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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】立体物印刷装置および立体物印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240814BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240814BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20240814BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20240814BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240814BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240814BHJP
   B05C 9/12 20060101ALI20240814BHJP
   B05C 5/00 20060101ALN20240814BHJP
   B05B 12/00 20180101ALN20240814BHJP
【FI】
B05C11/10
B41J2/01 109
B41J2/01 401
B41J2/01 127
B41J2/01 303
B05D1/26 Z
B05D3/06 Z
B05D7/00 K
B05D3/00 D
B05C9/12
B05C5/00 101
B05B12/00 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020175184
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066696
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 勝
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕樹
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-050832(JP,A)
【文献】登録実用新案第3197373(JP,U)
【文献】特開2017-144641(JP,A)
【文献】特開2016-175358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0335494(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/10
B41J 2/01
B05D 1/26
B05D 3/06
B05D 7/00
B05D 3/00
B05C 9/12
B05C 5/00
B05B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルが設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドからの液体を硬化または固化させるエネルギーを出射する出射面を有するエネルギー出射部と、
立体的なワークに対する前記液体吐出ヘッドおよび前記エネルギー出射部の相対的な位置および姿勢を変化させる移動機構と、を有し、
前記液体吐出ヘッドが前記ワークに対して液体を吐出しつつ、前記移動機構が前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる第1ステップと、
前記エネルギー出射部が前記ワーク上の液体に対してエネルギーを照射しつつ、前記移動機構が前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる第2ステップと、を実行し、
前記ノズル面の法線方向における前記ワークと前記ノズル面との間の距離をL1とし、 前記出射面の法線方向における前記ワークと前記出射面との間の距離をL2とするとき、
前記第1ステップは、L1<L2の関係を満たし、
前記第2ステップは、L1>L2の関係を満たす、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項2】
前記第2ステップにおける前記液体吐出ヘッドは、前記ワークに対して液体を吐出しない、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項3】
前記第1ステップにおいて、前記エネルギー出射部が前記ワーク上の液体に対してエネルギーを照射する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の立体物印刷装置。
【請求項4】
前記第1ステップにおける前記エネルギー出射部は、前記ワーク上の液体の一部を硬化および固化させない、
ことを特徴とする請求項3に記載の立体物印刷装置。
【請求項5】
前記第2ステップにおける前記エネルギー出射部から前記ワーク上の液体に照射されるエネルギーの単位面積あたりの量は、前記第1ステップにおける前記エネルギー出射部から前記ワーク上の液体に照射されるエネルギーの単位面積あたりの量よりも大きい、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の立体物印刷装置。
【請求項6】
前記第2ステップにおける前記エネルギー出射部から前記ワーク上の液体に照射されるエネルギーの単位面積あたりの時間は、前記第1ステップにおける前記エネルギー出射部から前記ワーク上の液体に照射されるエネルギーの単位面積あたりの時間よりも長い、
ことを特徴とする請求項5に記載の立体物印刷装置。
【請求項7】
前記第2ステップにおける前記エネルギー出射部から前記ワーク上の液体に照射されるエネルギーの強度は、前記第1ステップにおける前記エネルギー出射部から前記ワーク上の液体に照射されるエネルギーの強度よりも高い、
ことを特徴とする請求項5に記載の立体物印刷装置。
【請求項8】
前記第2ステップにおける前記出射面の法線と前記ワークの面とがなす角度は、前記第2ステップにおける前記ノズル面の法線と前記ワークの面とがなす角度よりも90度に近い、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項9】
前記液体吐出ヘッドと前記エネルギー出射部との相対的な位置が固定されており、
前記移動機構は、前記液体吐出ヘッドおよび前記エネルギー出射部の両方を同時に移動させる、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項10】
前記ノズル面および前記出射面の両方は、前記第1ステップおよび前記第2ステップのそれぞれにおいて前記ワークに対向する、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項11】
前記移動機構によって前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置が変化する方向は、前記第1ステップと、前記第2ステップと、で互いに同一である、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項12】
液体を吐出するノズルが設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドからの液体を硬化または固化させるエネルギーを出射する出射面を有するエネルギー出射部と、を含む機器と、
立体的なワークに対する前記機器の相対的な位置および姿勢を変化させる移動機構と、を用いて、
前記ワークに印刷を行う立体物印刷方法であって、
前記機器内の位置を示す第1基準点と、前記機器内の前記第1基準点とは異なる位置を示す第2基準点と、前記第1基準点の移動すべき第1経路と、前記第2基準点の移動すべき第2経路と、を設定し、
前記液体吐出ヘッドが前記ワークに対して液体を吐出しつつ、前記移動機構が前記ワークに対する前記第1基準点の相対的な位置を前記第1経路に沿って変化させる第1ステップを実行し、
前記エネルギー出射部が前記ワーク上の液体に対してエネルギーを照射しつつ、前記移動機構が前記ワークに対する前記第2基準点の相対的な位置を前記第2経路に沿って変化させる第2ステップと、を実行し、
