を強制的に排出させるメンテナンスは、空吸引ともいう。
【0022】
ノズル19から液体を吐出により排出させるメンテナンスは、空吐出ともいう。キャップ25は、液体吐出ヘッド20から空吐出により吐出された液体を受容してもよい。本実施形態の空吐出は、ホーム位置に位置する液体吐出ヘッド20に、離間位置に位置するキャップ25に向けて液体を吐出させる。
【0023】
<電気的構成>
図3に示すように、液体吐出装置11は、液体吐出ヘッド20を制御する制御部35を備える。制御部35は、メンテナンス部17など、液体吐出装置11の各種構成を制御する。
【0024】
制御部35は、α:コンピュータープログラムに従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサー、β:各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはγ:それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサーは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる可読媒体を含む。
【0025】
制御部35は、記憶部36を有する。記憶部36は、例えば、上述したRAM及びROM等のメモリーである。記憶部36は、各種プログラム、各種パラメーターを記憶する。制御部35は、記憶部36に記憶されるプログラムを実行することによって、排出制御部37、吸引制御部38、開放時間計測部39、閉塞時間計測部40、累積時間計測部41、経過時間計測部42、及び算出部43、として機能してもよい。そのため、制御部35は、排出制御部37と、吸引制御部38と、開放時間計測部39と、閉塞時間計測部40と、累積時間計測部41と、経過時間計測部42と、算出部43と、を有するといえる。
【0026】
記憶部36は、第1係数及び第2係数を含む所定の係数を記憶していてもよい。記憶部36は、予め設定した初期液量を記憶していてもよい。記憶部36は、予め設定した初期有効水分量を記憶していてもよい。初期液量は、液体吐出ヘッド20に液体を最初に充填する初期充填に伴ってキャップ25が保持する液体の量である。初期有効水分量は、初期充填後のキャップ25内の液体に含まれる有効水分の量である。初期充填では、キャップ25が液体吐出ヘッド20をキャッピングした状態で、吸引機構26が閉空間33内を減圧する。キャップ25は、初期充填に伴ってノズル19から排出される液体を受容する。
【0027】
記憶部36は、液体に関する情報として、単位量あたりの液体が含有する有効水分量と無効水分量を記憶していてもよい。制御部35は、液体に関する情報を例えば液体収容体22から取得し、記憶部36に記憶してもよい。
【0028】
排出制御部37は、液体をノズル19からキャップ25内に強制的に排出させる。排出制御部37は、液体吐出ヘッド20から液体を吐出させる空吐出を行わせることで、ノズル19からキャップ25内に液体を強制的に排出させてもよい。排出制御部37は、吸引クリーニングを行わせることで液体を排出させてもよい。吸引クリーニングは、空吐出に比べ多くの液体をノズル19から排出させることができる。
【0029】
吸引制御部38は、吸引機構26に吸引動作を実行させる。吸引機構26は、吸引動作を実行することで、液体吐出ヘッド20の吸引クリーニングを行う。吸引制御部38は、吸引機構26の駆動を制御し、第1吸引動作と第2吸引動作とを選択して実行させてもよい。第1吸引動作は、吸引クリーニングを実行させてノズル19から第1吸引量の液体を吸引させる。第2吸引動作は、吸引クリーニングを実行させてノズル19から第1吸引量よりも少ない第2吸引量の液体を吸引させる。吸引制御部38は、例えば排出ポンプ29の駆動時間を変えることで、吸引量を変更してもよい。
【0030】
開放時間計測部39は、キャップ25が開放されている開放時間を、キャップ25が開放される毎に計測する。開放時間計測部39は、閉空間33が開放されてから再び閉空間33が形成されるまでの開放時間を計測し、記憶部36に記憶する。
【0031】
閉塞時間計測部40は、キャップ25が閉塞されて閉空間33を形成する閉塞時間を、キャップ25が閉塞される毎に計測する。閉塞時間計測部40は、閉空間33が形成されてから閉空間33が開放されるまでの閉塞時間を計測し、記憶部36に記憶する。
【0032】
累積時間計測部41は、開放時間の累積である開放累積時間を計測する。累積時間計測部41は、閉空間33が形成されている間、時間の計測を停止することで開放累積時間を計測してもよい。開放累積時間は、開放時間計測部39が計測した開放時間を、算出部43が足し合わせることで求めてもよい。この場合、開放時間計測部39と算出部43は、累積時間計測部41としても機能する。
