(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】記録装置、情報処理システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240814BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20240814BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B41J2/01 305
G06F3/12 310
G06F3/12 332
G06F3/12 382
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B65H7/02
(21)【出願番号】P 2020175884
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 恒之
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-148954(JP,A)
【文献】特開2009-255386(JP,A)
【文献】特開平05-313517(JP,A)
【文献】特開2014-139002(JP,A)
【文献】特開2020-013174(JP,A)
【文献】特開2019-059055(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150857(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0293605(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
G06F 3/12
B65H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って媒体を搬送する搬送部と、
搬送される前記媒体に記録を行う記録部と、
記録が行われる前に、前記搬送経路上において前記媒体の一部に皺を形成させる皺形成
機構と、
前記皺の状態を検出する検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部の検出データに基づいて、前記媒体の剛性特性を算出
し、
前記検出部は、寸法を検出可能なセンサーを含み、前記媒体の規定の方向における前記
皺が形成された部分の幅寸法を検出することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の記録装置であって、
前記剛性特性に対して印刷パラメーターを関連付けたデータテーブルが格納された記憶
部を備え、
前記制御部は、
算出された前記剛性特性に対応する前記印刷パラメーターを導出する、記録装置。
【請求項3】
搬送経路に沿って媒体を搬送する搬送部と、
搬送される前記媒体に記録を行う記録部と、
記録が行われる前に、前記搬送経路上において前記媒体の一部に皺を形成させる皺形成
機構と、
前記皺の状態を検出する検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部の検出データに基づいて、前記媒体の剛性特性を算出し、
前記皺形成機構は、搬送される前記媒体に対して搬送速度差を生じさせることにより、
前記搬送経路上において前記媒体の一部に前記皺を形成させる
ことを特徴とする記録装置
。
【請求項4】
搬送経路に沿って媒体を搬送する搬送部と、
搬送される前記媒体に記録を行う記録部と、
記録が行われる前に、前記搬送経路上において前記媒体の一部に皺を形成させる皺形成
機構と、
前記皺の状態を検出する検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部の検出データに基づいて、前記媒体の剛性特性を算出し、
前記皺形成機構は、
前記搬送経路において前記媒体を支持する支持部と、
前記支持部に支持された前記媒体を前記支持部側に吸引する吸引機構と、を含み、
前記吸引機構により前記媒体に対して吸引力差を生じさせることにより、前記支持部上
において前記媒体の一部に前記皺を形成させる
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
記録装置と保守サービス提供部との間で通信可能に構成された情報処理システムであっ
て、
前記記録装置は、
搬送経路に沿って媒体を搬送する搬送部と、
搬送される前記媒体に記録を行う記録部と、
前記搬送経路上において前記媒体の一部に皺を形成させる皺形成機構と、
前記媒体の前記皺が形成された部分の状態を検出する検出部と、
前記保守サービス提供部との通信を行う第1通信部と、
第1制御部と、を備え、
前記第1制御部は、前記検出部によって検出された検出データを前記保守サービス提供
部に送信させ、
前記保守サービス提供部は、
前記記録装置との通信を行う第2通信部と、
剛性特性に対して印刷パラメーターを関連付けたデータテーブルが格納された記憶部と
、
第2制御部と、を備え、
前記第2制御部は、
受信した前記検出データに基づいて、前記媒体の前記剛性特性を算出し、算出された前
記剛性特性に対応する前記印刷パラメーターを導出し、導出された前記印刷パラメーター
を前記記録装置に送信する、情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、シートを吸着する吸着部材と、シートの剛性を検知する剛性検出手段として、シートの厚みを検出するシート厚検出手段と、を備え、シートの厚み情報に基づいて、吸着部材の調整を行うシート給送装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記装置では、シートの剛性に対してシートの厚みを代用しているが、例えば、シートの厚みが同じでも、シートの種類によってコシの強さが異なる場合がある。このため、シートの剛性の検出が不十分である、という課題がある。
シートの剛性を適切に考慮しないと、搬送経路上でジャム等の搬送トラブルが発生してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
記録装置は、搬送経路に沿って媒体を搬送する搬送部と、搬送される前記媒体に記録を行う記録部と、記録が行われる前に、前記搬送経路上において前記媒体の一部に皺を形成させる皺形成機構と、前記皺の状態を検出する検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記検出部の検出データに基づいて、前記媒体の剛性特性を算出する。
【0006】
