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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】パネル接合構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 11/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
F16B11/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020177555
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068719
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】若林 充
(72)【発明者】
【氏名】宮本 康史
(72)【発明者】
【氏名】中前 隆行
(72)【発明者】
【氏名】河井 範之
(72)【発明者】
【氏名】大江 哲平
(72)【発明者】
【氏名】木村 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 研一
(72)【発明者】
【氏名】鍵元 皇樹
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206704(JP,A)
【文献】特開2019-094936(JP,A)
【文献】実開昭56-067408(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00-5/12
F16B 9/00-11/00
B62D 25/08
B23K 11/00-11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル本体部と、該パネル本体部から角部を介して延びる第1フランジ部と、を備える第1パネル部材と、
上記第1フランジ部と対向配置される第2パネル部材と、
上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とが接触した状態で、これら両者を接合する接合部と、を設け、
上記第1フランジ部および上記第2パネル部材の少なくとも何れか一方には、上記接合部にフランジ長手方向において隣接して設けられて上記第1フランジ部および上記第2パネル部材の少なくとも何れか他方に対して離間する凸部が備えられ、
上記凸部において上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とを接着する接着材が設けられ、
上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とを離間させる方向の荷重が入力された際、上記接着材の角部側の端部に入力される曲げモーメントと、上記接合部に入力される曲げモーメントと、が略等しくなるように設けられることを特徴とする
パネル接合構造。
【請求項2】
パネル本体部と、該パネル本体部から角部を介して延びる第1フランジ部と、を備える第1パネル部材と、
上記第1フランジ部と対向配置される第2パネル部材と、
上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とが接触した状態で、これら両者を接合する接合部と、を設け、
上記第1フランジ部および上記第2パネル部材の少なくとも何れか一方には、上記接合部にフランジ長手方向において隣接して設けられて上記第1フランジ部および上記第2パネル部材の少なくとも何れか他方に対して離間する凸部が備えられ、
上記凸部において上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とを接着する接着材が設けられ、
上記接着材の角部側の端部は、上記接合部の角部側の端部と、当該接合部のフランジ末端側の端部との間に設けられることを特徴とする
パネル接合構造。
【請求項3】
上記接合部は上記第1フランジ部の長手方向に間隔を隔てて複数設けられており、
上記接着材の角部側の端部は、上記複数の接合部の中央領域部同士を結ぶ仮想線上に設けられた
請求項1または2に記載のパネル接合構造。
【請求項4】
上記第1フランジ部または上記第2パネル部材の上記接着材に対向する位置に孔部が開口形成された
請求項1~3の何れか一項に記載のパネル接合構造。
【請求項5】
上記凸部は上記第1フランジ部と上記パネル本体部とを連結するビードである
請求項1~4の何れか一項に記載のパネル接合構造。
【請求項6】
上記接合部は上記第1フランジ部の長手方向に間隔を隔てて複数設けられており、
上記孔部は、その角部側の周壁が上記複数の接合部の中央領域部間を結ぶ仮想線上に位置するようにフランジ末端側に隣接して配置された
請求項に記載のパネル接合構造。
【請求項7】
上記第1フランジ部または上記第2パネル部材の少なくとも何れか一方には、上記接着材の角部側の位置を規制する位置規制部が設けられた
請求項1~6の何れか一項に記載のパネル接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パネル接合構造に関し、詳しくは、パネル本体部と、該パネル本体部から角部を介して延びる第1フランジ部と、を備える第1パネル部材と、上記第1フランジ部と対向配置される第2パネル部材とを備え、上記第1パネル部材の第1フランジ部と上記第2パネル部材とを、接合部および接着材により接合固定するようなパネル接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着材による接着と、スポット溶接等による接合部とを併用するフランジ部の接合技術(例えば、ウエルドボンディング)において、接着材の接合強度を確実に保証するためには、特許文献1に開示されているように、接合部を設けつつ、接着材の厚みを確保できる接着材塗布空間を形成することが有効である。
