(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】近赤外線吸収組成物、近赤外線透過組成物、および光学フィルタ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240814BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20240814BHJP
C09B 67/46 20060101ALI20240814BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240814BHJP
C09B 57/00 20060101ALN20240814BHJP
C09B 47/08 20060101ALN20240814BHJP
C09B 47/10 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
G02B5/22
C09B67/20 L
C09B67/46 A
C09K3/00 105
C09B57/00 X
C09B47/08
C09B47/10
(21)【出願番号】P 2020177815
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】718000495
【氏名又は名称】東洋ビジュアルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真理
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏明
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-172614(JP,A)
【文献】特開平10-104785(JP,A)
【文献】特開2018-045011(JP,A)
【文献】国際公開第2017/213047(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/054718(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
C09B 67/20
C09B 67/46
C09K 3/00
C09B 57/00
C09B 47/08
C09B 47/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
400~1000nmの範囲における最大吸収波長を800~900nmの間に有するスクアリリウム色素(A)を2種以上含む近赤外線吸収組成物であって、第1のスクアリリウム色素(A-1)の最大吸収波長をλ1
max、第2のスクアリリウム色素(A-2)の最大吸収波長をλ2
maxとしたとき、下記式(1)の関係を満た
し、
前記スクアリリウム色素(A-1)および(A-2)が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする近赤外線吸収組成物。
式(1) 0nm < λ2
max-λ1
max ≦ 100nm
【化1】
一般式(1)
( 一般式(1)中、R
1
~R
4
はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR
10
、-COR
11
、-COOR
12
、-COOM
1
、-OCOR
13
、- NR
14
R
15
、-NHCOR
16
、-CONR
17
R
18
、-NHCONR
19
R
20
、-NHCOOR
21
、-SR
22
、-SO
2
R
23
、-SO
2
OR
24
、-SO
3
M
2
、-NHSO
2
R
25
、-SO
2
NR
26
R
27
、-B(OR
28
)
2
、または-NHBR
29
R
30
を表す。R
10
~R
30
は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基を表す。なお、-COOR
12
のR
12
が水素の場合は、水素原子が解離してもよい。-COOM
1
は、カルボキシル基の金属塩またはアルキルアンモニウム塩を表す。また、-SO
2
OR
24
のR
24
が水素原子の場合は、水素原子が解離してもよい。-SO
3
M
2
は、スルホ基の金属塩またはアルキルアンモニウム塩を表す。また、R
1
とR
2
、R
3
とR
4
はお互いに結合して環を形成しても良い。)
【請求項2】
前記λ1
maxおよびλ2
maxが、下記式(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の近赤外線吸収組成物。
式(2) 10nm ≦ λ2
max-λ1
max ≦ 100nm
【請求項3】
前記スクアリリウム色素(A-1)および(A-2)が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1
または2記載の近赤外線吸収組成物。
【化2】
一般式(2)
(一般式(2)中、R
5~R
8はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR
50、-COR
51、-COOR
52、-OCOR
53、-NR
54R
55、-NHCOR
56、-CONR
57R
58、-NHCONR
59R
60、-NHCOOR
61、-SR
62、-SO
2R
63、-SO
2OR
64、-NHSO
2R
65または-SO
2NR
66R
67、-B(OR
68)
2、および-NHBR
69R
70を表す。R
50~R
70は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基を表す。なお、-COOR
52のR
52が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO
2OR
64のR
64が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。また、R
5とR
6、R
7とR
8はお互いに結合して環を形成しても良い。)
【請求項4】
800nmにおける透過率が1%になるように塗膜を形成した際に、940nmにおける透過率が50%以上であることを特徴とする請求項1~
3いずれか1項に記載の近赤外線吸収組成物。
【請求項5】
さらに塩基性樹脂型分散剤を含むことを特徴とする請求項1~
4いずれか1項に記載の近赤外線吸収組成物。
【請求項6】
さらに光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1~
5いずれか1項に記載の近赤外線吸収組成物。
【請求項7】
請求項1~
6いずれか1項記載の近赤外線吸収組成物と、黒色を呈する着色組成物を含むことを特徴とする近赤外線透過組成物。
【請求項8】
請求項1~
6いずれか1項記載の近赤外線吸収組成物を用いて形成される光学フィルタ。
【請求項9】
請求項
7記載の近赤外線透過組成物を用いて形成される光学フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収組成物、近赤外線透過組成物、およびそれを用いて形成される光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル端末を中心に、指紋や顔、虹彩、音声等の生体情報を利用したユーザー認証機能が搭載されている。特に、指紋認証は指を置くだけでロックを解除できるという優れた利便性を持ち、小型で安価にセキュリティを強化できることから、スマートフォンで指紋認証センサの採用が拡大している。
【0003】
またスマートフォンでは、大きさの制約がある中でディスプレイを大型化するために、本体全面をディスプレイとし、指紋認証センサを画面内に組み込む提案がなされている(画面内指紋認証)。特に有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置では、青色や緑色の画素から発せられる光を利用して、指紋認証を行うことができ、画面内指紋認証方式が広がっている。
【0004】
一方、バックライトが必要な液晶表示装置では、これまで画面内指紋認証方式が取り入れられてこなかった。しかし近年、ディスプレイ下部に赤外線送信機を設置し、赤外線を照射、その赤外線が指紋により反射された光をセンサが受信し、読み取るという方式で、液晶表示装置であっても画面内指紋認証が実現されている。
【0005】
この液晶表示装置における画面内指紋認証に使用される赤外線光源として、940nmの近赤外線LED光源が用いられることがある。940nmは、外光ノイズとなる太陽光が水蒸気により吸収される波長のため、他の波長に比べて低ノイズでセンシング可能だからである。さらに光学フィルタ等により、700nm~900nmの近赤外線をカットすることで、より一層外光ノイズを低減でき、指紋認証センサのセンシング精度を向上させることができる。
【0006】
近赤外線カットフィルタは、例えば特許文献1のように近赤外線吸収剤を含む組成物を用いて製造される。しかしながら、700nm~900nmの近赤外線をカットする能力が必ずしも満足いくものではなかった。さらに、近赤外線カットフィルタ製造時に求められる塗布性が十分とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、700nm~900nmの近赤外線カット能力が高く、940nmの近赤外光を透過し、かつ塗布性良好な近赤外線吸収組成物、近赤外線透過組成物、およびそれを用いて形成される光学フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、400~1000nmの範囲における最大吸収波長を800~900nmの間に有するスクアリリウム色素(A)を2種以上含む近赤外線吸収組成物であって、第1のスクアリリウム色素(A-1)の最大吸収波長をλ1max、第2のスクアリリウム色素(A-2)の最大吸収波長をλ2maxとしたとき、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする近赤外線吸収組成物が、700nm~900nm付近までの近赤外線カット能力が高く、かつ塗布性良好であることを見出し、この知見に基づいて本発明をなしたものである。
式(1) 0nm < λ2max-λ1max ≦ 100nm
【0010】
すなわち、本発明は400~1000nmの範囲における最大吸収波長を800~900nmの間に有するスクアリリウム色素(A)を2種以上含む近赤外線吸収組成物であって、第1のスクアリリウム色素(A-1)の最大吸収波長をλ1max、第2のスクアリリウム色素(A-2)の最大吸収波長をλ2maxとしたとき、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする近赤外線吸収組成物に関する。
式(1) 0nm < λ2max-λ1max ≦ 100nm
【0011】
また、本発明は前記λ1maxおよびλ2maxが、下記式(2)の関係を満たすことを特徴とする前記近赤外線吸収組成物に関する。
式(2) 10nm ≦ λ2max-λ1max ≦ 100nm
【0012】
また、本発明は前記スクアリリウム色素(A-1)および(A-2)が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記近赤外線吸収組成物に関する。
一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、R
1~R
4はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR
10、-COR
11、-COOR
12、-COOM
1、-OCOR
13、-NR
14R
15、-NHCOR
16、-CONR
17R
18、-NHCONR
19R
20、-NHCOOR
21、-SR
22、-SO
2R
23、-SO
2OR
24、-SO
3M
2、-NHSO
2R
25、-SO
2NR
26R
27、-B(OR
28)
2、または-NHBR
29R
30を表す。R
10~R
30は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基を表す。なお、-COOR
12のR
12が水素の場合は、水素原子が解離してもよい。-COOM
1は、カルボキシル基の金属塩またはアルキルアンモニウム塩を表す。また、-SO
2OR
24のR
24が水素原子の場合は、水素原子が解離してもよい。-SO
3M
2は、スルホ基の金属塩またはアルキルアンモニウム塩を表す。また、R
1とR
2、R
3とR
4はお互いに結合して環を形成しても良い。)
【0013】
また、本発明は前記スクアリリウム色素(A-1)および(A-2)が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする前記近赤外線吸収組成物に関する。
一般式(2)
【化2】
(一般式(2)中、R
5~R
8はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR
50、-COR
51、-COOR
52、-COOM
3、-OCOR
53、-NR
54R
55、-NHCOR
56、-CONR
57R
58、-NHCONR
59R
60、-NHCOOR
61、-SR
62、-SO
2R
63、-SO
2OR
64、-SO
3M
4、-NHSO
2R
65、-SO
2NR
66R
67、-B(OR
68)
2、または-NHBR
69R
70を表す。R
50~R
70は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基を表す。なお、-COOR
52のR
52が水素の場合は、水素原子が解離してもよい。-COOM
3は、カルボキシル基の金属塩またはアルキルアンモニウム塩を表す。また、-SO
2OR
64のR
64が水素原子の場合は、水素原子が解離してもよい。-SO
3M
4は、スルホ基の金属塩またはアルキルアンモニウム塩を表す。また、R
5とR
6、R
7とR
8はお互いに結合して環を形成しても良い。)
【0014】
また、本発明は800nmにおける透過率が1%になるように塗膜を形成した際に、940nmにおける透過率が50%以上であることを特徴とする前記近赤外線吸収組成物に関する。
【0015】
また、本発明はさらに塩基性樹脂型分散剤を含むことを特徴とする前記近赤外線吸収組成物に関する。
【0016】
また、本発明はさらに光重合開始剤を含むことを特徴とする前記近赤外線吸収組成物に関する。
【0017】
また、本発明は前記近赤外線吸収組成物と、黒色を呈する着色組成物を含むことを特徴とする近赤外線透過組成物に関する。
【0018】
また、本発明は前記近赤外線吸収組成物を用いて形成される光学フィルタに関する。
【0019】
また、本発明は前記近赤外線透過組成物を用いて形成される光学フィルタに関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、700nm~900nmの近赤外線カット能力が高く、940nmの近赤外光を透過し、かつ塗布性良好な近赤外線吸収組成物、近赤外線透過組成物、およびそれを用いて形成される光学フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の着色組成物の各構成成分について説明する。
なお、本願では、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、又は「(メタ)アクリルアミド」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、又は「アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド」を表すものとする。
また、本明細書に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0022】
<スクアリリウム色素>
本発明の近赤外線吸収組成物は、400~1000nmの範囲における最大吸収波長を800~900nmの間に有するスクアリリウム色素(A)を2種以上含む近赤外線吸収組成物であって、第1のスクアリリウム色素(A-1)の最大吸収波長をλ1max、第2のスクアリリウム色素(A-2)の最大吸収波長をλ2maxとしたとき、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
式(1) 0nm < λ2max-λ1max ≦ 100nm
【0023】
前記λ1maxおよびλ2maxが、下記式(2)の関係を満たすことが好ましい。
式(2) 10nm ≦ λ2max-λ1max ≦ 100nm
【0024】
スクアリリウム色素の最大吸収波長の値は、後述する実施例に記載の方法で測定した値である。
【0025】
最大吸収波長が異なるスクアリリウム色素を2種含有することにより、吸収波長領域が広がり、400~1000nmの範囲における最大吸収波長を800~900nmの間に有することで700nm~900nmまでの近赤外線を幅広くカットすることができる。また、異なる色素を併用することで塗布性が良化する。
【0026】
