(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】面発光レーザの測定方法、製造方法、測定装置、測定プログラム
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
H01S5/183
(21)【出願番号】P 2020170767
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 良輔
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-209716(JP,A)
【文献】特開2017-098277(JP,A)
【文献】特開2013-251324(JP,A)
【文献】特開2005-172665(JP,A)
【文献】特開2006-059856(JP,A)
【文献】特開2005-322761(JP,A)
【文献】特開2018-207008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面発光レーザを発光させる工程と、
前記面発光レーザの複数の位置のそれぞれに光学系の光軸を合わせ、前記複数の位置それぞれにおけるスペクトルを測定する工程と、
前記複数の位置における前記スペクトルに基づいて、前記複数の位置における光の波長ごとの発光強度を取得する工程と、を有する面発光レーザの測定方法。
【請求項2】
前記複数の位置は、前記面発光レーザのアパーチャの全体を含む請求項1に記載の面発光レーザの測定方法。
【請求項3】
前記発光強度に基づいて、前記面発光レーザの近視野像を生成する工程を有する請求項
1に記載の面発光レーザの測定方法。
【請求項4】
前記面発光レーザを発光させる工程は、前記面発光レーザに電気信号を入力することで発光させる工程である請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の面発光レーザの測定方法。
【請求項5】
前記スペクトルを測定する工程は、前記電気信号を変化させて複数の前記電気信号を生成し、前記複数の電気信号の各々ごとに、前記面発光レーザの複数の位置の各々におけるスペクトルを測定する工程である請求項
4に記載の面発光レーザの測定方法。
【請求項6】
前記光学系は、前記スペクトルを測定する測定部、前記測定部に接続された光ファイバ、前記光ファイバと前記面発光レーザとの間に順に配置された第1レンズおよび第2レンズを有し、
前記第2レンズの開口数は前記第1レンズに比べて大きい請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の面発光レーザの測定方法。
【請求項7】
面発光レーザを形成する工程と、
前記面発光レーザに、請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の測定方法を行う工程と、を有する面発光レーザの製造方法。
【請求項8】
面発光レーザを発光させる発光部と、
前記面発光レーザの複数の位置それぞれにおけるスペクトルを測定する測定部と、
前記複数の位置における前記スペクトルに基づいて、前記複数の位置における光の波長ごとの発光強度を取得する発光強度取得部と、を有する面発光レーザの測定装置。
【請求項9】
前記測定部に接続された光ファイバと、
前記光ファイバと前記面発光レーザとの間に順に配置された第1レンズおよび第2レンズと、を具備し、
前記第2レンズの開口数は前記第1レンズに比べて大きい請求項
8に記載の面発光レーザの測定装置。
【請求項10】
コンピュータに、
面発光レーザを発光させる処理と、
前記面発光レーザの複数の位置のそれぞれに光学系の光軸を合わせ、前記複数の位置それぞれにおけるスペクトルを測定する処理と、
前記複数の位置における前記スペクトルに基づいて、前記複数の位置における光の波長ごとの発光強度を取得する処理と、を実行させる面発光レーザの測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は面発光レーザの測定方法、製造方法、測定装置、測定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
面発光レーザ(垂直共振型面発光レーザ、VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)の特性の評価として、光のスペクトルを測定することがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
面発光レーザの特性を評価するためには、出射光の正確なスペクトルを測定することが重要である。面発光レーザは、端面発光レーザなどに比べて大きな光の出射面(アパーチャ)を有する。光は例えば複数の横モードを有し、アパーチャ内に分布する。このため正確なスペクトルを測定することは困難であった。そこで、面発光レーザの正確な光のスペクトルを測定することが可能な面発光レーザの測定方法、製造方法、測定装置、測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る面発光レーザの測定方法は、面発光レーザを発光させる工程と、前記面発光レーザの複数の位置のそれぞれに光学系の光軸を合わせ、前記複数の位置それぞれにおけるスペクトルを測定する工程と、を有する。