前記ワークと前記第1基準点との間の距離をL1とし、前記ワークと前記第2基準点との間の距離をL2とするとき、
前記第1ステップは、L1<L2の関係を満たし、
前記第2ステップは、L1>L2の関係を満たす、
ことを特徴とする立体物印刷方法。
【請求項13】
前記第1基準点は、前記液体吐出ヘッドの位置を示す点であり、
前記第2基準点は、前記エネルギー出射部の位置を示す点である、
ことを特徴とする請求項12に記載の立体物印刷方法。
【請求項14】
前記第1基準点は、前記出射面よりも前記ノズル面に近い点であり、
前記第2基準点は、前記ノズル面よりも前記出射面に近い点である、
ことを特徴とする請求項12または13に記載の立体物印刷方法。
【請求項15】
前記第1経路は、前記ノズル面の法線方向における前記ワークと前記第1基準点との間の距離が一定となるように設定される、
ことを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載の立体物印刷方法。
【請求項16】
前記第2経路は、前記出射面の法線方向における前記ワークと前記第2基準点との間の距離が一定となるように設定される、
ことを特徴とする請求項12から15のいずれか1項に記載の立体物印刷方法。
【請求項17】
液体を吐出するノズルが設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドからの液体を硬化または固化させるエネルギーを出射する出射面を有するエネルギー出射部と、を用いて、立体的なワークに印刷を行う立体物印刷方法であって、
前記液体吐出ヘッドから前記ワークに対して液体を吐出させつつ、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を第1経路に沿って変化させる第1ステップと、
前記エネルギー出射部から前記ワーク上の液体に対してエネルギーを照射させつつ、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を第2経路に沿って変化させる第2ステップと、を実行し、
前記ノズル面の法線方向における前記ワークと前記ノズル面との間の距離をL1とし、 前記出射面の法線方向における前記ワークと前記出射面との間の距離をL2とするとき、
前記第1ステップは、L1<L2の関係を満たし、
前記第2ステップは、L1>L2の関係を満たす、
ことを特徴とする立体物印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体物印刷装置および立体物印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体物の表面にインクジェット方式により印刷を行う立体物印刷装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のシステムは、ロボットと、ロボットに配置される印刷ヘッドと、を有し、車両の湾曲した表面に対して印刷ヘッドからインク滴を噴射させる。
【0003】
特許文献1には、印刷ヘッドと隣り合うようにロボットに配置された硬化用ヘッドを印刷ヘッドと同一にトレースさせることにより塗布直後のインクを硬化させることが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2015-520011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置では、印刷ヘッドと硬化用ヘッドとが隣り合うように配置されている。このように、印刷ヘッドおよび硬化用ヘッドの互いの位置関係を固定した装置においては、印刷ヘッドを所望の位置および姿勢とすると、硬化用ヘッドを所望の位置および姿勢とすることができない場合がある。換言すれば、印刷ヘッドと硬化用ヘッドのいずれか一方は所望の位置および姿勢にできない場合がある。このため、例えば印刷品質を保つために印刷ヘッドを所望の位置および姿勢とすると、硬化用ヘッドが所望の位置および姿勢にすることができず、これに起因して硬化用ヘッドによるインクの硬化を効率的に行うことが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明に係る立体物印刷装置の一態様は、液体を吐出するノズルが設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドからの液体を硬化または固化させるエネルギーを出射する出射面を有するエネルギー出射部と、立体的なワークに対する前記液体吐出ヘッドおよび前記エネルギー出射部の相対的な位置および姿勢を変化させる移動機構と、を有し、前記液体吐出ヘッドが前記ワークに対して液体を吐出しつつ、前記移動機構が前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる第1ステップと、前記エネルギー出射部が前記ワーク上の液体に対してエネルギーを照射しつつ、前記移動機構が前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる第2ステップと、を実行し、前記ノズル面の法線方向における前記ワークと前記ノズル面との間の距離をL1とし、前記出射面の法線方向における前記ワークと前記出射面との間の距離をL2とするとき、前記第1ステップは、L1<L2の関係を満たし、前記第2ステップは、L1>L2の関係を満たす。
【0007】
本発明に係る立体物印刷方法の一態様は、液体を吐出するノズルが設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドからの液体を硬化または固化させるエネルギーを出射する出射面を有するエネルギー出射部と、を含む機器と、立体的なワークに対する前記機器の相対的な位置および姿勢を変化させる移動機構と、を用いて、前記ワークに印刷を行う立体物印刷方法であって、前記機器内の位置を示す第1基準点と、前記機器内の前記第1基準点とは異なる位置を示す第2基準点と、前記第1基準点の移動すべき第1経路と、前記第2基準点の移動すべき第2経路と、を設定し、前記液体吐出ヘッドが前記ワークに対して液体を吐出しつつ、前記移動機構が前記ワークに対する前記第1基準点の相対的な位置を前記第1経路に沿って変化させる第1ステップを実行し、前記エネルギー出射部が前記ワーク上の液体に対してエネルギーを照射しつつ、前記移動機構が前記ワークに対する前記第2基準点の相対的な位置を前記第2経路に沿って変化させる第2ステップと、を実行する。
【0008】
本発明に係る立体物印刷方法の他の一態様は、液体を吐出するノズルが設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドからの液体を硬化または固化させるエネルギーを出射する出射面を有するエネルギー出射部と、を用いて、立体的なワークに印刷を行う立体物印刷方法であって、前記液体吐出ヘッドから前記ワークに対して液体を吐出させつつ、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を第1経路に沿って変化させる第1ステップと、前記エネルギー出射部から前記ワーク上の液体に対してエネルギーを照射させつつ、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を第2経路に沿って変化させる第2ステップと、を実行し、前記ノズル面の法線方向における前記ワークと前記ノズル面との間の距離をL1とし、前記出射面の法線方向における前記ワークと前記出射面との間の距離をL2とするとき、前記第1ステップは、L1<L2の関係を満たし、前記第2ステップは、L1>L2の関係を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る立体物印刷装置の概略を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る立体物印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図3】実施形態における液体吐出ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図4】実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートである。