前記スクアリリウム色素(A-1)および(A-2)が、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。下記一般式(1)で表される化合物は、シクロブテン環からπ共役系が広がるようにナフタレン環が結合しているため、最大吸収波長が長波長化し、800nm~900nmの光をよく吸収する。これにより、900nm付近までの近赤外線カット能力が向上する。また、ナフタレン環部分が会合しやすく、会合由来の吸収によって吸収波長領域が広がり、700nm~900nmの近赤外線を幅広くカットすることができる。さらに、スクアリリウム色素(A-1)および(A-2)が下記一般式(1)で表される化合物であることによって、お互いが色素誘導体的に作用し、流動性が良化することでより塗布性が良好な近赤外線吸収組成物となる。部分的に同一構造のスクアリリウム色素を2種含有することによる適度な会合状態が、吸収波長領域の広がりと塗布性の両立を可能にすると考えられる。
一般式(1)
【化3】
(一般式(1)中、R
1~R
4はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR
10、-COR
11、-COOR
12、-COOM
1、-OCOR
13、-NR
14R
15、-NHCOR
16、-CONR
17R
18、-NHCONR
19R
20、-NHCOOR
21、-SR
22、-SO
2R
23、-SO
2OR
24、-SO
3M
2、-NHSO
2R
25、-SO
2NR
26R
27、-B(OR
28)
2、または-NHBR
29R
30を表す。R
10~R
30は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基を表す。なお、-COOR
12のR
12が水素の場合は、水素原子が解離してもよい。-COOM
1は、カルボキシル基の金属塩またはアルキルアンモニウム塩を表す。また、-SO
2OR
24のR
24が水素原子の場合は、水素原子が解離してもよい。-SO
3M
2は、スルホ基の金属塩またはアルキルアンモニウム塩を表す。また、R
1とR
2、R
3とR
4はお互いに結合して環を形成しても良い。)
【0027】
上記-COOM1および-SO3M2において、M1およびM2はカルボキシル基もしくはスルホ基と金属塩を形成する金属、またはカルボキシル基もしくはスルホ基とアルキルアンモニウム塩を形成するアミンを表す。
カルボキシル基またはスルホ基と金属塩を形成する金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、アルミニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
カルボキシル基またはスルホ基とアルキルアンモニウム塩を形成するアミンとしては、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ジヒドロキシエチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジエチルアミノプロピルアミン、N,N-ジブチルアミノプロピルアミン等の低級アミン、ラウリルアミン、オレイルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン等の炭素数2以上のアルキル基を有する長鎖アルキルアミン、ラウリルアンモニウム、ステアリルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム、ジラウリルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム等の炭素数12以上のアルキル基を有する長鎖アルキル4級アンモニウムイオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
「置換基」としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、
-OR100、-COR101、-COOR102、-OCOR103、-NR104R105、-NHCOR106、-CONR107R108、-NHCONR109R110、-NHCOOR111、-SR112、-SO2R113、-SO2OR114、-NHSO2R115または-SO2NR116R117が挙げられる。
R100~R117は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアラルキル基を表す。なお、-COOR102のR102が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR114のR114が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0030】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~12がさらに好ましく、1~8が特に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでも良い。
アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がさらに好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでも良い。
アルキニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がさらに好ましく、2~8が特に好ましい。アルキニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでも良い。
アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~15がさらに好ましく、6~10が特に好ましい。
アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。アラルキル基の炭素数は、7~40が好ましく、7~30がさらに好ましく、7~25が特に好ましい。
ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がさらに好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環が特に好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がさらに好ましく、3~12が特に好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基は置換基を有していても良く、無置換であっても良い。置換基としては上述した「置換基」が挙げられる。
【0031】
前記スクアリリウム色素(A-1)および(A-2)が、下記一般式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0032】
スクアリリウム色素(A-1)および(A-2)が一般式(2)で表されるペリミジン骨格を有する化合物であることによって、高い耐光性を有する近赤外線吸収組成物となる。
一般式(2)
【化4】
(一般式(2)中、R
5~R
8はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR
50、-COR
51、-COOR
52、-COOM
3、-OCOR
53、-NR
54R
55、-NHCOR
56、-CONR
57R
58、-NHCONR
59R
60、-NHCOOR
61、-SR
62、-SO
2R
63、-SO
2OR
64、-SO
3M
4、-NHSO
2R
65、-SO
2NR
66R
67、-B(OR
68)
2、または-NHBR
69R
70を表す。R
50~R
70は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基を表す。なお、-COOR
52のR
52が水素の場合は、水素原子が解離してもよい。-COOM
3は、カルボキシル基の金属塩またはアルキルアンモニウム塩を表す。また、-SO
2OR
64のR
64が水素原子の場合は、水素原子が解離してもよい。-SO
3M
4は、スルホ基の金属塩またはアルキルアンモニウム塩を表す。また、R
5とR
6、R
7とR
8はお互いに結合して環を形成しても良い。)
【0033】
-COOM3および-SO3M4は、上述の-COOM1および-SO3M2と同義である。
【0034】
「置換基」は、上述の「置換基」と同様の意義である。
【0035】
スクアリリウム色素(A-1)および(A-2)の具体例としては、以下に示す化合物が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。また、特開2011-208101号公報の段落番号[0044]~[0049]に記載の化合物、特許6453456号公報の段落番号[0072]に記載の化合物が挙げられる。
【0036】
【0037】
【0038】
スクアリリウム色素(A-1)の400~1000nmの範囲における最大吸収波長λ1maxは、800nm~850nmにあることが好ましく、800nm~830nmにあることがより好ましい。
【0039】
スクアリリウム色素(A-2)の400~1000nmの範囲における最大吸収波長λ2maxは、820nm~900nmにあることが好ましく、830~900nmにあることがより好ましい。
【0040】
近赤外線吸収組成物中の全固形分中におけるスクアリリウム色素(A-1)およびスクアリリウム色素(A-2)の合計量は、2~80質量%であることが好ましく、4~70質量%であることがより好ましい。
【0041】
近赤外線吸収組成物中のスクアリリウム色素(A-1)とスクアリリウム色素(A-2)の含有比率は、95/5~30/70が好ましく、90/10~40/60がより好ましい。
【0042】
<その他の近赤外線吸収色素>
本発明の近赤外線吸収組成物は、必要に応じて、スクアリリウム色素(A-1)およびスクアリリウム色素(A-2)の分光特性を損なわない範囲で、その他の近赤外線吸収色素を含むことができる。その他の近赤外線吸収色素としては、例えば、シアニン化合物、スクアリリウム化合物(スクアリリウム色素(A-1)およびスクアリリウム色素(A-2)を除く)、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アミニウム化合物、ジインモニウム化合物、クロコニウム化合物、アゾ化合物、キノイド型錯体化合物、ジチオール金属錯体化合物等が挙げられる。
【0043】
<その他の色素(近赤外線吸収色素を除く)>
本発明の近赤外線吸収組成物は、その用途に応じて、その他の色素(近赤外線吸収色素を除く)を含むことができる。
【0044】
本発明の近赤外線吸収組成物は、800nmにおける透過率が1%になるように塗膜を形成した際に、940nmにおける透過率が50%以上であることが好ましい。これにより、外光ノイズを低減しつつ、940nmの光源を用いたセンシングがしやすくなるため、センシング精度を向上させることができる。
【0045】
<黒色を呈する着色組成物>
本発明の近赤外線吸収組成物は、黒色を呈する着色組成物を含むことにより、近赤外線透過組成物として用いることができる。黒色を呈する着色組成物としては、黒色を呈していれば特に限定は無く、黒色色素、複数の色素を組み合わせて黒色を呈する色素組成物等を含有すると良い。
【0046】
<色素誘導体>
本発明の近赤外線吸収組成物には、必要に応じて色素誘導体を使用できる。色素誘導体は、有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などを有する化合物である。色素誘導体は、例えば、スルホ基、カルボキシ基、またはリン酸基などの酸性置換基を有する化合物、ならびにこれらのアミン塩、スルホンアミド基、または末端に3級アミノ基などの塩基性置換基を有する化合物、フェニル基やフタルイミドアルキル基などの中性置換基を有する化合物が挙げられる。
有機色素は、例えばジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チアジンインジゴ系顔料、トリアジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ベンゾイソインドール等のインドール系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料等が挙げられる。
【0047】
具体的には、ジケトピロロピロール系色素誘導体は、特開2001-220520号公報、WO2009/081930号パンフレット、WO2011/052617号パンフレット、WO2012/102399号パンフレット、特開2017-156397号公報、フタロシアニン系色素誘導体は、特開2007-226161号公報、WO2016/163351号パンフレット、特開2017-165820号公報、特許第5753266号公報、アントラキノン系色素誘導体は、特開昭63-264674号公報、特開平09-272812号公報、特開平10-245501号公報、特開平10-265697号公報、特開2007-079094号公報、WO2009/025325号パンフレット、キナクリドン系色素誘導体は、特開昭48-54128号公報、特開平03-9961号公報、特開2000-273383号公報、ジオキサジン系色素誘導体は、特開2011-162662号公報、チアジンインジゴ系色素誘導体は、特開2007-314785号公報、トリアジン系色素誘導体は、特開昭61-246261号公報、特開平11-199796号公報、特開2003-165922号公報、特開2003-168208号公報、特開2004-217842号公報、特開2007-314681号公報、ベンゾイソインドール系色素誘導体は、特開2009-57478号公報、キノフタロン系色素誘導体は、特開2003-167112号公報、特開2006-291194号公報、特開2008-31281号公報、特開2012-226110号公報、ナフトール系色素誘導体は、特開2012-208329号公報、特開2014-5439号公報、アゾ系色素誘導体は、特開2001-172520号公報、特開2012-172092号公報、酸性置換基は、特開2004-307854号公報、塩基性置換基は、特開2002-201377号公報、特開2003-171594号公報、特開2005-181383号公報、特開2005-213404号公報に記載された色素誘導体が挙げられる。なお、これらの文献には、色素誘導体を誘導体、顔料誘導体、分散剤、顔料分散剤若しくは単に化合物などと記載している場合があるが、前記した有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などの置換基を有する化合物は、色素誘導体と同義である。
【0048】
これら色素誘導体は、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0049】
色素誘導体は、色素100質量部に対し、1~100質量部添加することが好ましく、3~70質量部添加することがより好ましく、5~50質量部添加することがさらに好ましい。
【0050】
前記色素が顔料である場合には、色素誘導体を添加し、アシッドペースティング、アシッドスラリー、ドライミリング、ソルトミリング、ソルベントソルトミリング等の顔料化処理を行う事で、顔料表面に色素誘導体が吸着し、色素誘導体を添加しない場合と比較して顔料の一次粒子をより微細化することができる。
【0051】
顔料に色素誘導体を添加し二本ロール、三本ロール、ビーズを用いた湿式分散などの分散処理を行うことで、色素誘導体が顔料表面に吸着し顔料表面が極性を持ち樹脂型分散剤の吸着が促進され、顔料、色素誘導体、樹脂型分散剤、溶媒、その他添加剤との相溶性が向上し、近赤外線吸収組成物の分散安定性や経時粘度安定性が向上する。また、相溶性が向上することで近赤外線吸収組成物をガラス基板等に塗工した際の塗膜経時安定性に優れ、近赤外線吸収組成物の塗布から露光までの待ち時間(PCD:Post Coating Delay)や露光から熱処理までの待ち時間(PED:Post Exposure Delay)に対するパターン形状などの安定性・特性依存性や、線幅感度安定性が良好となる。また顔料表面が色素誘導体および樹脂型分散剤で吸着・被覆されることで、塗膜を加熱焼成した際の顔料の凝集や昇華による結晶析出を抑制できる。さらに現像時間ばらつきや現像残渣も抑制される。
【0052】
<樹脂型分散剤>
本発明の近赤外線吸収組成物は、樹脂型分散剤を含むことができる。樹脂型分散剤は、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、顔料以外の成分と親和性が高く、分散粒子間を立体反発させる緩和部位とを有する。樹脂型分散剤は、グラフト型(櫛形)、ブロック型等、構造制御された樹脂が好ましく用いられる。
【0053】
樹脂型分散剤は、樹脂系でいうと、例えば、ポリウレタン等のウレタン系分散剤、ポリアクリレート等のポリカールボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカールボン酸、ポリカールボン酸(部分)アミン塩、ポリカールボン酸アンモニウム塩、ポリカールボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカールボン酸エステルや、これらの変性物;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩;(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等;ポリエステル、変性ポリアクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が挙げられる。
【0054】
また、樹脂型分散剤は、イオン性でいうと、酸性樹脂型分散剤、塩基性樹脂型分散剤等が挙げられる。