【0007】
本開示に係る面発光レーザの製造方法は、面発光レーザを形成する工程と、前記面発光レーザに、上記の測定方法を行う工程と、を有する。
本開示に係る面発光レーザの測定装置は、面発光レーザを発光させる発光部と、前記面発光レーザの複数の位置におけるスペクトルを測定する測定部と、を有する。
【0008】
本開示に係る面発光レーザの測定プログラムは、コンピュータに、面発光レーザを発光させる処理と、前記面発光レーザの複数の位置のそれぞれに光学系の光軸を合わせ、前記複数の位置それぞれにおけるスペクトルを測定する処理と、を実行させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば面発光レーザの正確な光のスペクトルを測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは実施形態に係る測定装置を例示する模式図である。
【
図1B】
図1Bは制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は面発光レーザの製造方法を例示するフローチャートである。
【
図5】
図5は特性の測定方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0012】
本開示の一形態は、(1)面発光レーザを発光させる工程と、前記面発光レーザの複数の位置のそれぞれに光学系の光軸を合わせ、前記複数の位置それぞれにおけるスペクトルを測定する工程と、を有する面発光レーザの測定方法である。複数の位置ごとに測定を行うことで、面発光レーザの正確な光のスペクトルを測定することができる。
(2)前記複数の位置は、前記面発光レーザのアパーチャの全体を含んでもよい。アパーチャの出射光の全体から正確なスペクトルを測定することができる。
(3)前記複数の位置における前記スペクトルに基づいて、前記複数の位置における光の波長ごとの発光強度を取得する工程を有してもよい。波長分解された局所的な発光強度を取得することができる。
(4)前記発光強度に基づいて、前記面発光レーザの近視野像を生成する工程を有してもよい。近視野像により光の分布が認識しやすくなる。
(5)前記面発光レーザを発光させる工程は、前記面発光レーザに電気信号を入力することで発光させる工程でもよい。使用時に近い条件で面発光レーザを発光させることで、より正確なスペクトルを測定することができる。
(6)前記スペクトルを測定する工程は、前記電気信号を変化させ、複数の前記電気信号ごとに、前記面発光レーザの複数の位置におけるスペクトルを測定する工程でもよい。より正確なスペクトルを測定することができる。
(7)前記光学系は、前記スペクトルを測定する測定部、前記測定部に接続された光ファイバ、前記光ファイバと前記面発光レーザとの間に順に配置された第1レンズおよび第2レンズを有し、前記第2レンズの開口数は前記第1レンズに比べて大きくてもよい。第1レンズおよび第2レンズにより面発光レーザの位置ごとに光を集光し、面発光レーザの正確な光のスペクトルを測定することができる。
(8)面発光レーザを形成する工程と、前記面発光レーザに、上記の測定方法を行う工程と、を有する面発光レーザの製造方法である。複数の位置ごとに測定を行うことで、面発光レーザの正確な光のスペクトルを測定することができる。
(9)面発光レーザを発光させる発光部と、前記面発光レーザの複数の位置におけるスペクトルを測定する測定部と、を有する面発光レーザの測定装置である。複数の位置ごとに測定を行うことで、面発光レーザの正確な光のスペクトルを測定することができる。
(10)前記測定部に接続された光ファイバと、前記光ファイバと前記面発光レーザとの間に順に配置された第1レンズおよび第2レンズと、を具備し、前記第2レンズの開口数は前記第1レンズに比べて大きくてもよい。第1レンズおよび第2レンズにより面発光レーザの位置ごとに光を集光し、面発光レーザの正確な光のスペクトルを測定することができる。
(11)コンピュータに、面発光レーザを発光させる処理と、前記面発光レーザの複数の位置のそれぞれに光学系の光軸を合わせ、前記複数の位置それぞれにおけるスペクトルを測定する処理と、を実行させる面発光レーザの測定プログラムである。複数の位置ごとに測定を行うことで、面発光レーザの正確な光のスペクトルを測定することができる。
【0013】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る面発光レーザの測定方法、製造方法、測定装置、測定プログラムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