【0033】
経過時間計測部42は、液体吐出ヘッド20による直前の吐出が終了した時から経過した経過時間を計測する。経過時間計測部42は、印刷を終了したときから経過した経過時間を計測してもよい。経過時間計測部42は、空吐出を終了したときから経過した経過時間を計測してもよい。
【0034】
算出部43は、経過時間に基づいてキャップ25内からキャップ25外に透過した水分の累積である累積水分透過量を算出してもよい。水分は、キャップ25を透過することがある。すなわち、キャップ25内の水分は、キャップ25がキャッピングを維持した状態でも減少することがある。算出部43は、例えば記憶部36が記憶する単位時間あたりにキャップ25を透過する水分の量と、経過時間と、を乗算することで累積水分透過量を算出してもよい。
【0035】
算出部43は、有効水分量を算出する。液体中の水分の量を水分量とすると、有効水分量は、以下の式で示される。
有効水分量=水分量-無効水分量・・・(1)
すなわち、有効水分量は、液体中の水分量から保湿剤により吸湿される水分量である無効水分量を除いた量である。算出部43は、算出した有効水分量を記憶部36に記憶する。
【0036】
<キャップ内液量>
算出部43は、キャップ25内の液体の量であるキャップ内液量を算出し、記憶部36に記憶してもよい。
【0037】
空吸引後及び吸引クリーニング後のキャップ内液量は、初期液量とほぼ等しい。
空吐出後のキャップ内液量は、以下の式で示される。受容量は、空吐出に伴ってノズル19から排出され、キャップ25が受容する液体の量である。
【0038】
空吐出後のキャップ内液量=空吐出前のキャップ内液量+受容量・・・(2)
算出部43は、記憶部36に記憶される空吐出前のキャップ内液量に、受容量を加算することで空吸引後のキャップ内液量を算出する。
【0039】
<空吐出後のキャップ内有効水分量>
算出部43は、キャップ25内の液体の有効水分量であるキャップ内有効水分量を、ノズル19からキャップ25内に排出された液体の量に基づいて算出する。
【0040】
空吐出後のキャップ内有効水分量は、以下の式で示される。受容量は、ノズル19からキャップ25内に排出され、キャップ25が受容した液体の量である。
空吐出後のキャップ内有効水分量=空吐出前のキャップ内有効水分量+受容量×有効水分係数・・・(3)
有効水分係数は、受容量に対する有効水分の割合を示す。記憶部36は、予め有効水分係数を記憶していてもよい。受容量に有効水分係数を乗算することで、受容量の液体に含まれる有効水分量を算出できる。算出部43は、空吐出前のキャップ内有効水分量に、ノズル19から排出された液体に含まれる有効水分量を加算することで、空吐出後のキャップ内有効水分量を算出してもよい。
【0041】
<空吐出後のキャップ内保湿剤量>
キャップ25内の液体に含まれる保湿剤の量であるキャップ内保湿剤量は、以下の式で示される。受容量は、ノズル19からキャップ25内に排出され、キャップ25が受容した液体の量である。
【0042】
空吐出後のキャップ内保湿剤量=空吐出前のキャップ内保湿剤量+受容量×保湿剤係数・・・(4)
保湿剤係数は、受容量に対する保湿剤量の割合を示す。記憶部36は、予め保湿剤係数を記憶していてもよい。受容量に保湿剤係数を乗算することで、受容量の液体に含まれる保湿剤量を算出できる。算出部43は、空吐出前のキャップ内保湿剤量に、ノズル19から排出された液体に含まれる保湿剤量を加算することで、空吐出後のキャップ内保湿剤量を算出してもよい。
【0043】
<空吸引後のキャップ内有効水分量>
空吸引後のキャップ内有効水分量は、以下の式で示される。
空吸引後のキャップ内有効水分量=空吸引前のキャップ内有効水分量×空吸引後のキャップ内液量/空吸引前のキャップ内液量・・・(5)
空吸引では、キャップ25内の液体をキャップ25から排出するため、液体の量に対する有効水分量の割合は変化しない。そのため、算出部43は、空吸引前のキャップ内有効水分量に、空吸引により減少した液体の割合をかけることで、空吸引後のキャップ内有効水分量を算出する。
【0044】
<空吸引後のキャップ内有効水分量>
空吸引後のキャップ内保湿剤量は、以下の式で示される。
空吸引後のキャップ内保湿剤量=空吸引前のキャップ内保湿剤量×空吸引後のキャップ内液量/空吸引前のキャップ内液量・・・(6)
空吸引では、キャップ25内の液体をキャップ25から排出するため、液体の量に対する保湿剤量の割合は変化しない。そのため、算出部43は、空吸引前のキャップ内保湿剤量に、空吸引により減少した液体の割合を掛けることで、空吸引後のキャップ内保湿剤量を算出する。