【0055】
塩基性樹脂型分散剤は、窒素原子含有グラフト共重合体や、側鎖に3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、含窒素複素環などを含む官能基を有する、窒素原子含有アクリル系ブロック共重合体及びウレタン系高分子分散剤等が挙げられる。
塩基性樹脂型分散剤は、塩基性基をリン酸やスルホン酸で中和して使用できる。
【0056】
本発明の近赤外線吸収組成物は、塩基性樹脂型分散剤を含むことが好ましく、3級アミノ基や4級アンモニウム塩を色素吸着基として有する樹脂型分散剤がより好ましい。
【0057】
市販の樹脂型分散剤は、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk-101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、167、168、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2009、2010、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155、2163、2164またはAnti-Terra-U、203、204、またはBYK-P104、P104S、220S、6919、21116、21324またはLactimon、Lactimon-WSまたはBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE-3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、56000、76500等、BASF社製のEFKA-46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503、等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
【0058】
樹脂型分散剤は、単独、または2種類以上を併用して使用できる。
【0059】
樹脂型分散剤の含有量は、色素全量に対して3~200質量部が好ましく、5~100質量部がより好ましい。適量含有すると被膜を形成し易い。
【0060】
<バインダ樹脂>
本発明の近赤外線吸収組成物は、バインダ樹脂を含むことができる。バインダ樹脂は、400~700nmの全波長領域において透過率が80%以上の樹脂である。なお、透過率は、95%以上が好ましい。バインダ樹脂は硬化性の面でいうと、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂等が挙げられる。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂、または熱硬化樹脂に活性エネルギー線反応性官能基を有しても良い。また、バインダ樹脂は、物性面でいうと、現像性の観点からアルカリ可溶性樹脂が好ましい。アルカリ可溶性は、光学フィルタ作製時のアルカリ現像工程において現像溶解性を付与するためのものであり、酸性基が必要である。
【0061】
バインダ樹脂は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0062】
バインダ樹脂の含有量は、色素100質量部に対して、20~400質量部が好ましく、50~250質量部がより好ましい。適量含有すると被膜を容易に形成できる上、良好な色特性が得やすい。
【0063】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
アルカリ可溶性を有する熱可塑性樹脂は、例えば、カルボキシル基、スルホン基等の酸性基を有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性を有する熱可塑性樹脂は、例えば、酸性基を有するアクリル樹脂、α-オレフィン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、又はイソブチレン/(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの中でも現像性、耐熱性、透明性が向上する面で酸性基を有するアクリル樹脂、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体が好ましい。
【0064】
<活性エネルギー線硬化性アルカリ可溶性樹脂>
活性エネルギー線硬化性アルカリ可溶性樹脂は、エチレン性不飽和二重結合を有することが好ましい。エチレン性不飽和二重結合は、例えば以下に示す(i) (ii)の方法で導入できる。活性エネルギー線による効果で樹脂は、3次元架橋されることで架橋密度が上がり、薬品耐性が向上する。
【0065】
[方法(i)]
方法(i)は、例えば、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体と、他の単量体とを共重合して得られた共重合体の側鎖エポキシ基に、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和一塩基酸のカルボキシル基を付加反応させる。次いで、生成した水酸基に、多塩基酸無水物を反応させることで、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を導入する方法である。
【0066】
エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも不飽和一塩基酸との反応性の観点で、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0067】
不飽和一塩基酸は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o-、m-、p-ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体等のモノカルボン酸等が挙げられる。
【0068】
多塩基酸無水物は、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。なお、カルボキシル基の数を増やす等、必要に応じて、トリメリット酸無水物等のトリカルボン酸無水物を用いたり、ピロメリット酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物を用いて、残った無水物基を加水分解したりすること等もできる。
【0069】
他の単量体としては、以下のものが挙げられる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、又はエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、
あるいは、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、又はアクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類スチレン、又はα-メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、又はイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、又はプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類等が挙げられる。
【0070】
あるいは、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、1,2-ビスマレイミドエタン1,6-ビスマレイミドヘキサン、3-マレイミドプロピオン酸、6,7-メチレンジオキシ-4-メチル-3-マレイミドクマリン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N-(1-ピレニル)マレイミド、N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミド、N-(4-アミノフェニル)マレイミド、N-(4-ニトロフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ブロモメチル-2,3-ジクロロマレイミド、N-スクシンイミジル-3-マレイミドベンゾエート、N-スクシンイミジル-3-マレイミドプロピオナート、N-スクシンイミジル-4-マレイミドブチラート、N-スクシンイミジル-6-マレイミドヘキサノアート、N-[4-(2-ベンゾイミダゾリル)フェニル]マレイミド、9-マレイミドアクリジン等のN-置換マレイミド類、EO変性クレゾールアクリレート、n-ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、フェノールのエチレンオキサイド(EO)変性(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールのEO又はプロピレンオキサイド(PO)変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのPO変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
方法(i)の類似の方法として、例えば、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と、他の単量体とを共重合で得られた共重合体の側鎖カルボキシル基の一部に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を付加反応させ、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を導入する方法である。
【0072】
[方法(ii)]
方法(ii)は、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体と、他の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖水酸基に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体のイソシアネート基を反応させる方法である。
【0073】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体は、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-若しくは3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-若しくは3-若しくは4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、又はシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルメタアクリレート類が挙げられる。また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシド等を付加重合させたポリエーテルモノ(メタ)アクリレートや、ポリγ-バレロラクトン、ポリε-カプロラクトン、及び/又はポリ12-ヒドロキシステアリン酸等を付加したポリエステルモノ(メタ)アクリレートも挙げられる。塗膜異物抑制の観点から、2-ヒドロキシエチルメタアクリレート、又はグリセロールモノ(メタ)アクリレートが好ましく、また感度の点からは2個以上6個以下の水酸基を有するものを使用することが感度の点から好ましく、グリセロールモノ(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0074】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体は、例えば、2-(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、又は1,1-ビス〔メタアクリロイルオキシ〕エチルイソシアネート等が挙げられる。
【0075】
アルカリ可溶性樹脂を構成できるその他単量体は、既に説明したその他のエチレン性不飽和単量体に加え、N-置換マレイミド類、アルキレンオキシ基含有単量体、リン酸エステル基含有エチレン性不飽和単量体、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
N-置換マレイミド類は、例えば、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、1,2-ビスマレイミドエタン1,6-ビスマレイミドヘキサン、3-マレイミドプロピオン酸、6,7-メチレンジオキシ-4-メチル-3-マレイミドクマリン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N-(1-ピレニル)マレイミド、N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミド、N-(4-アミノフェニル)マレイミド、N-(4-ニトロフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ブロモメチル-2,3-ジクロロマレイミド、N-スクシンイミジル-3-マレイミドベンゾエート、N-スクシンイミジル-3-マレイミドプロピオナート、N-スクシンイミジル-4-マレイミドブチラート、N-スクシンイミジル-6-マレイミドヘキサノアート、N-[4-(2-ベンゾイミダゾリル)フェニル]マレイミド、9-マレイミドアクリジン等が挙げられる。アルキレンオキシ基含有単量体は、例えば、EO変性クレゾールアクリレート、n-ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、フェノールのエチレンオキサイド(EO)変性(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールのEO又はプロピレンオキサイド(PO)変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのPO変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0076】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体は、既に説明した単量体を使用できる。
【0077】
リン酸エステル基含有エチレン性不飽和単量体は、例えば、上記水酸基含有エチレン性不飽和単量体の水酸基に、たとえば5酸化リンやポリリン酸等のリン酸エステル化剤を反応させた化合物である。
【0078】
<エチレン性不飽和二重結合を有しないアルカリ可溶性樹脂>
本発明の近赤外線吸収組成物は、被膜の硬化度を調整するために、エチレン性不飽和二重結合を有しないアルカリ可溶性樹脂を含有できる。
【0079】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、アルカリ現像溶解性を付与するために、2,000以上40,000以下であり、3,000以上30,000以下が好ましく、4,000以上20,000以下がより好ましい。また、Mw/Mnの値は10以下であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が2,000未満であると基板に対する密着性が低下し、露光パターンが残りにくくなる。40,000を超えるとアルカリ現像溶解性が低下し、残渣が発生しパターンの直線性が悪化する。
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ現像溶解性を付与するために50以上200以下(KOHmg/g)であり、70以上180以下の範囲が好ましく、より好ましくは90以上170以下の範囲である。酸価が50未満であるとアルカリ現像溶解性が低下し、残渣が発生しパターンの直線性が悪化する。200を超えると基板への密着性が低下し、露光パターンが残りにくくなる。
【0080】
バインダ樹脂の合成に使用する各原料は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0081】
<熱硬化性化合物>
本発明においては、バインダ樹脂として熱可塑性樹脂と併用して、さらに熱硬化性化合物を含むことが出来る。本発明の近赤外線吸収組成物を用いて光学フィルタを作製する際、熱硬化性化合物を含むことで、フィルタセグメントの焼成時に反応し塗膜の架橋密度を高め、そのためフィルタセグメントの耐熱性が向上し、フィルタセグメント焼成時の顔料凝集が抑えられ、コントラスト比が向上するという効果が得られる。
【0082】
熱硬化性化合物は、低分子化合物でもよく、樹脂のような高分子量化合物でもよい。
熱硬化性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ベンゾグアナミン化合物、ロジン変性マレイン酸化合物、ロジン変性フマル酸化合物、メラミン化合物、尿素化合物、およびフェノール化合物が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の近赤外線吸収組成物ではエポキシ化合物およびオキセタン化合物が好ましく用いられる。
【0083】
<重合性化合物>
本発明の近赤外線吸収組成物、重合性化合物、及び光重合開始剤を含むことによって感光性近赤外線吸収組成物とすることができる。重合性化合物には、紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれる。