情報処理システムは、記録装置と保守サービス提供部との間で通信可能に構成された情報処理システムであって、前記記録装置は、搬送経路に沿って媒体を搬送する搬送部と、搬送される前記媒体に記録を行う記録部と、前記搬送経路上において前記媒体の一部に皺を形成させる皺形成機構と、前記媒体の前記皺が形成された部分の状態を検出する検出部と、前記保守サービス提供部との通信を行う第1通信部と、第1制御部と、を備え、前記第1制御部は、前記検出部によって検出された検出データを前記保守サービス提供部に送信させ、前記保守サービス提供部は、前記記録装置との通信を行う第2通信部と、剛性特性に対して印刷パラメーターを関連付けたデータテーブルが格納された記憶部と、第2制御部と、を備え、前記第2制御部は、受信した前記検出データに基づいて、前記媒体の前記剛性特性を算出し、算出された前記剛性特性に対応する前記印刷パラメーターを導出し、導出された前記印刷パラメーターを前記記録装置に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態にかかる記録装置の構成を示す模式図。
【
図2】第1実施形態にかかる皺形成機構による皺の形成例を示す模式図。
【
図3】第1実施形態にかかる検出部の構成を示す平面図。
【
図4】第1実施形態にかかる検出部による皺の検出方法を示す模式図。
【
図5】第1実施形態にかかる検出部による皺の検出方法を示す模式図。
【
図6】第1実施形態にかかる制御部の構成を示すブロック図。
【
図7】第2実施形態にかかる記録装置の構成を示す斜視図。
【
図8】第2実施形態にかかる記録装置の構成を示す平面図。
【
図9】第2実施形態にかかる記録装置の構成を示す側断面模式図。
【
図10】第2実施形態にかかる皺形成機構による皺の形成例を示す模式図。
【
図11】第2実施形態にかかる検出部による皺の検出方法を示す模式図。
【
図12】第2実施形態にかかる検出部による皺の検出方法を示す模式図。
【
図13】第2実施形態にかかる制御部の構成を示すブロック図。
【
図14】第3実施形態にかかる情報処理システムの構成を示す模式図。
【
図15】第3実施形態にかかる情報処理システムの制御方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態
まず、記録装置11の構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態の記録装置11は、例えば、布帛、フィルムシート、用紙等のメディアM(媒体)に液体の一例であるインクを吐出することによって、文字、写真などの画像を記録するインクジェット式のプリンターである。記録装置11は、保持部12と、テンションユニット13と、剥離装置14と、記録部15と、搬送部の一例としての搬送ユニット16と、押付部17と、を有する。
保持部12は、メディアMが巻かれた第1ロール体R1を保持する。搬送ユニット16は、第1ロール体R1から繰り出されたメディアMを搬送する。記録部15は、メディアMに記録する。
なお、メディアMは、保持部12に保持された第1ロール体R1から、剥離装置14により搬送ユニット16から剥離されて巻き取られた第2ロール体R2までの搬送経路に沿う搬送方向Y1に搬送される。この搬送方向Y1は、搬送経路上のメディアMの搬送位置に応じて変化する方向である。搬送ユニット16により搬送されるメディアMの搬送方向であるベルト搬送方向+Yは、搬送方向Y1のうちの一つである。
ここで、メディアMは、ベルト搬送方向+Yと、ベルト搬送方向+Yとは反対の逆ベルト搬送方向-Yと、に移動可能である。搬送方向Y1は、メディアMに対して記録部15による記録動作が実行される場合の搬送方向であり、逆ベルト搬送方向-Yは、例えばメディアMが搬送ユニット16にセットされる際のメディア位置を調整する調整動作が実行される場合の搬送方向である。
【0009】
搬送ベルト21の上方にはハウジング11aが配置されている。ハウジング11a内には記録部15及び制御部100が収容されている。記録部15は、例えば、メディアMに液体を吐出することにより、メディアMに記録する。記録部15は、記録ヘッド18と、記録ヘッド18を保持するキャリッジ19とを有する。記録ヘッド18は、液滴を吐出するノズル18Nと、ノズル18Nが開口するノズル面18aとを有する。ノズル面18aは、搬送ベルト21の支持面21aと所定のギャップを隔てて対向する。ノズル18Nから吐出された液滴が、支持面21a上に貼り付けられたメディアMの表面Maに着弾することで、メディアMに画像が記録される。
【0010】
記録部15は、メディアMに対して走査するシリアルヘッドでもよいし、メディアMの幅と略同じ範囲に亘って延在するラインヘッドでもよい。記録部15がシリアルヘッドである場合、キャリッジ19はX軸に沿う方向である幅方向と平行な走査方向に移動する。キャリッジ19が走査方向に移動する途中で記録ヘッド18がノズル18Nから液滴を吐出することで、メディアMに記録する。記録部15がラインヘッドである場合、メディアMの幅と略同じ範囲に配列された複数のノズル18Nから、一定速度で搬送されるメディアMに向けて一斉に液滴を吐出することで、メディアMに記録する。
【0011】
搬送ユニット16は、搬送ベルト21と、駆動ローラー22と、従動ローラー23とを含む。搬送ベルト21は、駆動ローラー22と従動ローラー23とに巻き掛けられる。搬送ベルト21は、無端状の基材24と、基材24の外周面上に設けられる粘着層25とを有する。粘着層25は、基材24の外周面の全周に、粘着剤が塗布されることによって形成される。つまり、搬送ベルト21は、粘着層25を有するグルーベルトである。搬送ベルト21は、粘着層25の表面に、メディアMを支持するための支持面21aを有する。メディアMは、粘着層25の表面に貼り付けられた状態で支持面21aに支持される。
【0012】
搬送ユニット16は、駆動源として搬送モーター26を備える。駆動ローラー22は、搬送モーター26と動力伝達可能に連結されている。搬送モーター26が駆動されると、駆動ローラー22が回転する。駆動ローラー22が回転すると、搬送ベルト21が周回する。従動ローラー23は、搬送ベルト21の周回に従動して回転する。このようにして、搬送モーター26は、駆動ローラー22に駆動力を伝達して搬送ベルト21を駆動する。搬送ベルト21が周回することで、支持面21aに貼り付けられたメディアMは搬送される。なお、駆動ローラー22と従動ローラー23との位置を反対にし、ベルト搬送方向+Yの下流側のローラーを駆動ローラー22としてもよい。
【0013】
押付部17は、記録部15よりもベルト搬送方向+Yの上流側の位置に、搬送ベルト21の支持面21aと対向する上方に配置される。
押付部17は、メディアMを搬送ベルト21に押し付ける。これにより、メディアMは、粘着層25に貼り付けられる。押付部17は、搬送ベルト21の周回に伴って粘着層25にメディアMを順次貼り付ける。メディアMは、搬送ベルト21の支持面21aに貼り付けられた状態で支持される。
【0014】
押付部17は、メディアMの表面Maに接触してメディアMを加圧する加圧ローラー17aを備える。押付部17は、加圧ローラー17aを搬送ベルト21の支持面21aに沿って往復移動させる移動機構17bを備える。押付部17は、加圧ローラー17aがメディアMを加圧しながら移動機構17bによりベルト搬送方向+Yと逆ベルト搬送方向-Yとに往復移動することによって、メディアMの裏面Mbを確実に粘着層25に貼り付ける。なお、加圧ローラー17aは、幅方向において往復移動してもよいし、幅方向とベルト搬送方向+Yとの両方に交差する交差方向において往復移動してもよい。
【0015】