【0045】
<吸引クリーニング後のキャップ内有効水分量>
算出部43は、吸引機構26がノズル19から液体を吸引させた場合、吸引前のキャップ内液量と、吸引前のキャップ内有効水分量と、受容量と、有効受容量と、を含む複数のパラメーターに基づいて、吸引後のキャップ内有効水分量を算出してもよい。吸引前のキャップ内液量は、吸引前のキャップ25内の液体の量である。吸引前のキャップ内有効水分量は、吸引前のキャップ25内の液体に含まれる有効水分量である。受容量は、吸引に伴ってノズル19から排出される液体の量と、キャップ25から排出された液体の量との差であり、吸引クリーニングにより増加する液体の量である。有効受容量は、ノズル19から排出される液体に含まれる有効水分量と、キャップ25から排出された有効水分量との差である。換言すると、有効受容量は、受容量の液体に含まれる有効水分量である。算出部43は、受容量に有効水分係数を乗算することで、有効受容量を算出してもよい。
【0046】
吸引クリーニング後のキャップ内有効水分量は、以下の式で示される。
キャップ内有効水分量=(キャップ内有効水分量+有効受容量)×吸引クリーニング後のキャップ内液量/(吸引クリーニング前のキャップ内液量+受容量)・・・(7)
<吸引クリーニング後のキャップ内保湿剤量>
吸引クリーニング後のキャップ内保湿剤量は、以下の式で示される。
【0047】
キャップ内保湿剤量=(キャップ内保湿剤量+受容保湿剤量)×吸引クリーニング後のキャップ内液量/(吸引クリーニング前のキャップ内液量+受容量)・・・(8)
受容保湿剤量は、ノズル19から排出される液体に含まれる保湿剤量であり、受容量の液体に含まれる保湿剤量である。算出部43は、受容量に保湿剤係数を乗算することで、受容保湿剤量を算出してもよい。
【0048】
算出部43は、開放時間計測部39による計測結果と、閉塞時間計測部40による計測結果と、累積時間計測部41による計測結果と、に基づいてキャップ内有効水分量を算出してもよい。算出部43は、算出した累積水分透過量に基づいてキャップ内有効水分量を算出してもよい。例えば、算出部43は、開放時間計測部39が計測した開放時間と、閉塞時間計測部40が計測した閉塞時間と、累積時間計測部41が計測した開放累積時間と、累積水分透過量と、のうち少なくとも1つのパラメーターを用いて蒸発量を算出してもよい。
【0049】
記憶部36は、閉空間33が開放された状態で単位時間当たりに蒸発する水分の量を記憶していてもよい。算出部43は、開放状態で単位時間当たりに蒸発する水分の量と、開放時間もしくは開放累積時間と、を乗算することで、開放状態での蒸発量を算出してもよい。
【0050】
記憶部36は、閉空間33が閉塞された状態で単位時間当たりに蒸発する水分の量を記憶していてもよい。算出部43は、閉塞状態で単位時間当たりに蒸発する水分の量と、閉塞時間と、を乗算することで、閉塞状態での蒸発量を算出してもよい。算出部43は、開放状態での蒸発量と、閉塞状態での蒸発量もしく累積水分透過量と、を加算して蒸発量を算出してもよい。
【0051】
算出部43は、キャップ内液量とキャップ内有効水分量の算出に蒸発量を用いてもよい。
キャップ内液量=キャップ内液量-蒸発量・・・(9)
キャップ内有効水分量=キャップ内有効水分量-蒸発量・・・(10)
算出部43は、記憶部36が記憶するキャップ内液量を、蒸発量を減算した量に更新してもよい。算出部43は、記憶部36が記憶するキャップ内有効水分量を、蒸発量を減算した量に更新してもよい。算出部43は、定期的に蒸発量をキャップ内液量及びキャップ内有効水分量に反映させてもよい。算出部43は、液体吐出装置11の電源がオンされたとき、電源がオフされたとき、の少なくとも一方のタイミングで蒸発量をキャップ内液量及びキャップ内有効水分量に反映させてもよい。保湿剤は、蒸発せずにキャップ25内に留まる。したがって、水分が蒸発してキャップ内液量及びキャップ内有効水分量が変化しても、キャップ内保湿剤量はほぼ同じ量を維持する。
【0052】
次に、図4図5に示すフローチャートを参照し、液体吐出装置11のメンテナンス方法について説明する。制御部35は、図4図5に示すメンテナンスルーチンを定期的に実行してもよいし、空吐出前、空吐出後、キャッピング前、キャッピング後、吸引クリーニング前、吸引クリーニング後、空吸引前、空吸引後など、任意のタイミングで実行してもよい。
【0053】
図4に示すように、ステップS101において、制御部35は、記憶部36が記憶するキャップ内液量と、容量閾値と、を比較する。容量閾値は、キャップ25が収容可能な液体の量であってもよいし、吸収部材32が保持可能な液体の量であってもよい。