【0003】
一方で、接着材の厚みを確保すると、当該接着材に対し、繰返し荷重に起因して剥離荷重が入力されると、該接着材に応力の集中部が発生し、亀裂の起点となるおそれがある。
接着材に亀裂が生じると、該接着材は亀裂の進展スピードが速く、接着材が強度に対して全く寄与しなくなり、スポット溶接による接合部(ナゲット)に応力が集中し、当該接合部が破断する。
【0004】
このようなパネル接合構造を自動車のパネル接合構造に採用すると、車両の通常走行時に、上記接着材に対して、繰返し荷重に起因して剥離荷重が入力されることになる。
そこで、上記接着材に対する亀裂の発生を抑制することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-82136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、剥離荷重が入力された際の接着材のフランジ角部側の端部への応力集中を抑制することができるパネル接合構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によるパネル接合構造は、パネル本体部と、該パネル本体部から角部を介して延びる第1フランジ部と、を備える第1パネル部材と、上記第1フランジ部と対向配置される第2パネル部材と、上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とが接触した状態で、これら両者を接合する接合部と、を設け、上記第1フランジ部および上記第2パネル部材の少なくとも何れか一方には、上記接合部にフランジ長手方向において隣接して設けられて上記第1フランジ部および上記第2パネル部材の少なくとも何れか他方に対して離間する凸部が備えられ、上記凸部において上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とを接着する接着材が設けられ、上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とを離間させる方向の荷重が入力された際、上記接着材の角部側の端部に入力される曲げモーメントと、上記接合部に入力される曲げモーメントと、が略等しくなるように設けられるものである。
【0008】
上述のパネル部材は、金属部材および繊維強化プラスチックを含み、また、鋼板同士、アルミ板同士のような同材接合と、鋼板とアルミ板との接合のような異材接合と、を含む。
また、上述の接合部は、機械接合、つまり、ボルト、ナット、リベット、セルフピアシング・リベット(self-piercing rivetいわゆるSPR)による接合や片側機械接合を含むうえ、抵抗溶接としてのスポット溶接をも含むものである。
【0009】
さらに、上述の角部は、パネル本体部と第1フランジ部とが直角に交わるものだけでなく、成形加工を可能とするために、パネル本体部と第1フランジ部とが湾曲形状部(いわゆるR部)を介して連結するものをも含む。
【0010】
上記構成によれば、接着材の角部側の端部に入力される曲げモーメントと、接合部に入力される曲げモーメントと、が略等しいので、接着材と接合部とに略均等に剥離荷重が入り、これにより、接着材の角部側の端部への応力集中を抑制することができる。
【0011】
この発明によるパネル接合構造は、また、パネル本体部と、該パネル本体部から角部を介して延びる第1フランジ部と、を備える第1パネル部材と、上記第1フランジ部と対向配置される第2パネル部材と、上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とが接触した状態で、これら両者を接合する接合部と、を設け、上記第1フランジ部および上記第2パネル部材の少なくとも何れか一方には、上記接合部にフランジ長手方向において隣接して設けられて上記第1フランジ部および上記第2パネル部材の少なくとも何れか他方に対して離間する凸部が備えられ、上記凸部において上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とを接着する接着材が設けられ、上記接着材の角部側の端部は、上記接合部の角部側の端部と、当該接合部のフランジ末端側の端部との間に設けられるものである。
【0012】
上記構成によれば、接着材の角部側の端部が、上記接合部と第1フランジ部の短手方向において略同じ位置に設けられるので、第1フランジ部と第2パネル部材とを離間させる方向の剥離荷重が入力された際、接着材の角部側の端部と、接合部とに入力される剥離荷重が略等しくなる。
この結果、接着材の角部側の端部への応力集中を抑制することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記接合部は上記第1フランジ部の長手方向に間隔を隔てて複数設けられており、上記接着材の角部側の端部は、上記複数の接合部の中央領域部同士を結ぶ仮想線上に設けられたものである。
上記構成によれば、生産しやすい構造でありながら、接合部に対して剥離荷重を効率よく分散させることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記第1フランジ部または上記第2パネル部材の上記接着材に対向する位置に孔部が開口形成されたものである。
上述の孔部は、円形、長円形、楕円形、角形状の何れであってもよい。
【0015】
上記構成によれば、上述の凸部のみならず、上記孔部にも接着材が介在し、当該接着材が孔部の内周壁に当接するので、剥離荷重に対してせん断方向で荷重を受けることができる。これにより、接着材の強度に対して有利となる。