押付部17により支持面21aに貼り付けられたメディアMは、搬送ベルト21の周回によってベルト搬送方向+Yに搬送される。記録部15は、搬送ベルト21により搬送される途中の記録位置で、支持面21a上のメディアMに記録する。
【0016】
保持部12は、メディアMが巻き重ねられた第1ロール体R1を保持する。保持部12は、第1ロール体R1を回転可能に保持する。保持部12が保持する第1ロール体R1は、記録前のメディアMが巻き重ねられたものである。本実施形態においては、搬送ベルト21が駆動することによって、保持部12に保持された第1ロール体R1からメディアMが巻き解かれる。巻き解かれたメディアMは、保持部12から記録部15に向かう搬送経路に沿って搬送される。本実施形態では、保持部12には、保持する第1ロール体R1からメディアMを繰り出す駆動源となる給送モーター27が設けられている。給送モーター27を備える構成である場合、給送モーター27は、搬送ユニット16と共に、搬送部の一例を構成する。
【0017】
テンションユニット13は、保持部12と記録部15との間でメディアMの裏面Mbに接触してメディアMにテンションを付与するテンションバーの一例としてのテンションローラー31を備える。テンションユニット13は、1本のテンションローラー31と、テンションローラー31にメディアMを巻き付け可能なローラー対32とを有する。ローラー対32によってテンションローラー31にメディアMを半周以上巻き付け可能である。ローラー対32は、テンションローラー31に対して一方側に離れた位置に二本並んで配置される第1ガイドローラー33と第2ガイドローラー34との一対で構成される。第1ロール体R1から巻き解かれたメディアMは、第1ガイドローラー33及び第2ガイドローラー34にガイドされた状態でテンションローラー31の外周面の一部に巻き付けられる。このとき、メディアMがテンションローラー31の外周面に接触するときの反作用により、テンションローラー31がメディアMを各ガイドローラー33,34から離れる方向に押圧することができる。これにより、メディアMに張力が付与される。テンションローラー31の外周面は、ガイドローラー33,34の外周面に比べ高摩擦面となっている。なお、テンションローラー31は各ガイドローラー33,34から離れる方向に付勢されていなくてもよいし、バネなどの弾性部材によって各ガイドローラー33,34から離れる方向に付勢されていてもよい。
【0018】
ユーザーは、第1ロール体R1から引き出したメディアMを皺のない張った状態でテンションローラー31に巻きつける。最初にメディアMを張った状態にセットすれば、メディアMは、テンションローラー31の外周面である高摩擦面によって少なくとも幅方向に滑りにくいので、テンションローラー31に巻き付けられる過程でメディアMが幅方向に引き伸ばされた状態が維持される。これによりメディアMの皺が増加することが抑制される。メディアMが蛇行または斜行することにより発生する皺は、加圧ローラー17aで押し付けられたときにできる折れの原因になる。この種の折れを防ぐためにテンションユニット13はメディアMに対して幅方向のテンションが付与される状態を維持することにより、テンションユニット13よりも搬送方向Y1の下流の位置でメディアMの皺が増加することを抑制する。
【0019】
なお、回転可能なテンションローラー31に替え、回転不能なテンションロッドを、テンションバーの一例としてもよい。要するに、メディアMにテンションを付与することで、メディアMの記録面となる表面Maと反対側の面である裏面Mbが押圧された状態でメディアMをテンションバーの外周面に密着させられればよい。
【0020】
剥離装置14は、メディアMが巻き重ねられた第2ロール体R2を保持する。剥離装置14は、第2ロール体R2を回転可能に保持する。剥離装置14が保持する第2ロール体R2は、記録部15と搬送ベルト21との間を通過した後のメディアMが巻き重ねられたものである。剥離装置14は、保持する第2ロール体R2にメディアMを巻き取る駆動源となる巻取モーター28を備える。剥離装置14は、巻取モーター28の駆動力で、所定の回転トルクで第2ロール体R2を回転させることによって、メディアMを搬送ベルト21から剥離する。剥離装置14は、剥離したメディアMを第2ロール体R2として巻き取ることで、記録後のメディアMを回収する。
【0021】
なお、搬送ベルト21の下方には、不図示の清掃部および乾燥部が設けられている。清掃部は、支持面21aに付着したインク等の液体や毛羽等の異物を除去するために支持面21aを清掃する。清掃部は、例えば、洗浄液で濡れたブラシを支持面21aに接触させることによって、支持面21aを清掃する。乾燥部は、清掃後に洗浄液で濡れた支持面21aを加熱乾燥させる。搬送ベルト21の下方において、乾燥部は、搬送ベルト21の周回方向の上流側に位置し、乾燥部は周回方向の下流側に位置する。搬送ベルト21が周回することによって、支持面21aの清掃と、洗浄液で濡れた支持面21aの乾燥とが順次行われる。
【0022】
ハウジング11a内には、インク等の液体を収容する複数の液体収容容器(図示略)が配置されている。複数の液体収容容器は、例えば、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローを含む色の異なるインクをそれぞれ収容する。液体収容容器が収容する液体は、不図示のチューブを通って記録部15に供給される。記録部15は、液体収容容器から供給された液体を記録ヘッド18のノズル18Nから吐出する。液体収容容器は、例えば、インクタンク、インクカートリッジやインクパック等により構成される。
【0023】
ここで、記録装置11に用いられるメディアMは、布帛、フィルムシート、用紙など多種であり、材質も多様である。例えば、布帛の場合、材質は、ポリエステル、アクリル、ナイロン、レーヨン、コットン、また混紡等が挙げられる。また、これらの材質を用いた繊維の編み方や繊維径、メディアMの厚み等がそれそれ異なる。そのため、例えば、材質が同じメディアMであっても、剛性が異なったり、伸縮形態が異なったりする場合が生じる。
さらに、布帛に画像を記録する捺染印刷では、前処理(例えば、定着剤や浸透剤の塗布等)されたメディアMが用いられる場合がほとんどであり、記録処理時には、メディアMの特性が大きく変化している場合もあり得る。
従って、単にメディアMの物性値(剛性値)のみを基に印刷パラメーター(特に搬送パラメーター)を設定した場合では、実際の記録処理上(印刷フロー内)における特性と異なるため、搬送経路上でジャム等の搬送トラブルを起こすおそれが生じる。
従って、実際の記録処理上(印刷フロー内)におけるメディアMの剛性特性を十分に考慮した印刷パラメーターの設定が重要となる。
【0024】
そこで、本実施形態の記録装置11では、記録が行われる前に、搬送経路上においてメディアMの一部に皺Gを形成させる皺形成機構30と、形成された皺Gの状態を検出する検出部40と、を備える。そして、制御部100は、検出部40の検出データに基づいて、メディアMの剛性特性を算出する。このようにすれば、ユーザーは、実際に記録処理を行うメディアMにかかる剛性特性を容易に把握することができる。すなわち、記録装置11において複数種のメディアMが用いられる場合であっても、各メディアMの剛性特性に基づき、当該メディアMに適した記録処理や装置調整を行うことが可能となる。これにより、搬送経路上におけるジャム等の搬送トラブルの発生を低減させ、画像品質を向上させることができる。