【0054】
キャップ内液量が容量閾値以上の場合、ステップS101がNOになり、制御部35は、処理をステップS102に移行する。ステップS102において、制御部35は、空吸引を実行する。
【0055】
ステップS103において、制御部35は、キャップ内有効水分量を算出し、記憶部36が記憶するキャップ内有効水分量を算出したキャップ内有効水分量に更新する。ステップS104において、制御部35は、キャップ内保湿剤量を算出し、記憶部36が記憶するキャップ内保湿剤量を算出したキャップ内保湿剤量に更新する。ステップS105において、制御部35は、記憶部36が記憶するキャップ内液量を初期液量にし、処理をステップS106に移行する。
【0056】
ステップS101において、キャップ内液量が容量閾値未満の場合、ステップS101がYESになり、制御部35は、処理をステップS106に移行する。ステップS106において、制御部35は、キャップ内有効水分量と初期有効水分量とを比較する。
【0057】
キャップ内有効水分量が初期有効水分量以上の場合、ステップS106がNOになり、制御部35は、メンテナンスルーチンを終了する。キャップ内有効水分量が初期有効水分量未満の場合、ステップS106がYESになり、制御部35は、処理をステップS107に移行する。
【0058】
ステップS107において、制御部35は、キャップ内有効水分量と水分閾値とを比較する。水分閾値は、記憶部36が予め記憶する値である。キャップ内有効水分量が水分閾値より少ない場合、ステップS107がYESになり、制御部35は、処理をステップS108に移行する。ステップS108において、制御部35は、所定の係数を第1係数に設定する。
【0059】
キャップ内有効水分量が水分閾値以上である場合、ステップS107がNOになり、制御部35は、処理をステップS109に移行する。ステップS109において、制御部35は、所定の係数を第2係数に設定する。第2係数は、第1係数より小さい。ステップS110において、制御部35は、排出液量を算出する。
【0060】
図5に示すように、ステップS201において、制御部35は、記憶部36が記憶するキャップ内保湿剤量と、所定量と、を比較する。所定量は、記憶部36が予め記憶している。
【0061】
キャップ内保湿剤量が所定量以下の場合、ステップS201がNOになり、制御部35は、処理をステップS202に移行する。ステップS202において、制御部35は、空吐出を実行し、排出液量の液体をノズル19からキャップ25に吐出させる。
【0062】
ステップS203において、制御部35は、キャップ内有効水分量を算出し、記憶部36が記憶するキャップ内有効水分量を算出したキャップ内有効水分量に更新する。ステップS204において、制御部35は、キャップ内保湿剤量を算出し、記憶部36が記憶するキャップ内保湿剤量を算出したキャップ内保湿剤量に更新する。ステップS205において、制御部35は、キャップ内液量を算出し、記憶部36が記憶するキャップ内液量を算出したキャップ内保湿剤量に更新し、メンテナンスルーチンを終了する。
【0063】
ステップS201において、キャップ内保湿剤量が所定量より多い場合、ステップS201がYESになり、制御部35は、処理をステップS206に移行する。ステップS206において、制御部35は、液体収容体22が収容する液体の量と、所定の閾値と、を比較する。所定の閾値は、記憶部36が予め記憶している。所定の閾値は、第1吸引動作に伴って排出される第1吸引量、及び第2吸引動作に伴って排出される第2吸引量より多い。
【0064】
液体収容体22が収容する液体の量が所定の閾値以上の場合、ステップS206がYESになり、制御部35は、処理をステップS207に移行する。ステップS207において、制御部35は、第1吸引動作を実行する。
【0065】
液体収容体22が収容する液体の量が所定の閾値未満の場合、ステップS206がNOになり、制御部35は、処理をステップS208に移行する。ステップS208において、制御部35は、第2吸引動作を実行する。ステップS209において、制御部35は、第2吸引動作を設定回数実行したか否かを判断する。第2吸引動作を設定回数実行していない場合は、ステップS209がNOになり、制御部35は、処理をステップS208に移行する。第2吸引動作を設定回数実行した場合は、ステップS209がYESになり、制御部35は、処理をステップS210に移行する。設定回数は、所定の閾値を第2吸引量で割った商より小さい。すなわち、第2吸引動作を設定回数行ったときに排出される液体の総量は、所定の閾値より少ない。
【0066】