また、上記孔部から接着材の有無および介在状況を目視にて確認できるので、生産工程での接着状態の保証が可能となる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記凸部は上記第1フランジ部と上記パネル本体部とを連結するビードであることを特徴とする。
上記構成によれば、凸部を上記ビードと成すことで、角部および第1フランジ部の剛性が向上し、これにより、接着材に入力される剥離荷重を低減することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記接合部は上記第1フランジ部の長手方向に間隔を隔てて複数設けられており、上記孔部は、その角部側の周壁が上記複数の接合部の中央領域部間を結ぶ仮想線上に位置するようにフランジ末端側に隣接して配置されたものである。
【0018】
上記構成によれば、接着材が孔部の周壁に当接するので、接着材の角部側の端部の位置を、接合部の中央領域部の位置に位置規制することができる。この結果、接着材の角部側の端部と、接合部とに入力される剥離荷重が略等しくなり、接着材の角部側の端部への応力集中を抑制することができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記第1フランジ部または上記第2パネル部材の少なくとも何れか一方には、上記接着材の角部側の位置を規制する位置規制部が設けられたものである。
上記構成によれば、上述の位置規制部により接着材の角部側の位置を規制することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、剥離荷重が入力された際の接着材のフランジ角部側の端部への応力集中を抑制することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のパネル接合構造を示す斜視図
図2図1の要部拡大図
図3】(a)は図2のA-A線に沿う要部の矢視断面図、(b)は図2のB-B線に沿う要部の矢視断面図
図4図3(b)の他の実施例を示す拡大断面図
図5】パネル接合構造の他の実施例を示す斜視図
図6】パネル接合構造のさらに他の実施例を示す斜視図
図7】パネル接合構造のさらに他の実施例を示す斜視図
図8】パネル接合構造のさらに他の実施例を示す斜視図
図9】パネル接合構造を車両の前部車体構造に採用した実施例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
剥離荷重が入力された際の接着材のフランジ角部側の端部への応力集中を抑制するという目的を、パネル本体部と、該パネル本体部から角部を介して延びる第1フランジ部と、を備える第1パネル部材と、上記第1フランジ部と対向配置される第2パネル部材と、上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とが接触した状態で、これら両者を接合する接合部と、を設け、上記第1フランジ部および上記第2パネル部材の少なくとも何れか一方には、上記接合部にフランジ長手方向において隣接して設けられて上記第1フランジ部および上記第2パネル部材の少なくとも何れか他方に対して離間する凸部が備えられ、上記凸部において上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とを接着する接着材が設けられ、上記第1フランジ部と上記第2パネル部材とを離間させる方向の荷重が入力された際、上記接着材の角部側の端部に入力される曲げモーメントと、上記接合部に入力される曲げモーメントと、が略等しくなるように設けられるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面はパネル接合構造を示し、図1は当該パネル接合構造を示す斜視図、図2図1の要部拡大図、図3の(a)は図2のA-A線に沿う要部の矢視断面図、図3の(b)は図2のB-B線に沿う要部の矢視断面図である。
【0024】
なお、図中、矢印Xは第1フランジ部15の短手方向を示し、矢印Yは第1フランジ部15の長手方向を示し、矢印ZはX方向、Y方向の何れに対しても直角に直交する方向を示す。
【0025】
図1に示すように、このパネル接合構造は、第1パネル部材10と第2パネル部材30とを備えている。
第1パネル部材10はX方向に延びる第1側壁11と、この第1側壁11の一方側端部(図示の左側端部)および他方側端部(図示の右側端部)からZ方向に延びる第2側壁12および第3側壁13と、を一体形成し、これらの各側壁11,12,13によりパネル本体部14を形成している。第2側壁12と第3側壁13とは対向している。
【0026】
また、上述の第2側壁12および第3側壁13の第1側壁11とは反対側の端部から外方に延びる第1フランジ部15,15を一体形成し、パネル本体部14と第1フランジ部15,15とで、断面ハット形状部を構成している。
【0027】
さらに、上述の第2側壁12と一方側の第1フランジ部15との間には、湾曲形状の角部16を形成している。同様に、上述の第3側壁13と他方側の第1フランジ部15との間にも、湾曲形状の角部17を形成している。
【0028】
つまり、一方側の第1フランジ部15は、パネル本体部14の第2側壁12から角部16を介して外方に延びており、他方側の第1フランジ部15は、パネル本体部14の第3側壁13から角部17を介して外方に延びている。また、第1パネル部材10は第1フランジ部15,15の長手方向であるY方向に延びている。
【0029】
一方、上述の第2パネル部材30はX方向に延びる第1側壁31と、この第1側壁31の一方側端部(図示の左側端部)および他方側端部(図示の右側端部)からZ方向に延びる第2側壁32および第3側壁33と、を一体形成し、これらの各側壁31,32,33によりパネル本体部34を形成している。第2側壁32と第3側壁33とは対向している。
【0030】