図5】実施形態における基準点および経路の設定を説明するための図である。
図6】実施形態における第1ステップを説明するための模式図である。
図7】実施形態における第2ステップを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0011】
以下の説明は、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、X軸に沿う一方向をX1方向といい、X1方向と反対の方向をX2方向という。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向をY1方向およびY2方向という。また、Z軸に沿って互いに反対の方向をZ1方向およびZ2方向という。
【0012】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述のワークWおよび基台210が設置される空間に設定されるベース座標系の座標軸である。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0013】
1.第1実施形態
1-1.立体物印刷装置の概略
図1は、実施形態に係る立体物印刷装置100の概略を示す斜視図である。立体物印刷装置100は、立体的なワークWの表面にインクジェット方式により印刷を行う装置である。
【0014】
ワークWは、印刷対象となる面WFを有する。図1に示す例では、面WFが曲率の異なる複数の部分を有する凸状の曲面である。なお、印刷対象は、ワークWが有する複数の面のうち面WF以外の面でもよい。また、ワークWの大きさ、形状または設置姿勢は、図1に示す例に限定されず、任意である。
【0015】
図1に示す例では、立体物印刷装置100は、垂直多関節ロボットを用いるインクジェットプリンターである。具体的には、図1に示すように、立体物印刷装置100は、ロボット200と液体吐出ユニット300と液体供給ユニット400とコントローラー600とを有する。以下、まず、図1に示す立体物印刷装置100の各部を順次簡単に説明する。
【0016】
ロボット200は、ワークWに対する液体吐出ユニット300の位置および姿勢を変化させる移動機構である。図1に示す例では、ロボット200は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットである。具体的には、ロボット200は、基台210とアーム220とを有する。
【0017】
基台210は、アーム220を支持する台である。図1に示す例では、基台210は、Z1方向を向く床面等の設置面にネジ止め等により固定される。なお、基台210が固定される設置面は、いかなる方向を向く面でもよく、図1に示す例に限定されず、例えば、壁、天井、移動可能な台車等が有する面でもよい。
【0018】
アーム220は、基台210に取り付けられる基端と、当該基端に対して3次元的に位置および姿勢を変化させる先端と、を有する6軸のロボットアームである。具体的には、アーム220は、アーム221、222、223、224、225および226を有し、これらがこの順に連結される。
【0019】
アーム221は、基台210に対して第1回動軸O1まわりに回動可能に関節部230_1を介して連結される。アーム222は、アーム221に対して第2回動軸O2まわりに回動可能に関節部230_2を介して連結される。アーム223は、アーム222に対して第3回動軸O3まわりに回動可能に関節部230_3を介して連結される。アーム224は、アーム223に対して第4回動軸O4まわりに回動可能に関節部230_4を介して連結される。アーム225は、アーム224に対して第5回動軸O5まわりに回動可能に関節部230_5を介して連結される。アーム226は、アーム225に対して第6回動軸O6まわりに回動可能に関節部230_6を介して連結される。なお、以下では、関節部230_1~230_6のそれぞれを関節部230という場合がある。
【0020】
関節部230は、「可動部」の一例である。図1では、関節部230の数Nが6個である場合が例示される。図1に示す例では、関節部230_1~230_6のそれぞれは、隣り合う2つのアームの一方を他方に対して回動可能に連結する機構である。図1では図示しないが、関節部230_1~230_6のそれぞれには、隣り合う2つのアームの一方を他方に対して回動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該回動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該回動の角度等の動作量を検出するロータリーエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、当該駆動機構の集合体は、後述の図2に示すアーム駆動機構240に相当する。また、当該エンコーダーは、後述の図2等に示すエンコーダー241に相当する。
【0021】
第1回動軸O1は、基台210が固定される図示しない設置面に対して垂直な軸である。第2回動軸O2は、第1回動軸O1に対して垂直な軸である。第3回動軸O3は、第2回動軸O2に対して平行な軸である。第4回動軸O4は、第3回動軸O3に対して垂直な軸である。第5回動軸O5は、第4回動軸O4に対して垂直な軸である。第6回動軸O6は、第5回動軸O5に対して垂直な軸である。
【0022】
なお、これらの回動軸について、「垂直」とは、2つの回動軸のなす角度が厳密に90°である場合のほか、2つの回動軸のなす角度が90°から±5°程度の範囲内でずれる場合も含む。同様に、「平行」とは、2つの回動軸が厳密に平行である場合のほかに、2つの回動軸の一方が他方に対して±5°程度の範囲内で傾斜する場合も含む。
【0023】
以上のアーム220の先端、すなわち、アーム226には、エンドエフェクターとして、液体吐出ユニット300が装着される。
【0024】
液体吐出ユニット300は、液体の一例であるインクをワークWに向けて吐出する液体吐出ヘッド310と、液体吐出ヘッド310からワークW上に吐出されたインクを硬化または固化させるエネルギーを出射するエネルギー出射部330と、を有する機器である。本実施形態では、液体吐出ユニット300は、液体吐出ヘッド310およびエネルギー出射部330のほか、液体吐出ヘッド310に供給されるインクの圧力を調整する圧力調整弁320を有する。これらは、ともにアーム226に固定されるので、互いの位置および姿勢の関係が固定される。
【0025】
当該インクとしては、特に限定されず、例えば、水系溶媒に染料または顔料等の色材を溶解させた水系インク、紫外線硬化型等の硬化性樹脂を用いた硬化性インク、および、有機溶剤に染料または顔料等の色材を溶解させた溶剤系インク等が挙げられる。中でも、硬化性インクが好適に用いられる。硬化性インクは、特に限定されず、例えば、熱硬化型、光硬化型、放射線硬化型および電子線硬化型等のいずれでもよいが、紫外線硬化型等の光硬化型が好適である。なお、当該インクは、溶液に限定されず、分散媒に色材等を分散質として分散させたインクでもよい。また、当該インクは、色材を含むインクに限定されず、配線等を形成するための金属粒子等の導電性粒子を分散質として含むインクでもよい。
【0026】
図1では図示しないが、液体吐出ヘッド310は、圧電素子と、インクを収容するキャビティと、当該キャビティに連通するノズルと、有する。ここで、当該圧電素子は、キャビティごとに設けられており、当該キャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルからインクを吐出させる。このような液体吐出ヘッド310は、例えば、エッチング等により適宜に加工したシリコン基板等の複数の基板を接着剤等により貼り合わせることにより得られる。なお、当該圧電素子は、後述の図2に示す圧電素子311に相当する。また、ノズルからインクを吐出させるための駆動素子として、当該圧電素子に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを用いてもよい。
【0027】