【0084】
重合性化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0085】
(酸基を有する重合性化合物)
重合性化合物は、酸基を有する光重合性単量体を含有できる。酸基は、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基等が挙げられる。
【0086】
酸基を有する光重合性単量体は、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との遊離水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート類と、ジカルボン酸類とのエステル化物;多価カルボン酸と、モノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類とのエステル化物等が挙げられる。具体例は、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のモノヒドロキシオリゴアクリレート又はモノヒドロキシオリゴメタクリレート類と、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸等のジカルボン酸類との遊離カルボキシル基含有モノエステル化物;プロパン-1,2,3-トリカルボン酸(トリカルバリル酸)、ブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸、ベンゼン-1,3,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸等のトリカルボン酸類と、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のモノヒドロキシモノアクリレート又はモノヒドロキシモノメタクリレート類との遊離カルボキシル基含有オリゴエステル化物等が挙げられる。
【0087】
(ウレタン結合を有する重合性化合物)
重合性化合物は、エチレン性不飽和結合とウレタン結合を有する単量体を含有できる。前記単量体は、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレートに多官能イソシアネートを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレートや、アルコールに多官能イソシアネートを反応させ、さらに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0088】
水酸基を有する(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルプロピルメタクリレート、エポキシ基含有化合物とカルボキシ(メタ)アクリレートの反応物、水酸基含有ポリオールポリアクリレート等が挙げられる。
【0089】
また、多官能イソシアネートは、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0090】
重合性化合物は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0091】
重合性化合物の配合量は、近赤外線吸収組成物の不揮発分100質量%中、1~50質量%が好ましく、2~40質量部がより好ましい。適量配合すると硬化性及び現像性がより向上する。
【0092】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリノ)フェニル]-2-(フェニルメチル)-1-ブタノン、又は2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、又はベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、又は3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、又は2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、又は2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等のトリアジン系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、又はエタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、又はジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物;9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物;ボレート系化合物;カルバゾール系化合物;イミダゾール系化合物;あるいは、チタノセン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0093】
光重合開始剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0094】
(オキシムエステル系化合物)
オキシムエステル系化合物は、紫外線を吸収することによってオキシムのN-O結合の解裂がおこり、イミニルラジカルとアルキロキシラジカルを生成する。これらのラジカルは更に分解することにより活性の高いラジカルを生成するため、少ない露光量でパターンを形成させることができる。近赤外線吸収組成物の色素濃度が高い場合、塗膜の紫外線透過率が低くなり塗膜の硬化度が低くなることがあるが、オキシムエステル系化合物は高い量子効率を持つため好適に使用される。
【0095】
オキシムエステル系化合物は、特開2007-210991号公報、特開2009-179619号公報、特開2010-037223号公報、特開2010-215575号公報、特開2011-020998号公報等に記載のオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。
【0096】
光重合開始剤の含有量は、色素100質量部に対し、2~50質量部が好ましく、2~30質量部がより好ましい。適量配合すると光硬化性及び現像性がより向上する。
【0097】
<増感剤>
さらに、本発明の近赤外線吸収組成物には、増感剤を含有させることができる。
増感剤としては、カルコン誘導体、ジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2-ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ-ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、又はミヒラーケトン誘導体、α-アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’-ジエチルイソフタロフェノン、3,3’又は4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0098】
上記増感剤の中で、特に好適に増感しうる増感剤としては、チオキサントン誘導体、ミヒラーケトン誘導体、カルバゾール誘導体が挙げられる。さらに具体的には、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン、N-エチルカルバゾール、3-ベンゾイル-N-エチルカルバゾール、3,6-ジベンゾイル-N-エチルカルバゾール等が用いられる。
【0099】
さらに具体的には、大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、及び「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)に記載の増感剤が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、その他、紫外から近赤外域にかけての光に対して吸収を示す増感剤を含有させることもできる。
【0100】
増感剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0101】
増感剤の含有量は、光重合開始剤100質量部に対し、3~60質量部でが好ましく、5~50質量部がより好ましい。適量含有すると硬化性、現像性がより向上する。
【0102】
<チオール系連鎖移動剤>
本発明の近赤外線吸収組成物は連鎖移動剤として、チオール系連鎖移動剤を含むことが好ましい。チオールを光重合開始剤とともに使用することにより、光照射後のラジカル重合過程において、連鎖移動剤として働き、酸素による重合阻害を受けにくいチイルラジカルが発生するので、得られる近赤外線吸収組成物は高感度となる。
【0103】
また、チオール基が2個以上あるメチレン、エチレン基等の脂肪族基に結合した多官能脂肪族チオールが好ましい。より好ましくは、チオール基が4個以上ある多官能脂肪族チオールである。官能基数が増えることで、重合開始機能が向上し、パターンにおける表面から基材付近まで硬化させることができる。
【0104】
多官能チオールとしては、例えば、ヘキサンジチオール 、デカンジチオール 、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンなどが挙げられ、好ましくは、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートが挙げられる。
【0105】
チオール系連鎖移動剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0106】
チオール系連鎖移動剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の不揮発分100質量%中、0.1~10質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましい。適量含有すると光感度、テーパー形状が向上し、被膜表面にシワが発生し難くなる。
【0107】
<重合禁止剤>
本発明の近赤外線吸収組成物は、重合禁止剤を含有できる。これによりフォトリソグラフィー法の露光時にマスクの回折光による感光を抑制できるため、所望の形状のパターンが得やすくなる。
【0108】
重合禁止剤としては、例えば、カテコール、レゾルシノール、1,4-ヒドロキノン、2-メチルカテコール、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、2-エチルカテコール、3-エチルカテコール、4-エチルカテコール、2-プロピルカテコール、3-プロピルカテコール、4-プロピルカテコール、2-n-ブチルカテコール、3-n-ブチルカテコール、4-n-ブチルカテコール、2-tert-ブチルカテコール、3-tert-ブチルカテコール、4-tert-ブチルカテコール、3,5-ジ-tert-ブチルカテコール等のアルキルカテコール系化合物、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、2-エチルレゾルシノール、4-エチルレゾルシノール、2-プロピルレゾルシノール、4-プロピルレゾルシノール、2-n-ブチルレゾルシノール、4-n-ブチルレゾルシノール、2-tert-ブチルレゾルシノール、4-tert-ブチルレゾルシノール等のアルキルレゾルシノール系化合物、メチルヒドロキノン、エチルヒドロキノン、プロピルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン等のアルキルヒドロキノン系化合物、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン等のホスフィン化合物、トリオクチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド化合物、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等のホスファイト化合物、ピロガロール、フロログルシンなどが挙げられる。
【0109】
重合禁止剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の不揮発分100質量%中、0.01~0.4質量部が好ましい。この範囲において、重合禁止剤の効果が大きくなり、テーパーの直線性や塗膜のシワ、パターン解像性等が良好になる。
【0110】
<紫外線吸収剤>
発明の近赤外線吸収組成物は、紫外線吸収剤を含んでも良い。本発明における紫外線吸収剤とは、紫外線吸収機能を有する有機化合物であり、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、及びサリシレート系化合物などが挙げられる。
【0111】
紫外線吸収剤の含有量は、光重合開始剤と紫外線吸収剤との合計100質量%中、5~70質量%が好ましい。適量含有すると現像後の解像性がより向上する。
【0112】
また、光重合開始剤と紫外線吸収剤の合計含有量は、近赤外線吸収組成物の不揮発分100質量%中、1~20質量%が好ましい。適量含有すると基板と被膜の密着性がより向上し、良好な解像性が得られる。
【0113】
ベンゾトリアゾール系化合物としては2-(5メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α, α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、5%の2-メトキシ-1-メチルエチルアセテートと95%のベンゼンプロパン酸,3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステルの混合物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、メチル 3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートが挙げられる。その他ベンゾトリアゾール構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0114】
トリアジン系化合物としては、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2‐[4,6‐ビス(2,4‐ジメチルフェニル)‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル]‐5‐[3‐(ドデシルオキシ)‐2‐ヒドロキシプロポキシ]フェノール、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルの反応生成物、2,4-ビス「2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル」-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。その他トリアジン構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0115】
ベンゾフェノン系化合物としては、2,4-ジ-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2’-ジ-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。その他ベンゾフェノン構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0116】
サリチル酸エステル系化合物としては、サリチル酸フェニル、サリチル酸p-オクチルフェニル、サリチル酸p-tertブチルフェニル等が挙げられる。その他サリチル酸エステル構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0117】
<酸化防止剤>
本発明の近赤外線吸収組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤は、近赤外線吸収組成物に含まれる光重合開始剤や熱硬化性化合物が、熱硬化やITOアニール時の熱工程によって酸化し黄変することを防ぐため、塗膜の透過率を向上できる。特に着色組成物の着色剤濃度が高い場合、塗膜架橋成分量が少なくなるため高感度の架橋成分の使用や、光重合開始剤の増量といった対応を取るため熱工程の黄変が強くなる現象が見られる。そのため、酸化防止剤を含むことで、加熱工程時の酸化による黄変を防止し、高い塗膜の透過率を得る事ができる。
【0118】
酸化防止剤は、例えば、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系、及びヒドロキシルアミン系の化合物が挙げられる。なお、本発明で酸化防止剤は、ハロゲン原子を含有しない化合物が好ましい。
【0119】
ここれらの中でも、塗膜の透過率と感度の両立の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が好ましい。
【0120】
酸化防止剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0121】
また酸化防止剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の固形分100質量%中、0.5~5.0質量%の場合、透過率、分光特性、及び感度が良好であるためより好ましい。