【0025】
皺形成機構30は、搬送経路上においてメディアMの一部に皺Gを形成させる機構であれば、特に構成は限定されない。例えば、皺形成機構30は、搬送されるメディアMに対して搬送速度差を生じさせることにより、搬送経路上においてメディアMの一部に皺Gを形成させる。
【0026】
本実施形態では、押付部17及び搬送ユニット16が皺形成機構30の一部として機能する。押付部17では、加圧ローラー17aのX軸に沿った回転軸の+X方向端部と-X方向端部との+Z方向高さを変位可能に構成される。加圧ローラー17aの回転軸は、例えば、カム機構によってZ軸に沿った方向における高さを変位させることができる。
このような皺形成機構30によって、下記のようにして皺Gを形成する。
まず、加圧ローラー17aのX軸に沿った回転軸において、-X方向の高さが+X方向の高さよりも一定量(基準量)高くなるように設定する。そして、その状態でメディアMを搬送させる。これにより、加圧ローラー17aの-X方向におけるメディアMに対する押し圧が、加圧ローラー17aの+X方向におけるメディアMに対する押し圧よりも弱くなる。そうすると、
図2に示すように、メディアMに対して押し圧が強い部分よりも押し圧が弱い部分の方が搬送速度が遅くなり、押し圧が弱い部分に皺Gが形成される。すなわち、X軸またはY軸に沿った方向において、メディアM内の異なる部位に対して搬送速度差が生じて皺Gが形成される。
皺形成機構30による皺Gの形成は、制御部100により規定の条件で実施される。このような規定の条件の基で形成された皺Gは、メディアMごとに特有の形状を示す。
【0027】
なお、皺形成機構30は、他の構成であってもよい。
例えば、加圧ローラー17aのX軸に沿った回転軸を、X軸に沿った方向と規定量交差するように斜行させた状態でメディアMを搬送させる構成であってもよい。このようにしても、X軸方向においてメディアMの搬送速度差が生じ、皺Gを形成することができる。
また、保持部12におけるメディアMの搬送を停止させた状態で、剥離装置14を規定条件で駆動させる構成であってもよい。このようにしても、メディアMに引っ張り負荷が生じ、メディアMに皺Gを形成させることができる。
【0028】
検出部40は、寸法を検出可能なセンサーを含み、メディアMの皺Gが形成された部分の高さ寸法を検出する。また、皺Gが形成された部分のメディアMの搬送方向Y1(規定の方向)における幅寸法を検出する。
検出部40は、例えば、超音波センサー44を含む。
図3に示すように、超音波センサー44は、記録部15に配置される。さらに、具体的には、本実施形態の超音波センサー44は、キャリッジ19の-Z方向端部であり、-X方向端部に配置される。なお、超音波センサー44は、2つ以上設けてもよい。
【0029】
超音波センサー44による皺Gの検出方法は、
図4に示すように、メディアMをベルト搬送方向+Yまたは逆ベルト搬送方向-Yに搬送させながら、キャリッジ19をX軸に沿った方向に往復移動させる。なお、キャリッジ19は、Z軸に沿った方向に移動可能であり、超音波センサー44による皺Gの検出において、キャリッジ19は、規定の位置Pt1に移動される。
【0030】
そして、超音波センサー44によって皺Gを含むメディアMの表面Maを探査する。これにより、皺Gの高さ寸法Hや幅寸法Wを含む寸法データが取得される。なお、本実施形態における皺Gの高さ寸法は、搬送ベルト21の支持面21aから+Z方向の高さであり、幅寸法Wは、凸状の皺Gの搬送方向Y1における裾野部分の寸法である。超音波センサー44によって検出された寸法データは制御部100に送信される。
なお、寸法を検出可能なセンサーは、超音波センサー44に限らず、例えば、赤外線センサー、RGBカメラ、各種光学式センサーであってもよい。
【0031】
さらに、本実施形態では、検出部40は、接触圧を検出可能なセンサーを含み、皺Gの頂部分にセンサーが接触した際の接触圧を検出する。
検出部40は、例えば、歪センサー41を含む。
図3に示すように、歪センサー41は、記録部15に配置される。さらに、具体的には、本実施形態の歪センサー41は、キャリッジ19の-Z方向端部であり、キャリッジ19の各角部に配置される。なお、歪センサー41は、1つでもよいし、2つでもよいし、3つでもよいし、5つ以上設けてもよい。
【0032】
歪センサー41による皺Gに対する接触圧の検出方法は、
図5に示すように、メディアMの搬送を停止させた状態で、キャリッジ19を規定の位置Pt1から規定の位置Pt1より下方の規定の位置Pt2に移動させる。これにより、皺Gの頂部分に歪センサー41が接触し、接触圧が検出される。歪センサー41によって検出された接触圧データは制御部100に送信される。
なお、接触圧を検出可能なセンサーは、歪センサー41に限らず、例えば、フォースセンサー(ロードセル)等であってもよい。
【0033】
本実施形態では、超音波センサー44及び歪センサー41を含む検出部40がキャリッジ19に搭載されるため、検出部40を別個に設置する場合に比べて、記録装置11の構成をコンパクト化することができる。
【0034】
図6に示すように、記録装置11は、記録装置11で実行される各種動作を制御する制御部100を備える。制御部100は、CPU101と、メモリー102と、制御回路103と、I/F(インターフェイス)104と、を有する。CPU101は演算処理装置である。メモリー102は、CPU101のプログラムを格納する領域または作業領域等を確保する記憶装置であり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。情報処理端末等の外部からI/F104を介して記録データ等を取得すると、CPU101が各駆動部等を制御する。
【0035】
制御部100は、キャリッジ19、記録ヘッド18、搬送ユニット16、保持部12、剥離装置14、押付部17、超音波センサー44、歪センサー41、及び皺形成機構30を制御する。
また、制御部100は、超音波センサー44及び歪センサー41の検出データに基づいて、メディアMの剛性特性を算出する。本実施形態では、メモリー102(記憶部に相当)には、剛性特性に対して印刷パラメーターを関連付けたデータテーブルが格納されており、制御部100は、算出された剛性特性に対応する印刷パラメーターを導出する。印刷パラメーターは、特にメディアMの搬送に関するパラメーターであり、例えば、テンションユニット13におけるメディアMに対するテンションの設定値、剥離装置14におけるメディアMに対するテンションの設定値、剥離装置14におけるメディアMの引き剥がし角度(メディアMの搬送ベルト21からの引き剥がし時の搬送ベルト21の支持面21aとメディアMとの角度)の設定値等が含まれる。
【0036】
次に、記録装置11におけるメディアMの剛性特性の算出及び印刷パラメーターの導出にかかる制御方法について説明する。
【0037】