ステップS210において、制御部35は、キャップ内有効水分量を算出し、記憶部36が記憶するキャップ内有効水分量を算出したキャップ内有効水分量に更新する。ステップS211において、制御部35は、キャップ内保湿剤量を算出し、記憶部36が記憶するキャップ内保湿剤量を算出したキャップ内保湿剤量に更新する。ステップS212において、制御部35は、記憶部36が記憶するキャップ内液量を初期液量にし、メンテナンスルーチンを終了する。
【0067】
本実施形態の作用について説明する。
排出制御部37は、キャップ内有効水分量が、予め設定した初期有効水分量よりも少なくなった場合に、排出液量の液体をノズル19からキャップ25内に強制的に排出させる。排出制御部37は、空吐出により液体を排出させてもよい。
【0068】
算出部43は、以下の式に基づいて排出液量を算出する。
排出液量=(初期有効水分量-キャップ内有効水分量)×所定の係数/有効水分係数・・・(11)
排出液量は、キャップ内有効水分量と初期有効水分量との差に1よりも大きい所定の係数をかけた量を、有効水分量として含む液体の量である。有効水分量は、液体中の水分量から保湿剤により吸湿される無効水分量を除いた量である。したがって、排出液量の液体が含有する有効水分量は、キャップ内有効水分量と初期水分量との差より多い。
【0069】
<所定の係数>
所定の係数は、キャップ内有効水分量に応じて設定される第1係数及び第2係数を含んでもよい。キャップ内有効水分量が少ない場合に設定される第1係数は、キャップ内有効水分量が多い場合に設定される第2係数より大きい。所定の係数は、3つ以上の係数を含んでもよい。
【0070】
図6には、蒸発量と係数との関係を実験した結果を示す。蒸発量は、初期有効水分量とキャップ内有効水分量との差である。図6中の「○」は、係数を用いて算出した排出液量の液体をキャップ25が受容したとき、キャップ内有効水分量が初期有効水分量以上になったことを示す。図6中の「×」は、係数を用いて算出した排出液量の液体をキャップ25が受容しても、キャップ内有効水分量が初期有効水分量未満であったことを示す。
【0071】
液体は、水分が蒸発するのに対し、保湿剤は留まる。そのため、キャップ25内の液体は、水分が蒸発するのに伴って保湿剤の濃度が高くなり、無効水分量の割合が増加する。したがって、所定の係数=1にした場合には、キャップ内有効水分量を初期有効水分量以上にすることができない。
【0072】
本実施形態では、所定の係数を1より大きい値に設定する。例えば、第1係数=2.5、第2係数=2に設定し、所定の係数を設定するための水分閾値=初期有効水分量-1[g]に設定してもよい。
【0073】
制御部35は、キャップ内保湿剤量が所定量を超え、液体収容体22に収容される液体の量が所定の閾値以上であり、かつ第1吸引量の液体を吸引させる第1吸引動作が必要な場合には、吸引機構26に第1吸引動作を実行させる。キャップ内保湿剤量は、キャップ25内に排出された保湿剤の量である。第1吸引動作は、第1吸引量の液体を吸引する。
【0074】
キャップ内保湿剤量が所定量を超え、液体収容体22に収容される液体の量が所定の閾値より少なく、かつ第1吸引量の液体を吸引させる必要がある場合には、制御部35は、第2吸引動作を吸引機構26に複数回実行させてもよい。第2吸引動作は、第2吸引量の液体を吸引する。
【0075】
本実施形態の効果について説明する。
(1)排出制御部37は、キャップ内有効水分量と初期有効水分量との差に1よりも大きい所定の係数をかけた量を有効水分量として含む量の液体をキャップ25に排出させる。そのため、キャップ25には、キャップ内有効水分量と初期有効水分量との差より多い量の有効水分が供給される。したがって、例えばキャップ内有効水分量と初期有効水分量との差と同じ量の有効水分が供給される場合に比べ、保湿剤がノズル19内の液体から奪う水分の量を低減でき、ノズル19内の液体の粘度上昇を抑制できる。
【0076】
(2)キャップ内有効水分量は、少なくなるほど初期有効水分量に戻すために必要な液体の量が多くなる。その点、キャップ内有効水分量が少ない場合に設定される第1係数は、キャップ内有効水分量が多い場合に設定される第2係数より大きい。そのため、排出制御部37は、キャップ内有効水分量が少ない場合に、キャップ内有効水分量が多い場合よりノズル19から排出させる液体の量を多くする。したがって、キャップ内有効水分量が少なくなった場合でも、ノズル19内の液体の粘度上昇を抑制できる。
【0077】
(3)排出制御部37は、液体吐出ヘッド20から液体を吐出させる。したがって、例えば液体吐出ヘッド20内の液体を加圧もしくは減圧して排出させる場合に比べ、液体の排出に要する時間を短くできる。
【0078】