圧力調整弁320は、液体吐出ヘッド310内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、液体吐出ヘッド310内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。このため、液体吐出ヘッド310のノズルNに形成されるインクのメニスカスの安定化が図られる。この結果、ノズルN内に気泡が入り込んだり、ノズルNからインクが溢れ出したりすることが防止される。
【0028】
なお、図1に示す例では、液体吐出ユニット300が有する液体吐出ヘッド310および圧力調整弁320のそれぞれの数が1個であるが、当該数は、図1に示す例に限定されず、2個以上でもよい。また、圧力調整弁320の設置位置は、アーム226に限定されず、例えば、他のアーム等でもよいし、基台210に対して固定の位置でもよい。
【0029】
エネルギー出射部330は、インクの種類に応じて、光、熱、電子線または放射線等のエネルギーを出射する。例えば、インクが紫外線硬化型である場合、当該エネルギーは、紫外線である。エネルギー出射部330は、当該エネルギー種類に応じた構成を有する。例えば、当該エネルギーが紫外線である場合、エネルギー出射部330は、紫外線を出射するLED(light emitting diode)等の発光素子等の光源を含む。なお、エネルギー出射部330は、エネルギーの出射方向または出射範囲等を調整するためのレンズ等の光学部品等を有してもよい。
【0030】
ここで、エネルギー出射部330は、出射されるエネルギーの強度を調整可能であることが好ましい。この場合、後述の印刷動作時にエネルギーの強度を小さくすることによりノズル詰まりを低減するとともに、後述の硬化動作時にエネルギーの硬度を大きくすることによりインクの硬化または固化に要する時間を短縮することができる。
【0031】
液体供給ユニット400は、インクを液体吐出ヘッド310に供給するための機構である。液体供給ユニット400は、液体貯留部410と供給流路420とを有する。
【0032】
液体貯留部410は、インクを貯留する容器である。液体貯留部410は、例えば、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパックである。
【0033】
図1に示す例では、液体貯留部410は、常に液体吐出ヘッド310よりもZ1方向に位置するように、壁、天井または柱等に固定される。すなわち、液体貯留部410は、液体吐出ヘッド310の移動領域よりも鉛直方向での上方に位置する。このため、ポンプ等の機構を用いなくても、液体貯留部410から液体吐出ヘッド310に所定の加圧力でインクを供給することができる。
【0034】
なお、液体貯留部410の設置場所は、液体貯留部410から液体吐出ヘッド310に所定の圧力でインクを供給することができればよく、液体吐出ヘッド310よりも鉛直方向での下方に位置してもよい。この場合、例えば、ポンプを用いて、液体貯留部410から液体吐出ヘッド310に所定の圧力でインクを供給すればよい。
【0035】
供給流路420は、液体貯留部410から液体吐出ヘッド310にインクを供給する流路である。供給流路420の途中には、圧力調整弁320が設けられる。このため、液体吐出ヘッド310と液体貯留部410との位置関係が変化しても、液体吐出ヘッド310内のインクの圧力の変動を低減することができる。
【0036】
供給流路420は、例えば、管体の内部空間で構成される。ここで、供給流路420に用いる管体は、例えば、ゴム材料またはエラストマー材料等の弾性材料で構成されており、可撓性を有する。このように、可撓性を有する管体を用いて供給流路420を構成することにより、液体貯留部410と圧力調整弁320との相対的な位置関係の変化が許容される。したがって、液体貯留部410の位置および姿勢を固定したまま、液体吐出ヘッド310の位置または姿勢が変化しても、液体貯留部410から圧力調整弁320へインクを供給することができる。
【0037】
なお、供給流路420の一部が可撓性を有しない部材で構成されてもよい。また、供給流路420の一部は、インクを複数箇所に分配する分配流路を有する構成でもよいし、液体吐出ヘッド310または圧力調整弁320と一体で構成されてもよい。
【0038】
コントローラー600は、ロボット200の駆動を制御するロボットコントローラーである。図1では図示しないが、コントローラー600には、液体吐出ユニット300における吐出動作を制御する制御モジュールが電気的に接続される。コントローラー600および当該制御モジュールには、コンピューターが通信可能に接続される。なお、当該制御モジュールは、後述の図2に示す制御モジュール500に相当する。当該コンピューターは、後述の図2に示すコンピューター700に相当する。
【0039】
1-2.立体物印刷装置の電気的な構成
図2は、第1実施形態に係る立体物印刷装置100の電気的な構成を示すブロック図である。図2では、立体物印刷装置100の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。また、図2では、エンコーダー241_1~241_6を含むアーム駆動機構240が示される。アーム駆動機構240は、関節部230_1~230_6を動作させる前述の駆動機構の集合体である。エンコーダー241_1~241_6は、関節部230_1~230_6に対応して設けられ、エンコーダー241_1~241_6の回転角度等の動作量を計測する。なお、以下では、エンコーダー241_1~241_6のそれぞれをエンコーダー241という場合がある。
【0040】
図2に示すように、立体物印刷装置100は、前述のロボット200と液体吐出ユニット300とコントローラー600のほか、制御モジュール500とコンピューター700とを有する。なお、以下に述べる電気的な各構成要素は、適宜に分割されてもよいし、一部が他の構成要素に含まれてもよいし、他の構成要素と一体で構成されてもよい。例えば、制御モジュール500またはコントローラー600の機能の一部または全部は、コントローラー600に接続されるコンピューター700により実現されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等のネットワークを介してコントローラー600に接続されるPC(personal computer)等の他の外部装置により実現されてもよい。
【0041】
コントローラー600は、ロボット200の駆動を制御する機能と、液体吐出ヘッド310の吐出動作をロボット200の動作に同期させるための信号D3を生成する機能と、を有する。コントローラー600は、記憶回路610と処理回路620とを有する。
【0042】
記憶回路610は、処理回路620が実行する各種プログラムと、処理回路620が処理する各種データと、を記憶する。記憶回路610は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路610の一部または全部は、処理回路620に含まれてもよい。
【0043】
記憶回路610には、基準点情報Daおよび経路情報Dbが記憶される。基準点情報Daは、液体吐出ヘッド310およびエネルギー出射部330のそれぞれの位置に関する情報である。具体的には、基準点情報Daは、ツールセンターポイントとして設定される後述の第1基準点TCP1および第2基準点TCP2に関する情報である。
【0044】
経路情報Dbは、液体吐出ヘッド310およびエネルギー出射部330の移動すべき経路を示す情報である。具体的には、経路情報Dbは、後述の第1基準点TCP1の移動すべき経路である後述の第1経路RU_1を示す情報と、後述の第2基準点TCP2の移動すべき経路である後述の第2経路RU_2を示す情報と、を含む。ただし、第1経路RU_1および第2経路RU_2は、同一でもよいし、異なってもよい。経路情報Dbは、例えば、ベース座標系の座標値を用いて表される。経路情報Dbは、ワークWの位置および形状を示すワーク情報に基づいて決められる。当該ワーク情報は、ワークWの3次元形状を示すCAD(computer-aided design)データ等の情報を前述のベース座標系に対応付けることにより得られる。以上の経路情報Dbは、コンピューター700から記憶回路610に入力される。
【0045】