【0122】
<レベリング剤>
本発明の近赤外線吸収組成物には、透明基板上での組成物の塗布性、着色被膜の乾燥性を良好することを目的として、レベリング剤を添加することが好ましい。レベリング剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0123】
本発明の近赤外線吸収組成物に界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の添加量は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005~1.0質量%である。この範囲内であることで、近赤外線吸収組成物の塗布性とパターン密着性、透過率のバランスが良好となる。
本発明の近赤外線吸収組成物は、界面活性剤を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0124】
<貯蔵安定剤>
本発明の近赤外線吸収組成物には、組成物の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。貯蔵安定剤としては、例えば、ベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸およびそのメチルエーテル、t-ブチルピロカテコール、テトラエチルホスフィン、テトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩等が挙げられる。貯蔵安定剤は、着色剤の全量を基準(100質量%)として、0.1~10質量%の量で用いることができる。
【0125】
<密着向上剤>
本発明の近赤外線吸収組成物には、基材との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることができる。密着向上剤による密着性が向上することにより、細線の再現性が良好となり解像度が向上する。
【0126】
密着向上剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン類、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノシラン類、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト類、p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル類、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド類、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド類、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート類などのシランカップリング剤が挙げられる。密着向上剤は、近赤外線吸収組成物中の着色剤100質量部に対し、0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部の量で用いることができる。この範囲内で効果が大きくなり、密着性、解像性、感度のバランスが良好であるためより好ましい。
【0127】
<近赤外線吸収組成物の製造方法>
本発明の近赤外線吸収組成物は、色素を、分散剤、バインダ樹脂などの色素担体及び/又は溶剤中に、好ましくは分散助剤(色素誘導体や界面活性剤)と一緒に、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、又はアトライター等の各種分散手段を用いて微細に分散して製造することができる(色素分散体)。このとき、2種以上の色素等を同時に色素担体に分散しても良いし、別々に色素担体に分散したものを混合しても良い。染料等、色素の溶解性が高い場合、具体的には使用する溶剤への溶解性が高く、攪拌により溶解、異物が確認されない状態であれば、上記のような微細に分散して製造する必要はない。
【0128】
また、感光性近赤外線吸収組成物(レジスト材)として用いる場合には、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型近赤外線吸収組成物として調製することができる。溶剤現像型あるいはアルカリ現像型近赤外線吸収組成物は、前記色素分散体と、光重合性単量体及び/又は光重合開始剤と、必要に応じて、溶剤、その他の分散助剤、及び添加剤等を混合して調整することができる。光重合開始剤は、近赤外線吸収組成物を調製する段階で加えてもよく、調製した近赤外線吸収組成物に後から加えてもよい。
【0129】
<溶剤>
本発明の近赤外線吸収組成物には、ガラス等の基板上に乾燥膜厚が0.2~5μmとなるように塗布して色素膜を形成することを容易にするために溶剤を含有させる。溶剤は、近赤外線吸収組成物の塗布性が良好であることに加え、近赤外線吸収組成物の各成分の溶解性、さらには安全性を考慮して選定される。
【0130】
溶剤としては、当該分野で通常使用される溶剤を用いることが出来、沸点、SP値、蒸発速度、粘度などの性能を勘案し、塗布条件(速度、乾燥条件など)に合わせて適宜、単独または混合して使用される。
【0131】
使用される溶剤としては、例えば、エステル溶剤(分子内に-COO-を含み、-O-を含まない溶剤)、エーテル溶剤(分子内に-O-を含み、-COO-を含まない溶剤)、エーテルエステル溶剤(分子内に-COO-と-O-とを含む溶剤)、ケトン溶剤(分子内に-CO-を含み、-COO-を含まない溶剤)、アルコール溶剤(分子内にOHを含み、-O-、-CO-及び-COO-を含まない溶剤)、芳香族炭化水素溶剤、アミド溶剤、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0132】
上記の溶剤のうち、塗布性、乾燥性の点から、1atmにおける沸点が120℃以上180℃以下である有機溶剤を含むことが好ましい。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等がより好ましい。
【0133】
<粗大粒子の除去>
本発明の近赤外線吸収組成物は、重力加速度3000~25000Gの遠心分離、焼結フィルタやメンブレンフィルタによる濾過等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子及び混入した塵の除去を行うことが好ましい。このように近赤外線吸収組成物は、実質的に0.5μm以上の粒子を含まないことが好ましい。より好ましくは0.3μm以下であることが好ましい。
【0134】
<光学フィルタの製造方法>
本発明の光学フィルタは、印刷法またはフォトリソグラフィ法により、製造することができる。印刷法によるフィルタセグメントの形成は、近赤外線吸収組成物の印刷と乾燥を行うことでパターン化ができるため、フィルタの製造法は、低コストであり、かつ量産性に優れている。さらに、印刷技術の発展により高い寸法精度および平滑度を有する微細パターンの印刷を行うことができる。印刷を行うためには、印刷の版上にて、あるいはブランケット上にてインキが乾燥、固化しないような組成とすることが好ましい。また、印刷機上でのインキの流動性制御も重要であり、分散剤や体質顔料によってインキ粘度の調整も行うことができる。
【0135】
フォトリソグラフィ法によりフィルタセグメントを形成する場合は、溶剤現像型またはアルカリ現像型レジスト材として調製した近赤外線吸収組成物を、基板上に、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が0.2~5μmとなるように塗布する。必要により乾燥された膜には、この膜と接触あるいは非接触状態で設けられた所定のパターンを有するマスクを通して紫外線露光を行う。その後、溶剤またはアルカリ現像液に浸漬するかもしくはスプレーなどにより現像液を噴霧して未硬化部を除去して所望のパターンを形成したのち、同様の操作を他色について繰り返してフィルタを製造することができる。さらに、レジスト材の重合を促進するため、必要に応じて加熱を施すこともできる。フォトリソグラフィ法によれば、上記印刷法より精度の高いフィルタが製造できる。
【0136】
基板は特に限定されるのではないが、形状として、シート状、フィルム状又は板状の透明基材を用いることができる。色彩も無色、有色、特に限定されるものではない。透明基材の材質は、透明性が高い素材、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)。メチルメタクリレート系共重合物等のアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ガラス板等が挙げられる。
【0137】
現像は、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。なお、紫外線露光感度を上げるために、上記レジスト材を塗布乾燥後、水溶性あるいはアルカリ水溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し酸素による重合阻害を防止する膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。
【0138】
本発明の光学フィルタは、上記方法の他に電着法、転写法、インクジェット法などによっても製造できる。
【0139】
<用途>
近赤外線吸収性組成物は、光学フィルタとして使用できる。
例えば、デジタルカメラは、撮像する際に受光する光を赤、緑、青のフィルタで分解し、光を電気信号に変えるフォトダイオードに送ることで、色を認識する。しかしながら、フォトダイオードは近赤外線にも反応して電気信号に変えてしまうので、これを遮断するフィルタが必要である。近赤外線吸収性組成物から形成した被膜または成形体は、この近赤外線を遮断するフィルタとして使用できる。近赤外線を遮断するフィルタは、可視領域に吸収が少ないことが重要である。可視領域に吸収が多いと受光する光に色がついてしまい、フォトダイオードの色の認識に悪影響が出る。本発明の近赤外線吸収顔料は可視領域に吸収が少なく不可視性が高いため、フォトダイオードの色の認識に対する悪影響が少ない。
【0140】
また、例えば、スマートフォン、タブレットパソコン等、他には銀行ATM、マルチメディア端末等にはセキュリティ保護のため指紋認証、手指静脈認証等の生体認証機能が搭載されている。特にスマートフォン、タブレットパソコンに用いる指紋認証技術の発展は目まぐるしく、認証範囲が画面サイズに増大(フルスクリーン化)するのに伴い、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等にディスプレイ内蔵型指紋認証センサが開発されている。
しかし、ディスプレイ内蔵型指紋センサはディスプレイ内に設置された各種光源を指紋に照射して、その反射光をセンシングするという光学方式が多いため、外部の不正な光(太陽光やLED照明のような広範囲の波長を持ち、且つ、強い光)がセンサに入射されると、撮像時のノイズになる問題があり、屋外での使用には精度面でやや不安が残る。近赤外線吸収性組成物から形成した被膜または成形体は、このノイズを遮断するフィルタとして使用できる。
センシングのための光源の波長に合わせて、その他の色素を含有させることで、生体認証の精度をより高めることができる。
指紋認証のために570nm程度の光源を用いる場合は、その他の色素として、例えば、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントグリーン62、C.I.ピグメントグリーン63等を含有すると良い。940nm程度の光源を用いる場合は、黒色色素、複数の色素を組み合わせて黒色を呈する色素組成物等を含有すると良い。なお、本発明はこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0141】
なお、近赤外線吸収性組成物を使用した光学フィルタには、近赤外線カットフィルタ及び近赤外線透過フィルタがある。近赤外線カットフィルタは、おもに近赤外線吸収色素により構成され、近赤外線を遮断し可視光を透過させる役割を持つ。一方、近赤外線透過フィルタは、近赤外線吸収色素の他に可視光を吸収する有色色素により構成し、可視光と該近赤外線吸収色素が吸収する波長領域の近赤外線を遮断し、さらにそれより長波長の近赤外線を透過させる役割を持つ。
【実施例】
【0142】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、「部」とは「重量部」を意味する。また、「PGMAC」とはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味する。
【0143】
(スクアリリウム色素の同定方法)
本発明に用いたスクアリリウム色素の同定には、MALDI TOF-MSスペクトルを用いた。MALDI TOF-MSスペクトルは、ブルカー・ダルトニクス社製MALDI質量分析装置autoflexIIIを用い、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物の同定を行った。
【0144】
(その他の微細化色素(PB-1)~(PB-4)の同定方法)
本発明に用いたその他の微細化色素(PB-1)~(PB-4)の同定は、飛行時間型質量分析装置(autoflexIII(TOF-MS)、ブルカー・ダルトニクス社製)を用いて得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致、並びに、元素分析装置(2400CHN元素分析装置、パーキン・エルマー社製)を用いて得られる炭素、水素および窒素の比率と、理論値との一致により行った。また、ハロゲン原子の置換数は、顔料を酸素燃焼フラスコ法にて燃焼させ、該燃焼物を水に吸収させた液体を、イオンクロマトグラフ(ICS-2000イオンクロマトグラフィー、DIONEX社製)によりハロゲン量を定量し、ハロゲン原子の置換数に換算することで得た。
【0145】
(その他の樹脂型分散剤およびバインダ樹脂の酸価)
樹脂型分散剤およびバインダ樹脂の酸価は、0.1Nの水酸化カリウム・エタノール溶液を用い、電位差滴定法によって求めた。樹脂および樹脂型分散剤の酸価は、不揮発分の酸価を示す。
【0146】
(その他の樹脂型分散剤およびバインダ樹脂の重量平均分子量(Mw))
樹脂型分散剤およびバインダ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
【0147】
(塩基性樹脂型分散剤の重量平均分子量(Mw))
塩基性樹脂型分散剤の重量平均分子量(Mw)は、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。
装置としてHLC-8320GPC(東ソー株式会社製)を用い、分離カラムを2本直列に繋ぎ、両方の充填剤には「TSKgel SUPER-AW3000」を使用し、オーブン温度40℃、溶離液として3mMトリエチルアミン及び10mM LiBrのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を用い、流速0.6ml/minで測定した。サンプルは1wt%の上記溶離液からなる溶剤に溶解し、10マイクロリットル注入した。分子量はいずれもポリスチレン換算値である。
【0148】
(樹脂型分散剤のアミン価)
樹脂型分散剤のアミン価は、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって求めた後、水酸化カリウムの当量に換算した。樹脂型分散剤のアミン価は、不揮発分のアミン価を示す。
【0149】
(樹脂型分散剤の4級アンモニウム塩価)
樹脂型分散剤の4級アンモニウム塩価は、5%クロム酸カリウム水溶液を指示薬として、0.1Nの硝酸銀水溶液で滴定して求めた後、水酸化カリウムの当量に換算した。下記樹脂型分散剤の4級アンモニウム塩価は、不揮発分の4級アンモニウム塩価を示す。
【0150】
<微細化スクアリリウム色素(P)の製造>
(スクアリリウム色素(A-1_1)の合成)
トルエン400部に、1,8-ジアミノナフタレン40.0部、シクロヘキサノン25.1部、p-トルエンスルホン酸一水和物0.087部を混合し、窒素ガスの雰囲気中で加熱攪拌し、3時間還流させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により反応系中から除去した。反応終了後、トルエンを蒸留して得られた暗茶色固体をアセトンで抽出し、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製した。得られた茶色固体を、トルエン240部とn-ブタノール160部の混合溶媒に溶解させ、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン13.8部を加えて、窒素ガスの雰囲気中で加熱撹拌し、8時間還流反応させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により反応系中から除去した。
反応終了後、溶媒を蒸留し、得られた反応混合物を攪拌しながら、ヘキサン200部を加えた。得られた黒茶色沈殿物を濾別した後、順次ヘキサン、エタノールおよびアセトンで洗浄を行い、減圧下で乾燥させ、スクアリリウム色素(A-1_1)61.9部(収率:92%)を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、スクアリリウム色素(A-1_1)であることを同定した。