また、上述の第2側壁32および第3側壁33の第1側壁31とは反対側の端部から外方に延びる第2フランジ部35,35を一体形成し、パネル本体部34と第2フランジ部35,35とで、断面逆ハット形状部を構成している。
【0031】
図1に示すように、第1パネル部材10の第1側壁11と、第2パネル部材30の第1側壁31とは、Z方向に離間した状態で対向している。
さらに、上述の第2側壁32と一方側の第2フランジ部35との間には、湾曲形状の角部36を形成している。同様に、上述の第3側壁33と他方側の第2フランジ部35との間にも、湾曲形状の角部37を形成している。
【0032】
つまり、一方側の第2フランジ部35は、パネル本体部34の第2側壁32から角部36を介して外方に延びており、他方側の第2フランジ部35は、パネル本体部34の第3側壁33から角部37を介して外方に延びている。また、第2パネル部材30は第2フランジ部35,35の長手方向であるY方向に延びている。
【0033】
図1に示すように、第2パネル部材30は第1パネル部材10の第1フランジ部15,15と対向配置されている。詳しくは、第2パネル部材30の一方側および他方側の第2フランジ部35,35が、第1パネル部材10の一方側および他方側の第1フランジ部15,15と互いに接触した状態で対向配置されている。
【0034】
また、同図に示すように、第1パネル部材10の第1フランジ部15と、第2パネル部材30の第2フランジ部35とが互いに接触した状態で、これら両者を接合する接合部40を設けている。該接合部40は各フランジ部15,35の長手方向つまりY方向に所定間隔を隔てて複数設けられている。
【0035】
この実施例では、第1パネル部材10および第2パネル部材30を共に鋼板により形成しているので、上述の接合部40はスポット溶接によるナゲット(nugget、溶融凝固部)40n(図3参照)にて形成している。
【0036】
図1に示すように、第1フランジ部15および第2パネル部材30の少なくとも何れか一方としての第1フランジ部15には凸部18が設けられている。該凸部18は接合部40のフランジ長手方向(Y方向)において隣接して設けられている。この実施例では複数の接合部40,40間に複数の凸部18が設けられている。さらに詳しくは、当該凸部18は、第1フランジ部15および第2パネル部材30の少なくとも何れか他方としての第2パネル部材30の第2フランジ部35に対して離間するように形成されている。
【0037】
さらに、上述の凸部18は第1フランジ部15のフランジ短手方向(X方向)に沿って延びており、当該凸部18は第1フランジ部15とパネル本体部14の第2側壁12とを連結するビード18bにて形成されている。
上述の如く、第2パネル部材30の第2フランジ部35から離間して第1パネル部材10の第1フランジ部15の短手方向に沿って延びる凸部18を設けている。
【0038】
この実施例では、図1に示すように、上記凸部18に対して、第1パネル部材10の第2側壁12に沿ってZ方向に延びる凸部18Bと、第1パネル部材10の第1側壁11に沿ってX方向に延びる凸部18Cと、を連続して形成している。
【0039】
図2に拡大図で示すように、上述の凸部18は、第1フランジ部15から斜め方向に延びる一対のスラント壁18c,18cと、これらスラント壁18c,18cの第2フランジ部35に対する離間側の端部同士をY方向に連結する連結壁18dと、を有している。そして、一対の各スラント壁18c,18cと連結壁18dとの間には稜線R1,R2が形成されている。
【0040】
図2に示すように、上述の凸部18において第1パネル部材10の第1フランジ部15と第2パネル部材30の第2フランジ部35とを接着する接着材20が設けられている。
詳しくは、上記凸部18と第2フランジ部35との間に、接着材20の充填空間19を形成し、この充填空間19に接着材20を介在させることで、当該接着材20にて第1フランジ部15と第2フランジ部35とを接着固定するものである。
【0041】
上述の接着材20には、エポキシ系に代表される構造用接着材が用いられるが、エポキシ系に限らず、ウレタン系、アクリル系、変性シリコーン系等の構造用接着材を用いてもよく、車体接合に用いられる接着材であれば、種類は問わない。
【0042】
しかも、図3(a)(b)に示すように、第1フランジ部15と第2パネル部材30とを離間させる方向の剥離荷重F1,F2の少なくとも一方が入力された際、接着材20の角部側の端部20aに入力される曲げモーメントと、接合部40(ナゲット40n)に入力される曲げモーメントと、が略等しくなるように設けられている。
【0043】
このためには、図3(a)に示す第2側壁12,32とナゲット40nの中心40cとの間のX方向の距離、すなわち、モーメントの腕の長さ(いわゆるモーメント長)S1と、図3(b)に示す第2側壁12,32と接着材20の角部側の端部20aとの間のX方向の距離、すなわち、モーメントの腕の長さ(いわゆるモーメント長)S2と、を同等(S1=S2)に設定することが好ましい。
【0044】
この実施例では、図3に示すように、接着材20の角部側の端部20a(図3の(b)参照)は、接合部40(ナゲット40n)の角部側の端部40a(図3の(a)参照)と、当該接合部40(ナゲット40n)のフランジ末端側の端部40b(図3の(a)参照)との間に設けられている。
【0045】
このように、接着材20の角部側端部20aに入力される曲げモーメントと、接合部40に入力される曲げモーメントとを略等しく設定することで、接着材20と接合部40とに略均等に剥離荷重が入り、これにより、接着材20の角部側端部20aへの応力集中を抑制すべく構成したものである。
【0046】
また、接着材20の角部側端部20aが、接合部40の上述の各端部40a,40b間に設けられることで、剥離荷重F1,F2の少なくとも一方が入力された際、接着材20の角部側端部20aと、接合部40とに入力される剥離荷重が略等しくなる。これにより、接着材20の角部側端部20aへの応力集中を抑制するように構成したものである。