処理回路620は、経路情報Dbに基づいて関節部230_1~230_6の動作を制御するとともに、信号D3を生成する。具体的には、処理回路620は、経路情報Dbを各関節部230_1~230_6の回転角度および回転速度等の動作量に変換する演算である逆運動学計算を行う。そして、処理回路620は、各関節部230_1~230_6の実際の回転角度および回転速度等の動作量が前述の演算結果となるように、ロボット200のアーム駆動機構240に含まれるエンコーダー241_1~241_6からの出力D1_1~D1_6に基づいて、制御信号Sk_1~Sk_6を出力する。制御信号Sk_1~Sk_6は、関節部230_1~230_6に対応しており、対応する関節部230に設けられるモーターの駆動を制御する。なお、出力D1_1~D1_6は、エンコーダー241_1~241_6に対応する。以下では、出力D1_1~D1_6のそれぞれを出力D1という場合がある。
【0046】
また、処理回路620は、エンコーダー241_1~241_6のうちの少なくとも1つからの出力D1に基づいて、信号D3を生成する。例えば、処理回路620は、エンコーダー241_1~241_6のうちの1つのエンコーダー241からの出力D1が所定値となるタイミングのパルスを含むトリガー信号を信号D3として生成する。
【0047】
以上の処理回路620は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、処理回路620は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0048】
制御モジュール500は、コントローラー600から出力される信号D3とコンピューター700からの印刷データとに基づいて、液体吐出ヘッド310の吐出動作を制御する回路である。制御モジュール500は、タイミング信号生成回路510と電源回路520と制御回路530と駆動信号生成回路540とを有する。
【0049】
タイミング信号生成回路510は、信号D3に基づいてタイミング信号PTSを生成する。タイミング信号生成回路510は、例えば、信号D3の検出を契機としてタイミング信号PTSの生成を開始するタイマーで構成される。
【0050】
電源回路520は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、立体物印刷装置100の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路520は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、液体吐出ユニット300に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路540に供給される。
【0051】
制御回路530は、タイミング信号PTSに基づいて、制御信号SIと波形指定信号dComとラッチ信号LATとクロック信号CLKとチェンジ信号CNGとを生成する。これらの信号は、タイミング信号PTSに同期する。これらの信号のうち、波形指定信号dComは、駆動信号生成回路540に入力され、それ以外の信号は、液体吐出ユニット300のスイッチ回路340に入力される。
【0052】
制御信号SIは、液体吐出ヘッド310が有する圧電素子311の動作状態を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、制御信号SIは、圧電素子311に対して後述の駆動信号Comを供給するか否かを指定する。この指定により、例えば、圧電素子311に対応するノズルからインクを吐出するか否かを指定したり、当該ノズルから吐出されるインクの量を指定したりする。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CNGは、制御信号SIと併用され、圧電素子311の駆動タイミングを規定することにより、ノズルからのインクの吐出タイミングを規定する。クロック信号CLKは、タイミング信号PTSに同期した基準となるクロック信号である。以上の信号のうち、液体吐出ユニット300のスイッチ回路340に入力される信号については、後に詳述する。
【0053】
以上の制御回路530は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、制御回路530は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0054】
駆動信号生成回路540は、液体吐出ヘッド310が有する各圧電素子311を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路540は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路540では、当該DA変換回路が制御回路530からの波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路520からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することで駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、圧電素子311に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。駆動パルスPDは、スイッチ回路340を介して、駆動信号生成回路540から圧電素子311に供給される。スイッチ回路340は、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替える。
【0055】
コンピューター700は、コントローラー600に基準点情報Daおよび経路情報Dbを供給する機能と、制御モジュール500に印刷データを供給する機能と、を有する。また、本実施形態のコンピューター700は、前述のエネルギー出射部330に電気的に接続されており、コントローラー600または制御モジュール500からの信号に基づいて、エネルギー出射部330の駆動を制御する信号D2を出力する。
【0056】
1-3.液体吐出ユニット
図3は、第1実施形態における液体吐出ユニット300の概略構成を示す斜視図である。
【0057】
以下の説明は、互いに交差するa軸、b軸およびc軸を適宜に用いて行う。また、a軸に沿う一方向をa1方向といい、a1方向と反対の方向をa2方向という。同様に、b軸に沿って互いに反対の方向をb1方向およびb2方向という。また、c軸に沿って互いに反対の方向をc1方向およびc2方向という。
【0058】
ここで、a軸、b軸およびc軸は、液体吐出ユニット300に設定されるツール座標系の座標軸であり、前述のロボット200の動作により前述のX軸、Y軸およびZ軸との相対的な位置および姿勢の関係が変化する。図3に示す例では、c軸が前述の第6回動軸O6に平行な軸である。なお、a軸、b軸およびc軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0059】
液体吐出ユニット300は、前述のように、液体吐出ヘッド310と圧力調整弁320とエネルギー出射部330とを有する。これらは、図3中の二点鎖線で示される支持体350に支持される。
【0060】
支持体350は、例えば、金属材料等で構成されており、実質的な剛体である。なお、図3では、支持体350が扁平な箱状をなすが、支持体350の形状は、特に限定されず、任意である。
【0061】
以上の支持体350は、前述のアーム220の先端、すなわちアーム226に装着される。このため、液体吐出ヘッド310と圧力調整弁320とエネルギー出射部330とのそれぞれは、アーム226に固定される。
【0062】
図3に示す例では、圧力調整弁320は、液体吐出ヘッド310に対してc1方向に位置する。エネルギー出射部330は、液体吐出ヘッド310に対してa2方向に位置する。
【0063】
供給流路420は、圧力調整弁320により上流流路421と下流流路422とに区分される。すなわち、供給流路420は、液体貯留部410と圧力調整弁320とを連通させる上流流路421と、圧力調整弁320と液体吐出ヘッド310とを連通させる下流流路422と、を有する。図3に示す例では、供給流路420の下流流路422の一部が流路部材422aで構成される。流路部材422aは、圧力調整弁320からのインクを液体吐出ヘッド310の複数箇所に分配する流路を有する。流路部材422aは、例えば、樹脂材料で構成される複数の基板の積層体であり、各基板には、インクの流路のための溝または孔が適宜に設けられる。