【0151】
(スクアリリウム色素(A-1_2)の合成)
スクアリリウム色素(A-1_1)の合成で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、3,5-ジメチルシクロヘキサノン32.2部を使用した以外は、スクアリリウム色素(A-1_1)の合成と同様の操作を行い、スクアリリウム色素(A-1_2)72.6部(収率:98%)を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、スクアリリウム色素(A-1_2)であることを同定した。
【0152】
(スクアリリウム色素(A-1_3)の合成)
スクアリリウム色素(A-1_1)の合成で使用したシクロヘキサノン25.1部の代わりに、4-メチルシクロヘキサノン28.6部を使用した以外は、スクアリリウム色素(A2-1)の合成と同様の操作を行い、スクアリリウム色素(A-1_3)67.2部(収率:95%)を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、スクアリリウム色素(A-1_3)であることを同定した。
【0153】
(スクアリリウム色素(A-1_4)の合成)
特許文献WO2017/130825の実施例で使用されているスクアリリウム化合物Q-39を、スクアリリウム色素(A-1_4)として使用した。
【0154】
(スクアリリウム色素(A-2_1)の合成)
トルエン400部に、1,8-ジアミノナフタレン40.0部、9-フルオレノン46.0部、p-トルエンスルホン酸一水和物0.087部を混合し、窒素ガスの雰囲気中で加熱攪拌し、3時間還流させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により系中から除去した。反応終了後、トルエンを蒸留して得られた暗茶色固体をアセトンで抽出し、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製した。得られた茶色固体を、トルエン240部とn-ブタノール160部の混合溶媒に溶解させ、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン13.8部を加えて、窒素ガスの雰囲気中で加熱撹拌し、8時間還流反応させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により系中から除去した。反応終了後、溶媒を蒸留し、得られた反応混合物を攪拌しながら、ヘキサン200部を加えた。得られた黒茶色沈殿物を濾別した後、順次ヘキサン、エタノールおよびアセトンで洗浄を行い、減圧下で乾燥させ、スクアリリウム色素(A-2_1)84.6部(収率:97%)を得た。TOF-MSによる質量分析および元素分析の結果、スクアリリウム色素(A-2_1)であることを同定した。
【0155】
(スクアリリウム色素(A-2_2)の合成)
スクアリリウム色素(A-2_1)の合成で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2,7-ビス(トリフルオロメチル)-9-フルオレノン80.7部を使用した以外は、スクアリリウム色素(A-2_1)の合成と同様の操作を行い、スクアリリウム色素(A-2_2)109.8部(収率:91%)を得た。TOF-MSによる質量分析および元素分析の結果、スクアリリウム色素(A-2_2)であることを同定した。
【0156】
(スクアリリウム色素(A-2_3)の合成)
スクアリリウム色素(A-2_1)の合成で使用した9-フルオレノン46.0部の代わりに、2-ヒドロキシ-9-フルオレノン50.1部を使用した以外は、スクアリリウム色素(A-2_1)の合成と同様の操作を行い、スクアリリウム色素(A-2_3)83.9部(収率:92%)を得た。TOF-MSによる質量分析および元素分析の結果、スクアリリウム色素(A-2_3)であることを同定した。
【0157】
(スクアリリウム色素(A-2_4)の合成)
特許文献WO2017/104283の実施例で使用されている化合物4を、スクアリリウム色素(A-2_4)として使用した。
【0158】
(スクアリリウム色素の溶剤処理と微細化)
[溶剤処理工程]
スクアリリウム色素(A-1_1)50部をN-メチルピロリドン250部に混合し、23℃で24時間攪拌した。その後、濾過を行い、メタノール150部で洗浄した後に取り出し、80℃で一昼夜乾燥させ、粉体25部を得た。
[微細化工程]
得られた粉体10部、塩化ナトリウム100部、エチレングリコール12.5部をステンレス製ガロンニーダー(井上製作所製)中に仕込み、60℃ で12時間混練した。次に、混練した混合物を温水に投入し、約80℃ に加熱しながら1 時間攪拌してスラリー状として、濾過および水洗をして食塩およびジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ粉砕することにより、9.4部の微細化されたスクアリリウム色素(P-1_1)を得た。
[平均粒子径]
顔料の平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で測定した。具体的には、個々の顔料の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、平均をその顔料粒子の粒径とした。次に、100個以上の顔料粒子について、それぞれの粒子の体積( 重量) を、求めた粒径の立方体と近似して求め、体積平均粒径を平均一次粒子径とした。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)を用いた。
この方法で測定した結果、平均一次粒子径は50nmであった。
[成分比率]
5.0mgのスクアリリウム色素(P-1_1)を100mlのメスフラスコに入れ、HPLC用THFを加えて超音波を30分照射して溶解させ、100mlのTHF溶液を調整した。この溶液を用いて、上記装置及び上記条件により色素化合物BのHPLC測定を行った。
HPLC測定は、移動相としてアセトニトリルと水とを8:2の体積比で混合した混合溶液を用いた条件において逆相系液体クロマトグラフィーにより分析した。
その結果、複数のピークが示された。
具体的には、保持時間が12±1分に現れるピーク(ピーク1)、保持時間が42±1分に現れるピーク(ピーク2)、保持時間が46±2分に現れるピーク(ピーク3)、保持時間が50±2分に現れるピーク(ピーク4)、及び保持時間が57±2分に現れるピーク(ピーク5)によって構成されている。
ピーク5の面積は、ピーク1~5の面積の合計に対し、70%であった。
【0159】
スクアリリウム色素(A-1_2)および(A-1_3)は、スクアリリウム色素(A-1_1)と同様に溶剤処理、微細化を行い、微細化スクアリリウム色素(P-1_2)、(P-1_3)とした。なお、スクアリリウム色素(A-1_4)、(A-2_1)~(A-2_4)は、溶剤処理を行っておらず、微細化のみを行い、微細化スクアリリウム色素(P-1_4)、(P-2_1)~(P-2_4)とした。
【0160】
<その他の微細化スクアリリウム色素(PX)の製造>
(その他の微細化スクアリリウム色素(PX-1)の製造)
特許文献2020/013089の実施例で使用されているスクアリリウム化合物SQ-R1を、その他のスクアリリウム色素(X-1)として使用した。その他のスクアリリウム色素(X-1)は、スクアリリウム色素(A-1_4)と同様に微細化を行い、その他の微細化スクアリリウム色素(PX-1)とした。
【0161】
(その他の微細化スクアリリウム色素(PX-2)の製造)
特許文献2020/013089の実施例で使用されているスクアリリウム化合物SQ-1を、その他のスクアリリウム色素(X-2)として使用した。その他のスクアリリウム色素(X-2)は、スクアリリウム色素(A-1_4)と同様に微細化を行い、その他の微細化スクアリリウム色素(PX-2)とした。
【0162】
上記の通り製造したスクアリリウム色素とその他のスクアリリウム色素の構造は、以下の通りである。
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
<微細化スクアリリウム色素(P)の最大吸収波長測定>
微細化スクアリリウム色素(P)を、最大吸光度が1程度となるようにNMP(N-メチル-2-ピロリドン)に溶解し、分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて400~1000nmの波長範囲の吸収スペクトルを測定した。結果を表1に示す。
【0167】
【0168】
<色素誘導体1>
下記式(3)で表される化合物を色素誘導体1として使用した。
【0169】
式(3)
【化14】
(式(3)中、Cu-Pcは、銅フタロシアニン構造残基である。)
【0170】
<分散剤溶液の製造>
(塩基性樹脂型分散剤1溶液の製造)
【0171】
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、N,N-ジメチルプロパンジアミン41部、クロロホルム120部を仕込み、室温で撹拌し、メタクリル酸クロリド50部を1時間かけて滴下した。室温で3時間撹拌後、1H-NMRで反応が完結していることを確認したのち、反応溶液を、イオン交換水300部、飽和食塩水200部で順次洗浄後、有機層に硫酸マグネシウム20gを加え、撹拌後、ろ過を行った。得られた溶液中の溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、淡黄色透明の液体として、下記式(4)で表される化合物[b]を58部得た(収率85%)。得られた化合物の同定は、1H-NMRで実施した。
【0172】
【0173】
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メチルメタクリレート15.7部、n-ブチルメタクリレート47.2部、テトラメチルエチレンジアミン13.2部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチル2.6部、塩化第一銅5.6部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMAc)100部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして固形分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応槽に、PGMAc25部、第二ブロックモノマーとして、上記化合物[b]30.3部を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。上記式(4)で表される化合物[b]投入から2時間後、重合溶液をサンプリングして固形分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上であることを確認した。
さらに、この反応装置に、ベンジルクロライド6.8部を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま3時間撹拌し、その後冷却した。
先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40重量%になるようにPGMAcを添加した。このようにして、固形分当たりのアミン価が70mgKOH/g、4級アンモニウム塩価が30mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)9,800、不揮発分が40重量%の塩基性樹脂型分散剤1溶液を得た。
【0174】
(塩基性樹脂型分散剤2溶液の製造)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、メチルメタクリレート60部、nーブチルメタクリレート20部、テトラメチルエチレンジアミン13.2部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチル9.3部、塩化第一銅5.6部、PGMAc133部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応装置に、PGMAc61部、第二ブロックモノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレート20部(以下、DMという)を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。ジメチルアミノエチルメタクリレート投入から2時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上であることを確認し、反応溶液を室温まで冷却して重合を停止した。
先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40質量%になるようにPGMAcを添加した。このようにして、不揮発分当たりのアミン価が71.4mgKOH/g、重量平均分子量9,900(Mw)、不揮発分が40質量%の塩基性樹脂型分散剤2溶液を得た。
【0175】
(塩基性樹脂型分散剤3溶液の製造)
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、メチルメタクリレート60部、nーブチルメタクリレート20部、テトラメチルエチレンジアミン13.2部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチル9.3部、塩化第一銅5.6部、PGMAc133部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応装置に、PGMAc61部、第二ブロックモノマーとしてメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液25.6部(三菱レイヨン社製「アクリエステルDMC78」)を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド投入から2時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上であることを確認し、反応溶液を室温まで冷却して重合を停止した。
先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40質量%になるようにPGMAcを添加した。このようにして、不揮発分当たりのアミン価が29.4mgKOH/g、重量平均分子量9,800(Mw)、不揮発分が40質量%の塩基性樹脂型分散剤3溶液を得た。
【0176】
(その他の樹脂型分散剤4溶液の製造)
ガス導入管、温度、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メタクリル酸10部、メチルメタクリレート90部、エチルアクリレート50部、tert-ブチルアクリレート50部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を50℃に加熱撹拌し、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール12部を添加した。90℃に昇温し、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90部に加えた溶液を添加しながら7時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。
ピロメリット酸無水物19部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50部、触媒として1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン0.4部を追加し、100℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し、固形分測定で固形分40%となるようプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて希釈し、酸価70mgKOH/g、質量平均分子量8500のその他の樹脂型分散剤4を得た。
【0177】
<バインダ樹脂溶液の製造>
(バインダ樹脂1溶液の製造)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn-ブチルメタクリレート13.3部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸4.3部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、重量平均分子量(Mw)26000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートを添加してバインダ樹脂1溶液を調製した。
【0178】
(バインダ樹脂2溶液の製造)