図3に示すように、上述の接着材20の角部側端部20aは、複数の接合部40の中央領域部α同士を結ぶ仮想線上に設けられている。
【0047】
ここで、上述の中央領域部αは、ナゲット40nの中心40cに対してX方向にナゲット径の1/4だけ角部側に片寄った仮想線L1と、ナゲット40nの中心に対してX方向にナゲット径の1/4だけフランジ末端部側に片寄った仮想線L2と、の間の領域である。また、その仮想線上とは、仮想線L1,L2間の仮想延長領域上を意味する。
【0048】
接着材20の角部側端部20aを、上述の中央領域部α同士を結ぶ仮想線上に設けることは、第1パネル部材10、第2パネル部材30の製作上の寸法誤差、並びに、スポット溶接位置の誤差を許容するものである。
【0049】
また、上述のように、接着材20の角部側端部20aを、上述の中央領域部α同士を結ぶ仮想線上に設けることで、生産しやすい構造でありながら、接合部40に対して剥離荷重を効率よく分散させ、これにより、接着材20の角部側端部20aへの応力集中を抑制すべく構成している。
【0050】
さらに、図1図3に示すように、第1フランジ部15または第2パネル部材30の接着材20に対向する位置には、孔部18eが開口形成されている。
この実施例では、上述の凸部18の連結壁18dにおいて、上記接着材20に対向すべく上記充填空間19と連通する孔部18eが開口形成されている。
【0051】
これにより、上述の凸部18の充填空間19のみならず、上記孔部18eにも接着材20が介在し、この接着材20が孔部18eの内周壁に当接することで、剥離荷重に対してせん断方向で荷重を受け、接着材20の強度に対して有利となるように構成している。また、上述の孔部18eから接着材20の有無および介在状況を目視にて確認可能となり、この結果、生産工程での接着状態での保証が可能となるように構成したものである。
【0052】
図3に示すように、上述の孔部18eは、その角部側の周壁が複数の接合部40の中央領域部α間を結ぶ仮想線上に位置するように、フランジ末端側に隣接して配置されている。この実施例では、孔部18eの角部側の周壁が複数の接合部40のナゲット40nの中心40c間を結ぶ仮想線L3上に位置するようにフランジ末端側に片寄って配置されている。
【0053】
これにより、接着材20が孔部18eの周壁に当接し、接着材20の角部側端部20aの位置を、接合部40の中央領域部αの延長領域上の位置と成して、接着材20の角部側端部20aと、接合部40とに入力される剥離荷重を略等しく成す。以て、接着材20の角部側端部20aへの応力集中を抑制すべく構成したものである。
【0054】
このように、図1図3で示した実施例1のパネル接合構造は、パネル本体部14と、該パネル本体部14から角部16を介して延びる第1フランジ部15と、を備える第1パネル部材10と、上記第1フランジ部15と対向配置される第2パネル部材30と、上記第1フランジ部15と上記第2パネル部材30とが接触した状態で、これら両者を接合する接合部40と、を設け、上記第1フランジ部15および上記第2パネル部材30の少なくとも何れか一方(この実施例1では第1フランジ部15)には、上記接合部40にフランジ長手方向において隣接して設けられて上記第1フランジ部15および上記第2パネル部材30の少なくとも何れか他方(この実施例1では第2パネル部材30)に対して離間する凸部18が備えられ、上記凸部18において上記第1フランジ部15と上記第2パネル部材30とを接着する接着材20が設けられ、上記第1フランジ部15と上記第2パネル部材30とを離間させる方向の荷重F1,F2が入力された際、上記接着材20の角部側の端部20aに入力される曲げモーメントと、上記接合部40に入力される曲げモーメントと、が略等しくなるように設けられるものである(図2図3参照)。
【0055】
上記構成によれば、接着材20の角部側の端部20aに入力される曲げモーメントと、接合部40に入力される曲げモーメントと、が略等しいので、接着材20と接合部40とに略均等に剥離荷重が入り、これにより、接着材20の角部側の端部20aへの応力集中を抑制することができる。
【0056】
上記実施例1のパネル接合構造は、また、パネル本体部14と、該パネル本体部14から角部16を介して延びる第1フランジ部15と、を備える第1パネル部材10と、上記第1フランジ部15と対向配置される第2パネル部材30と、上記第1フランジ部15と上記第2パネル部材30とが接触した状態で、これら両者を接合する接合部40と、を設け、上記第1フランジ部15および上記第2パネル部材30の少なくとも何れか一方(この実施例1では第1フランジ部15)には、上記接合部40にフランジ長手方向において隣接して設けられて上記第1フランジ部15および上記第2パネル部材30の少なくとも何れか他方(この実施例1では第2パネル部材30)に対して離間する凸部18が備えられ、上記凸部18において上記第1フランジ部15と上記第2パネル部材30とを接着する接着材20が設けられ、上記接着材20の角部側の端部20aは、上記接合部40の角部側の端部40aと、当該接合部40のフランジ末端側の端部40bとの間に設けられるものである(図2図3参照)。
【0057】
上記構成によれば、接着材20の角部側の端部20aが、上記接合部40と第1フランジ部15の短手方向において略同じ位置に設けられるので、第1フランジ部15と第2パネル部材30とを離間させる方向の剥離荷重F1,F2(詳しくは、荷重F1,F2の少なくとも一方)が入力された際、接着材20の角部側の端部20aと、接合部40とに入力される剥離荷重F1,F2が略等しくなる。
この結果、接着材20の角部側の端部20aへの応力集中を抑制することができる。
【0058】