【0064】
液体吐出ヘッド310は、ノズル面F1と、ノズル面F1に開口する複数のノズルNと、を有する。図3に示す例では、ノズル面F1の法線方向がc2方向であり、当該複数のノズルNは、a軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列Laと第2ノズル列Lbとに区分される。第1ノズル列Laおよび第2ノズル列Lbのそれぞれは、「ノズル列」の一例であり、b軸に沿う方向に直線状に配列される複数のノズルNの集合である。ここで、液体吐出ヘッド310における第1ノズル列Laの各ノズルNに関連する要素と第2ノズル列Lbの各ノズルNに関連する要素とがa軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。
【0065】
ただし、第1ノズル列Laにおける複数のノズルNと第2ノズル列Lbにおける複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致してもよいし異なってもよい。また、第1ノズル列Laおよび第2ノズル列Lbのうちの一方の各ノズルNに関連する要素が省略されてもよい。以下では、第1ノズル列Laにおける複数のノズルNと第2ノズル列Lbにおける複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0066】
エネルギー出射部330は、紫外線等のエネルギーを出射する出射面F2を有する。図3に示す例では、出射面F2の法線方向がc2方向であり、かつ、出射面F2が前述のノズル面F1と同一平面上に配置される。なお、出射面F2の法線方向は、ノズル面F1の法線方向と異なってもよい。また、出射面F2は、ノズル面F1と同一平面上に位置しなくてもよく、例えば、ノズル面F1に対してc1方向またはc2方向に位置してもよい。
【0067】
立体物印刷装置100は、液体吐出ユニット300内の互いに異なる位置を示す第1基準点TCP1および第2基準点TCP2をツールセンターポイントとして設定可能であり、第1基準点TCP1が所定の経路に沿って移動するようにロボット200を駆動する印刷動作と、第2基準点TCP2が所定の経路に沿って移動するようにロボット200を駆動する硬化動作と、を選択的に実行する。なお、印刷動作では、第1基準点TCP1を原点とするツール座標系が用いられる。硬化動作では、第2基準点TCP2を原点とするツール座標系が用いられる。
【0068】
第1基準点TCP1は、液体吐出ヘッド310の位置を示す点である。図3に示す例では、第1基準点TCP1がノズル面F1の中心点である。また、第2基準点TCP2は、エネルギー出射部330の位置を示す点である。図3に示す例では、第2基準点TCP2が出射面F2の中心点である。なお、第1基準点TCP1は、ノズル面F1の中心に限定されず、液体吐出ユニット300内における出射面F2よりもノズル面F1に近い位置であればよい。また、第2基準点TCP2は、出射面F2の中心に限定されず、液体吐出ユニット300内におけるノズル面F1よりも出射面F2に近い位置であればよい。
【0069】
1-4.立体物印刷装置の動作および立体物印刷方法
図4は、実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートである。当該立体物印刷方法は、前述の立体物印刷装置100を用いて行われる。立体物印刷装置100は、図4に示すように、基準点および経路を設定するステップS110と、印刷動作を行うステップS120と、硬化動作を行うステップS130と、をこの順で実行する。
【0070】
図5は、実施形態における基準点および経路の設定を説明するための図である。前述のステップS110では、まず、第1基準点TCP1および第2基準点TCP2が設定される。この設定は、例えば、これらの基準点のうちの一方の基準点とすべき液体吐出ユニット300の部位をベース座標系における既知の位置に移動させることにより行われる。他方の基準点は、これらの基準点間の位置関係に基づいて設定される。このように第1基準点TCP1および第2基準点TCP2を設定することにより、前述の基準点情報Daが生成される。
【0071】
次に、ワークWの位置および形状を示すワーク情報に基づいて、第1基準点TCP1の移動すべき経路として第1経路RU_1が設定される。図5では図示しないが、同様に、ワークWの位置および形状を示すワーク情報に基づいて、第2基準点TCP2の移動すべき経路として後述の第2経路RU_2が設定される。このように第1経路RU_1および第2経路RU_2を設定することにより、前述の経路情報Dbが生成される。なお、第1経路RU_1および第2経路RU_2は、互いに同一でも異なってもよい。ただし、液体吐出ユニット300の構成等を簡単化しつつ印刷および硬化を好適に行う観点から、これらの経路は、互いに平行または略平行であることが好ましく、また、面WFの法線方向にみて互いに一致または略一致することが好ましい。
【0072】
図6は、実施形態における第1ステップの一例であるステップS120を説明するための模式図である。ステップS120では、第1基準点TCP1が第1経路RU_1に沿って移動しながら、液体吐出ヘッド310がワークWの面WFに向けてインクを吐出することにより、印刷が行われる。このとき、液体吐出ヘッド310がエネルギー出射部330よりも当該移動方向での前方に位置する。すなわち、前述のツール座標系におけるa1方向が第1経路RU_1の方向を向く。
【0073】
ここで、第1経路RU_1と面WFとの間の距離が一定または略一定であり、かつ、液体吐出ヘッド310のノズル面F1の法線と面WFとのなす角度が一定または略一定である。したがって、ノズル面F1の法線方向における第1基準点TCP1と面WFとの間の距離を距離L1としたき、距離L1は第1経路RU_1の全域にわたり一定である。このため、液体吐出ヘッド310から面WFへのインクの着弾誤差を低減することができる。また、図6に示す例では、ノズル面F1の法線が面WFに直交または略直交する。このため、ノズル面F1の法線が面WFに対して傾斜する場合に比べて、印刷品質を高めやすい。
【0074】
これに対し、出射面F2の法線方向における第2基準点TCP2と面WFとの間の距離を距離L2としたとき、距離L2はステップS120において、面WFの曲率の変化に伴って変動する。また、面WFが凸状の曲面であり、かつ、前述のように液体吐出ヘッド310のノズル面F1の法線が面WFに直交または略直交するので、ステップS120において、距離L2は、距離L1よりも大きい。
【0075】
ステップS120では、エネルギー出射部330からエネルギーを出射させないか、または、エネルギー出射部330からのエネルギーの強度が面WF上のインクを完全硬化させずにピニングさせる程度である。このため、ステップS120においてステップS130と同程度にエネルギー出射部330からエネルギーを出射させる場合に比べて、ノズルNの詰まりが防止または低減される。また、前述のピニングを行う場合、面WF上の所望位置からのインクのずれを防止または低減することができる。
【0076】
ここで、ステップS120における面WFに照射される単位面積あたりのエネルギー量がステップS130よりも少ないことが好ましい。この場合、当該エネルギー量がステップS130と同等以上である場合に比べて、ノズルNの詰まりが低減される。
【0077】
図7は、実施形態における第2ステップの一例であるステップS130を説明するための模式図である。ステップS130では、第2基準点TCP2が第2経路RU_2に沿って移動しながら、エネルギー出射部330が面WF上のインクに向けてエネルギーを出射することにより、当該インクが硬化または固化される。このとき、前述のステップS120と同様、液体吐出ヘッド310がエネルギー出射部330よりも当該移動方向での前方に位置する。
【0078】
ここで、ステップS130では、液体吐出ヘッド310からのインクの吐出を行わない。このため、エネルギー出射部330から出射されたエネルギーが液体吐出ヘッド310からのインクの吐出に影響することはない。
【0079】