(測定装置)
図1Aは実施形態に係る測定装置100を例示する模式図である。
図1Aに示すように、測定装置100は制御部10、電流電圧源20、ステージ22、レンズ24および26、光ファイバ27、および分光器28(測定部)を備える。
【0015】
ステージ22の主面はXY平面内に位置する。ステージ22の主面の法線方向はZ軸方向である。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに直交する。ステージ22の主面にウェハ40が配置されている。ステージ22は可動式であり、ウェハ40のXY平面内の位置およびZ軸方向の高さを変えることができる。ステージ22はウェハ40の温度を調節する機能を有してもよい。電流電圧源20は不図示のプローブを通じてウェハ40内の面発光レーザに電気信号(電流)を入力する。
【0016】
レンズ24および26、光ファイバ27、分光器28は、スペクトル測定のための光学系を形成する。レンズ24および26の光軸はZ軸方向に延伸する。ウェハ40からZ軸方向に沿って、レンズ24および26、光ファイバ27が順に配置されている。レンズ24および26は集光レンズである。レンズ24は、レンズ26に比べて高い開口数(NA:Numerical Aperture)および高い空間分解能を有する。レンズ26はレンズ24に比べて低いNAおよび低い空間分解能を有する。レンズ24のNAは例えば0.7~0.8である。レンズ26のNAは例えば0.2である。
【0017】
光ファイバ27は例えばコア径が2~8μmのシングルモードファイバである。光ファイバ27の一端はレンズ26に対向し、他端は分光器28に接続されている。分光器28は、光ファイバ27を通じて入力される光のスペクトルを測定する。分光器28に代えてスペクトルアナライザを用いることもできる。分光器28は1つのスペクトルの測定に100msecかかる。スペクトルアナライザは1つのスペクトルの測定に1秒かかる。
【0018】
図1Bは制御部10のハードウェア構成を示すブロック図である。
図1Bに示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)30、RAM(Random Access Memory)32、記憶装置34、インターフェース36を備える。CPU30、RAM32、記憶装置34およびインターフェース36は互いにバスなどで接続されている。RAM32はプログラムおよびデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置34は例えばROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD:Solid State Drive)、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disc Drive)などである。記憶装置34は、後述の測定プログラムなどを記憶する。
【0019】
CPU30がRAM32に記憶されるプログラムを実行することにより、制御部10に
図1Aの電気信号制御部12、位置制御部14、発光強度取得部16、NFP生成部18などが実現される。制御部10の各部は、回路などのハードウェアでもよい。電気信号制御部12は電流電圧源20を制御し、ウェハ40に入力する電流のオン・オフ、電流の変化などを行う。位置制御部14はステージ22を制御し、ウェハ40の位置を調整する。発光強度取得部16は分光器28が測定する光のスペクトルを取得し、スペクトルに基づいて面発光レーザ41の発光強度を取得する。NFP生成部18は発光強度に基づいてNFP(Near Field Pattern、近視野像)を生成する。
【0020】
図2はウェハ40を例示する平面図である。ウェハ40は例えば数万個の面発光レーザ41を有する。
図4で後述する特性の測定は、ウェハ40内の1つの面発光レーザ41ごとに行われる。
【0021】
図3Aは面発光レーザ41を例示する平面図である。
図3Aに示すように面発光レーザ41はメサ49、電極44および45、パッド46および48を備える。面発光レーザ41は例えば化合物半導体で形成され、下側クラッド層、コア層および上側クラッド層が積層されたものである。下側クラッド層は例えばn型アルミニウムガリウム砒素(n-AlGaAs)で形成されている。上側クラッド層は例えばp-AlGaAsなどで形成されている。コア層はインジウムガリウム砒素(InGaAs)などで形成され、多重量子井戸構造(MQW:Multi Quantum Well)を有する。
【0022】
メサ49には、光の出射部となるアパーチャ50が形成される。XY平面内において、メサ49の周囲には溝42が設けられている。電極44は溝42の内側に設けられ、パッド46および下側クラッド層に電気的に接続されている。電極45はメサ49の上に設けられ、パッド48および上側クラッド層に電気的に接続されている。電極44は例えばチタン、白金および金の積層体(Ti/Pt/Au)などで形成されている。電極45は例えば金ゲルマニウム合金(Au-Ge合金)などで形成されている。パッド46および48は例えば金(Au)などの金属で形成されている。