まず、制御部100は、メディアMに対して記録が行われる前に、皺形成機構30を駆動させ、記録に用いられるメディアMの一部に皺Gを形成させる。本実施形態では、皺形成機構30として押付部17及び搬送ユニット16に規定の動作を行わせる。これにより、記録に用いられるメディアMにおいて特有の皺Gが形成される(
図2参照)。
【0038】
次いで、制御部100は、キャリッジ19及び超音波センサー44を駆動させ、皺Gの高さ寸法H及び幅寸法Wにかかる寸法データを検出させる(
図4参照)。制御部100は、検出された寸法データを取得する。
【0039】
さらに、制御部100は、キャリッジ19及び歪センサー41を駆動させ、皺Gの頂部分に歪センサー41が接触した際の接触圧を検出させる(
図5参照)。制御部100は、検出された接触圧データを取得する。
【0040】
次いで、制御部100は、取得した検出データ(寸法データ及び接触圧データ)に基づいて剛性特性を算出する。例えば、剛性特性は、基準値に対する高低のランク分けにより算出される。
具体的には、制御部100は、例えば、高さ寸法にかかる寸法データが基準値よりも高い場合は、メディアMが柔らかいという剛性特性を算出(ランク分け)する。
また、制御部100は、例えば、幅寸法にかかる寸法データが基準値よりも大きい場合は、メディアMが固いという剛性特性を算出(ランク分け)する。
さらに、制御部100は、例えば、接触圧データが基準値よりも大きい場合は、メディアMが固いという剛性特性を算出(ランク分け)する。
制御部100は、算出された3つの剛性特性を総合的に判断し、当該メディアMの最終的な剛性特性を算出する。例えば、メモリー102に各種ランク分けされた剛性特性のパターンデータが格納されており、取得した高さ寸法データ、幅寸法データ及び接触圧データのランク分けから近似のパターンデータが選択される。選択されたパターンデータがメディアMの剛性特性となる。
【0041】
次いで、制御部100は、算出された剛性特性からデータテーブル上の印刷パラメーターを導出する。導出された印刷パラメーターは、例えば、不図示の操作パネルに表示される。
【0042】
次いで、制御部100は、印刷パラメーターに基づいて、各駆動部の設定値を変更する。例えば、比較的柔らかいメディアMに対する印刷パラメーターでは、テンションユニット13において、メディアMに付与するテンションを弱める。また、剥離装置14の場合には、メディアMを巻き取る際のテンションを弱める。また、剥離装置14におけるメディアMの引き剥がす角度(メディアMの搬送ベルト21からの引き剥がし時の搬送ベルト21の支持面21aとメディアMとの角度)を水平方向(180°)に近づける。これらの設置により、メディアMの搬送方向Y1及び幅方向における伸縮特性が考慮された搬送条件が適正化され、ジャム等の搬送トラブルや搬送経路上における皺Gの発生を抑制できる。
【0043】
そして、記録装置11における適正な印刷パラメーターが設定された後に、実際の記録処理が実行される。
具体的には、搬送ベルト21を駆動させる。これにより、保持部12に保持された第1ロール体R1からメディアMが巻き解かれる。巻き解かれたメディアMはテンションユニット13のテンションローラー31によってテンションが付与される。押付部17を駆動させ、メディアMを押して搬送ベルト21にメディアMを貼り付ける。次に、記録部15を駆動させ、搬送ベルト21の支持面21aに貼り付けられたメディアMに対して記録位置で記録させる。次に、剥離装置14を駆動させ、搬送ベルト21の支持面21aに貼り付けられた記録後のメディアMを搬送ベルト21から剥離させる。このように、搬送ベルト21が周回することによって、メディアMの貼り付け、メディアMへの記録、記録後のメディアMの剥離が、順次記録処理として行われる。
【0044】
以上、本実施形態によれば、単にメディアMの剛性にかかる物性値を用いるのではなく、実際に記録される記録装置11の搬送経路内におけるメディアMの皺G状態を検出することで、検出した時点における記録装置11の状態や温湿度等の環境状態等の影響による実態に即したメディアMの剛性特性を把握できる。また、剛性特性は、高さ寸法データ、幅寸法データ、及び接触圧データに基づくため、より算出制度を高めることができる。そして、剛性特性からメディアMに適した印刷パラメーターを取得することができる。これにより、適切な印刷パラメーターが設定された状態で記録処理が行われ、搬送経路上でジャム等の搬送トラブルの発生を低減させることができる。
特に、布帛に記録処理を行う場合では、前処理が施されたメディアMの剛性特性を取得することが可能となり、記録処理中におけるメディアMの皺の発生や、バンディング(筋ムラ、濃淡ムラ)を抑制することができる。
なお、本実施形態では、検出部40をキャリッジ19に設置したが、これに限定されない。例えば、検出部40をキャリッジ19とは別個に備えた構成であってもよい。
【0045】
2.第2実施形態
次に、他の記録装置110の構成について説明する。記録装置110は、インクジェットプリンターである。
【0046】
図7、
図8及び
図9に示すように、記録装置110は、本体部112と、一対の脚部114とを備える。一対の脚部114は、X軸に沿った方向に間隔をおいて本体部112の下部に設けられる。脚部114は、本体部112の下部から下方側に向けて延びている。
【0047】
本体部112は、直方体状に形成され、その前面側(+Y方向側)に乾燥部118が設けられている。本体部112の上部には、X軸に沿った方向に延設されたメインフレーム120が設けられる。メインフレーム120の前面側には、記録部を構成するキャリッジ122が取り付けられる。キャリッジ122は、メインフレーム120に沿ってX軸に沿った方向に往復動可能に構成される。キャリッジ122の下部には、記録部を構成する記録ヘッド124が配置される。
【0048】
記録ヘッド124は、液体としてのインクを下方に向けて吐出可能な複数のノズル(不図示)を備える。具体的には、記録ヘッド124の下面は、複数のノズルを備えるノズル面として形成される。
【0049】
図8に示すように、本実施形態において本体部112の+X方向側端部(一方の側)は、キャリッジ122のホームポジションに設定される。本体部112においてホームポジションには、キャップ126が設けられる。キャップ126は、記録ヘッド124がホームポジションに位置する状態で、記録ヘッド124のノズル面を覆うように構成される。
【0050】
また、本体部112の-X方向側端部には、メンテナンス機構128が設けられる。本実施形態においてメンテナンス機構128は、フラッシング受け部130やワイパー134等を備える。フラッシング受け部130は、記録ヘッド124から強制的に吐出されたインクを受ける。フラッシング受け部130には、例えば、吐出されインクを吸収する一例としてインク吸収体が配置される。ワイパー134は、例えば、布状部材として構成され、Y軸に沿った方向に移動可能に構成されている。ワイパー134は、記録ヘッド124の下面、すなわちノズル面を拭き取り可能に構成される。
【0051】
本実施形態では、キャリッジ122が、+X方向側端部におけるホームポジションと-X方向側端部のメンテナンス機構128が配置されるメンテナンスポジションとの間を移動可能に構成される。