温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管及び撹拌装置を備えたセパラブル4口フラスコにシクロヘキサノン370部を仕込み、80℃に昇温し、フラスコ内を窒素置換した後、滴下管より、ジシクロペンタニルメタクリレート18部、ベンジルメタクリレート10部、グリシジルメタクリレート18.2部、メタクリル酸メチル25部、及び2,2'-アゾビスイソブチロニトリル2.0部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下後、更に100℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル1.0部をシクロヘキサノン50部で溶解させたものを添加し、更に100℃で1時間反応を続けた。次に、容器内を空気置換に替え、アクリル酸9.3部(グリシジル基の100%)にトリスジメチルアミノフェノール0.5部及びハイドロキノン0.1部を上記容器内に投入し、120℃で6時間反応を続け固形分酸価0.5となったところで反応を終了し、アクリル樹脂の溶液を得た。更に、引き続きテトラヒドロ無水フタル酸19.5部(生成した水酸基の100%)、トリエチルアミン0.5部を加え120℃で3.5時間反応させアクリル樹脂の溶液を得た。
室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加してバインダ樹脂2溶液を調製した。重量平均分子量(Mw)は19000であった。
【0179】
(バインダ樹脂3溶液の製造)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管および撹拌装置を取り付けた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート207部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管より、メタクリル酸20部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成社製「アロニックス(登録商標)M110」)20部、メタクリル酸メチル45部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート8.5部、及び2,2'-アゾビスイソブチロニトリル1.33部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、共重合体樹脂溶液を得た。次に得られた共重合体溶液全量に対して、窒素ガスを停止し乾燥空気を1時間注入しながら攪拌したのちに、室温まで冷却した後、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製「カレンズ(登録商標)MOI」)6.5部、ラウリン酸ジブチル錫0.08部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート26部の混合物を70℃で3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間反応を継続し、アクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2部をサンプリングして180℃、20分間加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加してバインダ樹脂3溶液を調製した。重量平均分子量(Mw)は18000であった。
【0180】
<近赤外線吸収組成物(D)の製造>
[実施例1:近赤外線吸収組成物(D-1)]
(近赤外線吸収組成物(D-1)の製造)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、近赤外線吸収組成物(D-1)を作製した。
微細化スクアリリウム色素(P-1_1) :8.4部
微細化スクアリリウム色素(P-2_1) :3.6部
塩基性樹脂型分散剤1溶液 :9.0部
バインダ樹脂1溶液 :22.0部
PGMAC :57.0部
【0181】
[実施例2~24:近赤外線吸収組成物(D-2)~(D-24)、比較例1~3:近赤外線吸収組成物(D-25)~(D-27)]
(近赤外線吸収組成物(D-2)~(D-27)の製造)
以下、微細化スクアリリウム色素、色素誘導体、分散剤溶液、バインダ樹脂溶液を表2に示す組成、量に変更した以外は近赤外線吸収組成物(D-1)と同様にして、近赤外線吸収組成物(D-2)~(D-27)を作製した。
ただし、実施例11~13、24は参考例である。
【0182】
<近赤外線吸収組成物(D)の分光特性評価>
得られた近赤外線吸収組成物(D)を、1.1mm厚のガラス基板上にスピンコーターを用いて、800nmにおける透過率が1%となるようにスピンコートし、60℃で5分乾燥した後、230℃で20分加熱し、基板を作製した。得られた基板の分光を分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて400~1000nmの波長範囲の吸収スペクトルを測定した。
測定した吸収スペクトルから各範囲の平均透過率(T)を算出し、下記基準で評価した。評価結果を表2に示す。
【0183】
分光特性1:700nm~750nm
○: (T) ≦ 5%
△: 5% < (T) ≦ 10%
×: 10% < (T)
分光特性2:750nm~850nm
○: (T) ≦ 5%
△: 5% < (T) ≦ 10%
×: 10% < (T)
分光特性3:850nm~900nm
○: (T) ≦ 5%
△: 5% < (T) ≦ 10%
×: 10% < (T)
分光特性4:940nm
〇: 50% ≦ (T)
△: 40% ≦ (T) < 50%
×: (T) < 40%
【0184】
<近赤外線吸収組成物(D)の塗布性評価>
得られた近赤外線吸収組成物(D)を板厚0.7mmの360mm×465mmサイズの基板に中心部の膜厚(Aとする)が2.0μmになるようにスピンコートし、60℃で5分乾燥した後、中心部の膜厚と対角線上で中心から200mm部分の膜厚4点の平均値(Bとする)を測定し、下式により膜厚の塗布均一性を評価した。
(A-B)×100/{(A+B)/2} [%]
○: 2%未満
△: 2%以上5%未満
×: 5%以上
【0185】
【0186】
本発明の400~1000nmの範囲における最大吸収波長を800~900nmの間に有するスクアリリウム色素(A)を2種以上含むことにより、700nm~900nmまでの近赤外線カット能力が高く(分光特性1~3)、940nmの近赤外光を透過し(分光特性4)、かつ塗布性良好な着色組成物を得ることができた。
【0187】
<感光性近赤外線吸収組成物(R)の製造>
(実施例25:感光性近赤外線吸収組成物(R-1)の製造)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、0.5μmのフィルタで濾過し、感光性近赤外線吸収組成物(R-1)を作製した。
近赤外線吸収組成物(D-2) :31.3部
バインダ樹脂2溶液 : 8.5部
熱硬化性化合物(E) : 0.8部
重合性化合物(F) : 4.5部
光重合開始剤(G) : 0.7部
増感剤(H) : 0.1部
チオール系連鎖移動剤(I) : 0.2部
重合禁止剤(J) : 0.2部
紫外線吸収剤(K) : 0.2部
酸化防止剤(L) : 0.2部
レベリング剤(M) : 5.0部
貯蔵安定剤(N) : 0.2部
密着向上剤(O) : 0.2部
溶剤(P) :48.4部
【0188】
(実施例26~29:感光性近赤外線吸収組成物(R-2)~(R-5)、
比較例4~5:感光性近赤外線吸収組成物(R-6)~(R-7)の製造)
以下、近赤外線吸収組成物(D-1)を表3に示す近赤外線吸収組成物に変更した以外は感光性近赤外線吸収組成物(R-1)と同様にして、感光性近赤外線吸収組成物(R-2)~(R-7)を作製した。
ただし、実施例28、29は参考例である。
【0189】
感光性近赤外線吸収組成物(R)の製造に使用した材料の詳細は下記の通りである。
【0190】
[熱硬化性化合物(E)]
(E-1-1)2,2'-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物
[EHPE-3150(ダイセル社製)]
(E-1-2)ソルビトールのグリシジルエーテル化エポキシ化合物
[デナコールEX611(ナガセケムテックス株式会社製)]
(E-1-3)イソシアヌル酸トリグリシジル、
(E-1-4)3-エチル-3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル]オキセタン
[アロンオキセタンOXT-221(東亞合成株式会社製)]
以上、(E-1-1)~(E-1-4)をそれぞれ同量混合し、熱硬化性化合物(E)とした。
【0191】
[重合性化合物(F)]
(F-1)トリメチロールプロパントリアクリレート
[アロニックスM309(東亞合成株式会社製)]
(F-2)ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(E-2)
[アロニックスM402(東亞合成株式会社製)]
(F-3)多塩基酸性アクリルオリゴマー
[アロニックスM520(東亞合成株式会社製)]
(F-4)カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
[KAYARAD DPCA-30(日本化薬社製)]
【0192】
(F-5)下記による多官能ウレタンアクリレート
内容量が1リットル5つ口反応容器に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(432g、ヘキサメチレンジイソシアネート84gを仕込み、60℃で8時間反応させ、(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタンアクリレート(F-5)を含む生成物を得た。生成物中、多官能ウレタンアクリレート(F-5)の占める割合は、70質量%であり、残部を他の光重合性モノマーで占めている。なお、IR分析により反応生成物中にイソシアネート基が存在しないことを確認した。
【0193】
(F-6)2官能のビスフェノールA型(メタ)アクリレート
[ABE-300(新中村化学社製)]
(F-7)エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート
[A-9300(新中村化学社製)]
以上、(F-1)~(F-7)をそれぞれ同量にて混合し、光重合性単量体(F)とした。
【0194】
[光重合開始剤(G)]
(G-1)2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン
[Omnirad 907(IGM Resins社製)]]
(G-2)2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン
[Omnirad 379EG(IGM Resins社製)]
(G-3)2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド
[Omnirad TPO(IGM Resins社製)]
(G-4)2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール
[ビイミダゾール(黒金化成社製)]
(G-5)p-ジメチルアミノアセトフェノン
[DMA(ダイキファイン社製)]
(G-6)エタン-1-オン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル],1-(O-アセチルオキシム)
[イルガキュアOXE02(BASFジャパン社製)]
(G-7)1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン
[Omnirad 2959(IGM Resins社製)]
(G-8)ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
[Omnirad 819(IGM Resins社製)]
以上、(G-1)~(G-8)をそれぞれ同量にて混合し、光重合開始剤(G)とした。
【0195】
[増感剤(H)]
(H-1)2,4-ジエチルチオキサントン
[カヤキュアDETX-S(日本化薬社製)]
(H-2)4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
[CHEMARK DEABP(Chemark Chemical社製)]
以上、(H-1)(H-2)をそれぞれ同量にて混合し、増感剤(H)とした。
【0196】
[チオール系連鎖移動剤(I)]
(I-1)トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)
[TEMB(昭和電工社製)]
(I-2)トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)
[TPMB(昭和電工社製)]
(I-3)ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)
[PEMP(堺化学工業社製)]
(I-4)トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)
[TMMP(堺化学工業社製)]
(I-5)トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]―イソシアヌレート
[TEMPIC(堺化学工業社製)]
以上、(I-1)~(I-5)をそれぞれ同量にて混合し、チオール系連鎖移動剤(I)とした。
【0197】
[重合禁止剤(J)]
(J-1)3-メチルカテコール
(J-2)メチルヒドロキノン
(J-3)tert-ブチルヒドロキノン
以上、(J-1)~(J-3)をそれぞれ同量にて混合し、重合禁止剤(J)とした。
【0198】
[紫外線吸収剤(K)]
(K-1)2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(ドデシルおよびトリデシル)オキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン
[TINUVIN400(BASFジャパン社製)]
(K-2)2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール
[TINUVIN900(BASFジャパン社製)]
以上、(K-1)(K-2)をそれぞれ同量にて混合し、紫外線吸収剤(K)とした。
【0199】
[酸化防止剤(L)]
(L-1)ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
(L-2)3,3'-チオジプロパン酸ジオクタデシル
(L-3)トリス[2,4-ジ-(tert)-ブチルフェニル]ホスファイト
(L-4)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート
(L-5)サリチル酸p-オクチルフェニル
以上、(L-1)~(L-5)をそれぞれ同量にて混合し、酸化防止剤(L)とした。
【0200】
[レベリング剤(M)]
DIC株式会社製「メガファックF-551:含ふっ素基親油性基含有オリゴマー」1部、
ビックケミー社製「BYK-330:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン」 1部、
花王株式会社製「エマルゲン103:ポリオキシエチレンラウリルエーテル」 1部
をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート97部に溶解させた混合溶液。
【0201】
[貯蔵安定剤(N)]
(N-1)2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノール
(本州化学工業社製「BHT」)
(N-2)トリフェニルホスフィン
(北興化学工業社製「TPP」)
以上、(N-1)(N-2)をそれぞれ同量にて混合し、貯蔵安定剤(N)とした。
【0202】
[密着向上剤(O)]
(O-1)3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
[信越シリコーン シランカップリング剤KBM-403(信越化学工業株式会社製)]
(O-2)3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン
[信越シリコーン シランカップリング剤KBE-503(信越化学工業株式会社製)]
(O-3)N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
[信越シリコーン シランカップリング剤KBM-603(信越化学工業株式会社製)]
(O-4)3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン
[信越シリコーン シランカップリング剤KBM-803(信越化学工業株式会社製)]
以上、(O-1)~(O-4)をそれぞれ同量にて混合し、シランカップリング剤(O)とした。
【0203】
[溶剤(P)]
(P-1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 30部
(P-2)シクロヘキサノン 30部
(P-3)3-エトキシプロピオン酸エチル 10部
(P-4)プロピレングリコールモノメチルエーテル 10部
(P-5)シクロヘキサノールアセテート 10部
(P-6)ジプロプレングリコールメチルエーテルアセテート 10部
以上、(P-1)~(P-6)をそれぞれ上記質量部にて混合し、溶剤(P)とした。
【0204】
<感光性近赤外線吸収組成物(R)の分光特性評価>