また、第2経路RU_2と面WFとの間の距離が一定または略一定であり、かつ、エネルギー出射部330の出射面F2の法線と面WFとのなす角度が一定または略一定である。したがって、出射面F2の法線方向における第2基準点TCP2と面WFとの間の距離を距離L2としたとき、距離L2は第2経路RU_2の全域にわたり一定である。このため、エネルギー出射部330から面WFへのエネルギーの照射ムラを低減することができる。また、図6に示す例では、出射面F2の法線が面WFに直交または略直交する。このため、出射面F2の法線が面WFに対して傾斜する場合に比べて、面WFで反射してノズルN付近に至るエネルギー量を低減しやすい。
【0080】
これに対し、ノズル面F1の法線方向における第1基準点TCP1と面WFとの間の距離を距離L1としたとき、距離L1はステップS130において、面WFの曲率の変化に伴って変動する。また、面WFが凸状の曲面であり、かつ、前述のようにエネルギー出射部330の出射面F2の法線が面WFに直交または略直交するので、ステップS130において、距離L1は、距離L2よりも大きい。言い換えると、ステップS130において、距離L2は、距離L1よりも小さい。このため、エネルギー出射部330からエネルギーを出射しても、面WFで反射したエネルギーがノズルN付近に至りにくい。
【0081】
ステップS130では、エネルギー出射部330からのエネルギーの強度が面WF上のインクを完全硬化させる程度である。このため、ステップS130後に面WF上のインクの剥がれ等が防止または低減される。ここで、ステップS130における面WFに照射される単位面積あたりのエネルギー量は、ステップS120よりも多い。
【0082】
ここで、生産性を高める観点から、ステップS130における第2経路RU_2に沿う第2基準点TCP2の移動速度は、ステップS120における第1経路RU_1に沿う第1基準点TCP1の移動速度よりも速いことが好ましい。このような移動速度は、エネルギー出射部330から出射されるエネルギーの強度を高めることにより実現される。
【0083】
以上の立体物印刷装置100は、前述のように、液体吐出ヘッド310と、エネルギー出射部330と、「移動機構」の一例であるロボット200と、を有する。ここで、液体吐出ヘッド310は、「液体」の一例であるインクを吐出するノズルNが設けられたノズル面F1を有する。エネルギー出射部330は、インクを硬化または固化させるエネルギーを出射する出射面F2を有する。ロボット200は、立体的なワークWに対する液体吐出ヘッド310およびエネルギー出射部330の相対的な位置および姿勢を変化させる。なお、「硬化」とは、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂等の硬化性樹脂が重合反応等の反応により硬化することを含む概念である。「固化」とは、溶液から溶媒を除去することにより溶質由来の固体を得るか、または、分散液から分散媒を除去することにより分散質由来の固体を得ることを含む概念である。
【0084】
特に、立体物印刷装置100は、前述のように、「第1ステップ」の一例であるステップS120と、「第2ステップ」の一例であるステップS130と、を実行する。ステップS120は、液体吐出ヘッド310がワークWに対してインクを吐出しつつ、ロボット200がワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置を第1経路RU_1に沿って変化させる。ステップS130は、エネルギー出射部330がワークW上のインクに対してエネルギーを照射しつつ、ロボット200がワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置を第2経路RU_2に沿って変化させる。
【0085】
ここで、ノズル面F1の法線方向における第1基準点TCP1と面WFとの間の距離をL1とし、出射面F2の法線方向における第2基準点TCP2と面WFとの間の距離をL2とするとき、ステップS120は、L1<L2の関係を満す。これに対し、ステップS130は、L1>L2の関係を満たす。
【0086】
なお、L1は、必ずしも第1基準点TCP1と面WFとの間の距離に限定されず、ノズル面F1の法線方向におけるワークWとノズル面F1との間の距離をL1とすることもできる。また、L2は、必ずしも第2基準点TCP2と面WFとの間の距離に限定されず、出射面F2の法線方向におけるワークWと出射面F2との間の距離をL2することもできる。この場合においても、ステップS120は、L1<L2の関係を満す。これに対し、ステップS130は、L1>L2の関係を満たす。
【0087】
以上の立体物印刷装置100では、ステップS120において、L1<L2の関係を満すことにより、液体吐出ヘッド310からワークWへのインクの着弾誤差を低減することができる。そのうえで、ステップS130において、L1>L2の関係を満たすことにより、L1<L2の関係を満す場合に比べて、ワークW上のインクを効率的に硬化または固化させることができる。この結果、ワークW上の所望の位置に着弾したインクを硬化または固化させることにより形成された高品質な画像が得られる。
【0088】
ここで、ステップS120とは別途にステップS130が実行されるので、ステップS120では、エネルギー出射部330からエネルギーを出射する必要がないか、または、エネルギー出射部330から出射するエネルギー量がステップS130に比べて少なくて済む。このため、ステップS120において、エネルギー出射部330からのエネルギーによるノズルN付近のインクの硬化または固化を防止または低減することができる。
【0089】
また、ステップS130では、L1>L2の関係を満たすので、エネルギー出射部330からエネルギーを出射しても、エネルギー出射部330からノズルN付近にエネルギーが至らないか、または、L1<L2の関係を満す場合に比べて、エネルギー出射部330からノズルN付近に至るエネルギー量を少なくすることができる。このため、エネルギー出射部330からワークW上のインクを十分に硬化し得る量のエネルギーを出射させても、エネルギー出射部330からのエネルギーによるノズルN付近のインクの硬化または固化を防止または低減することができる。
【0090】
ここで、前述のように、ステップS120で液体吐出ヘッド310からワークWへのインクの吐出が行われるので、ステップS130では、液体吐出ヘッド310からワークWへのインクの吐出が必要ない。したがって、ステップS130における液体吐出ヘッド310は、ワークWに対してインクを吐出しない。
【0091】
また、前述のように、ステップS120において、エネルギー出射部330がワークW上のインクに対してエネルギーを照射することが好ましい。この場合、ワークW上に着弾したインクをエネルギー出射部330からのエネルギーにより半硬化または半固化させることができる。この結果、ワークW上のインクがステップS120における着弾後からステップS130におけるエネルギー照射までの間に不本意に移動することが防止される。また、この場合、ステップS120においては、ワークW上のインクの不本意な移動を防止できる程度に面WF上のインクを硬化または固化させることができればよく、ワークW上のインクを完全硬化および固化させる必要はない。よって、ステップS120においてエネルギー出射部330から出射されるエネルギー量が少なくて済む。この結果、ステップS120においてエネルギー出射部330からのエネルギーによるノズルNの詰まりが防止または低減される。
【0092】
ここで、ステップS130におけるエネルギー出射部330からワークW上のインクに照射されるエネルギーの単位面積あたりの量は、ステップS120におけるエネルギー出射部330からワークW上のインクに照射されるエネルギーの単位面積あたりの量よりも大きいことが好ましい。この場合、ステップS120においてエネルギー出射部330からのエネルギーによるノズルNの詰まりが防止または低減しつつ、ステップS130でエネルギー出射部330からのエネルギーによりワークW上のインクを完全に硬化または固化させることができる。
【0093】