【0052】
また、X軸に沿った方向において、キャップ126とフラッシング受け部130との間には、X軸方向に延設された平板状の吸引プラテン136が設けられる。吸引プラテン136の上面には、図示を省略しているが、Y軸に沿った方向に延びるとともにX軸に沿った方向に適宜間隔をおいて複数のリブが設けられる。複数のリブの間にはZ軸に沿った方向において吸引プラテン136を貫通する複数の貫通孔(不図示)が形成される。
【0053】
吸引プラテン136の下方には、吸引ファン138(
図9)が配置される。吸引ファン138を駆動させると、吸引プラテン136の貫通孔を介して吸引プラテン136の上方側の気体が吸引される。これにより、吸引プラテン136の上方から下方に向けて気体の流れが形成される。その結果、吸引プラテン136上にメディアMが位置している状態において、メディアMは吸引プラテン136に吸引され、吸引プラテン136の上面に押し付けられる。
【0054】
図9に示すように、記録装置110の背面側(-Y軸方向側)には、給紙部140が設けられ、前面側(+Y軸方向側)において乾燥部118の下方には排紙部142が設けられる。なお、
図7において給紙部140及び排紙部142の図示を省略している。また、
図9においてメディアMを太線で示している。
【0055】
排紙部142は、一対の軸受部142aと、スピンドル142bとを備える。一対の軸受部142aは、互いに接離する方向であるX軸に沿った方向に移動可能に構成される。スピンドル142bは、排紙ロールR3の内周部に挿入される。スピンドル142bの両端部は、一対の軸受部142aに支持される。軸受部142aには、不図示の駆動源により駆動力が供給され、スピンドル142bに支持された排紙ロールR3を巻き取ることができる、すなわちフロントテンションが掛かるように構成される。
【0056】
同様に、給紙部140もX軸に沿った方向に移動可能な一対の軸受部140aと、スピンドル140bとを備える。スピンドル140bは、給紙ロールR4の内周部に挿入される。スピンドル140bの両端部は、一対の軸受部140aに支持される。軸受部140aには、不図示の駆動源により駆動力が供給され、スピンドル140bに支持された給紙ロールR4を搬送方向下流側に向けて送り出すことができる。ここで、軸受部140aは、給紙ロールR4から引き出されたメディアMにバックテンションが掛かるようにメディアMの引き出しを制御している。
【0057】
本実施形態においてメディアMは、給紙部140の給紙ロールR4から引き出されて、吸引プラテン136及び乾燥部118を経て、排紙部142の排紙ロールR3に巻き取られる構成となっている。
【0058】
メディアMの搬送方向において吸引プラテン136の上流側には、搬送ローラー144が設けられる。搬送ローラー144は、不図示の駆動源により駆動される駆動ローラーとして構成される。搬送ローラー144は、正転方向及び逆転方向に回転可能に構成される。本実施形態において、正転方向とは給紙ロールR4に巻かれたメディアMを引き出して、メディアMを搬送方向下流側に送る方向であり、逆転方向とは搬送方向下流側から上流側にメディアMを送る方向である。
【0059】
乾燥部118の下流側には、排出ローラー146が設けられる。排出ローラー146は、不図示の駆動源により駆動される駆動ローラーとして構成される。
【0060】
乾燥部118は、加熱源としてのヒーター(不図示)を備える。ヒーターは乾燥部118内に位置するメディアMを加熱して、メディアMが吸収したインクの水分を蒸発させて乾燥を促進させる。乾燥部118内には、吸引ファン148が設けられる。吸引ファン148は、乾燥部118内においてメディアMの搬送経路に沿って延び、搬送経路の一部を構成する経路形成部材118aの下面側に取り付けられる。
【0061】
本実施形態において経路形成部材118aには、複数の貫通孔(不図示)が形成されており、吸引ファン148を駆動させると、貫通孔を介して経路形成部材118aの上方側の気体が吸引される。これにより、経路形成部材118aの上方から下方に向けて気体の流れが形成される。その結果、乾燥部118の経路形成部材118a上にメディアMが位置している状態において、メディアMは経路形成部材118aに吸引され、経路形成部材118aの上面に押し付けられる。
【0062】
また、本実施形態の記録装置110は、記録が行われる前に、搬送経路上においてメディアMの一部に皺Gを形成させる皺形成機構150と、形成された皺Gの状態を検出する検出部40と、を備える。そして、制御部145は、検出部40の検出データに基づいて、メディアMの剛性特性を算出する。これにより、ユーザーは、メディアMにかかる剛性特性を容易に把握することができ搬送経路上におけるジャム等の搬送トラブルの発生を低減させ、画像品質を向上させることができる。
【0063】
皺形成機構150は、搬送経路上においてメディアMの一部に皺Gを形成させる機構であれば、特に構成は限定されない。
本実施形態の皺形成機構150は、搬送経路においてメディアMを支持する吸引プラテン136(支持部に相当)と、吸引プラテン136に支持されたメディアMを吸引プラテン136側に吸引する吸引ファン138(吸引機構に相当)と、を含み、吸引ファン138によりメディアMに対して吸引力差を生じさせることにより、吸引プラテン136上においてメディアMの一部に皺Gを形成させる。すなわち、X軸またはY軸に沿った方向において、メディアM内の異なる部位に対して吸引力差が生じて皺Gが形成される。
【0064】
本実施形態では、吸引プラテン136を貫通する複数の貫通孔のうち、特定の貫通孔を閉塞可能に構成される。
そして、特定の貫通孔を閉塞させた状態で吸引ファン138を一定条件の基で駆動させる。これにより、メディアMは一様に吸引されず、メディアMにおいて吸引プラテン136に吸引される部分と、吸引されない部分とが発生する。そうすると、
図10に示すように、メディアMにおいて吸引力差が生じ、吸引プラテン136上のメディアMに皺Gが形成される。
皺形成機構150は、制御部145により規定の条件で制御される。これにより、メディアMごとに特有の皺Gを形成させることができる。
【0065】
なお、皺形成機構150は、他の構成であってもよい。例えば、吸引ファン138を駆動させ、メディアMを一様に吸引プラテン136に吸着させた状態で、給紙部140を停止させ、メディアMの搬送方向に排紙部142を駆動させる構成であってもよい。このようにしても、メディアMの吸引プラテン136に吸着された部分に負荷がかかり、吸引プラテン136上のメディアMに皺Gを形成することができる。
【0066】
検出部40は、寸法を検出可能なセンサーを含み、皺Gが形成された部分の高さ寸法を検出する。また、皺Gが形成された部分のメディアMの搬送方向における幅寸法を検出する。
検出部40の構成は、第1実施形態と同様であり、超音波センサー44及び歪センサー41を含む。超音波センサー44及び歪センサー41はキャリッジ122に配置される。
【0067】
超音波センサー44による皺Gの検出方法は、