【0023】
図3Bはアパーチャ50の拡大図である。アパーチャ50は例えば直径20μmの円形である。位置52はスペクトルの測定の対象となる領域である。1つの位置52は例えば正方形であり、一辺の長さは500nmである。X軸方向の一列に例えば40個の位置52が配置される。複数の位置52はアパーチャ50を含む。すなわち、複数の位置52がアパーチャ50の全体を埋め尽くす。複数の位置52のうち、アパーチャ50の外に位置するものがあってもよい。
【0024】
図1Aの電流電圧源20を面発光レーザ41のパッド46および48に接続し、電気信号を入力する。面発光レーザ41のコア層にキャリアが注入されることで、アパーチャ50からZ軸方向に例えば波長800nm~1000nmの光が出射される。光は例えば複数の横モードを含み、アパーチャ50内に分布する。場所などによって光の波長および発光強度に違いが生じる。本実施形態では、アパーチャ50内の局所的なスペクトルを測定する。
【0025】
図1Aに示す分光器28は位置52ごとの光のスペクトルを測定する。制御部10の発光強度取得部16は、スペクトルに基づいて位置52ごとの発光強度を取得する。発光強度取得部16は、出射光の全波長帯域(例えば800nm~1000nm)にわたる発光強度、および特定の波長における発光強度を取得する。NFP生成部18は、発光強度に基づいてNFPを生成する。スペクトルの測定およびNFPの生成については後述する。
【0026】
(製造方法、測定方法)
図4は面発光レーザの製造方法を例示するフローチャートである。
図4に示すように、ウェハ40に複数の面発光レーザ41を形成する(ステップS1)。具体的には、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を行い、ウェハ40に下側クラッド層、コア層および上側クラッド層などをエピタキシャル成長する。エッチングなどによってメサ49などを形成する。例えばエッチングなどで、導電性の半導体層に溝を形成し、ウェハ40内の複数の面発光レーザ41を互いに電気的に分離する。レジストパターニングおよび蒸着などで、電極44および45、パッド46および48を形成する。面発光レーザ41を形成した後、面発光レーザ41の特性の評価を行う(ステップS2、
図4)。評価の後、ウェハ40にダイシングを行う(ステップS3)。
【0027】
図5は特性の測定方法を例示するフローチャートである。特性の測定は、
図4のステップS2の工程であり、ウェハ40に含まれる1つの面発光レーザ41に対して行われる。
図5に示すように、制御部10の電気信号制御部12は、電流電圧源20を用いて面発光レーザ41に電気信号を入力し、面発光レーザ41を発光させる(ステップS10)。位置制御部14はステージ22によってウェハ40を移動させ、面発光レーザ41とレンズ24および26との位置合わせを行う(ステップS11)。具体的には、面発光レーザ41の複数の位置52のうち1つを、レンズ24および26の下に配置し、光軸との位置合わせをする。Z軸方向においても、1つの位置52とレンズ24および26との位置合わせを行う。レンズ24の焦点を位置52に合わせ、レンズ26の焦点を光ファイバ27に合わせる。
【0028】
1つの位置52からの光をレンズ24および26で集光し、光ファイバ27を通じて分光器28に入力する。他の位置52からの光は光ファイバ27および分光器28に入力されない。分光器28は、位置52から出射される光のスペクトルを測定し、制御部10はスペクトルを取得する(ステップS12)。
【0029】
制御部10は複数の位置52の全てにおいてスペクトルを取得したか否かを判定する(ステップS14)。Noの場合、位置制御部14はステージ22を用いてウェハ40を移動させ、複数の位置52のうち、スペクトルを測定した位置52とは別の領域と、レンズ24および26との位置合わせを行う(ステップS16)。当該位置52からの光を分光器28に入力する。分光器28はスペクトルを測定し、制御部10はスペクトルを取得する(ステップS12)。
【0030】
複数の位置52の全てでスペクトルを取得した場合(ステップS14でYes)、電気信号制御部12は、電気信号の全ステップにおいてスペクトルを取得したか否か判定する(ステップS18)。Noの場合、電気信号制御部12は電気信号を変更する(ステップS20)。ステップS11以降の処理が繰り返され、変更後の電気信号を印加した状態で、位置52ごとのスペクトルを測定する。
【0031】
電気信号制御部12は、例えば電流を1mAから10mAまで、1mAずつステップ状に電流を変化させる。電気信号の全ステップにおいてスペクトルを取得した後(ステップS18でYes)、発光強度取得部16は、スペクトルに基づいて波長ごとの発光強度を取得し(ステップS21)、波長帯域の全体における発光強度を取得する(ステップS22)。NFP生成部18は発光強度に基づいてNFPを生成する(ステップS24)。以上で測定は終了する。