(4)算出部43は、吸引前のキャップ25内の液体の量及び有効水分量と、吸引により排出される液体の量及び有効水分量と、を含む複数のパラメーターに基づいて吸引後のキャップ内有効水分量を算出する。そのため、例えば1つのパラメーターに基づいてキャップ内有効水分量を算出する場合に比べ、キャップ内有効水分量を精度よく算出できる。
【0079】
(5)吸引制御部38は、液体収容体22に収容される液体の量が所定の閾値より少ない場合には、吸引機構26に第2吸引動作を複数回実行させる。そのため、例えば1回目の第2吸引動作により保湿剤を流動しやすい状態にし、2回目の吸引動作により流動しやすい状態の保湿剤をキャップ25から排出できる。したがって、液体の消費を抑制しつつ、キャップ25内の保湿剤量を低減できる。
【0080】
(6)キャップ25内の液体に含まれる水分は、キャップ25が開放されている状態と、キャップ25が閉塞されている状態と、で蒸発のしやすさが変化する。その点、算出部43は、少なくとも1つの開放時間と、少なくとも1つの閉塞時間と、開放累積時間と、に基づいてキャップ内有効水分量を算出する。したがって、キャップ内有効水分量の算出精度を向上できる。
【0081】
(7)キャップ25内の液体に含まれる水分は、キャップ25が閉塞されている状態でもキャップ25を透過し、減少することがある。その点、算出部43は、累積水分透過量に基づいてキャップ内有効水分量を算出する。したがって、キャップ内有効水分量の算出精度を向上できる。
【0082】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・制御部35は、印刷の途中で空吐出を定期的に実行させてもよい。
【0083】
・液体吐出装置11は、液体吐出ヘッド20内の液体を加圧する加圧機構と、加圧機構を制御する加圧制御部と、を備えてもよい。液体吐出装置11は、ノズル19から加圧した液体を排出する加圧クリーニングを行ってもよい。この場合、液体吐出装置11は、吸引機構26及び吸引制御部38を備えない構成としてもいい。加圧制御部は、第1加圧量の液体を排出させる第1加圧動作と、第1加圧量より少ない第2加圧量の液体を排出させる第2加圧動作と、を実行させてもよい。
【0084】
・排出制御部37は、加圧クリーニングにより液体吐出ヘッド20から排出液量の液体を排出させてもよい。
・排出制御部37は、吸引クリーニングにより液体吐出ヘッド20から排出液量の液体を排出させてもよい。
【0085】
・所定の係数は、予め設定された1つの係数であってもよい。
・所定の係数は、蒸発量に応じて設定してもよい。例えば、所定の係数は、蒸発量が多い場合には第1係数に設定し、洋髪量が少ない場合には、第2係数に設定してもよい。
【0086】
・所定の係数は、キャップ内液量に対してキャップ内有効水分量の占める割合に応じて、設定してもよい。例えば、所定の係数は、キャップ内液量に対してキャップ内有効水分量の占める割合が小さい場合には第1係数に設定し、キャップ内液量に対してキャップ内有効水分量の占める割合が大きい場合には第2係数に設定してもよい。
【0087】
・排出制御部37は、廃液収容部27に収容可能な液体の量に基づいて、第1吸引動作と第2吸引動作を選択して実行してもよい。例えば、廃液収容部27に追加で収容可能な液体の量である残収容量が第1吸引量より多い場合、排出制御部37は、第1吸引動作を実行させてもよい。残収容量が第1吸引量より少ない場合、排出制御部37は、第2吸引動作を複数回実行させてもよい。
【0088】
・液体収容体22は、交換可能なカートリッジであってもよいし、液体を補充可能なタンクであってもよい。液体収容体22は、キャリッジ21とは異なる位置に設けられてもよい。液体吐出ヘッド20は、液体供給流路を介して液体収容体22から供給される液体を吐出してもよい。
【0089】
・液体吐出装置11は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体吐出装置であってもよい。液体吐出装置から微小量の液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。ここでいう液体は、液体吐出装置から吐出させることができるような材料であればよい。例えば、液体は、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属、金属融液、のような流状体を含むものとする。液体は、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体吐出装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する装置がある。液体吐出装置は、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。液体吐出装置は、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ、光学レンズ、などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する装置であってもよい。液体吐出装置は、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する装置であってもよい。