図11に示すように、メディアMを搬送方向に搬送させながら、キャリッジ122をX軸に沿った方向に往復移動させる。なお、キャリッジ122は、Z軸に沿った方向に移動可能であり、超音波センサー44による皺Gの検出において、キャリッジ122は、規定の位置Pt1に移動される。
【0068】
そして、超音波センサー44によって皺Gを含むメディアMの表面Maを探査する。これにより、皺Gの高さ寸法Hや幅寸法Wを含む寸法データが検出される。なお、本実施形態における皺Gの高さ寸法は、吸引プラテン136の支持面から+Z方向の高さであり、幅寸法Wは、凸状の皺Gの裾野部分の寸法である。超音波センサー44によって検出された寸法データは制御部145に送信される。
【0069】
歪センサー41による皺Gに対する接触圧の検出方法は、
図12に示すように、メディアMの搬送を停止させた状態で、キャリッジ122を規定の位置Pt1から規定の位置Pt1より下方の規定の位置Pt2に移動させる。これにより、皺Gの頂部分に歪センサー41が接触し、接触圧が検出される。歪センサー41によって検出された接触圧データは制御部145に送信される。
【0070】
図13に示すように、記録装置110は、記録装置110で実行される各種動作を制御する制御部145を備える。制御部145は、CPU161と、メモリー162と、制御回路163と、I/F(インターフェイス)164と、を有する。CPU161は演算処理装置である。メモリー162は、CPU161のプログラムを格納する領域または作業領域等を確保する記憶装置であり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。情報処理端末等の外部からI/F164を介して記録データ等を取得すると、CPU161が各駆動部等を制御する。
【0071】
制御部145は、超音波センサー44及び歪センサー41の検出データに基づいて、メディアMの剛性特性を算出する。本実施形態では、メモリー162(記憶部に相当)には、剛性特性に対して印刷パラメーターを関連付けたデータテーブルが格納されており、制御部145は、算出された剛性特性に対応する印刷パラメーターを導出する。印刷パラメーターは、特にメディアMの搬送に関するパラメーターであり、例えば、給紙部140におけるメディアMに対するテンションの設定値、排紙部142におけるメディアMに対するテンションの設定値等が含まれる。
【0072】
次に、記録装置110におけるメディアMの剛性特性の算出及び印刷パラメーターの導出にかかる制御方法について説明する。
【0073】
まず、制御部145は、メディアMに対して記録が行われる前に、皺形成機構150を駆動させ、記録に用いられるメディアMの一部に皺Gを形成させる。本実施形態では、皺形成機構150として吸引ファン138に規定の動作を行わせる。これにより、記録に用いられるメディアMにおいて特有の皺Gが形成される(
図10参照)。
【0074】
次いで、制御部145は、キャリッジ122及び超音波センサー44を駆動させ、皺Gの高さ寸法H及び幅寸法Wにかかる寸法データを検出させる(
図11参照)。制御部145は、検出された寸法データを取得する。
【0075】
さらに、制御部145は、キャリッジ122及び歪センサー41を駆動させ、皺Gの頂部分に歪センサー41が接触した際の接触圧を検出させる(
図12参照)。制御部145は、検出された接触圧データを取得する。
【0076】
次いで、制御部145は、取得した検出データ(寸法データ及び接触圧データ)に基づいて剛性特性を算出する。例えば、剛性特性は、基準値に対する高低のランク分けにより算出される。
具体的には、制御部145は、例えば、高さ寸法にかかる寸法データが基準値よりも高い場合は、メディアMが柔らかいという剛性特性を算出(ランク分け)する。
また、制御部145は、例えば、幅寸法にかかる寸法データが基準値よりも大きい場合は、メディアMが固いという剛性特性を算出(ランク分け)する。
さらに、制御部145は、例えば、接触圧データが基準値よりも大きい場合は、メディアMが固いという剛性特性を算出(ランク分け)する。
制御部145は、算出された3つの剛性特性を総合的に判断し、当該メディアMの最終的な剛性特性を算出する。例えば、メモリー162に剛性特性が各種ランク分けされたパターンデータが格納されており、取得した高さ寸法データ、幅寸法データ及び接触圧データのランク分けから近似のパターンデータが選択される。選択されたパターンデータがメディアMの剛性特性となる。
【0077】
次いで、制御部145は、算出された剛性特性からデータテーブル上の印刷パラメーターを導出する。導出された印刷パラメーターは、例えば、不図示の操作パネルに表示される。
【0078】
次いで、制御部145は、印刷パラメーターに基づいて、各駆動部の設定値を変更する。例えば、比較的柔らかいメディアMに対する印刷パラメーターでは、給紙部140において、メディアMに付与するテンションを弱める。また、排紙部142の場合には、メディアMを巻き取る際のテンションを弱める。これにより、メディアMの搬送方向における伸び適正化され、ジャム等の搬送トラブルや搬送経路上における皺Gの発生を抑制できる。
【0079】
そして、記録装置110における適正な印刷パラメーターが設定された後に、実際の記録処理が実行される。
【0080】
以上、本実施形態によれば、実際に記録される記録装置110の搬送経路内におけるメディアMの皺G状態を検出することで、記録装置110の状態や温湿度等の環境状態等の影響による実態に即したメディアMの剛性特性を把握できる。そして、剛性特性からメディアMに適した印刷パラメーターを取得することができる。これにより、適切な印刷パラメーターが設定された状態で記録処理が行われ、搬送経路上でジャム等の搬送トラブルや皺Gの発生を低減させることができる。
なお、本実施形態の皺形成機構150では、吸引プラテン136上のメディアMに皺Gを形成させたが、これに限定されない。例えば、経路形成部材118a上のメディアMに皺Gを形成させてもよいし、搬送経路における吸引プラテン136と経路形成部材118aとの間に皺Gを形成させてもよい。
経路形成部材118a上のメディアMに皺Gを形成させる場合は、経路形成部材118aに設けられた複数の貫通孔のうち、特定の貫通孔を閉塞させた状態で吸引ファン148を駆動させる。これにより、メディアMは一様に吸引されず、メディアMにおいて吸引ファン148に吸引される部分と、吸引されない部分とが発生する。これにより、メディアMにおいて吸引力差が生じ、経路形成部材118a上のメディアMに皺Gを形成することができる。
また、搬送経路における吸引プラテン136と経路形成部材118aとの間に皺Gを形成させる場合は、経路形成部材118a上でメディアMを吸着せた状態で排紙部142の駆動を停止させてメディアMの搬送を停止させる。この状態で、給紙部140によって、規定量のメディアMを搬送方向に搬送させる。経路形成部材118a上ではメディアMが搬送されていない状態なので、経路形成部材118aの上流、吸引プラテン136と経路形成部材118aとの間に湾曲部(皺G)を形成することができる。また、この場合、検出部40をキャリッジ122とは別個に備える。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【0081】
3.第3実施形態