得られた感光性近赤外線吸収組成物(R)を、1.1mm厚のガラス基板上にスピンコーターを用いて、800nmにおける透過率が1%となるようにスピンコートし、60℃で5分乾燥した後、超高圧水銀ランプを用いて100mJ/cm2の紫外線を照射し、0.2質量%の炭酸ナトリウム水溶液からなるアルカリ現像液によりスプレー現像し、その後230℃で20分加熱し、基板を作製した。得られた基板の分光を分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて400~1000nmの波長範囲の吸収スペクトルを測定した。
測定した吸収スペクトルから各範囲の平均透過率(T)を算出し、近赤外線吸収組成物(D)の分光特性評価と同様の基準で評価した。評価結果を表3に示す。
【0205】
<感光性近赤外線吸収組成物(R)の塗布性評価>
得られた感光性近赤外線吸収組成物(R)を、近赤外線吸収組成物(D)の塗布性性評価と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0206】
【0207】
感光性近赤外線吸収組成物(R)の場合も近赤外線吸収組成物(D)と結果は同様で、本発明の400~1000nmの範囲における最大吸収波長を800~900nmの間に有するスクアリリウム色素(A)を2種以上含むことにより、700nm~900nmまでの近赤外線カット能力が高く(分光特性1~3)、940nmの近赤外光を透過し(分光特性4)、かつ塗布性良好な着色組成物を得ることができた。
【0208】
<感光性近赤外線吸収着色組成物(RG)の製造>
(その他の微細化色素(PB-1)の製造)
反応容器中でn-アミルアルコール1250部に、フタロジニトリル225部、塩化アルミニウム無水物78部を添加し、攪拌した。これに、DBU(1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)266部を加え、昇温し、136℃で5時間還流させた。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール5000部、水10000部の混合溶媒中へ、攪拌下注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール2000部、水4000部の混合溶媒で洗浄し、乾燥して、135部のクロロアルミニウムフタロシアニンを得た。さらに、反応容器中でクロロアルミニウムフタロシアニン100部をゆっくり濃硫酸1200部に、室温にて加えた。40℃、3時間撹拌して、3℃の冷水24000部に硫酸溶液を注入した。青色の析出物をろ過、水洗、乾燥して、下記式(5)で表されるアルミニウムフタロシアニン顔料を102部得た。
【0209】
【0210】
反応容器中でメタノール1000部に、上記式(5)で表されるアルミニウムフタロシアニン顔料を100部と、ジフェニルホスフィン酸を43.2部とを加え、40℃に加熱し、8時間反応させた。これを室温まで冷却後、生成物をろ過し、メタノールで洗浄後、乾燥させて、その他の色素(B-1)を112部を得た。
続いて、得られたその他の色素(B-1)を100部と、塩化ナトリウムを1200部と、ジエチレングリコール120部とをステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で6時間混練した。この混練物を3000部の温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間撹拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、その他の微細化色素(PB-1)を得た。平均一次粒子径は29.5nmであった。
【0211】
(その他の微細化色素(PB-2)の製造)
反応容器中でメタノール1000部に、上記式(5)で表されるアルミニウムフタロシアニン顔料を100部とリン酸ジフェニルを49.5部とを加え、40℃に加熱し、8時間反応させた。これを室温まで冷却後、生成物をろ過し、メタノールで洗浄後、乾燥させて、その他の色素(B-2)を114部を得た。
得られたその他の色素(B-2)を、その他の色素(B-1)と同様のソルトミリング処理法で、その他の微細化色素(PB-2)を得た。平均一次粒子径は31.2nmであった。
【0212】
(その他の微細化色素(PB-3)の製造)
三つ口フラスコに、98%硫酸500部、下記式(6)で表されるフタロシアニン顔料50部、1,2-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン(DBDMH)129.3部を加え撹拌し、20℃、6時間、反応させた。その後、3℃の氷水5000部に上記反応混合物を注入し、析出した固体をろ取し、水洗した。ビーカーに2.5%水酸化ナトリウム水溶液500部、ろ取した残渣を加え、80℃、1時間撹拌した。その後、この混合物をろ取、水洗、乾燥して、フタロシアニン環に臭素原子が平均で10.1個置換された顔料を得た。
次に、3口フラスコに、N-メチルピロリドンを500部、得られたフタロシアニン環に臭素原子が平均で10.1個置換された顔料を50部およびリン酸ジフェニル13.9部を加え、90℃に加熱し、8時間反応させた。これを室温まで冷却後、生成物をろ過し、メタノールで洗浄後、乾燥させて、その他の微細化色素(PB-3)を得た。平均一次粒子径は27nmであった。
【0213】
【0214】
(その他の微細化色素(PB-4)の製造)
三つ口フラスコに、塩化アルミニウム250部、塩化ナトリウム60部、ヨウ素2.25部加え150℃、30分間撹拌した。そこへ、上記式(5)で表されるアルミニウムフタロシアニン顔料50部加え、155℃、30分間撹拌し、溶解させた。さらにトリクロロイソシアヌル酸58.5部加え、190℃、5時間撹拌した。その後、3℃の氷水5000部に上記反応混合物を注入し、析出した固体をろ取し、水洗した。ビーカーに2.5%水酸化ナトリウム水溶液500部、ろ取した残渣を加え、80℃、1時間撹拌した。その後、この混合物をろ取、水洗、乾燥して、フタロシアニン環に塩素原子が平均で8.1個置換された顔料を得た。
次に、3口フラスコに、N-メチルピロリドンを500部、得られたフタロシアニン環に塩素原子が平均で8.1個置換された顔料を50部およびリン酸ジフェニル22.6部を加え、90℃に加熱し、8時間反応させた。これを室温まで冷却後、生成物をろ過し、メタノールで洗浄後、乾燥させて、その他の微細化色素(PB-4)を得た。平均一次粒子径は29nmであった。
【0215】
(その他の微細化色素(PB-5)の製造)
C.I.ピグメントブルー15:3(PB15:3)(トーヨーカラー社製「リオノールブルー FG-7351」)100部、塩化ナトリウム700部、およびジエチレングリコール180部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。この混合物を温水2000部に投入し、80℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で一昼夜乾燥し、95部のその他の微細化色素(PB-5)を得た。
【0216】
(その他の微細化色素(PB-6)の製造)
C.I.ピグメントブルー15:3(PB15:3)(トーヨーカラー社製「リオノールブルー FG-7351」)を、C.I.ピグメントグリーン58(PG58)(DIC社製「FASTGEN GREEN A110」)に変更した以外は、その他の微細化色素(PB-5)の製造と同様にして、その他の微細化色素(PB-6)を得た。
【0217】
上記の通り製造したその他の微細化色素(PB-1)~(PB-6)の構造は、以下の通りである。
【0218】
【0219】
(着色組成物(BG-1)の製造)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、着色組成物(BG-1)を作製した。
その他の微細化色素(PB-1) :12.0部
塩基性樹脂型分散剤1溶液 :9.0部
バインダ樹脂1溶液 :22.0部
PGMAC :57.0部
【0220】
(着色組成物(BG-2)~(BG-6)の製造)
以下、その他の微細化色素(PB-1)を表4に示すその他の微細化色素(BG)に変更した以外は着色組成物(BG-1)と同様にして、着色組成物(BG-2)~(BG-6)を作製した。
【0221】
【0222】
(実施例30:感光性近赤外線吸収着色組成物(RG-1)の製造)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、0.5μmのフィルタで濾過し、感光性近赤外線吸収着色組成物(RG-1)を作製した。
近赤外線吸収組成物(D-5) :15.7部
着色組成物(BG-1) :15.7部
バインダ樹脂2溶液 : 8.5部
熱硬化性化合物(E) : 0.8部
重合性化合物(F) : 4.5部
光重合開始剤(G) : 0.7部
増感剤(H) : 0.1部
チオール系連鎖移動剤(I) : 0.2部
重合禁止剤(J) : 0.2部
紫外線吸収剤(K) : 0.2部
酸化防止剤(L) : 0.2部
レベリング剤(M) : 5.0部
貯蔵安定剤(N) : 0.2部
密着向上剤(O) : 0.2部
溶剤(P) :48.4部
【0223】
(実施例31~37:感光性近赤外線吸収着色組成物(RG-2)~(RG-8)、
比較例6:感光性近赤外線吸収着色組成物(RG-9)の製造)
以下、近赤外線吸収組成物(D-5)、着色組成物(BG-1)を表5に示す組成、量に変更した以外は感光性近赤外線吸収着色組成物(RG-1)と同様にして、感光性近赤外線吸収着色組成物(RG-2)~(RG-9)を作製した。
ただし、実施例33は参考例である。
【0224】
<感光性近赤外線吸収着色組成物(RG)の分光特性評価>
得られた感光性近赤外線吸収着色組成物(RG)を、1.1mm厚のガラス基板上にスピンコーターを用いて、塗工膜厚が1.5μmになるようにスピンコートし、60℃で5分乾燥した後、超高圧水銀ランプを用いて100mJ/cm2の紫外線を照射し、0.2質量%の炭酸ナトリウム水溶液からなるアルカリ現像液によりスプレー現像し、その後230℃で20分加熱し、基板を作製した。得られた基板の分光を分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて400~1000nmの波長範囲の吸収スペクトルを測定した。
測定した吸収スペクトルから各範囲の平均透過率(T)を算出し、分光特性1~3については、近赤外線吸収組成物(D)の分光特性評価と同様の基準で評価した。分光特性5および6については、下記基準で評価した。
評価結果を表5に示す。
【0225】
分光特性5:450nm~550nm
○: 70% ≦ (T)
△: 60% ≦ (T) < 70%
×: (T) < 60%
分光特性6:600nm~700nm
○: (T) ≦ 5%
△: 5% < (T) ≦ 10%
×: 10% < (T)
【0226】
【0227】
本発明の400~1000nmの範囲における最大吸収波長を800~900nmの間に有するスクアリリウム色素(A)を2種以上含むことに加えて、青色や緑色の色素を含むことにより、例えば有機EL表示装置の画面内指紋認証等の検出に用いられる青色~緑色の光の透過率が高く(分光特性5)、ノイズとなる赤色の光(分光特性6)や700nm~900nmまでの近赤外線カット能力(分光特性1~3)が高い感光性近赤外線吸収着色組成物を得ることができた。
【0228】
<近赤外線カットフィルタ(FC)の製造>
(実施例38:近赤外線カットフィルタ(FC-1)の製造)
感光性近赤外線吸収組成物(R-1)を、1.1mm厚のガラス基板上にスピンコーターを用いて、塗工膜厚が1.5μmになるようにスピンコートし、60℃で5分乾燥した。次いで、超高圧水銀ランプを用いて、100μm四方の近赤外線カットフィルタを形成するためフォトマスクを通して、100mJ/cm2の紫外線を照射した。露光後の塗膜を、0.2質量%の炭酸ナトリウム水溶液からなるアルカリ現像液によりスプレー現像し、100μm四方のパターンを形成させた。その後230℃で20分加熱し、近赤外線カットフィルタ(FC-1)を作製した。
【0229】
(実施例39~42:近赤外線カットフィルタ(FC-2)~(FC-5))
感光性近赤外線吸収組成物(R-1)を表6に示す感光性近赤外線吸収組成物(R)、または感光性近赤外線吸収着色組成物(RG)に変更した以外は、近赤外線カットフィルタ(FC-1)と同様にして、近赤外線カットフィルタ(FC-2)~(FC-5)を作製した。
ただし、実施例39は参考例である。
【0230】
【0231】
本発明の400~1000nmの範囲における最大吸収波長を800~900nmの間に有するスクアリリウム色素(A)を2種以上含む近赤外線カットフィルタにより、700nm~900nmまでの近赤外線カット能力が高い近赤外線カットフィルタを得ることができた。
また、本発明の400~1000nmの範囲における最大吸収波長を800~900nmの間に有するスクアリリウム色素(A)を2種以上含むことに加えて、青色や緑色の色素を含むことにより(実施例40~42)、例えば有機EL表示装置の画面内指紋認証等の検出に用いられる青色~緑色の光の透過率が高く、ノイズとなる赤色の光や700nm~900nmまでの近赤外線カット能力が高い近赤外線カットフィルタを得ることができた。
【0232】
<感光性近赤外線透過性組成物(RB)の製造>
(その他の微細化色素(PB-7)の製造)
青色有機顔料C.I.ピグメントブルー15:6(PB15:6)(トーヨーカラー社製「リオノールブルーES」)100部、粉砕した食塩800部、およびジエチレングリコール100部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、70℃で12時間混練した。この混合物を温水3000部に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、その他の微細化色素(PB-7)を得た。
【0233】
(その他の微細化色素(PB-8)の製造)
黄色有機顔料C.I.ピグメントイエロー139(PY139)(クラリアント社製「Novoperm Yellow P-M3R」)100部、粉砕した食塩800部、およびジエチレングリコール100部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、70℃で12時間混練した。この混合物を温水3000部に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、その他の微細化色素(PB-8)を得た。
【0234】
(その他の微細化色素(PB-9)の製造)
紫色有機顔料C.I.ピグメントバイオレット23(PV23)(トーヨーカラー社製「LIONOGEN VIOLET FG-6140」)100部、粉砕した食塩800部、およびジエチレングリコール100部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)に仕込み、70℃で12時間混練した。この混合物を温水3000部に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、その他の微細化色素(PB-9)を得た。
【0235】
(着色組成物(BB-1)の製造)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、着色組成物(BB-1)を作製した。
その他の微細化色素(PB-7) :4.2部
その他の微細化色素(PB-8) :4.2部
その他の微細化色素(PB-9) :3.6部
塩基性樹脂型分散剤1溶液 :15.0部
バインダ樹脂1溶液 :10.0部
PGMAC :63.0部
【0236】
(実施例43:感光性近赤外線透過性組成物(RB-1)の製造)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、0.5μmのフィルタで濾過し、感光性近赤外線透過性組成物(RB-1)を作製した。
近赤外線吸収組成物(D-5) :11.3部
着色組成物(BB-1) :45.0部
バインダ樹脂2溶液 :0.8部
ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート(東亞合成社製「アロニックスM402」) :3.0部
エタン-1-オン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル],1-(O-アセチルオキシム)[イルガキュアOXE02(BASFジャパン社製)] :0.5部
レベリング剤(M) :5.0部
溶剤(P) :34.6部
【0237】
<近赤外線透過フィルタ(FT)の製造>
(近赤外線透過フィルタ(FT-1)の製造)
感光性近赤外線透過性組成物(RB-1)を、1.1mm厚のガラス基板上にスピンコーターを用いて、塗工膜厚が2.0μmになるようにスピンコートし、60℃で5分乾燥した。次いで、超高圧水銀ランプを用いて、100μm四方の近赤外線透過フィルタを形成するためフォトマスクを通して、100mJ/cm2の紫外線を照射した。露光後の塗膜を、0.2質量%の炭酸ナトリウム水溶液からなるアルカリ現像液によりスプレー現像し、100μm四方のパターンを形成させた。その後230℃で20分加熱し、近赤外線透過フィルタ(FT-1)を作製した。
【0238】
本発明の400~1000nmの範囲における最大吸収波長を800~900nmの間に有するスクアリリウム色素(A)を2種以上含むことに加えて、複数の色素を組み合わせて黒色を呈する着色組成物を含むことにより、400nm~700nmの可視光、および700nm~900nmの近赤外線を遮蔽し、900nmより長波長の近赤外線を透過させる近赤外線透過フィルタを得ることができた。