【0032】
ウェハ40内の1つの面発光レーザ41に図
5の測定を行った後、他の面発光レーザ41にも同様の測定を行う。例えばウェハ40内の全ての面発光レーザ41の特性を測定してもよいし、一部の面発光レーザ41の特性を測定してもよい。測定後、
図4に示すようにウェハ40のダイシングを行う(ステップS3)。1つの面発光レーザ41をチップとして形成してもよいし、複数の面発光レーザ41を含むアレイチップを形成してもよい。
【0033】
図6Aから
図6Cはスペクトルを例示する図であり、いずれも面発光レーザ41に電流I1の電流を入力した場合に測定されるスペクトルである。電流I1は例えば1mA、2mA・・・10mAのいずれかである。
図6Aは位置Aで測定されるスペクトルである。
図6Bは位置Bで測定されるスペクトルである。
図6Cは位置Cで測定されるスペクトルである。位置A~
Cはそれぞれ複数の位置52のうちの1つである。
図6A~
図6Cの横軸は光の波長を表し、縦軸は光の強度を表す。波長λ1は852nmより大きく、852.5nmより小さい。波長λ2は852nmより小さい。波長λ3は851.5nmより大きく、波長λ2より小さい。
【0034】
図6Aに示すスペクトルは、波長λ1に最大のピークを有し、波長λ2およびλ3に小さなピークを有する。
図6Bに示すスペクトルは、波長λ2に最大のピークを有し、波長λ1に小さなピークを有し、波長λ3にピークを有さない。
図6Cに示すスペクトルは、波長λ3に最大のピークを有し、波長λ1に小さなピークを有し、波長λ2にピークを有さない。測定装置100は、複数の位置52ごとに、
図6A~
図6Cのようなスペクトルを測定する。
【0035】
図6Aに斜線で示すように、発光強度取得部16は、スペクトルのうち波長λ1近傍の部分を積分することで、波長λ1における領域ごとの発光強度を得る(
図5のステップS21)。λ1近傍とは、例えばλ1を中心とした±0.1nmの範囲である。発光強度取得部16は、波長λ2およびλ3においてもスペクトル
のうち波長λ2およびλ3近傍の部分を積分し、発光強度を取得する。NFP生成部18は、発光強度を例えば明暗、色などで表現したNFPを生成する(ステップS24)。
【0036】
図7Aから
図7CはNFPを例示する図である。図中の位置A~Cはそれぞれ
図6A~
図6Cのスペクトルを測定した位置である。図中の斜線の部分に光が分布する。
図7Aは領域ごとのスペクトルのうち波長λ1における強度から得られるNFPである。
図7Aに示すように、波長λ1の光は面発光レーザ41の中央に円形に分布する。
図7Bは領域ごとのスペクトルのうち波長λ2における強度から得られるNFPである。
図7Bに示すように、波長λ2の光は図中の上下方向に分かれて分布し、位置Bに重なり、位置AおよびCには重ならない。
図7Cは領域ごとのスペクトルのうち波長λ3における強度から得られるNFPである。
図7Cに示すように、波長λ3の光は図中の左右方向に分かれて分布し、位置Cに重なり、位置AおよびBには重ならない。
【0037】
発光強度取得部16は、波長λ1~λ3以外の波長においてもスペクトルを積分し、波長ごとの発光強度を取得してもよい。NFP生成部18は、波長λ1~λ3以外の波長に対するNFPを生成することもできる。発光強度取得部16は、スペクトルを波長帯域の全体(例えば800nmから1000nmまでの帯域)で積分することで、波長帯域全体における発光強度を取得することもできる(ステップS22)。NFP生成部18は、波長帯域全体における発光強度からNFPを生成することもできる。測定装置100は、電気信号を変化させ(
図5のステップS20)、
図6A~
図7Cと同様にスペクトルおよびNFPを取得する。
【0038】
本実施形態によれば、ウェハ40を移動させ、面発光レーザ41の複数の位置52のそれぞれと光学系の光軸とを位置合わせする。複数の位置52を走査し、位置52ごとの局所的なスペクトルを測定する(
図5のステップS12、
図6A~
図6C)。複数の横モードを含む出射光から正確なスペクトルを測定することができ、面発光レーザ41を精度高く評価することが可能である。
【0039】
図3Bに示すように、複数の位置52はアパーチャ50の全体を含むことが好ましい。複数の位置52においてスペクトルを測定することで、アパーチャ50の出射光の全体から正確なスペクトルを取得することができる。位置52の大きさおよび数は、例えばアパーチャ50の大きさ、レンズの分解能および測定時間などに応じて定める。
【0040】