次に、情報処理システム200の構成について説明する。
上記実施形態では、記録装置11において皺Gの状態を検出した後、剛性特性を算出し、印刷パラメーターを導出した。しかし、各種のメディアMに対して剛性特性の算出処理及び印刷パラメーターの導出処理の実行は、制御部100において負荷が大きくなる。また、新規のメディアMを使用する場合、既存の制御部100内でデータベース化されておらず、対応できない場合がある。その場合、印刷パラメーターの条件出し等の工数がかかってしまう。
そこで、本実施形態の情報処理システム200を構築することで、ユーザーの負担を低減させる。
以下、具体的に説明する。
【0082】
図14に示すように、情報処理システム200は、保守サービス提供部210と、記録装置11と、保守サービス提供部210と記録装置11とを接続する通信回路230と、を備え、保守サービス提供部210と記録装置11とが通信回路230を介して互いに送受信可能に構成される。
【0083】
本実施形態の情報処理システム200では、複数の記録装置11が通信回路230に接続された例を示している。なお、情報処理システム200は、保守サービス提供部210と少なくとも1台の記録装置11とが通信回路230を介して接続される構成であればよい。また、通信回路230の構成は、特に限定されず、保守サービス提供部210と記録装置11との間において双方向通信が可能であれば有線であっても無線であってもよい。
【0084】
記録装置11は、搬送経路に沿ってメディアMを搬送する搬送ユニット16と、搬送されるメディアMに記録を行う記録部15と、搬送経路上においてメディアMの一部に皺Gを形成させる皺形成機構30と、メディアMの皺Gが形成された部分の状態を検出する検出部40と、保守サービス提供部210との通信を行う第1通信部を含むI/F104と、制御部100(第1制御部に相当)と、を備える。
記録装置11の基本構成は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。なお、本実施実施形態において、記録装置11でなく、第2実施形態にかかる記録装置110であってもよい。
【0085】
I/F104は、通信回路230に接続するためのネットワーク接続機能を有している。そして、I/F104は、通信回路230を介して保守サービス提供部210に対して検出部40によって検出された検出データを送信可能に構成される。すなわち、通信回路230を介して保守サービス提供部210に接続されている複数の記録装置11から対象となる記録装置11を特定可能に構成されている。特定情報としては、記録装置11を特定する個体情報や記録装置11の位置を特定する位置情報を含む情報等である。例えば、記録装置11固有のIPアドレスやシリアル番号(製造番号)等が適用される。
【0086】
保守サービス提供部210は、サーバー装置である。保守サービス提供部210は、記録装置11との通信を行う第2通信部212と、剛性特性に対して印刷パラメーターを関連付けたデータテーブルが格納されたメモリー(記憶部に相当)と、第2制御部211と、を備える。第2通信部212は、通信回路230に接続するためのネットワーク接続機能を有している。
第2制御部211は、CPUと、メモリーと、制御回路と、を有する。CPUは演算処理装置である。メモリーは、CPUのプログラムを格納する領域または作業領域等を確保する記憶装置であり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。
【0087】
制御部100は、検出部40によって検出された検出データを保守サービス提供部210に送信させ、第2制御部211は、受信した検出データに基づいて、メディアMの剛性特性を算出し、算出された剛性特性に対応する印刷パラメーターを導出し、導出された印刷パラメーターを記録装置11に送信する。
【0088】
次に、情報処理システム200の制御方法について説明する。
図15に示すように、まず、ステップS101では、記録装置11の制御部100は、メディアMに対して記録が行われる前に、皺形成機構30を駆動させ、記録に用いられるメディアMの一部に皺Gを形成させる(
図2参照)。そして、制御部100は、検出部40を駆動させ、皺Gの高さ寸法H及び幅寸法Wにかかる寸法データ、及び皺Gに対する接触圧データを取得する(
図4及び
図5参照)。
【0089】
次いで、ステップS102では、制御部100は、取得した検出データを保守サービス提供部210に送信させる。
【0090】
ステップS103では、保守サービス提供部210の第2制御部211は、送信された検出データを受信し、メモリーに記憶させる。
【0091】
ステップS104では、第2制御部211は、取得した検出データに基づいて剛性特性を算出する。
次いで、ステップS105では、第2制御部211は、算出された剛性特性からデータテーブル上の印刷パラメーターを導出する。算出された剛性特性や導出された印刷パラメーター等の一連のデータはメモリーに格納され、データベース化される。
【0092】
次いで、ステップS106では、第2制御部211は、印刷パラメーターを記録装置11に送信させる。
ステップS107では、記録装置11の制御部100は、印刷パラメーターを受信する。
【0093】
以降、記録装置11では、印刷パラメーターに基づいて、各駆動部の設定値を変更する。そして、印刷パラメーターが設定された後に、記録処理を実行する。
【0094】
以上、本実施形態によれば、記録装置11側で検出した検出データを保守サービス提供部210に送信することで、ユーザーは使用するメディアMに適した印刷パラメーターを容易に取得することができる。特に、ユーザーが新規にメディアMを使用する場合、搬送条件等の調整に工数がかかるが、保守サービス提供部210から印刷パラメーターを取得することで、記録装置11の搬送系の調整等にかかる工数を低減することが可能となる。
また、保守サービス提供部210側では、ユーザーの状況に応じて最適な印刷パラメーターをタイムリーに提供することで、ユーザーの満足度を高めることができる。
また、記録装置11において、制御部100の演算処理、導出処理にかかる負担を省略させることができる。
【符号の説明】
【0095】
11…記録装置、12…保持部、13…テンションユニット、14…剥離装置、15…記録部、16…搬送ユニット、17…押付部、17a…加圧ローラー、17b…移動機構、18…記録ヘッド、18a…ノズル面、18N…ノズル、19…キャリッジ、21…搬送ベルト、30…皺形成機構、31…テンションローラー、32…ローラー対、40…検出部、41…歪センサー、44…超音波センサー、100…制御部、101…CPU、102…メモリー、103…制御回路、104…I/F、110…記録装置、122…キャリッジ、124…記録ヘッド、136…吸引プラテン、138…吸引ファン、140…給紙部、142…排紙部、144…搬送ローラー、145…制御部、146…排出ローラー、148…吸引ファン、150…皺形成機構、161…CPU、162…メモリー、163…制御回路、164…I/F、200…情報処理システム、210…保守サービス提供部、211…第2制御部、212…第2通信部、230…通信回路、M…メディア。