この発明の一実施形態においては、上記接合部40は上記第1フランジ部15の長手方向に間隔を隔てて複数設けられており、上記接着材20の角部側の端部20aは、上記複数の接合部40,40の中央領域部α同士を結ぶ仮想線上に設けられたものである(図3参照)。
この構成によれば、生産しやすい構造でありながら、接合部40に対して剥離荷重F1,F2を効率よく分散させることができる。
【0059】
この発明の一実施形態においては、上記第1フランジ部15または上記第2パネル部材30(この実施例では、第1フランジ部15の凸部18)の上記接着材20に対向する位置に孔部18eが開口形成されたものである(図3参照)。
【0060】
この構成によれば、上述の凸部18のみならず、上記孔部18eにも接着材20が介在し、当該接着材20が孔部18eの内周壁に当接するので、剥離荷重F1,F2に対してせん断方向で荷重を受けることができる。これにより、接着材20の強度に対して有利となる。
また、上記孔部18eから接着材20の有無および介在状況を目視にて確認できるので、生産工程での接着状態の保証が可能となる。
【0061】
この発明の一実施形態においては、上記凸部18は上記第1フランジ部15と上記パネル本体部14とを連結するビード18bであることを特徴とする(図2図3参照)。
この構成によれば、凸部18を上記ビード18bと成すことで、角部16および第1フランジ部15の剛性が向上し、これにより、接着材20に入力される剥離荷重F1を低減することができる。
【0062】
この発明の一実施形態においては、上記接合部40は上記第1フランジ部15の長手方向に間隔を隔てて複数設けられており、上記孔部18eは、その角部側の周壁が上記複数の接合部40の中央領域部α間を結ぶ仮想線上に位置するようにフランジ末端側に隣接して配置されたものである(図3参照)。
【0063】
この構成によれば、接着材20が孔部18eの周壁に当接するので、接着材20の角部側の端部20aの位置を、接合部40の中央領域部αの位置に位置規制することができる。この結果、接着材20の角部側の端部20aと、接合部40とに入力される剥離荷重F1,F2が略等しくなり、接着材20の角部側の端部20aへの応力集中を抑制することができる。
【実施例2】
【0064】
図4はパネル接合構造の実施例2を示す斜視図である。詳しくは、図4図3(b)の他の実施例を示す拡大断面図である。
図4で示す実施例2においては、図3(b)の構造に加えて、孔部18eの角部16側の端部から接着材20の充填空間19内に延びる位置規制部としての切起こし舌片18fを、孔部18eの孔縁に一体に切起こし形成したものである。
【0065】
上述の切起こし舌片18fの先端と、第2パネル部材30の第2フランジ部35との間には、隙間を形成している。
このように構成すると、接着材20の角部側の端部20aの位置を、切起こし舌片18fにて接合部40の中央領域部αの延長線上の位置により一層確実に位置規制することができる。
【0066】
すなわち、図4に示す実施例2においては、上記第1フランジ部15または上記第2パネル部材30の少なくとも何れか一方(具体的には第1フランジ部15の凸部18)には、上記接着材20の角部側の位置を規制する位置規制部(切起こし舌片18f)が設けられたものである。
この構成によれば、上述の位置規制部(切起こし舌片18f)により接着材20の角部側の位置を規制することができる。
【0067】
図4で示した実施例2においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例1と同様であるから、図4において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例3】
【0068】
図5はパネル接合構造の他の実施例を示す斜視図である。
図5で示す実施例3のパネル接合構造は、第1パネル部材10については実施例1と同様に断面ハット形状に形成されているが、第2パネル部材30はフラットな板材から成るパネル本体部34を用いている。
【0069】
そして、パネル本体部34の一方側部(図示の左側部)および他方側部(図示の右側部)を、第1パネル部材10の各第1フランジ部15,15と対向配置し、第1フランジ部15と第2パネル部材30とが接触した状態で、これら両者を接合する接合部40を設けている。
すなわち、この実施例3においては、断面ハット形状の第1パネル部材10と、平板状の第2パネル部材30と、を接合するパネル接合構造である。
【0070】
図5で示す実施例3においても、要部を含むその他の構成および作用、効果については、先の実施例1と同様であるから、図5において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例4】
【0071】
図6はパネル接合構造のさらに他の実施例を示す斜視図である。
図6で示す実施例4のパネル接合構造は、図5で示した実施例3の構造に加えて、第1パネル部材10側の凸部18とZ方向に対向する第2パネル部材30のパネル本体部34の一方側部(図示の左側部)に、第1フランジ部15から離間する凸部38を備えたものである。
【0072】
この凸部38は、パネル本体部34から斜め方向に延びる一対のスラント壁38c,38cと、これらスラント壁38c,38cのパネル本体部34に対する離間側の端部同士をY方向に連結する連結壁38dと、を有している。そして、一対の各スラント壁38c,38cと連結壁38dとの間には、X方向に延びる稜線R3,R4が形成されている。
【0073】
上述の凸部38は、第1パネル部材10側の凸部18と同様にX方向に延びており、凸部18,38間には接着材20の充填空間19が形成されている。そして、この充填空間19には第1パネル部材10の第1フランジ部15と第2パネル部材30とを接着する接着材20が設けられている。また、上述の凸部38はビード38bにて形成されている。