【0090】
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
(A)液体吐出装置は、保湿剤及び水分を含有する液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドと、前記ノズルが開口する閉空間を形成可能なキャップと、前記液体吐出ヘッドを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体中の水分量から前記保湿剤により吸湿される水分量を除いた有効水分量を算出する算出部と、前記液体を前記ノズルから前記キャップ内に強制的に排出させる排出制御部と、を有し、前記算出部は、前記キャップ内の前記液体の前記有効水分量であるキャップ内有効水分量を、前記ノズルから前記キャップ内に排出された前記液体の量に基づいて算出し、前記排出制御部は、前記キャップ内有効水分量が予め設定した初期有効水分量よりも少なくなった場合に、前記キャップ内有効水分量と前記初期有効水分量との差に1よりも大きい所定の係数をかけた量を前記有効水分量として含む量の前記液体を排出させる。
【0091】
この構成によれば、排出制御部は、キャップ内有効水分量と初期有効水分量との差に1よりも大きい所定の係数をかけた量を有効水分量として含む量の液体をキャップに排出させる。そのため、キャップには、キャップ内有効水分量と初期有効水分量との差より多い量の有効水分が供給される。したがって、例えばキャップ内有効水分量と初期有効水分量との差と同じ量の有効水分が供給される場合に比べ、保湿剤がノズル内の液体から奪う水分の量を低減でき、ノズル内の液体の粘度上昇を抑制できる。
【0092】
(B)液体吐出装置において、前記所定の係数は、前記キャップ内有効水分量に応じて設定される第1係数及び第2係数を含み、前記キャップ内有効水分量が少ない場合に設定される前記第1係数は、前記キャップ内有効水分量が多い場合に設定される前記第2係数より大きくてもよい。
【0093】
キャップ内有効水分量は、少なくなるほど初期有効水分量に戻すために必要な液体の量が多くなる。その点、この構成によれば、キャップ内有効水分量が少ない場合に設定される第1係数は、キャップ内有効水分量が多い場合に設定される第2係数より大きい。そのため、排出制御部は、キャップ内有効水分量が少ない場合に、キャップ内有効水分量が多い場合よりノズルから排出させる液体の量を多くする。したがって、キャップ内有効水分量が少なくなった場合でも、ノズル内の液体の粘度上昇を抑制できる。
【0094】
(C)液体吐出装置において、前記排出制御部は、前記液体吐出ヘッドから前記液体を吐出させることで、前記ノズルから前記キャップ内に前記液体を強制的に排出させてもよい。
【0095】
この構成によれば、排出制御部は、液体吐出ヘッドから液体を吐出させる。したがって、例えば液体吐出ヘッド内の液体を加圧もしくは減圧して排出させる場合に比べ、液体の排出に要する時間を短くできる。
【0096】
(D)液体吐出装置は、前記閉空間を介して前記ノズルから前記液体を吸引させる吸引機構を更に備え、前記算出部は、前記吸引機構が前記ノズルから前記液体を吸引させた場合、吸引前の前記キャップ内の前記液体の量と、吸引前の前記キャップ内の前記液体に含まれる前記有効水分量と、吸引に伴って前記ノズルから排出される前記液体の量と、前記ノズルから排出される前記液体に含まれる前記有効水分量と、を含む複数のパラメーターに基づいて、吸引後の前記キャップ内有効水分量を算出してもよい。
【0097】
この構成によれば、算出部は、吸引前のキャップ内の液体の量及び有効水分量と、吸引により排出される液体の量及び有効水分量と、を含む複数のパラメーターに基づいて吸引後のキャップ内有効水分量を算出する。そのため、例えば1つのパラメーターに基づいてキャップ内有効水分量を算出する場合に比べ、キャップ内有効水分量を精度よく算出できる。
【0098】