面発光レーザ41と光ファイバ27との間にレンズ24および26を配置する。レンズ24は、レンズ26に比べて高いNAおよび高い空間分解能を有するため、複数の位置52のうち1つの位置52からの出射光を集光することができる。レンズ26は、測定対象の位置52からの光を光ファイバ27のコア径以下に絞り、かつ測定対象ではない位置52からの光を光ファイバ27の外側に集光させる。レンズ24および26により、位置52ごとの出射光を光ファイバ27に入射し、正確なスペクトルを測定することができる。1つの位置52の出射光を入射し、余計な光を入射させないため、光ファイバ27はシングルモードファイバであることが好ましい。レンズ24および26の焦点距離、面発光レーザ41、レンズ24および26、光ファイバ27それぞれの間のZ軸方向の距離などは、1つの位置52の出射光を光ファイバ27に入射できるように、適切に定める。2つ以上のレンズを用いてもよいし、スリットなどを用いてもよい。
【0041】
複数の位置52を走査せずにスペクトルを測定すると、正確なスペクトルを得ることは困難である。例えば高いNAのレンズと面発光レーザ41との位置関係を固定すると、1つの位置52の出射光のスペクトルを測定することができる。しかし他の位置のスペクトルを測定することは困難である。低いNAのレンズのみを用いると、レンズの空間分解能が低いため、局所的なスペクトルを測定することが難しい。集光できる範囲が面発光レーザ41の出射光の広がる範囲より小さいため、正確なスペクトルの測定が困難である。
【0042】
本実施形態ではステージ22を用いてウェハ40を移動させることで、面発光レーザ41とレンズ24および26との相対位置が変化する。複数の位置52を走査して局所的なスペクトルを測定することができる。レンズ24および26、光ファイバ27などの光学系を移動させてもよいが、光学系内で位置のずれが発生する恐れがあるため、ウェハ40を移動させることが好ましい。
【0043】
発光強度取得部16は、各位置52における発光強度を取得する。例えば、発光強度取得部16は、スペクトルを特定の波長近傍で積分することで、波長ごとの局所的な発光強度を取得する(ステップS21)NFP生成部18は、発光強度に基づいてNFPを生成する(ステップS24)。
図7Aから
図7Cに示すような波長分解したNFPにより、波長ごとの発光強度が認識しやすくなり、面発光レーザ41を評価することができる。
【0044】
発光強度取得部16は、スペクトルを波長帯域全体で積分することで、波長帯域全体の発光強度を取得する(ステップS22)。NFP生成部18は、波長帯域全体の発光強度をNFPとして表してもよい。制御部10は、例えば位置52ごとのスペクトルを重ね合わせ、アパーチャ50全体のスペクトルを生成することもできる。スペクトルおよびNFPにより面発光レーザ41を精度よく評価することができる。
【0045】
電流電圧源20から面発光レーザ41に電気信号を入力することで、面発光レーザ41を発光させる(ステップS10)。光励起による発光と比べて、面発光レーザ41の実際の使用に近い条件で発光させ、測定を行う。このため、より正確なスペクトルを測定することができる。
【0046】
面発光レーザ41に入力する電流の変化により、光の発振モードなどが変わることがある。例えば、電流をI1から変化させることで、スペクトルおよびNFPが
図6A~
図7Cの例から変わることがある。電気信号制御部12は電流を例えば1mAきざみでステップ状に変化させ、分光器28は電流ごとにスペクトルを測定する。発光強度取得部16は電流ごとに発光強度を取得し、NFP生成部18はNFPを生成する。電気信号による光のモードの変化を測定することができる。
【0047】
レンズ24とレンズ26との間に偏光素子を設けてもよい。特定の偏波状態の光のみが偏光素子を透過し、分光器28に入射することで、スペクトルおよび発光強度の偏光依存性を取得することができる。レンズ24とレンズ26との間にビームスプリッタを設けてもよい。ビームスプリッタで分岐する光の一方を分光器28に入射し、他方を測定器に入射し、スペクトルとともに別の光学特性を測定することができる。
【0048】
別の実施形態として、面発光レーザ41の特性の評価(
図4のステップS2)を、ウェハ40のダイシング(ステップS3)の後に行ってもよい。この場合、ダイシングにより形成された面発光レーザ41のパッド46および48にワイヤをボンディングする工程を、評価の前に実施する。ステージ22の主面に面発光レーザ41のチップが配置される。電流電圧源20はワイヤを通じて面発光レーザ41に電気信号(電流)を入力する。
図5のフローチャートに示す測定が当該チップに対して実行される。ダイシングによって、複数の面発光レーザ41が連結されたアレイチップを形成し、アレイチップの特性を測定してもよい。
【0049】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 制御部
12 電気信号制御部
14 位置制御部
16 発光強度取得部
18 NFP生成部
20 電流電圧源
22 ステージ
24、26 レンズ
27 光ファイバ
28 分光器
30 CPU
32 RAM
34 記憶装置
36 インターフェース
40 ウェハ
41 面発光レーザ
42 溝
44、45 電極
46、48 パッド
49 メサ
50 アパーチャ
52 位置
100 測定装置