【0074】
図6で示す実施例4においても、要部を含むその他の構成および作用、効果については、先の実施例3と同様であるから、図6において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例5】
【0075】
図7はパネル接合構造のさらに他の実施例を示す斜視図である。
図7に示す実施例5においては、断面ハット形状の第1パネル部材10と、断面逆ハット形状の第2パネル部材30と、を設け、第1パネル部材10の第1フランジ部15と第2パネル部材30の第2フランジ部35と、を接合部40(ナゲット40n)にて接合固定するものである。
【0076】
第1フランジ部15には、接合部40のY方向に隣接して凸部18が設けられている。この凸部18は一対のスラント壁18c,18cと、連結壁18dと、を有するビード18bにて形成されている。また、凸部18の角部16側が第2側壁12のZ方向中間まで延び、凸部18の角部16側が当該第2側壁12のZ方向中間で収束している。つまり、上記凸部18はY方向から見てL字状に形成されている。
【0077】
同様に、第2フランジ部35には、接合部40のY方向に隣接して凸部38が設けられている。この凸部38は一対のスラント壁38c,38cと、連結壁38dと、を有するビード38bにて形成されている。また、凸部38の角部36側が第2側壁32のZ方向中間まで延び、凸部38の角部36側が当該第2側壁32のZ方向中間で収束している。つまり、上記凸部38もY方向から見てL字状に形成されている。
【0078】
一方の凸部18は第2フランジ部35からZ方向に離間しており、他方の凸部38は第1フランジ部15からZ方向に離間している。そして、これらの凸部18,38間には、接着材20の充填空間19が形成されており、この充填空間19に介在させる接着材20により、第1フランジ部15と第2フランジ部35とが接着固定されている。
【0079】
図7で示す実施例5においても、要部を含むその他の構成および作用、効果については、先の実施例と同様であるから、図7において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例6】
【0080】
図8はパネル接合構造のさらに他の実施例を示す斜視図である。
図8に示すように、第1パネル部材10は第2側壁12から角部16、後述する平面部18g、スラント壁18cを介してX方向に延びる第1フランジ部15を備えている。
この第1フランジ部15は、Z方向から見てU字状の座面15Sにより形成されており、該第1フランジ部15(座面15S)はY方向に間隔を隔てて複数設けられている。
【0081】
第2パネル部材30は第2側壁32から角部36、後述する平面部38g、スラント壁38cを介してX方向に延びる第2フランジ部35を備えている。
この第2フランジ部35も第1フランジ部15と同様に、Z方向から見てU字状の座面35Sにより形成されており、該第2フランジ部35(座面35S)もY方向に間隔を隔てて複数設けられている。
【0082】
上述の各座面15S,35Sが接触した状態で、これら両者を接合する接合部40が設けられている。隣接する第1フランジ部15,15間には、第2フランジ部35に対して離間する凸部18が設けられている。
また、隣接する第2フランジ部35,35間には、第1フランジ部15に対して離間する凸部38が設けられている。
【0083】
上述の凸部18は、一対のスラント壁18c,18cと、これらスラント壁18c,18cを連結する連結壁18dとを有するビード18bにて形成されている。
同様に、上述の凸部38は、一対のスラント壁38c,38cと、これらスラント壁38c,38cを連結する連結壁38dとを有するビード38bにて形成されている。
【0084】
図8に示すように、第1フランジ部15を形成する座面15Sは、フランジ末端から角部16近傍までX方向に延びており、スラント壁18cの角部16側はU字状の座面15Sの半円部に沿って延びて、隣り合う凸部18のスラント壁18cに連続している。
また、上述の各凸部18,18における連結壁18dの角部16側は、Y方向に延びる18gにより連結されている。
【0085】
同様に、第2フランジ部35を形成する座面35Sは、フランジ末端から角部36近傍までX方向に延びており、スラント壁38cの角部36側はU字状の座面35Sの半円部に沿って延びて、隣り合う凸部38のスラント壁38cに連続している。
また、上述の各凸部38,38における連結壁38dの角部36側は、Y方向に延びる38gにより連結されている。
【0086】
図8に示すように、上述の凸部18,38間には接着材20の充填空間19が形成されており、この充填空間19には、これらの各凸部18,38を接着することで、第1パネル部材10の第1フランジ部15と、第2パネル部材30の第2フランジ部35とを接着する接着材20が設けられている。
【0087】
この実施例6においても、剥離荷重が入力された際、接着材20の角部側端部20aに入力される曲げモーメントと、接合部40に入力される曲げモーメントと、が略等しくなるように形成されている。
【0088】
図8で示したこの実施例6においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例と同様であるから、図8において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例7】
【0089】
図9はパネル接合構造を車両の前部車体構造に採用した実施例を示す斜視図である。
この実施例7において、第1パネル部材10はダッシュアッパパネルであり、第2パネル部材30はダッシュロアパネルである。
【0090】
エンジンルーム(電気自動車の場合は、モータルーム)と車室とを車両前後方向に仕切るダッシュロアパネル(第2パネル部材30)の上端部には、角部36を介して車両前方に延びる第2フランジ部35が形成されている。