また、ステップS130におけるエネルギー出射部330からワークW上のインクに照射されるエネルギーの単位面積あたりの時間は、ステップS120におけるエネルギー出射部330からワークW上のインクに照射されるエネルギーの単位面積あたりの時間よりも長いことが好ましい。この場合、ステップS130でエネルギー出射部からのエネルギーによりワーク上のインクを完全に硬化または固化させることが容易である。
【0094】
また、ステップS130におけるエネルギー出射部330からワークW上のインクに照射されるエネルギーの強度は、ステップS120におけるエネルギー出射部330からワークW上のインクに照射されるエネルギーの強度よりも高いことが好ましい。この場合、ステップS130でエネルギー出射部からのエネルギーによりワーク上のインクを完全に硬化または固化させることが容易である。
【0095】
また、前述のように、液体吐出ヘッド310とエネルギー出射部330との相対的な位置が固定されており、ロボット200は、液体吐出ヘッド310およびエネルギー出射部330の両方を同時に移動させる。このため、ワークWを移動させる構成に比べて、ステップS120およびステップS130におけるロボット200の駆動制御のための基準点および経路の設定が容易である。また、ワークWを移動させる構成においては、ワークを移動する際にワークWが振動し、理想的な移動経路との誤差が生じてしまう場合がある。こうした誤差は、ワークWの寸法がロボット200に対して比較的大きい場合や、ワークWの剛性が低いにおいて顕著である。このため、印刷時にワークを移動させず、ロボット200が、液体吐出ヘッド310およびエネルギー出射部330の両方を移動させることで、ワークWの振動による、理想的な移動経路との誤差を低減できる。
【0096】
また、ノズル面F1および出射面F2の両方は、ステップS120およびステップS130のそれぞれにおいてワークWに対向する。このため、ノズル面F1および出射面F2の一方がステップS120またはステップS130においてワークWに対向しない構成に比べて、両ステップ間での動作の切り替えに要する時間を短くすることができる。また、ノズル面F1および出射面F2の両方がステップS120においてワークWに対向する構成によれば、ステップS120においてピニングを行う場合に動作の効率を高めることができる。これは、ノズル面F1に設けられたノズルからワークWへのインクの吐出と、出射面F2からワークW上のインクに対するエネルギーの照射と、同時に行うことができるためである。
【0097】
また、ロボット200によってワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置が変化する方向は、ステップS120と、ステップS130と、で互いに同一であることが好ましい。つまり、第1経路RU_1および第2経路RU_2の方向が互いに同一であることが好ましい。この場合、ワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置が変化する方向は、ステップS120と、ステップS130と、で互いに異なる場合に比べて、ワークW上のインクの着弾からエネルギー照射までの時間長さのバラつきを低減することができ、この結果、印刷品質を向上させることができる。
【0098】
前述のように、立体物印刷装置100は、液体吐出ヘッド310とエネルギー出射部330とを含む「機器」の一例である液体吐出ユニット300を有し、第1基準点TCP1と第2基準点TCP2と第1経路RU_1と第2経路RU_2とを設定する。第1基準点TCP1は、液体吐出ユニット300内の位置を示す。第2基準点TCP2は、液体吐出ユニット300内の第1基準点TCP1とは異なる位置を示す。第1経路RU_1は、第1基準点TCP1の移動すべき経路である。第2経路RU_2は、第2基準点TCP2の移動すべき経路である。
【0099】
ステップS120は、液体吐出ヘッド310がワークWに対してインクを吐出しつつ、ロボット200がワークWに対する第1基準点TCP1の相対的な位置を第1経路RU_1に沿って変化させる。ステップS130は、エネルギー出射部330がワークW上のインクに対してエネルギーを照射しつつ、ロボット200がワークWに対する第2基準点TCP2の相対的な位置を第2経路RU_2に沿って変化させる。
【0100】
このように第1基準点TCP1および第2基準点TCP2を用いることにより、各ステップに応じた第1経路RU_1および第2経路RU_2の設定が容易である。ここで、第1基準点TCP1は、液体吐出ヘッド310の位置を示す点であり、より具体的には、出射面F2よりもノズル面F1に近い点である。第2基準点TCP2は、エネルギー出射部330の位置を示す点であり、より具体的には、ノズル面F1よりも出射面F2に近い点である。
【0101】
また、前述のように、第1経路RU_1は、ノズル面F1の法線方向におけるワークWと第1基準点TCP1との間の距離L1が一定となるように設定されることが好ましい。この場合、液体吐出ヘッド310からワークWへのインクの着弾誤差を低減することができる。
【0102】
また、前述のように、第2経路RU_2は、出射面F2の法線方向におけるワークWと第2基準点TCP2との間の距離L2が一定となるように設定されることが好ましい。この場合、エネルギー出射部330からワークW上のインクへのエネルギーの照射ムラを低減することができる。
【0103】
2.変形例
以上の例示における各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択される2以上の態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0104】
2-1.変形例1
前述の形態では、移動機構として6軸の垂直多軸ロボットを用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。移動機構は、ワークに対して液体吐出ヘッドの相対的な位置および姿勢を3次元的に変化させることが可能であればよい。したがって、移動機構は、例えば、6軸以外の垂直多軸ロボットでもよいし、水平多軸ロボットでもよい。また、ロボットアームが有する可動部は、回動機構に限定されず、例えば、伸縮機構等でもよい。
【0105】
2-2.変形例2
前述の形態では、ロボットアームの先端に対する液体吐出ヘッドの固定方法としてネジ止め等を用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、ロボットアームの先端に装着されるハンド等の把持機構により液体吐出ヘッドを把持することにより、ロボットアームの先端に対して液体吐出ヘッドを固定してもよい。
【0106】
2-3.変形例3
また、前述の形態では、液体吐出ヘッドを移動させる構成の移動機構が例示されるが、当該構成に限定されず、例えば、液体吐出ヘッドの位置が固定されており、移動機構がワークを移動させ、液体吐出ヘッドに対してワーク相対的な位置および姿勢を3次元的に変化させる構成でもよい。この場合、例えば、ロボットアームの先端に装着されるハンド等の把持機構によりワークが把持される。
【0107】
2-4.変形例4
前述の形態では、1種類のインクを用いて印刷を行う構成が例示されるが、当該構成に限定されず、2種以上のインクを用いて印刷を行う構成にも本発明を適用することができる。
【0108】
2-5.変形例5
本発明の立体物印刷装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する立体物印刷装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する立体物印刷装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、立体物印刷装置は、接着剤等の液体をワークに塗布するジェットディスペンサーとしても利用できる。
【符号の説明】
【0109】
100…立体物印刷装置、200…ロボット(移動機構)、300…液体吐出ユニット(機器)、310…液体吐出ヘッド、330…エネルギー出射部、F1…ノズル面、F2…出射面、L1…距離、L2…距離、N…ノズル、RU_1…第1経路、RU_2…第2経路、S120…ステップ(第1ステップ)、S130…ステップ(第2ステップ)、TCP1…第1基準点、TCP2…第2基準点、W…ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7