(E)液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッドは、液体収容体に収容される前記液体を吐出し、前記制御部は、前記吸引機構に吸引動作を実行させる吸引制御部を更に有し、前記吸引制御部は、前記キャップ内に排出された前記保湿剤の量である保湿剤量が所定量を超え、前記液体収容体に収容される前記液体の量が所定の閾値以上であり、かつ第1吸引量の液体を吸引させる第1吸引動作が必要な場合には、前記吸引機構に前記第1吸引動作を実行させ、前記保湿剤量が前記所定量を超え、前記液体収容体に収容される前記液体の量が前記所定の閾値より少なく、かつ前記第1吸引量の液体を吸引させる必要がある場合には、前記第1吸引量よりも少ない第2吸引量の液体を吸引させる第2吸引動作を前記吸引機構に複数回実行させてもよい。
【0099】
この構成によれば、吸引制御部は、液体収容体に収容される液体の量が所定の閾値より少ない場合には、吸引機構に第2吸引動作を複数回実行させる。そのため、例えば1回目の第2吸引動作により保湿剤を流動しやすい状態にし、2回目の吸引動作により流動しやすい状態の保湿剤をキャップから排出できる。したがって、液体の消費を抑制しつつ、キャップ内の保湿剤量を低減できる。
【0100】
(F)液体吐出装置において、前記制御部は、前記キャップが開放されている開放時間を、前記キャップが開放される毎に計測する開放時間計測部と、前記キャップが閉塞されて前記閉空間を形成する閉塞時間を、前記キャップが閉塞される毎に計測する閉塞時間計測部と、前記開放時間の累積である開放累積時間を計測する累積時間計測部と、を更に有し、前記算出部は、前記開放時間計測部による計測結果と、前記閉塞時間計測部による計測結果と、前記累積時間計測部による計測結果と、に基づいて前記キャップ内有効水分量を算出してもよい。
【0101】
この構成によれば、キャップ内の液体に含まれる水分は、キャップが開放されている状態と、キャップが閉塞されている状態と、で蒸発のしやすさが変化する。その点、この構成によれば、算出部は、少なくとも1つの開放時間と、少なくとも1つの閉塞時間と、開放累積時間と、に基づいてキャップ内有効水分量を算出する。したがって、キャップ内有効水分量の算出精度を向上できる。
【0102】
(G)液体吐出装置において、前記制御部は、前記液体吐出ヘッドによる直前の吐出が終了した時から経過した経過時間を計測する経過時間計測部を更に有し、前記算出部は、前記経過時間に基づいて前記キャップ内から前記キャップ外に透過した水分の累積である累積水分透過量を算出し、算出した前記累積水分透過量に基づいて前記キャップ内有効水分量を算出してもよい。
【0103】
キャップ内の液体に含まれる水分は、キャップが閉塞されている状態でもキャップを透過し、減少することがある。その点、この構成によれば、算出部は、累積水分透過量に基づいてキャップ内有効水分量を算出する。したがって、キャップ内有効水分量の算出精度を向上できる。
【0104】
(H)液体吐出装置のメンテナンス方法は、保湿剤及び水分を含有する液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドと、前記ノズルが開口する閉空間を形成可能なキャップと、を備える液体吐出装置のメンテナンス方法であって、前記キャップ内の前記液体中の水分量から前記保湿剤により吸湿される水分量を除いたキャップ内有効水分量を、前記ノズルから前記キャップ内に排出された前記液体の量に基づいて算出し、前記キャップ内有効水分量が、予め設定した初期有効水分量よりも少なくなった場合に、前記キャップ内有効水分量と前記初期有効水分量との差に1よりも大きい所定の係数をかけた量を、前記液体中の水分量から前記保湿剤により吸湿される水分量を除いた有効水分量として含む量の前記液体を、前記ノズルから前記キャップ内に強制的に排出させる。
【0105】
この方法によれば、上記液体吐出装置と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0106】
11…液体吐出装置、12…筐体、13…ガイド軸、14…印刷部、15…媒体、16…媒体支持部、17…メンテナンス部、19…ノズル、20…液体吐出ヘッド、21…キャリッジ、22…液体収容体、24…払拭部、25…キャップ、26…吸引機構、27…廃液収容部、28…排出路、29…排出ポンプ、31…リップ部、32…吸収部材、33…閉空間、35…制御部、36…記憶部、37…排出制御部、38…吸引制御部、39…開放時間計測部、40…閉塞時間計測部、41…累積時間計測部、42…経過時間計測部、43…算出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6