【0091】
一方、ダッシュアッパパネル(第1パネル部材10)のパネル本体部14の下端には、前側が低く、後側が高い傾斜状の角部16(いわゆるテーパ角部)を介して車両前方に延びる第1フランジ部15が形成されている。
【0092】
ダッシュロアパネル(第2パネル部材30)の第2フランジ部35の上部に、ダッシュアッパパネル(第1パネル部材10)の第1フランジ部15を接触させた状態で、これら両者35,15を接合する接合部40を設けている。
上述の接合部40は、各フランジ部35,15の長手方向、すなわち、車幅方向に間隔を隔てて複数設けられている。
【0093】
図9に示すように、第2フランジ部35には、上記接合部40にフランジ長手方向(車幅方向)において隣接して設けられて第1フランジ部15に対して下方に離間する凸部38が備えられている。
【0094】
この凸部38は、第2フランジ部35から斜め下方に傾斜する左右一対のスラント壁38c,38cと、これら一対のスラント壁38c,38cの下端同士を連結する連結壁38dと、を有して、車両前後方向に延びており、凸部38の後端はパネル本体部34の上部に連結されている。また、上述の一対の各スラント壁38c,38cと連結壁38dとの間には、車両の前後方向に延びる稜線R3,R4が形成されている。
【0095】
同図に示すように、上述の凸部38においてダッシュアッパパネル(第1パネル部材10)の第1フランジ部15と、ダッシュロアパネル(第2パネル部材30)の第2フランジ部35とを接着する接着材20が設けられている。
【0096】
詳しくは、上記凸部38と第1フランジ部15との間に、接着材20の充填空間19を形成し、この充填空間19に接着材20を介在させることで、当該接着材20にて第1フランジ部15と第2フランジ部35とを接着固定するものである。
【0097】
図9に示すように、ダッシュロアパネル(第2パネル部材30)の凸部38における連結壁38dには、接着材20と対向する位置に孔部38eが開口形成されている。この孔部38eは、その角部36側の内周壁が複数の接合部40の中央領域部α(前図参照)を結ぶ仮想線上に位置するようにフランジ末端側に隣接して配置されている。
しかも、剥離荷重が入力された際、接着材20の角部側端部に入力される曲げモーメントと、接合部40に入力される曲げモーメントと、が略等しくなるように設けられている。
【0098】
このように、上記ダッシュロアパネル(第2パネル部材30)の第2フランジ部35に上記構成を採用している。このため、車両の通常走行時に、フロントサスペンションからダッシュロアパネル(第2パネル部材30)に繰返し荷重が入力された際、上述の両曲げモーメントを略同等と成したので、接着材20と接合部40とに略均等に剥離荷重が入り、これにより、当該接着材20の角部36側端部への応力集中を抑制することができる。
なお、上記接着材20の粘度によっては垂れ落ちを抑制するためダッシュアッパパネル(第1パネル部材10)の接着材20に対向する位置にも孔部38eを設けてもよい。
【0099】
図9で示したこの実施例7においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図9において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。なお、図9において矢印Fは車両前方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0100】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の接合部40は、実施例のスポット溶接によるナゲット40nに対応するが、上記接合部40は、機械接合、つまり、ボルト、ナット、リベット、セルフピアシング・リベット(self-piercing rivet、いわゆるSPR)による接合や片側機械接合を含む。
ここで、接合部40をボルト、ナットによる機械接合とする場合には、ボルト頭部とナットとの対向部が接合部となる。
【0101】
また、上記実施例においては、第1パネル部材10および第2パネル部材30を、スポット溶接が可能なように、共に鋼板製と成したが、パネル部材10,30は金属部材および繊維強化プラスチックを含み、また、鋼板同士、アルミ板同士のような同材接合と、鋼板とアルミ板との接合のような異材接合と、を含む。
【0102】
さらに、角部16は、パネル本体部14と第1フランジ部15とが直角に交わるものだけでなく、成形加工を可能とするために、パネル本体部14と第1フランジ部15とが湾曲形状部(いわゆるR部)を介して連結するものや、テーパ形状部を介して連結するものを含む。
この発明は、上述の各実施例の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明したように、本発明は、パネル本体部と、該パネル本体部から角部を介して延びる第1フランジ部と、を備える第1パネル部材と、上記第1フランジ部と対向配置される第2パネル部材とを備え、上記第1パネル部材の第1フランジ部と上記第2パネル部材とを、接合部および接着材により接合固定するようなパネル接合構造について有用である。
【符号の説明】
【0104】
10…第1パネル部材
14…パネル本体部
15…第1フランジ部
16…角部
18…凸部
18b…ビード
18e…孔部
18f…切起こし舌片(位置規制部)
20…接着材
20a…角部側端部
30…第2パネル部材
38…凸部
38b…ビード
38e…孔部
40…接合部
40a…角部側端部
40b…フランジ末端側端部
40n…ナゲット(接合部)
α…中央領域部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9